従来のカード処理装置は、ローラを回転させることにより、カード挿入部の挿入口から挿入されたカードを装置内部へ搬送する。そして、カード処理装置は、読み取りヘッドを用いて、カードに記録された情報を読み取り、または、書き込みヘッドを用いて、カードに情報を書き込む。その後、カード処理装置は、ローラを逆回転させることにより、カードを挿入口から排出する。
ところで、ATM(現金自動取引処理装置)のような上位装置に取り付けられているカード処理装置では、不正を働こうとする者が、意図的にカードをカード処理装置内に詰まらせようとして、カード処理装置に対して何らかの細工を施すことがある。この場合、ATMの利用者がカード処理装置の挿入口にカードを挿入すると、カードがカード処理装置内に詰まってしまう。このような異常が発生すると、利用者は異常を解消してもらうために、ATMが設置されている場所を離れて、係員の居る所へ行く。すると、その隙に不正を働こうとする者が工具等を用いてカード処理装置内に詰まったカードを取り出して持ち去り、その後カードを悪用するという問題が生じる。
上記のような問題を解決するために、カード挿入部からカードが取り出されることを阻止する阻止機構を備えたカード処理装置が、後掲の特許文献1〜3で提案されている。この阻止機構は、回転可能な偏心カムと、この偏心カムを回転させるアクチュエータとを備えている。そして、カードの詰まりが検出されると、アクチュエータが作動して偏心カムが回転し、偏心カムの外周部分がカードに接触することで、カード挿入部からのカードの取り出しを阻止するようにしている。
図26および図27は、そのような阻止機構の詳細を示す図である。各図の(A)は阻止機構の側面図、(B)は阻止機構の平面図を示している。なお、(B)では(A)のカード2、カード挿入部3、およびシャッタ14等の図示を省略している。
図26は、アクチュエータであるソレノイド13が駆動していない状態を示している。偏心カム10は、軸11を中心に回転するように設けられている。また、図26(A)に示すように、偏心カム10は、軸11に対して偏心している。偏心カム10のカード2に面する側の外周9は、略円弧状に形成されている。このため、偏心カム10の軸11から外周9までの距離は一定ではない。偏心カム10の外周9には、軸11からの距離が、搬送路5を搬送されるカード2に接触しない長さL1である外周部分9aと、搬送路5を搬送されるカード2に接触する長さL2である外周部分9bとが含まれている。図26(A)の状態では、外周部分9aが搬送路5に対して向いているが、外周部分9aはカード2に接触していない。一方、後述するように偏心カム10を軸11を中心に時計回りに回転させることにより、外周部分9bを搬送路5に対して向けると、図27(A)に示すように外周部分9bがカード2の表面に接触する。
軸11には、ねじりコイルばね12が取り付けられている。ねじりコイルばね12は、偏心カム10を時計回りに回転させるように偏心カム10に力を加えている。これは、ねじりコイルばね12の下端部が、偏心カム10に係っているからである。一方、ねじりコイルばね12の上端部は、壁34に当たっている。
図26(B)に示すように、ソレノイド13のプランジャ54の先端には、ロッド18が取り付けられている。また、プランジャ54の周りにはコイルばね55が設けられている。コイルばね55は、ロッド18にソレノイド13から離れる方向の力を加えている。ロッド18には、偏心カム10の上部と当接して、偏心カム10を図26(A)の姿勢に支持する支持具97が連結されている。支持具97は、アーム84、ローラ87、およびコイルばね88等から構成されている。アーム84は、軸86を中心に回転する。軸86は、図示しない板や棒等の部材を介して壁34に固定されている。軸86の周りにはコイルばね88が設けられている。コイルばね88の一端は、アーム84から突出した爪90に当たっている。コイルばね88の他端は、図示しない板や棒等の部材を介して壁34に固定された爪89に当たっている。アーム84の中央には、ピン83が設けられている。ピン83は、ロッド18に設けられた溝85に挿入されている。アーム84の左側には、ローラ87が設けられている。ローラ87は、軸92を中心に回転することができる。また、ローラ87は、偏心カム10の上部に取り付けられたブロック91の右側面に接触している。このため、ねじりコイルばね12の弾性力により偏心カム10が軸11を中心に時計回りに回転しようとしても、偏心カム10の回転は阻止される。
ソレノイド13が駆動すると、プランジャ54がソレノイド13の内部に引き込まれる。すると、図26(B)において、ロッド18の溝85が上方に移動して、溝85の端がピン83に当たり、ピン83も上方に移動する。これにより、図26(B)において、アーム84が軸86を中心に時計回りに回転する。このとき、ローラ87が軸92を中心に回転する。このため、ローラ87とブロック91との間に発生する摩擦力は小さい。
カード処理装置1がカード2の詰まりを検出したとき、上述したようにソレノイド13が駆動する。図27は、ソレノイド13が駆動した状態を示している。図27(B)において、プランジャ54およびロッド18が上側に移動している。溝85の移動により、ピン83が上側に移動している。ピン83の移動により、アーム84が、軸86を中心として時計回りに回転している。ローラ87がブロック91の右側面から背面へ退避するため、偏心カム10が、ねじりコイルばね12の弾性力により軸11を中心に回転し、図27(B)において、偏心カム10の上部が右側に移動している。このとき、コイルばね88の弾性力により、アーム84が軸86を中心として反時計回りに回転しようとする。しかし、コイルばね88の弾性力により、ブロック91の背面とローラ87とが接触して、アーム84の回転を妨げている。図27(A)に示すように、偏心カム10が軸11を中心に時計回りに回転することにより、偏心カム10の外周部分9bがカード2の表面に接触する。このとき、偏心カム10からカード2の表面に対して押圧力が働いている。
偏心カム10がカード2の表面に接触することで、上記の押圧力とともに、カード2と偏心カム10の外周部分9bとの間で大きな摩擦力が働く。このため、不正を働こうとする者が、カード挿入部3の挿入口3aから、工具などを使用して、詰まったカード2を引き抜こうとしても容易に抜くことができない。
図27(A)の状態において、不正を働こうとする者が、さらに大きな力をかけてカード2を挿入口3aから引き抜こうとした場合を想定する。この場合、カード2を大きな力で引き抜こうとすることで、カード2と偏心カム10との間の摩擦力により、偏心カム10が軸11を中心にさらに時計回りに回転する。すると、カード2に接触している外周部分9bは、カード2を引き抜こうとする方向とほぼ同じ方向に移動することになる。この状態を図28に示す。
図28において、偏心カム10は、軸11に対して偏心しているため、図27(A)において、カード2に接触している外周部分9bよりもさらに軸11からの距離L2’が長い外周部分9b’が、カード2に接触する。距離L2’は、距離L2よりも長い。これにより、さらに大きな押圧力が偏心カム10からカード2の表面に働き、偏心カム10とカード2との間の摩擦力もさらに大きくなる。このため、ますます、カード2を引き抜くことが困難になる。
