JP5471842B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼、鋳鉄等の鉄系材料の切削加工において、すぐれた靭性、耐熱衝撃性、耐摩耗性を発揮する立方晶窒化ホウ素(以下、cBNで示す)と窒化チタン(以下、TiNで示す)との複合硬質膜を被覆形成した表面被覆切削工具に関する。
従来から、硬質薄膜の成膜法としては、物理蒸着(PVD)法、化学蒸着(CVD)法等がよく知られており、工具基体の表面に、これらの成膜法で硬質膜を被覆形成することにより、耐摩耗性を向上させるとともに表面被覆切削工具の長寿命化が図られている。
近年、硬質薄膜の他の成膜法としてエアロゾルデポジション(Aerosol Deposition。以下、ADで示す)法が開発され、このAD法を利用して、工具基体表面に硬質膜を成膜する表面被覆切削工具について注目されている。
AD法については、非特許文献1に紹介されているが、図1に示されるAD装置において、サブミクロンオーダーの原料超微粒子をエアロゾル発生器に装填し、高圧ガスと混合、エアロゾル化し、中〜低真空に排気された成膜チャンバー内の基板に高速で吹き付けることで金属、セラミックス膜を成膜するコーティング手法である。
AD法の成膜の原理は、「常温衝撃固化現象」と命名されており、特にセラミックスの成膜においては、特定範囲のサイズを持つ微細な粒子がノズルからガスと共に送られた際に得る一定範囲の運動エネルギーを持って基板に衝突する際に、微細結晶に破砕し、この粒子同士が緻密に結合しながら膜を形成するというものである。
このAD法による成膜の特徴としては、
(イ)金属やセラミックス(酸化物、非酸化物)の成膜が可能である。
(ロ)高温の熱処理が不要なため、通常の焼結プロセスでは得られない原料粉組成を維持した熱非平衡なセラミックス組織が得られる。
(ハ)高速(条件によってはPVD、CVDの30倍以上)かつ大面積で緻密な微結晶組織を持つコーティングが可能である。
(ニ)基板は、硬度や弾性率などの機械特性に配慮すれば、Si,SUS304,樹脂,ガラスなど広く選択可能である。
等が挙げられる。
上記AD法の具体的な適用例として、例えば、特許文献1には、Alと他のセラミックス(例えば、SiC,Si,TiN,TiCN,TiC,AlN,C,BN)材料との複合膜をAD法によって形成することにより、ステンレス鋼、合金鋼の切削ですぐれた切削性能を示す表面被覆切削工具が得られることが述べられている。
また、特許文献2には、ダイヤモンド微粒子とセラミック(例えば、Al,TiO,SiO,AlSiNO,SiC,TaC,BC,BN,SiN,Y,ZrO,MgO)粒子との複合膜をAD法によって形成することにより、密着性にすぐれ、Al合金の切削ですぐれた耐摩耗性を示す表面被覆切削工具が得られることが述べられている。
また、特許文献3には、AD法によってダイヤモンド膜を形成したダイヤモンド被覆工具が示され、このダイヤモンド被覆工具は摩擦係数が小さく耐摩耗性に優れることが述べられている。
しかし、特許文献1に示される表面被覆切削工具は基板との密着性及び耐摩耗性が十分とはいえず、また、特許文献2、3に示されるものは、硬質膜成分がダイヤモンドであり、このダイヤモンドが鉄系材料と反応を起こすため、鋼、鋳鉄等の鉄系材料の切削工具として用いることはできない。
また、上記AD法によらない硬質複合膜の成膜法として、例えば、特許文献4、5には、ESC(Electrostatic Spray Coating)法によって、基体にcBN粒子を付着させた後、CVI(Chemical Vapor Infiltration)法により、cBN粒子間隙にTiNを充填することにより、cBNとTiNとからなる複合膜を成膜する方法が開示されているが、この成膜法では、高電圧・高温・真空装置が必要とされ、硬質膜の製造コストが嵩むという問題がある。また、cBN粒子を付着させてからTiNを成膜するため、膜の組成を傾斜構造にすることができない。このため、基板との密着性が問題である。
特開2006−131992号公報 特開2009−62607号公報 特開2008−19464号公報 米国特許第6607782号明細書 米国特許出願公開第2006/0199013号明細書
「Synthesiology」Vol.1,No.2(2008)p.130〜138
本発明は、高電圧・高温・真空装置を必要とせず、作製コストの低減を図るとともに、鋼、鋳鉄等の鉄系材料の切削加工にあたり、AD法により膜の組成を変調させて成膜することにより、靭性、耐熱衝撃性、耐摩耗性にすぐれ、かつ、長期の使用に亘りすぐれた切削性能を発揮する複合硬質膜を被覆形成した表面被覆切削工具を提供することを目的とする。
