以下、本発明のカード処理装置を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明を適用したカード処理装置1の内部の概略構造を示す図である。本カード処理装置1は、接触式のICカードと磁気カードとをそれぞれ処理可能である。挿入検出センサ17は、カード2が挿入口3に挿入されたことを検出する。カード2には、情報が記録されている。カード2が磁気カードの場合には、カード表面の所定位置に磁気ストライプが備わっていて、当該磁気ストライプに磁気情報が記録されている。カード2が接触式のICカードの場合には、カード表面の所定位置にIC接点が備わっていて、内部にIC接点と接続されたICチップが備わっていて、当該ICチップに情報が記録されている。
挿入検出センサ17がカード2の挿入を検出すると、シャッタ14が開く。これにより、カード2がカード処理装置1の内部に搬送可能となる。カード2が搬送される搬送路5は、一点鎖線で示されている。搬送路5は、挿入口3および上下のローラ4によって構成されている。モータが駆動することにより、ローラ4が回転する。挿入口3から挿入されたカード2がローラ4に当接すると、ローラ4が回転して、カード2がカード処理装置1の内部へ搬送される。カード検出センサ6、7、8は、それぞれの位置におけるカード2の有無を検出する。カード2の挿入後、カード検出センサ6がカード2を検出している状態からカード2を検出しない状態になると、シャッタ14が閉じる。
挿入されたカード2が磁気カードであった場合には、磁気カードの搬送中に、磁気ヘッド15が、磁気カードの磁気情報を読み取ったり、磁気カードに磁気情報を書き込んだりする。挿入されたカード2がICカードであった場合には、カード2を所定の位置まで搬送する。そして、IC接点ヘッド16を降下させるためのソレノイドが駆動することにより、IC接点ヘッド16が降下してICカードのIC接点に接触する。そして、IC接点ヘッド16が、ICカードから情報を読み取ったり、ICカードに情報を書き込んだりする。読み取りまたは書き込みが終了すると、IC接点ヘッド16を降下させるためのソレノイドが駆動を停止することにより、IC接点ヘッド16が上昇してIC接点から離れる。上記のようにカード2に対する情報の読み取りまたは書き込みが終了すると、ローラ4が逆回転して、カード2が挿入口3へ向けて搬送される。そして、カード検出センサ6がカード2を検出していない状態からカード2を検出した状態になると、シャッタ14が開く。これにより、カード2が、挿入口3の外にローラ4によって搬送される。
上記のカード処理装置1で生じるカード異常の一例として、挿入口3に何らかの細工がされて、カード2の挿入時または排出時に、カード2が搬送路5の内部に詰まってしまった場合を想定する。ローラ4を回転しようとしているにもかかわらず、ローラ4が回転していない場合に、カード処理装置1は、カード2がカード検出センサ6の位置で詰まっていることを検出する。カード処理装置1が、カード2の詰まりを検出すると、偏心カム用ソレノイド13が駆動する。すると、偏心カム10がねじりコイルばね12の弾性力により回転軸11を中心に時計回りに回転し、偏心カム10の外周がカード2に接触して、カード2の表面を押圧する。図1は、偏心カム10とカード2とが接触した状態を示している。偏心カム10とカード2との間に摩擦力が発生しているため、カード2が挿入口3から外に引き抜かれることを阻止している。偏心カム用ソレノイド13、偏心カム10、およびねじりコイルばね12等から構成される押圧機構の詳細については、後述する。
図2は、カード処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。CPU20は、図2に示されているカード処理装置1の各部を制御したり各部から情報を取得したりする。カード処理装置1に挿入されたカード2が磁気カードの場合には、磁気ヘッド15が、磁気カードの磁気ストライプに接触して、磁気ストライプから磁気情報を読み取ったり、磁気ストライプに磁気情報を書き込んだりする。カード処理装置1に挿入されたカード2がICカードの場合には、IC接点ヘッド16が、ICカードのIC接点に接触して、IC接点を介してICカードのICチップから情報を読み取ったり、ICチップに情報を書き込んだりする。
モータ25が駆動することにより、それに機構的に接続されているローラ4が回転する。上下のローラ4の間にカード2が存在すると、カード2が搬送される。ロータリエンコーダ26は、モータ25の回転数を検出する。カード検出センサ6、7、8は、カード処理装置1の搬送路5での所定の位置に、カード2が存在するか否かを検出する。挿入検出センサ17は、挿入口3にカード2が存在するか否かを検出する。センサ6、7、8、17は、カード2の存在を検出すると、OFF状態からON状態に切り替わる。シャッタ用ソレノイド27は、シャッタ14を開け閉めする。偏心カム用ソレノイド13は、偏心カム10を回転させるために駆動する。接点ヘッド用ソレノイド28は、IC接点ヘッド16を上下に移動させる。
ROM21は、CPU20の動作プログラムを記憶している。RAM22は、各部を制御する制御パラメータ、磁気ヘッド15やIC接点ヘッド16などの各部から取得した情報を一時的に記憶する。さらに、RAM22は、磁気ヘッド15またはIC接点ヘッド16によってカードに書き込む情報を一時的に記憶する。通信部24は、カード処理装置1の上位装置に接続されている。上位装置の例として、カード処理装置が取り付けられている現金自動取引処理装置がある。通信部24は、カード2から読み取った情報やカード2が詰まったこと等を示す障害情報等を上位装置に送信する。また、通信部24は、上位装置からカード2に書き込む情報や処理対象のカード2の種類情報等を受信する。
次に、カード2がカード処理装置1に挿入された後、カード処理装置1が、情報の読み取りおよび書き込みを行ってからカード2を排出するまでの処理について説明する。また、挿入時や排出時に、カード2が詰まった場合のカード取り出し阻止処理について説明する。
図3は、カード処理装置1のカード処理の概略を示すフローチャートである。ステップS1において、CPU20は、通信部24を介してカード2の種類を上位装置から受信する。ここでは、カード2の種類として、磁気カードおよび接触式ICカードを想定している。次にステップS2において、CPU20は受信したカード2の種類が磁気カードであるか否かを判定する。磁気カードであると判定した場合には、ステップS3において、CPU20は、磁気カードの取り込み処理と、磁気カードからの磁気情報の読み取り処理とを行う。そして、ステップS4において、CPU20は、磁気カードへの磁気情報の書き込み処理を行う。そして、ステップS5において、CPU20は、カード2の排出処理を行う。ステップS3、S4、S5のカード処理の詳細については、後述する。
