JP5599763B2 - 水溶性樹脂、これを用いた熱交換器用フィン材、および熱交換器 - Google Patents

水溶性樹脂、これを用いた熱交換器用フィン材、および熱交換器 Download PDF

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Description

本発明は、熱交換器または熱交換器用部材をコーティングするための塗料組成物に用いられる水溶性樹脂、これを用いた熱交換器用フィン材、および熱交換器に関する。
熱交換器は、ルームエアコン、パッケージエアコン、冷凍ショーケース、冷蔵庫、オイルクーラーおよびラジエータ等を代表として様々な分野に利用されている。そして、ルームエアコンおよびパッケージエアコン等の熱交換器において、そのフィン材には、熱伝導性および加工性が優れることから主にアルミニウムやアルミニウム合金が使用されている。
熱交換器の冷房運転が行われると、空気中の水蒸気が凝縮することにより、アルミニウムやアルミニウム合金からなるフィン材表面に結露水が生じることとなる。そして、この結露水が水滴としてフィン材表面に存在すると通風抵抗が増加することにより圧力損失が大きくなり、熱交換器の能力低下を生じさせてしまう。よって、フィン材表面に付着した水滴の流動性を高めて容易に流下させるために、フィン材表面の親水性を向上させるということが行われてきた。
アルミニウムやアルミニウム合金からなるフィン材表面の親水性を向上させる方法として、水ガラスなどの無機系表面処理剤を表面に塗布する方法が存在する。しかし、この無機系表面処理剤は環境中の臭気成分を吸着しやすく、その結果、運転開始時にフィン材表面から臭気成分が離脱してしまい、臭気を発生させてしまう場合があった。
このような問題を解消するために、特許文献1には、フィン材表面にクロメート皮膜を形成させ、その上にアルミナゾル皮膜を形成させることによりフィン材表面に親水性を付与するという技術が開示されている。また、特許文献2には、フィン材の親水性を向上させるために、親水性樹脂を主成分とした有機系の表面処理剤をフィン材表面に塗布する方法が開示されている。なお、この親水性樹脂を主成分とした有機系の表面処理剤としては、アクリル系樹脂を使用したものや、セルロース系のものが開示されている。
特開平8−200983号公報 特開平7−268274号公報
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示されているような組成の皮膜等を表面に形成させたフィン材であっても、使用環境によっては、各種汚れが付着して熱交換器の本来の性能が失われてしまうことがある。特に、新築家屋などで発生しやすいVOC(揮発性有機化合物)が付着した場合にはその影響(熱交換器本来の性能の低下)が顕著に現れてしまう。また、付着する汚れの中でも、アルデヒド類等は比較的水に対して溶解度を持つので自然に結露水に溶解し流れ落ちることになるが、カルボン酸やそのエステル類などは水に殆ど溶解しないため、一旦、フィン材表面に付着すると容易に剥脱することは無い。
ここで、VOC等を付着し難くするために、フィン材の表面張力を極めて低くする方法も考えられるが、同時にフィン材表面が撥水性になってしまい、圧力損失が大きくなってしまう。また、フィン材表面に形成された塗膜中に界面活性作用を持つ物質を予め混入しておくことによって、VOC等の付着物質を落ちやすくする方法も考えられるが、界面活性物質が全て溶出してしまった後はその作用が失われてしまう。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、熱交換器または熱交換器用部材(以下、適宜、対象部材という)にVOC等の汚れ物質が付着しても、対象部材表面に生じる結露水によって洗い流され、その結果、対象部材の高い親水性を長期にわたって維持することができる、対象部材をコーティングするための塗料組成物に用いられる水溶性樹脂を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明者らは、以下の事項について検討した。
本発明者らは、VOC等の汚れ物質が付着しても結露水によって洗い落とされる様にするためには、フィン材等の対象部材の表面に形成させる塗膜が、(1)VOC等の汚れ物質と親和性が低く、(2)水との親和性が高い(親水性が高い)ものであると共に、(3)塗膜自体の透水性が高いものであることが要件となると考えた。