本発明者等は、cBNとTiNとからなる複合硬質膜に着目し、AD法によってこれを成膜することにより、工具基体との密着性に優れた複合硬質膜が形成されること、さらに、超硬合金焼結体、cBN焼結体、サーメットあるいは高速度鋼等を工具基体とし、その表面にAD法で複合硬質膜を成膜するにあたり、cBNとTiNとの含有比率をその膜厚方向に沿って調整し、さらに、すくい面、逃げ面の所望特性に応じた組成傾斜構造の複合硬質膜とすることによって、靭性、耐熱衝撃性および耐摩耗性にすぐれた鋼、鋳鉄等の鉄系材料の切削加工に好適な表面被覆切削工具が得られることを見出したのである。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 工具基体の表面に、立方晶窒化ホウ素と窒化チタンとの複合硬質膜が1〜15μmの膜厚で被覆形成された表面被覆切削工具において、上記複合硬質膜の構成成分である立方晶窒化ホウ素と窒化チタンは、工具基体側では窒化チタン含有比率が高く、また、表層側では立方晶窒化ホウ素の含有比率が高くなる組成傾斜構造を備えていることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) すくい面の複合硬質膜の窒化チタンに対する立方晶窒化ホウ素の含有比率は、切れ刃稜線を境界として、逃げ面の複合硬質膜の窒化チタンに対する立方晶窒化ホウ素の含有比率より高いことを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3) 少なくともすくい面の複合硬質膜における上記組成傾斜構造は、すくい面の複合硬質膜の表層の窒化チタンに対する立方晶窒化ホウ素の含有比率が1.5〜4.0であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4) 少なくとも逃げ面の複合硬質膜における上記組成傾斜構造は、逃げ面の複合硬質膜の表層の窒化チタンに対する立方晶窒化ホウ素の含有比率が0.67〜1.5であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。」
を特徴とするものである。
本発明について、以下に説明する。
本発明では、複合硬質膜を形成する工具基体としては、炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結材料、高速度工具鋼等の、既によく知られている各種切削工具基体材料を用いることができる。
本発明では、上記工具基体表面に、前記AD(Aerosol Deposition)法により複合硬質膜を成膜する。
まず、本発明の複合硬質膜のAD法による成膜の概要を図1により説明する。
図1において、例えば、粒径が0.1〜1.0μmのcBN粉末、粒径が0.1〜1.0μmのTiN粉末を、それぞれエアロゾル発生器内に充填し、これを高圧ガス(He,Ar,Nあるいは空気)と混合し、エアロゾル化し、中、低真空圧の成膜チャンバー内の基板に高速で吹き付けることで、基板上にcBNとTiNとの所望の含有比率からなる複合膜を成膜することができる。
なお、本発明でいう含有比率とは、立方晶窒化ホウ素と窒化チタンの合量に占める体積比率を示し、膜厚方向に0.2μm、基板と平行方向に3オmの領域について断面方向からオージェ電子分光法による面分析を行い、その測定結果より、複合硬質層に占める各成分の体積割合を算出することによって求めた値をいう。
本発明においては、上記AD法を利用して成膜するにあたり、複合硬質膜の下部層を形成する成膜初期段階では、原料微粒子粉末中のTiN含有比率が高くなるように、また、複合硬質膜の上部層を形成する成膜後期段階では、原料微粒子粉末中のcBN含有比率が高くなるように、それぞれのエアロゾル発生器内のガス圧を調節することにより、工具基体側ではTiN含有比率が高く、また、表層側ではcBNの含有比率が高くなる組成傾斜構造を備える複合硬質膜を成膜する。
なお、本発明の複合硬質膜は、その焼結性を高めるために、成膜後、アニーリング、レーザーアニーリングを行ってもよい。
本発明の複合硬質膜は、工具基体側ではTiN含有比率が高く、cBN含有比率が低くなっているため、工具基体との密着性に優れる。
一方、複合硬質膜の表層側では、cBN含有比率が高く、TiN含有比率が低くなっているため、硬質であって耐摩耗性に優れ、しかも、鉄系材料との反応性が小さいため溶着等を発生する恐れが少ない。
本発明の複合硬質膜は、その膜厚が1μm未満であると、すぐれた耐摩耗性を長期の使用に亘って発揮することはできず、一方、その膜厚が15μmを超えると、膜内に発生した残留応力により、剥離やチッピングが生じやすくなるため、複合硬質膜の膜厚は、1〜15μmと定めた。
上記の組成傾斜構造を有する本発明の複合硬質膜は、工具基体側の下部層では、cBNとTiNの含有比率は相対的にTiN含有割合が高いため、工具基体との密着性に優れ、工具基体と硬質膜間での付着強度が向上したものとなる。
