JP3734335B2 - 熱交換器用表面処理フィン材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は表面に皮膜が形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金材等からなる熱交換器用表面処理フィン材及びその製造方法に関し、特に、家庭用の熱交換器用フィン材として好適である親水性が優れた熱交換器用表面処理フィン材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱交換器は、ルームエアコン、パッケージエアコン、冷凍ショーケース、冷蔵庫、オイルクーラー及びラジエータ等を代表として、種々の分野において利用されている。これらの熱交換器において、ルームエアコン及びパッケージエアコン等の熱交換器用のフィン材としては、熱伝導性及び加工性が優れたアルミニウム又はアルミニウム合金材が使用されている。以下、アルミニウム及びアルミニウム合金材を総称してアルミニウム材という。
【0003】
この熱交換器用フィン材の表面には、通常、腐食の発生を防止するための防食処理が施されている。また、冷房運転時の凝縮水がフィン内に留まることを防止するために、粒状水滴の落下性を高める撥水性向上の表面処理、又は水膜状水滴の落下性を高める親水性向上の表面処理がフィン表面に施されている。
【0004】
親水性を高める表面処理をアルミニウム材表面に施すと、このアルミニウム材からなるフィンに付着した水滴の接触角を小さくすることができる。図1は、平面上の水滴の接触角を示す模式図であり、図2は熱交換器の熱交換部を示す模式図である。図1に示すように、接触角θとは水滴2の表面における平面1から立ち上がった点Aにおける水滴との接線22と平面1とがなす角度をいい、接触角θが小さいほど水膜が薄くなり、親水性が良好となる。図2に示すような熱交換器の熱交換部においては、フィン3を貫くように通っている銅管4の中を矢印で示す方向に冷媒が流れるため、フィン3の表面に水滴が結露するが、親水性が良好な場合は、この水滴の落下性が良好となる。従って、フィン3に付着した水滴又は水膜によって送風時の抵抗が高くなることを防止することができ、優れた熱交換器特性を得ることができる。
【0005】
図3(a)乃至(c)はフィン表面の水滴付着状態を示す模式図である。図3において、下向きの矢印の長さは一定時間に水滴が落下する距離に比例する。図3(a)に示すように、フィン5の親水性が良好な場合は水滴6の接触角が低いので、水滴6は容易にフィン5に沿って落下する。このため、水滴6が送風を遮ることがないので、送風抵抗が小さくなる。一方、親水性が劣るフィンからなる熱交換器では、図3(b)に示すように、水滴8の接触角が高いために水滴8がフィン7に留まったり、図3(c)に示すように、水滴11がフィン9とこのフィンに隣接するフィン10との両者に接触して留まったりするために、水滴が送風を遮り、送風抵抗が著しく増加する。
【0006】
ところで、フィン材の親水性を高める表面処理方法としては、以下に示す方法がある。例えば、水溶性有機高分子物質とケイ酸塩化合物との混合皮膜層をアルミニウム材表面に設ける方法(特公平3−77440号公報)、熱硬化性樹脂にシリカ微粒子を分散させた皮膜をアルミニウム材表面に塗布する方法(特開平3−269072号公報)がある。
【0007】
しかし、上述したケイ酸塩を使用する処理の場合には、親水性は良好なものの、硬質なシリカを含むため、フィンの成形加工における工具摩耗が大きくなり、また冷房の運転開始時において、水ガラス特有の微弱な異臭が発生してしまう。更に、シリカ微粒子を含む樹脂処理は、臭気の発生は少ないものの工具摩耗が大きく、また、表面に付着する水滴の接触角が高くなり、親水性が低下してしまう。
【0008】
また、アルミニウム材の表面にアクリル樹脂層及びセルロース樹脂層を順次形成し、親水性及び耐食性を向上させる方法(特公平4−24632号公報)、水溶性有機樹脂とノニオン系界面活性剤を含有する厚さが0.05乃至5μmの親水性皮膜を形成する方法(特開平4−316837号公報)、親水性有機化合物に、メラミン樹脂、尿素樹脂又はベンゾグアナミン樹脂を含有する有機硬化剤を添加した親水性皮膜を形成させる方法(特公平5−15176号公報)もある。
