JP2005097703A - 耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム材および該アルミニウム材を用いた熱交換器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 アルミニウム基材1の上層に、アルミニウムの酸化物からなる膜厚20nm〜300nmの無孔質皮膜2を形成し、その上層に、親水性皮膜4を形成して熱交換器用アルミニウム材とする。さらに所望により無孔質皮膜2と親水性皮膜4との間に耐食性皮膜3を形成する。また、所望により親水性皮膜4の上層に、水溶性樹脂層5を形成する。
上記アルミニウム材を用いて熱交換器を構成する。アルミニウム基材の上層に形成された適切な厚さの無孔質皮膜によって優れた耐食性が得られ、その上層にある親水性皮膜によって大気中の水分が付着して水滴状になるのを防止して熱交換性能の低下を防止する。
【選択図】 図1
Description
また、上記空調等の熱交換器は、腐食環境で使用されるため、熱交換器用の材料には耐食性が必要とされ、上記親水性皮膜の下地処理として耐食性に優れたものが要求されている。例えば、クロメート処理は、材料の耐食性を容易に改善できる方法であり、各種材料に広く利用されているものである。すなわち上記熱交換器用のアルミニウム材の下地処理としてクロメート処理を施して、その上層に親水性を向上させる目的で親水性皮膜を形成することが可能である。
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、低コストで優れた耐食性と親水性とが得られる熱交換器用アルミニウム材および該アルミニウム材を用いた熱交換器を提供することを目的とする。
さらに、前記無孔質皮膜と親水性皮膜との間に耐食性皮膜を形成することによって、該皮膜自身の性質によって耐食性が向上する。また、該耐食性皮膜は前記無孔質皮膜と親水性皮膜とを強固に結合して親水性皮膜の密着性を一層高める。また、上下層との界面が強化されることで金属表面を保護する耐食性機能が一層向上する作用がある。
上記親水性皮膜の上層には、水溶性樹脂層を形成してもよく、該樹脂層によって親水性機能を損なうことなくアルミニウム材の保護機能を向上させることができる。
アルカリ珪酸塩は皮膜に親水性を与えるための主成分を構成するものであり、SiO2/M2O(式中MはLi,Na,K等のアルカリ金属を示す)比が1以上のものを使用するのが望ましい。特にSiO2/M2O比が2〜5のものが好ましい。
また、カルボニル基を有する低分子有機化合物は、分子内にカルボニル基(O=C<)を有する低分子有機化合物であって、前記アルカリ珪酸塩による皮膜を安定化させて、より親水性を向上させ、かつ皮膜に柔軟性をあたえて密着性を向上させる。このような低分子有機化合物としてはアルデヒド類、エステル類、アミド類等が挙げられる。
また、エステル類としては、蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸メチルなどの1価のアルコールの脂肪酸エステル、又はエチレングリコールジ酢酸エステル、グリセリントリ酢酸エステル、エチレングリコールジプロピオン酸エステルなどの多価アルコールの脂肪酸エステル、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどの分子内エステル、エチレングリコールモノ蟻酸エステル、エチレングリコールモノ酢酸エステル、エチレングリコールモノプロピオン酸エステル、グリセリンモノ蟻酸エステル、グリセリンモノ酢酸エステル、グリセリンモノプロピオン酸エステル、グリセリンジ蟻酸エステル、グリセリンジ酢酸エステル、ソルビトールモノ蟻酸エステル、ソルビトールモノ酢酸エステル、グリコール酸モノ酢酸エステル等の多価アルコールエステル、または、コハク酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、などの多塩基酸の1価アルコールエステル、又はエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセリンカーボネートなどの環状カーボネート等が挙げられる。
ポリアミド樹脂としては、前記アミド類が縮合重合したものが挙げられる。ポリアクリル樹脂としては、主としてアクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体が縮合重合したものが挙げられる。そしてこの親水性皮膜では、これらのポリアミドやポリアクリル酸のナトリウム塩を含むものである
アルミナゾルは、その分散粒子が不定形ゲルからベーマイトに移行する途中の段階にあり、この状態は凝集過程や通常の塗膜の焼付け条件程度では変化しない。この不定形ゲルからベーマイトに移行する途中の段階のアルミナゾルの分散粒子は、コロイダルシリカと比較して軟らかい。したがって、このアルミナゾルに由来する粒子を含有する塗膜を持つ材料をプレス加工する時の加工性は良く、かつ、金型の耐久性も高い。
