以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、上下左右等の方向を示すときは該当する図面の記載に従うものとする。また、固定子巻線を製造する際の組み付けは、二つ以上の導線からなる導線集積体ごとに行う例である。さらに、断面図では見易くするためにハッチの図示を省略する。
まず、固定子巻線を製造する製造装置(以下では「巻線製造装置」と呼ぶ。)の構成例について、図1〜図13を参照しながら説明する。固定子巻線は、後述する回転電機MG(図31を参照)に備えられるものであり、複数の導線を積層して組み付けられる組み付け体である。図1には巻線製造装置の構成例を斜視図で示す。図2には把持機構の構成例を斜視図で示す。図1の一部分を拡大した拡大図を図3および図4に示す。図3には斜視図を示し、図4(A)には平面図を示し、図4(B)には側面図を示す。
巻線製造装置10は、固定子巻線を製造するための各種要素を基台18上に備える。具体的には、図1に示す芯材11,把持機構12,テーブル部材14,スライドプレート15,変形保持具16等を備える。また、図3および図4に示す円筒部材13やホルダ部材20なども備える。以下では、各構成要素の機能や作用等について説明する。
基台18は任意の形状に成形してよく、本形態ではテーブル部材14に対応する円形状の貫通穴をあけた立方体で成形する。芯材11,17は、径が異なる点を除き、ともに円柱状に成形された棒状部材である。芯材11と芯材17は回転中心を同一とするものの(図4(B)を参照)、個別に回転可能に備える。芯材11,17は、円筒部材13やテーブル部材14等の支軸となる。
把持機構12の構成例について、図2を参照しながら説明する。把持機構12は「ワーク把持部」とも呼ばれ、これから組み付けようとする導線集積体CGを把持して保持する機能を担う。この把持機構12は、図2(A)に示すように、上部プレート12a,シャフト12b,規制部12c,把持部12e,下部プレート12fなどを有する。把持機構12は芯材11および円筒部材13によって支持される(図1および図4(B)を参照)。下部プレート12fは、複数本のシャフト12bと規制部12cとを備え、芯材11に取り付けた後の下面側は円筒部材13上面と接触する(図4(B)を参照)。上部プレート12aは上下方向(軸方向Z)に移動可能に構成され、下面側に複数本の規制部12cおよび把持部12eを備える。把持機構12の移動は、複数本のシャフト12bを支軸として、芯材11の回転方向に従って上方向または下方向に移動する。複数本の規制部12cは、これから組み付けようとする導線集積体CGを広げた状態(外径方向に変形させた状態)を保持する。把持部12eは、下部プレート12fを貫通する支持体12dの先端部に備えられ、後述するターミナル部21(図6を参照)を保持する。
上述したように構成された把持機構12は、図19に示すターミナル部21およびチャック機構22で保持された導線集積体CGを把持部12eで把持する。把持と同時に、組み付け時に導線C同士の干渉を回避するため、複数本の規制部12cによって曲線形状の導線集積体CGを広げた状態で保持する。この保持状態のままで芯材11を回転させて、導線集積体CG相互間のクリアランス内に導線集積体CGを下降させる。下降させたときの状態を図2(B)に示す。そして、対応する台座部23にターミナル部21を固定した後、把持部12eからターミナル部21を解放して、導線集積体CGの組み付けを完了する。組み付け後は次回の組み付けに準備するため、芯材11を逆回転させて上部プレート12aを図2(A)に示す最上部位置に戻す。
図3において、円筒部材13は芯材11およびテーブル部材14によって支持される。すなわち芯材11は円筒部材13の筒内に通され、テーブル部材14は円筒部材13の下面に接触して支持する(図4(B)を参照)。円筒部材13の外周面は、接触(当接)させることで複数のホルダ部材20を径方向Xに対する所定位置(例えば後述する第2位置)に位置決めする機能を担う。なお、「径方向X」は水平方向に相当し、芯材11の中心軸を基準点(始点または終点)とする放射方向を意味する。
テーブル部材14は「導線ターミナル取付プレート」とも呼ばれ、円盤状に成形されるとともに、基台18に対して回転可能に取り付けられる。またテーブル部材14は、上述した芯材17に固定され(図4(B)を参照)、上面側にホルダ部材20を複数の位置で移動可能かつ着脱可能に搭載する。さらにテーブル部材14は、凹状部位14a、整列部位14b、段差14c,14d、貫通穴14f、長穴14e等を有する。凹状部位14aは、図4(B)に示すように、上面(表面)位置が整列部位14bよりも低くなっており、ホルダ部材20を搭載可能な内周側の領域である。
整列部位14bは、図4(B)の右側に二点鎖線で示すように、ホルダ部材20によって保持された導線集積体CGを軸方向Zに整列する外周側の領域である。整列は完成品となる固定子巻線(ワーク)Wの外形状に合わせて行うため、直線状に限らず、曲線状となる場合もある。直線状の場合には整列部位14bを平面に成形し、曲線状の場合には整列部位14bを曲面に成形すればよい。
段差14cは、凹状部位14aの外周側と整列部位14bとの境界に成形される。段差14dは、凹状部位14aの内周側に成形される。これらの段差14c,14dは、ホルダ部材20が径方向Xに移動可能な範囲を規制するストッパ機能を担う。貫通穴14fは、図7(B)に示すように段部を有し、当該段部の壁面と接触する移動カム24のカム部24bが入る。長穴14eは、図7(B)に示すように、ホルダ部材20に固定する固定部材S2が移動可能に入る。
スライドプレート15は、基台18の上面側に備えられる。図1の構成例では、基台18の四隅に対応して備える。各スライドプレート15は個別に径方向Xに移動可能に構成され、組み付けた導線集積体CGを規定位置に押し当てる規制部材である。押し当てによって、以後組み付けようとする導線集積体CGを挿入するための空間(すなわちクリアランス)を確保するように構成されていればよい。すなわち、径方向Xにスライドを行うための部材や、規定位置に維持する部材(例えばネジやボルト等)などを含む。
