以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
(実施の形態1)
[衛生洗浄装置およびトイレ装置の全体構成]
まず、本発明の実施の形態1に係る衛生洗浄装置の構成について、図1および図2に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る衛生洗浄装置101とこれを備えるトイレ装置100の外観構成を模式的に示す斜視図であり、図2は、図1に示す衛生洗浄装置101のうち、本体部110および遠隔操作部120の制御系統を模式的に示すブロック図である。
トイレ装置100は、トイレットルーム内に設置され、図1に示すように、本実施の形態では、衛生洗浄装置101、入室センサ102、および便器103により構成されている。便器103は、トイレットルーム内に固定されており、図示されない下水道の配管に接続されている。この便器103に対して衛生洗浄装置101が取り付けられている。また、入室センサ102は、トイレットルーム内の図示されない入口の壁面等に固定して取り付けられている。入室センサ102は、衛生洗浄装置101との間で無線により通信が可能となっており、使用者がトイレットルーム内に入室したことを検出し、衛生洗浄装置101に送信する。衛生洗浄装置101は、この入室の検出に基づいて、所定の制御を行うよう構成されている。入室センサ102の具体的な構成は特に限定されず、公知の構成が好適に用いられる。本実施の形態では、例えば反射型の赤外線センサが用いられ、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検出し、本体部110に送信する。
衛生洗浄装置101は、図1に示すように、本体部110、遠隔操作部120、便座部130および便蓋部140を備えている。本体部110は、図2に示すように、洗浄水噴出部30、温風乾燥部40、空気噴射部50、制御部60A、および検出センサ部70により構成されている。洗浄水噴出部30は、遠隔操作部120の操作により、倒伏位置にある便座部130に着座した使用者の局部に対して、洗浄水を噴出し、局部を洗浄する。温風乾燥部40は、洗浄水噴出部30により局部を洗浄した後に、局部およびその周囲に向かって温風を送風し、局部およびその周囲を乾燥する。空気噴射部50は、洗浄水噴出部30により局部を洗浄した後、温風乾燥部40による温風の送風の開始と同時、あるいは送風が開始された直後に、局部に加圧空気(あるいは圧縮空気、以降、単に「エア」とする)を噴射し、局部およびその周囲に付着する洗浄水の水滴を除去する。
なお、本実施の形態では、使用者の局部およびその周囲のうち、洗浄水噴出部30により洗浄水が噴出される範囲を「被洗浄面」と称し、空気噴射部50によりエアが噴射される範囲を「被乾燥面」と称する。
前記被洗浄面および前記被乾燥面は、いずれも使用者の局部を中心とした体表面であるが、特に本実施の形態においては、「被洗浄面」の範囲は、人体局部およびその周辺のうち使用者の排泄により汚れうる範囲であることが好ましい。この「被洗浄面」の範囲は、使用者の体型の分布、便器の大きさ、便器の形状、洗浄水の吐出量範囲、洗浄水の吐出圧範囲などを考慮して、実験およびシミュレーションのうちの何れかにより予め求めて設定しておいてもよい。また、この「被洗浄面」の範囲は、排泄により汚れうる範囲を検知可能なセンサなど(排泄物中の水分などを検知する赤外線センサなど)により、使用者が衛生洗浄装置を使用する度毎にセンシングして最適な範囲を求める構成としてもよい。
また、本実施の形態における「被乾燥面」の範囲は、人体局部およびその周辺のうち洗浄水により洗浄処理された際に洗浄水で濡れうる範囲であることが好ましい。さらに、「被乾燥面」の範囲(面積)が「被洗浄面」の範囲(面積)以上であり、かつ、「被乾燥面」に被洗浄面の全範囲が含まれるよう設定されていることが好ましい。なお、この「洗浄水で濡れうる範囲」には、通常、上述の「被洗浄面」の範囲、すなわち、「人体局部およびその周辺のうち使用者の排泄により汚れうる範囲」が含まれるが、「洗浄水で濡れうる範囲」に「被洗浄面」の範囲が含まれない場合には、「被乾燥面」の範囲は、「洗浄水で濡れうる範囲」と「被洗浄面」の範囲とを含む範囲であることが好ましい。
この「被乾燥面」の範囲も、「被洗浄面」の範囲を求める場合と同様に、使用者の体型の分布、便器の大きさ、便器の形状、加圧空気の吐出量範囲、加圧空気の吐出圧範囲などを考慮して、実験およびシミュレーションのうちの何れかにより予め求めて設定しておいてもよい。また、この「被乾燥面」の範囲も、「被洗浄面」の範囲を求める構成と同様に、洗浄水で濡れうる範囲を検知可能なセンサなど(水分を検知する赤外線センサなど)により、使用者が衛生洗浄装置を使用する度毎にセンシングして最適な範囲を求める構成としてもよい。
また、図2には詳細に図示されないが、本体部110は、入室センサ102および遠隔操作部120と無線で通信が可能となっている。それゆえ、本体部110が入室センサ102または遠隔操作部120から信号を受信することで、各種の操作情報や入室検出情報が制御部60Aに入力される。また、検出センサ部70からも制御用の各種の検出情報が入力される。制御部60Aは、前記操作情報および検出情報に基づき、洗浄水噴出部30、温風乾燥部40および空気噴射部50、並びに、検出センサ部70の動作を制御する。
本体部110は、本実施の形態では、樹脂等で形成されている筐体84内に、洗浄水噴出部30、温風乾燥部40、空気噴射部50、制御部60A、および検出センサ部70が収容されている構成となっている。また、本体部110には、図示されない電源回路部等も収容され、当該電源回路部に給電線85の一方が接続され、当該給電線85の他方には電源プラグ86が接続されている。電源プラグ86は、図1に示すように、コンセントに差し込まれ、これにより、本体部110に対して電力が供給される。
本体部110、便座部130および便蓋部140は、一体的に組み付けられて便器103の上面に設置される。便座部130および便蓋部140は、本体部110に回動自在に取り付けられており、便座部130が倒伏位置にあって、便蓋部140が起立位置ある状態で、使用者が便座部130に着座する。なお、便座部130および便蓋部140が倒伏位置から起立位置へ向かって回動することを「開く」といい、起立位置から倒伏位置へ向かって回動することを「閉じる」という。
便座部130は、本実施の形態では、内部に図示されない便座ヒータを備える構成となっている。これにより、便座部130に着座した使用者の臀部を暖めることができる。すなわち、本実施の形態における衛生洗浄装置101は、局部の洗浄および乾燥機能に加えて、暖房便座の機能も備えている。便座部130の具体的な構成は特に限定されないが、本実施の形態では、金属製の便座となっていると好ましい。この構成であれば、使用者がトイレットルームに入室したと同時に便座ヒータを動作させることで迅速に便座部130を暖めることができるので、待機電力が少なくてすむ。
本実施の形態では、便座部130が暖房便座であるので、図2には図示されないが、制御部60Aは、便座部130による暖房動作も制御するよう構成されている。特に、便座部130が金属製の便座であれば、入室センサ102による使用者の入室の検出をトリガーとして、便座部130の暖房を開始する制御が行われる。また、遠隔操作部120の操作により、便座部130の暖房温度を変更することもできる。
なお、便器103および便蓋部140の具体的構成は特に限定されず、トイレ装置および衛生洗浄装置の分野で公知の形状、材質等のものが用いられる。
[衛生洗浄装置の基本構成]
次に、本実施の形態に係る衛生洗浄装置101の基本構成について、図1から図7に基づいて説明する。図3(a)および(b)は、衛生洗浄装置101が備える遠隔操作部120の具体的な構成を示す正面図である。図4は、衛生洗浄装置101が備える洗浄水噴出部30の模式的な構成と制御系統の概要とを示すブロック図である。図5は、衛生洗浄装置101が備える温風乾燥部40および空気噴射部50の模式的な構成と制御系統の概要とを示すブロック図である。図6は、衛生洗浄装置101が備える共用ノズル部20の具体的な構成を示す斜視図である。図7は、衛生洗浄装置101が備える制御部60Aの具体的な構成と、温風乾燥部40および空気噴射部50の要部を制御する構成とを示すブロック図である。
[遠隔操作部]
遠隔操作部120は、図1、図3(a)および(b)に示すように、長方形の板状であって、長辺方向が水平方向に、短辺方向が鉛直方向に沿うように、壁面に固定される。遠隔操作部120の正面には、後述するように、操作用の各種スイッチ、表示部等が設けられている。なお、図示されない背面はトイレットルーム内の壁面に対向する面となる。
遠隔操作部120は、図3(a)および(b)に示すように、コントローラ本体部121およびコントローラ蓋部122から少なくとも構成されている。遠隔操作部120の正面は、その長辺方向に沿って上下の領域に2分割され、その上部では、コントローラ本体部121の前面が露出し、その下部では、コントローラ蓋部122によりコントローラ本体部121が覆われている。コントローラ蓋部122は図示されないヒンジ部により、コントローラ本体部121に対して開閉自在に設けられている(図3(a)において矢印で図示)。
図3(a)に示すように、遠隔操作部120の正面の上部であるコントローラ本体部121の上部には、乾燥モード選択スイッチ220a,220b,220c、強さ調整スイッチ222,223および位置調整スイッチ225,226が設けられている。乾燥モード選択スイッチ220a,220b,220cのそれぞれの図中向かって左側には、いずれの乾燥モードが選択されているかを示すLED表示部221a,221b,221cが設けられている。また、強さ調整スイッチ222および223の上側には、洗浄強さを段階的に示す洗浄強さ表示部224が設けられ、位置調整スイッチ225および226の上側には、洗浄位置を示す洗浄位置表示部227が設けられている。コントローラ蓋部122が閉じられた状態では、遠隔操作部120の正面の下部であるコントローラ蓋部122の外面には、停止スイッチ211、乾燥スイッチ214、おしりスイッチ212およびビデスイッチ213が設けられている。
図3(b)に示すように、コントローラ蓋部122が開かれた状態では、露出しているコントローラ本体部121の下部には、停止スイッチ211、乾燥スイッチ214、おしりスイッチ212およびビデスイッチ213に加えて、便蓋部自動開閉スイッチ231a、便座部自動開閉スイッチ231b、温風温度調整スイッチ240、水温調整スイッチ232、便座温度調整スイッチ233、節電スイッチ234、除菌スイッチ235および便器洗浄スイッチ236が設けられている。温風温度調整スイッチ240、水温調整スイッチ232、および便座温度調整スイッチ233のそれぞれの図中向かって左側には、温風温度、水温、および便座温度のそれぞれの高低を段階的に示す温度レベル表示部239,237および238が設けられている。
前記各スイッチは、便蓋部自動開閉スイッチ231a、便座部自動開閉スイッチ231bおよび便器洗浄スイッチ236を除いて、いずれもボタンスイッチとして構成されている。また、便蓋部自動開閉スイッチ231a、便座部自動開閉スイッチ231bおよび便器洗浄スイッチ236は、つまみ切換スイッチとして構成されている。使用者は、前記各スイッチがボタンスイッチであれば、そのボタンの正面を押すことにより、当該スイッチを操作し、つまみ切換スイッチであれば、つまみを「切」または「入」の位置に切り換えることにより、当該スイッチを操作する。
使用者が前記各スイッチを操作することにより、図2に示すように、遠隔操作部120から本体部110に対して、各スイッチの操作内容に応じた所定の信号が送信される。本体部110では、制御部60Aが、受信した信号に基づいて本体部110の動作を制御する。なお、図2には図示されないが、便座部130および便蓋部140が自動開閉機構によって開閉されるように構成されていれば、遠隔操作部120または入室センサ102からの信号を本体部110で受信することにより、制御部60Aの制御によって便蓋部140、あるいは便蓋部140および便座部130が自動的に開閉するよう構成されてもよい。
前記各スイッチとそれに対応する衛生洗浄装置101の動作について説明する。例えば、使用者がおしりスイッチ212またはビデスイッチ213を操作すれば、後述する共用ノズル部20から使用者の被洗浄面に洗浄水が噴出される。また、使用者が停止スイッチ211を操作すれば、共用ノズル部20から使用者の被洗浄面への洗浄水の噴出が停止される。
また、使用者が乾燥スイッチ214を操作すれば、使用者の被乾燥面に対して、後述する空気噴射部50からエアが噴射されると同時に温風乾燥部40から温風が吹き出される。また、使用者が乾燥モード選択スイッチ220a,220b,220cを選択操作することにより、使用者の被乾燥面に対して噴射されるエアの噴射条件および温風の送風条件が変更されるので、衛生洗浄装置101の使用状況や使用者の好みにより、いずれかの乾燥モードを任意に選択することができる。例えば、本実施の形態では、乾燥モード選択スイッチ220aを操作することにより、短時間で乾燥を終了したい場合の「急速乾燥運転」を、乾燥モード選択スイッチ220bを操作することにより、局部を確実に乾燥させてさらっと仕上げる「しっかり乾燥運転」を、乾燥モード選択スイッチ220cを操作することにより、エアを当てたくない場合に温風だけを吹き出す「温風乾燥運転」を、それぞれ選択できるようになっている。
また、使用者は、強さ調整スイッチ222,223を操作することにより、使用者の局部に噴出される洗浄水の流量および圧力等を調整することができる。さらに、使用者は、位置調整スイッチ225,226を操作することにより、共用ノズル部20の先端部の位置を調製することができる。これにより、使用者の局部に対する洗浄水の噴出位置を調整することができる。これらのスイッチが操作される場合であっても、遠隔操作部120から本体部110に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。これにより、本体部110の制御部60Aは、受信した信号に基づいて本体部110の動作を制御する。
また、使用者は、便蓋部自動開閉スイッチ231aのつまみを操作することにより、便蓋部140の開閉動作を設定することができる。すなわち、便蓋部自動開閉スイッチ231aのつまみがオンの位置にある場合、使用者のトイレットルームへの入室に応じて便蓋部140が自動的に開閉される。便座部自動開閉スイッチ231bについても同様である。また、使用者は、温風温度調整スイッチ240を操作することにより、温風乾燥部40から使用者の局部に吹き出される温風の送風温度を調整することができる。この温風温度調整スイッチ240は、一回押す毎に設定が、「高」、「中」、「低」、「切」と切り替わる。この「切」の設定で運転した場合は、温風乾燥部40が備える温風ヒータ44がオフとなり送風だけとなる。また、使用者は、水温調整スイッチ232を操作することにより、共用ノズル部20から使用者の局部に噴出される洗浄水の温度を調整することができる。また、使用者は、便座温度調整スイッチ233を操作することにより、便座部130における便座の暖房温度を調整することができる。
なお、本体部110に設けられている室温検出部(後述)の検出値に応じて自動的に送風温度を調節する機能である温風温度自動モードを備え、それを実行させるスイッチを別途も受けてもよい。これにより、使用者が温風温度調整スイッチ240を操作する煩わしさなしに、季節または室温等にかかわらず、自動的に快適な送風温度を得ることもできる。
次に、本体部110が備える洗浄水噴出部30、温風乾燥部40、空気噴射部50、および検出センサ部70、並びに制御部60Aについて、それぞれ具体的に説明する。
[洗浄水噴出部]
洗浄水噴出部30は、図4に示すように、温水加熱部31、切換弁32、洗浄ノズル部としての共用ノズル部20、開閉弁34、およびノズル移動機構52を備えている。洗浄水噴出部30は、図示されない水道管と洗浄水配管26を介して接続されている。洗浄水配管26は、開閉弁34に接続され、この開閉弁34の開閉により、共用ノズル部20へ洗浄水としての水道水が供給または遮断される。なお、図4では、水道水の供給は矢印W0で示しており、この矢印W0の方向に洗浄水としての水道水が流れる。
開閉弁34における洗浄水の流れの下流側には、洗浄水配管26を介して温水加熱部31が接続されている。温水加熱部31は、洗浄水配管26を流れる洗浄水(水道水)を加熱するヒータであり、例えば、ケース内に、洗浄水が流通する蛇行した加熱水路と、この加熱水路全体に接するように配置される平板状セラミック製ヒータとが、ケース内に設けられる構成を挙げることができる。この構成であれば、洗浄水を所定の温度で保持する温水タンクを備える必要がなく、洗浄が必要な際に、洗浄水を瞬間的に所定の温度まで温めることができる。もちろん、温水加熱部31は、温水タンクを備える構成であってもよい。
