JP5471173B2 - 樹脂フックの縫着構造 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用シートの表皮に、当該表皮をシートに固定するための樹脂フックを縫着する構造に関する。
図6に示すように、車両用シート100には表皮101が被せられるが、当該表皮101は、その端縁部に縫着された樹脂フック102を所定箇所に掛け止めることによって固定される。樹脂フックによる表皮の固定構造に着目した技術は、例えば下記特許文献1や特許文献2のようなものがあるが、樹脂フックを表皮へ縫着する構造に着目した技術はない。
樹脂フックを表皮へ縫着する場合、縫製ラインの両端は同じ縫製ライン上で返し縫い処理をしている。これにより、縫製端末を結ぶ等の処理をせずに有効に縫製端末の解れを防止できる。このとき、一般的には図7に示すように、返し縫い103は樹脂フック102上で行われている。詳しくは、図7の要部拡大図に示すように、樹脂フック102の一側縁(図7では右端)から所定量他側縁(図7では左端)に向けて縫ったところで(縫製I)一側縁へ返し縫いし(縫製II)、再度他側縁に向けて縫製していく(縫製III)。樹脂フック102の他側縁まで縫製したら、一側縁へ向けて所定量返し縫いし(縫製IV)、再度他側縁まで縫製する(縫製V)。すなわち、少なくとも一往復半縫われている。なお、図7の要部拡大図では、縫い方が分かり易いように返し縫い部103を縫製ライン104から若干ずらして図示しているが、実際には縫製ライン104と同じライン上で返し縫いが行われる。従来から周知の常套手段なので明記はされていないが、特許文献1や特許文献2でもこのような縫着構造であると解される。
特開2000−139626号公報 特開2001−25427号公報
しかしながら、従来技術では樹脂フック上で縫製端末の返し縫いを行っているため、樹脂フックに多数の針孔があくことになる。これでは、返し縫い部分において樹脂フックの強度が低下してしまう。したがって、表皮に大きな引張荷重が作用すると、縫製部分を起点として樹脂フックが破損してしまうおそれがある。特に、内部にエアバックを内蔵する車両用シートにおいては、車両衝突によってエアバックが膨らむと、その周囲の表皮には大きな引張荷重が作用する。
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、樹脂フックを表皮へ縫着する際に樹脂フックの強度低下を抑制できる樹脂フックの縫着構造を提供することを目的とする。
本発明は、車両用シートの表皮に、該表皮をシートに固定するための樹脂フックを縫着する樹脂フックの縫着構造であって、縫製ラインの両端(始端及び終端)は返し縫い処理が行われ、該返し縫いは前記樹脂フック外の表皮上で行われることを特徴とする。
前記返し縫いは、縫製ラインと異なる角度で縫っても良いが、前記表皮と樹脂フックとを縫着する縫製ラインの延長上に平行に縫うことが好ましい。
なお、前記樹脂フックが前記表皮の領域外に位置している状態で両者を縫着する場合は、前記表皮に返し縫い代を設けておく。