また、カルボン酸基を有するα,β不飽和単量体Bとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸などが好ましい。この単量体Bは、塗膜の水滞れ性と密着性を向上させる。アルコール性水酸基を有するα,β不飽和単量体Cとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が好ましい。この単量体Cは、塗膜の水濡れ性を向上させると共に、アルミナゾルに由来の粒子を固定する役割を奏する。
すなわちこの樹脂層は、エチレンオキサイドの付加によりKarabinos法による曇数が15.0以上のノニオン型高分子活性剤を含有するものであり、具体的にはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキル脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレン12−ヒドロキシステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンロジンエステル、ポリオキシエチレングリセリンアルキル脂肪酸モノまたはジエステル、ポリオキシエチレントリメチロールプロパンアルキル脂肪酸モノまたはジエステル、ポリオキシエチレンペンタエリスリトールアルキル脂肪酸モノまたはジエステル、ポリオキシエチレンポリオキシアルキレンエーテルの群の中から選ばれる組成物を挙げることができる。
さらに、クロムを使用することなく上記特性が得られるのでクロムの使用が不要になり、環境クロムの問題を回避することができるという効果がある。
図1は、本発明の一例である熱交換器用アルミニウム材10を示す拡大断面図であり、図2は、該アルミニウム材10を得るための処理工程を示す図である。
該アルミニウム材10の素材となるアルミニウム基材1は、純アルミニウム板または適宜組成のアルミニウム合金板からなり、常法により溶製、鋳造、圧延などを経て製造することができ、本発明としては特定の製造工程に限定されるものではない。
次いで、上記アルミニウム基材1を電解浴中で電解する陽極酸化処理を施すことにより、アルミニウム基材1の表裏上層に無孔質皮膜2を形成する。電解浴としては、生成する無孔質皮膜2を溶解しにくく、かつ無孔質の皮膜2を生成する電解質である硼酸、硼酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩、フタル酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩などの群から選ばれる1種または2種以上を溶解した電解質水溶液を用いることができる。これらの電解質のなかでもホウ酸、アジピン酸塩、フタル酸塩が酸化皮膜の性状、コストなどの点で好ましい。電解質水溶液中の電解質濃度は2質量%からその電解質の飽和濃度の範囲が例示される。電解浴の浴温は20℃〜90℃の範囲が例示される。
印加電圧は、直流電流では、電圧1Vに対して形成される酸化皮膜厚さが約14Åとなる関係があることから14〜215V、好ましくは35〜142Vの範囲とされる。このような陽極酸化処理によって厚さが均一な無孔質皮膜2が形成される。無孔質皮膜2の膜厚は、前記したように20〜300nmとする。
このようにして得られた無孔質皮膜2は無孔質であり、その空孔率は5%以下で、通常は2%以下となっている。また、無孔質陽極酸化皮膜2の含水量は1〜5重量%、通常は1〜3重量%と極めて低い値を示す。
また、親水性皮膜の膜厚は、本発明としては特に限定されるものではないが、例えば 100〜3000nmを例示することができる。
該耐食性皮膜3は、下層と上層との間にあって架橋反応などによって両層とそれぞれ強固に結合するものである。したがって、結合の結果、上下層との間に明確な界面を有しない形態からなるものであってもよい。この耐食性皮膜3を形成した形態の発明では、その上層に、前記した親水性皮膜4を形成する。
常法により製造された、JIS A1200組成を有する板厚0.100mmのアルミニウム合金板を用意し、このアルミニウム合金板を60℃の1%のアルカリ性溶液に30秒間浸漬して脱脂した後、水洗し、乾燥させた。
このアルミニウム合金板を陽極にし、不溶性電極を陰極にして、温度60℃の10%ほう酸水溶液中に浸漬し、電解電圧14〜215V、電流密度1〜30A/cm2、電解時間数秒〜3分の範囲で電解処理を施して、表1に示す種々の膜厚の無孔質皮膜を形成した。