上記要件を満たす塗膜が形成された対象部材の表面から、結露水によってVOC等の汚れ物質が洗い落とされる機構は図1のようになっていると考える。
詳細には、次のとおりである。まず、図1(a)に示すように、VOC等の汚れ物質11と親和性が低い塗膜(親水性塗膜)2の表面では、VOC等の汚れ物質11は化学的に結合することができず、塗膜2の表面に単に乗っている状態となる。そして、(b)に示すように塗膜2の表面に結露水12が付着すると、塗膜2は透水性が高く親水性が高いため、(c)で示すように結露水12が塗膜2内を通り、塗膜2の表面とVOC等の汚れ物質11との界面に到達する。その結果、(d)に示すように、結露水12が塗膜2表面からVOC等の汚れ物質11を剥がし、塗膜2表面から結露水12と共にVOC等の汚れ物質11を洗い落とすこととなる。
上記のような原理を利用した技術が、特開2010−159379号公報に開示されている。この文献に開示されている技術を具体的に説明すると、スルホン酸基含有モノマー及びカルボキシル基含有モノマーをそれぞれ40mol%以上含むアクリル系高分子体を固形分中15重量%以上含むとともに、カルボキシル基含有モノマーを65mol%以上含むアクリル系高分子体を固形分中40重量%以上含み、これらアクリル系高分子体混合物の水溶液に、アンモニア、アミン、アルカリ金属水酸化物等を所定量加えて調整してなる塗料組成物をフィン材等の表面に塗布するという技術である。
しかし、一般にスルホン酸基含有モノマーを40mol%以上含有するようなポリマーを製造することは容易ではなくポリマーの生産性に劣ることから、大幅なコスト増を招くと考えられる。また、この文献に開示された技術は、ポリマーの分子量に関して規定していないが、分子量が小さいとポリマーは流れ落ちやすくなってしまう。一方、分子量を大きくしようとすればするほど、ポリマー中のスルホン酸基含有モノマーの比率は低くなる。ここで、例えば、分子量が5万以上となるように調製した場合、導入可能なスルホン酸基含有モノマーの比率は30mol%程度と推定される。しかし、この文献に示されているようなスルホン酸基含有モノマーを使用する場合、含有率が30%程度では十分な性能は得られない。
また、この文献に開示された技術はアンモニアやアミン類を使用することを前提としているが、これらの化合物は焼付け時に大半は揮発するものの、残留成分が残存することによって、熱交換器に使用されている銅管の腐食を引き起こす等の悪影響を及ぼす恐れがある。
上記の問題に対し、本発明では、対象部材をコーティングするための塗料組成物に用いられる水溶性樹脂として、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(HAPS)またはその塩と、アクリル酸またはその塩との共重合体を使用するとともに、共重合体中におけるHAPSの構成比率や共重合体の平均分子量等を所定範囲に規定することにより、この塗料組成物を対象部材表面に形成させた場合、VOC等の汚れ物質が付着しても結露水により洗い流すことを可能とし、その結果、対象部材の高い親水性を長期にわたって維持することができることを見出した。
以下、本発明を詳細に説明する。
前記課題を解決するために、本発明に係る水溶性樹脂は、熱交換器または熱交換器用部材をコーティングするための塗料組成物に用いられる水溶性樹脂であって、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(HAPS)またはその塩と、アクリル酸またはその塩との共重合体であり、当該共重合体における全単量体の構成単位100モル%に対するHAPSまたはその塩の構成単位の比率(MH)が23モル%以上、かつ当該共重合体の平均分子量(MW)が10万以上であり、前記比率と前記平均分子量との積(MH×MW)が3,000,000以上5,000,000以下であることを特徴とする。