偏心カム10がカード2に押圧力を加えている状態で、偏心カム10の位置をロックするロック機構を設けることにより、カード処理装置1の外部からカード2を押したり引いたりしても、カード2を移動させないようにすることができる。図29および図30は、阻止機構にロック機構を付設した場合の構造図である。各図において(A)は側面図、(B)は正面図を示している。なお、(A)、(B)では、阻止機構の支持具97、ソレノイド13、コイルばね12等の図示を省略している。また、(B)では、壁34、シャッタ14、カード挿入部3等の図示を省略している。この例では、偏心カム10の外周9に、歯部108が形成されている。
図29は、ソレノイド13が駆動していない状態を示している。壁34には、台130が取り付けられている。台130の軸138を中心に回転するように、固定具134が取り付けられている。固定具134は、偏心カム10の位置を、図30(A)の位置に固定する。図29(B)において、固定具134の左側には、爪137が設けられている。固定具134の上側には、爪135が設けられている。固定具134の右側の爪133には、コイルばね131の一端が取り付けられている。コイルばね131の他端は、台130の穴132に引っかけられている。このため、コイルばね131の弾性力により、固定具134には、軸138を中心として固定具134を反時計回り方向に回転させようとする力が働いている。固定具134の左辺139は、レバー19に当たっている。このため、固定具134の回転は、図29(B)に示される状態で停止している。図29(B)において、レバー19はハッチングで示されている。
カード処理装置が、カード2の詰まりを検出すると、ソレノイド13(図26参照)を駆動する。ソレノイド13が駆動すると、図29(A)において、偏心カム10が、軸11を中心に時計回り方向に回転する。そして、外周9の歯部108がカード2に接触する。このときの状態を図30に示す。
図30において、カード2を引き抜こうとすると、歯部108とカード2との摩擦力により、偏心カム10が、さらに時計回りに回転しようとする。これにより、歯部108がさらにカード2に押し付けられ、カード2が抜き取られることが防止される。
偏心カム10が時計回りに回転したため、図30(A)において、偏心カム10のレバー19が右上に移動している。このため、図30(B)に示すように、レバー19が固定具134の左辺139から外れている。よって、固定具134が、コイルばね131の弾性力により、軸138を中心に反時計回り方向に回転する。そして、上側の爪135とレバー19が接触する位置で、固定具134の回転が停止する。これにより、レバー19が、下側に移動できなくなる。すなわち、偏心カム10がロック状態となる。
この状態において、挿入口3aからカード2をさらに挿入させた場合、カード2と歯部108との摩擦力により、偏心カム10が反時計回りに回転しようとする。このとき、図30(A)において、レバー19は、左下に移動しようとする。しかし、図30(B)のように、固定具134の爪135とレバー19とが接触しているため、偏心カム10は、反時計回りに回転することができない。これにより、カード処理装置1の外部から、カード2を押したとしても、偏心カム10が回転しないため、カード2は移動しない。一方、カード2を引いたときには、カード2と歯部108との摩擦力により、偏心カム10が時計回りに回転し、歯部108が、カード2の表面に対してさらに押し付けられる。このため、カード2を抜くことができない。
よって、歯部108がカード2に接触した状態で、カード処理装置の外部からカード2を押したり引いたりしても、カード2は、移動することがない。これにより、カード処理装置内に詰まったカード2が持ち去られるのを防止することができる。
偏心カム10のロック状態を解除するには、図30(B)において、固定具134の爪137を上側に持ち上げ、時計回りに回転させる。そして、図30(A)において、レバー19を押し下げ、偏心カム10を反時計回りに回転させる。すると、支持具97のアーム84(図27参照)が、コイルばね88の弾性力により、軸86を中心に反時計回り方向へ回転するので、ローラ87が、偏心カム10のブロック91の右側面に接触し(図26参照)、偏心カム10の位置が固定されて、図29に示す状態に戻る。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一部分または対応する部分には同一符号を付してある。
まず、本発明の実施形態に係るカード処理装置の概略構造を、図1を参照しながら説明する。図1において、挿入検出センサ17は、カード2がカード挿入部3の挿入口3aに挿入されたことを検出する。カード2には、情報が記録されている。カード2が磁気カードの場合には、カード2の表面に磁気ストライプが備わっていて、この磁気ストライプに磁気情報が記録されている。カード2が接触式ICカードの場合には、カード2の表面にIC接点が備わり、カード2の内部にIC接点と接続されたICチップが備わっている。カード2が非接触式ICカードの場合は、カード2の内部に通信用のアンテナとICチップとが備わっている。接触式ICカードおよび非接触式ICカードでは、ICチップに情報が記録されている。以後の説明では、ICカードとして接触式ICカードを例に挙げる。
挿入検出センサ17がカード2の挿入を検出すると、シャッタ14が開く。シャッタ14が開くことにより、カード2がカード処理装置1の内部に搬送可能となる。カード2が搬送される搬送路5は、一点鎖線で示されている。なお、図26では、シャッタ14は搬送路5の上側に配置されているが、図1の場合は、シャッタ14は搬送路5の下側に配置されている。
搬送路5は、挿入口3aおよび上下のローラ4によって構成されている。図1には図示されていないモータ25(図2)が駆動することにより、ローラ4が回転する。挿入口3aから挿入されたカード2がローラ4に当接すると、回転するローラ4によって、カード2はカード処理装置1の内部へ搬送される。カード検出センサ6、7、8は、それぞれの位置におけるカード2の有無を検出する。カード2の挿入後、カード検出センサ6がカード2を検出している状態からカード2を検出しない状態になると、シャッタ14が閉じる。
挿入されたカード2が磁気カードの場合には、磁気カードの搬送中に、磁気ヘッド15が、磁気カードの磁気情報を読み取ったり、磁気カードに磁気情報を書き込んだりする。挿入されたカード2がICカードの場合には、カード2を所定の位置まで搬送する。そして、IC接点ヘッド16を降下させるための接点ヘッド用ソレノイド28(図2)が駆動することにより、IC接点ヘッド16が降下してICカードのIC接点に接触する。そして、このIC接点ヘッド16が、ICカードから情報を読み取ったり、ICカードに情報を書き込んだりする。読み取りまたは書き込みが終了すると、接点ヘッド用ソレノイド28(図2)が駆動を停止することにより、IC接点ヘッド16が上昇してIC接点から離れる。カード2に対する情報の読み取りまたは書き込みが終了すると、ローラ4が逆回転して、カード2が挿入口3aへ向けて搬送される。そして、カード検出センサ6がカード2を検出していない状態からカード2を検出した状態になると、シャッタ14が開く。これにより、カード2が、挿入口3aの外にローラ4によって搬送される。
挿入口3aの近傍には、阻止機構の一部を構成する偏心カム60が設けられている。偏心カム60は、カム部62やレバー63等を備えており、軸66を中心に回動自在となっている。この偏心カム60を含む阻止機構の詳細構造については、後で説明する。