変形保持具16は「拡張保持具」とも呼ばれ、周方向Y(矢印D1方向)に回転可能であり、径方向X(矢印D2方向)に移動可能に基台18の上面側に備えられる。この変形保持具16は、ホルダ部材20によって保持された導線集積体CGのうちで一つ以上の導線集積体CGの全体を、曲線形状に復元しようとする復元力に抗する方向(本形態では径方向X)に変形して保持する機能を担う。この機能は、未だ組み付けていない導線集積体CGを順次組み付けるためのクリアランスを確保することを目的とする。
上記導線集積体CGの変形は、弾性変形が許容される変形許容範囲内において、所定部位(例えば自由端の端部)を外径方向または内径方向に強制的に移動させることで実現する。「変形許容範囲」は導線集積体CGによる弾性変形が許容される範囲である。具体的には、曲線形状に成形された導線集積体CGが変形後に正規寸法に戻ることができる範囲が望ましい。ただし、変形後に正規寸法に戻らない場合でも、完成品としての固定子巻線を組み付けることが可能な変形の範囲を適用してもよい。
ホルダ部材20は、図4(A)に示すように移動カム24の作用によって径方向Xに移動可能であり、導線集積体CGの一部分を保持可能に構成される。「一部分」は、導線集積体CGであれば任意の部分(部位)で設定可能である。本形態では、後述する図29(A)に示す固定子鉄心30のスロット31内に収容される部位、すなわち図18(B)に示すスロット収容部Ccとする。
またホルダ部材20は、形状についても任意に設定可能である。本形態では、図4(A)に示すように複数(具体的には8)のホルダ部材20を搭載するため、各ホルダ部材20はいずれも上から見てほぼ扇形状に成形する。すなわち、同一に構成される複数のホルダ部材20を同心円上に揃えるとドーナツ形状になる。
次に、一のホルダ部材20の構成例について、図5〜図13を参照しながら説明する。図5にはホルダ部材の外観を斜視図で示す。図6にはホルダ部材20を分解した分解斜視図を示す。図7(A)にはホルダ部材20の平面図を示し、図7(B)には図7(A)のVIB−VIB線矢視の断面図を示す。チャック機構の構成例について、図8(A)には斜視図を示し、図8(B)には図8(A)の矢印Db方向から見た側面図を示し、図8(C)には図8(A)の矢印Dc方向から見た側面図を示す。図9(A)には導線Cを保持しない状態を示し、図9(B)には導線Cを保持する状態を示す。連結部材22dの構成例について、図10(A)には側面図を示し、図10(B)には平面図を示す。連結部材22dの間隙伸縮機能を図11(A),図11(B),図11(C)に示し、同じく連結状態変更機能を図11(D)に示す。ホルダ部材20を位置決めする複数の位置について、図12には側面図で示し、図13には断面図で示す。
図5に示すように、ホルダ部材20はターミナル部21,チャック機構22,台座部23などを有する。ターミナル部21と台座部23については、図6および図7を参照しながら説明する。チャック機構22については、図8〜図11を参照しながら説明する。
まず、「ターミナルホルダ」とも呼ばれるターミナル部21の構成例を説明する。図6に示すターミナル部21は、ボルトやネジ等の固定部材S1を用いて台座部23に固定可能に構成され、一体成形された基部21aと凸状部21dとを有する。基部21aには、一の貫通穴21bや、複数の貫通穴21e(図7(B)を参照)、固定部材S1を通す複数の貫通穴などを備える。凸状部21dには、複数の貫通穴21cを備える。
図7(A)に示すように、複数の貫通穴21cと複数の貫通穴21eとはそれぞれが同心円の円周上に沿って配置される。具体的には、後述するチャック機構22のコマ部22T(図8,図9を参照)で保持される導線Cの間隔が正規寸法となるように配置される。貫通穴21cの数は支軸22a(図8(A)を参照)の数に対応する。貫通穴21eの数は、後述する操作軸22f(図8(A)を参照)の数に対応する。なお本形態では、同時に保持する導線Cの数「6」に合わせて、貫通穴21cと貫通穴21eの数をそれぞれ「6」とする。
次に、「ターミナルホルダ取り付け部」とも呼ばれる台座部23の構成例について説明する。図6に示す台座部23は、テーブル部材14上を移動可能に構成され、一体成形された凸状部23bと基部23eとを有する。凸状部23bには、移動カム24を通す一の貫通穴(すなわち図7(B)に示す貫通穴23g)や、固定部材S1と締結するためのネジ穴23aなどが設けられる。
基部23eには、複数の支持穴23c,23dや、ストッパ23f、貫通穴23g(図7(B)を参照)などを備える。複数の支持穴23cは、上述した複数の貫通穴21eに対応する位置に設けられる。複数の支持穴23dは、上述した複数の貫通穴21cに対応する位置に設けられる。ストッパ23fは外周側下方角部に設けられる凹部であり、図7(B)に示す段差14cに対応する形状(すなわち断面がL字状の凹み)に成形される。貫通穴23gは、図7(B)に示すように移動カム24を通すための穴である。
移動カム24は、一端側に操作子24aを備え、他端側にカム部24bを備える。操作子24aは、操作部材(例えばマイナスドライバー等)を用いて移動カム24自体を回転させるのに用いられる。カム部24bは、テーブル部材14に設けられる貫通穴14fに入り、当該貫通穴14fの壁面と接触する。なお、移動カム24の操作に伴うホルダ部材20の移動については後述する(図13を参照)。
次に、チャック機構22の構成例を説明する。図8に示すチャック機構22は、支軸22a,コマ部22T,連結部材22d,操作軸22fなどを有する。支軸22a,コマ部22Tおよび操作軸22fの数は任意に設定可能であるが、本形態ではそれぞれ6ずつ備える。これらは上下二組の連結部材22dを用いて連結される(特に図8(B)を参照)。図8(C)に示すように、一の支軸22aと、一のコマ部22Tと、一の操作軸22fとによって、一の導線について保持や解放を行う。よって、複数の導線Cについて一部分を保持するとともに、導線Cの間隔を伸縮自在に保持する機能を担う。