このように、本発明に係る水溶性樹脂は、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(HAPS)またはその塩と、アクリル酸またはその塩との共重合体であることにより、この水溶性樹脂を含有した塗料組成物からなる塗膜をフィン材等の対象部材表面に形成させた場合、対象部材表面の親水性を向上させるとともに、VOC等の汚れ物質と親和性を低くすることができる。さらに、この塗膜自体の透水性を向上させることができる。その結果、この塗膜表面にVOC等の汚れ物質が付着した場合であっても、塗膜表面の結露水が塗膜内を通り、塗膜とVOC等の汚れ物質との界面に到達し、結露水が塗膜表面からVOC等の汚れ物質を剥脱することとなる。
加えて、本発明に係る水溶性樹脂は、前記物質を使用していることにより、アンモニアやアミン類を用いる必要がない。
また、本発明に係る水溶性樹脂は、当該共重合体における全単量体の構成単位100モル%に対するHAPSまたはその塩の構成単位の比率(MH)が23モル%以上と規定していることから、HAPSまたはその塩が奏する効果(親水性の向上、汚れ物質との親和性の低下)を確保することができる。
さらに、本発明に係る水溶性樹脂は、当該共重合体の平均分子量(MW)が5万以上と規定していることにより、当該共重合体が、対象部材表面から流れ落ち難くなる。またさらに、本発明に係る水溶性樹脂は、MH×MWが3,000,000以上5,000,000以下と規定していることにより、VOC環境下での親水性および製造容易性を確保することができる。
そして、本発明に係る熱交換器用フィン材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材と、当該基材上(表面)に形成された親水性塗膜とを備える熱交換器用フィン材であって、前記親水性塗膜は、前記水溶性樹脂を含む塗料組成物からなることを特徴とする。
このように、本発明に係る熱交換器用フィン材は、前記水溶性樹脂を含む塗料組成物からなる親水性塗膜を基材の表面に形成していることから、フィン材の親水性を向上させるとともに親水性の低下を長期にわたって防止することができる。
そして、本発明に係る熱交換器は、前記熱交換器用フィン材を用いたことを特徴とする。 このように、本発明に係る熱交換器は所定の熱交換器用フィン材を用いていることから、熱交換器の親水性を向上させるとともに親水性の低下を長期にわたって防止することができる。
本発明に係る水溶性樹脂によれば、この水溶性樹脂を含有した塗料組成物からなる塗膜をフィン材等の対象部材表面に形成させた場合、VOC等の汚れ物質が付着しても対象部材表面に生じる結露水によって洗い流され、その結果、対象部材の高い親水性を長期にわたって維持することができる。
また、本発明に係る熱交換器用フィン材または熱交換器は、VOC等の汚れ物質の付着による通風抵抗の増加を回避することができるため、熱交換器としての能力低下を長期にわたって防止することができる。
(a)〜(d)は、本発明に係る水溶性樹脂を含んだ親水性塗膜(塗膜)表面に付着したVOC等の汚れ物質が洗い落とされる機構を模式的に示した断面図である。 (a)〜(c)は、本発明に係る熱交換器用フィン材を示す断面図である。
本発明に係る水溶性樹脂、この水溶性樹脂を含有した塗料組成物からなる水溶性塗膜(塗膜)が表面に形成された熱交換器用フィン材、および、この熱交換器用フィン材を用いた熱交換器を実施するための形態について説明する。
≪水溶性樹脂≫
本発明に係る水溶性樹脂は、熱交換器または熱交換器用部材をコーティングするための塗料組成物に用いられる水溶性樹脂である。そして、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(HAPS)またはその塩と、アクリル酸またはその塩との共重合体から構成される。
つまり、HAPSとアクリル酸との共重合体であってもよいし、HAPSとアクリル酸の塩との共重合体であってもよいし、HAPSの塩とアクリル酸との共重合体であってもよいし、HAPSの塩とアクリル酸の塩との共重合体であってもよい。
本発明に係る水溶性樹脂は、HAPSまたはその塩を含有することにより、この水溶性樹脂を含有した塗料組成物からなる塗膜をフィン材等の対象部材表面に形成させた場合、対象部材表面の親水性を向上させるとともに、VOC等の汚れ物質との親和性を低下させるという効果を奏する。
さらに、本発明に係る水溶性樹脂は、アクリル酸またはその塩を含有することにより、この水溶性樹脂を含有した塗料組成物からなる塗膜をフィン材等の対象部材表面に形成させた場合、塗膜密着性を向上させるという効果を奏する。