温水加熱部31における洗浄水の流れの下流側には、図1に破線で示すように、切換弁32が接続されている。切換弁32には、図1にも破線で示すように、洗浄水配管26を介して洗浄水配管26を介して共用ノズル部20が接続されているとともに、排水管27を介して図示されない便器103の内部にも接続されている。そして、切換弁32が切り換えられることにより、温水加熱部31から供給される所定の温度に温められた洗浄水(温水)は、共用ノズル部20に供給されるか、または、便器103の内部へ排水される(図中矢印W2で示す)。
共用ノズル部20は、便座部130に着座した使用者の局部(被洗浄面)を温水で洗浄する洗浄ノズル部であり、使用していない状態では本体部110に収納されている。使用時には、ノズル移動機構52により本体部110から突出し、図5では矢印W1で示すように、先端側の洗浄水噴出口22から被洗浄面に向かって温水を噴射する。また、後述するように、共用ノズル部20は、空気噴射部50におけるエアノズル部(図示せず)と一体化されている。ノズル移動機構52は、第1駆動モータ53および第2駆動モータ54(図中それぞれM1およびM2で示す)を含み、共用ノズル部20を移動することにより、使用者の局部に対して共用ノズル部20の先端側の洗浄水噴出口22の位置を相対的に移動させる。共用ノズル部20およびノズル移動機構52については、空気噴射部50を説明した後に詳述する。
開閉弁34の開閉、温水加熱部31による洗浄水の加熱、切換弁32の切換え、共用ノズル部20を移動させるノズル移動機構52の動作は、制御部60Aにより制御される。図4には図示されないが、温水加熱部31およびノズル移動機構52は、これらを動作させる駆動部を備え、制御部60Aは、これら駆動部に制御信号を出力することにより、温水加熱部31およびノズル移動機構52の動作を制御する。また、開閉弁34および切換弁32においても駆動部が設けられ、制御部60Aは、これら駆動部に制御信号を出力することにより、開閉弁34の開閉および切換弁32の切換えを制御する。
[温風乾燥部]
温風乾燥部40は、図5に示すように、エアファン41、送風ダクト43、および温風ヒータ44を備えている。図5では、エアファン41、温風ヒータ44、および送風ダクト43は、この順で、それぞれが二重線で接続された構成として図示されているが、図1に破線で示すように、エアファン41および送風ダクト43は、エアファン41の一部に送風ダクト43が接続されることで一体化された構成となっており、図1には図示されないが、エアファン41と送風ダクト43との間に温風ヒータ44が設けられている。
エアファン41は、例えば多翼ファンで構成され、自身の回転により、図5において矢印A0で模式的に示すように、外気を取り込んで空気流を形成する。温風ヒータ44は、例えばエアファン41の吹出口近傍に設けられ、前記空気流を所定の温度まで加熱する。これにより温風が生成され、送風ダクト43により図示されない便器103内に導かれる。送風ダクト43の先端部には、図1に破線で示すように、温風送風口42が形成され、この温風送風口42は、使用者が便座部130に着座した状態では、当該使用者の局部に向かう方向に位置している。また、温風送風口42は、長方形状に広がる開口として形成されている。このような構成の温風送風口42から、図5において矢印A2で示すように温風が送風されると、当該温風は、拡散して使用者の局部全体に広がるように到達することになる。なお、温風送風口42より送風される温風の風速は、後述する空気噴射部50から噴射されるエアの風速より遅く、本実施の形態では、例えば秒速10m以下となっている。
[空気噴射部]
空気噴射部50は、図5に示すように、エアポンプ51、ノズル移動機構52、および共用ノズル部20を備えている。エアポンプ51および共用ノズル部20は、図1に破線で示すように、エア配管25で接続されている。エアポンプ51は、図5において矢印A0で模式的に示すように、外気を取り込んで加圧することによりエアを生成し、エア配管25を介して共用ノズル部20に送出する。共用ノズル部20は、エアを噴射するエアノズル部であって、共用ノズル部20の先端側には、洗浄水噴出口22とは別にエア噴射口21が形成されており、このエア噴射口21から、図5において矢印A1で示すようにエアが噴射する。ノズル移動機構52は、前述のとおり、共用ノズル部20を移動することにより、使用者の局部に対して共用ノズル部20の先端側のエア噴射口21の位置を相対的に移動させる。
共用ノズル部20のエア噴射口21から噴射されるエアの風速は、局部に到達する時点で、例えば秒速20〜30mの範囲内となるよう設定されており、前述した温風乾燥部40から送風される温風の風速よりも大きいものとなっている。また、温風乾燥部40から送風される温風は、局部およびその周囲を乾燥するための空気流であるが、空気噴射部50で噴射されるエアは、局部およびその周囲(被乾燥面)に付着する水滴を除去するための空気流である。したがって、エア噴射口21から噴射されるエアは、前記温風のように局部全体に広がるように送風するのではなく、スポット状に集中させて噴射する必要がある。例えば、本実施の形態では、エア噴射口21から噴射されたエアが、被乾燥面に到達した時点で直径約1cm程度の大きさとなるように、諸条件が設定されている。
エアファン41の動作、エアポンプ51の動作、温風ヒータ44の動作、共用ノズル部20を移動させるノズル移動機構52の動作は、制御部60Aにより制御される。図5には図示されないが、エアファン41、エアポンプ51、温風ヒータ44は、これらを動作させる駆動部を備え、制御部60Aは、これら駆動部に制御信号を出力することにより、エアファン41、エアポンプ51、温風ヒータ44、およびノズル移動機構52の動作を制御する。
なお、前記のとおり、本実施の形態では、エアの風速(流速)を秒速20〜30mの範囲内としているが、水滴を吹き飛ばす効果を得るためには、前記風速は一般に秒速10m以上であることが好ましい。また、エアの噴流が被乾燥面に当接する範囲の大きさは、エア噴射口21の大きさや数に依存するが、これらエア噴射口21の大きさや数は特に限定されず、前記エアポンプ51の能力とエアの風速を考慮して設定すればよい。
[検出センサ部]
検出センサ部70は、本実施の形態では、図1に示す着座センサ71および図5に示す室温検出部72から構成されている。着座センサ71は、図1に示すように、本体部110の正面上部に設けられ、便座部130に使用者が着座していることを検出する。着座センサ71の具体的な構成は特に限定されないが、本実施の形態では、例えば、反射型の赤外線センサが用いられる。着座センサ71が赤外線センサであれば、人体から反射された赤外線を検出することにより便座部130に使用者が着座していることを検出する。
室温検出部72は、衛生洗浄装置101が設置されているトイレットルームの室温を検出するものであるが、本実施の形態では、後述するように、検出した室温は、制御部60Aによる送風温度補正制御に用いられる。室温検出部72の具体的構成は特に限定されないが、本実施の形態では、本体部110に内蔵されるサーミスタとなっている。
なお、本実施の形態では、検出センサ部70としては、前記着座センサ71および室温検出部72に加えて、後述するノズル移動機構52に設けられ、共用ノズル部20の左右方向の位置を検出するノズル位置センサ、温水加熱部31に設けられ、図4には図示されない流量センサ、温水加熱部31に設けられ、図示されない出湯温度センサ等が挙げられる。また、検出センサ部70としては、これらに特定されず、他の公知のセンサや検出装置が用いられてもよい。また、本実施の形態では、制御部60Aによる送風温度補正制御の制御情報として、室温(乾燥に際しての雰囲気温度)が用いられるため室温検出部72を備えているが、制御部60Aによる制御の種類によっては、検出センサ部70は備えていなくてもよい。
[共用ノズル部]
共用ノズル部20は、図6に示すように、ノズル本体20aが円筒形状となっており、先端側の外周面にエア噴射口21および洗浄水噴出口22が形成されている。本実施の形態では、エア噴射口21が洗浄水噴出口22よりもノズル本体20aの先端側に形成されている。ノズル本体20aの内部には、当該ノズル本体20aの長手方向に沿って延伸するエア空洞部23および洗浄水空洞部24が形成されている。エア空洞部23の一方の端部は、ノズル本体20aの先端側のエア噴射口21につながっており、他方の端部はノズル本体20aの後端側の底面に露出し、この部位でエア配管25に接続されている。洗浄水空洞部24も、一方の端部が先端側の洗浄水噴出口22につながっており、他方の端部が後端側の底面に露出し、この部位で洗浄水配管26に接続されている。
したがって、洗浄水噴出部30の温水加熱部31で温められた温水は、洗浄水配管26を介してノズル本体20aの後端側から洗浄水空洞部24に供給され、先端側の洗浄水噴出口22から噴出される。また、空気噴射部50のエアポンプ51で加圧されたエアは、エア配管25を介してノズル本体20aの後端側からエア空洞部23に供給され、先端側のエア噴射口21から噴射される。
ノズル本体20aの具体的な形状、寸法、材質等は特に限定されず、衛生洗浄装置やトイレ装置の分野で公知の構成を好適に用いることができる。例えば、図6においてはエア噴射口21が洗浄水噴出口22よりもノズル本体20aの先端側に形成されている態様について説明したが、本発明においては、ノズル本体20aにおけるエア噴射口21と洗浄水噴出口22との位置関係は特に限定されない。例えば、本発明においては、洗浄水噴出口22がエア噴射口21よりもノズル本体20aの先端側に形成されていてもよい。また、例えば、洗浄水噴出口22とエア噴射口21とがノズル本体20aの先端側において、ノズル本体20aの軸心方向でいうところの同じ位置に、軸心方向に垂直に並ぶように配置されていてもよい。
また、エア配管25および洗浄水配管26は、エアの圧力および洗浄水の水圧に耐えられる材料で形成されていればよいが、少なくともノズル本体20aに接続される部位の近傍では、ゴム材料等のような柔軟性を有する材料で形成されていることが好ましい。これは、ノズル本体20aが、ノズル移動機構52により進退移動または揺動するため、ノズル本体20aの後端側に接続されるエア配管25および洗浄水配管26には、ねじれまたは屈曲を生じさせるような外力が加えられるためである。
また、共用ノズル部20に形成されるエア噴射口21および洗浄水噴出口22は、図6に示すように、それぞれ1つずつであるが、これに限定されず、それぞれ複数形成されていてもよい。例えば、「おしり洗浄」用の洗浄水噴出口と「ビデ洗浄」用の洗浄水噴出口とをノズル本体20aにそれぞれ単独で形成してもよい。なお、単一のエア噴射口21のみからエアを噴射させる構成であれば、エアの流量が小さくても、その流速を大きくすることができるため、空気噴射部50が備えるエアポンプ51が小容量であったとしても十分なエアを噴射することができる。すなわち、エアの噴流が大きいために、被乾燥面に付着した水滴にエアが当たった際に、その水滴を皮膚表面から引き剥がすエネルギーを大きくすることができる。それゆえ、水滴を効率よく吹き飛ばすことが可能となる。
また、本実施の形態では、前記のとおり、共用ノズル部20は、洗浄水噴出部30における洗浄ノズル部と空気噴射部50におけるエアノズル部とが一体化された構成となっているが、このような構成に限定されず、洗浄水噴出部30における洗浄ノズル部と空気噴射部50におけるエアノズル部とがそれぞれ独立して、本体部110に設けられていてもよい。あるいは、洗浄ノズル部としては、単一のノズルではなく、「おしり洗浄」用ノズルおよび「ビデ洗浄」用ノズルが設けられる構成であってもよい。もちろん、本実施の形態のように、一体化された共用ノズル部20として設けられていることで、ノズルの設置面積を小さくできるとともに、ノズル移動機構52も共用されているので、本体部110の大型化を回避できるとともに部材点数も削減することができ、本体部110の小型化や低コスト化を図ることができる。あるいは、エアノズル部として、複数のノズルを備える構成であってもよい。このような構成であれば、エアの噴流を複数形成できるので、後述するように、被乾燥面の水滴を被乾燥面の中心部に集めやすくなり、乾燥時間をより短縮することができる。
[ノズル移動機構]
ノズル移動機構52は、図6に示すように、本実施の形態では、第1駆動モータ53、第2駆動モータ54、ノズル支持部56gおよびノズル移動部57を備える構成となっている。
ノズル支持部56gは、本実施の形態では、略直角三角形の板状の外形状で、ノズル本体20aの直径以上の厚みを有する構成となっている。直角三角形の底辺に対応する面がノズル支持部56gの底面となっており、直角三角形の斜辺に対応する面は、ノズル本体20aを移動可能に載置する載置面56cとなっている。載置面56cは、後側が高く前側が低くなるように傾斜し、その長手方向に沿って一対のレール部56a,56aが設けられている。また、載置面56cの前側には、上側に突出するノズルガイド部56bが形成されている。ノズルガイド部56bは、ノズル本体20aが通過できる内径の貫通孔56dが形成され、ノズル本体20aが載置面56cの上で前後に移動するときに、当該載置面56cから外れないように、ノズル本体20aを支持する。
レール部56aおよびノズルガイド部56bは、いずれも公知の樹脂材料等で形成されていればよい。ここで、ノズルガイド部56bは、貫通孔56dの内部でノズル本体20aが前後に移動するだけでなく、共用ノズル部20が揺動するときには、貫通孔56dの内部でノズル本体20aが回転する。そこで、ノズルガイド部56bにおける少なくとも貫通孔56dの内周面となる部位は、当該貫通孔56dの内部でノズル本体20aが前後または回転移動しやすいように、摺動性の良好な材質で形成されていることが好ましい。さらに、貫通孔56dの直径は、ノズル本体20aが貫通した状態で、当該ノズル本体20aの外周面と貫通孔56dの内周面との間に適度な間隙が得られるような寸法となっていることが好ましい。
ノズル支持部56gの載置面56cの長さは、ノズル本体20aの長さと同等以上となっている。これは、共用ノズル部20を本体部110内に完全に収納したときに、ノズル本体20aの全体がノズル支持部56gの載置面56c上に載置されて支持されるためである。また、載置面56cの上に形成される一対のレール部56a・56aも摺動性の良好な材質で形成されていることが好ましい。これは、後述するように、ノズル本体20aの後端側で当該ノズル本体20aに固定されるノズル支持スライダ58を、レール部56a・56aの間に挟み込ませ、載置面56cの上を長手方向に沿ってスライドさせるためである。なお、本実施の形態では、図6に示すように、ノズル支持部56gの本体に対して、レール部56a・56aおよびノズルガイド部56bは、一体化されて設けられているが、これに限定されない。
ノズル移動部57は、ノズル支持スライダ58、揺動歯車部57a、およびスライダガイド部57bを有している。ノズル支持スライダ58は、前記のとおり、ノズル支持部56gの載置面56cで、レール部56a・56aの間にはさみこまれた状態で、載置面56cの上をスライドするよう構成されている。
ノズル支持スライダ58は、ノズル本体20aの後端側に固定されるノズル固定部58aと、第2駆動モータ54および揺動歯車部57aを支持する歯車支持部58bと、スライダガイド部57bを貫通させるガイド貫通部58cとから構成されている。ノズル固定部58aは、ノズル本体20aの後端側で当該ノズル本体20aの外周を覆うような直方体状に形成され、当該ノズル固定部58aにノズル本体20aを貫通させることで、当該ノズル本体20aに固定される。また、ノズル固定部58aの下部は、レール部56a・56aの間に、スライド可能にはさみこまれるレール嵌合部となっている(図6には図示されない)。さらに、ノズル本体20aは、ノズル固定部58aの前側において回転可能となっている。
歯車支持部58bは、載置面56c上のノズル固定部58aから載置面56cの外側に向かって延びる板状の部位であって、前面には揺動歯車部57aが支持され、後面には第2駆動モータ54が支持されている。第2駆動モータ54の回転軸は、図6には図示されないが歯車支持部58bを貫通して前面にまで達しており、当該回転軸の先端には、揺動歯車部57aに含まれる第1歯車が固定されている。ガイド貫通部58cは、歯車支持部58bの端部から下側に向かって延びる板状の部位であって、載置面56cの側方に沿って延伸するスライダガイド部57bが貫通されている。
