JP2018066557A - 防汚性を有する熱交換器用アルミニウムフィン材及びその製造方法と前記アルミニウムフィン材を備えた熱交換器 - Google Patents
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また、熱交換器において薄板状のフィンが隣接して複数設けられるので結露水がフィンの表面に水滴として付着すると、通風抵抗が増大し、圧力損失が大きくなり、熱交換器としての能力低下を生じる。このため、フィン表面に凝縮した水滴をフィン表面から容易に流下させるために、フィン表面に親水性塗膜を形成している。
熱交換器用フィンの表面に親水性を付与する技術としては、フィン材表面にシリカ粒子を含有する有機高分子樹脂溶液で表面処理する技術や、アクリル系樹脂などからなる有機高分子物質とSiO2又はTiO2を含む水性組成物を混合し塗布、乾燥することによって形成される皮膜でアルミニウムフィン材を被覆する技術が知られている。
特許文献2には、アルミニウム板に、樹脂とジルコニウムを含有する下地皮膜層を形成し、その上に、樹脂、コロイダルシリカ、ジルコニウム化合物を含有する親水性被膜層を形成することが開示されている。
露飛びを解決するためには、親水性汚れ、疎水性汚れ共にフィンに付着し難くする必要がある。露飛びを解決するための手法の一例として、親水性粒子と疎水性粒子の混合膜をアルミニウムフィンの表面に塗布することが有効であるが、親水性粒子として特許文献2等に記載されているコロイダルシリカを用いると、粒子硬度が高いため、アルミニウム板材からフィン材をプレス加工で作製する場合、金型摩耗を生じ易い問題がある。
本発明において、前記塗膜表面に分散されているアルミナ粒子の面積占有率が90%以上であることが好ましい。
本発明において、表面の動摩擦係数が0.2以下であることが好ましい。
本発明において、前記フッ素樹脂粒子の平均粒子径が0.1〜0.5μmであり、前記水系塗料に含まれている塗料固形分100質量%中に前記フッ素樹脂粒子が0.05〜3質量%含有されたことが好ましい。
また、本発明のアルミニウムフィン材であるならば、従来の親水性塗膜を備えたフィン材に用いられていたコロイダルシリカ等の硬質粒子を塗膜中に含まないため、アルミニウムフィン材から金型を用いてフィンを製造する場合、金型摩耗を生じ難くすることができ、金型寿命の低下を抑制できる。
本実施形態の熱交換器用フィン材1は、図1に断面構造を示すように、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材2と、該基材2の表面に被覆された化成皮膜3と、化成皮膜3を覆うように被覆形成された防汚性皮膜5を主体として構成されている。
化成皮膜3としては、クロメート処理された薄いクロメート皮膜などを用いることができる。
従って、水系塗料を焼成した後の防汚性皮膜5は、水溶性アクリル樹脂とポリエチレングリコールもしくはポリエチレングリコールの変性物の混合物の焼成体からなる樹脂層6中にアルミナ粒子7が分散された構造となっている。
なお、防汚性皮膜5に対し、フッ素樹脂粒子8を添加した構造を採用してもよい。防汚性皮膜5にフッ素樹脂粒子8を添加するには、フッ素樹脂粒子8を水に分散させたPTFEディスパージョン、FEPディスパージョンなどを水系塗料に必要量混合しておけばよい。
水系塗料にPTFEディスパージョン、FEPディスパージョンなどの状態でフッ素樹脂粒子8を混合しておき、水系塗料を焼成することで、必要量のフッ素樹脂粒子8を添加した防汚性皮膜5を得ることができる。
水溶性アクリル樹脂としては、スルホン酸基、又はその塩を有するα,β不飽和単量体Aと、カルボン酸基を有するα,β不飽和単量体Bと、アルコール性水酸基を有するα,β不飽和単量体Cとを(割合:A;1〜80wt%(好ましくは30〜50wt%),B;1〜50wt%(好ましくは20〜50wt%),C;1〜50wt%(好ましくは20〜40wt%)が望ましい。A+B+C=100wt%)共重合したものが好ましい。
カルボン酸基を有するα,β不飽和単量体Bとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸などが好ましい。この単量体Bは、塗膜の水濡れ性と密着性を向上させる。アルコール性水酸基を有するα,β不飽和単量体Cとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が好ましい。この単量体Cは、塗膜の水濡れ性を向上させると共に、アルミナゾルに由来の粒子を固定する役割を奏する。