なお、HAPSの塩とは、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられ、ナトリウム塩が好ましい。また、アクリル酸の塩とは、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられ、ナトリウム塩が好ましい。
そして、本発明に係る水溶性樹脂は、共重合体における全単量体の構成単位100モル%に対するHAPSまたはその塩の構成単位の比率(MH)が23モル%以上であることを特徴とする。HAPSまたはその塩の構成単位の比率が、23モル%未満となると、HAPSまたはその塩が奏する効果(親水性の向上、汚れ物質との親和性の低下)を確保できなくなってしまうからである。
なお、生産性の観点より35モル%以下であることが好ましい。
また、本発明に係る水溶性樹脂は、共重合体の平均分子量(MW)が5万以上である。平均分子量が5万未満であると、共重合体が対象部材表面から流れ落ち易くなるからである。なお、ここでの平均分子量とは重量(質量)平均分子量のことである。
なお、生産性の観点より20万以下であることが好ましい。
さらに、本発明に係る水溶性樹脂は、前記比率と前記平均分子量との積(MH×MW)が3,000,000以上5,000,000以下であることを特徴とする。MH×MWが3,000,000未満であると、共重合体が対象部材表面から流れ落ち易くなって親水性が低下しやすくなってしまい、5,000,000を超えると、水溶性樹脂の製造自体が困難となってしまうからである。
なお、MH×MWを計算する際には、MHについては小数点第一位を四捨五入した数値を用い、MWについては百の位を四捨五入した数値を用いた。
また、共重合体の平均分子量(MW)の測定は、下記測定条件に従って行えばよい。
<重量平均分子量の測定条件>
測定装置:昭和電工株式会社製「Shodex SYSTEM−21」
カラム:昭和電工株式会社製「Asahipak GF−710 HQ」および「Asahipak GF−310 HQ」をこの順で接続したもの
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=7/3(体積比)
流速:0.5mL/分
温度:40℃
検量線:ポリアクリル酸標準サンプル(創和科学株式会社製)を用いて作成
検出器:RI
なお、本発明に係る水溶性樹脂を、図2を用いて説明すると、熱交換器または熱交換器用部材(例えば、基材1)をコーティングするための塗料組成物に用いられるものであり、親水性塗膜2を構成するものである。
ここで、本発明に係る水溶性樹脂は、非常に優れた親水性を有するものであるため、その他の親水性樹脂などを少量含有して用いても問題ない。
その他の親水性樹脂としては、セルロース系高分子やポリビニルアルコール系高分子などが挙げられる。そして、セルロース系の高分子体としては、カルボキシメチルセルロース塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)、ヒドロキシメチルセルロースなどを好適に用いることができる。
また、塗料の塗装性を向上させるための各種界面活性剤や、密着性を付与するための架橋剤、また場合によっては脱臭性を付与するための機能性微粒子を付与することも可能である。
塗料組成物に含まれる水溶性樹脂の量は、親水性や塗装性など考慮して適宜設定されるが、好ましい量は固形分濃度で1〜20%である。
≪熱交換器用フィン材≫
本発明に係る熱交換器用フィン材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材1と、当該基材1上(表面)に形成された親水性塗膜2とを備える熱交換器用フィン材10であって、前記親水性塗膜2は、前記水溶性樹脂を含む塗料組成物からなることを特徴とする。
<基材>
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材1としては、例えば、JIS規格の合金番号で1100、1200、1050、3003、7072等のアルミニウムが用いられる。
なお、基材1の板厚は0.06〜0.3mm程度のものが好ましい。板厚が0.06mm未満では、基材1に必要とされる強度を確保することができず、一方、0.3mmを超えるとフィン材としての加工性が低下するからである。
<基材表面に形成される塗膜、皮膜>
