JP2019151888A - 板状部材、及び板状部材を用いて形成された熱交換器 - Google Patents

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【課題】表面を覆う被膜の密着性が低下してしまうことを防止することのできる板状部材、及び当該板状部材を用いて形成された熱交換器を提供する。【解決手段】板状部材20は、基材210と、基材210の表面を覆うように形成された樹脂被膜(230,240)と、を備える。基材210の表面と樹脂被膜(230,240)との間には、樹脂被膜(230,240)を通過した水分が基材210の表面に到達することを防止するための水分防止膜220が形成されている【選択図】図2

Description

本開示は、板状部材、及び板状部材を用いて形成された熱交換器に関する。
例えば蒸発器のような熱交換器では、空気中の水分が結露してその表面に付着することにより、熱交換器を構成する金属製の板状部材が腐食してしまう可能性がある。このため、板状部材の表面には、防錆のための被膜が形成されることが多い。また、このような被膜は複数層形成されるのが一般的である。
例えば下記特許文献1には、船舶推進機などに用いられる板状部材の表面に、化成被膜、プライマ層、及び上塗り層からなる三層の被膜を形成することが記載されている。
特開2001−73168号公報
本発明者らは、熱交換器を構成する板状部材のうち、チューブやフィンを構成する板状部材の表面に、防錆性(耐食性)と親水性の両方を成膜によって付与することを検討している。具体的には、板状部材の表面を覆うように防錆のための被膜を形成し、当該被膜の表面を更に覆うように、親水性を有する被膜を形成することを検討している。このような構成の板状部材では、親水性を有する被膜の表面に付着した水が排水されやすくなる。このため、熱交換器のフィンやチューブに沿って通過する空気の流れが、滞留した水によって妨げられてしまうことが防止される。
親水性を有する被膜は、PVAやPVP等の樹脂によって形成される。このため、当該被膜の表面に付着した水が被膜の内側に浸透し、基材の表面にまで到達してしまうことがある。その場合、基材の表面に残留するフラックスが溶解する等により、板状部材の表面を覆う被膜の密着性が低下してしまう可能性がある。
本開示は、表面を覆う被膜の密着性が低下してしまうことを防止することのできる板状部材、及び当該板状部材を用いて形成された熱交換器、を提供することを目的とする。
本開示に係る板状部材(20)は、基材(210)と、基材の表面を覆うように形成された樹脂被膜(230,240)と、を備える。基材の表面と樹脂被膜との間には、樹脂被膜を通過した水分が基材の表面に到達することを防止するための水分防止膜(220)が形成されている。
このような構成の板状部材では、基材の表面と樹脂被膜との間に水分防止膜が形成されている。樹脂被膜を透過した水は水分防止膜によって遮断されるので、当該水が基材の表面にまで水が到達してしまうことはない。このため、表面を覆う被膜の密着性が、水分の影響によって低下してしまうことが防止される。
尚、水分防止膜は上記のように「基材の表面と樹脂被膜との間」に形成されるのであるが、樹脂被膜は、水分防止膜の表面に直接形成されていてもよく、他の被膜(例えば化成被膜)を介して形成されていてもよい。
本開示によれば、表面を覆う被膜の密着性が低下してしまうことを防止することのできる板状部材、及び当該板状部材を用いて形成された熱交換器、が提供される。
図1は、第1実施形態に係る熱交換器の全体構成を示す図である。 図2は、図1の熱交換器の一部を構成する板状部材の、表面の構成を示す断面図である。 図3は、第1実施形態に係る板状部材の、表面の構成を示す断面図である。 図4は、比較例に係る板状部材の、表面の構成を示す断面図である。
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
第1実施形態に係る熱交換器10の構成について、図1を参照しながら説明する。熱交換器10は、車両の空調システムとして構成された冷凍サイクル(不図示)の一部を成す蒸発器として構成されている。熱交換器10には、冷凍サイクルの一部に配置された不図示のコンプレッサにより、熱媒体である冷媒が送り込まれる。熱交換器10は、送り込まれた冷媒を内部で蒸発させながら、冷媒と空気との間で熱交換を行うことにより空気を冷却するものである。熱交換器10は、上部タンク11と、下部タンク13と、チューブ110と、フィン120と、を備えている。
上部タンク11は、熱交換器10に対して供給された冷媒を一時的に貯留し、当該冷媒をそれぞれのチューブ110に供給するための容器である。上部タンク11は、細長い棒状の容器として形成されている。上部タンク11は、その長手方向を水平方向に沿わせた状態で、熱交換器10のうち上方側部分に配置されている。