一方、ステップS2において、受信したカード2の種類が磁気カードでないと判定した場合には、ステップS6において、CPU20は、受信したカード2の種類が接触式ICカードであるか否かを判定する。ICカードであると判定した場合は、ステップS7において、CPU20は、ICカードの取り込み処理と、ICカードからの情報の読み取り処理と、ICカードへの情報の書き込み処理とを行う。その後、ステップS5において、CPU20は、カード2の排出処理を行う。ステップS7のカード処理の詳細については、後述する。
また、ステップS6において、受信したカード2の種類がICカードでないと判定した場合には、CPU20は、ステップS7の各処理を行わずに、ステップS5に進み、カード2の排出処理を行う。これは、想定した磁気カードまたはICカードのいずれでもないため、カード処理を行うことができないからである。
図4は、図3におけるステップS3の磁気カード取り込み処理および磁気カード読み取り処理の詳細を示すフローチャートである。ステップS20において、CPU20は、挿入検出センサ17が挿入口3へのカード2の挿入を検出したか否かを判定する。図9(A)は、挿入口3にカード2が挿入された状態を示している。図9(A)において、カード2の左側の部分は図示が省略されている。カード2の先端が、挿入検出センサ17に達していないため、シャッタ14は閉じている。
挿入検出センサ17がカード2の挿入を検出すると、CPU20は、次のステップS21に進む。ステップS21において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27を駆動する。これにより、シャッタ14が搬送路5を開放する。図9(B)は、挿入検出センサ17が、カード2の存在を検出したことによって、シャッタ14が開き、搬送路5を開放した状態を示している。また、カード処理装置1の内部に、カード2が、さらに挿入された状態を示している。そして、図4のステップS22において、CPU20が、モータ25の正転駆動を開始する。モータ25が正転駆動することにより、モータ25に接続されている各ローラ4は、カード2をカード処理装置1の内部に搬送する方向に回転する。図9においては、ローラ4は、カード2を右側に搬送しようとする。実施の形態で用いられる磁気カードは、F2F方式(Two Frequency Coherent Phase Encoding)で磁気情報が記録されている。F2F方式の磁気カードの場合、磁気カードを一定速度で搬送することにより、磁気ヘッド15は磁気カードの磁気情報を読み取る。そこで、CPU20は、モータ25を一定速度で回転するように制御する。ロータリエンコーダ26が出力するモータ25の回転数を用いたフィードバック制御によって、CPU20は、モータ25の回転速度を一定に保つ。後述する図4のステップS28において、CPU20がモータ25の駆動を停止するまで、CPU20は、モータ25を一定速度で連続して正転駆動するよう制御する。
ステップS23において、CPU20は、ロータリエンコーダ26が、モータ25の回転数を定期的に出力しているか否かを判定する。例えば、CPU20が、モータ25に駆動指令を送信することに対応して、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転を検出しているか否かを判定している。ロータリエンコーダ26が回転数を定期的に出力していれば、磁気カードは、一定速度で搬送されていることになる。定期的に出力していなければ、または出力がなければ、カード2が詰まっていることになる。すなわち、ステップS23は、カード2が詰まっているか否かを判定している。カード2が詰まっていなければ、ステップS24に進む。カード2が詰まっていれば、ステップS29に進む。そして、ステップS24において、CPU20は、一定速度で搬送されている磁気カードの磁気ストライプから磁気ヘッド15によって磁気情報を読み取る。CPU20は、読み取った磁気情報をRAM22に記憶させる。ステップS24の処理は、モータ25の駆動が停止するまで、連続して行われる。
ステップS25において、CPU20は、カード検出センサ6がカード2の存在を検出したか否かを判定する。カード検出センサ6が、カード2を検出した場合には、ステップS23の処理に戻る。カード検出センサ6がカード2を検出し続けている間は、CPU20は、カード2が詰まっているか否かを判定し続けている。すなわち、ステップS23、S24、S25の処理を繰り返すことによって、カード検出センサ6の位置において、カード2が詰まっているか否かを判定している。図10(A)は、カード検出センサ6が、カード2を検出したときのカード2の位置を示している。また、磁気ヘッド15が磁気カードに接触し、磁気ストライプの磁気情報を読み取っている状態を示している。
図4のステップS25において、カード検出センサ6がカード2を検出しなくなった場合には、カード2が、挿入口3を通過し、カード処理装置1の内部に取り込まれている状態である。この場合、CPU20は、ステップS26に進み、シャッタ用ソレノイド27の駆動を停止する。これにより、シャッタ14が閉じる。図10(B)は、カード検出センサ6が、カード2を検出しなくなったときのカード2の位置を示している。また、シャッタ用ソレノイド27の駆動が停止し、シャッタ14が閉じている状態を示している。図4のステップS26でシャッタ用ソレノイド27の駆動を停止する処理は、図4の処理全体において、一度だけ行われる。
シャッタ用ソレノイド27の駆動を停止すると、ステップS27において、CPU20は、カード検出センサ8がカード2の存在を検出したか否かを判定する。カード検出センサ8の位置にカード2が存在することは、カード2全体が磁気ヘッド15を通過したことを意味する。図11(A)は、カード2の先端が、カード検出センサ8の位置に到達している状態を示している。また、カード2の後端が、磁気ヘッド15を通過した状態を示している。カード検出センサ8がカード2の存在を検出すると、ステップS28において、CPU20は、モータ25の駆動を停止する。これにより、各ローラ4の回転が停止し、カード2の搬送が停止する。そして、CPU20は、通信部24を介して、RAM22に記憶されている磁気情報を上位装置へ送信する。これにより、磁気カードの磁気情報の読み取り処理が終了する。
一方、ステップS27において、カード検出センサ8がカード2の存在を検出していない場合には、磁気ヘッド15と磁気カードとは接触している状態である。言い換えると、まだ磁気カードの磁気情報読み取りが完了していない状態である。この場合、CPU20は、ステップS23の処理に戻り、モータ25の駆動によるカード2の搬送および磁気ヘッド15による磁気カードの磁気情報の読み取り処理を続ける。