支軸22aは、図7(B)に示すように、一端側がターミナル部21の貫通穴21cに入り、他端側が台座部23の支持穴23dに入って支持される。ターミナル部21を台座部23に固定する際に、支軸22aを貫通穴21cと支持穴23dとに入れることで、チャック機構22を支持する。逆に固定部材S1の締結を解除すれば、チャック機構22を取り出すことができる。よって、チャック機構22はホルダ部材20において着脱可能となる。また、支軸22aは次に説明するコマ部22Tを支持する。
コマ部22Tは、一端側で導線Cの保持と解放を自在に行う機能を担うべく、不動コマ22cと可動コマ22bとを有する。図9に示すように、不動コマ22cは、支軸22aと操作軸22fとによって支持されるために動かない。可動コマ22bは、図9(A)に示すように支軸22aを中心に導線C表面に対して法線方向(矢印D3方向)に動くように構成される。不動コマ22cと可動コマ22bとの間には、一端側(図面上側)に弾性体22hを介在させる。弾性体22hには、例えばバネやゴム等を用いる。なお図11に示すように、可動コマ22bはチャック機構22の中心側に配置される。また、複数のコマ部22Tは左側の3つと右側の3つとに分けられ、チャック機構22の中心線を基準として対称的に取り付けられる(すなわち取り付け方向を異ならせる)。
操作軸22fは、図7(B)に示すように、一端側がターミナル部21の貫通穴21eに入り、他端側が台座部23の支持穴23cに入って支持される。この操作軸22fは、図8(C)に示すように、操作子22gと保持カム22eとを備える。操作子22gは両端部に備えられ、操作部材を用いて操作軸22f自体を回転させる。保持カム22eは、図9に示すように、支軸22aを介して他端側(図面下側)に備えられる。この保持カム22eは、操作子22gの回転操作に伴ってコマ部22Tを開閉するため、可動コマ22bの他端側と接触したり接触しなかったりする形状に成形される。
保持カム22eが可動コマ22bの他端側と接触しないように操作子22gを回転操作すると、図9(A)に示す姿勢となる。すなわち、弾性体22hの付勢力によって不動コマ22cと可動コマ22bとの一端側が開き、導線Cを把持しない(解放する)。一方、保持カム22eが可動コマ22bの他端側と接触するように操作子22gを回転操作すると、図9(B)に示す姿勢となる。すなわち、弾性体22hの付勢力に抗して不動コマ22cと可動コマ22bとの一端側が閉じるので、導線Cを把持(保持)する。
連結部材22dは、コマ部22Tどうしの間隔および連結状態のうち一方または双方を自在に変更可能にする機能を担う。図10(A)に示すようにチェーン状に成形され、隣接する相互の支軸22a同士を連結することで全ての支軸22aを連結する。図10(A)に例示する連結部材22dは、6本の支軸22aを連結するため、5枚の板状部材で構成する。1枚の板状部材は、図10(B)に示すように両端部に長穴22iを有する。本形態では、長穴を陸上競技場の周回走路(トラック)に似せて成形するが、楕円形状等の他の形状で成形してもよい。この構成によれば、長手方向D4に伸縮して間隙伸縮機能を担い、短手方向D5に曲折して連結状態変更機能を担う。
長手方向D4に伸縮させると、コマ部22Tの位置を図11(A)に示す伸縮幅B1や、図11(B)に示す伸縮幅B2(B2<B1)、図11(C)に示す伸縮幅B3(B3<B2)などに変化させることができる。また、図11(D)に示すように扇状にコマ部22Tを配置したり、他の形態(例えばジグザグ状)でコマ部22Tを配置したりすることもできる。よって連結部材22dで連結された支軸22aは、貫通穴21cおよび支持穴23dの配置に合わせて容易に入れることができる(図5,図6を参照)。
上述したように構成されるホルダ部材20は、移動可能にテーブル部材14に備えられる。各ホルダ部材20が移動可能な位置について、テーブル部材14に搭載する一部のホルダ部材20を図示した図12および図13を参照しながら説明する。図12では、中央上部に配置されたホルダ部材20の移動例を示す。参考のために、第2位置のホルダ部材20を左右両側に示し、円筒部材13を二点鎖線で示す。図13では、右側のホルダ部材20にかかる移動例を示す。参考のために、第2位置のホルダ部材20を左側に示す。
操作部材を用いて移動カム24の操作子24aを回転操作すると、移動可能な範囲内でホルダ部材20を任意の位置に移動させることができる。「任意の位置」には第1位置,第2位置,第3位置が含まれ、各位置について以下に説明する。
第1位置は、図12(A)および図13(A)に示すように、芯材11から距離L1だけ離れる位置である。また、後述するように導線集積体CGを少なくとも軸方向を含む第1経路に沿って移動させた位置でもある(図19を参照)。図13(A)に示すように、ストッパ23fと段差14cとが接触しているため、間隙G1はほぼゼロである。
第2位置は、図12(B)および図13(B)に示すように、芯材11から距離L2(L2<L1)だけ離れる位置である。また、後述するように導線集積体CGを少なくとも水平方向を含む第2経路に沿って移動させた位置である(図25を参照)。図13(B)に示すように、円筒部材13の外周面に接触するホルダ部材20は、第1位置よりも径方向Xの内側(すなわち芯材11に接近する側)にずれた位置である。ストッパ23fと段差14cとの間には間隙G2(G2>G1)が生じる。
第3位置は芯材11から距離L3(L3<L2)だけ離れる位置であり、図12(C)および図13(C)に示す。また、第2位置よりも更に径方向Xの内側にずれた位置でもある。ホルダ部材20を第3位置に位置決めする際には、図13(C)に示すように円筒部材13を取り外す必要がある。ストッパ23fと段差14cとの間には間隙G3(G3>G2)が生じ、ホルダ部材20(具体的には図7(B)に示す台座部23)の内周側壁面が段差14dに接触する。