本発明によれば、樹脂フック外の表皮上で返し縫い処理が行われるので、樹脂フックに必要以上の針孔があくことがない。したがって、樹脂フック上で返し縫い処理していた従来技術よりも樹脂フックの強度低下を抑制することができる。これにより、表皮に大きな引張荷重が作用したとしても、樹脂フックの破損を有効に回避できる。特に、車両用シートに内蔵されたエアバック作動した場合でも、樹脂フックの破損を防止できる。
返し縫いを縫製ラインの延長上に平行に縫っておけば、返し縫いの際に縫製機に対して表皮や樹脂フックの角度を変更する必要が無いので、生産効率が良い。
樹脂フックを表皮の領域内に位置させた状態で両者を縫着する場合に、表皮に返し縫い代を設けておけば、確実に樹脂フック外の表皮上において返し縫い処理を行うことができる。
実施例1の斜視図である。 実施例2の斜視図である。 実施例3の斜視図である。 実施例4の斜視図である。 実施例5の斜視図である。 車両用シートの背面斜視図である。 従来技術の斜視図である。
以下に、図面を参照しながら本発明に係る樹脂フックの縫着構造について説明するが、これに限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。樹脂フックの縫着対象である表皮は、車両用シートのシートクッションやシートバックなどの各構成部材を覆うものである。当該表皮は、これに縫着された樹脂フックをシートの所定箇所に掛け留めることで、固定される。
(実施例1)
樹脂フック20は合成樹脂製であって、図1に示すように、扁平な板状の縫着部21と、縫着部21の下方に連続するフック部22とを一体的に有して成る。なお、以下に説明する各実施例を示す図1〜図5には、J字状のフック部22を図示しているが、フック部22の形状は掛け留め可能な形状であれば特に限定されない。例えば、係合孔を有する樹脂フックでも構わない。樹脂フック20は、表皮10の端縁部に縫着される。表皮10は樹脂フック20よりも充分に大きい。本実施例1では、樹脂フック20全体が表皮10の領域内に位置している状態、すなわち樹脂フック20及び表皮10の方向を揃えて樹脂フック20全体を表皮10と重ねたうえで、両者10・20を縫着している。この場合、樹脂フック20は表皮10の表側に重ね、表皮10の端縁と樹脂フック20の上端縁は揃えている。表皮10をシートへ固定する際は、樹脂フック20を裏側へ折り返した状態で掛け留めることになる。
樹脂フック20は、縫着部21の端縁部において、樹脂フック20及び表皮10の端縁に沿って縫製されることで、表皮10の端縁部に縫着される。このとき、樹脂フック20と表皮10とを縫着する縫製ライン30のみが樹脂フック20上にあり、縫製ライン30の両端(始端及び終端)に施される返し縫い部31は、樹脂フック20の左右両外側の表皮10上にある。また、返し縫い部31・31は、縫製ライン30の延長上において平行になっている。
具体的には、樹脂フック20の一側縁外へ所定量離れた表皮10上の位置から樹脂フック20へ向けて縫っていき、樹脂フック20へ至る前に反対方向へ返し縫い(返し縫い部31)する。そして、スタート地点へ戻ったところで、再度樹脂フック20へ向けて縫製していく。樹脂フック20の他側縁を超えた表皮10の位置まで縫製30したら、再度樹脂フック20へ向けて返し縫いし、樹脂フック20へ至る前に反対方向へ向けて返し縫いする(返し縫い部31)。これにより、樹脂フック20に必要以上に針孔があくことがなく、樹脂フック20の強度低下を抑制することができる。また、返し縫いの際に表皮10や樹脂フック20を縫製機に対して角度を変える必要が無く、縫製が容易である。
(実施例2)
図2に本発明の実施例2を示す。実施例2は実施例1の変形例であって、返し縫い部31・31の方向が実施例1と異なる。実施例1では返し縫い部31・31を縫製ライン30と平行に施したが、返し縫い部31・31と縫製ライン30との角度を異ならせることもできる。例えば本実施例2のように、縫製ライン30と返し縫い部31・31とを直交させてもよい。このとき、縫製ライン30は樹脂フック20及び表皮10の端縁部にあるので、返し縫い部31・31は、表皮10の内部側へ向けて縫うことになる。また、実施例2のように、縫製ライン30と返し縫い部31・31とを直交させるほか、返し縫い部31・31を縫製ライン30に対して斜め方向へ縫うこともできる。その他は実施例1と同様なので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
(実施例3)
図3に本発明の実施例3を示す。実施例3は実施例1の別の変形例であって、返し縫い部31・31の方向は実施例2と同じである。実施例3では、表皮10の端縁の一部に樹脂フック縫着用の突片部11を有し、当該突片部11に樹脂フック20が縫着される。このとき、従来は突片部11と樹脂フック20とは略同じ寸法であったが、本実施例3では、突片部11の左右幅寸法を樹脂フック20より一回り大きくし、樹脂フック20の左右外方に返し縫い代を設けている。その上で、返し縫い部31・31を縫製ライン30と直交させるように施している。その他は実施例1や実施例2と同様なので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
(実施例4)
図4に本発明の実施例4を示す。実施例4は実施例3の変形例であって、返し縫い代の設ける位置及び返し縫い部31・31の方向が実施例3と異なる。具体的には、実施例3では、返し縫い代を樹脂フック20の左右外方のみに設けたが、樹脂フック20の端縁と表皮10の突片部11の端縁とをずらして、樹脂フック20の上方(突片部11の先端側)にも返し縫い代を設けている。その上で、樹脂フック20の上方において返し縫い部31・31を縫うこともできる。すなわち、樹脂フック20の左右外方から上方へ向けて縫い、さらに樹脂フック20の上方において左右内側へ向けて返し縫いすることになる。その他は実施例3と同様なので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
(実施例5)
図5に本発明の実施例5を示す。実施例5は実施例1のさらに別の変形例である。本実施例5では、樹脂フック20を表皮10に対して反対向きにして重ね、樹脂フック20を表皮10の裏側に縫着している。詳しくは、樹脂フック20の縫着部21のみを表皮10の端縁部に重ね、樹脂フック20のフック部22は表皮10の外方に位置している。この場合は、樹脂フック20の縫着部21の外方全ての表皮10領域を返し縫い代として使用できる。本実施例5では、実施例1と同様に返し縫い部31・31を縫製ライン30と平行に縫ったが、実施例2などと同様に返し縫い部31・31を縫製ライン30と異なる方向へ縫うこともできる。
10 表皮
11 突片部
20 樹脂フック
21 縫着部
22 フック部
30 縫製ライン
31 返し縫い部
100 車両用シート
101 表皮
102 樹脂フック
103 返し縫い部
104 縫製ライン

Claims (3)

  1. 車両用シートの表皮に、該表皮をシートに固定するための樹脂フックを縫着する、樹脂フックの縫着構造であって、
    縫製ラインの両端は返し縫い処理が行われ、該返し縫いは前記樹脂フック外の表皮上で行われることを特徴とする、樹脂フックの縫着構造。
  2. 請求項1に記載の樹脂フックの縫着構造であって、
    前記返し縫いが、前記表皮と樹脂フックとを縫着する縫製ラインの延長上に平行に縫われている、樹脂フックの縫着構造。
  3. 請求項1または請求項2に記載の樹脂フックの縫着構造であって、
    前記樹脂フックが前記表皮の領域外に位置している状態で両者を縫着する場合、前記表皮に返し縫い代を設けておく、樹脂フックの縫着構造。
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