不正を働こうとする者が、カード処理装置1に何らかの細工を施し、カード2が搬送路5に詰まるようにしたとする。カード2が詰まったときのカード2の位置を図11(B)に示す。この場合、CPU20が、モータ25を駆動し続けているにもかかわらず、ロータリエンコーダ26が、モータ25の回転を検出しない。このため、CPU20は、図4のステップS23において、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力していないと判定する。そして、ステップS29において、CPU20は、カード取り出し阻止処理を行う。ステップS29のカード処理の詳細については、後述する。その後、CPU20は、図3に示されるカード処理を強制的に終了(異常終了)する。
図4で示したフローチャートでは、ステップS23で説明したように、ロータリエンコーダ26が定期的に回転数を出力しないときに、カード取り出し阻止処理を行うようにした。これ以外に、ロータリエンコーダ26が定期的に回転数を出力せず、かつ、カード検出センサ6がカード2の存在を検出する場合に限って、カード取り出し阻止処理を行うようにしてもよい。後者のようにすると、カード2がカード検出センサ6の位置に存在するときに限って、カード取り出し阻止処理を行うことができる。
図5は、図4におけるステップS29のカード取り出し阻止処理の詳細を示すフローチャートである。ステップS30において、CPU20は、偏心カム用ソレノイド13を駆動させる。すると、偏心カム10が回転軸11を中心に回転し、偏心カム10の外周がカード2に接触して、カード2の表面を押圧する。これにより、カード2が挿入口3から取り出されることを阻止する。押圧機構の詳細については、後述する。そして、ステップS31において、CPU20は、通信部24を介して、カード2が搬送路5に詰まった旨の障害情報を上位装置に連絡する。
図6は、図3におけるステップS4の磁気カードの書き込み処理の詳細を示すフローチャートである。図3のステップS3の処理が終了した時点では、磁気カードは、図11(A)に示されるように、搬送路5の右端に停止している。磁気カードを搬送路5の挿入口3側に戻すため、ステップS40において、CPU20は、モータ25の逆回転駆動を開始する。すると、モータ25に接続されている各ローラ4は、磁気カードを挿入口3側に搬送するように回転する。磁気カードが挿入口3側に搬送されると、ステップS41において、カード検出センサ6が磁気カードの存在を検出する。このため、ステップS42において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27を駆動する。これにより、シャッタ14が開く。したがって、磁気カードが挿入口3まで搬送され、以降の処理において、磁気カードの先端から磁気情報を書き込むことができるようになる。このときの磁気カードの位置が図10(A)に示されている。なお、カード処理装置1の搬送路5を長くすることで、シャッタ14を開けることなく、磁気カードの先端から磁気情報を書き込むことができるような位置に磁気カードを搬送することができる。
図6のステップS43において、挿入検出センサ17が磁気カードの存在を検出すると、ステップS44において、CPU20は、モータ25の正転駆動を開始する。そして、ステップS45において、CPU20は、上位装置から通信部24を介して、磁気カードに書き込む情報を受信し、RAM22に記憶する。続いて、CPU20は、RAM22に記憶されている情報に基づいて、搬送中の磁気カードに対して、磁気ヘッド15により磁気情報を書き込む。磁気情報の書き込みは、CPU20が書き込み信号を磁気ヘッド15に与えている期間だけ、連続的に行われる。ステップS46において、カード検出センサ6が磁気カードを検出しなくなった場合、シャッタ14の位置に磁気カードは存在していない。したがって、ステップS47において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27の駆動を停止する。これにより、シャッタ14が閉じる。このときのカード2の位置が、図10(B)に示されている。そして、磁気カードが搬送されつづけ、ステップS48において、カード検出センサ8が磁気カードの存在を検出すると、ステップS49において、CPU20は、モータ25の駆動を停止する。これにより、各ローラ4の回転が停止し、磁気カードの搬送が停止する。このときの磁気カードの位置が、図11(A)に示されている。この後、CPU20は、磁気カードへの磁気情報の書き込み処理を終了し、図3のステップS5の処理に進んで、ICカードの排出処理を行う。なお、上述したCPU20が上位装置から磁気カードに書き込む情報を受信する時期については、ステップS45の磁気ヘッド15による書き込み開始前であればいつでもよい。
図7は、図3におけるステップS5のカード排出処理の詳細を示すフローチャートである。図3のステップS4の処理が終了した時点では、カード2は、図11(A)に示されるように、搬送路5の右端に停止している。カード2を搬送路5の挿入口3側に戻し、カード2を排出するため、図7のステップS60において、CPU20は、モータ25の逆回転駆動を開始する。これにより、モータ25に接続されている各ローラ4は、カード2を挿入口3側に搬送するように回転する。モータ25の駆動は、後述するステップS65において、モータ25の駆動が停止するまで、連続して行われる。
カード2が、挿入口3側に搬送され、ステップS61において、カード検出センサ6がカード2の存在を検出したときには、搬送されたカード2は、挿入口3に近づいている。そこで、ステップS62において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27を駆動する。これにより、シャッタ14が開き、搬送路5のカード2を挿入口3から排出することができるようになる。
ステップS63において、CPU20は、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力しているか否かを判定する。これにより、前述のステップS23と同様に、CPU20は、カード2がカード検出センサ6の位置において、詰まっているか否かを判定することができる。
ステップS63において、CPU20が、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力していないと判定した場合には、すなわちカード2が詰まっていると判定した場合には、CPU20は、ステップS29のカード取り出し阻止処理を、前述した図5のフローチャートに従って実行する。実行後、CPU20は、カード処理を異常終了する。