以上のように構成された巻線製造装置10を作動させて、複数の導線Cを用いて固定子巻線Wを製造するまでの工程について図14〜図26を参照しながら説明する。導線Cの成形例について、延伸方向に成形する例を図14に示し、径方向Xに成形する例を図16に示す。図17には複数の導線Cを用いて導線集積体CGを組み合わせる例を斜視図で示す。図17には導線Cのスロット収容部およびターン部の成形例を示す。図18には導線集積体CG(複数の導線C1〜C6)をチャック機構22で保持した状態を斜視図で示す。図19には導線集積体CGを組み付ける過程を斜視図で示す。図20には導線集積体CGを組み付けた後の状態を斜視図で示す。図21には1番目の導線集積体CG1を変形させた状態を平面図で示す。図22には2番目の導線集積体CG2を組み付ける過程を平面図で示す。図23には2番目の導線集積体CG2を組み付けた後の状態を平面図で示す。図24には取付済導線集積体と取付予定導線集積体との関係を平面図で示す。図25には取付予定導線集積体の移動経路例を図で示す。図26には全ての導線集積体CG1〜CG8を組み付けて解放した直後の状態を平面図で示す。
各工程を説明する前に、固定子巻線Wを構成する導線Cの成形例について説明する。一の導線Cにかかる延伸方向の成形例を図14(A)と図14(B)とに平面図で示す。一の導線Cは、1周分を超える長さを有し、1本の連続導体(すなわち平角線)を加工装置等による加工が行われて成形される。この導線Cには、終端部Ca,Cb、スロット収容部Cc、ターン部Cdなどを有する。一点鎖線内に示す終端部Ca,Cbは、導線C同士の接続や外部装置との接続等に応じて、実線または二点鎖線で示す各形状に成形される。終端部Ca,Cbの相互間は、スロット収容部Ccとターン部Cdとが繰り返される。スロット収容部Ccは軸方向Z(図面上下方向)に直線状に成形される。ターン部Cdは軸方向Zに凸形状に成形される。
上述したターン部Cdの構成例について、斜視図で示す図15(A)を参照しながら説明する。図15(A)に示すターン部Cdは、スロット収容部Ccの相互間に成形され、全体的に見て山形状(三角形状)に成形される。このターン部Cdは、段状部位Cd1,Cd3とクランク部位Cd2とを有する。段状部位Cd1,Cd3はそれぞれクランク部位Cd2に向かって登るような階段状に成形される。クランク部位Cd2は、図16(B)にも示すように、導線Cの延伸方向およびスロット収容部Ccの延伸方向に直交する方向に順次段差が生じるように成形される屈曲状部位である。
また、一の導線Cにかかる径方向Xの成形例について、図16(A)に斜視図を示し、図16(B)に平面図を示す。なお図16(B)には、一のホルダ部材20に対応する領域を一点鎖線で示す。図16(A)および図16(B)に示すように、導線Cは加工装置等によって径方向Xに曲線形状(すなわち渦巻き状)に曲げて成形される。成形は、スプリングバック後に正規寸法となるように、曲率をやや大きくして行われる。
上述した複数の導線Cを用いて導線集積体CGを組み合わせる例について、斜視図で示す図17および図15(B)を参照しながら説明する。複数の導線Cを組み合わせる際には、延伸方向にずらして積層する。こうして組み合わせた後の積層状態を図17に示す。図17に示す導線集積体CGは、図示の都合により4本の導線Cを組み合わせたものであるが、本形態では6本の導線Cを組み合わせる。図17に示す導線集積体CGについて、ターン部Cdを中心に拡大すると図15(B)のようになる。図15(B)に示す導線集積体CGは、6本の導線C1〜C6を組み合わせた例である。ターン部Cdについては、段状部位Cd1,Cd3でそれぞれ軸方向Z(図面上下方向)に重なるとともに、クランク部位Cd2がずれて順次現れるように積層される。
(グループ化工程)
巻線製造装置10によって製造する固定子巻線W(図27を参照)には、48本の導線Cを用いる。一方、ホルダ部材20のチャック機構22は、図8に示すように同時に6本の導線Cを保持することができる。そこでグループ化工程では、48本の導線Cを6本ごとにグループ化し、8群の導線集積体CG1〜CG8とする。
(積層工程)
グループ化工程で得られた各導線集積体CGについて、グループ化された6本の導線Cを延伸方向にずらして積層させる。各導線Cは正規寸法に成形されていることから、組み付けを行う際に導線C同士が干渉するのを回避するために、延伸方向にずらしたうえで積層する。こうして積層した状態を上述した図17および図15(B)に示す。
(保持工程)
積層工程で得られた積層状態を維持するため、図18(A)に示すように、チャック機構22を用いて導線集積体CG(導線C1〜C6)の各導線Cについて一部分を保持する。具体的には、操作部材を用いて操作軸22fの操作子22gを回転操作し、図9(B)に示すようにコマ部22Tを閉じて各導線Cを保持する。各導線Cの端部に位置するスロット収容部Ccを保持した状態を図18(B)に示す。なおコマ部22Tによる各導線Cを保持は、上述した積層工程で6本の導線Cを延伸方向にずらしているので、図11(A)に示す伸縮幅B1のように広げた状態で行う。
(間隔伸縮工程)
保持工程で各チャック機構22に保持された導線集積体CGについて、延伸方向にずらした6本の導線Cの間隔は正規寸法ではない。そこで間隔伸縮工程では、6本の導線Cの間隔を正規寸法にするため、チャック機構22を構成する全ての支軸22aと操作軸22fをターミナル部21で支持する。具体的には図7(B)に示すように、各支軸22aの一端側を貫通穴21cに入れ、各操作軸22fの一端側を貫通穴21eに入れる。この際にコマ部22Tの間隔は、図11(A)に示す伸縮幅B1から図11(B)に示す状態を経て図11(C)に示す伸縮幅B3に縮まる。また、コマ部22Tの連結状態は、図11(A)に示す直線状から図11(D)に示す扇状の連結状態になる。
ターミナル部21を用いて、一の導線集積体CGにかかる6本の導線Cの間隔を正規寸法にした状態を図19に示す。続いて図2に示す把持機構12を用い、ターミナル部21によって正規寸法で保持されたチャック機構22を矢印D4で示すように下ろし、テーブル部材14上の対応する台座部23に取り付ける。具体的には図7(B)に示すように、各支軸22aの他端側を支持穴23dに入れ、各操作軸22fの他端側を支持穴23cに入れる。さらに、固定部材S1を用いてターミナル部21と台座部23とを固定(締結)すると、斜視図で示す図20のような状態になる。なお、図20では見易くするために、テーブル部材14上に取り付けた一の台座部23のみを示す。