エポキシ系樹脂は、三井東圧社製エポキ−833−40HM(商品名)からなり、アクリル系樹脂は日本純薬社製ジュリマ−AT−510(商品名)からなり、シランカップリング剤は、r−グリシドキシプロビルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM−403(商品名))からなるものである。
親水性皮膜は、水ガラス系、有機樹脂系、有機無機複合系のいずれかからなる。
水ガラス系親水性皮膜は、前記SiO2/M2Oの比が2であるアルカリ珪酸塩90重量部とカルボニル基を有するエチレングリコールジプロピオン酸エステル10重量部とで構成される。
また、有機樹脂系親水性皮膜は、ポリアミド樹脂50重量部と、ポリアクリル樹脂20重量部と、ポリアミドナトリウム塩10重量部とポリアクリル酸ナトリウム塩10重量部とノニオン系界面活性剤10重量部により構成される。
さらに有機無機複合系親水性皮膜は、アルミナゾル30重量部と水溶性アクリル樹脂50重量部とポリエチレングリコールもしくはポリエチレングリコールの変成物20重量部とにより構成される。
なお、表1中で「−」の欄は、当該皮膜または樹脂層の形成を行わなかったことを示している。次に、上記のようにして製作したアルミニウム塗装板に付いて以下の特性を評価し、その結果を表1に示した。
作製した塗装板にプレス油(昭和シェル製商品名「7K18B」)を塗布し、その後150℃で5分間乾燥させ、さらに、水道水で24時間水洗したものについて接触角を測定した。
◎・・・20°未満
○・・・30°未満
×・・・40°以上
「株式会社クレシア製商品名:キムタオル」を載置し、500gの荷重をかけたまま50回擦り、親水性皮膜の損傷状態を調べた。
◎・・・全く損傷が見られないもの
○・・・極一部の損傷が見られたもの
△・・・2〜3箇所で損傷が見られたもの
×・・・多数の損傷が見られたもの
JIS Z2371に規定された塩水噴霧試験を240hr実施した。
◎・・・腐食痕が全く確認されないもの
○・・・腐食痕が1〜2箇所確認されたもの
×・・・腐食痕が多数確認されたもの
プレス油(昭和シェル製商品名「7K18B」)を表面に塗布して、ドローレス金型を用いて連続したプレス成形を実施した。
◎・・・成形不良率 2%以下
○・・・成形不良率 2%を越え5%以下
△・・・成形不良率 5%を越え15%以下
×・・・成形不良率 15%を越える
2 無孔質皮膜
3 耐食性皮膜
4 親水性皮膜
5 水溶性樹脂層
10 熱交換器用アルミニウム材
11 フィン
12 チューブ
20 熱交換器
Claims (8)
- アルミニウム基材の上層に、アルミニウムの酸化物からなる膜厚20nm〜300nmの無孔質皮膜が形成され、その上層に、親水性皮膜が形成されていることを特徴とする耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム材。
- 前記親水性皮膜が、アルカリ珪酸塩とカルボニル基を有する低分子有機化合物を主成分とする水ガラス系親水性皮膜からなることを特徴とする請求項1記載の耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム材。
- 前記親水性皮膜が、ポリアミド樹脂40〜80重量部と、ポリアクリル樹脂10〜30重量部と、ポリアミドのナトリウム塩もしくはポリアクリル酸のナトリウム塩のうち少なくとも1種を10〜30重量部及びノニオン系界面活性剤を1〜30重量部含む有機樹脂系の親水性皮膜からなることを特徴とする請求項1記載の耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム材。
- 前記親水性皮膜が、アルミナゾルと水溶性アクリル樹脂とポリエチレングリコールもしくはポリエチレングリコールの変成物とを含有する有機無機複合系の親水性皮膜からなることを特徴とする請求項1記載の耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム材。
- 前記無孔質皮膜と前記親水性皮膜との間に耐食性皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム材。
- 前記親水性皮膜の上層に、水溶性樹脂層が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム材。
- 前記水溶性樹脂が、融解点が45℃以上でKarabinos法による曇数が15.0以上のノニオン型高分子活性剤を含有するものであることを特徴とする請求項6記載の耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム材。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の熱交換器用アルミニウム材を使用して構成されていることを特徴とする熱交換器。
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