一方、図7のステップS63において、CPU20が、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力していると判定した場合には、すなわちカード2が搬送路5において詰まっていないと判定した場合には、ステップS64において、CPU20は、カード検出センサ6がカード2を検出してから所定時間経過したか否かを判定する。このとき、カード2は、排出されるために、ローラ4の回転により一定速度で挿入口3に向けて搬送されている。したがって、カード2の排出方向における先端がカード検出センサ6の位置を通過してから、排出方向におけるカード2の後端が、最も挿入口3に近いローラ4を通過するまでの時間はあらかじめ決まっている。そこで、この時間を上述した所定時間に設定している。カード処理装置1にカード2が詰まるなどの異常が発生していない場合は、所定時間経過すれば、カード2は、すべてのローラ4を通過した後なので、ステップS65において、CPU20は、モータ25の駆動を停止する。そして、各ローラ4の回転が停止する。これにより、カード2の搬送が停止する。所定時間が経過していなければ、カード2は、すべてのローラ4を通過していないので、CPU20はローラ4によるカード2の搬送を続ける。
上記では、時間を計測することによって、モータ25の駆動を停止したが、これ以外に、搬送路におけるカード検出センサの数を増やして、カード2が所定の位置を通過したときに、モータ25の駆動を停止するようにしてもよい。
ステップS65において、CPU20がモータ25の駆動を停止すると、ステップS66において、CPU20は、挿入検出センサ17がカード2の存在を検出したか否かを判定する。ステップS66において、挿入検出センサ17がカード2の存在を検出しないと判定した場合は、挿入口3にカード2が存在しない状態を示している。すなわち、何ら障害が発生せずに、利用者が、カード2を取り出した状態を示している。この場合、ステップS67において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27の駆動を停止する。これにより、シャッタ14が閉じ、カード排出処理が終了する。
図8は、図3におけるステップS7のICカード取り込み処理、ICカード読み取り処理、およびICカード書き込み処理の詳細を示すフローチャートである。図3のステップS2の処理が終了した時点では、カード2は、図9(A)に示されるように、挿入口3にカード2の先端が挿入されている状態である。
図8のステップS70において、CPU20は、挿入検出センサ17がICカードの挿入を検出したか否かを判定する。挿入検出センサ17がICカードの挿入を検出していると、ステップS71において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27を駆動する。これにより、シャッタ14が開き、ICカードをカード処理装置1の内部に挿入することができるようになる。そして、ステップS72において、CPU20は、モータ25の正転駆動を開始する。これにより、モータ25に接続されている各ローラ4が、ICカードを挿入口3からカード処理装置1の内部に搬送するように回転する。
ステップS73において、CPU20は、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力しているか否かを判定する。これにより、前述のステップS23と同様に、CPU20は、ICカードがカード検出センサ6の付近において、詰まっているか否かを判定することができる。
ステップS73において、CPU20が、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力していないと判定した場合には、すなわちカード2が詰まっていると判定した場合には、CPU20は、ステップS29のカード取り出し阻止処理を、前述した図5のフローチャートに従って実行する。実行後、CPU20は、カード処理を異常終了する。
一方、ステップS73において、CPU20が、ロータリエンコーダ26がモータ25の回転数を定期的に出力していると判定した場合には、すなわち、カード2が搬送路5において詰まっていないと判定した場合には、ステップS74において、CPU20は、カード検出センサ7がICカードの存在を検出したか否かを判定する。ICカードの挿入方向において、ICカードの先端が、カード検出センサ7の位置に到達したときに、ICカードの接点が、IC接点ヘッド16の位置に到達しているように、カード検出センサ7が設けられている。
ステップS74において、カード検出センサ7がICカードを検出しない場合には、CPU20は、ステップS73に戻り、ICカードが詰まっているかどうかを判定する。カード検出センサ7がICカードを検出した場合には、ステップS75において、CPU20は、シャッタ用ソレノイド27の駆動を停止する。これにより、シャッタ14が閉まる。そして、ステップS76において、CPU20は、モータ25の駆動を停止する。これにより、各ローラ4の回転が停止し、ICカードの搬送が停止する。このとき、ICカードの接点は、IC接点ヘッド16に対向して位置している。
ステップS77において、CPU20は、接点ヘッド用ソレノイド28を駆動することにより、IC接点ヘッド16を降下させる。これにより、IC接点ヘッド16がICカードのIC接点に接触する。そして、ステップS78において、CPU20は、ICカードのICチップから情報を読み取る。CPU20は、読み取った情報をRAM22に記憶する。そして、CPU20は、通信部24を介して、RAM22に記憶されている情報を上位装置に送信する。この後、CPU20は、通信部24を介して、書き込み情報を上位装置から受信する。また、CPU20は、受信した当該情報をRAM22に記憶する。そして、ステップS79において、CPU20は、RAM22に記憶した書き込み情報をICカードのICチップに書き込む。書き込みが終了すると、ステップS80において、CPU20は、接点ヘッド用ソレノイド28の駆動を停止することにより、IC接点ヘッド16を上昇させる。これにより、IC接点ヘッド16がICカードのIC接点から離れる。この後、CPU20は、図3のステップS5の処理に進み、ICカードの排出処理を行う。
次に、カード処理装置1に設けられた押圧機構の詳細について、図12〜図26を用いて説明する。