また、複合硬質膜の表層側の上部層において、cBNとTiNの含有比率に関し、相対的にcBN含有割合が高いため、硬質であって耐摩耗性および耐酸化性に優れ、しかも、鋼や鋳鉄等の切削加工においてすぐれた耐溶着性を示す。
さらに、複合硬質膜の中間層は、cBN含有比率とTiN含有比率がほぼ同量のものとして形成されていることから、すぐれた靭性を備えたものとなるばかりか、下部層あるいは上部層との密着強度を高めることとなる。
また、本発明の表面被覆切削工具は、複合硬質膜の組成傾斜構造を、切れ刃稜線を境界として、すくい面あるいは逃げ面のそれぞれに対して、調整することが望ましい。
つまり、一般的に表面被覆切削工具では、そのすくい面には、被削材に対する非反応性と膜の硬さが求められ、一方、逃げ面には界面強度と耐摩耗性が求められているところ、cBNは鉄系被削材との反応性が低いとともに硬質であるが、cBNの含有比率が高くなると、cBN粒子の界面強度が低下し、切削時に脱落したcBN粒子によってすきとり摩耗が発生しやすくなる。
そこで、本発明の表面被覆切削工具では、すくい面については、すくい面の複合硬質膜の表層のTiNに対するcBNの含有比率が1.5〜4.0となる組成傾斜構造をとることが望ましい。
ここで、すくい面では、TiNに対してcBN含有比率が高いことが望ましいが、TiNに対するcBNの含有比率が4.0(80vol%)を越えると、付着強度および界面強度の著しい低下が避けられず、一方、TiNに対するcBNの含有比率が1.5(60vol%)未満では、耐クレータ摩耗性の向上効果が少ないことから、すくい面の表層のTiNに対するcBNの含有比率は1.5〜4.0であることが望ましい。
また、本発明の表面被覆切削工具では、逃げ面の複合硬質膜の表層のTiNに対するcBNの含有比率は0.67〜1.5となる組成傾斜構造をとることが望ましい。
つまり、脱落したcBN粒子によって生じるすきとり摩耗を抑制するために、cBN粒子が脱落しないように界面強度を保つ必要があることから、逃げ面の複合硬質膜の表層のTiNに対するcBNの含有比率は1.5(60vol%)以下にすることが望ましいが、逃げ面の複合硬質膜の表層のTiNに対するcBNの含有比率が0.67(40vol%)未満になると、cBNの含有率の低下により耐摩耗性が確保できなくなることから、逃げ面の複合硬質膜の表層のTiNに対するcBNの含有比率は0.67〜1.5であることが望ましい。
なお、AD法によれば、すくい面の表層あるいは逃げ面の複合硬質膜の表層のcBN含有比率は、成膜終期の基板各面へのTiNとcBNの吹き付けを調整(例えば、エアロゾル容器内のガス圧を調整)することによって、所望の含有比率を容易に得ることができる。
上記のとおり、本発明の表面被覆切削工具は、工具基体の表面に、cBNとTiNとの複合硬質膜が形成され、かつ、複合硬質膜中のcBNとTiNは、工具基体側ではTiN含有比率が高く、一方、表層側ではcBN含有比率が高くなる組成傾斜構造を備えているので、複合硬質膜全体として、硬さ、靭性、付着強度に優れる。また、好ましくは、切れ刃稜線を境界として、すくい面の複合硬質膜における窒化チタンに対する立方晶窒化ホウ素の含有比率を、逃げ面の複合硬質膜のそれより高くすること、すくい面の複合硬質膜の表層の窒化チタンに対する立方晶窒化ホウ素の含有比率を1.5〜4.0とすること、逃げ面の複合硬質膜の表層の窒化チタンに対する立方晶窒化ホウ素の含有比率を0.67〜1.5とすることで、すくい面、逃げ面のそれぞれに求められる特性を備えることができるので、特に、鋼や鋳鉄等の鉄系材料の切削加工において、すぐれた耐溶着性、耐摩耗性を発揮し、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するとともに、工具寿命の延命化が図られるのである。
本発明の表面被覆切削工具の複合硬質膜を成膜するためのAD(エアロゾルデポジッション)装置を示し、(a)は概略正面図、(b)は成膜チャンバー内上部の概略平面図である。 本発明1−10の表面被覆切削工具の複合硬質膜の層構造の一例を示す。 本発明11−20の表面被覆切削工具の複合硬質膜のすくい面の層構造の一例を示す。 本発明11−20の表面被覆切削工具の複合硬質膜の逃げ面の層構造の一例を示す。 本発明21−30の表面被覆切削工具の複合硬質膜のすくい面の層構造の一例を示す。 本発明21−30の表面被覆切削工具の複合硬質膜の逃げ面の層構造の一例を示す。
以下に、本発明の表面被覆切削工具を実施例に基づいて説明する。
なお、ここでは工具基体材料として超硬合金基体を使用したが、工具基体としては、cBN焼結体、サーメットあるいは高速度鋼等の通常用いられる工具基体を使用することがもちろん可能である。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで96時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、所定寸法に外周加工した後、切刃部に幅:0.13mm、角度25°のホーニング加工を施し、仕上げ研磨を施すことにより、いずれもWC基超硬合金からなり、かつISO規格SNGA120412のインサート形状をもった超硬合金基体1〜10を製造した。