(変形保持工程)
上述した積層工程,保持工程および間隔伸縮工程を行って得られる各導線集積体CGは、6本の導線Cの形状および間隔はいずれも正規寸法になっている。以下では、ホルダ部材20を用いて組み付ける順番に従って導線集積体CG1,導線集積体CG2,…,導線集積体CG8と表記する。図20に示すように、1番目の導線集積体CG1をホルダ部材20で組み付けた状態のままでは、2番目以降の導線集積体CG2〜CG8を組み付ける際に導線C同士が干渉する可能性がある。
そこで変形保持工程では、2番目以降の導線集積体CG2等を組み付ける前に、組み付け済みの導線集積体CG1等を変形して保持することでクリアランスを確保する。例えば図21に示すように、変形保持具16を用いて1番目の導線集積体CG1にかかる終端部Geを外径方向(矢印D5方向)に曲げてクリアランスCL1を確保する。終端部Geは、図14に示す一端側の終端部Ca,Cbに相当する。クリアランスCL1は、ホルダ部材20に保持された内周側の導線集積体CGと変形保持具16との距離であり、未だ組み付けていない導線集積体CG(すなわち2番目以降の導線集積体CG2等)を組み付ける際に導線C同士の干渉を回避するのに十分な距離である。導線集積体CG1を外径方向に曲げるのは、二点鎖線で示す正規寸法の曲線形状に復元しようとする復元力に抗する方向に変形することを意味する。二点鎖線で示す正規寸法の導線集積体CG1は、変形保持具16によって実線で示す導線集積体CG1のように変形されて保持される。
(順次組付工程)
変形保持工程を行って1番目の導線集積体CG1を変形させてクリアランスCL1を確保できたので、当該クリアランスCL1を通して2番目以降の導線集積体CG2〜CG8を順次組み付ける。まず、2番目の導線集積体CG2の組み付けについて説明する。導線集積体CG2は、上述した積層工程,保持工程および間隔伸縮工程を先に行う。これらの工程が行われた導線集積体CG2は、図19の上部に示される導線集積体CGと同様の状態になり、ターミナル部21とチャック機構22とで保持される。この導線集積体CG2を台座部23に取り付けようとする過程を図22に示す。取り付け対象となる台座部23は、導線集積体CG1を保持するホルダ部材20の左隣に位置する。そして、導線集積体CG2の組み付けた後の状態は図23のようになり、クリアランスCL2は導線集積体CG2が入った分だけクリアランスCL1よりも狭まる。導線集積体CG3〜CG7についても導線集積体CG2と同様に行い、導線集積体CG8の組み付けでは次の移動工程および組付工程を行う。
(移動工程および組付工程)
既に組み付けた導線集積体CG(以下では「取付済導線集積体」と呼ぶ。)に続いて、未だ組み付けていない導線集積体CG(以下では「取付予定導線集積体」と呼ぶ。)を組み付けようとする場合、皮膜の損傷を抑制するために導線C同士の干渉を回避する必要がある。そこで、取付予定導線集積体は導線C同士の干渉を回避する経路で移動させる。例えば図24には、取付済導線集積体として導線集積体CG1〜CG7を適用し、取付予定導線集積体としての導線集積体CG8を適用した例である。なお、図24では導線集積体CG2〜CG6にそれぞれ対応するホルダ部材20の図示を省略している。
図24(A)に示す経路(矢印D6)に沿って導線集積体CG8を保持するホルダ部材20を移動させると、図24(B)で円内部位に示すように導線集積体CG8が導線集積体CG1や導線集積体CG7に干渉してしまう。この干渉を回避するための回避策について、以下に説明する。
第1の回避策は、図24(C)を参照しながら説明する。まず、導線集積体CG1を保持するホルダ部材20を外径方向(矢印D7方向)に移動させるとともに、導線集積体CG7を保持するホルダ部材20を内径方向(矢印D8方向)に移動させ、導線集積体CG1と導線集積体CG7との間にクリアランスを確保する。こうして確保されたクリアランスに上方から下方に向けて、導線集積体CG8を保持するホルダ部材20を移動させると図24(C)のようになる。最後に、予め移動させたホルダ部材20を元の位置に戻す。
第2の回避策は、図24(D)を参照しながら説明する。まず、導線集積体CG8を保持するホルダ部材20を回転方向(矢印D9方向)に回転角θ1だけ回転させる。回転角θ1は、導線集積体CG8が導線集積体CG1および導線集積体CG7に干渉しない角度である。回転後の状態を維持しながら、導線集積体CG8を保持するホルダ部材20を上方から下方に向けて移動させると図24(D)のようになる。最後に、回転方向と逆方向に回転角θ1だけ回転させてホルダ部材20を元の状態に戻す。
第3の回避策は、図25(A)を参照しながら説明する。まず、導線集積体CG8を保持するホルダ部材20を傾斜方向(矢印D10方向)に傾斜角θ2だけ傾斜させる。傾斜角θ2は、導線集積体CG8が導線集積体CG1および導線集積体CG7に干渉しない角度である。傾斜後の状態を維持しながら、導線集積体CG8を保持するホルダ部材20を上方から下方に向けて移動させる。最後に、傾斜方向と逆方向に傾斜角θ2だけ傾斜させてホルダ部材20を直立状態に戻す。
第4の回避策は、図25(B)および図25(C)を参照しながら説明する。上述した第1の回避策から第3の回避策まではホルダ部材20を挿入する際の回避策であるのに対し、第4の回避策は導線Cの凸状部(すなわち図17に示すターン部Cd)を積層させる際の回避策である点で異なる。この第4の回避策では、導線集積体CGに含まれる導線Cのターン部Cd同士が干渉するのを回避するため、第1経路R1と第2経路R2とに沿って移動させる。なお「移動」は、ロボットアームによる自動的な移動や、作業者による手動的な移動等を含め、任意である。以下では、取付済導線集積体を導線集積体CG7とし、取付予定導線集積体を導線集積体CG8とした例について説明する。