図12および図13は、カード処理装置1の挿入口3近傍に設けられた押圧機構を示す図である。図中、(A)は同押圧機構の側面図、(B)は同押圧機構の平面図を示している。なお、(B)ではカード2、挿入口3、およびシャッタ14等の図示を省略している。図12は、偏心カム用ソレノイド13が駆動していない状態を示している。偏心カム10は、回転軸11を中心に回転するように設けられている。また、図12(A)に示すように、偏心カム10は、回転軸11に対して偏心している。偏心カム10のカード2に面する側の外周9は、略円弧状に形成されている。このため、偏心カム10の回転軸11から外周9までの距離は一定ではない。偏心カム10の外周9には、回転軸11からの距離が、搬送路5を搬送されるカード2に接触しない長さL1である外周部分9aと、搬送路5を搬送されるカード2に接触する長さL2である外周部分9bとが含まれている。図12(A)の状態では、外周部分9aが搬送路5に対して向いているので、外周部分9aはカード2に接触していない。然るに、後述するように偏心カム10を回転軸11を中心に時計回りに回転させることにより、外周部分9bを搬送路5に対して向けると、図13(A)に示すように外周部分9bがカード2の表面に接触する。
回転軸11には、ねじりコイルばね12が取り付けられている。ねじりコイルばね12は、偏心カム10を時計回りに回転させるように偏心カム10に力を加えている。これは、ねじりコイルばね12の下端部が、偏心カム10に係っているからである。一方、ねじりコイルばね12の上端部は、壁34に当たっている。
図12(B)に示すように、偏心カム用ソレノイド13の可動鉄芯54の先端には、ピン18が取り付けられている。また、可動鉄芯54の周りにはコイルばね55が設けられている。コイルばね55は、ピン18に偏心カム用ソレノイド13から離れる方向の力を加えている。ピン18には、偏心カム10の上部を支持する支持具97が取り付けられている。支持具97は、梁84、ローラ87、およびコイルばね88等から構成されている。梁84は、回転軸86を中心に回転する。回転軸86は、図示しない板や棒等の部材を介して壁34に固定されている。回転軸86の周りにはコイルばね88が設けられている。コイルばね88の一端は、梁84から突出した爪90に当たっている。コイルばね88の他端は、図示しない板や棒等の部材を介して壁34に固定された爪89に当たっている。梁84の中央には、円柱83が設けられている。円柱83は、ピン18に設けられた溝85に挿入されている。梁84の左側には、ローラ87が設けられている。ローラ87は、回転軸92を中心に回転することができる。また、ローラ87は、偏心カム10の上部に取り付けられたブロック91に接触している。このため、ねじりコイルばね12の弾性力により偏心カム10が回転軸11を中心に時計回りに回転しようとしても、偏心カム10の回転は阻止される。
偏心カム用ソレノイド13が駆動すると、可動鉄芯54が、偏心カム用ソレノイド13の内部に引き込まれる。すると、図12(B)において、ピン18の溝85が上方に移動して、溝85の端が円柱83に当たり、円柱83も上方に移動する。これにより、図12(B)において、梁84が回転軸86を中心に時計回りに回転する。このとき、コイルばね88の弾性力によって、梁84に対して、反時計回り方向の力が働いている。偏心カム用ソレノイド13の駆動力は、コイルばね88の弾性力とコイルばね55の弾性力とを合計した力よりも大きい。梁84が回転軸86を中心に回転しようとするとき、ローラ87が回転軸92を中心に回転する。このため、ローラ87とブロック91との間に発生する摩擦力は小さい。
図12(A)において、偏心カム10は、ねじりコイルばね12の弾性力により回転軸11を中心として時計回りに回転しようとしている。ねじりコイルばね12の弾性力は、偏心カム10からブロック91とローラ87を経由して、梁84に働いている。図12(A)の状態では、図12(B)からも分かるように、ブロック91、ローラ87、および回転軸86は、ほぼ一直線上に並んでいる。このため、梁84に働く力は、すべて回転軸86に働き、回転軸86で打ち消される。また、溝85と円柱83との間には、隙間が設けられている。このため、ねじりコイルばね12の弾性力は、ピン18に働いていない。したがって、ねじりコイルばね12の弾性力は、偏心カム用ソレノイド13には働かない。すなわち、偏心カム10が回転軸11を中心に回転しようとする力が、偏心カム用ソレノイド13の駆動に悪影響を与えない。
カード処理装置1がカード2の詰まりを検出したとき、上述したように偏心カム用ソレノイド13が駆動する。図13は、偏心カム用ソレノイド13が駆動した状態を示している。図13(B)において、可動鉄芯54およびピン18が上側に移動している。溝85の移動により、円柱83が上側に移動している。円柱83の移動により、梁84が、回転軸86を中心として時計回りに回転している。ローラ87がブロック91から外れているため、偏心カム10が、ねじりコイルばね12の弾性力により回転軸11を中心に回転し、図13(B)において、偏心カム10の上部が右側に移動している。このとき、コイルばね88の弾性力により梁84が反時計回りに回転しようとする。しかし、コイルばね88の弾性力により、ブロック91の側面とローラ87とが接触して、梁84の回転を妨げている。図13(A)に示すように、偏心カム10が回転軸11を中心に時計回りに回転することにより、偏心カム10の外周部分9bが搬送路5に対して向かい、外周部分9bがカード2の表面に接触する。このとき、偏心カム10からカード2の表面に対して押圧力が働いている。この押圧力がカード2に対して十分働くように、台32がカード2を下から支えている。台32でカード2を支えることにより、カード2のたわみが防止される。
偏心カム10がカード2の表面に接触することで、上記の押圧力とともに、カード2と偏心カム10の外周部分9bとの間で大きな摩擦力が働く。このため、不正を働こうとする者が、挿入口3から、工具などを使用して、詰まったカード2を引き抜こうとしても容易に抜くことができない。図13(A)に示すように、偏心カム10の外周部分9bがカード2の表面に接触している状態を便宜的に、接触状態と呼ぶ。
図13における接触状態の偏心カム10とカード2と台32の拡大図を図14に示す。偏心カム10の外周部分9bがカード2の表面に接触している。偏心カム10の押圧力により、カード2がたわまないように、台32が、カード2を下から支えている。
図13(A)の接触状態において、不正を働こうとする者が、さらに大きな力をかけてカード2を挿入口3から引き抜こうとした場合を想定する。この場合、カード2を大きな力で引き抜こうとすることで、カード2と偏心カム10との間の摩擦力により、偏心カム10が回転軸11を中心にさらに時計回りに回転する。すると、カード2に接触している外周部分9bは、カード2を引き抜こうとする方向とほぼ同じ方向に移動することになる。このとき、カード2を引き抜こうとする力で、偏心カム10を回転させているので、偏心カム用ソレノイド13は、偏心カム10に対して力を加えていない。この状態を図15に示す。