上記のカード処理装置1で生じるカード異常の一例として、カード挿入部3の挿入口3aに何らかの細工がされて、カード2の挿入時または排出時に、カード2が搬送路5の内部に詰まってしまった場合を想定する。ローラ4を回転しようとしているにもかかわらず、ローラ4が回転していない場合に、カード処理装置1は、カード2がカード検出センサ6の位置で詰まっていることを検出する。カード処理装置1が、カード2の詰まりを検出すると、後述の偏心カム用ソレノイド51(図2)が駆動され、これに基づいて、偏心カム60が軸66を中心として時計回り方向に回動する。すると、偏心カム60のカム部62がカード2の表面に接触し、偏心カム60とカード2との間に摩擦力が発生するので、カード2が挿入口3aから外に引き抜かれることが阻止される。この場合の詳細動作については、後で説明する。
次に、カード処理装置1の電気的構成につき、図2を参照しながら説明する。図2において、CPU20は、カード処理装置1の各部を制御したり各部から情報を取得したりする。磁気ヘッド15は、カード2が磁気カードの場合に、カードの磁気ストライプから磁気情報を読み取ったり、磁気ストライプに磁気情報を書き込んだりする。IC接点ヘッド16は、カード2がICカードの場合に、カードのIC接点と接触して、ICチップから情報を読み取ったり、ICチップに情報を書き込んだりする。
モータ25は、ローラ4(図1)に機構的に接続されており、このモータ25が駆動することによって、ローラ4が回転する。ロータリエンコーダ26は、本発明における異常検出手段の一例であって、モータ25の回転数を検出する。カード検出センサ6、7、8は、搬送路5(図1)の所定の位置に、カード2が存在するか否かを検出する。挿入検出センサ17は、挿入口3aにカード2が存在するか否かを検出する。各センサ6、7、8、17は、カード2の存在を検出すると、OFF状態からON状態に切り替わる。シャッタ用ソレノイド27は、シャッタ14(図1)を開閉するためのソレノイドである。偏心カム用ソレノイド51は、偏心カム60を回動させるためのソレノイドである。接点ヘッド用ソレノイド28は、IC接点ヘッド16を上下に移動させるためのソレノイドである。
ROM21は、CPU20の動作プログラムを記憶している。RAM22は、各部を制御する制御パラメータや、磁気ヘッド15およびIC接点ヘッド16などの各部から取得した情報を一時的に記憶する。さらに、RAM22は、磁気ヘッド15またはIC接点ヘッド16によってカードに書き込む情報を一時的に記憶する。通信部24は、上位装置と通信を行う。上位装置の例として、カード処理装置1が搭載されているATMがある。通信部24は、カード2から読み取った情報やカード2が詰まったこと等を示す障害情報等を上位装置に送信する。また、通信部24は、上位装置からカード2に書き込む情報や処理対象のカード2の種類情報等を受信する。
次に、カード処理装置1の詳細な構造について、阻止機構とロック機構を中心に、図面を参照しながら説明する。
図3は、カード挿入部3付近の構造を示しており、便宜上、挿入口3aの上壁を除去した状態で表してある。また、図1の挿入検出センサ17の図示は省略してある。カード挿入部3は、樹脂成型品のブロックからなり、図1で示したように、カード処理装置1の前面に設けられる。カード挿入部3に形成された挿入口3aには、カード2が図3の矢印方向に挿入される。カード挿入部3の後方には、壁部40が設けられている。壁部40の後面側には、阻止機構100が配設されており、壁部40の前面側には、ロック機構200が配設されている。
図4は、阻止機構100とロック機構200の詳細な構造を示している。(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は正面図、(D)は側面図である。なお、図4では、図3の壁部40の図示を省略してある。
阻止機構100は、偏心カム60と、支持具53と、偏心カム用ソレノイド51とを備えている。偏心カム用ソレノイド51は、本発明におけるアクチュエータの一実施形態である。
偏心カム60は、軸66(図4(D))を中心として回動自在に設けられており、基部61と、この基部61に取り付けられたカム部62と、基部61と一体に形成されたレバー63と、基部61に固定された係合部64とを備えている。基部61、カム部62およびレバー63は金属からなり、係合部64は樹脂からなる。カム部62には、歯部65が形成されている。軸66は、図示しないフレームに固定されている。なお、図4では図示されていないが、偏心カム60には、ねじりコイルばね(図8(B)の符号69)が付設されており、このばねによって、軸66を中心とする時計回り方向の付勢力が、偏心カム60に作用している。
図5は、偏心カム60を示しており、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。図26の偏心カム10と同様に、偏心カム60における軸66からカム部62の外周までの距離は等距離ではなく、カム部62の外周に対して軸66が偏心している。図5(C)のように、レバー63の先端付近には、下方へ突出する突起67が一体に設けられている。また、軸66の端部には、Eリング68が装着されている。
後述するように、偏心カム60は、軸66を中心として回動することで、カム部62がカード2から離間した位置(図8(D)の位置)と、カム部62がカード2と接触した位置(図10(D)の位置)へ変位可能となっている。
図4に戻って、支持具53について説明する。支持具53は、図4(A)、(B)に示されるように、十字状に配置された4つのアーム53a〜53dを備えている。これらのアーム53a〜53dは、樹脂で一体成型されている。支持具53は、軸57に支持されていて、軸57を中心として回動自在となっている。軸57は、図示しないフレームに固定されている。
4つのアーム53a〜53dのうち、第1アーム53aは、偏心カム用ソレノイド51のプランジャ58(図4(C))とピン52(図4(A))を介して連結されている。第2アーム53bは、第1アーム53aと反対方向に延びていて、第1アーム53aと釣り合う錘56を有している。ここでは、錘56は円柱状の金属からなり、第2アーム53bの端部に形成された円筒部に装着されている。第1および第2アーム53a、53bと直交する第3アーム53cは、これらのアーム53a、53bに対して偏心カム用ソレノイド51と反対側へ延びており、先端部が、偏心カム60の係合部64に形成された切欠64aと係合するようになっている。第3アーム53cと反対方向に延びる第4アーム53dは、第1および第2アーム53a、53bに対して偏心カム用ソレノイド51と同じ側へ延びており、第3アーム53cと釣り合う錘の機能を有している。
支持具53は、偏心カム用ソレノイド51との間に介在するコイルばね59により、図4(A)において、軸57を中心に反時計回り方向に付勢されている。後述するように、支持具53が軸57を中心として回動することで、第3アーム53cは、偏心カム60と係合した位置(図8(A)の位置)と、偏心カム60との係合が外れた位置(図10(A)の位置)へ変位可能となっている。