スライダガイド部57bは、一方向に延伸する鋼索状であって、ノズル支持部56gの一方の側面(図6では手前側の側面)に、載置面56cに沿って傾斜するように設けられている。スライダガイド部57bの両端は、ノズル支持部56gの側面から立設して設けられているガイド支持板56e,56fで固定されている。このうち、ガイド支持板56eは、ノズル支持部56gの後側でスライダガイド部57bを固定し、その後面に第1駆動モータ53が支持されている。そして、図示されない第1駆動モータ53の回転軸がガイド支持板56eを貫通して前面に達しており、当該前面において、前記回転軸に軸状のスライダガイド部57bが接続されている。つまり、第1駆動モータ53の回転軸が回転するとスライダガイド部57bも回転するように構成されている。また、ガイド支持板56fは、ノズル支持部56gの前側で、スライダガイド部57bが回転可能な状態となるように、その端部を支持している。
スライダガイド部57bの外周には螺旋状のネジが形成されており、スライダガイド部57bを貫通させるガイド貫通部58cの貫通孔は、このネジに対応するネジ穴となっている。つまり、スライダガイド部57bを第1駆動モータ53により回転可能な「ボルト」であるとすれば、ノズル支持スライダ58のガイド貫通部58cは、当該ボルトに対応する「ナット」に相当する。
揺動歯車部57aは、歯車支持部58bの前面に支持され、図6に示す構成では、第1歯車、第2歯車および第3歯車から構成されている。第1歯車は前記のとおり第2駆動モータ54の回転軸に固定されている。この第1歯車に第2歯車が組み合わせられ、さらに第2歯車に第3歯車が組み合わせられている。第3歯車はノズル本体20aの後端の外周面に固定されているので、第3歯車の回転によりノズル本体20aも回転するように構成されている。したがって、ノズル本体20aは、ノズル支持スライダ58に対して回転可能に支持されていることになる。
前記構成のノズル移動機構52により共用ノズル部20の移動について、図6に加えて、図2、図4および図5も参照して説明する。遠隔操作部120の操作により、共用ノズル部20を使用して局部の洗浄および乾燥を行う旨の操作指令が制御部60Aに送信されると、制御部60Aは、まず、第1駆動モータ53を正方向に回転させる。第1駆動モータ53の回転軸は、スライダガイド部57bにつながっているので、スライダガイド部57bも正方向に回転する。
スライダガイド部57bは、ノズル支持スライダ58のガイド貫通部58cに貫通しており、この貫通状態は「ボルト」および「ナット」の嵌合状態となっている。それゆえ、スライダガイド部57bの回転により、当該スライダガイド部57bに沿ってガイド貫通部58cに対して前進する作用が働く。ガイド貫通部58cはノズル支持スライダ58の一部であるので、ノズル支持スライダ58に対して、載置面56c上で前進する作用が伝達され、それゆえノズル支持スライダ58が載置面56cを前方向にスライドする。
ここで、ノズル支持スライダ58は、ノズル固定部58aを介して共用ノズル部20(ノズル本体20a)の後端に固定されているので、共用ノズル部20は、ノズル支持スライダ58によって後端側から前進する外力が加えられる。それゆえ、共用ノズル部20は、ノズル支持部56gの載置面56cを移動して前進し、その先端部が本体部110の外側に露出する。このとき、共用ノズル部20は、後端側がノズル支持スライダ58によって、レール部56a,56aの間から外れないようにガイドされ、先端側は、ノズルガイド部56bでガイドされているので、共用ノズル部20は、載置面56cの上をずれることなく前進する(図6における矢印D1方向)。
本体部110の外に露出した共用ノズル部20の先端部には、エア噴射口21および洗浄水噴出口22が形成されているので、ここからエアが被乾燥面に対して噴射され、洗浄水が被洗浄面に対して噴出される。さらに、エアが噴射される領域である被乾燥面は、前記のとおり、被洗浄面よりも広い面積となる。それゆえ、制御部60Aは、第2駆動モータ54を所定のパターンで正逆回転させる。第2駆動モータ54の回転軸には、揺動歯車部57aを構成する第1歯車が固定されているので、第2駆動モータ54の回転駆動力は、第1歯車および第2歯車を介して、共用ノズル部20の後端側に固定されている第3歯車に伝達される。これにより、円柱状の共用ノズル部20は、その軸方向に正逆回転(自転)することになるので、先端部のエア噴射口21は、左右に揺動することになる(図6における矢印D3方向)。
その後、洗浄および乾燥動作を終了する旨の操作指令が遠隔操作部120から制御部60Aに送信されると、制御部60Aは、第1駆動モータ53を逆方向に回転させる。これにより、スライダガイド部57bも逆回転するので、ノズル支持スライダ58に対して載置面56c上で後退する作用が働く。それゆえ、共用ノズル部20は、ノズル支持部56gの載置面56c上に沿って後退し(図6における矢印D2方向)、その結果、共用ノズル部20は後端側から本体部110内に引き込まれ、本体部110内に収納される。
つまり、第1駆動モータ53は、共用ノズル部20を前後方向に移動させるための駆動源であり、ノズル移動部57のうち、スライダガイド部57bおよびノズル支持スライダ58のガイド貫通部58cは、共用ノズル部20を前後に移動させるノズル進退移動部として機能する。また、第2駆動モータ54は、共用ノズル部20を左右方向に移動させるための駆動源であり、ノズル移動部57のうち、揺動歯車部57aは、共用ノズル部20を左右に自転揺動させるノズル揺動部として機能する。
本実施の形態におけるノズル移動機構52は、前記ノズル進退移動部を備えることによって、共用ノズル部20を本体部110から突出させまた本体部110内に収納させることに加え、共用ノズル部20の先端部を前後に移動させることができ、さらに、前記ノズル揺動部を備えることによって、共用ノズル部20の先端部を左右に移動させることができる。それゆえ、特に、エア噴射口21からのエアの噴射を前後だけでなく左右にも移動させることができるので、使用者の局部とその周囲全体(被乾燥面全体)にわたってエアを噴射することができる。
なお、本実施の形態では、共用ノズル部20が1本のノズルで構成されているため、ノズル移動機構52も一つのみ設けられているが、複数のノズルが設けられている場合には、ノズル移動機構52もそれに合わせて複数設けられればよい。
また、本実施の形態では、共用ノズル部20は、ノズル移動機構52によって共用ノズル部20全体が移動される構成となっているが、これに限定されず、エア噴射口21のみ、あるいは、エア噴射口21を含む周囲の部材のみを移動させたり、角度を変更させたりすることで、エアの当接範囲を移動させる構成であってもよい。あるいは、エアノズル部(図示せず)の前方に、エアの噴流の方向をかえる風向変更部が設けられる構成等であってもよい。
[衛生洗浄装置の制御系統]
制御部60Aは、図2、図4および図5に示すように、本実施の形態に係る衛生洗浄装置101が備える洗浄水噴出部30、温風乾燥部40、空気噴射部50等の動作を制御するが、当該制御部60Aは、本実施の形態では、図7に示すように、演算部61、記憶部62、および送風温度補正部63から構成されている。
演算部61は、記憶部62に記憶されたプログラムを用いて、衛生洗浄装置101における洗浄および乾燥等の動作を制御するための演算を行う。記憶部62は、前記プログラムに加えて、演算部61での演算に用いられる各種のデータを記憶している。演算部61および記憶部62は、例えば、それぞれ、マイクロコンピュータのCPUおよび内部メモリで構成されている。なお、記憶部62は、独立したメモリとして構成されてもよく、また、記憶部62は、単一である必要はなく、複数の記憶装置(例えば、内部メモリと外付け型のハードディスクドライブ)として構成されてもよい。
送風温度補正部63は、温風乾燥部40で生成される温風の温度(送風温度)を補正する。より具体的には、送風温度補正部63は、温風乾燥部40による送風の開始時点から第1の所定時間が経過するまでの期間(起動段階)における送風温度を、当初設定されている値(加温値)から、より高い値(起動調整値)に補正する。演算部61は、送風温度補正部63から補正後の送風温度の値を取得し、この補正後の値に基づいて温風乾燥部40の動作を制御する。送風温度補正部63は、公知の温度補正回路を用いて構成されてもよいし、演算部61が記憶部62に格納されるプログラムに従って動作することにより実現される構成、すなわち制御部60Aの機能構成であってもよい。
演算部61および送風温度補正部63には、遠隔操作部120から各種の操作指令が入力されるように構成されている。また、演算部61および送風温度補正部63には、室温検出部72からトイレットルームの室温の検出値も入力されるように構成されている。
図7では、温風乾燥部40および空気噴射部50についての制御系統を図示している(図5参照)。具体的には、演算部61は、エアファン駆動部45、温風ヒータ駆動部46、エアポンプ駆動部55および共用ノズル駆動部56を制御し、エアファン駆動部45、温風ヒータ駆動部46、エアポンプ駆動部55および共用ノズル駆動部56は、演算部61の制御に基づいて、それぞれ、エアファン41、温風ヒータ44、エアポンプ51、ノズル移動機構52を動作させる。なお、図7には図示されていないが、前記構成の制御部60Aは、洗浄水噴出部30を制御するよう構成されていることはいうまでもない(図4参照)。
[衛生洗浄装置による洗浄動作および乾燥動作]
次に、衛生洗浄装置101の具体的な洗浄動作および乾燥動作の制御について、図8ないし図12に基づいて説明する。図8は、衛生洗浄装置101における洗浄動作および乾燥動作の制御の一例を示すタイムチャートである。図9(a)〜(c)は、衛生洗浄装置101が備える共用ノズル部20による洗浄動作(図9(a))および空気噴射動作(図9(b)および(c))の一例を示す模式的断面図である。図10(a)〜(c)は、衛生洗浄装置101が備える共用ノズル部20による洗浄動作(図10(a))および空気噴射動作(図10(b)および(c))の一例を示す部分側面図である。図11および図12は、共用ノズル部20が空気噴射動作を行っているときに、エア噴射口21の移動経路を示す模式図である。
なお、本実施の形態における乾燥動作は、遠隔操作部120の各スイッチのうち、乾燥モード選択スイッチ220aが操作されることで「急速乾燥運転」の運転モードが選択され、かつ、温風温度調整スイッチ240が操作され温度設定が「中」レベルに設定されている場合について説明する。この「急速乾燥運転」は、温風乾燥部40により送風される温風をエアにより誘引しながら、空気噴射部50により被乾燥面にエアを噴射する運転モードである。
まず、遠隔操作部120がいまだ操作されていない状態(経過時間T0)では、図8の「IV.ノズル前後方向位置」に示すように、共用ノズル部20は本体部110内に収納されている。また、図8の「V.ノズル左右方向位置」に示すように、共用ノズル部20は中心位置となっている。なお、「V.ノズル左右方向位置」とは、ノズル移動機構52に設けられている図示されないノズル左右方向位置センサによって検出され、中心位置にあるときは、共用ノズル部20のエア噴射口21(および洗浄水噴出口22)が形成されている面が、前記ノズル左右方向位置センサの検出基準位置に対応する角度となるように設定されている。この設定角度が左右方向の基準となる中心角度であって、エア噴射口21および洗浄水噴出口22の吐出角度は上方向となるように設定されている。
次に、使用者が、遠隔操作部120のおしりスイッチ212を操作すると(経過時間T1)、図8の「II.開閉弁」に示すように、制御部60Aにより洗浄水噴出部30の開閉弁34が開き、水道水が温水加熱部31に流れ込む。また、温水加熱部31は、図示されない内蔵の流量センサによって水流を検出すると、図8の「I.温水加熱部」に示すように、制御部60Aは温水加熱部31への通電を開始させ、加熱された温水が供給され始める。なお、この時点では、洗浄水噴出部30の切換弁32は、便器103内につながる排水管27側に設定されているので、十分に加熱されていない温水は、便器103内に排出される。
次に、温水加熱部31から供給される温水の温度(出湯温度)が予め設定された温度値(例えば36℃)に達すれば(経過時間T2)、図8の「IV.ノズル前後方向位置」に示すように、制御部60Aは、第1駆動モータ53を動作させて共用ノズル部20を前進させ、その先端部を「中心部位置」(例えば前方100mm)に到達させる。
その後、図8の「III.切換弁」に示すように、制御部60Aは、切換弁32を共用ノズル部20側の洗浄水配管26に切り換え(経過時間T3)、使用者の被洗浄面に温水を噴出する(「おしり洗浄」運転)。温水加熱部31への電力供給は、出湯温度を検出する図示されない出湯温度センサの検出温度が設定値(例えば40℃)となるように、公知の制御方法(PID制御、FF制御)を用いて行われる。また、温水の流量は、切換弁32の弁開度を調整することによって使用者の好みの量となるように調整されている。
この「おしり洗浄」運転では、図9(a)および図10(a)に示すように、共用ノズル部20の洗浄水噴出口22から使用者400の被洗浄面に向かって温水が噴出されているが、被洗浄面の濡れ状態を見れば、洗浄水が直接当たる中心部の局部だけでなく、周辺部へ水滴が流れるため、局部およびその周辺部(図中被洗浄面f)が全体的に濡れている状態となっている。なお、図9(a)では、便座部130および便器103の断面は外形のみであって、例えば、便座部130については内部に暖房ヒータ等を備えている構成であっても図示されない。
次に、「おしり洗浄」運転が終了し、使用者が遠隔操作部120の停止スイッチ211を操作すると(経過時間T4)、図8の「III.切換弁」および「I.温水加熱部」に示すように、制御部60Aは、切換弁32を共用ノズル部20側の洗浄水配管26から便器103側の排水管27に切り換え、共用ノズル部20の洗浄水噴出口22からの温水の噴出を停止させると同時に、温水加熱部31への通電を停止し、第1駆動モータ53を逆転させて、共用ノズル部20を収納位置まで後退させる。
そして、図8の「II.開閉弁」に示すように、制御部60Aは、開閉弁34を閉じて洗浄水噴出部30への通水を遮断して洗浄動作を終了させる(経過時間T5)。このとき、図8の「IV.ノズル前後方向位置」に示すように、共用ノズル部20は、収納位置(0mm)に戻る。
なお、本実施の形態では、「おしり洗浄」運転について説明したが、遠隔操作部120のビデスイッチ213を操作して「ビデ洗浄」運転を行う場合においても、基本的なシーケンスは同様である。「ビデ洗浄」運転の場合は、ビデに対応する共用ノズル部20の位置と洗浄水の流量の設定が変更されることになる。
次に、使用者が、遠隔操作部120の乾燥スイッチ214を操作すれば(経過時間T6)、図8の「VIII.ヒータ」に示すように、制御部60Aは、温風ヒータ44に通電し、当該温風ヒータ44の温度上昇が開始される。このように、エアファン41の動作が開始される前に温風ヒータ44の動作を開始させることで、放熱が少ない状態で温風ヒータ44が加熱されるため、当該温風ヒータ44の温度を高速に上昇させることができる。
また、このとき(経過時間T6)、図8の「VI.エアポンプ」に示すように、制御部60Aは、温風ヒータ44の動作の開始と同時にエアポンプ51を短時間(たとえば1秒間)だけ動作させ、エアを共用ノズル部20のエア噴射口21から一瞬噴射させる。この動作によって、共用ノズル部20が本体部110に収納された位置にある状態で、共用ノズル部20の表面に付着した水滴が吹き飛ばされるので、使用者に対して水滴の再付着を防止することができる。
次に、図8の「VII.エアファン」に示すように、制御部60Aは、エアファン41の動作を開始させ(経過時間T7)、これにより、温風送風口42から温風が吹き出す。温風の送風温度は、高速で加熱された温風ヒータ44を通過するため、送風の当初から所定の高い温度まで達している。また、このときの温風ヒータ44は、後述するように、送風温度補正部63による送風温度の補正がなされた上で、制御部60Aによって制御されているため、高温(例えば60°)の温風が送風されることになる。この温風は、温風送風口42から使用者の被乾燥面のほぼ全面に送風される。
その後、図8の「IV.ノズル前後方向位置」に示すように、制御部60Aは、第1駆動モータ53を動作させて、共用ノズル部20を最前進の位置(例えば前方150mm)まで前進させながら、図8の「V.ノズル左右方向位置」に示すように、第2駆動モータ54を動作させて共用ノズル部20の左右角度を右端角度(例えば+50°)まで角度変更させる。
さらにその後、図8の「VI.エアポンプ」に示すように、制御部60Aは、エアポンプ51を動作させ(経過時間T8)、被乾燥面に対してエア噴射口21からエアの噴射を開始させる。そして、図8の「IV.ノズル前後方向位置」および「V.ノズル左右方向位置」に示すように、制御部60Aは、ノズル移動機構52における第2駆動モータ54および第1駆動モータ53の回転方向および回転速度を制御し、共用ノズル部20を、所定範囲内(例えば前方50mmから150mm)で高速に前後に往復移動させるとともに、左右方向の角度範囲を、右端角度から右側所定角度(例えば+50°から+20°)まで中心角度に向けてゆっくりと移動させる。このステップを、空気噴射第1ステップと称する。