図15において、偏心カム10は、回転軸11に対して偏心しているため、図13(A)において、カード2に接触している外周部分9b(第1の外周部分)よりもさらに回転軸11からの距離L2’が長い外周部分9b’(第2の外周部分)が、カード2に接触する。距離L2’(第2の長さ)は、距離L2(第1の長さ)よりも長い。これにより、さらに大きな押圧力が偏心カム10からカード2の表面に働き、偏心カム10とカード2との間の摩擦力もさらに大きくなる。このため、ますます、カード2を引き抜くことが困難になる。
図15に示すように、カード2を引き抜こうとしたことで、カード2がわずかに左側に移動している。また、偏心カム10が時計回りに回転して壁34に当たっている。偏心カム10が壁34に当たることで、偏心カム10の時計回りの回転が妨げられ、偏心カム10がカード2の表面から離れることが防止される。図15に示すように、偏心カム10の外周部分9b’が、カード2の表面に押し込まれて接触している状態を便宜的に、固定状態と呼ぶ。
図15における固定状態の偏心カム10とカード2と台32の拡大図を図16に示す。偏心カム10の外周部分9b’がカード2の表面に接触し、偏心カム10がカード2に対して食い込んでいる。このため、カード2を引き抜こうとすると、カード2につられて、偏心カム10が移動し、時計回りに回転しようとする。しかしこのとき、図15に示したように、偏心カム10が壁34に当たっているので、偏心カム10は回転しない。よって、カード2を引き抜くことが困難である。このため、カード2を無理に引き抜こうとした場合には、カード2が損傷する。
偏心カム10がカード2に接触している状態において、停電が発生したとする。停電により、偏心カム用ソレノイド13の駆動が停止する。このとき、図13(B)に示したように可動鉄芯54の周囲に取り付けられたコイルばね55は伸張する。このため、コイルばね55の弾性力によって、図13(B)においてピン18が下方に移動し、梁84が反時計回りに回転しようとする。しかし、ブロック91の存在によって、梁84は回転することができない。したがって、偏心カム10は、ねじりコイルばね12の力によって、カード2に接触し続けることになる。よって、停電が発生したとしても、カード2の抜き取りを阻止しようとする状態が維持される。つまり、押圧機構が一旦動作すると、ねじりコイルばね12の力でその状態を保つようにしているため、停電が発生したとしても、その影響を受けない。
図17は、押圧機構を図13(A)の矢印方向から見た図である。本図では、前述した支持具97を簡略化して示している。偏心カム10は、ねじりコイルばね12の弾性力によって生じるカード2への押圧力に、耐えられる厚みを有している。偏心カム10の厚みを増すことにより、偏心カム10の外周部分9bとカード2との摩擦を大きくすることができる。偏心カム10は、回転軸11に回転可能に取り付けられている。回転軸11は、取り付け板35に取り付けられている。偏心カム用ソレノイド13は、取り付け板36に取り付けられている。取り付け板35、36は、壁34に取り付けられている。偏心カム10を見やすくするために、図12および図13では、取り付け板35、36を省略している。台32は、カード2がたわまないように、偏心カム10より厚く形成されている。
偏心カム10の外周9にゴム等の滑りにくい材質のものを取り付けることにより、偏心カム10とカード2との間の摩擦力を大きくすることができる。図18は、偏心カム10の外周9にゴム40を取り付けた場合の外周9および外周9に接触するカード2の拡大図である。
また、偏心カム10の外周9に凹凸を設けることにより、偏心カム10の凸部が、カード2の表面に食い込み、偏心カム10とカード2との間の摩擦力を大きくすることができる。図19は、偏心カム10の外周9に凹凸41を設けた場合の外周9および外周9に接触するカード2の拡大図である。接触状態から固定状態に変化したときに偏心カム10がカード2に接触した外周9の長さより、凹凸41の間隔が小さいことが好ましい。
また、偏心カム10の外周9に設けた凹凸の近傍にゴムを取り付けることにより、カード2との間の摩擦力をより大きくすることができる。図20および図21は、偏心カム10と偏心カム10の側面に取り付けたゴム60を示す図である。図21は、偏心カム10およびゴム60を図20の太矢印方向から見た状態を示している。ゴム60は、偏心カム10の外周9より下側に突き出ている。このため、図20では、ゴム60の背後に外周9が隠れている。なお、外周9には、鋸の刃状の凹凸が設けられている。これにより、カード2に最初に接触するのは、ゴム60である。ゴム60は、カード2との間で、大きな摩擦力を発生させる。このため、ゴム60がカード2の表面に接触した状態で、カード2を引き抜こうとすると、カード2の移動につられて、ゴム60と一緒に偏心カム10が回転する。そして、偏心カム10は、偏心しているため、ゴム60および偏心カム10はカード2の表面を押し付ける。すると、ゴム60はその弾性のためにへこみ、外周9の凹凸の凸部がカード2の表面に食い込む。これにより、押圧機構が動作した後、カード2を引き抜こうとするとき、ゴム60が取り付けられた偏心カム10がカード2の移動に追従しやすくなる。この結果、確実に偏心カム10が時計回りに回転し、カード2の取り出しを防止することができる。
また、偏心カム10にカード2と接触する凹凸の付いた刃を取り外し可能に設けることにより、偏心カム10自体の磨耗を防ぐことができる。図22および図23は、偏心カム10と凹凸の付いた刃108を示す図である。図22(A)は刃108が取り付けられた偏心カム10の側面図を示し、図22(B)は刃108が取り付けられた偏心カム10の正面図を示している。板115が偏心カム10に取り付けられている。板115の先端には、刃108が設けられている。刃108は、鋸の刃状の凹凸で構成されている。ネジ101によって、板115が偏心カム10に取り付けられている。ネジ101が緩まないように、ネジ101と板115との間に板116が挟まれている。
図23は、偏心カム10から刃108を外した状態を示している。偏心カム10の下側に円柱105、106が設けられている。図23において、円柱105、106は紙面の上側に突き出ている。板115および板116に円柱105が挿入される穴113、109が設けられている。板115および板116に円柱106が挿入される穴111、110が設けられている。これにより、カード2と板115とが接触したときに、その摩擦力により、板115がネジ101を中心に回転することを防止している。板116は、板115を刃108の部分を除いて覆っている。これにより、板116は、刃108が付いている板115を補強している。