上部タンク11の長手方向における一端側には、供給部12が形成されている。供給部12は、外部から供給される冷媒を上部タンク11内に受け入れる部分である。供給部12には、熱交換器10に冷媒を供給するための不図示の配管が接続される。当該配管は、冷凍サイクルにおける上流側の膨張弁と、熱交換器10との間を繋ぐ配管である。
下部タンク13は、上部タンク11と略同一形状の容器である。下部タンク13は、上部タンク11からチューブ110を通って来た冷媒を受け入れるものである。下部タンク13は、上部タンク11と同様にその長手方向を水平方向に沿わせた状態で、熱交換器10のうち下方側部分に配置されている。
下部タンク13の長手方向における一端側には、排出部14が形成されている。排出部14は、熱交換器10において熱交換に供された後の冷媒を、下部タンク13から外部へと排出する部分である。排出部14には、熱交換器10から冷媒を排出するための不図示の配管が接続される。当該配管は、冷凍サイクルにおける下流側の圧縮機と、熱交換器10との間を繋ぐ配管である。
チューブ110は、扁平形状の断面を有する細長い管状の部材であって、熱交換器10に複数備えられている。チューブ110の内部には、冷媒の流れる流路(不図示)がその長手方向に沿って形成されている。それぞれのチューブ110は、その長手方向を鉛直方向に沿わせており、互いの主面を対向させた状態で積層配置されている。積層された複数のチューブ110が並ぶ方向は、上部タンク11の長手方向と同じである。
それぞれのチューブ110は、その一端が上部タンク11に接続されており、その他端が下部タンク13に接続されている。このような構成により、上部タンク11の内部空間と、下部タンク13の内部空間とは、それぞれのチューブ110内の流路によって連通されている。
冷媒は、チューブ110内の流路を通って上部タンク11から下部タンク13へと移動する。その際、チューブ110の外側を通過する空気との間で熱交換が行われ、これにより冷媒は液相から気相へと変化する。また、空気は冷媒との熱交換により熱を奪われて、その温度を低下させる。
尚、上部タンク11の内部空間、及び下部タンク13の内部空間が仕切り板によって複数に区分された構成とした上で、上部タンク11と下部タンク13との間を冷媒が往復しながら流れるような態様としてもよい。
フィン120は、金属板を波状に折り曲げることにより形成された部材であって、互いに隣り合うチューブ110の間に配置されている。波状であるフィン120のそれぞれの頂部は、チューブ110の表面に対して当接しており、且つろう接されている。このため、熱交換器10を通過する空気の熱は、チューブ110を介して冷媒に伝達されるだけでなく、フィン120及びチューブ110を介しても冷媒に伝達される。つまり、フィン120によって空気との接触面積が大きくなっており、冷媒と空気との熱交換が効率よく行われる。
フィン120は、互いに隣り合う2本のチューブ110の間に形成された空間の全体、すなわち、上部タンク11から下部タンク13に至るまでの全範囲に亘って配置されている。ただし、図1においてはその一部のみが図示されており、他の部分については図示が省略されている。
本実施形態では、熱交換器10を構成する複数の部材のうち、チューブ110とフィン120とが、次に説明する板状部材20を用いて形成されている。尚、チューブ110を形成する板状部材20と、フィン120を形成する板状部材20とは、その厚さについては互いに異なるのであるが、その外表面に形成された膜の構成については互いに同じである。尚、チューブ110及びフィン120の両方が板状部材20を用いて形成されているのではなく、いずれか一方のみが板状部材20を用いて形成されている構成としてもよい。また、チューブ110やフィン120以外の部材の一部も、板状部材20を用いて形成されている構成としてもよい。
図2を参照しながら、板状部材20の構成について説明する。板状部材20は、基材210と、水分防止膜220と、下地樹脂被膜230と、上地樹脂被膜240と、を備えている。
基材210は、アルミニウムによって形成された板状の部材であって、板状部材20の大部分を占めている。基材210は、例えばSUS等の他の金属によって形成されていてもよい。
基材210の表面には、次に述べる水分防止膜220等の複数層の被膜が形成されている。本実施形態では、これらの被膜は全て、チューブ110やフィン120のろう接が完了した後に形成される。図1において符号210Aが付されているのは、基材210の表面に形成されたアルミニウムの酸化被膜である。以下では、この酸化被膜のことを「酸化被膜210A」とも表記する。また、図1において符号210Bが付されているのは、ろう接の過程で表面に残留したフラックス残渣や、基材210の内側から表面に析出したSi、Zn、Mn等の成分である。以下では、これらのことを総じて「残留析出成分210B」とも表記する。