【0009】
これらの処理方法では、工具摩耗が少なく、臭気発生が殆どないという特性を有するものの、冷房運転と暖房運転とを交互に繰り返すと、フィン表面に付着した水滴の接触角が高くなり親水性が低下してしまう。また、特開平4−316837号公報に記載された技術のように、界面活性剤を使用する場合には、泡立ち等による品質むら及び生産性の低下等の問題が生じる。また、界面活性剤が溶出した場合には、親水性が著しく低下してしまう。更に、熱交換器用フィン材に被覆して使用された場合には、結露水又はその結露水により溶出された成分のために、プラスチック製ドレンパンの表面に変質及びひび割れが発生することがある。
【0010】
この他、カルボキシメチルセルロース樹脂に、ポリアクリル酸、N−メチロールアクリルアミド及びポリエチレンオキサイド等を添加した混合皮膜をアルミニウム材表面に塗布する方法(特開平6−322552号公報)、ポリグルタミン酸及び塩基性化合物を必須成分として、必要に応じて水性樹脂を含有する皮膜を形成する方法(特開平7−102188号公報)、10%以上のポリオキシアルキレン鎖を有する樹脂と特定の水性樹脂との混合皮膜を設ける方法(特開平7−102189号公報)、アルミニウム材の上に溶解性パラメータが互いに異なる水溶性樹脂を2種以上混合し、表面が微細に粗面化された樹脂系皮膜を形成し、低接触角を維持する方法(特開平7−270092号公報)、分子量が規定されたカルボキシメチルセルロース及びポリエチレングリコールの水溶液をアルミニウム材の表面に塗布する方法(特開平8−261688号公報)、分子量が規定されたエポキシ系架橋剤とポリビニル系樹脂との混合物により表面に微細な孔を有する親水性皮膜を形成する方法(特開平9−26288号公報)が提案されている。
【0011】
これらの技術においては、親水性皮膜中の樹脂がポリエチレングリコール又はポリエチレンオキサイド等のエチレンオキサイド基を有する樹脂であり、従来の樹脂系処理皮膜を形成したフィン材の問題点であった良好な親水性の持続性を向上した点で画期的であり、水ガラス系の処理を施したものと同様に、優れた親水性を得ることができる。特に、特開平7−270092号公報及び特開平9−26288号公報に記載された技術においては、樹脂皮膜により表面形態をスリガラス状に微細に粗面化されているので親水性が優れ、従来の水ガラス系の処理を施したフィン材の問題点であった工具磨耗及び臭気等の問題も殆どない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のエチレンオキサイド基を有する樹脂を使用する技術によれば、低接触角を得るため皮膜中に5乃至50%程度の水溶出分が含有されている。このため、蒸発運転する際に熱交換器のフィン表面が結露するような場合には、結露水に伴って親水性皮膜から水溶出分が溶出する。
【0013】
特に、熱交換器が組み立てられた後には、銅管の溶接箇所の漏れの有無及び場所を判断するために、銅管内に窒素ガス等で圧力をかけ熱交換器を水没させて、気泡の発生具合を確認するのだが、このときにも水溶出分が溶出してしまう。このとき、トリクレン等の溶剤によりフィンが脱脂され、残油分が多い揮発性プレス油又は鉱物油を使用して加工されていた場合には、表面処理皮膜の水溶出分が残油分を乳化するので漏れ確認の際に水没水が濁ってしまう。このため、漏れ確認を行えないという問題点がある。また、残油分が少ない揮発性プレス油を使用して加工されていた場合には、加工後の乾燥の際に揮発性プレス油が除去されることが多いものの、脱脂及び揮発油の乾燥を行わずに漏れ確認を行う大型の空調器の場合には、試験槽中の水が濁って漏れ確認を行いづらいという問題点がある。
【0014】
また、エチレンオキサイド基を有する樹脂を使用した樹脂系親水処理は焼付け等の熱処理により変質して、プラスチック製のドレンパンの表面に変質及びひび割れ等の悪影響を及ぼすことがあり、耐熱性にも問題がある。