偏心カム10と刃108が設けられている板115とを分解できるようにしたことで、板115の刃108が欠けた場合や摩耗した場合に、板115のみを取り替えることができる。偏心カム10全体を取り替えることに比べて、板115の取り替えの方が容易である。また、偏心カム10と刃108が付いている板115の材質を異なるものにすることができる。例えば、刃108に硬化処理を施すことができる。これにより、刃108の厚さを薄くでき、刃108がカード2の表面に押し込まれやすくなる。
図24は、カード処理装置1の概略平面図である。本図では、カード処理装置1の内部に備わる偏心カム10、磁気ヘッド15、およびIC接点ヘッド16を破線で示している。また、本図に示すカード2は、表面2aの所定位置にIC接点2cが設けられた接触式のICカードである。当該カード2において、IC接点2cが設けられる位置は、規格等で規定されている。
図24において、偏心カム10の外周部分9b、9b’がカード2のカード面2a、2bを押圧する位置P1と、IC接点ヘッド16がカード2のカード面2a、2bに接触する位置P3とは、カード2の挿入方向Fおよび引抜方向Bに対して平行な一直線上に並んでいない。つまり、偏心カム10は、押圧位置P1が、IC接点ヘッド16の接触位置P3とカード2の挿入方向Fに対して平行な一直線上に並ばないように配置されて回転軸11に取り付けられている。
図24(A)に示すように、カード2が、表面2aを上方に向け、IC接点2cからの距離が近い前端部2fをカード処理装置1に向けた正規の姿勢で挿入口3に挿入された場合、カード2がローラ4(図1)によって搬送されることにより、IC接点2cがP2位置を通過する。また、図24(B)に示すように、カード2が、後端部2gをカード処理装置1に向けた誤った姿勢で挿入口3に挿入された場合、カード2がローラ4によって搬送されることにより、IC接点2cがP2位置を通過する。また、図24(C)に示すように、カード2が、裏面2bを上方に向けた誤った姿勢で挿入口3に挿入された場合、カード2がローラ4によって搬送されることにより、IC接点2cがP2位置を通過する。さらに、図24(D)に示すように、カード2が、裏面2bを上方に向け、後端部2gをカード処理装置1に向けた誤った姿勢で挿入口3に挿入された場合、カード2がローラ4によって搬送されることにより、IC接点2cがP2位置を通過する。カード2が、図24(A)〜(D)に示すいずれの姿勢で挿入されても、偏心カム10の押圧位置P1と、カード2のIC接点2cが通過する位置P2は、カード2の挿入方向Fに対して平行な一直線上に並んでいない。つまり、偏心カム10は、押圧位置P1が、IC接点2cの通過位置P2と、カード2の挿入方向Fに対して平行な一直線上に並ばないように配置されて回転軸11に取り付けられている。
上述したように偏心カム10が配置されていることにより、カード2が図24(A)〜(D)に示すいずれかの姿勢で挿入口3に挿入された後に、偏心カム用ソレノイド13が駆動すると、ねじりコイルばね12の弾性力により偏心カム10がカード2に接触して、カード2のIC接点2c以外の部分を的確に押圧する。
ICカードのIC接点2c以外の部分(エンボス部分等)は、IC接点よりも軟らかくて滑り難いため、当該部分を偏心カム10で押圧することにより、偏心カム10がカード2上で滑ることはなく、偏心カム10とカード2との間に強い摩擦力が生じる。このため、偏心カム10でカード2を押圧した後に、不正を働こうとする者が、カード2を無理に引き抜こうとしても、カード2が挿入口3から取り出されることが阻止される。また、カード2のIC接点2cが偏心カム10に傷つけられて損傷することはない。
例えば図13に示したような押圧機構が動作した状態、すなわち偏心カム10がカード2に接触した状態を解除するには、係員等がカード処理装置1を覆っている覆いを外し、図13(A)においてレバー19を左下方向に引けばよい。これにより、偏心カム10が回転軸11を中心に反時計回りに回転する。すると、偏心カム10の右上部が左側に移動するので、コイルばね88の力により、梁84が、反時計回りに回転して、図12(B)に示したようにピン18に対して垂直な状態に戻る。この後、係員等がレバー19を離すことにより、偏心カム10がねじりコイルばね12の力により、時計回りに回転しようとする。しかし、ブロック91とローラ87とが接触しているので、偏心カム10は、時計回りに回転しない。よって、偏心カム10が、図12(A)に示したようにカード2から離れた状態で停止する。これにより、係員等は、詰まったカード2を取り除くことができる。
一方、図13に示した状態において、カード2をカード処理装置1の内部に押し込もうとすると、カード2は、容易に押し込まれる。また、ローラ4によりカード処理装置1の内部への取り込みを試みることができる。これは、偏心カム10を時計回りに回転させようとする力は、ねじりコイルばね12が発生する力だけだからである。
図15に示した固定状態になったときに偏心カム10の位置を固定する固定具を設けることにより、カード処理装置1の外部からカード2を押したり引いたりしても、カード2を移動させないようにすることができる。図25および図26は、固定具134が設けられた押圧機構を示す図である。図中、(A)は同押圧機構の側面図、(B)は同押圧機構の正面図を示している。なお、(A)、(B)では、支持具97、偏心カム用ソレノイド13、コイルばね12等の図示を省略している。また、(B)では、壁34、シャッタ14、挿入口3等の図示を省略している。また、本図に示す偏心カム10には、図22および図23で説明した刃108が取り付けられている。
図25は、偏心カム用ソレノイド13が駆動していない状態を示している。壁34には、台130が取り付けられている。台130の回転軸138を中心に回転するように、固定具134が取り付けられている。固定具134は、偏心カム10の位置を固定する。図25(B)において、固定具134の左側には、爪137が設けられている。固定具134の上側には、爪135が設けられている。固定具134の右側の爪133には、コイルばね131の一端が取り付けられている。図25(B)において、右側の爪133は、紙面から上方向に突き出ている。突き出ている右側の爪133にコイルばね131の先端に設けられている輪が掛けられている。コイルばね131の他端は、台130の穴132に取り付けられている。図25(B)において、コイルばね131の他端のコイルは紙面の下側に突き出ている。突き出たコイルが穴132に引っかけられている。このため、コイルばね131の弾性力により、固定具134を反時計回り方向に回転しようとする力が、固定具134に働いている。固定具134の左辺139は、レバー19に当たっている。このため、固定具134の回転は、図25(B)に示される状態で停止している。図25(B)において、レバー19はハッチングで示されている。