基材1の表面には、前記水溶性樹脂を含んだ塗料組成物からなる親水性塗膜2が形成される(図2(a)参照)。
前記水溶性樹脂の塗布量(形成量)は10〜20000mg/mが好ましい。塗布量が10mg/m未満の場合は図1(c)に示したような結露水12が塗膜2内を通って塗膜2とVOC等の汚れ物質11との界面に到達する現象が充分に起こらないため、汚れ物質の洗浄性が充分ではないからである。また20000mg/mを超える場合には、伝熱性能が劣化するおそれがあるとともに、経済的に好ましくないからである。
本発明に係る熱交換器用フィン材10は、使用環境や用途により、基材1と親水性塗膜2との間に各種皮膜を形成させることが好ましい。前記のとおり、親水性塗膜2は、HAPSを用いたポリマーを含むことから、透水性が高いために耐食性はそれ程高くはないからである。
例えば、それ程耐食性が要求されない様な環境や用途で使用される熱交換器用フィン材10は、基材1にリン酸クロメートなどの耐食性表面処理を施して化成皮膜3を形成され、その後、化成皮膜3表面に親水性塗膜2を形成されていればよい(図2(b)参照)。これにより、熱交換器用フィン材10は、長期間の使用に充分耐え得ることができる。
一方、使用環境が厳しく耐食性が必要となる熱交換器用フィン材10は、基材1の表面に有機耐食性皮膜4を形成され、その後、有機耐食性皮膜4表面に親水性塗膜2を形成されていればよい(図2(c)参照)。この場合、有機耐食性皮膜4については特に限定されるものではないが、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系などの樹脂系の皮膜を用いることができる。その膜厚は特に限定されるものではないが、0.5〜5μmが好ましい。0.5μm未満では耐食性が必要な用途に対して要求される充分な耐食性を奏しないからである。また、5μmを超えても、さらなる耐食性の向上が望めないからである。
なお、基材1と親水性塗膜2との間に、化成皮膜3および有機耐食性皮膜4の両方を形成させてもよい。
また、図2に示すフィン材10は、基板1の片面にのみ親水性塗膜2等が形成されているが、基板1の両面に親水性塗膜2等が形成されていてもよい。
なお、有機耐食性皮膜4の表面に本発明に係る水溶性樹脂を含む塗料組成物を塗布する場合、有機耐食性皮膜4自体の表面エネルギーが低すぎるため塗装性が著しく劣る可能性がある。その場合は、本発明に係る水溶性樹脂の水溶液に表面調整剤、界面活性剤を添加し塗装性を向上させることにより解決することができる。また、塗布焼付け後の本発明に係る水溶性樹脂の密着性が有機耐食性皮膜4の種類によっては著しく劣る場合がある。そのような場合などは水溶性の架橋剤を本発明に係る水溶性樹脂の水溶液に予め添加しておいて焼付け時の硬化を促進させることにより解決することができる。
本発明に係る熱交換器用フィン材の製造方法については、特に限定されないが、例えば、基材1(または、表面に化成皮膜3が形成されている基材1)に対し、ロールコート装置等を用いて、塗布、乾燥を行うことで、親水性塗膜2(または、有機耐食性皮膜4および親水性塗膜2)を形成させることができる。
なお、親水性塗膜2は、熱交換器用フィン材10を成形する前に塗布等してもよいし(プレコート)、熱交換器用フィン材10を成形した後に塗布等してもよい(ポストコート)。
≪熱交換器≫
熱交換器の構成は特に限定されず、前記熱交換器用フィン材を用いたものであれば、従来公知の構成の熱交換器でよい。また、熱交換器の製造方法についても、特に限定されない。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
以下、本発明の実施例を用いて本発明をさらに詳述する。
[供試材の製造方法]
従来公知の製造方法により、純アルミニウム系のA1200(JIS H4000)からなるアルミニウム板(板厚0.10mm)を製造した。このアルミニウム板を、アルカリ性薬剤(日本ペイント社製「サーフクリーナー(登録商標)360」)で脱脂し、リン酸クロメート処理を行った。化成皮膜の付着量は、Cr換算で30mg/mとした。
その後、表1に示すスルホン酸基含有モノマーとアクリル酸のモノマーとの共重合体からなる水溶性樹脂を純水で固形分濃度5%に希釈した塗料組成物を、リン酸クロメート処理後のアルミニウム板に20mg/mの量(水溶性樹脂の量)を塗布し、板温200℃となるように焼付けて供試材を作製した。