Figure 0005471842
ついで、上記の超硬合金基体を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるAD装置の成膜チャンバー内の公転軸に装着し、
まず、粒径が0.1〜1.0μmのcBN粉末と、粒径が0.1〜1.0μmのTiN粉末の原料微粒子を、それぞれ、エアロゾル発生器に装入し、粉末の凝集を防ぐため、エアロゾル発生器の下の振動機を振動させながらエアロゾル発生器にガスを流し、Arガスを用いて、ガス圧力300Pa、ガス搬入速度5L/minで原料微粒子をエアロゾル化し、同様の方法でエアロゾル化したTiN粉末と混合し、成膜チャンバー内の超硬合金基体に所定時間ノズルから吹きつけ、かつ、ノズルを1〜5mm/secで移動させることにより、工具基体表面に、図2に示される所定膜厚、所定のcBN/TiN比率の複合膜(図2では、第1下部層,第2下部層,中間層,上部層として示す)を、cBNおよびTiN粉末が入ったエアロゾル容器内のガス圧を調整することで形成し、
ISO規格SNGA120412に規定するスローアウエイチップ形状の本発明複合硬質膜被覆工具1〜10(以下、本発明工具1〜10という)を作製した。
また、上記超硬合金基体1〜10について、上記本発明工具1〜10と同様な方法により、第1下部層,第2下部層,中間層を成膜した後、上部層の成膜時に、cBNおよびTiN粉末が入ったエアロゾル容器内のガス圧を、すくい面および逃げ面のそれぞれに対して調整することにより、すくい面の表層および逃げ面の表層に、それぞれ、表4に示すcBN含有比率を有するISO規格SNGA120412に規定するスローアウエイチップ形状の本発明複合硬質膜被覆工具11〜20(以下、本発明工具11〜20という)を作製した。
さらに、上記超硬合金基体1〜10について、成膜初期よりcBNおよびTiN粉末が入ったエアロゾル容器内のガス圧を、すくい面および逃げ面のそれぞれに対して調整することにより、すくい面の表層および逃げ面の表層に、それぞれ、表5に示すcBN含有比率を有するISO規格SNGA120412に規定するスローアウエイチップ形状の本発明複合硬質膜被覆工具21〜30(以下、本発明工具21〜30という)を作製した。
比較のため、原料粉末として、いずれも0.5〜4μmの範囲内の平均粒径を有するcBN粉末、TiN粉末、AlN粉末、TiC粉末、TiCN粉末、TiAl粉末、TiAl粉末、TiAl粉末、Al粉末、Al粉末、WC粉末を用意し、これら原料粉末を表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで80時間湿式混合し、乾燥した後、120MPaの圧力で直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法をもった圧粉体にプレス成形し、ついでこの圧粉体を、圧力:1Paの真空雰囲気中、900〜1300℃の範囲内の所定温度に60分間保持の条件で焼結して切刃片用予備焼結体とし、この予備焼結体を、別途用意した、Co:16質量%、WC:残りの組成、並びに直径:50mm×厚さ:2mmの寸法をもったWC基超硬合金製支持片と重ね合わせた状態で、通常の超高圧焼結装置に装入し、通常の条件である圧力:4GPa、温度:1200〜1400℃の範囲内の所定温度に保持時間:0.8時間の条件で超高圧焼結し、焼結後上下面をダイヤモンド砥石を用いて研磨し、ワイヤー放電加工装置またはダイヤモンド切断機にて一辺3mmの正三角形状に分割し、さらにCo:6質量%、TaC:5質量%、WC:残りの組成およびISO規格SNGA120412の形状(厚さ:4.76mm×一辺長さ:12.7mmの正方形)をもったWC基超硬合金製インサート本体のろう付け部(コーナー部)に、質量%で、Cu:26%、Ti:5%、Ni:2.5%、Ag:残りからなる組成を有するAg合金のろう材を用いてろう付けし、所定寸法に外周加工した後、切刃部に幅:0.13mm、角度:25°のホーニング加工を施し、さらに仕上げ研摩を施すことによりISO規格SNGA120412のインサート形状をもち、表2に示されるcBN焼結体からなるcBN工具1〜10(以下、比較例工具1〜10という)を作製した。
参考のため、実施例で使用した超硬合金基体1〜10の上に、粒径が0.1〜1.0μmのcBN粉末をAD法による成膜を試みたが、成膜することができなかった。