図25(B)に示す第1経路R1は、導線集積体CG7に対して導線集積体CG8を相対的に軸方向Z(図面下方向)に沿って移動させる。導線集積体CG7を構成する導線Cの数やクリアランスCL1の大きさ等のような組み付け条件によっては、第1経路R1よりも大きく移動させる第1経路R5や、斜め方向(軸方向Zおよび径方向Xの同時移動)に移動させる第1経路R3に沿って移動させてもよい。
また、第2経路R2は径方向X(図面左方向)に沿って移動させる。具体的には、ホルダ部材20を第1位置(図12(A)および図13(A)を参照)から第2位置(第1位置(図12(B)および図13(B)を参照)に移動させることで実現する。上記組み付け条件によっては、第2経路R2よりも小さく移動させる第2経路R4や、L字状(軸方向Zと径方向Xとの非同時移動)に移動させる第2経路R6に沿って移動させてもよい。こうして第1経路R1と第2経路R2とに沿って移動させると、導線集積体CG7と導線集積体CG8とは図25(C)に示すようにターン部Cdが積層される。
(変形解除工程)
全ての導線集積体CG(導線集積体CG1〜CG8)を組み付けた後、変形解除工程を行う。変形解除工程では、順次組付工程の前に行った変形保持工程によって変形して保持されている導線集積体CG1を解除する。すなわち図21に実線で示す導線集積体CG1を二点鎖線で示す導線集積体CG1に戻して、組み付けた全ての導線集積体CGを正規寸法にする。
(解放工程)
上述した順次組付工程(移動工程および組付工程を含む)と変形解除工程とを行って、全ての導線集積体CG(すなわち導線集積体CG1〜CG8)について組み付けを行う。組み付けを終えると、芯材17に固定されたテーブル部材14を反時計回りに回転させて導線集積体CGを巻き戻し、導線集積体CGに巻き付けさせる。さらに、全てのホルダ部材20にかかる操作子22gを回転操作し、チャック機構22のコマ部22Tから全ての導線集積体CG1〜CG8を解放する。こうして解放した直後の状態を図26に示す。図26では、どのホルダ部材20がどの導線集積体CGを保持していたかを示すために、各ホルダ部材20の括弧内に対応する符号(CG1〜CG8)を示す。符号で示す順番から明らかなように、本形態では導線集積体CGを反時計回りに順次組み付けている。
解放工程を行うと、固定子巻線Wを巻線製造装置10から取り出すことができ、取り出した状態を図27に示す。図27(A)には斜視図で示し、図27(B)には側面図で示す。これらの図から明らかなように、固定子巻線Wは導線集積体CGの組み付け体(集合体)である。各導線集積体CGを構成する導線Cの終端部Ca,Cbは直立状態であるため、後述する回転子51(図31を参照)の相数(例えばU相,V相,W相の三相)に合わせて折り曲げおよび接合を行う。こうして後述する固定子鉄心30(図29を参照)に組み付け可能な状態となった固定子巻線Wを図28に斜視図で示す。
固定子鉄心30の構成例について、図29を参照しながら説明する。図29(A)には固定子鉄心30の平面図を示し、図29(B)には分割コア32の平面図を示す。図29(A)に示す固定子鉄心30は、図29(B)に示す分割コア32を所定数連結して円環状に成形され、内周側に複数のスロット31を備える。分割コア32については後述する。複数のスロット31は、内周面から外周側に向けて(すなわち径方向X)放射状に成形した溝状部位である。スロット31の数は、後述する回転子51(図31を参照)の磁極数に対応して成形するのが望ましく、図29(A)の構成例では48個である。
図29(B)に示す分割コア32は、一のスロット31を備えるとともに、隣接する分割コア32との間に一のスロット31を構成する。別の観点から見ると、中心に向けて延びる一対のティース部33と、ティース部33の外周側で連結するバックコア部34とを有する。この分割コア32は、複数枚の電磁鋼板を積層させて成形されている。積層された電磁鋼板の間には絶縁薄膜が配置される。なお、電磁鋼板の積層体に限らず、従来公知の金属薄板および絶縁薄膜を用いて成形してもよい。
図30に示す固定子40は、固定子巻線Wと固定子鉄心30とを備える。具体的には、固定子巻線Wを構成する導線Cのスロット収容部Cc(図18(B)を参照)を、固定子鉄心30のスロット31内に収容する。導線Cには絶縁用の皮膜が施されるが、さらに固定子巻線Wと固定子鉄心30との間に絶縁部材(例えば絶縁紙等)を介在させてもよい。固定子鉄心30(具体的には連結された複数の分割コア32)の外周側には、連結状態を維持する外筒部材35を嵌合する。
固定子巻線Wを有する固定子40を備えた回転電機の構成例について、図31を参照しながら説明する。図31に示す回転電機MGは、例えば発電機能と電動機能とを兼ね備える発電電動機が該当する。この回転電機MGは上述した固定子40の他に、フレーム(筐体)50、回転子51、シャフト(主軸または回転軸)53などを有する。すなわちフレーム50内には、固定子40とともに、シャフト53を回転自在(例えば矢印D11方向への回転)に備える。シャフト53はベアリング52を介してフレーム50に固定し、回転子51を固定する。固定子40と回転子51とは対向しており、固定子40に巻装された導線C(導線集積体CG1〜CG8)への電通により回転磁界を発生させ、この回転磁界に伴って回転子51を回転させる。したがって、固定子巻線Wの特徴を備えた回転電機MGを提供することができる。
上述した実施の形態によれば、以下に示す各効果を得ることができる。
(1)巻線製造装置10は、延伸方向にずらして積層された各導線Cの一部分を保持するとともに、導線Cの間隔を伸縮自在に保持するチャック機構22を備える構成とした(図8〜図11を参照)。また、二つ以上の導線Cを延伸方向にずらして積層させる積層工程(図16および図17(B)を参照)と、導線Cの間隔を伸縮させる間隔伸縮工程(図11を参照)とを行う構成とした。この構成によれば、積層工程では二つ以上の導線Cを延伸方向にずらして積層させることで、導線C相互間のクリアランスを確保する。間隔伸縮工程では、チャック機構22を用いて導線Cを所定間隔に伸縮させる。したがって、正規寸法に成形された導線C同士の干渉を回避しながらも、組み付けを容易にして固定子巻線Wを製造することができる。