図6は、支持具53の正面断面図を示している。第1アーム53aの端部は、ピン52を介して偏心カム用ソレノイド51のプランジャ58に連結されており、また、コイルばね59から荷重を受けるので、第1アーム53aには相応の負荷がかかる。そこで、この第1アーム53aとのバランスを取るため、第2アーム53bの端部に錘56が設けられている。なお、符号81は軸57のフランジ部であり、符号82は軸57の端部に装着されたEリングである。
次に、支持具53のバランスについて、図7を参照しながら説明する。図7はバランスの原理を説明する図なので、支持具53を模式的に描いてある。(A)は平面図、(B)は正面図である。
図7(A)において、X座標とY座標を図の方向に設定し、4つのアーム53a〜53dを含む平面をXY平面とする。このXY平面は、本発明における第1の平面に相当する。このとき、XY平面上で支持具53が矢印a方向へ回転しようとする場合の回転中心は、軸57の軸心となる。この回転中心は、本発明における第1の回転中心に相当する。
ここで、前述したように、第1アーム53aと第2アーム53bについては、第2アーム53bに、第1アーム53aと釣り合う錘56が設けられている。また、第3アーム53cと第4アーム53dについては、第4アーム53dが、第3アーム53cと釣り合う錘の機能を有している。したがって、XY平面上で、支持具53の重心の位置は、回転中心(軸57の軸心)と一致する。
一方、図7(B)において、Z座標を図の方向に設定し、軸57を含みXY平面と直交する平面をXZ平面とする。このXZ平面は、本発明における第2の平面に相当する。このとき、XZ平面上で支持具53が矢印b方向へ回転しようとする場合の回転中心は、軸57の軸心上にある点Pである。
ここで、XZ平面上での支持具53の重心の位置が、同平面上の回転中心(点P)と一致するように、各アーム53a〜53d、錘56、フランジ部81、Eリング82などの形状や重量が設計されている。
このように、本実施形態においては、XY平面上で、支持具53の重心位置が回転中心と一致し、XZ平面上でも、支持具53の重心位置が回転中心と一致している。このため、前後・左右・上下のいずれの方向に振動や衝撃が加わっても、支持具53に回転モーメントは発生しない。
再び図4に戻って、次はロック機構200について説明する。図4(B)に示すように、ロック機構200は、固定具70と、この固定具70を回動自在に支持する軸78と、固定具70に対して弾性力を付与するねじりコイルばね79と、軸78が固定されているフレーム80とを備えている。
固定具70は、弓状に形成された第1部分71と、この第1部分71から軸78と平行に延びる第2部分72と、この第2部分72から垂直に延びる第3部分73とを有している。第1部分71には、ロック解除時に固定具70を回動させるための操作片74と、偏心カム60のレバー63が係止する係止部75と、レバー63と当接可能な爪部77が設けられている。また、第3部分73には、レバー63の突起67(図5(C))により押される爪部76が設けられている。爪部76は本発明における第1の爪部に相当し、爪部77は本発明における第2の爪部に相当する。
第1部分71と第3部分73は、フレーム80に固定された軸78に挿通されている。これにより、固定具70は、軸78を中心として、偏心カム60のレバー63に近づく方向であるロック方向(反時計回り方向)と、レバー63から離れる方向である解除方向(時計回り方向)とに回動可能となっている。第1部分71の係止部75には、ギヤ状の凹凸が形成されている。ねじりコイルばね79は、一端がフレーム80に支持され、他端が第1部分71に固定されたピン81(図4(A))に連結されている。このねじりコイルばね79により、固定具70は、図4(C)において、軸78を中心として反時計回り方向に付勢されている。
次に、阻止機構100とロック機構200の動作について、図8〜図13を参照しながら説明する。
通常時(待機時)には、阻止機構100は図8に示す状態にある。図8において、(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は正面図、(D)は側面図である。なお、図8では、ロック機構200の図示を省略してある。
図8の状態では、偏心カム用ソレノイド51が作動しておらず、支持具53の第3アーム53cの先端が、偏心カム60の係合部64に形成された切欠64aに係合している。そして、支持具53は、コイルばね59の弾性力を受けて、図8(A)で軸57を中心として反時計回り方向に付勢されているので、上記の係合状態が維持される。
一方、偏心カム60は、ねじりコイルばね69(図8(B))により、軸66を中心とする時計回り方向の力を受けるが、上述したように、第3アーム53cの先端が、偏心カム60の係合部64と係合しているため、時計回り方向に回動することができない。このため、偏心カム60は、図8(D)に示す位置にある。この位置は、カム部62がカード2から離間してカード2に押圧力を与えない位置であって、本発明における第1の位置に相当する。
図9は、阻止機構100が図8の状態にあるときの、ロック機構200の状態を示している。図9において、(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は正面図、(D)は側面図である。なお、図9では、偏心カム用ソレノイド51と支持具53の図示を省略してある。
図9の状態では、ねじりコイルばね79により、固定具70は、軸78を中心として反時計回り方向に付勢されており、第1部分71が、偏心カム60のレバー63の側面に当接している。このため、固定具70は、それ以上反時計回り方向に回動することがない。
後述する方法によってカード2の詰りが検出されると、阻止機構100は図10に示す状態となる。図10において、(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は正面図、(D)は側面図である。なお、図10では、ロック機構200の図示を省略してある。
図10の状態では、偏心カム用ソレノイド51が作動し、支持具53の第1アーム53aが、ピン52を介して、偏心カム用ソレノイド51のプランジャ58に牽引される。したがって、支持具53は、コイルばね59の弾性力に抗して、図10(A)で軸57を中心に時計回り方向へ回動する。このため、第3アーム53cの先端が、偏心カム60の係合部64に形成された切欠64aから離脱し、第3アーム53cと偏心カム60との係合が解除される。
この結果、偏心カム60は、ねじりコイルばね69の弾性力により、軸66を中心として時計回り方向に回動し、図10(D)に示す位置へ変位する。この位置は、カム部62がカード2と接触してカード2に押圧力を与える位置であって、本発明における第2の位置に相当する。
この状態では、図27の場合と同様に、カード2を挿入口3aから引き抜こうとすればするほど、カード2に対するカム部62の押圧力が強まり、カード2の引き抜きが困難になる。特に、カム部62に形成されている歯部65がカード2の表面に食い込むことで、カード2を挿入口3aから引き抜くのが一層困難になる。
図11は、阻止機構100が図10の状態にあるときの、ロック機構200の状態を示している。図11において、(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は正面図、(D)は側面図である。なお、図11では、偏心カム用ソレノイド51と支持具53の図示を省略してある。