【0015】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、低臭気及び低工具摩耗性を維持しつつ、親水性が優れ水溶出分の量が少なく熱処理によるプラスチック部材に悪影響を及ぼす物質の発生量も少ない熱交換器用表面処理フィン材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る熱交換器用表面処理フィン材は、その表面に形成されたクロメート皮膜及びジルコニウム系皮膜のいずれか一方を含有する耐食皮膜と、前記耐食皮膜の上に形成され水溶出分の量が0.3mg/dm 2 以下である親水性樹脂皮膜と、ブロックイソシアネートにより変性された水溶性ポリエーテルポリオール化合物を前記親水性樹脂皮膜の上に塗布した後焼き付けされて形成された樹脂皮膜とを有することを特徴とする。
【0017】
本発明においては、アルミニウム板又はアルミニウム合金板の表面に、耐食皮膜が形成されているので、表面処理フィン材の耐食性を向上させることができる。また、耐食皮膜の上にエチレンオキサイド基を1分子内に4個以上有する親水性樹脂皮膜が設けられており、その水溶出分の量が規定されているので、親水性が優れていると共に、試験槽中の水の濁りを抑制することができる。更に、耐食皮膜及び親水性樹脂皮膜の上に水溶性樹脂皮膜が形成されているので、熱交換器用フィン材の加工性及び耐熱性等が向上する。また、本発明においては、珪酸塩及びシリカ微粒子を含む皮膜を形成する必要がないので、臭気の発生及び工具の磨耗を防止することができる。
【0018】
本発明に係る熱交換器用表面処理フィン材の製造方法は、その表面にクロメート皮膜及びジルコニウム系皮膜のいずれか一方を含有する耐食皮膜を形成する工程と、前記耐食皮膜の上に親水性樹脂皮膜を240℃以上で焼付けた後前記親水性樹脂皮膜を水洗してその水溶出分の量を0.3mg/dm2以下とする工程と、前記親水性樹脂皮膜の上にブロックイソシアネートにより変性された水溶性ポリエーテルポリオール化合物を塗布した後焼き付けすることにより樹脂皮膜を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明における熱交換器用フィン材について説明する。本発明において、アルミニウム材等の表面に形成する耐食皮膜は、クロメート皮膜又はジルコニウム系皮膜を使用する。クロメート皮膜としては、例えば、リン酸クロメート皮膜及びクロム酸クロメート皮膜を使用することができ、アルミニウム材等の表面に、樹脂分を添加した塗布型のクロメート処理を施してもよい。一方、ジルコニウム系皮膜は、反応型のジルコニウム系化成処理又は塗布型のジルコニウム処理によって形成することができる。
【0020】
この耐食皮膜の被着量は耐食性が得られる範囲であれば、特に制限されるものではないが、被着量が多すぎると加工性が低下する。従って、耐食皮膜の被着量は、Cr換算値及びZr換算値として、共に、約10乃至60mg/m2であることが好ましい。
【0021】
また、本発明においては、耐食皮膜の上に親水性樹脂皮膜を形成するが、水ガラスを使用した場合と同等の接触角を得ると共に、加工性を向上させるために、この親水性樹脂皮膜は1分子内にエチレンオキサイド基を4個以上有する樹脂を含有しており、親水性樹脂皮膜中の水溶出分の量は0.3mg/dm2以下である。1分子内のエチレンオキサイド基が4個未満であると、エチレンオキサイド基による加工性を向上させる効果が不十分である。また、親水性を良好にすることができる微細凹凸が形成されにくい。従って、1分子内のエチレンオキサイド基は4個以上とする。
【0022】
また、本願発明者等がルームエアコン実機における溶出量と気密試験槽中の水の濁り及びドレンパンへの悪影響との関係を詳細に調査した結果、親水性樹脂皮膜の水溶出分の量が0.3mg/dm2以下であれば、濁りは極めて少なくドレンパンへの悪影響も軽微となることを見出した。一方、親水性樹脂皮膜中の水溶出分の量が0.3mg/dm2を超えると、親水性樹脂皮膜からの溶出量が増加し気密試験槽中の水の濁りが多くなる。また、ルームエアコン室内器等において、ドレンパンに表面の変質及びひび割れ等の悪影響を与えることもある。従って、親水性樹脂皮膜中の水溶出分の量は0.3mg/dm2以下とする。