水系塗料の塗布量を上述の範囲とすることで塗膜密着性、親水性、耐汚染性、防汚性に優れる防汚性皮膜5となる。0.3g/m2未満の塗布量では防汚性皮膜5の親水性不良、耐汚染性不良、防汚性不良となるおそれがある。また、0.8g/m2を超える塗布量では、防汚性皮膜5の密着性不良、コストの上昇になり易い。
アルミナ粒子の添加量は塗料中の固形分100質量%中、5〜45質量%の範囲であることが望ましい。アルミナ粒子をこの範囲添加することで、塗膜密着性、親水性、耐汚染性、防汚性に優れる防汚性皮膜5となる。アルミナ粒子の添加量を5質量%未満とすると、親水性不良、耐汚染性不良、防汚性不良となるおそれがある。アルミナ粒子の添加量について45質量%を超える量とすると、防汚性皮膜5の密着性不良、コストの上昇になり易い。
なお、前記水系塗料中には、アルミナ粒子、フッ素樹脂などの固形分の他に、固形分としてスルホン酸を含む水溶性アクリル樹脂40〜60%とポリエチレングリコール20〜40%程度が含まれる。
フッ素樹脂粒子8の添加量が0.05〜3質量%の範囲であるならば、良好な防汚性を発揮する。添加量が0.05質量%未満では防汚性皮膜5の防汚性に劣るようになり、添加量が3質量%を超えるようでは防汚性皮膜5が親水性不良となり易い。
フッ素樹脂粒子8の平均粒子径が0.1μm未満では、所定の防汚性を発揮出来ない問題があり、フッ素樹脂粒子8の平均粒子径が0.5μmを超えると塗料中に均一に分散され難い問題がある。
防汚性皮膜5の表面に占めるアルミナ粒子の面積率は、90%以上であることが望ましい。アルミナ粒子は、防汚性皮膜5に分散した状態にする必要があり、分散させるためには、アルミナ粒子添加量を塗料固形分100質量中40質量%以下にする必要がある。40質量%以下にすることによって、塗料表面アルミナ粒子の面積率を90%以上にすることが可能で、これにより動摩擦係数を低減でき、かつ、金型摩耗を低減することが可能となる。防汚性皮膜5の表面に存在するアルミナ粒子の面積率が90%未満では防汚性皮膜5の表面においてアルミナ粒子が凝集状態となり易く、凝集により動摩擦係数が増大し、0.2を超えるようになり、金型摩耗性が悪化する。
これは、親水性に優れた防汚性皮膜5について、モース硬度が従来材のコロイダルシリカよりも低いアルミナ粒子を含むアルミナゾルを用い、更に疎水性粒子としてのフッ素樹脂粒子8を混合することによって、親水性汚れ、疎水性汚れの両方を付着し難くして防汚性を向上させ、かつ、防汚性皮膜5の表面に面積率で90%以上のアルミナ粒子を存在させることでプレス加工時の金型摩耗を低減できることによる。
JIS規定A1050合金からなる厚さ100μmのアルミニウム合金板をリン酸クロメート処理して厚さ0.3μmの化成皮膜を形成後、この化成皮膜上に以下の表1に示す種々の組成の水系塗料を表1に示す塗布量にてバーコーターにて塗布し、オーブンを用いて220℃(設定温度)にて30秒間焼き付けて防汚性塗膜を形成した。
得られた複数のフィン材について、塗膜の密着性、流水後親水性、乾湿サイクル後接触角、耐汚染性、動摩擦係数、粉体付着率、金型摩耗、アルミナ粒子面積率を測定し、以下の表1に示す。
流水後親水性とは、試料に対し流量3L/minの常温流水に24時間浸漬した後の防汚性皮膜表面の接触角を測定した結果である。接触角が20゜以下の試料を○で示し、接触角が20゜を超えた試料を×で示した。
乾湿サイクル後接触角とは、試料に対し流量3L/mの常温流水に24時間浸漬した後、80℃×16時間乾燥を交互に14サイクル行った後の防汚性皮膜表面の接触角を測定した結果である。接触角40゜以下の試料を○で示し、接触角40゜を超える試料を×で示した。
動摩擦係数は、バウデン式摩擦試験機を用い、プレス油を塗布しないで試料の防汚性皮膜表面に鋼球サイズφ9/32の接触子を200gの荷重で押し付け、試料を摺動(1サイクル)させたときの摩擦力を測定して。動摩擦係数を求めた。動摩擦係数が0.2以下の試料を○で示し、動摩擦係数が0.2を超えた試料を×で示した。
粉体付着率は、100mm×100mmの試料(アルミニウムフィン材)を流量3L/minの常温流水に1時間浸漬後、JISZ8901で定められる試験用粉体11種、12種のそれぞれを試料の防汚性皮膜の表面に付着させて、画像解析により付着面積率を測定した。付着面積率が3%以下の試料を○で示し、付着面積率が3%を超える試料を×で示した。
アルミナ粒子の面積率は、定量評価としてレーザー顕微鏡にて防汚性皮膜の表面を対物レンズ100倍で観察し、50μm×50μmの視野での2値化した画像にて粒子解析によりアルミナ粒子の面積率を測定し、アルミナ粒子の面積率が90%以上の試料を○印で示し、面積率が90%未満の試料を×で示した。