(2)積層工程によって積層された各導線Cの一部分を保持する保持工程を行う構成とした(図18(B)を参照)。この構成によれば、各導線Cの位置・姿勢を規制することができる。また、積層工程によって確保された導線C相互間のクリアランスは、保持工程によって確実に維持される。したがって、正規寸法に成形された導線C同士の干渉をより確実に回避することができる。
(3)保持工程においてチャック機構22を用いて保持する導線Cの一部分は、スロット収容部Ccである構成とした(図18(B)を参照)。この構成によれば、スロット収容部Ccは固定子鉄心30のスロット31内に収容するべく直線形状に成形されるので、スロット収容部Ccを保持するためのコマ部22T(保持具)も直線形状に構成される。したがって、簡単に保持を行え、コマ部22Tを曲線形状等の複雑な形状に構成する場合に比べてコストを低く抑えることができる。
(4)保持工程によって保持された導線Cを解放する解放工程を行う構成とした(図26を参照)。この構成によれば、間隔伸縮工程の後に解放工程を行うことによって、所定間隔に保持された状態のままで各導線Cを解放する。したがって、組み付け後の解放を容易に行える。
(5)間隔伸縮工程を行うチャック機構22は、コマ部22Tの間隔を変更することによって導線Cの間隔を伸縮させる構成とした(図11を参照)。この構成によれば、コマ部22Tの間隔を変更するだけで簡単に導線Cの間隔を伸縮させることができる。したがって、モータなどの動力源を必要とせず、簡素な仕組みで実現できるので、コストを低く抑えることができる。
(6)複数の導線Cを複数の導線集積体CG1〜CG8にグループ化するグループ化工程を行う構成とした(図17および図15(B)を参照)。グループ化された複数の導線集積体CG1〜CG8について、導線集積体CGごとに積層工程および間隔伸縮工程を行う。この構成によれば、複数の導線集積体CGについて、導線C同士の干渉を回避しながらも、組み付けを容易にして固定子巻線Wを製造することができる。
(7)チャック機構22は、導線Cの保持と解放を自在に行えるコマ部22Tを備える構成とした(図9を参照)。この構成によれば、コマ部22Tによって導線Cの保持を行えば導線C相互間のクリアランスを維持でき、組み付け後には導線Cの解放を容易に行える。したがって、導線Cの保持と解放を簡単な構成で実現できるので、コストを低く抑えることができる。
(8)コマ部22Tは、導線C表面の法線方向に作動することで、導線Cの保持と解放を自在に行う構成とした(図9を参照)。この構成によれば、導線Cの角部や凸部等との接触を回避できる。したがって、導線Cにされた絶縁用の被覆を損傷することなく、導線Cの保持と解放を自在に行うことができる。
(9)チャック機構22は複数のコマ部22Tを備え、複数のコマ部22Tのうちで一つ以上のコマ部22Tを他のコマ部22Tとの取り付け方向を異ならせる構成とした(図11を参照)。この構成によれば、曲線形状に成形されている二つ以上の導線Cをクリアランス確保のためにずらした状態のまま、コマ部22Tに当たらないように移動させることができる。したがって、導線Cの保持と解放を行う際に、導線Cにされた絶縁用の被覆が損傷するのをより確実に回避することができる。
(10)複数のコマ部22Tは左側3つのコマ部22Tと右側3つのコマ部22Tに分けられ、チャック機構22の中心線を基準として対称的に取り付ける構成とした(図11を参照)。この構成によれば、対称的に取り付けることで導線Cがコマ部22Tに当たらないように移動させることができる。したがって、導線Cの保持と解放を行う際に、導線Cに施された絶縁用の被覆が損傷するのをより確実に回避できる。
(11)コマ部22Tは不動コマ22cと可動コマ22bとを備え、可動コマ22bをチャック機構22の中心側に配置する構成とした(図11を参照)。この構成によれば、可動コマ22bをチャック機構22の中心側に配置することにより、曲線形状に成形されている導線Cの保持と解放を容易に行え、しかも導線Cにされた絶縁用の被覆が損傷するのを回避することができる。
(12)チャック機構22はコマ部22T同士の間隔および連結状態を自在に変更可能な連結部材22dを備える構成とした(図11を参照)。この構成によれば、曲線形状に成形されている導線Cの曲率に合わせて、連結部材22dによりコマ部22T間の連結状態を調整できる。また、連結部材22dはコマ部22T同士の間隔を変えられるので、導線C相互間のクリアランスを確保することができる。
(13)チャック機構22は導線Cの保持と解放を操作する操作子22gを備える構成とした(図8(C)を参照)。この構成によれば、操作子22gを操作するだけで、簡単に導線Cの保持と解放が行える。したがって、固定子巻線Wを製造する過程が簡素化され、固定子巻線Wの製造効率を高めることができる。
(14)回転電機MGは巻線製造装置10によって製造された固定子巻線Wを備える構成とした(図31を参照)。この構成によれば、導線C同士の干渉を回避して組み付けられた固定子巻線Wを備えるので、導線C相互間の絶縁抵抗が確実に確保され、回転電機MGの所要の性能を発揮することができる。
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
上述した実施の形態では、導線Cは径方向Xに曲げて成形する曲線形状として、渦巻き状を適用した(図16(B)を参照)。この形態に代えて、円弧状等の他の曲線形状を適用してもよく、一部に直線形状を含む曲線形状を適用してもよい。他の曲線形状を適用した場合でも、正規寸法に成形された導線C同士の干渉を回避しながらも、組み付けを容易にして固定子巻線Wを製造することができる。