カード処理装置1が、カード2の詰まりを検出すると、偏心カム用ソレノイド13を駆動する。なお、図25においては、偏心カム用ソレノイド13は図示されていない。偏心カム用ソレノイド13が駆動すると、図25(A)において、偏心カム10が、回転軸11を中心に時計回り方向に回転する。そして、外周9に設けられている刃108がカード2に接触する。このときの状態を図26に示す。
図26において、刃108がカード2に接触している。カード2を引き抜こうとすると、刃108とカード2との摩擦力により、偏心カム10が、さらに時計回りに回転しようとする。これにより、偏心カム10は、偏心しているため、刃108がさらにカード2に押し付けられる。これにより、カード2が抜き取られることを防止している。
偏心カム10が時計回りに回転したため、図26(A)において、偏心カム10のレバー19が右上に移動している。このため、図26(B)に示すように、レバー19が固定具134の左辺139から外れている。よって、固定具134がコイルばね131の弾性力により、反時計回り方向に回転軸138を中心に回転する。そして、上側の爪135とレバー19が接触する位置で、固定具134の回転が停止する。これにより、レバー19が、下側に移動できなくなる。
上側の爪135とレバー19が接触する状態において、カード処理装置1の挿入口3からカード2をさらに挿入させた場合を考える。このとき、カード2と刃108との摩擦力により、偏心カム10が反時計回りに回転しようとする。このとき、図26(A)において、レバー19は、左下に移動しようとする。しかし、固定具134の爪135とレバー19とが接触しているため、偏心カム10は、反時計回りに回転することができない。これにより、カード処理装置1の外部から、カード2を押したとしても、偏心カム10が回転しないため、カード2は移動しない。一方、カード2を引いたときには、カード2と刃108との摩擦力により、偏心カム10が時計回りに回転し、刃108がさらに、カード2の表面に対して押し付けられる。このため、カード2を抜くことができない。
よって、カード処理装置1の外部から偏心カム10によって、固定状態になったカードを引いたり押したりしても、カード2は、移動することがない。これにより、カード処理装置1内に詰まったカード2が持ち去られるのを防止することができる。
偏心カム10が固定された状態を解除するには、図26(B)において、固定具134の爪137を上側に持ち上げ、時計回りに回転させる。そして、図26(A)において、レバー19を押し下げ、偏心カム10を反時計回りに回転させる。すると、前述したように偏心カム用ソレノイド13の先端に取り付けられた支持具97が偏心カム10に接触し、偏心カム10の位置が固定されて、図25に示す状態に戻る。このとき、図25(A)に示すように、刃108は、カード2の表面から、持ち上がっている。
レバー19と固定具134の爪135との間の摩擦力を増やすために、爪135の外周136に鋸状の刃を設けることができる。また、爪135の外周136にゴムを取り付けることができる。
以上説明したように、カード2が搬送路5に詰まる等の異常を検出したときに、偏心カム用ソレノイド13を駆動することにより、ねじりコイルばね12の弾性力で偏心カム10を回転させてカード2に接触させることができ、偏心カム10でカード2を押え付けてカード2の移動を阻止することが可能となる。つまり、偏心カム用ソレノイド13とねじりコイルばね12によりひとたび力を加えることで、偏心カム10でカード2のカード面2a、2bを押圧し、カード2が挿入口3から取り出されるのを阻止することが可能となる。この結果、不正を働こうとする者が、詰まったカード2を持ち去って悪用するという犯罪が防止される。
また、図24に示したように、偏心カム10がカード2を押圧する位置P1と、IC接点ヘッド16がカード2に接触する位置P3とが、カード挿入方向Fに対して平行な一直線上に並ばないようにしたことで、挿入されたカード2がICカードであっても、異常を検出したときに、偏心カム10でICカードのIC接点2c以外の部分を的確に押圧することができる。このため、偏心カム10とICカードとの間に強い摩擦力が生じ、ICカードが挿入口3から取り出されるのを確実に阻止することが可能となる。また、ICカードのIC接点2cが偏心カム10によって損傷するのを回避することができる。この結果、後に係員が押圧機構を解除して異常のあったICカードを取り除くと、取り除いたICカードに対してIC接点2cを介して情報の読み取りや書き込みが行え、当該ICカードを再び利用することが可能となる。
さらに、図24に示したように、偏心カム10がカード2を押圧する位置P1と、カード2のIC接点2cが通過する位置P2とが、カード挿入方向Fに平行な一直線上に並ばないようにしたことで、ICカードが正規の姿勢で挿入口3から挿入された場合だけでなく、ICカードが前後逆または表裏逆のように誤った姿勢で挿入口3から挿入された場合にも、偏心カム10でICカードのIC接点2c以外の部分を的確に押圧することができる。このため、ICカードが挿入口3から取り出されるのを確実に阻止することが可能となる。
本発明は、以上述べた実施形態以外にも種々の形態を採用することができる。例えば、以上の実施形態では、偏心カム10を回転させて、偏心カム10の外周部分9b、9b’でカード2のカード面2a、2bを押圧する押圧機構を例に挙げたが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、押圧機構としては、例えば先端の尖った棒状部材をカードのカード面に対して垂直に移動させて、当該棒状部材の先端でカード面を突き刺すように押圧したり、先端の平坦な柱状部材をカードのカード面に対して斜めに移動させて、当該柱状部材の先端でカード面を押圧したりするようにしてもよい。つまり、押圧機構としては、所定の押圧部材でカードのIC接点以外の部分を押圧して、カードの挿入口からの取り出しを阻止することが可能な機構であればよい。
また、以上の実施形態では、接触式のICカードと磁気カードとを処理可能なカード処理装置1に本発明を適用したが、本発明は、接触式のICカード専用の装置、磁気ストライプ付き接触式ICカードを処理可能な装置、接触・非接触併用型のICカードを処理可能な装置等、各種のカード処理装置に適用することが可能である。