この空気噴射第1ステップでは、共用ノズル部20からのエアの噴流が、使用者の被乾燥面の右側の所定位置から前後方向に往復移動しながら徐々に中心部に接近してくることになる。このエアの噴流は、図11に示すような軌跡で描かれる。図11は、便座部130および便器103を上から見た図であり、便座部130の開口部から見える便器103の内部には、使用者400の臀部(および脚の付け根)となる仮想領域が破線で示されるとともに、この使用者400となる仮想領域内に、図中二点鎖線で示される正方形状の仮想領域である被乾燥面Fが示される。図11の矢印P1に示すように、エアの噴流が被乾燥面Fに当接する範囲(エア当接範囲)Eは、被乾燥面Fの右端において、前後方向に高速に往復移動する(図中矢印D2およびD1方向、図6参照)ことを周期的に繰り返しながら、被乾燥面Fの中心部Gに向かって徐々に移動する。したがって、エア当接範囲Eは、被乾燥面F内で右から左へのジグザグの移動軌跡を描くように移動することとなる。
また、前記空気噴射第1ステップでは、図9(b)に示すように、使用者400の被乾燥面Fの向かって右側に付着した水滴は、共用ノズル部20のエア噴射口21から噴射されたエアの噴流により、中心部方向(図中矢印D3−1方向、図6参照)に集められながら吹き飛ばされることになる。
その後、図8の「VI.エアポンプ」に示すように、制御部60Aは、エアポンプ51の動作を一旦停止させ(経過時間T9)、図8の「V.ノズル左右方向位置」に示すように、共用ノズル部20の左右方向の角度範囲を左端角度(例えば−50°)まで変更し、再びエアポンプ51を動作させ(経過時間T10)、エアの噴射を開始する。
その後、制御部60Aは、前記空気噴射第1ステップと同様に、共用ノズル部20を、所定範囲内(例えば前方50mmから150mm)で高速に前後に往復移動させるとともに、左右方向の角度範囲を、左端角度から左側所定角度(例えば−50°から−20°)まで中心角度に向けてゆっくりと移動させる。このステップを、空気噴射第2ステップと称する。
この空気噴射第2ステップでは、共用ノズル部20からのエアの噴流が、使用者の被乾燥面Fの左側の所定位置から前後方向に往復移動しながら徐々に中心部Gに接近してくることになる。つまり、空気噴射第2ステップでは、図11の矢印P2に示すように、エア当接範囲Eは、被乾燥面Fの左端において、前後方向に高速に往復移動することを周期的に繰り返しながら、被乾燥面Fの中心部Gに向かって徐々に移動するので、言い換えれば、エア当接範囲Eは、中心部Gを基準に、矢印P1で示すジグザグの軌跡と線対称となるような、左から右へのジグザグの移動軌跡を描くように移動することになる。
また、前記空気噴射第2ステップでは、図9(c)に示すように、使用者400の被乾燥面Fの向かって左側に付着した水滴は、共用ノズル部20のエア噴射口21から噴射されたエアの噴流により、中心部方向(図中矢印D3−2方向、図6参照)に集められながら吹き飛ばされることになる。
前記空気噴射第1ステップおよび第2ステップが行われれば、被乾燥面Fに付着して残る水滴は、中心部Gを中心とした前後の領域のみとなる。
つまり、人体の臀部は、肛門および陰部という洗浄中心部に対して左右両側に凸部が形成されているため、便座部130に着座した場合に、前記洗浄中心部(被乾燥面Fの中心部G参照)より、左右両側が低くなる。したがって、洗浄水の濡れは左右に広がりやすくなるため、乾燥運転の開始時に、最初に中心部Gに向かってエアを当ててしまうと、付着した水滴が左右に大きく広がり、被乾燥面Fにおける濡れ面積が拡大してしまう。そこで、制御部60Aが、空気噴射部50に、前述した空気噴射第1ステップおよび第2ステップを実行させれば、被乾燥面Fの水滴が左右に広がることを防止しながら水滴を吹き飛ばすことができるので、効率の良い乾燥が可能となる。
また、このように最初に臀部の左右の凸部に向かってエアを噴射すると、使用者は臀部全体において冷たく感じやすいが、本実施の形態では、後述するように、送風温度補正部63による送風温度の補正が行われた上で、エアの噴射と同時に、温風乾燥部40に温風を送風させるので、冷感を十分に緩和させ、使用者の快適性を向上させることができる。
次に、制御部60Aは、前記空気噴射第2ステップが終了すれば、図8の「IV.ノズル前後方向位置」に示すように、共用ノズル部20を最前進位置まで前進させる(経過時間T11)。そして、制御部60Aは、共用ノズル部20を、最前進位置から中心部方向にゆっくりと後退移動させるとともに、左右方向の角度を右端角度から左端角度まで高速に往復移動させる。このステップを、空気噴射第3ステップと称する。
この空気噴射第3ステップでは、共用ノズル部20からのエアの噴流が、使用者の被乾燥面Fの前側の所定位置から左右方向に往復移動しながら徐々に後側の中心部Gに接近してくることになる。つまり、空気噴射第3ステップでは、図12の矢印P3に示すように、エア当接範囲Eは、被乾燥面Fの上端において、左右方向に高速に往復移動することを周期的に繰り返しながら、被乾燥面Fの中心部Gに向かって徐々に移動する。それゆえ、エア当接範囲Eは、被乾燥面F内で前から後へのジグザグの移動軌跡を描くように移動することとなり、被乾燥面Fの中心部Gより前方に残存する水滴を、図10(b)に示すように、中心部G方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
その後、図8の「VI.エアポンプ」に示すように、制御部60Aは、エアポンプ51の動作を一旦停止させ(経過時間T12)、図8の「IV.ノズル前後方向位置」に示すように、共用ノズル部20の前後方向位置を後方の所定位置(例えば前方50mm)まで移動させ、再びエアポンプ51を動作させ(経過時間T13)、エアの噴射を開始する。
その後、制御部60Aは、前記空気噴射第3ステップと同様に、共用ノズル部20を、最後退位置から中心部G方向にゆっくりと前進移動させるとともに、左右方向の角度を右端角度から左端角度まで高速に往復移動させる。このステップを、空気噴射第4ステップと称する。
この空気噴射第4ステップでは、共用ノズル部20からのエアの噴流が、使用者400の被乾燥面Fの後側の所定位置から左右方向に往復移動しながら徐々に前側の中心部Gに接近してくることになる。つまり、空気噴射第4ステップでは、図12の矢印P4に示すように、エア当接範囲Eは、被乾燥面Fの下端において、前後方向に高速に往復移動することを周期的に繰り返しながら、被乾燥面Fの中心部Gに向かって徐々に移動するので、言い換えれば、エア当接範囲Eは、中心部Gを基準に、矢印P3で示すジグザグの軌跡と線対称となるような、後から前へのジグザグの移動軌跡を描くように移動することになる。それゆえ、空気噴射第4ステップでは、被乾燥面Fの中心部Gより後方に残存する水滴を、図10(c)に示すように、中心部G方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
前記空気噴射第3ステップおよび第4ステップが行われれば、被乾燥面Fに付着して残る水滴は、中心部G近傍のみとなる。
ここで、制御部60Aは、前記空気噴射第1ステップから第4ステップにおいては、被乾燥面Fへのエア当接範囲Eの移動方向は、中心部Gに向けて移動する速度よりも、中心部Gに向かう方向に交差する方向(交差方向)へ移動する速度が十分に速くなるよう、ノズル移動機構52を制御している。それゆえ、被乾燥面Fに衝突して広がるエアは、前記交差方向に対して垂直となる方向へ流れる成分(垂直流)が多くなる。したがって、この交差方向に移動するエア当接範囲Eと中心部Gとの間に付着する水滴は、前記垂直流に押されることで、中心部Gに向かう方向に移動する。したがって、徐々にエア当接範囲Eを中心部Gに接近させれば、水滴は常に中心部Gに向かって集められることになる。それゆえ、空気噴射第1ステップから第4ステップを実行することで、被乾燥面Fに付着する水滴を中心部Gに迅速かつ適切に集めることができる。
次に、図8の「VI.エアポンプ」に示すように、制御部60Aは、エアポンプ51の動作を一旦停止させ(経過時間T14)、図8の「IV.ノズル前後方向位置」に示すように、共用ノズル部20の前後方向位置を前方の所定位置(例えば前方130mm)まで移動させ、再びエアポンプ51を動作させ(経過時間T15)、エアの噴射を開始する。
その後、制御部60Aは、図8の「IV.ノズル前後方向位置」に示すように、共用ノズル部20を前方の所定位置から後退させる移動を開始させ、中心部Gを通過させ、さらに中心部Gより後方の所定位置(例えば前方50mm)までゆっくりと移動させる。制御部60Aは、図8の「V.ノズル左右方向位置」に示すように、前記後退移動とともに、共用ノズル部20の左右方向の角度を、右端角度から左端角度まで高速に往復駆動させる(図10(b)および(c)参照)。このステップを、空気噴射第5ステップと称する。
この空気噴射第5ステップでは、共用ノズル部20からのエアの噴流が、被乾燥面Fを左右方向に高速に移動する周期移動を繰り返しながら、前方の所定位置から後方の所定位置に向かって徐々に移動し、中心部Gを通過して後方の所定位置まで徐々に移動することになる。したがって、エア当接範囲Eは、被乾燥面Fにおいて、前方から中心部Gを通って後方に移動するために、被乾燥面Fの中心部G近傍に残存する水滴を、ほぼ完全に吹き飛ばすことが可能となる。
言い換えれば、空気噴射第1ステップから第4ステップは、大部分の水滴を吹き飛ばしながら残りを中心部Gに集める工程(水滴集中工程)ということができ、空気噴射第5ステップは、最後に中心部G近傍に残った水滴をほぼ完全に吹き飛ばす工程(水滴除去工程)ということができる。なお、本実施の形態では、空気噴射第1ステップから第5ステップまでを、前記の順で実行したが、これに限定されず、各ステップの順番を入れ替えても良いし、一部のステップを繰り返しても良いし、一部のステップを省略してもよい。
また、前記空気噴射第1ステップから第5ステップまでのエアの噴射は、温風乾燥部40による温風の送風と同時に行われる。したがって、温風乾燥部40からの温風はエアに誘引されることになり、当該エアは暖められながら噴射されることになる。それゆえ、冷感の緩和効果がより向上される。
その後、図8の「VI.エアポンプ」に示すように、制御部60Aは、エアポンプ51を停止し(経過時間T16)、図8の「IV.ノズル前後方向位置」および「V.ノズル左右方向位置」に示すように、共用ノズル部20の前後方向を収納位置に移動させ、左右方向を中心角度に戻させる。
このようにして、空気噴射部50による水滴の除去が終了し、事実上乾燥動作が終了したことになるので、使用者400は、遠隔操作部120の停止スイッチ211を操作し、制御部60Aは、この停止指令を受けて、図8の「VIII.ヒータ」に示すように、温風ヒータ44の運転を停止し(経過時間T17)、最後に、図8「VII.エアファン」に示すように、エアファン41を停止する(経過時間T18)ことによって、温風ヒータ44の余熱を減少させる。以上により、一連の洗浄動作および乾燥動作の制御が終了する。
[送風温度補正部による目標温度補正処理]
次に、前記制御系統を有する衛生洗浄装置101の具体的な制御について、図13ないし図15に基づいて説明する。図13は、衛生洗浄装置101が備える温風乾燥部40から送風される温風の送風温度についての設定値、補正値、および実測値の関係を示すグラフである。図14は、温風乾燥部40に含まれる温風ヒータ44の加熱出力の変化を示すタイムチャートである。図15は、衛生洗浄装置101の制御部60Aにより、温風乾燥部40および空気噴射部50の動作を制御する一例を示すフローチャートである。
本実施の形態に係る衛生洗浄装置101は、温風乾燥部40による温風の送風を開始し、空気噴射部50によるエアの噴射よりも先にするか、または、同時とするとともに、温風乾燥部40による温風の生成に関して、当該温風の送風温度を予め設定するフィードフォワード制御を行うように構成されている。このフィードフォワード制御は、送風温度補正部63による送風温度の設定値(目標温度)の補正処理として行われる。これにより、濡れた人体局部にエアを噴射させても、使用者は冷たさをほとんど感じることがなく、かつ、迅速で適切な乾燥処理が可能となる。
一般的なヒータの制御においては、所定範囲内の温度が予め設定され、この設定範囲に対する目標値と測定値とを一致させるようにPID制御が行われる。PID制御では、目標値と測定値との偏差を求めた上で、ヒータの出力を前記偏差に比例させる比例動作(P動作)と、ヒータの出力を前記偏差の時間積分に比例させる積分動作(I動作)と、ヒータの出力を前記偏差の時間的変化率に比例させる微分動作(D動作)との3種類の動作を組み合わせてフィードバックする制御が行われる。ところが、このようなPID制御を衛生洗浄装置101の温風乾燥部40の制御に適用しても、使用者は、空気噴射部50からのエアの噴射により冷たさを感じることになることが、本発明者らの検討により明らかとなった。
衛生洗浄装置101が備える温風乾燥部40および空気噴射部50は、いずれも洗浄後の使用者の局部およびその周囲(被乾燥面)を乾燥させる「乾燥機構」である。しかしながら、温風乾燥部40は被乾燥面に対して温風を当てる手段であるのに対して、空気噴射部50は被乾燥面に対してエアを当てる手段であり、使用者にとっては、温感を与える空気流(温風)と、冷感を与えやすい空気流(エア)とが、局部に同時に当たることになる。このような条件下では、フィードバック制御を利用した一般的なPID制御を行っても、使用者にとっての冷感を緩和することはできない。
また、使用者から見れば、衛生洗浄装置101の「乾燥機構」の代替方法として、被乾燥面をトイレットペーパーで拭き取るという方法が存在する。この方法は、使用者にとっては、従来から行ってきた行為であるため、「乾燥機構」に使い勝手の悪さがあれば、この拭き取りという方法を選択することになる。ここで、前記のPID制御は、フィードバック制御を利用しているので、使用者にとって冷たさを感じない温度域を実現するまでに、ある程度の時間を要することになる。このような長い乾燥時間は、使用者にとっては「乾燥機構」の使い勝手の悪さとなるので、PID制御は、この点からも採用できない。
通常、温風の送風温度は、人体の表面(皮膚)に長時間当てられても低温やけどに至らない程度に温かい温度値Tyとなるように設定されている。この温度Tyを「標準値」と定義すれば、温風の送風開始から一定時間、送風温度が、標準値よりも高めの温度値である「加温値」に達するように各種制御条件を初期設定することも行われている(例えば、特許文献3では、動作開始初期において、定常電圧値よりも高い電圧値を印加している)。本実施の形態では、さらに、温風の送風が開始されてから所定時間は、前記加温値として、被乾燥面が濡れた状態で温風を受けたときに使用者が冷たいと感じなくなる温度値(冷感限界値)Tc以上の温度値が実現されるように、諸条件に基づいて設定温度を補正する。
つまり、本実施の形態では、従来の送風温度制御(送風初期は高温で、その後に標準値に低下させる温度制御)において、送風温度補正部63によってフィードフォワード制御を行い、諸条件に基づいて送風初期の送風温度の設定値(制御上の目標温度)を事前に好適な値に補正する。これによって、送風温度を迅速かつ容易に好適な温度範囲に立ち上げることができるので、簡素な制御で冷感を有効に緩和することができるだけでなく、被乾燥面においての過加熱も回避することもでき、しかも、短時間で効率のよい乾燥処理も可能となる。
送風温度補正部63による送風温度の設定値(目標温度)の補正処理(以下、目標温度補正処理という)について、図13に基づいて、より具体的に説明する。図13においては、縦軸は送風温度(単位:℃)、横軸は温風乾燥部40による温風の送風(乾燥運転)の経過時間(単位:秒)であり、温度値Twは前記加温値である。
また、図13において、温度値Thは、以下の「下限値」と「上限値」との間の温度範囲の中から選択される「設定値」である。すなわち、温度値Thは、使用者が感じる温度として、「冷たいと感じる温度領域から温かいと感じる温度領域へ温度が上昇する場合(または、温かいと感じる温度領域から冷たいと感じる温度領域へ温度が低下する場合)における、使用者が冷たいと感じる温度領域と使用者が冷たくないと感じる温度領域との境界値」を「下限値」とし、「温かいと感じる温度領域から熱いと感じる温度領域へ温度が上昇する場合(または、熱いと感じる温度領域から温かいと感じる温度領域へ温度が低下する場合)における、使用者が温かいと感じる温度領域と使用者が熱いと感じる温度領域との境界値」を「上限値」とし、これら「下限値」以上「上限値」以下の温度範囲の中から設定することができる。これら「下限値」及び「上限値」は、本発明の衛生洗浄装置が使用される環境等に適合するように、実験やシミュレーションなどにより決定することができる。なお、この設定値Thは、後述する「移行段階」において設定される温度値であることから、後述する補正前の目標温度である設定値Tsと区別する便宜上、以下、「移行設定値」Thと称する。