上述した実施の形態では、固定子巻線Wを製造するのに必要な導線Cの総数が48本の場合を適用し、チャック機構22の構造に従って導線集積体CGを6本の導線Cで構成し、8群の導線集積体CGにグループ化した(特に図8,図18を参照)。この形態に代えて、導線Cの総数や、導線集積体CGを構成する導線Cの数、導線集積体CGの数について上述した実施の形態で示した数値以外の数値を適用してもよい。例えば、導線Cの総数が50本であるとき、導線集積体CGを5本の導線Cで構成し、導線集積体CGの数を10群としてもよい。各々にどのような数値を適用するかは、固定子巻線Wを用いて構成する固定子40や、回転電機MGの種類等の条件を加味する。いずれの数値を適用した場合でも、正規寸法に成形された導線C同士の干渉を回避しながらも、組み付けを容易にして固定子巻線Wを製造することができる。
上述した実施の形態では、固定子巻線Wの製造に必要な数の導線Cを導線集積体CGにグループ化し、導線集積体CGごとに組み付けを行った(図17〜図26を参照)。この形態に代えて、グループ化を行わずに、図16に示す導線Cの状態のままで組み付けを行ってもよい。例えば導線Cの総数が48本の場合は組み付けを48回行えばよく、組み付けの対象物が導線集積体CGから導線Cに変わるだけである。この場合、ホルダ部材20は1本の導線Cを保持するように構成すればよい。具体的には、チャック機構22は支軸22a,コマ部22T,連結部材22d,操作軸22fなどを一ずつ備える。導線集積体CGごとに組み付ける場合に比べると組み付け回数が増えるが、他の点については上述した実施の形態と同様である。したがって、正規寸法に成形された導線C同士の干渉を回避しながらも、組み付けを容易にして固定子巻線Wを製造することができる。
上述した実施の形態では、チャック機構22は6つのコマ部22Tを備える構成とした(図8,図11,図18(B)を参照)。この形態に代えて、他の数(すなわち6以外の数)のコマ部22Tを備える構成としてもよい。チャック機構22は導線集積体CGのグループに関連し、軸方向Zに積層させるターン部Cdの形状(図15を参照)に関連する。これらの関連から設定される数であれば任意である。他の数のコマ部22Tで構成した場合でも、導線C同士の干渉を回避しながらも、組み付けを容易にして固定子巻線Wを製造することができる。
上述した実施の形態では、複数のコマ部22Tはチャック機構22の中心線を基準として対称的に取り付ける構成とした(図11を参照)。この形態に代えて、複数のコマ部22Tのうちで一つ以上のコマ部22Tを他のコマ部22Tとの取り付け方向を異ならせて取り付ける構成としてもよい。言い換えれば、取り付け方向を異ならせる個数は、導線Cがコマ部22Tに干渉しない数であれば任意である。例えば、2つのコマ部22Tと、4つのコマ部22Tとで取り付け方向を逆向きにする。このように一つ以上のコマ部22Tを他のコマ部22Tとの取り付け方向を異ならせる場合でも、導線Cの保持と解放を行う際に、導線Cに施された絶縁用の被覆が損傷するのをより確実に回避できる。
上述した実施の形態では、コマ部22Tは導線Cの保持と解放を行う際に導線C表面の法線方向に作動する構成とした(図9を参照)。この形態に代えて、導線Cがコマ部22Tに当たらないことを条件として、法線方向以外の他方向に作動する構成としてもよい。コマ部22Tが他方向に作動する場合でも、導線Cとコマ部22Tとが干渉しないので、導線Cに施された絶縁用の被覆が損傷するのをより確実に回避できる。
上述した実施の形態では、可動コマ22bはチャック機構22の中心側に配置する構成とした(図11を参照)。この形態に代えて、導線Cの保持と解放を容易に行え、かつ、導線Cと干渉しないことを条件として、一つ以上の可動コマ22bについてチャック機構22の外側(中心から離れる側)に配置する構成としてもよい。可動コマ22bについてチャック機構22の外側に配置する場合でも、導線Cと可動コマ22bが干渉しないので、導線Cに施された絶縁用の被覆が損傷するのをより確実に回避できる。
上述した実施の形態では、チャック機構22のコマ部22Tは不動コマ22cと可動コマ22bとを備える構成とした(図9を参照)。この形態に代えて、導線Cの保持と解放を容易に行え、かつ、導線Cと干渉しないことを条件として、二の可動コマ22bを備える構成としてもよい。すなわち、洗濯鋏のように双方のコマが動く構成である。二の可動コマ22bを備える場合でも、導線Cとの干渉がないので、導線Cに施された絶縁用の被覆が損傷するのをより確実に回避できる。
上述した実施の形態では、チャック機構22はコマ部22Tごとに対応して操作子22gを備える構成とした(図8を参照)。この形態に代えて、コマ部群(二つ以上のコマ部22T)が連動して開閉動作する構成の場合には、コマ部群ごとに対応して操作子22gを備える構成としてもよい。コマ部群が連動して開閉動作するためには、一の操作子22gと複数のコマ部22Tとの間に、操作子22gの回転動力を各コマ部22Tに伝達する動力伝達機構(例えばギア機構等)を介在させる必要がある。こうすれば、操作子22gの数を減らし、回転操作を行う回数を減らすことができる。そのため、導線Cの保持と解放に要する時間を短縮することができる。
上述した実施の形態では、チャック機構22(特にコマ部22T)が保持する導線Cの一部分は、固定子鉄心30のスロット31内に収容されるスロット収容部Ccである構成とした(図18(B)を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、導線Cのターン部Cdを保持する構成としてもよい。チャック機構22が導線Cを保持するのは、導線Cの位置・姿勢を規制し、導線C相互間のクリアランスを確保することである。この条件を満たせば、ターン部Cdを保持しても同様の作用効果が得られる。
上述した実施の形態では、固定子巻線Wを備える回転電機MGとして発電電動機に適用した(図31を参照)。この形態に代えて、発電機や電動機等の他の回転電機に適用してもよい。言い換えれば、固定子巻線Wが必要な回転電機であれば任意である。他の回転電機に適用する場合でも、導線C相互間の絶縁抵抗が確実に確保され、回転電機の所要の性能を発揮することができる。