[性能評価方法]
評価項目としては、以下の塗膜密着性、および親水性(VOC除去性)とし、結果を表1に併記した。
なお、表1の分子量(MW)は、前記した重量平均分子量の測定条件により測定した値であり、表1のMH×MWは、MH、MWについて前記した端数処理(四捨五入)を行ってから算出した値である。
(1)塗膜密着性
イオン交換水に塗装済みのアルミニウム板を浸漬して1分放置した際に、塗膜の残存量が50%以上のものを○(良好)、50%未満のものを×(不良)とした。なお、この塗膜の残存量は溶出後の板の重量減を基に算出した。
(2)親水性(VOC除去性)
予めイオン交換水に1時間程度浸漬して塗装されたアルミ板の溶出分を除去後、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリルアルコール、フタル酸ジオクチルの混合物とともにデシケーター中に封入し、100℃環境で16時間曝露を実施した(4種混合汚染曝露試験)。この4種混合汚染曝露試験前後のアトマイズ時の水濡れ面積率が80%以上のものを○(良好)、50%を超えて80%未満のものを△(普通)、50%以下のものを×(不良)とした。
Figure 0005599763
この表1に示すとおり、実施例(実施例1〜3)に係るフィン材は、塗膜密着性、VOC除去性のいずれもが良好であった。
また、表1には記載しないが、前記リン酸クロメート処理後のアルミニウム板に下地処理として有機耐食性皮膜を形成させ、その後、水溶性樹脂(実施例1〜3と同じ組成のもの)を純水で固形分濃度5%に希釈した塗料組成物を前記方法で焼付けた供試材を作製(実施例1´、2´、3´とする)し、前記性能評価をおこなった。実施例1´〜3´に係るフィン材は、塗膜密着性、VOC除去性のいずれも良好という結果(実施例1〜3と同じ結果)となった。
なお、この下地処理とは、ウレタン系樹脂塗料(東邦化学社製、ウレタン変性樹脂エマルジョン、ハイテック(登録商標)S−6254)を乾燥後の塗膜厚が1μmとなるよう塗布し、その後焼付を行うというものであった。焼付温度はアルミニウム板の到達温度で160℃となるように実施した。
一方、比較例1、2、4に係るフィン材は、水溶性樹脂の平均分子量が規定範囲外であるとともに、MH×MWの値も規定範囲外であったため、塗膜密着性が悪く、VOC暴露後の親水性についても良好な結果とはならなかった。
また、比較例3に係るフィン材は、MH×MWの値が規定範囲外であったため、塗膜密着性が悪く、VOC暴露後の親水性についても良好な結果とはならなかった。比較例5に係るフィン材は、MHの値が規定範囲外であったため、VOC暴露後の親水性が良好な結果とはならなかった。
比較例6に係るフィン材は、MH×MWの値が規定範囲の上限値を超えていたため、製造することができなかった。
比較例7、8に係るフィン材は、スルホン酸の種類がHAPSではなかったため、VOC暴露後の親水性が良好な結果とはならなかった。
1 基材
2 親水性塗膜(塗膜)
3 化成皮膜
4 有機耐食性皮膜
10 熱交換器用フィン材(フィン材)
11 VOC等の汚れ物質
12 結露水

Claims (3)

  1. 熱交換器または熱交換器用部材をコーティングするための塗料組成物に用いられる水溶性樹脂であって、
    3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(HAPS)またはその塩と、アクリル酸またはその塩との共重合体であり、
    当該共重合体における全単量体の構成単位100モル%に対するHAPSまたはその塩の構成単位の比率が23モル%以上、かつ当該共重合体の平均分子量が10万以上であり、前記比率と前記平均分子量との積が3,000,000以上5,000,000以下であることを特徴とする水溶性樹脂。
  2. アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材と、当該基材上に形成された親水性塗膜とを備える熱交換器用フィン材であって、
    前記親水性塗膜は、請求項1に記載の水溶性樹脂を含む塗料組成物からなることを特徴とする熱交換器用フィン材。
  3. 請求項2に記載の熱交換器用フィン材を用いたことを特徴とする熱交換器。
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