水分防止膜220は、基材210の表面(具体的には酸化被膜210Aの表面)を覆うように形成された被膜である。水分防止膜220は、無機材料であるアルミナ(酸化アルミニウム:Al23)をドライコーティングすることによって形成されている。無機材料としては、アルミナの他、酸化チタン(TiO2)、酸化タンタル(Ta25)、酸化バナジウム(V25)等が用いられてもよい。また、上記から選択された複数の無機材料によって水分防止膜220が形成されていてもよい。
水分防止膜220を形成するためのドライコーティングとしては、例えばALD(Atomic Layer Deposition)やCVD(Chemical Vapor Deposition)等の成膜法を用いることができる。
水分防止膜220は、無機材料をドライコーティングすることによって形成された緻密な被膜となっている。このため、表面側から上地樹脂被膜240等を水分が透過しても、当該水分は水分防止膜220によって遮断されるので、基材210の表面に到達することは無い。このように、本実施形態における水分防止膜220は、基材210の表面と樹脂被膜(下地樹脂被膜230及び上地樹脂被膜240)との間に形成された被膜であって、上記樹脂被膜を通過した水分が基材210の表面に到達することを防止するための被膜として形成されている。
上記のアルミナ、酸化チタン、酸化タンタル、酸化バナジウムは、いずれも、基材210に白錆が生じることを防止する「防錆成分」としても機能し得る材料である。このような防錆成分を含む無機材料によって水分防止膜220を形成することで、基材210の耐食性をより向上させることができる。更に、上記材料のうち酸化チタン及び酸化タンタルは、水分防止膜220の成分が、隣接する他の被膜(本実施形態では下地樹脂被膜230)へと溶出してしまうことを防止する機能をも有している。
下地樹脂被膜230は、次に述べる上地樹脂被膜240の密着性を確保するために、上地樹脂被膜240の下地として形成される被膜、すなわち、所謂「プライマ」として機能する被膜である。下地樹脂被膜230は樹脂によって形成されている。下地樹脂被膜230は、水分防止膜220と共に基材210の表面を覆うことで、基材210の耐食性を向上させる機能を有している。下地樹脂被膜230は、次に述べる上地樹脂被膜240と共に、本実施形態における「樹脂被膜」に該当する。
下地樹脂被膜230は、水分防止膜220が形成された後の板状部材20を、樹脂材料からなる液中に浸漬してから取り出し、当該液を加熱によって硬化させることにより形成される。次に述べる上地樹脂被膜240についても同様である。
上地樹脂被膜240は、下地樹脂被膜230の表面を更に外側から覆うように形成された被膜である。上地樹脂被膜240は、基材210の表面を覆う複数の被膜のうち最も外側に形成されている。本実施形態における上地樹脂被膜240はPVA(Polyvinyl Alcohol)によって形成されているのであるが、PVP(Polyvinyl Pyrrolidone)等の他の樹脂によって形成されていてもよい。
上地樹脂被膜240の表面Sは親水性を有している。表面Sに親水性を持たせるためには、上地樹脂被膜240そのものを親水性の材料によって形成してもよく、上地樹脂被膜240を形成した後、表面Sに親水性を付与するための表面処理を施してもよい。
本実施形態では、チューブ110やフィン120を構成する板状部材20の表面Sが親水性を有している。このため、チューブ110及びフィン120からなる熱交換コア部の表面(つまり表面S)に、結露によって付着した水(凝縮水)が、当該表面に滞留しにくく、排水されやすくなっている。これにより、熱交換器10のチューブ110やフィン120に沿って通過する空気の流れが、滞留した水によって妨げられてしまうことが防止される。
基材210の表面と下地樹脂被膜230との間に水分防止膜220を形成することの効果について、図4に示される比較例を参照しながら説明する。図4の比較例では、基材210の表面(具体的には酸化被膜210Aの表面)を直接覆うように下地樹脂被膜230が形成されており、水分防止膜220は形成されていない。
このような構成においては、結露によって表面Sに付着した水が、樹脂である上地樹脂被膜240及び下地樹脂被膜230を透過して、基材210にまで到達してしまう。図4では、このように水が透過する経路が矢印AR1で示されている。