偏心カム60が図10(D)に示す位置へ変位するのに伴い、レバー63が上方へ跳ね上がる。このため、ロック機構200の固定具70は、ねじりコイルばね79の付勢力により、図9(C)の位置からさらに反時計回り方向(ロック方向)へ回動して、図11(C)に示すように、レバー63と当接する位置で停止する。このとき、固定具70に固定されたピン81がフレーム80に形成された案内溝80aの端部に当接することによっても、固定具70の回動が規制される。
この状態では、固定具70の係止部75の一部が、レバー63と係止している。したがって、レバー63を押し下げて、偏心カム60のカム部62とカード2との接触を解くことは不可能となり、偏心カム60は図10(D)に示す位置でロックされる。これにより、カード2が挿入口3aから引き抜かれるのをより確実に防止することができる。なお、図11の状態においては、係止部75とレバー63との間に、わずかに間隙があってもよい。本発明でいう「係止」は、このような場合も含む。
偏心カム60のロックを解除するには、以下のような操作を行う。図12および図13は、この場合の操作を説明する図である。各図において、(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は正面図、(D)は側面図である。なお、各図とも、偏心カム用ソレノイド51と支持具53の図示を省略してある。
まず、図12に示すように、固定具70の操作片74を把持し、軸78を中心として、固定具70を時計回り方向(解除方向)へ回動させる。この回動は、途中までは、ねじりコイルばね79のばね力に抗して行われるが、固定具70をある程度まで回動させた時点で、ねじりコイルばね79がスナップ動作をして、そのばね力が、固定具70を時計回り方向に回転させるように作用する。このため、固定具70を図12(C)の位置まで回動させた後は、操作片74の把持を解除しても、固定具70は反時計回り方向(ロック方向)へは回動せず、この位置で静止する。なお、図12(C)の位置では、固定具70のピン81がフレーム80の案内溝80aの端部に当接することで、固定具70のそれ以上の回動が規制される。
次に、図13に示すように、偏心カム60のレバー63を押し下げる。このとき、固定具70の係合部75は、レバー63の側方へ退避しているので、固定具70に邪魔されることなく、レバー63を押し下げることができる。レバー63の押し下げによって、偏心カム60は、軸66を中心として、反時計回り方向に回転する。このため、図13(D)に示すように、カム部62がカード2から離れてゆく。
図13の状態から更にレバー63を押し下げると、固定具70の第3部分73に形成された爪部76が、レバー63に設けられた突起67により押されるため、固定具70は、軸78を中心として、反時計回り方向(ロック方向)へ回動を始める。そして、レバー63を最後まで押し下げると、固定具70は図9の位置へ復帰する。
このように、レバー63に突起67を設け、この突起67で爪部76を押す構造としたことにより、固定具70を元の位置へ復帰させる際のレバー63の押し下げ量が少なくて済み、操作性が向上する。
一方、レバー63の押し下げにより、偏心カム60が反時計回り方向へ回転すると、偏心カム60の係合部64の切欠64aに、支持具53の第3アーム53cの先端が、コイルばね59のばね力を受けて係合し、支持具53は図8の位置へ復帰する。
上記のような操作によって、偏心カム60のロックが解除され、阻止機構100は図8の状態へ戻り、ロック機構200は図9の状態へ戻る。
以上述べた実施形態によれば、偏心カム用ソレノイド51は、4つのアーム53a〜53dのうち、偏心カム60と係合する第3アーム53c以外の任意のアームに連結することができる。本実施形態では、第1アーム53aに偏心カム用ソレノイド51が連結されているが、第2アーム53bや第4アーム53dに偏心カム用ソレノイド51を連結してもよい。例えば、第2アーム53bに偏心カム用ソレノイド51を連結する場合は、第1アーム53aに錘56が設けられる。
第3アーム53c以外のアームは、作用点(偏心カム60と係合する部分)を有しないアームであるから、これらのアームに偏心カム用ソレノイド51を連結すると、当該ソレノイド51は、アームの支点(軸57)と作用点とを結ぶ線上の点以外の箇所を牽引することになる。このため、従来のようにアームの支点と作用点とを結ぶ線上の点を牽引する場合に比べて、偏心カム用ソレノイド51を配置する場所と方向の制約が緩和され、配置の自由度を高めることができる。
また、本実施形態では、図7で説明したように、いずれの方向に振動や衝撃が加わっても、支持具53に回転モーメントが発生しないので、偏心カム60から支持具57に大きな荷重をかけなくても、振動衝撃によって偏心カム60と支持具57との係合が外れて阻止機構100が誤動作するおそれがない。したがって、ねじりコイルばね69(図8(B))のばね力を強くする必要がないので、偏心カム60に与える付勢力は小さくて済む。この結果、偏心カム60のレバー63を押し下げる力も小さくて済み、偏心カム60のロック解除の操作が容易となる。
また、本実施形態では、支持具57と偏心カム60との係合部分(作用点)の荷重が小さいので、従来のような摩擦低減のためのローラ87(図26)を支持具57に設ける必要がなく、第3アーム53cの先端を、偏心カム60の係合部64に設けた切欠64aに係合させるだけでよい。これによって、ローラを省略してコストを低減することができる。
また、本実施形態では、ロック機構200にも工夫が施されている。従来のロック機構では、偏心カムがロックされていないときに、誤って固定具が解除方向に操作されると、偏心カムが回動して誤動作する(ロック状態になる)という問題がある。具体的に述べると、図29(非ロック状態)において、固定具134の爪137を上向きに強く押すと、爪137がレバー19に当接し、偏心カム10が、軸11を中心に時計回り方向の力を受ける。この力が強いと、偏心カム10とアーム84との係合状態が、図26の状態から図27の状態に移行し、偏心カム10が時計回り方向に回動してロック状態となる。
一方、本実施形態のロック機構200では、偏心カム60がロックされていない図9の状態において、誤って固定具70が解除方向(時計回り方向)に操作された場合、固定具70の爪部77がレバー63に当接する。この場合、爪部77は先細りの形状をしているので、爪部77のテーパー面がレバー63の下面のエッジと線接触する。そして、固定具70がなおも解除方向に操作されると、爪部77からレバー63に強い力が加わるが、この力は、偏心カム60と支持具53との係合力を強めるように作用する。
すなわち、爪部77のテーパー面がレバー63の下面のエッジを押す結果、レバー63は、図9(C)で上向きの力に加えて左向きの力を爪部77から受ける。この左向きの力により、レバー63は、図8(A)において左側へ変位しようとする。これに伴って係合部64も左側、つまり第3アーム53cとの係合が外れる方向とは反対の方向へ変位しようとするので、第3アーム53cと係合部64とがより強く係合することになる。その結果、固定具70が解除方向に操作されても、偏心カム60が誤動作してロック状態(図10)となることはない。
次に、カード処理装置1が、挿入されたカード2に対し情報の読み取りおよび書き込みを行ってから、カード2を排出するまでの処理について説明する。また、カード2の挿入時や排出時に、カード2が詰まった場合の処理についても説明する。