上記本発明工具1〜30の各層の膜組成を、第1下部層、第2下部層、中間層および上部層について、その厚さ方向に0.2μm、基板と平行方向に3μmの領域の領域について、断面加工した試料の断面方向からオージェ電子分光法により測定したところ、それぞれ図2〜図6に示される目標とするcBN/TiN比率と実質的に同じcBN/TiN比率を示した。なおAD法では成膜時にセラミックス粒子が基板に衝突する際に、数GPa程度の圧縮応力が発生し、セラミックス粒子が、衝突時に脆性破壊あるいは塑性変形するため、原料粒子が細かく破砕され、前記膜厚方向に0.2μmの領域内でも含有比率を調整することが可能である。
表3、表4、表5にcBN/TiN比率を示す。
また、本発明工具1〜30の膜厚を走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。
これらの測定値を、表3、表4、表5に示す。
Figure 0005471842
Figure 0005471842
Figure 0005471842
Figure 0005471842
上記の本発明工具1〜30および比較例工具1〜10を用い、以下の切削条件で切削加工試験を実施した。
《切削条件1》
被削材: JIS・SCr420(硬さHRA:62)の丸棒、
切削速度: 230 m/min、
送り: 0.20 mm/rev、
切込み:0.20 mm、
切削時間: 5 分
の条件での、高硬度クロム鋼の乾式連続切削加工試験、
《切削条件2》
被削材: JIS・SUJ2(硬さHRA:60)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 180 m/min、
送り: 0.15 mm/rev、
切込み: 0.20 mm、
切削時間: 5 分
の条件での、焼入れ軸受鋼の乾式断続切削加工試験、
を行い、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
上記切削条件1,2による切削加工試験の測定結果を表6に示した。
Figure 0005471842
表6に示される結果から、本発明工具1〜10は、複合硬質膜がcBNとTiNの複合膜として構成され、かつ、工具基体側ではTiN含有比率が高く、また、表層側ではcBN含有比率が高くなる組成傾斜構造を備えていることから、鉄系材料の切削加工では、硬質被覆層がすぐれた密着強度、高温硬さ、靭性を備え、溶着、欠損等の発生の恐れはなく、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する。
また、本発明工具11〜30は、すくい面表層あるいは逃げ面表層で所定のcBN含有比率をさらに備えていることから、クレータ摩耗、すきとり摩耗の発生も全く見られず、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものであった。
これに対して、比較例工具1〜10においては、欠損発生、耐摩耗性不足等により、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の複合硬質膜を被覆形成した表面被覆切削工具は、鋼、鋳鉄等の切削加工に用いた場合に好適であるが、他の被削材の切削加工に用いることも勿論可能であり、さらに、切削加工装置の高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (4)

  1. 工具基体の表面に、立方晶窒化ホウ素と窒化チタンとの複合硬質膜が1〜15μmの膜厚で被覆形成された表面被覆切削工具において、上記複合硬質膜の構成成分である立方晶窒化ホウ素と窒化チタンは、工具基体側では窒化チタン含有比率が高く、また、表層側では立方晶窒化ホウ素の含有比率が高くなる組成傾斜構造を備えていることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. すくい面の複合硬質膜の窒化チタンに対する立方晶窒化ホウ素の含有比率は、切れ刃稜線を境界として、逃げ面の複合硬質膜の窒化チタンに対する立方晶窒化ホウ素の含有比率より高いことを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 少なくともすくい面の複合硬質膜における上記組成傾斜構造は、すくい面の複合硬質膜の表層の窒化チタンに対する立方晶窒化ホウ素の含有比率が1.5〜4.0であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 少なくとも逃げ面の複合硬質膜における上記組成傾斜構造は、逃げ面の複合硬質膜の表層の窒化チタンに対する立方晶窒化ホウ素の含有比率が0.67〜1.5であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
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