さらに、図13において、温度値Taは、使用開始前の使用者の局部近傍(被乾燥面近傍)の雰囲気温度(雰囲気値)であり、温度値Tyは前記のとおり標準値である。なお、加温値Twは前記冷感限界値Tc以上の値として設定され、雰囲気値は、通常室温である。
図13に示すように、温風乾燥部40による温風の送風(乾燥運転)を、時間t0で開始したとすれば、理想的な送風温度は、図中破線で示される目標温度となればよい。すなわち、乾燥運転の開始直後t0で送風温度は室温Taから加温値Twまで一気に上昇し、その後、空気噴射部50により被乾燥面から水滴が除去されるまでの時間t2まで加温値Twが維持され、その後、時間t3が経過するまで移行設定値Thまで送風温度を低下させ、さらにその後、送風温度を標準値Tyにまで低下させ、乾燥を継続する。時間t4は乾燥運転が停止した時間である。
ところが、一般的なPID制御で、前記目標温度を実現しようとすると、図中二点鎖線で示されるPID実測値のようにオーバーシュートが生じる。つまり、温風乾燥部40が備える温風ヒータ44が迅速に動作しても、エアファン41からの空気流をすぐに加温値Twまで温めることはできず、タイムラグが生じ、それゆえ、設定上では移行設定値Thに低下すべき時点である時間t2以降で、送風温度が加温値Twに達している。この場合、被乾燥面は過加熱状態にあるため、使用者は、温風を受けて冷たさは感じないが、熱さを感じてしまうことになる。
そこで、本実施の形態では、前記目標温度が図中点線で示される補正目標温度となるように、時間t0から時間t1が経過するまでの期間と、時間t1から時間t2が経過するまでの期間のそれぞれにおいて、送風温度補正部63により目標温度補正処理を行い、この補正後の目標温度に基づいて、演算部61により温風乾燥部40が制御される。
前記時間t0から時間t1が経過するまでの期間は、被乾燥面は最も濡れている状態にあるので、この期間における温風の送風温度が加温値Twを下回ると、使用者は冷たさを感じる。そこで、この期間では、温風ヒータ44に大電力を投入して、送風温度を冷感限界値Tc以上の加温値Twに一気に到達させる必要がある。この期間を、温風ヒータ44を起動させる「起動段階」と定義すれば、この起動段階では、送風温度補正部63による目標温度補正処理が常に必要となる。
また、前記時間t1から時間t2が経過するまでの期間は、十分乾燥していない状態の被乾燥面に対して、温風が送風されるとともに空気噴射部50からエアが噴射されている。そのため、この期間では、被乾燥面を十分に加温することを優先する必要がある。この期間を、被乾燥面を加温するための「加温段階」と定義すれば、この加温段階では、送風温度が加温値Twを維持するように、送風温度補正部63による目標温度補正処理が行われることが好ましい。
ここで、例えば、夏季では、室温が相対的に高くなるため、起動段階において、送風温度が一気に加温値Twまで到達すれば、その後の加温段階でも加温値Twを十分維持できるため、この段階では図13に示すような補正は行わなくてよい。したがって、送風温度補正部63による目標温度補正処理は、少なくとも起動段階で行われるものであって、加温段階では必要に応じて適宜行われればよい。また、加温段階で目標温度補正処理を行うか否かについては、フィードフォワード制御で利用される諸条件に応じて適宜選択するように制御することができる。
なお、起動段階および加温段階以降については、衛生洗浄装置101の使用環境や使用条件等に応じて、適切な温度設定または目標温度補正処理が行われればよい。
例えば、図13において、時間t2から時間t3が経過するまでの期間は、被乾燥面から水滴が除去されて乾燥が徐々に進行している状態にある。乾燥が進行すれば蒸発潜熱が奪われなくなるため被乾燥面の温度が上昇しやすくなる。それゆえ、この期間では、被乾燥面が熱くならない程度で乾燥をより進行させることが優先されるので、送風温度を加温値Twから標準値Tyへ適切に移行させることが求められる。この期間を、送風温度を標準値Tyに移行させるための「移行期間」と定義すれば、この移行段階では、目標温度として、加温値Tw(本実施の形態では冷感限界値Tc)よりも低く標準値Tyよりも高い温度値(説明の便宜上、中間値と称する)が少なくとも1つ設定されていればよい。図13では、この移行段階では、前記中間値として移行設定値Thが設定されている。
なお、前記のとおり、本実施の形態では、移行段階で設定される目標温度は1つの中間値(移行設定値Th)であるが、目標温度として複数の中間値が設定され、その中の1つに移行設定値Thが含まれていてもよい。例えば、中間値として、移行設定値Thより高い温度値、移行設定値Thより低い温度値、およびこれらの双方が設定されてもよい。この場合、移行段階は複数の下位の段階に分割されるので、加温値Twから標準値Tyまで緩やかな温度変化を実現することができ、使用者にとっては急な送風温度の変化による違和感がなくなる。あるいは、室温が高い場合や低い場合には、起動段階の起動調整値や加温値Twの補正も異なってくるので、これに合わせて、移行段階に設定される中間値を移行設定値Th以外の温度値に変更したり、中間値を複数に増やしたり、さらには中間値をなくしたりすることも可能である。
また、時間t3から時間t4が経過するまでの期間は、被乾燥面は乾燥が十分進行した状態となっているので、その後、使用者の好みに応じて乾燥をどの程度継続するかが選択されることになる。また、この期間では、基本的には、被乾燥面に対するエアの噴射は終了しているので、被乾燥面には乾燥の仕上げとして、標準値Tyの温風のみが送風されている状態ということができる。それゆえ、この期間は、送風温度を、長時間送風しても熱くならない温度である標準値Tyに維持する「乾燥継続段階」であるということができる。その後、使用者が遠隔操作部120の停止スイッチ211を操作すれば、乾燥運転が終了(時間t4)することになる。
このように、送風温度補正部63により目標温度補正処理を行い、演算部61により温風乾燥部40が制御されれば、図中実線で示されるFF実測値のように、送風温度は目標温度(設定値)に順じて良好に変化する。したがって、使用者は温風を受けても冷たさも熱さも感じることがなく、かつ、被乾燥面は空気噴射部50により水滴が除去されているため、迅速な乾燥が可能となる。
送風温度補正部63による目標温度補正処理は、予め設定された補正基準に基づいて加温値Twを補正することで行われる。具体的には、本実施の形態では、次に示す式(1)により、目標温度として設定されている加温値Twが補正される。なお、式(1)においては、Txは補正された温度値であり、Rは数値が1以下の補正係数であり、Tsは送風温度の設定値であり、Taは、室温検出部72による室温の検出値である。時間t0から時間t2までの設定値Tsは、本実施の形態では、加温値Twである(Ts=Tw)。
Tx=Ts+R×(Ts−Ta) ・・・(1)
前記式(1)による目標温度補正処理が実行される期間は、本実施の形態では、図13に示すように、起動段階(時間t0〜t1)および加温段階(時間t1〜t2)であり、少なくとも起動段階のみで目標温度補正処理が行われればよいが、移行段階や乾燥継続段階でも目標温度補正処理が行われてもよい。
なお、前記式(1)により加温値Twが温度値Txに補正されたとしても、この温度値Txは、実際の送風温度ではなく制御上で設定される目標温度である。例えば、加温値Tw=60℃に設定され、室温の検出値Ta=20℃であって、補正係数R=0.5であるとすれば、起動段階の温度値Tx1=80℃となり、このような高温の温風が実際に温風乾燥部40から送風されるわけではない。この温度値Tx1は、実際の送風温度が加温値Tw=60℃となるまでの時間のずれを考慮して補正された補正目標温度である。なお、説明の便宜上、図13における起動段階での補正後の温度値Tx1を「起動調整値」と称し、加温段階における補正後の温度値Tx2を、加温値Twよりも高く起動調整値Tx1よりも低い温度値である「加温調整値」と称する。
ここで、送風温度補正部63による目標温度補正処理は、どのような手法で行われてもよいが、本実施の形態では、温風乾燥部40が、エアファン41で形成された空気流を温風ヒータ44で加熱して温風を生成しているため、温風ヒータ44の加熱出力を調整する手法を用いている。この手法は、制御上で目標温度を直接補正するのではなく、温風ヒータ44の加熱出力を調整することで、生成される温風の送風温度の目標温度が結果的に補正されるという間接的な手法である。温風乾燥部40がエアファン41および温風ヒータ44を備える構成であれば、温風ヒータ44の加熱出力の調整は、簡素な制御で実現することができる。
なお、温風ヒータ44の出力値から空気流に対する加熱量は明らかな数値として見出せるので、当該加熱量と空気流の体積とから温度変化は容易に算出でき、それゆえ、加熱出力の調整が、目標温度(設定値Ts)の間接的な補正に当たることはいうまでもない。また、本実施の形態では、目標温度補正処理の具体的手法は、温風ヒータ44の出力値(加熱量)を調整する構成に限定されず、エアファン41の送風量を調整する制御であってもよいし、温風ヒータ44に印加される電圧を調整する制御であってもよいし、これら出力値、送風量、および電圧のいずれか2つ以上を調整する制御であってもよいこともいうまでもない。
送風温度補正部63による温風ヒータ44の加熱出力の調整による目標温度補正処理について具体的に説明する。図14に示すように、温風ヒータ44の加熱出力を乾燥運転が行われている段階ごとに設定することで、当初の目標温度(設定値Ts)から補正目標温度(温度値Tx)に補正されることになる。図14においては、縦軸は温風ヒータ44の加熱出力(単位:W)、横軸は温風乾燥部40の乾燥運転の経過時間(単位:秒)である。
まず、起動段階(時間t0〜t1)を第1段階とすれば、この第1段階では、前記のとおり、被乾燥面は最も濡れている状態にある。そこで、温風ヒータ44に大電力を投入するために、最大の出力値Q1(単位:W)となるように、加熱出力の設定値(目標出力)が補正される。次に、加温段階(時間t1〜t2)を第2段階とすれば、この第2段階では、被乾燥面は十分乾燥していない状態であり、この被乾燥面に空気噴射部50からエアが噴射されている。そこで、加温値Twまたは加温調整値Tx2(図13参照)を実現する出力値Q2が設定される。
次に、移行段階(時間t2〜t3)を第3段階とすれば、この第3段階では、被乾燥面から水滴が除去されて乾燥が進んだ状態にあるので、前記のとおり、移行設定値Thを実現する出力値Q3が設定される。この出力値Q3は初期設定として設定されてもよいし、送風温度補正部63で補正されて実現されてもよい。次に、乾燥継続段階(時間t3〜t4)を第4段階とすれば、この第4段階では、乾燥の継続は使用者の選択事項となるので、標準値Tyを実現する出力値Q4が設定される。その後、使用者が遠隔操作部120の停止スイッチ211を操作すれば、乾燥運転が終了する。
なお、本実施の形態では、前記のとおり、温風ヒータ44の加熱出力(温風の送風温度の設定値)は、4段階となるように設定されているが、この段階数に限定されず、移行段階を複数の下位の段階に変更するなどによって、5段階以上となってもよいし、移行段階を無くすことによって3段階としてもよい。また、移行段階では、加熱出力を段階的ではなく連続的に変化させてもよい。
本実施の形態では、送風温度補正部63による目標温度補正処理は、検出センサ部70に含まれる室温検出部72で検出される室温と、乾燥運転の経過時間を基準とする補正係数である過渡係数と、を用いて行われる。前記のとおり、送風温度の補正における最大の外乱要因は、エアファン41により吸気される空気の温度であるので、室温の検出値Taを上記の「エアファン41により吸気される空気の温度」とみなして、フィードフォワード制御に利用し、設定値Tsを補正後の温度値Txに補正するための補正量を予測する。
また、前記のとおり、送風温度補正部63による目標温度補正処理は、少なくとも起動段階(第1段階)において行われればよく、図13に示すように、起動段階および加温段階(第1段階および第2段階)の双方において行われるとより好ましいが、本実施の形態では、さらに好ましい例として、第1段階から第4段階の全てについて目標温度(設定値Ts)の補正を行う構成を例示する。
具体的には、図14に示される温風ヒータ44の出力値Q1〜Q4は、次に示す式(2−1)により算出される。なお、式(2−1)においては、Q*は前記出力値Q1〜Q4のいずれかであり、Kは係数であり、Tsは第1段階から第4段階のそれぞれの段階で設定される送風温度の設定値であり、Taは室温の検出値である。
Q* = K×(Ts−Ta) ・・・(2−1)
第1段階から第4段階までの各段階を決定する所定時間t1〜t4は、予め設定されている。例えば、第1段階を決定する第1の所定時間t1=5秒であり、第2段階を決定する第2の所定時間t2=20秒である。したがって、第2段階の長さは15秒となる。また、第3段階を決定する第3の所定時間t3=40秒であるので、第3段階の長さは20秒となる。また、第4段階については、乾燥運転についての上限時間を決定しておくことで、必要以上に温風乾燥部40が動作することを回避できる。上限時間すなわち第4の所定時間t4=340秒であり、乾燥運転は、最長で5分40秒継続されることになる。
また、前記係数Kは、次に示す式(2−2)により算出される。なお、式(2−2)においては、Cは空気の比熱であり、ρは空気の密度であり、Vはエアファン41の風量であり、Dは過渡係数である。
K = C×ρ×V×D ・・・(2−2)
ここで、前記過渡係数Dとは、送風温度補正部63による目標温度補正処理において、雰囲気温度(室温Ta)以外に用いられる条件であって、乾燥運転の経過時間を基準とした補正係数である。具体的には、過渡係数Dは、送風温度を短時間で目標温度に近づけるための1以上の係数として設定され、第1段階から第4段階のそれぞれにおいて、予め実験的に求められて設定される。例えば、第1段階の過渡係数D1=2、第2段階の過渡係数D2=1.4、第3段階の過渡係数D3=1.2、第4段階の過渡係数D4=1となる第1の組合せや、あるいは、第1段階の過渡係数D1=1.5、第2段階の過渡係数D2=1.1、第3段階の過渡係数D3=1、第4段階の過渡係数D4=1となる第2の組合せが具体的に挙げられる。なお、これら過渡係数Dは、小数点以下の数値(D−1)が、前記式(1)における補正係数Rに相当する。
送風温度の設定値Ts(目標温度の具体的数値)は、第1段階から第4段階でそれぞれに予め定められていればよく、例えば、第1段階の設定値Ts1(加温値Tw)=60℃、第2段階の設定値(加温値Tw)Ts2=60℃、第3段階の設定値(移行設定値Th)Ts3=50℃、第4段階の設定値(標準値Ty)Ts=40℃である。これら設定値Tsは、本実施の形態では、遠隔操作部120の温風温度調整スイッチ240の「高」「中」「低」の設定を切り換えることで変更することができる。例えば、「中」設定を基本として「高」設定で+3℃上昇させ、「低」設定で−3℃下降させる。
室温の検出値Taは、乾燥運転が開始された時点t0において、室温検出部72により検出される温度値である。この温度値は、第1段階から第4段階のそれぞれで出力値Q1〜Q4を算出するときに用いられるので、乾燥運転が開始してから終了するまでは、乾燥運転の雰囲気温度は一定であると見なされる。これにより、温風の影響で温風ヒータ44の出力値が変動して不安定となる事態を防止することができる。
本実施の形態では、前記第1〜第4の所定時間t1〜t4、送風温度の設定値Ts1〜Ts4、係数Kをテーブルとして記憶部62に記憶させておく。そして、制御部60Aは、室温検出部72で検出された室温の検出値Taを取得して、係数Kおよび設定値Tsをテーブルから選択して、温風ヒータ44の加熱出力Q1〜Q4を算出する。これにより、送風温度は設定値Tsから補正されることになるので、制御部60Aは、温風ヒータ44の通電比率を変化させることにより、第1段階から第4段階にかけて当該温風ヒータ44の加熱出力を出力値Q1からQ4に変化させるように制御する。