図14は、カード処理装置1におけるカード処理の概略を示すフローチャートである。ステップS1において、CPU20は、通信部24を介してカード2の種類を上位装置から受信する。ここでは、カード2の種類として、磁気カードおよび接触式ICカードを想定している。次に、ステップS2において、CPU20は、受信したカード2の種類が磁気カードであるか否かを判定する。磁気カードであると判定された場合は、ステップS3において、CPU20は、磁気カードの取り込み処理と、磁気カードからの磁気情報の読み取り処理とを行う。続いて、ステップS4において、CPU20は、磁気カードへの磁気情報の書き込み処理を行う。そして、ステップS5において、CPU20は、カード2の排出処理を行う。ステップS3、S4、S5のカード処理の詳細については、後述する。
一方、ステップS2において、受信したカード2の種類が磁気カードでないと判定された場合は、ステップS6において、CPU20は、受信したカード2の種類がICカードであるか否かを判定する。ICカードであると判定された場合は、ステップS7において、CPU20は、ICカードの取り込み処理と、ICカードからの情報の読み取り処理と、ICカードへの情報の書き込み処理とを行う。その後、ステップS5において、CPU20は、カード2の排出処理を行う。ステップS7のカード処理の詳細については、後述する。
また、ステップS6において、受信したカード2の種類がICカードでないと判定された場合は、CPU20は、ステップS7の各処理を行わずに、ステップS5に進み、カード2の排出処理を行う。これは、挿入されたカードが、想定した磁気カードまたはICカードのいずれでもないため、カード処理を行うことができないからである。
図15は、図14のステップS3における磁気カード取り込み処理および磁気カード読み取り処理の詳細を示すフローチャートである。ステップS20において、CPU20は、挿入検出センサ17が挿入口3aへのカード2(磁気カード)の挿入を検出したか否かを判定する。図20は、挿入口3aにカード2が挿入された状態を示している。この状態では、カード2の先端が、挿入検出センサ17の位置に達していないため、シャッタ14は閉じている。
挿入検出センサ17がカード2の挿入を検出すると、CPU20は、次のステップS21に進む。ステップS21において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27を駆動する。これにより、図21に示すように、シャッタ14が搬送路5を開放する。図21は、カード2が、カード処理装置1の内部に挿入された状態を示している。そして、図15のステップS22において、CPU20は、モータ25の正転駆動を開始する。モータ25が正転駆動することにより、モータ25に接続されている各ローラ4は、カード2をカード処理装置1の内部に搬送する方向(正転方向)に回転する。これにより、カード2は、その先端が挿入口3aに最も近いローラ4に当接するまで挿入された時点から、各ローラ4によって、搬送路5を右方向へ一定速度で搬送されてゆく。カード2が搬送される過程で、磁気ヘッド15は、カード2に記録されている磁気情報を読み取る。
CPU20は、ロータリエンコーダ26の出力から得られるモータ25の回転数に基づき、フィードバック制御を行うことにより、モータ25の回転速度を一定に保つ。図15のステップS28においてモータ25の駆動を停止するまで、CPU20は、モータ25を一定速度で連続して正転駆動するよう制御する。
ステップS23において、CPU20は、ロータリエンコーダ26が、モータ25の回転数を定期的に出力しているか否かを判定する。例えば、CPU20が、モータ25に駆動指令を送信することに対応して、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転を検出しているか否かを判定する。ロータリエンコーダ26が回転数を定期的に出力していれば、カード2は、一定速度で搬送されていることになる。ロータリエンコーダ26が回転数を定期的に出力していなければ(またはロータリエンコーダ26からの出力がなければ)、カード2が詰まっていることになる。すなわち、ステップS23では、カード2が詰まっているか否かが判定される。カード2が詰まっていなければ、ステップS24に進む。カード2が詰まっていれば、ステップS29に進む。
ステップS24では、一定速度で搬送されているカード2の磁気ストライプから、磁気ヘッド15によって磁気情報が読み取られ、CPU20は、当該磁気情報をRAM22に記憶させる。ステップS24の処理は、モータ25の駆動が停止するまで、連続して行われる。
ステップS25において、CPU20は、カード検出センサ6がカード2を検出したか否かを判定する。カード検出センサ6が、カード2を検出した場合には、ステップS23の処理に戻る。カード検出センサ6がカード2を検出し続けている間は、CPU20は、カード2が詰まっているか否かを判定し続けている。すなわち、CPU20は、ステップS23、S24、S25の処理を繰り返すことによって、カード2が詰まっているか否かを判定している。図22は、カード検出センサ6がカード2を検出し、また、磁気ヘッド15がカード2に接触して磁気情報を読み取っている状態を示している。
図15のステップS25において、カード検出センサ6がカード2を検出しなくなった場合は、カード2が、挿入口3aを通過して、カード処理装置1の内部に取り込まれている状態である。この場合、CPU20は、ステップS26に進み、シャッタ用ソレノイド27の駆動を停止する。これにより、シャッタ14が閉じる。図23は、カード検出センサ6が、カード2を検出しなくなったときのカード2の位置を示している。また、シャッタ用ソレノイド27の駆動が停止し、シャッタ14が閉じている状態を示している。
シャッタ用ソレノイド27の駆動が停止されると、ステップS27において、CPU20は、カード検出センサ8がカード2を検出したか否かを判定する。カード検出センサ8の位置にカード2が存在することは、カード2全体が磁気ヘッド15を通過したことを意味する。図24は、カード2の先端がカード検出センサ8の位置に到達し、カード2の後端が磁気ヘッド15を通過した状態を示している。カード検出センサ8がカード2を検出すると、ステップS28において、CPU20は、モータ25の駆動を停止する。これにより、各ローラ4の回転が停止し、カード2の搬送が停止する。そして、CPU20は、通信部24を介して、RAM22に記憶されている磁気情報を上位装置へ送信する。これにより、カード2の磁気情報の読み取り処理が終了する。
一方、ステップS27において、カード検出センサ8がカード2を検出していない場合は、磁気ヘッド15とカード2とが接触している状態である。言い換えると、まだカード2の磁気情報読み取りが完了していない状態である。この場合、CPU20は、ステップS23に戻り、モータ25の駆動によるカード2の搬送、および、磁気ヘッド15によるカード2の磁気情報の読み取り処理を続ける。