試料No.1〜18において、水系塗料塗布量が0.3〜0.8g/m2の範囲であり、アルミナ添加量が塗料固形分中5〜45質量%であり、フッ素樹脂添加量が塗料固形分中0.05〜3.0質量%であるNo.1〜14の試料は全ての試験項目において優れた結果を示した。
先の尖った凸部を複数有する不定形の多数のアルミナ粒子が米粒状のフッ素樹脂粒子とともに混在された状態を呈している。これらの粒子が樹脂層の内部に埋設された構造が防汚性皮膜の概略構造となっていることがわかる。
得られた各防汚性塗膜の防汚性、臭気性、金型摩耗性について試験した。それらの結果を以下の表2に記載する。
表2に示すように、臭気性については、粒子径が最も小さい0.01μmのものが臭気性が悪く、粒子径が最も小さいものは比表面積が大きいことによって、吸着臭が発生したと思われる。また、金型摩耗性については、粒子径が大きいもので悪い結果を示したが、粒子径が大きいことによって、ブツ等の塗膜欠陥や粒子の凝集が生じたことによって、金型摩耗性が悪化した。
本発明において、表面の動摩擦係数が0.2以下であることが好ましい。
本発明において、前記焼付塗膜表面に分散されているアルミナ粒子の面積占有率が90%以上であることが好ましい。
本発明において、前記フッ素樹脂粒子の平均粒子径が0.1〜0.5μmであり、前記水系塗料に含まれている塗料固形分100質量%中に前記フッ素樹脂粒子が0.05〜3質量%含有されたことが好ましい。
本発明の熱交換器は、先のいずれかに記載のアルミニウムフィン材を備えたものである。
本発明の製造方法において、前記アルミナゾルに含まれるアルミナ粒子の平均粒子径が0.02〜20μmであることが好ましい。
本発明の製造方法において、表面の動摩擦係数が0.2以下であることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記焼付塗膜表面に分散されているアルミナ粒子の面積占有率が90%以上であることが好ましい。
また、本発明のアルミニウムフィン材であるならば、従来の親水性塗膜を備えたフィン材に用いられていたコロイダルシリカ等の硬質粒子を塗膜中に含まないため、アルミニウムフィン材から金型を用いてフィンを製造する場合、金型摩耗を生じ難くすることができ、金型寿命の低下を抑制できる。
更に、上述の特徴を備えたフィン材を備えた熱交換器であるならば、露飛びの発生を抑えることができるとともに、フィンを金型で製造する場合の金型寿命を延ばすことができる熱交換器を提供できる。
Claims (6)
- アルミナゾルと、スルホン酸を含む水溶性アクリル樹脂と、ポリエチレングリコールを含む水系塗料であって、前記アルミナゾル中のアルミナ粒子と前記水溶性アクリル樹脂と前記ポリエチレングリコールを含む塗料固形分100質量%中にアルミナ粒子を5〜45質量%含有させた水系塗料をアルミニウム又はアルミニウム合金からなる板材表面に塗布し焼き付けてなる塗膜を有し、該塗膜の塗布量が0.3〜0.8g/m2であることを特徴とする防汚性を有する熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 前記アルミナゾルに含まれるアルミナ粒子の平均粒子径が0.02〜20μmであることを特徴とする請求項1に記載の防汚性を有する熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 表面の動摩擦係数が0.2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の防汚性を有する熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 前記塗膜表面に分散されているアルミナ粒子の面積占有率が90%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の防汚性を有する熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 前記水系塗料中にフッ素樹脂粒子が含有されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の防汚性を有する熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 前記フッ素樹脂粒子の平均粒子径が0.1〜0.5μmであり、前記水系塗料に含まれている塗料固形分100質量%中に前記フッ素樹脂粒子が0.05〜3質量%含有されたことを特徴とする請求項4に記載の防汚性を有する熱交換器用アルミニウムフィン材。
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