下地樹脂被膜230と基材210との境界部まで水が到達すると、下地樹脂被膜230の密着性が水分の影響によって低下してしまう。また、上記境界部に存在する残留析出成分210Bが、水分によって拡散し、下地樹脂被膜230や上地樹脂被膜240の内部にまで到達してしまうこともある。図4では、このように残留析出成分210Bが拡散する経路が矢印AR2、AR3で示されている。
上記のような残留析出成分210Bの拡散が生じると、下地樹脂被膜230や上地樹脂被膜240の機能が低下してしまうことに加えて、各被膜同士の密着性が低下してしまうという問題も生じる。
これに対し、本実施形態に係る板状部材20では、基材210の表面と下地樹脂被膜230との間に水分防止膜220が形成されている。このため、図4の矢印AR1のような経路で透過する水は、水分防止膜220によって遮断されるので、基材210の表面に到達することが無い。また、基材210の表面が水分防止膜220によって覆われているので、図4の矢印AR2、AR3のような経路で残留析出成分210Bが拡散することもない。これにより、それぞれの被膜の機能を十分に発揮させることができ、且つ、それぞれの被膜の密着性を十分に確保することもできる。
尚、基材210の表面には、防錆のための膜として化成被膜が形成され、当該化成被膜の表面を覆うように複数の樹脂被膜が形成されることもある。このような構成においては、基材210の表面に存在する残留析出成分210Bが、ウェットコーティングされた化成被膜を通じて樹脂被膜へと到達することがある。これを防止するためには、化成被膜の更に内側に、本実施形態のような水分防止膜220を形成することとすればよい。
第2実施形態について、図3を参照しながら説明する。本実施形態では、水分防止膜220の表面を直接覆うように上地樹脂被膜240が形成されており、下地樹脂被膜230が形成されていない点において第1実施形態と異なっている。
本実施形態では、水分防止膜220に酸化バナジウムが添加されており、これにより、水分防止膜220には耐食性を向上させる機能が付与されている。換言すれば、第1実施形態の下地樹脂被膜230が有していた機能が、本実施形態では水分防止膜220に付与されている。このため、本実施形態では下地樹脂被膜230が省略されている。第1実施形態における水分防止膜220は、プライマである下地樹脂被膜230を補完するものであったが、本実施形態における水分防止膜220は、プライマである下地樹脂被膜230に置き換わるもの、ということができる。
このような構成でも、水分防止膜220によって水分や残留析出成分210Bの移動が遮断されるので、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。
第1実施形態の下地樹脂被膜230には、一般的なプライマと同様に、密着性を向上させるための界面活性剤が含まれる。しかしながら、界面活性剤の有する水酸基は、被膜の耐熱性を低下させることが知られている。本実施形態では、このような下地樹脂被膜230を省略することにより、被膜の耐熱性を向上させている。
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
20:板状部材
210:基材
220:水分防止膜
230:下地樹脂被膜
240:上地樹脂被膜

Claims (6)

  1. 基材(210)と、
    前記基材の表面を覆うように形成された樹脂被膜(230,240)と、を備え、
    前記基材の表面と前記樹脂被膜との間には、前記樹脂被膜を通過した水分が前記基材の表面に到達することを防止するための水分防止膜(220)が形成されている板状部材。
  2. 前記水分防止膜は、無機材料によって形成された膜である、請求項1に記載の板状部材。
  3. 前記水分防止膜は、前記無機材料をドライコーティングすることによって形成された膜である、請求項2に記載の板状部材。
  4. 前記水分防止膜には、前記基材に錆が生じること防止するための防錆成分が含まれている、請求項3に記載の板状部材。
  5. 前記防錆成分には、酸化アルミニウム、酸化チタン酸化、酸化タンタル、酸化バナジウム、のうちのいずれかが含まれている、請求項4に記載の板状部材。
  6. 熱媒体と空気との間で熱交換を行う熱交換器(10)であって、
    内部を熱媒体が流れる複数のチューブ(110)と、
    互いに隣り合う前記チューブの間に配置されたフィン(120)と、を備え、
    前記チューブ及び前記フィンのうち少なくとも一方が、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の板状部材を用いて形成されている熱交換器。
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