【0023】
更に、親水性樹脂皮膜の加工性、水溶出性及び耐熱性を向上させドレンパンへの悪影響を著しく減少させるために、親水性樹脂皮膜の上にブロックイソシアネートにより変性されたポリエーテルポリオール化合物を主成分とする水溶性樹脂皮膜を形成することができる。ブロックイソシアネートにより変性されたポリエーテルポリオール化合物は焼付け時にブロックイソシアネート基が架橋し網目のような構造を形成するため、エチレンオキサイド基を4個以上有する樹脂を使用した場合と比して、加工性、水溶出性及び耐熱性が向上する。また、ドレンパン表面の変質及びひび割れ等の悪影響が減少する。
【0024】
親水性樹脂皮膜の上にこの水溶性樹脂皮膜を形成する場合、熱交換器用フィン材の塗装性を向上させるために、ドレンパン等のプラスチック部材へ悪影響を及ぼさず親水性樹脂皮膜の親水性を阻害しない水溶性の樹脂を併用することができる。例えば、ポリアクリル酸及びその塩、ポリメタクリル酸、ポリアミド樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール並びにセルロース樹脂等が挙げられる。
【0025】
このように親水性樹脂皮膜の上に上述の水溶性皮膜等を形成することにより、プラスチック部材への悪影響及び気密試験槽中の水の濁り等の問題が発生しない範囲において、加工性を更に向上させることができる。
【0026】
次に、上述の熱交換器用表面処理フィン材の製造方法について説明する。先ず、アルミニウム材等の表面に耐食皮膜としてクロメート皮膜又はジルコニウム系皮膜を含有する皮膜を形成する。次に、この耐食皮膜の上に1分子内にエチレンオキサイド基を4個以上有し皮膜中の水溶出分の量が0.3mg/dm2以下となるように親水性樹脂皮膜を形成する。この親水性樹脂皮膜の形成方法としては、例えば、エポキシ系架橋剤とポリビニル系樹脂との混合物を塗布する方法及び溶解性パラメータが7乃至9(cal/cm3)0.5である高分子化合物と12乃至16(cal/cm3)0.5である高分子化合物との混合物を塗布する方法等が挙げられる。また、ポリグルタミン酸と塩基性化合物との混合物を塗布する方法を用いてもよい。
【0027】
そして、240乃至300℃で焼付けし、その後に水洗を行う。焼付け温度が240℃未満であると、溶出量が増加し気密試験槽中の水に濁りが発生する。また、ルームエアコン室内器においては、ドレンパンへの悪影響が発生することもある。つまり、フィン材等の表面処理方法としてコイルフォームで塗装が施されるプレコート方式が主流となっているが、この方式によると、焼付け温度が低い場合には、後工程の水洗浄の際に水溶出分が多く溶出するものの、再付着する量も多い。このため、結果的に残留する水溶出分の量が多くなってしまう。一方、焼付け温度の上限は制限されるものではないが、300℃を超えると、焼付け時間によっては材料特性に影響が出たり、樹脂皮膜が熱により黄変し外観上商品価値が低下したりする。従って、焼付け温度の下限を240℃と規定すると共に、上限は300℃であることが好ましい。
【0028】
また、水洗浄を行うことにより、親水性樹脂皮膜の水溶出分の量を0.3mg/dm2以下とする。水溶出分の量が0.3mg/dm2を超えると、前述のように、水溶出量が増加し気密試験槽中の水の濁りが多くなる。また、ルームエアコン室内器等において、ドレンパンに表面の変質及びひび割れ等の悪影響を与えることもある。従って、親水性樹脂皮膜中の水溶出分の量は0.3mg/dm2以下とする。
【0029】
更に、親水性樹脂皮膜の上にブロックイソシアネートにより変性されたポリエーテルポリオール化合物を主成分とする水溶性樹脂皮膜を形成することにより熱交換器用表面処理フィン材が完成する。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、その特許請求の範囲から外れる比較例と比較して説明する。
【0031】