なお、少なくとも第4段階については、出力値Q4は初期設定値として記憶部62に記憶されていてもよい。これは、前記の例では、第4段階の過渡係数D4=1であり、この場合に変動する数値は室温の検出値Taのみであることから、毎回の乾燥運転時に出力値Q4を算出する必然性が小さいためである。同様に、第3段階についても、同段階の過渡係数D3が1に近づけば近づくほど、毎回の乾燥運転時に出力値Q3を算出する必然性が低くなるため、初期設定値として記憶部62に記憶されていればよい。第1段階から第4段階のうち、最も補正が必要な段階は、被乾燥面の濡れの程度が大きい第1段階である。したがって、送風温度補正部63は、少なくとも第1段階のみで前記補正を行うようになっていればよい。それゆえ、記憶部62には、少なくとも、起動段階において送風温度を補正するために用いられる起動補正係数(前記の例では、過渡係数D1)が記憶されていればよく、加温段階において送風温度を補正するために用いられる加温補正係数(前記の例では、過渡係数D2)が記憶されているとより好ましい。
また、本実施の形態では、補正係数として、乾燥運転の経過時間を基準とする過渡係数が用いられているが、これに限定されず、他の補正係数が用いられてもよい。衛生洗浄装置101が設置される諸条件に応じて、実験的にさまざまな補正係数を求めておき、これを記憶部62に記憶させておけばよい。
このような目標温度補正処理を含む制御部60Aによる乾燥運転の制御の一例について、図15に基づいて説明する。まず、制御部60Aは、遠隔操作部120の乾燥スイッチ214が操作されたか否かを判定する(ステップS101)。操作されていなければ(ステップS101でNO)、当該判定を繰り返し、操作されていれば(ステップS101でYES)、室温検出部72で室温が検出される。この室温は、使用者の局部近傍(被乾燥面近傍)の雰囲気温度と見なされる(ステップS102)。次に、室温(雰囲気温度)の検出値と前述した式(2−1)と記憶部62に記憶されているデータを用いて、送風温度補正部63が目標温度(設定値Ts)を補正する。前記の例では、温風ヒータ44の加熱出力が調整されることにより目標温度(設定値Ts)が間接的に補正される(ステップS103)。
その後、制御部60Aは、送風温度補正部63による補正後の数値に基づいて、温風乾燥部40を動作させるが、まず、エアファン41よりも先に温風ヒータ44を動作させ(ステップS104)、その後、エアファン41を動作させる(ステップS105)。本実施の形態では、このようにエアファン41よりも先に温風ヒータ44を動作させることで、放熱の少ない状態で、温風ヒータ44に大電力を一気に通電することにより、温風ヒータ44の昇温速度が増大し、それゆえ、温風ヒータ44の起動時間および加温値Twまでの上昇時間を高速化することができる。
次に、制御部60Aは、空気噴射部50を動作させ、被乾燥面にエアを噴射させる(ステップS106)。このエアの噴射は、具体的には、前述したように、空気噴射第1ステップから第5ステップとして実行される(図8、図9(b)および(c)、図10(b)および(c)、図13、図14参照)。
そして、制御部60Aは、遠隔操作部120の停止スイッチ211が操作されたか否かを判定する(ステップS107)。操作されていなければ(ステップS107でNO)、当該判定を繰り返し、操作されていれば(ステップS107でYES)、温風乾燥部40(温風ヒータ44およびエアファン41)と空気噴射部50の動作を停止し、制御を終了する。
なお、前記制御においては、エアファン41および温風ヒータ44を同時に起動させ、エアファン41による送風量を徐々に上げるというソフトスタートを実行してもよい。言い換えれば、制御部60Aは、エアファン41および温風ヒータ44のいずれも同時に動作を開始させるが、エアファン41については、温風ヒータ44において起動段階が開始してから送風量を増加させるように制御してもよい。これによっても、温風ヒータ44の起動時間および加温値Twまでの上昇時間を高速化することができる。
また、本実施の形態における乾燥運転は、図15に示すような、温風乾燥部40および空気噴射部50を同時に動作させる運転モード(第1乾燥運転モード)だけではなく、空気噴射部50のみを動作させ、被乾燥面にエアのみを噴射する運転モード(第2乾燥運転モード)、あるいは、温風乾燥部40のみを動作させ、被乾燥面に温風のみを送風する運転モード(第3乾燥運転モード)も選択することができる。これら運転モードの選択は、遠隔操作部120の乾燥モード選択スイッチ220a,220b,220c、ならびに温風温度調整スイッチ240を操作することにより実現される。
具体的には、図3(a)に示す遠隔操作部120において、乾燥モード選択スイッチ220aを操作すれば、「急速乾燥運転」が選択されるので、図15に示す第1乾燥運転モードが実行され、被乾燥面の乾燥を短時間に終了することができる。また、乾燥モード選択スイッチ220bを操作すれば、「しっかり乾燥運転」が選択される。この「しっかり乾燥運転」は、基本的に第1乾燥運転モードと同様であるが、運転時間をより長く変更することによって、被乾燥面の水滴を確実に除去する運転モードとなっている。
また、乾燥モード選択スイッチ220cを操作すれば、「温風乾燥運転」が選択されるので、空気噴射部50は動作せずに温風乾燥部40のみが動作し、第3乾燥運転モードが実行される。ただし、第3乾燥運転モードでは、温風のみが被乾燥面に当たるため、送風温度補正部63による目標温度補正処理では、各設定データ(第1〜第4段階における時間設定、送風温度の設定値Ts、過渡係数D)を、第1乾燥運転モードの各設定データから変更させておくことが好ましい。具体的には、第1乾燥運転モードでは、空気噴射部50によるエアが被乾燥面に当たることから、送風温度が高くなるように目標温度(設定値Ts)が補正されるが、空気噴射部50が動作しない第3乾燥運転モードでは、エアによる被乾燥面の冷却作用が生じないことを考慮して、目標温度(設定値Ts)を低く設定すればよい。
また、図3(b)に示す遠隔操作部120の温風温度調節スイッチ240を「切」設定にし、かつ、乾燥モード選択スイッチ220aを操作すれば、第2乾燥運転モードが選択され、エアのみが被乾燥面に噴射される。この運転モードは、特に夏場など気温が高い場合に選択されるように構成されている。
[目標温度補正処理に関する各種条件の評価]
本実施の形態においては、使用者にとっての温冷感を判定するために7段階の温冷感指標を作成し、当該温冷感指標に基づいて、送風温度補正部63による目標温度補正処理に関する温度条件および経過時間条件を評価している。この点について、具体的な試験方法およびその結果とともに説明する。図16(a)は、温冷感指標別の乾燥運転の経過時間と温風の送風温度との関係を示すグラフであり、図16(b)は、乾燥運転が開始されてから10秒後の温冷感と温風の送風温度との関係を示すグラフである。図17は、温風の送風が開始してからの温冷感または送風温度との関係を示すグラフであり、上側が温冷感と経過時間との関係を示し、下側が送風温度と経過時間との関係を示す。
人間の温冷感は敏感なものであり、非常に微妙な条件によって異なることに加え、個人差も大きなものとなっている。そこで、本発明者らは、温冷感を7段階に分け、この温冷感指標に基づいて、前述した送風温度の好適な値を設定した。具体的には、前記7段階の指標としては、「非常に熱い」を「+3」、「熱い」を「+2」、「温かい」を「+1」、「どちらでもない」を「0」、「涼しい」を「−1」、「冷たい(寒い)」を「−2」、「非常に冷たい(非常に寒い)」を「−3」として評価した。
そして、本実施の形態に係る衛生洗浄装置101において、モニター項目として、雰囲気温度としての室温、温風送風口42での送風温度(出口温度)、便座部130の本体部110側の縁部における送風温度(便座縁部温度)、肛門近傍の送風温度、臀部の表面温度、肛門近傍の表面温度、温風ヒータ44の消費電力、および温風ヒータ44の印加電圧の8項目を選定した。
そして、次の2種類の手順で、前記モニター項目を測定しながら、同一の評価者により、条件を変更させて送風温度と温冷感との関係を評価する試験を複数回行った。
第1の手順は、温風の送風温度と温冷感との関係を評価するための試験手順である。まず、温風乾燥部40の運転を開始して、出口温度を安定させた。その後、共用ノズル部20を肛門位置まで突出させてから、エアポンプ51を動作させ、共用ノズル部20からエアの噴射の待機状態とした。この時点では評価者は、便座部130には着座していない。そして、評価者の被乾燥面にスプレーにより水滴を付着させてから(約1.5gの水をスプレーで2回噴霧)、便座部130に着座させ、エアの噴射と温風の送風を開始し、所定時間ごとに温冷感の評価を行った。
次に、第2の手順は、乾燥運転の開始から送風温度の立ち上がり時間と温冷感との関係を評価するための試験手順である。まず、評価者が便座部130に着座し、皮膚温度の初期値が雰囲気温度に適合するように調整した。次に、「おしり洗浄」を行うことにより、実際の洗浄動作による水滴を被乾燥面に付着させた(洗浄水温度38℃、洗浄水の流量0.5リットル/分で30秒間の洗浄)。その後、共用ノズル部20を肛門位置まで突出させてから、エアポンプ51を動作させ、共用ノズル部20からエアの噴射の待機状態とした。さらにその後、温風乾燥部40の運転を開始し、60秒が経過するか、評価者が熱く感じるか、に至るまで温冷感の評価を行った。
また、前記手順で変更した条件は次の通りである。まず、前記出口温度の設定を、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、および80℃にそれぞれ変更した。また、温風ヒータ44の電力設定を、0W、50W、100W、200W、および400Wのそれぞれで試験を行った。乾燥運転モードとして、温風の送風のみの場合(第3乾燥運転モード)、温風の送風およびエアの噴射の場合(第1乾燥運転モード)、およびエアの噴射のみの場合(第2乾燥運転モード)を設定し、それぞれについても試験を行った。また、比較として、臀部に対してスプレーで水滴を付着させず、乾燥した状態の実験を行った。さらに、1回の評価試験では、開始直後、5秒後、10秒後、20秒後、30秒後、40秒後、50秒後、および60秒後のそれぞれのタイミングで、温冷感の評価を行った。
なお、前記いずれの評価試験においても、エアの噴射条件は次の通りである。室温は18〜22℃の範囲内であり、温風の風量は0.3m3 /分であり、エアの流量は15リットル/分であり、エア噴射口21の直径は1mmであり、エア噴射口21から肛門までの距離は30mmであり、左右方向の揺動角度は±60°とし、前後方向の往復は1秒間に2往復とした。
前記第1の手順で評価した、温風の送風温度と温冷感との関係を、温冷感指標のランクごとに図16(a)のグラフに示す。このグラフにおいては、実線が温冷感指標2、二点鎖線が温冷感指標1.5、一点鎖線が温冷感指標1、長破線が温冷感指標−1、短破線が温冷感指標−1.5、点線が温冷感指標−2である。
この結果から、被乾燥面が濡れた状態でエアが噴射されると、送風温度が70℃であっても、熱いと感じ始める(温冷感指標2)のは、20秒を過ぎた時点である。また、送風温度が、一般的な温風の温度範囲である35〜55℃の範囲内であるとは、多くの場合涼しい(温冷感指標−1)と感じてしまい、送風温度が少し下がれば冷たい(寒い、温冷感指標−2)と感じてしまうことがわかった。また、経過時間が長くなればなるほど、いずれの温冷感指標も全体的に下降していく。例えば、特定の送風温度について見ると、送風温度が50℃の場合、経過時間が10秒であれば涼しい(温冷感指標−1)と感じるが、40秒を経過すると温かい(温冷感指標1)となり、評価者(使用者)にとっては、同じ温度でも短時間で急激に温冷感が変わることがわかった。
また、このときの乾燥運転が開始されてから10秒後の温冷感と温風の送風温度との関係を図16(b)のグラフに示す。このグラフにおいて、三角形のマークは、被乾燥面が乾燥した状態でエアの噴射がなく温風の送風のみの試験の結果であり、正方形のマークは、被乾燥面が乾燥した状態でエアの噴射とともに温風の送風も行ったときの試験の結果であり、菱形のマークは、被乾燥面が濡れた状態でエアの噴射がなく温風の送風のみの試験の結果であり、丸のマークは、被乾燥面が濡れた状態でエアの噴射とともに温風の送風も行ったときの試験の結果である。この結果から、被乾燥面が濡れていなければ、温冷感指標は2ポイントシフトすることが明らかとなった。
ここで、『電装基板関連評価手法集』(1995年11月作成、2004年12月改訂、東京ガス株式会社、大阪ガス株式会社、東邦ガス株式会社編)の「高温出湯に関する考え方」によれば、温水によるやけどでは、一定期間の温水への曝露によっても安全である温度としては、10秒間であれば55.5℃、30秒間であれば52.5℃、2分間であれば50℃であると報告されている。ところが、被乾燥面が濡れた状態でエアが噴射されると、図16(b)のグラフに示すように、50〜55℃の温度範囲では、明らかに温かいと感じない。ところが、図16(a)にグラフに示すように、経過時間が長くなるほど、温かい、あるいは、熱いと感じる送風温度は低いものとなる。
本発明者らは、これらの結果から検討した結果、衛生洗浄装置101の乾燥運転時において、使用者が冷たさを感じず、かつ、熱いと感じない温度条件は、送風温度が、20秒で70℃以下かつ35℃以上、30秒で63℃以下かつ33℃以上、40秒で60℃以下かつ30℃以上であればよく、望ましくは、20秒で68℃以下かつ40℃以上、30秒で60℃以下かつ37℃以上、40秒で55℃以下かつ35℃以上であり、さらに望ましくは、は、20秒で62℃以下かつ44℃以上、30秒で55℃以下かつ41℃以上、40秒で51℃以下かつ38℃以上であることを独自に見出した。
また、前記第2の手順で評価した、乾燥運転の開始から送風温度の立ち上がり時間と温冷感との関係を図17のグラフに示す。図17の上下のいずれのグラフにおいても、二点鎖線が、温風ヒータ44の電力設定が400Wの場合の結果を示し、一点鎖線が、温風ヒータ44の電力設定が200Wの場合の結果を示し、長破線が、温風ヒータ44の電力設定が100Wの場合の結果を示し、短破線が、温風ヒータ44の電力設定が50Wの場合の結果を示す。また、図17の上側のグラフでは、菱形のマークが、400Wの場合の結果を示し、丸のマークが、温風ヒータ44の電力設定が200Wの場合の結果を示し、正の三角形のマークが、温風ヒータ44の電力設定が100Wの場合の結果を示し、正方形のマークが、温風ヒータ44の電力設定が50Wの場合の結果を示し、逆三角形のマークが、温風ヒータ44の電力設定が100Wの場合、すなわち、温風ヒータ44が動作していない場合の結果を示す。
使用者が少なくとも冷たくないと感じる条件としては、温冷感指標−1以上となる条件であるので、図17に示す結果から、送風温度が5秒(図17で細い破線)で40℃以上、10秒で50℃以上となる条件が導き出された。
また、温冷感指標0以上の条件であれば、一般的な使用者の大部分が冷たいと感じないことが想定されるので、より好ましい条件は、送風温度が5秒で50℃以上、10秒で60℃以上、ただし、10秒以内で75℃以下となる条件であった。
このように、本実施の形態においては、目標温度における加温値Twは、少なくとも40℃以上75℃以下の範囲内となるように設定されることが特に好ましい。また、起動段階および加温段階がいずれも10秒以内となり、かつ、起動段階は加温段階よりも短い時間(5秒以内)となるように設定されていることが特に好ましい。また、送風の開始時点から移行段階が終了するまでの時間が40秒以内となり、かつ、起動段階および加温段階の合計時間が20秒以内となるように設定されていることが特に好ましい。
もちろん、これら送風温度および経過時間の条件は、前記範囲内に限定されるものではなく、衛生洗浄装置101の具体的な構成、設置されるトイレットルームの環境等の諸条件に応じて、図16および図17等の結果を参照して適宜設定することができる。
以上のように、本実施の形態では、共用ノズル部20からエアが被乾燥面に噴射される際に、温風乾燥部40で生成された温風が被乾燥面に吹き付けられており、しかも、この温風は、被乾燥面が濡れた状態であっても使用者が冷たいと感じなくなる温度値(冷感限界値Tc)以上となるように、目標温度補正処理が行われている。それゆえ、より効率のよい乾燥が可能になるとともに、使用者にとっては冷感をほとんど感じることがなく、良好な使用感を得ることができる。
なお、本実施の形態に係る衛生洗浄装置101は、空気噴射部50がエアポンプ51を備え、温風乾燥部40がエアファン41を備える構成となっているが、本発明は、これに限定されるものではなく、たとえばエアポンプ51がなくエアファン41のみで乾燥する衛生洗浄装置であっても、温風ヒータ44を備えていれば、本実施の形態と同様の構成により同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、室温検出部72によりトイレットルームの室温を検出し、これを被乾燥面近傍の雰囲気温度として利用しているが、これに限定されず、室温検出部72以外に、便器103内部の温度を検出する温度検出部を設け、この温度検出部から得られる温度値を雰囲気温度として利用してもよい。これによって、被乾燥面近傍の雰囲気温度をより正確に検出することができるので、送風温度補正部63による目標温度補正処理および制御部60Aによる温風乾燥部40の制御を、使用者にとってより快適なものとすることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態に係る衛生洗浄装置は、基本的に前記実施の形態1で説明した衛生洗浄装置101と同様の構成を有しているが、さらに、温風ヒータ44に余熱が残っているか否かを判定し、その判定結果を、送風温度補正部63による目標温度補正処理に利用する構成となっている。この構成について、図18ないし図20に基づいて説明する。