ここで、不正を行おうとする者が、カード処理装置1に何らかの細工を施し、カード2が搬送路5に詰まるようにしたとする。カード2が詰まったときのカード2の位置を図25に示す。この場合、CPU20からモータ25へ回転指令が出力されているにもかかわらず、ロータリエンコーダ26は、モータ25の回転数を検出しない。このため、CPU20は、図15のステップS23において、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力していないと判定する。そして、ステップS29において、CPU20は、カード取り出し阻止処理を行う。ステップS29の処理の内容については、後述する。その後、CPU20は、図14に示されるカード処理を強制的に終了(異常終了)する。
図15で示したフローチャートでは、ステップS23で説明したように、ロータリエンコーダ26が定期的に回転数を出力しないときに、カード取り出し阻止処理を行うようにした。これ以外に、ロータリエンコーダ26が定期的に回転数を出力せず、かつ、カード検出センサ6がカード2を検出している場合に限って、カード取り出し阻止処理を行うようにしてもよい。後者の場合は、カード2がカード検出センサ6の位置に存在するときのみ、カード取り出し阻止処理が行われる。
図16は、図15のステップS29におけるカード取り出し阻止処理の手順を示すフローチャートである。ステップS30において、CPU20は、偏心カム用ソレノイド51を駆動する。すると、図10で説明したように、偏心カム60が軸66を中心として回動し、カム部62の外周(歯部65)がカード2に接触する。これにより、カード2が挿入口3aから取り出されることが阻止される。そして、ステップS31において、CPU20は、通信部24を介して、カード2が搬送路5に詰まった旨の障害情報を上位装置に連絡する。
図17は、図14のステップS4における磁気カード書き込み処理の詳細を示すフローチャートである。図14のステップS3の処理が終了した時点では、カード2は、図24に示されるように、搬送路5の右端に停止している。カード2を搬送路5の挿入口3a側に搬送するため、ステップS40において、CPU20は、モータ25の逆転駆動を開始する。モータ25が逆転駆動することにより、モータ25に接続されている各ローラ4は、カード2を挿入口3a側に搬送する方向(逆転方向)に回転する。これにより、カード2は、搬送路5を左方向へ搬送されてゆく。
ステップS41において、カード検出センサ6がカード2を検出すると、ステップS42において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27を駆動する。これにより、シャッタ14が開く。したがって、カード2は挿入口3aまで一旦搬送され、以降の処理において、カード2の先端から磁気情報を書き込むことができるようになる。このときのカード2の位置は、図22に示される位置である。なお、カード処理装置1の搬送路5を長くすることで、シャッタ14を開けることなく、カード2の先端から磁気情報を書き込むことができる位置にカード2を搬送することができる。
図17のステップS43において、挿入検出センサ17がカード2を検出すると、ステップS44において、CPU20は、モータ25の正転駆動を開始する。そして、ステップS45において、CPU20は、上位装置から通信部24を介して、磁気カードに書き込む情報を受信し、RAM22に記憶する。続いて、CPU20は、RAM22に記憶されている情報に基づいて、搬送中のカード2に対して、磁気ヘッド15により磁気情報を書き込む。磁気情報の書き込みは、CPU20が書き込み信号を磁気ヘッド15に与えている期間だけ、連続的に行われる。
ステップS46において、カード検出センサ6がカード2を検出しなくなった場合は、シャッタ14の位置にカード2が存在していない。したがって、ステップS47において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27の駆動を停止する。これにより、シャッタ14が閉じる。このときのカード2の位置は、図23に示される位置である。そして、カード2が搬送され続けて、ステップS48において、カード検出センサ8がカード2を検出すると、ステップS49において、CPU20は、モータ25の駆動を停止する。これにより、各ローラ4の回転が停止し、カード2の搬送が停止する。このときのカード2の位置は、図24に示される位置である。この後、CPU20は、カード2への磁気情報の書き込み処理を終了し、図14のステップS5に進んで、カード2の排出処理を行う。なお、上述したCPU20が上位装置からカード2に書き込む情報を受信する時期については、図17のステップS45の磁気ヘッド15による書き込み開始前であればいつでもよい。
図18は、図14のステップS5におけるカード排出処理の詳細を示すフローチャートである。図14のステップS4の処理が終了した時点では、カード2は、図24に示されるように、搬送路5の右端に停止している。カード2を搬送路5の挿入口3a側に搬送し、カード2を排出するため、図18のステップS60において、CPU20は、モータ25の逆転駆動を開始する。モータ25が逆転駆動することにより、モータ25に接続されている各ローラ4は、カード2を挿入口3a側に搬送する方向(逆転方向)に回転する。これにより、カード2は、搬送路5を左方向へ搬送されてゆく。モータ25の逆転駆動は、後述するステップS65において、モータ25の駆動が停止するまで、連続して行われる。
カード2が、挿入口3a側に搬送され、ステップS61において、カード検出センサ6がカード2を検出したときには、搬送されたカード2は、挿入口3aに近づいている。そこで、ステップS62において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27を駆動する。これにより、シャッタ14が開き、搬送路5のカード2を挿入口3aから排出できるようになる。
ステップS63において、CPU20は、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力しているか否かを判定する。これにより、図15のステップS23と同様に、カード2が詰まっているか否かを判定することができる。
ステップS63において、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力していないと判定された場合、すなわちカード2が詰まっていると判定された場合には、CPU20は、ステップS29のカード取り出し阻止処理を、前述した図16のフローチャートに従って実行する。その後、CPU20は、カード処理を強制的に終了(異常終了)する。
一方、図18のステップS63において、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力していると判定された場合、すなわちカード2が搬送路5において詰まっていないと判定された場合には、ステップS64において、CPU20は、カード検出センサ6がカード2を検出してから、所定時間経過したか否かを判定する。このとき、カード2は、ローラ4の回転により一定速度で挿入口3aに向けて搬送されている。したがって、カード2の排出方向における先端がカード検出センサ6の位置を通過してから、カード2の後端が挿入口3に最も近いローラ4を通過するまでの時間は、あらかじめ決まっている。そこで、この時間を上述した所定時間に設定している。カード処理装置1にカード2が詰まるなどの異常が発生していない場合は、ステップS64で所定時間が経過すれば、カード2はすべてのローラ4を通過し終わっているので、ステップS65において、CPU20は、モータ25の駆動を停止する。これにより、各ローラ4の回転が停止し、カード2の搬送が停止する。一方、ステップS64で所定時間が経過していなければ、カード2はすべてのローラ4を通過し終わっていないので、CPU20はローラ4によるカード2の搬送を続ける。