先ず、板厚が0.110mmであるJIS A1100 H22のアルミニウム板材の表面に、耐食皮膜(第1層)及び親水性樹脂皮膜(第2層)を順次積層し、一部の試験材については、その表面に水溶性樹脂皮膜(第3層)を形成して、熱交換器用フィン材を作製した。第1層及び第2層の皮膜の種類を下記表1及び2に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
なお、上記表1における耐食皮膜のうち、T2の塗布型処理においては、ロールコーターを使用して皮膜原料を塗装し、200℃で20秒間焼付けることにより皮膜を形成した。そして、T1及びT2のクロメート処理においては、その被着量をCr換算値で20mg/m2とした。
【0035】
また、上記表2における親水性樹脂皮膜のうち、S1の親水処理においては、被着量を実施例1及び2では5000mg/m2とし、比較例5乃至7では10mg/dm2として、下記表3に示す温度で30秒間焼付けることにより皮膜を形成した。S2の水ガラス親水処理においては、被着量をSiO2換算値で200mg/m2とし、200℃の温度で20秒間焼付けることにより皮膜を形成した。
【0036】
次いで、シャワー水洗を5秒間行い、5分間水没させた後の重量減少量から水溶出分の量を評価した。
【0037】
第1層及び第2層の組み合わせを下記表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
更に、第3層を形成したものについては、上記表3に示す組み合わせで第1層及び第2層を形成した後、下記の種々の組成の水溶性樹脂皮膜の原料を塗布し、200℃で20秒間焼付けることにより皮膜を形成した。
【0040】
実施例1
イソシアネート基をメチルエチルケトオキシムでブロックされた1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートにより変性されたポリエチレングリコール樹脂PEG20000。
【0041】
実施例2
イソシアネート基をメチルエチルケトオキシムでブロックされた1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートにより変性されたポリエチレングリコール樹脂PEG20000と、ポリアクリル酸カリウム(重合度:4500)との混合皮膜。その重量比は10:1である。
【0042】
比較例3乃至5
第3層は形成せず。
【0043】
比較例6
和光純薬製のポリエチレングリコール樹脂PEG6000(エチレンオキサイド基:約136個)。
【0044】
このように形成された第3皮膜の皮膜量を下記表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
次に、作製された表面処理フィン材の試験材について、親水性、加工性、水没水の濁り、ドレンパンの臨界歪み値及び臭気を評価した。以下に各評価方法について説明する。
【0047】
親水性については、試験材が作製されたときの接触角を測定した。更に、水道水の流水中(流量:1リットル/分)に7時間浸漬し、80℃で17時間乾燥する工程を7工程行った後に再度接触角を測定した。
【0048】
加工性については、先ず、試験材を日高精機製のしごき方式のドローレス金型を使用し、プレスの条件としては、昭和シェル製の加工油T7K18Bを使用して、250spmの加工速度で、しごき率を50%として、内径が9.80mmの2列10段の成形フィンを作製し調査した。図4(a)及び(b)はフィン材を示す図であり、(a)は模式的斜視図、(b)は模式的断面図である。平らなフィン材の片面に円筒形状の突起カラー部が形成されている。加工性の評価は、このようなカラー30を加工成形して、成形品の外観、カラー内面の外観を評価した。カラー内面に剥離が生じず、外観が良好であったものを○、若干カラーの内部に剥離が生じたものを△、カラーの内面に焼付きが生じたものを×とした。
【0049】
水没水の濁りについては、上述のようにしてカラーを成形された500枚の試験材を、加工油が付着した状態で20リットルの水道水に水没させ、水没水の濁り具合から判断した。濁りが無い場合を○、若干濁りが生じた場合を△、白濁した場合を×とした。