図18は、本実施の形態に係る衛生洗浄装置が備える制御部60Bの具体的な構成と、温風乾燥部40および空気噴射部50の要部を制御する構成とを示すブロック図である。図19は、図18に示す制御部60Bにおいて、余熱判定部64として停止経過時間判定部64aを備える構成を示す要部のブロック図である。図20は、図18に示す制御部60Bにおいて、余熱判定部64として、ヒータ余熱温度判定部64bを備える構成を示す要部のブロック図である。
本実施の形態に係る衛生洗浄装置は、図18に示すように、制御部60Bを備えており、制御部60Bは、演算部61、記憶部62、および送風温度補正部63を備えている点は、前記実施の形態1における制御部60Aと同様であるが、さらに余熱判定部64を備えている。なお、制御部60Bの送風温度補正部63は、前記実施の形態1と同様に目標温度補正処理を行い、演算部61は、遠隔操作部120の操作指令、室温検出部72の温度検出値、送風温度補正部63による温度補正結果等に基づき、エアファン駆動部45、温風ヒータ駆動部46、エアポンプ駆動部55および共用ノズル駆動部56を制御し、エアファン駆動部45、温風ヒータ駆動部46、エアポンプ駆動部55および共用ノズル駆動部56は、演算部61の制御に基づいて、それぞれ、エアファン41、温風ヒータ44、エアポンプ51、ノズル移動機構52を動作させる。なお、図18には図示されていないが、前記構成の制御部60Aは、洗浄水噴出部30を制御するよう構成されていることはいうまでもない。
制御部60Bに備えられる余熱判定部64は、温風ヒータ44の加熱動作が停止している状態で、当該温風ヒータ44に余熱が残っているか否かを判定するものであれば、その具体的な構成は特に限定されないが、本実施の形態では、図19に示す停止経過時間判定部64aまたは図20に示すヒータ余熱温度判定部64bが挙げられる。
停止経過時間判定部64aは、温風ヒータ44の加熱動作が停止してからの経過時間が、予め設定した上限時間内であれば、温風ヒータ44に余熱が残っていると判定するよう構成されている。図19に示す例では、演算部61により制御されるタイマー73から時間情報を取得し、演算部61の制御により温風ヒータ44の加熱動作が停止してからの時間が上限時間に達したか否かを判定し、上限時間に達していなければ、送風温度補正部63に対して、通常の補正係数ではない余熱補正係数を用いて目標温度補正処理を行わせる。
また、ヒータ余熱温度判定部64bは、温風ヒータ44の温度を測定するヒータ温度測定部74の測定結果から、当該温風ヒータ44の温度が予め設定した下限値以上であれば、温風ヒータ44に余熱が残っていると判定するよう構成されている。そして、余熱が残っていると判定された場合には、送風温度補正部63に対して、通常の補正係数ではない余熱補正係数を用いて目標温度補正処理を行わせる。
前記余熱補正係数は、前記実施の形態1における式(1)における補正係数Rとして用いられるものであって、温風ヒータ44に余熱が残っている場合を考慮した係数である。具体的には、例えば、前記実施の形態1では、式(2−1)および(2−2)を用いて、温風ヒータ44の加熱出力を調整することにより目標温度補正処理が行われていたが、これら式において用いられる過渡係数Dが、前記補正係数Rに対応する。
前記実施の形態1では、第1段階から第4段階までの各段階についてそれぞれ過渡係数の第2の組合せとして、D1=1.5、D2=1.1、D3=1、およびD4=1が設定され、記憶部62に記憶されていたが、これら過渡係数が標準の補正係数に対応するとすれば、本実施の形態では、さらに、余熱補正係数に対応する過渡係数として、D1=1.3、D2=1、D3=1、およびD4=1という、過渡係数の第3の組合せが別途設定され、記憶部62に記憶されている。
例えば、余熱判定部64が、停止経過時間判定部64aであって、経過時間の上限が5分であるとすれば、停止経過時間判定部64aにより温風ヒータ44の停止時間が5分以内であれば、送風温度補正部63は、過渡係数の第2の組合せを用いずに、第3の組合せを用いて目標温度補正処理を行う。これにより、余熱の影響による温風ヒータ44の温度立ち上がりを十分に考慮して目標温度補正処理を行うことができるので、より一層適切な温度補正が可能となる。
なお、停止経過時間判定部64aまたはヒータ余熱温度判定部64bの具体的な構成は特に限定されず、公知の判定回路を用いることができ、また、演算部61が記憶部62に格納されるプログラムに従って動作することにより実現される構成、すなわち制御部60Bの機能構成であってもよい。また、ヒータ温度測定部74の具体的な構成も特に限定されず、本実施の形態では、温風ヒータ44の近傍に設けられるサーミスタが用いられている。さらに、ヒータ温度測定部74は、温風ヒータ44の温度を直接測定するのではなく、温風ヒータ44の電気抵抗値から温風ヒータ44の温度を測定する構成であってもよい。
また、経過時間の上限値は5分に限定されず、同様に、温風ヒータ44の温度の下限値も特に限定されない。これら上限値または下限値は、温風ヒータ44の種類、形状、加熱能力、温風ヒータ44を備える温風乾燥部40の具体的な構成等により適宜設定されるものである。
また、本実施の形態では、標準補正係数とは別に余熱補正係数を設定して記憶部62に記憶させる構成としていたが、余熱補正係数を設定せずに、停止経過時間判定部64aまたはヒータ余熱温度判定部64bの判定結果に基づいて、標準補正係数を再設定することで余熱補正係数とすることもできる。この場合、停止時間が長かったり温風ヒータ44の温度が低かったりすれば補正係数を大きく設定し、停止時間が短かったり温風ヒータ44の温度が高かったりすれば補正係数を小さく設定すればよい。
(実施の形態3)
本実施の形態に係る衛生洗浄装置は、基本的に前記実施の形態1で説明した衛生洗浄装置101と同様の構成を有しているが、さらに、被乾燥面の温度または送風温度を検出し、その検出結果をフィードバック制御する構成となっている。この構成について、図21および図22に基づいて説明する。
図21は、本実施の形態に係る衛生洗浄装置が備える温風乾燥部40および空気噴射部50の第一の構成例と制御系統の概要とを示すブロック図であり、図22は、本実施の形態に係る衛生洗浄装置が備える温風乾燥部40および空気噴射部50の第二の構成例と制御系統の概要とを示すブロック図である。
図21に示す制御系統は、前記実施の形態1に係る衛生洗浄装置101が備える温風乾燥部40および空気噴射部50の制御系統(図5参照)と基本的に同一であるが、さらに、面温度検出部75を備え、この面温度検出部75により使用者の被乾燥面の温度を検出し、その検出値を制御部60Aに出力する点が異なっている。
また、図22に示す制御系統も、図5または図21に示す制御系統と基本的に同一であるが、前記実施の形態1の構成に加えて、送風温度検出部76をさらに備え、この送風温度検出部76により温風送風口42から吹き出す温風の送風温度を検出し、その検出値を制御部60Aに出力する点が異なっている。
面温度検出部75としては、公知の赤外線センサが用いられる。この面温度検出部75は、本体部110の底部において、便座部130に着座した使用者の被乾燥面に対向する位置に設けられている。
送風温度検出部76は、公知のサーミスタが用いられる。この送風温度検出部76は、本体部110において、温風乾燥部40の温風送風口42に面する位置に設けられてもよいが、本体部110から少し離れた便座部130の裏面で、被乾燥面に近接する位置に設けられてもよい。温風送風口42から送風された温風は、便座部130の下方から被乾燥面に至るまで、ほとんど送風温度が低下しにくく、または、送風温度が低下しても相関性が高いことが実験的に明らかとなっているためである。
面温度検出部75または送風温度検出部76により検出された温度値は、制御部60Aに出力され、制御部60Aでは、前記実施の形態1で説明した送風温度補正部63による目標温度補正処理と組み合わせて、フィードバック制御することにより、送風温度をより適切な温度値に補正する。
具体的には、例えば、面温度検出部75を備え、その検出値をフィードバック制御に利用する例について説明する。まず、被乾燥面の面温度を検出し、これをフィードバック制御に利用する方法としては、例えば、送風温度の設定値Tsを補正する方法、送風温度補正部63により補正された温風ヒータ44の出力値を補正する方法、および、予め設定されている温風ヒータ44の出力値を補正する方法が挙げられる。
送風温度の設定値Tsを補正する方法は、まず、制御部60Aは、前記実施の形態1で説明した送風温度補正部63による目標温度補正処理に基づいて、補正された温風ヒータ44の出力値Q1〜Q4を算出し、温風ヒータ44を制御する(フィードフォワード制御)。ここで、面温度検出部75に検出された検出値を面温度値Tbとすれば、この面温度値Tbは、被乾燥面がどの程度温まっているかを判定するための情報であるので、制御部60Aは、面温度値Tbが所定の温度範囲(例えば、25〜35℃の範囲内)より高ければ、設定値Tsを下げ、面温度値Tbが所定の温度範囲より低ければ、設定値Tsを上げるようフィードバック制御を行う。これにより、使用者が熱いと感じれば送風温度の設定値Tsが下げられ、使用者が冷たいと感じれば送風温度の設定値Tsが上げられ、その結果、送風温度の温度が好適な温度範囲となる。
具体的な設定値Tsの補正としては、面温度値Tbが45℃を超えていれば補正設定値Tsc=Ts−10℃に、35℃を超え45℃以下であれば、Tsc=Ts−5℃に、25℃を超え35℃以下であれば、Tsc=Tsに、15℃を超え25℃以下であれば、Tsc=Ts+5℃に、15℃以下であれば、Tsc=Ts+10℃に補正する例が挙げられる。
あるいは、他の数値の補正としては、Tbが30℃未満であればTsを65℃に設定し、Tbが30〜35℃の範囲内であればTsを60℃に設定し、Tbが35〜38℃の範囲内であればTsを53℃に設定、Tbが38〜40℃の範囲内であればTsを45℃に設定し、Tbが40℃以上であればTsを40℃に設定する例が挙げられる。
補正された温風ヒータ44の出力値を補正する方法は、フィードフォワード制御を行うまでは、前記方法と同様であるが、面温度値Tbが所定の温度範囲より高ければ、制御部60Aは、出力値として設定されているQ1〜Q4を徐々に下げ、面温度値Tbが所定の温度範囲より低ければ、前記Q1〜Q4を徐々に上げるようフィードバック制御を行う。これにより、使用者が熱いと感じれば温風ヒータ44の出力値が徐々に下げられ、使用者が冷たいと感じれば温風ヒータ44の出力値が徐々に上げられ、その結果、送風温度の温度が好適な温度範囲となる。
具体的な出力値Qの補正としては、面温度値Tbが45℃を超えていれば出力値Qを−10W/s補正し、35℃を超え45℃以下であれば、−5W/s補正し、25℃を超え35℃以下であれば、Qはそのままに、15℃を超え25℃以下であれば、Qを+5W/s補正し、15℃以下であれば、Qを+10W/s補正する例が挙げられる。
予め設定されている温風ヒータ44の出力値を補正する方法は、前記フィードフォワード制御において、設定値Tsを記憶させておくのではなく、室温の検出値Taを例えば20℃と仮定した上で、温風ヒータ44の出力値を算定して記憶部62に記憶させておく。そして、制御部60Aは、記憶部62から温風ヒータ44の出力値の設定値を呼び出してフィードフォワード制御を行うとともに、面温度値Tbが所定の温度範囲より高ければ、制御部60Aは、前記出力値を徐々に下げ、面温度値Tbが所定の温度範囲より低ければ、前記出力値を徐々に上げるようフィードバック制御を行う。これによっても、使用者が熱いと感じれば温風ヒータ44の出力値が徐々に下げられ、使用者が冷たいと感じれば温風ヒータ44の出力値が徐々に上げられ、その結果、送風温度の温度が好適な温度範囲となる。
具体的な出力値Qの補正としては、面温度値Tbが45℃を超えていれば出力値Qを−10W/s補正し、35℃を超え45℃以下であれば、−5W/s補正し、25℃を超え35℃以下であれば、Qはそのままに、15℃を超え25℃以下であれば、Qを+5W/s補正し、15℃以下であれば、Qを+10W/s補正する例が挙げられる。
また、例えば、送風温度検出部76を備え、その検出値をフィードバック制御に利用する例としては、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを組み合わせる制御方法が挙げられる。
この方法では、フィードフォワード制御を行うことは、前記実施の形態1で説明した制御と同様であるが、フィードフォワード制御と並行する形で、検出された実際の送風温度Tdと設定値Tsとの偏差ΔTに基づいて、温風ヒータ44の出力値を補正するフィードバック制御を行う。そして、フィードフォワード制御で得られた出力値Qffと、フィードバック制御で得られた出力値Qfbとから温風ヒータ44を制御する。
フィードバック制御における具体的な補正としては、前記偏差ΔTが10℃以上であれば、前記出力値Qfbを+10W/s補正し、5℃を超え10℃以下であれば+5W/s補正し、−5℃を超え5℃以下であれば、Qfbはそのままに、−10℃を超え−5℃以下であればQfbを−5W/s補正し、−10℃以下であれば−10W/s補正する。
このように、本実施の形態では、前記実施の形態1におけるフィードフォワード制御に、被乾燥面の温度または送風温度の検出によるフィードバック制御を組み合わせた構成となっている。この構成によれば、フィードフォワード制御によって、使用者に冷風感を与えることなく、また熱く感じることもない送風が可能となることに加え、フィードバック制御により、送風温度等の乾燥に関する諸条件を、使用者にとってより好適な条件に微調整することができる。その結果、局部の洗浄後の乾燥処理において、使用者に不快感を与えないだけでなく、さらに一層の快適感を与えることができる。
なお、本実施の形態では、室温検出部72および面温度検出部75または送風温度検出部76からの2種類の検出値を用いて制御を行っているが、面温度検出部75または送風温度検出部76からの検出値だけを用いてフィードバック制御してもよい。この場合は検出手段が少なくてすむ。さらに、室温検出部72、面温度検出部75および送風温度検出部76の3種類の検出値を用いて制御を行いより精密な制御をおこなってもよい。
また、本実施の形態では、温風ヒータ44の出力値を調整する制御例を挙げたが、これに限定されず、エアファン41の送風量を調整する制御であってもよいし、温風ヒータ44の出力値および送風量の双方を調整する制御であってもよい。
(実施の形態4)
本実施の形態に係る衛生洗浄装置は、基本的に前記実施の形態1で説明した衛生洗浄装置101と同様の構成を有しているが、共用ノズル部20におけるノズル揺動部の構成が異なっている。このノズル揺動部の構成について、図23に基づいて説明する。図23は、本実施の形態に係る衛生洗浄装置が備える、共用ノズル部の構成を示す部分斜視図である。
図23に示すノズル揺動部80は、前記実施の形態1のノズル移動機構52が備えるノズル移動部57のように、円柱状のノズルを軸方向に回転(自転)させるのではなく、円柱状のノズルの後端を固定し、先端側を振り回すように揺動する構成となっている。
具体的には、ノズル揺動部80は、揺動部支持スライダ83を本体とし、その上面に、ノズル本体20bの後端を固定して支持する円柱状の回転軸部81と第2駆動モータ54とが載置されて固定された構成を有している。また、揺動部支持スライダ83の下部には、前記実施の形態1におけるノズル支持スライダ58のノズル固定部58aと同様に、レール部56a・56aの間に挟み込ませ、載置面56cの上を長手方向に沿ってスライドさせるレール嵌合部83aが形成されている(図6参照)。なお、揺動部支持スライダ83の上面のうち、回転軸部81が載置される部位は、その下側が前記レール嵌合部となっており、第2駆動モータ54が載置される部位は、載置面56cの上から外れた位置にあり、その下側には、前記ノズル支持スライダ58と同様に、スライダガイド部57bを貫通させるガイド貫通部83bが形成されている。