上記の例では、時間を計測することによって、モータ25の駆動を停止したが、これ以外に、搬送路5におけるカード検出センサの数を増やして、カード2が所定の位置を通過したときに、モータ25の駆動を停止するようにしてもよい。
ステップS65において、CPU20がモータ25の駆動を停止すると、ステップS66において、CPU20は、挿入検出センサ17がカード2を検出したか否かを判定する。挿入検出センサ17がカード2を検出している場合は、挿入口3aにカード2が存在しているので、カード2が取り出されるのを待つ。利用者が挿入口3aからカード2を取り出して、挿入検出センサ17がカード2を検出しなくなった場合は、ステップS67において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27の駆動を停止する。これにより、シャッタ14が閉じ、カード排出処理が終了する。
図19は、図14のステップS7におけるICカード取り込み処理、ICカード読み取り処理、およびICカード書き込み処理の詳細を示すフローチャートである。図14のステップS2の処理が終了した時点では、図20に示されるように、挿入口3aにカード2(ICカード)の先端が挿入されている状態にある。
図19のステップS70において、CPU20は、挿入検出センサ17が挿入口3aへのカード2の挿入を検出したか否かを判定する。挿入検出センサ17がカード2の挿入を検出すると、ステップS71において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27を駆動する。これにより、シャッタ14が開き、カード2をカード処理装置1の内部に挿入できるようになる。そして、ステップS72において、CPU20は、モータ25の正転駆動を開始する。モータ25が正転駆動することにより、モータ25に接続されている各ローラ4は、カード2をカード処理装置1の内部に搬送する方向(正転方向)に回転する。これにより、カード2は、搬送路5を右方向へ搬送されてゆく。
ステップS73において、CPU20は、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力しているか否かを判定する。これにより、図15のステップS23と同様に、カード2が詰まっているか否かを判定することができる。
ステップS73において、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力していないと判定された場合、すなわちカード2が詰まっていると判定された場合には、CPU20は、ステップS29のカード取り出し阻止処理を、前述した図16のフローチャートに従って実行する。その後、CPU20は、カード処理を強制的に終了(異常終了)する。
一方、ステップS73において、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力していると判定された場合、すなわち、カード2が搬送路5において詰まっていないと判定された場合には、ステップS74において、CPU20は、カード検出センサ7がカード2を検出したか否かを判定する。カード挿入方向におけるカード2の先端が、カード検出センサ7の位置に到達したときに、カード2のIC接点がIC接点ヘッド16の位置に到達しているように、カード検出センサ7の位置が設定されている。
ステップS74において、カード検出センサ7がカード2を検出しない場合は、CPU20は、ステップS73に戻り、カード2が詰まっているかどうかを判定する。カード検出センサ7がカード2を検出した場合は、ステップS75において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27の駆動を停止する。これにより、シャッタ14が閉じる。そして、ステップS76において、CPU20は、モータ25の駆動を停止する。これにより、各ローラ4の回転が停止し、カード2の搬送が停止する。このとき、カード2のIC接点は、IC接点ヘッド16に対向して位置している。
ステップS77において、CPU20は、接点ヘッド用ソレノイド28を駆動して、IC接点ヘッド16を降下させる。これにより、IC接点ヘッド16がカード2のIC接点に接触する。そして、ステップS78において、CPU20は、IC接点ヘッド16を介して、カード2のICチップから情報を読み取る。CPU20は、読み取った情報をRAM22に記憶する。そして、CPU20は、通信部24を介して、RAM22に記憶されている情報を上位装置に送信する。
この後、CPU20は、通信部24を介して、書き込み情報を上位装置から受信する。また、CPU20は、受信した当該情報をRAM22に記憶する。そして、ステップS79において、CPU20は、RAM22に記憶した書き込み情報を、IC接点ヘッド16を介して、カード2のICチップに書き込む。書き込みが終了すると、ステップS80において、CPU20は、接点ヘッド用ソレノイド28の駆動を停止することにより、IC接点ヘッド16を上昇させる。これにより、IC接点ヘッド16がカード2のIC接点から離れる。この後、CPU20は、図14のステップS5に進み、カード2の排出処理を行う。
本発明では、以上述べた以外にも、種々の実施形態を採用することができる。例えば、前記の実施形態では、偏心カム60を搬送路5の上方に設けたが、偏心カム60は搬送路5の下方に設けてもよい。
また、前記の実施形態では、偏心カム60のカム部62を基部61とは別に設けたが、基部61とカム部62とを一体化してもよい。
また、前記の実施形態では、第4アーム53dに錘が設けられていないが、必要に応じて、第4アーム53dに、第3アーム53cと釣り合う錘を設けてもよい。
また、前記の実施形態では、固定具70の係止部75にギヤ状の凹凸を形成した例を挙げたが、ギヤ状の凹凸に代えて、係止部75に固定具70が係止する切欠を設けてもよい。
また、前記の実施形態では、図4に示した構造の阻止機構100およびロック機構200の組み合わせを例に挙げたが、本実施形態によるロック機構200は、図4の阻止機構100とは異なる構造を備えた阻止機構と組み合わせることもできる。例えば、図26で示した従来の阻止機構との組み合わせも可能である。要するに、カードに接触するカム部と、支持具と係合する係合部と、カム部とカードとの接触を解除する際に操作されるレバーとを有する偏心カムを備えた阻止機構であれば、本実施形態のロック機構200を適用することができる。
また、前記の実施形態では、磁気カードとICカードの両方を処理可能なカード処理装置1に本発明を適用したが、本発明は、磁気カード専用の装置やICカード専用の装置にも適用することができる。また、前記の実施形態では、ICカードとして接触式ICカードを例に挙げたが、本発明は、非接触式ICカードを取り扱うカード処理装置にも適用が可能である。
さらに、前記の実施形態では、ATMに搭載されるカード処理装置を例に挙げたが、本発明に係るカード処理装置は、ATM以外のカードを取り扱う機器に搭載されるカード処理装置にも適用することができる。