【0050】
ドレンパンの臨界歪み値については、ドレンパンとして一般的に使用されているABS樹脂(板厚:2mm、三菱化成製のYT412C)を歪み値が1%以下の範囲で調査可能な治具に取り付け、表面積が2m2のサンプルを300mlの純水で1分間洗浄した。そして、サンプルの水溶出分が抽出された液をABS樹脂に塗布し、72時間放置した後に割れが発生する限界の歪み値(臨界歪み値)を測定した。
【0051】
また、臭気については、水道水に24時間浸漬した後の試験材に呼気を吹きかけ、匂いをかぐ方法により評価し、臭気がなかったものを○とし、若干臭気があったものを×とした。これらの結果を表5に示す。
【0052】
【表5】
【0053】
表5に示すように、実施例1及び2においては、本発明に係る表面処理が施されているので、親水性が優れていると共に、水没水の濁りが少ない。また、加工性も優れており、ABS樹脂表面にひび割れが発生する臨界歪み値が大きくなった。
【0054】
一方、比較例3においては、第2層に水ガラス親水処理が施されているので、加工性が劣っていると共に、臭気が発生した。
【0055】
比較例4では、第1層としてアクリル系プライマーを、第2層としてセルロース樹脂を使用しているが、親水性及びその持続性並びに加工性が劣っていると共に、水溶出分の量が本発明範囲の上限を超えているので、水没水に濁りが発生した。
【0056】
比較例5では、水溶出分の量が本発明範囲の上限を超えているので、水没水に濁りが発生すると共に、臨界歪み値が低くなった。
【0057】
比較例6では、第2層が本発明範囲の下限未満の温度で焼付けられているので、水溶出量が多く、水没水に濁りが発生すると共に、臨界歪み値が低くなった。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、熱交換器用フィン材はアルミニウム材等の表面に、適切な耐食皮膜、親水性皮膜及び水溶性皮膜が積層された構造を有するので、樹脂系表面処理材の特徴である低臭気及び低工具摩耗性を維持することができると共に、親水性が優れており、気密試験槽中の水の濁りを抑制することができる。また、水溶出分の量が少なくエアコンのプラスチック部材等への悪影響を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】平面上の水滴の接触角を示す模式図である。
【図2】熱交換器の熱交換部を示す模式図である。
【図3】フィン表面の水滴付着状態を示す模式図であり、(a)は親水性が良好な場合、(b)は親水性が劣る場合、(c)は更に劣る場合を示す図である。
【図4】フィン材を示す図であり、(a)は模式的斜視図、(b)は模式的断面図である。
【符号の説明】
1;平面
2、6、8、11;水滴
3、5、7、9、10;フィン
4;銅管
22;接線
30;カラー
Claims (2)
- その表面に形成されたクロメート皮膜及びジルコニウム系皮膜のいずれか一方を含有する耐食皮膜と、前記耐食皮膜の上に形成され水溶出分の量が0.3mg/dm 2 以下である親水性樹脂皮膜と、ブロックイソシアネートにより変性された水溶性ポリエーテルポリオール化合物を前記親水性樹脂皮膜の上に塗布した後焼き付けされて形成された樹脂皮膜とを有することを特徴とする熱交換器用表面処理フィン材。
- その表面にクロメート皮膜及びジルコニウム系皮膜のいずれか一方を含有する耐食皮膜を形成する工程と、前記耐食皮膜の上に親水性樹脂皮膜を240℃以上で焼付けた後前記親水性樹脂皮膜を水洗してその水溶出分の量を0.3mg/dm2以下とする工程と、前記親水性樹脂皮膜の上にブロックイソシアネートにより変性された水溶性ポリエーテルポリオール化合物を塗布した後焼き付けすることにより樹脂皮膜を形成する工程とを有することを特徴とする熱交換器用表面処理フィン材の製造方法。
Priority Applications (1)
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