回転軸部81は、揺動部支持スライダ83の上面の法線方向に軸方向が位置するように設けられる円柱状であり、その外周の一部に前記のようにノズル本体20bの後端が固定されている。また、回転軸部81の下部の周面には、第2駆動モータ54の回転軸に取り付けられている駆動歯車82とかみ合う外周歯車部82aが形成されている。また、回転軸部81の軸方向の中心は空洞となっており、ここに揺動部支持スライダ83の上面から垂直に延びる軸心83cが貫通している。なお、ノズル本体20bの内部構造は前記実施の形態1のノズル本体20aと同様であるので、その説明は省略する。
このノズル揺動部80とこれに固定されているノズル本体20bは、前記実施の形態1におけるノズル支持スライダ58および揺動歯車部57a、並びにノズル本体20aに代えて、ノズル支持部56gに設けられる。そして、このノズル揺動部80においては、前記実施の形態1におけるノズル移動部57とは異なり、ノズル本体20bが回転軸部81に一体的に接続され、このノズル本体20bが、矢印D4に示すように、回転軸部81を起点として振り回されるように往復揺動される。したがって、ノズル本体20bの先端が描く軌跡は扇状になる。
ノズル揺動部80においては、ノズル本体20bが進退移動する構成は前記実施の形態1におけるノズル移動機構52と同様であるが、ノズル本体20bを揺動させるための第2駆動モータ54の回転駆動力は、駆動歯車82および外周歯車部82aを介して回転軸部81に伝達されるので、前記実施の形態1のようにノズル本体20aを自転させて先端部を揺動させるのではなく、ノズル本体20bを所定の角度まで振り回して揺動させることになる。
前記構成によれば、エア噴射口21からのエアの噴流は、被乾燥面に対してほぼ垂直を保持して噴射させることができる。それゆえ、被乾燥面に付着する水滴を被乾燥面から剥離する作用を向上させることができる。また、エアが被乾燥面に当たったときに生じる、水滴を被乾燥面の外側に移動させようとする作用についても、より一層抑制することができる。それゆえ、前記実施の形態1における空気噴射第1ステップから第4ステップまでの水滴集中工程をより効率的に行うことができる。
さらに、前記実施の形態1のようにノズル本体20aを自転させずに、ノズル本体20bを振り回すように移動させるため、ノズル本体20bの先端部を揺動させてエアの噴流を左右に移動させても、被乾燥面に噴流が当たるまでの距離が大きく離れることがない。それゆえ、流速の大きい噴流を被乾燥面に当てることが可能となり、水滴を除去する能力をさらに一層向上することができる。
(実施の形態5)
本実施の形態に係る衛生洗浄装置は、基本的に前記実施の形態1で説明した衛生洗浄装置101と同様の構成を有しているが、室温検出部72に代えて図24に示す暦情報生成部77を備えている構成が異なっている。この構成について、図24に基づいて説明する。図24は、本実施の形態に係る衛生洗浄装置が備える温風乾燥部40および空気噴射部50の第一の構成例と制御系統の概要とを示すブロック図である。
図24に示す制御系統は、前記実施の形態1に係る衛生洗浄装置101が備える温風乾燥部40および空気噴射部50の制御系統(図5参照)と基本的に同一であるが、室温検出部72に代えて、暦情報生成部77を備え、生成された暦情報が制御部60Aに出力される点が異なっている。この暦情報生成部77としては、例えば、公知のカレンダータイマーが用いられる。また、図24には図示されない記憶部62(図7参照)には、暦情報に対応して複数設定されている、トイレットルームの周囲の温度の想定値が記憶されている。そして、送風温度補正部63は、暦情報生成部77から取得された暦情報から、複数の想定値のうちいずれかを選択し、当該想定値と前記加温値との偏差から、目標温度補正処理を行うように構成されている。
前記構成によれば、例えば季節ごとにトイレットルームの温度の変化を想定してテーブルとして記憶部62に記憶させておけば、温度検出を行わなくても、暦情報に基づいて好適な温度の想定値を取得して、目標温度補正処理を行うことができる。また、室温検出部72をさらに備えた構成であれば、制御部60Aにより1年間のトイレットルームの温度履歴を記憶部62にさせておき、暦情報に基づいて記憶部62から温度履歴を取得して目標温度補正処理を行うこともできる。
(実施の形態6)
本実施の形態に係る衛生洗浄装置は、基本的に前記実施の形態1で説明した衛生洗浄装置101と同様の構成を有しているが、温風乾燥部40の送風ダクト43が、空気噴射部50からのエアの噴射部位と被乾燥面との間に向けて温風を送風するように構成されている点が異なっている。この温風乾燥部40の異なる構成およびその動作等について、図25ないし図28に基づいて説明する。
図25は、本実施の形態に係る衛生洗浄装置が備える温風乾燥部40において、空気噴射部50からエアを被乾燥面に噴射すると同時に、温風を送風している状態を示す模式図である。図26は、図25に示す温風乾燥部40において、送風ダクト43に設けられている送風方向規制板の一例を示す模式的断面図である。図27は、図25に示す温風乾燥部40において、送風ダクト43に設けられている送風拡散板の一例を示す模式図である。図28は、本実施の形態に係る衛生洗浄装置における洗浄動作および乾燥動作の制御の一例を示すタイムチャートである。
図25に示すように、本実施の形態に係る衛生洗浄装置が備える温風乾燥部40は、前記実施の形態1において説明した温風乾燥部40と同様の構成を有しているが、温風乾燥部40が備える送風ダクト43は、空気噴射部50のエア噴射口21が形成する面と被乾燥面との間に温風を送風するように構成されている。
具体的には、図25に示すように、共用ノズル部20の先端部は、ノズル移動機構52(図示されない)により、使用者の局部およびその周囲である被乾燥面Fの広がりに対応するように移動する。それゆえ、前記先端部に形成されているエア噴射口21は、図中、実線および点線で示されるように、被乾燥面Fに対応するように移動し、図中点線の矢印A1(図5他参照)で示されるように、被乾燥面Fの全体にわたってエアが噴射される。なお、共用ノズル部20の先端部が移動する範囲を1つの仮想面である先端部移動面Mnと定義する。
そして、図25に示すように、送風ダクト43の先端部(すなわち温風送風口42)は、矢印A2−0で示されるように、被乾燥面Fと先端部移動面Mnとの間の空間Saに向かって、温風を送風するように配置されている。
このように温風を送風すると、エア噴射口21からエアが噴射される際に周囲の空気が誘引されるが、この誘引された空気のほとんどが温風送風口42から送風される温風となる。それゆえ、エアと誘引された温風とが混合して温まった空気の噴流が被乾燥面に吹き付けられることになる。その結果、使用者にとっては、エアの噴射が冷たく感じられるような事態が回避され、温度設定によっては、噴射されたエアを温かく感じさせることもできる。
また、本実施の形態においては、送風ダクト43の温風送風口42に、温風の送風方向を規制する送風方向規制板を設けるとより好ましい。この送風方向規制板としては、図26に示すように、温風送風口42の上側に設けられる送風口シャッタ43aと、温風送風口42の下側に設けられる下部風向ガイド43bとが挙げられる。
送風口シャッタ43aは、温風送風口42の上側の縁部に位置するシャッタヒンジ43cを介して送風ダクト43に回動自在に設けられ、温風が送風されていない状態では自重により閉じるので温風送風口42を塞ぎ、温風が送風された状態では、温風の風圧により上側に開くように構成されている。送風口シャッタ43aが閉じた状態では、温風送風口42が塞がれるので、送風ダクト43内への水の浸入を防止することができる。
下部風向ガイド43bは、温風送風口42の下側の縁部に位置するガイドヒンジ43dを介して回動自在に送風ダクト43に設けられている。その形状は、温風送風口42の幅全体にわたり、かつ、共用ノズル部20aの先端底部に接触するように、温風送風口42の外側に延長された細長い板状となっており、その長手方向の辺縁が、温風送風口42の下側の縁部に取り付けられている。また、下部風向ガイド43bは、ガイド付勢バネ43eによって上方向に付勢された状態で、ガイドヒンジ43dを介して回動自在となっている。なお、ガイド付勢バネ43eは、その一端が、下部風向ガイド43bにおける送風ダクト43の外側となる辺縁(前側の辺縁)に固定され、他端が送風ダクト43の内部の側壁面に固定されている。
図26に示すように、共用ノズル部20が本体部110内に収納されている位置を位置Paとすれば、この状態では、下部風向ガイド43bは、ガイド付勢バネ43eの付勢により図中点線で示す位置、すなわち送風ダクト43の下面に対して立った位置で保持される。そして、共用ノズル部20が、エアを噴射するために徐々に前進移動し、その先端面が位置Pbに達すると、下部風向ガイド43bの端部が共用ノズル部20の先端底部に当接することによって、送風ダクト43の内側から外側(前側)に向かって傾斜する(図中点線)。
その後、共用ノズル部20が十分に前進し、エアを噴射する位置Pcまで達すると、下部風向ガイド43bは、送風ダクト43の下面に沿うように倒れた位置で保持される。それゆえ、この状態では、温風の送風方向は、図中実線の矢印A2−1で示すように、ほぼ水平方向となる。この送風方向は、図25に示す被乾燥面Fと先端部移動面Mnとの間の空間Saに向かう方向に相当する。また、この状態では、送風口シャッタ43aは、室温より高い送風温度となっている温風が上側に逃げないように規制することになるので、温風が前記空間Saに向かう指向性はより向上する。
その後、共用ノズル部20によるエアの噴射が終了すれば、共用ノズル部20は後退するが、温風の送風が継続される場合には、図26に示すように、共用ノズル部20は、収納位置から少し前進した位置である前記位置Pbで停止する。この状態では、前記のとおり、下部風向ガイド43bは、送風ダクト43の内側から外側に向かって、少し傾斜した位置で保持されるので、温風の送風方向は、図中実線の矢印A2−2で示すように、斜め上方となる。この送風方向は、被乾燥面Fに直接向かう方向に相当する。この状態においても、送風口シャッタ43aは、前記と同様に、温風が上側に逃げないように規制することになるので、温風が被乾燥面Fに向かう指向性はより向上する。
その後、温風の送風が終了すれば、共用ノズル部20は、前記位置Paまで戻るので、下部風向ガイド43bは前記立ち上がった位置に保持される。さらにこの状態では、温風の送風が停止されているので、図26には図示されないが、送風口シャッタ43aが閉じた状態となる。
このように、本実施の形態では、温風乾燥部40に、温風の送風方向を規制する送風方向規制板を設け、共用ノズル部20からエアが噴射されている期間には、空間Saに向かって温風を送風するように送風方向を規制し、共用ノズル部20からのエアの噴射が停止している期間には、被乾燥面Fに向かって温風を送風するように送風方向を規制している。これによって、温風を適切な位置に確実に送風することができるので、乾燥効果および冷感緩和効果をより一層向上させることができる。
また、特に下部風向ガイド43bは、共用ノズル部20により押し開けられ、かつ、その角度が規制されるため、エアの噴射の動作と温風の送風方向の規制とを適切に連動させることができ、また、下部風向ガイド43bを傾斜移動させる機構を別途設ける必要がなく、構成を簡素化することができる。
なお、前記位置Pbを微小に変化させると、温風の送風角度も変化することになるので、遠隔操作部120の操作により共用ノズル部20の前進位置を微調整して前記位置Pbを変化させることで、送風角度を任意に変更することができる。また、制御部60Aの制御により、前記位置Pbが周期的に変化するように共用ノズル部20の前進移動を周期的に変化させれば、送風角度を周期的に変えることができる。このように構成することで、温風の送風を使用者の好みに合わせたり、乾燥の効果をより高めたりすることができる。
さらに、本実施の形態においては、送風ダクト43の温風送風口42に、温風を拡散する送風拡散板が設けられていることがより好ましい。この送風拡散板としては、図27に示すように、送風ダクト43内に設けられる複数の送風ガイド羽根43fが挙げられる。
図27に示すように、温風乾燥部40は、前進した状態の共用ノズル部20の側部に位置している(図中向かって左側)。そして、送風ダクト43は、温風乾燥部40の本体であるエアファン41(図27には図示されない)から見て、少し共用ノズル部20の側に傾斜している。これは、共用ノズル部20が、被乾燥面F内において洗浄水を噴出しエアを噴射するため、同じく被乾燥面Fに向かって温風を送風するためには、温風送風口42をより被乾燥面Fに近づけた方が好ましいためである。
さらに図27に示すように、送風ダクト43内には、複数の送風ガイド羽根43f(図27では3枚)が設けられている。この送風ガイド羽根43fは、前側の端部が温風送風口42近傍まで達するように配置され、かつ、送風ダクト43の縦方向に立設するように設けられている。この送風ガイド羽根43fは、温風を被乾燥面Fに向かうように傾斜して配置され、かつ、それぞれの送風ガイド羽根43fの送風ダクト43の延伸方向に対する傾斜角度は異なっている。図27では、最も共用ノズル部20に近い送風ガイド羽根43fが最も傾斜が大きく、共用ノズル部20から離れるほど傾斜は小さくなる。
前記構成によれば、図27に示すように、被乾燥面F全体に温風が拡散するように送風ガイド羽根43fの傾斜角度が設定されているため、温風乾燥部40からの温風は、図中矢印A2−3で示すように、被乾燥面Fおよび先端部移動面Mnとの間に形成される前記空間Sa全体に拡散させながら送風することができる。それゆえ、使用者にとっての冷感の緩和効果をさらに一層向上させることができる。
なお、送風ガイド羽根43fは、その傾斜角度を変更できるように、送風ダクト43内に設けられてもよい。また、本実施の形態では、複数の送風ガイド羽根43fを用いて風向きを偏向させているが、単一の送風ガイド羽根43fにより風向を偏向させる構成であってもよい。
次に、本実施の形態に係る衛生洗浄装置の具体的な洗浄動作および乾燥動作の制御について、図28に示すタイムチャートに基づいて説明する。本実施の形態に係る衛生洗浄装置は、基本的な構成が前記実施の形態1と同じであるため、洗浄動作および乾燥動作の制御も基本的に同じである。
ただし、図28に示すように、経過時間T7においては、図28の「IV.ノズル前後方向位置」に示すように、制御部60Aは、第1駆動モータ53を動作させて、共用ノズル部20を最前進の位置まで前進させるので、このとき、共用ノズル部20は、その先端部が図26に示される位置Pcに達するので、下部風向ガイド43bは、略垂直に立ち上がった位置から押し下げられ、略水平に倒れた位置に規制される。それゆえ、温風送風口42から送風される温風は、被乾燥面Fと先端部移動面Mnとの間の空間Saに向かって吹き出される。
また、経過時間T16においては、図28の「IV.ノズル前後方向位置」および「V.ノズル左右方向位置」に示すように、制御部60Aは、共用ノズル部20の前後方向を収納位置に移動させ、左右方向を中心角度に戻させる。このとき、共用ノズル部20は、その先端部が図26に示される位置Pbに後退しているので、下部風向ガイド43bは、略水平に倒れた位置から少し起き上がって、送風ダクト43の内側から外側に向かって、少し傾斜した位置に規制される。それゆえ、温風送風口42から送風される温風は、被乾燥面Fに直接向かうことになる。
さらにその後、経過時間T17において、使用者は、遠隔操作部120の停止スイッチ211を操作し、制御部60Aは、この停止指令を受けて、図28の「VIII.ヒータ」に示すように、温風ヒータ44の運転を停止するとともに、図28「VII.エアファン」に示すように、経過時間T18でエアファン41を停止する。このとき、共用ノズル部20は、その端部が図26に示される位置Pcにさらに後退し、本体部110内に完全に収納されるので、下部風向ガイド43bは、送風ダクト43の外側に向かって傾斜した位置から略垂直に立ち上がった位置に戻る。また、送風が停止するため、送風口シャッタ43aが自重によって閉じ、温風送風口42を塞ぐことになる。
このように、本実施の形態では、エアの噴射による被乾燥面の冷却作用を抑え、かつ、被乾燥面の過加熱を防止するため、エアの噴射部位と被乾燥面との間に向けて温風を送風するように構成されている。また、温風の送風を好適化するために、送風方向規制板や送風拡散板を備えている。それゆえ、エアを噴射するエア噴射口から被乾燥面に至るまでの領域は温風に包まれた状態になっているので、エアは、周囲の温風を誘引し、温風に混合されながら噴射されるので、エアが被乾燥面に到達した時点では噴流の温度を十分に上昇させることができる。その結果、使用者にとっては、エアの噴射が冷たく感じられるような事態が回避され、温度設定によっては、噴射されたエアを温かく感じさせることもできる。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。