本発明のフルオレン骨格を有するケイ素化合物は、下記式(1)で表される。
[式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、Xは連結基を示し、R1は置換基を示し、R2は置換基を示し、R3はアルキレン基を示し、R4、R5およびR6は、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、基−OR7(式中、R7は、炭化水素基を示す)、又は炭化水素基を示し、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは0以上の整数、p1は1以上の整数、p2は0以上の整数である。ただし、R4、R5およびR6のうち少なくとも1つは、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、又は基−OR7である。]
式(1)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環(詳細には、少なくともベンゼン環を含む縮合多環式炭化水素環)などが挙げられる。縮合多環式芳香族炭化水素環に対応する縮合多環式芳香族炭化水素としては、縮合二環式炭化水素(例えば、インデン、ナフタレンなどのC8−20縮合二環式炭化水素、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素)、縮合三環式炭化水素(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)などの縮合二乃至四環式炭化水素などが挙げられる。好ましい縮合多環式芳香族炭化水素としては、ナフタレン、アントラセンなどが挙げられ、特にナフタレンが好ましい。なお、2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
好ましい環Zには、ベンゼン環およびナフタレン環(特にベンゼン環)が含まれる。
前記式(1)において、基R1としては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などの非反応性置換基が挙げられ、特に、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基(特にアルキル基)である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)などが例示できる。なお、kが複数(2以上)である場合、基R1は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン(又はフルオレン骨格)を構成する2つのベンゼン環に置換する基R1は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基R1の結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
環Zに置換する置換基R2としては、通常、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−20アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル基(又はトリル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基など)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ナフチル基などのC6−10アリール基、好ましくはC6−8アリール基、特にフェニル基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などのC1−20アルコキシ基、好ましくはC1−8アルコキシ基、さらに好ましくはC1−6アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)などのエーテル基(置換ヒドロキシル基);アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1−20アルキルチオ基、好ましくはC1−8アルキルチオ基、さらに好ましくはC1−6アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基)などのチオエーテル基(置換メルカプト基);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など);ヒドロキシル基;アミノ基;メルカプト基; カルボキシル基;ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ基[例えば、ヒドロキシアルコキシ基(例えば、2−ヒドロキシエトキシ基などのヒドロキシC2−10アルコキシ基、好ましくはヒドロキシC2−6アルコキシ基、さらに好ましくはヒドロキシC2−4アルコキシ基)、ヒドロキシポリアルコキシ基(例えば、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ基などのヒドロキシジ乃至テトラC2−10アルコキシ基、好ましくはヒドロキシジ乃至テトラC2−4アルコキシ基など)など];メチロール基;ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
これらのうち、代表的には、基R2は、例えば、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ基、メチロール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、又は置換アミノ基などであってもよい。
好ましいR2としては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)など]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)などの非反応性置換基が挙げられる。特に、R2は、アルキル基[C1−4アルキル基(特にメチル基)など]、アリール基[例えば、C6−10アリール基(特にフェニル基)など]などの炭化水素基であってもよい。
なお、同一の環Zにおいて、mが複数(2以上)である場合、基R2は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Zにおいて、基R2は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、好ましい置換数mは、0〜8、好ましくは0〜4(例えば、1〜3)、さらに好ましくは0〜2、特に0〜1(例えば、0)であってもよい。なお、複数の環Zにおいて、置換数mは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
基−[(OR3)n−X−SiR4R5R6](ケイ素含有基などということがある)において基R3で表されるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基(1,2−プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC1−10アルキレン基、好ましくはC2−6アルキレン基、さらに好ましくはC2−4アルキレン基、特にC2−3アルキレン基が挙げられる。なお、mが2以上であるとき、アルキレン基は異なるアルキレン基で構成されていてもよく、通常、同一のアルキレン基で構成されていてもよい。また、2つ芳香族炭化水素環において、基R3は同一であっても、異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
オキシアルキレン基(OR3)の数(付加モル数)nは、0〜12(例えば、1〜12)程度の範囲から選択でき、例えば、0〜8、好ましくは0〜4、さらに好ましくは0〜2(例えば、0〜1)、特に0であってもよい。なお、置換数nは、異なる環Zに対して、同一であっても、異なっていてもよい。
また、前記ケイ素含有基において、R4、R5およびR6は、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、基−OR7(式中、R7は、炭化水素基を示す)、又は炭化水素基である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子などが挙げられる。これらのハロゲン原子のうち、塩素原子又は臭素原子が好ましく、特に塩素原子が好ましい。
また、基−OR7において、炭化水素基R7としては、例えば、飽和脂肪族炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC1−10アルキル基、好ましくはC1−6アルキル基、さらに好ましくはC1−4アルキル基、特にC1−2アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基など)など]、不飽和脂肪族炭化水素基[例えば、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基などのC2−6アルケニル基、好ましくはC2−4アルケニル基など)など]、芳香族炭化水素基[例えば、アリール基(例えば、フェニル基などのC6−10アリール基、好ましくはフェニル基など)、アラルキル基(ベンジル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)など]などが挙げられる。これらの炭化水素基R7のうち、アルキル基などが好ましく、特に低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのC1−4アルキル基、特にC1−2アルキル基)が好ましい。
また、R4、R5およびR6において、炭化水素基としては、上記と同様の炭化水素基などが挙げられる。これらの炭化水素基のうち、アルキル基、アリール基などが好ましく、特に、アルキル基(例えば、メチル基などのC1−4アルキル基など)などが好ましくい。
なお、前記のように、R4、R5およびR6のうち、少なくとも1つは、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、又は基−OR7である。このような基は、ケイ素原子に直接結合し、前記式(1)で表される化合物に重合性(加水分解縮合性)又は反応性を付与する点で重要である。これらのうち、R4、R5およびR6の少なくとも1つは、塩素原子、アルコキシ基(すなわち、R7がアルキル基である基、例えば、メトキシ基、エトキシ基などのC1−4アルコキシ基など)、又はアリールオキシ基(すなわち、R7がアリール基である基、例えば、フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基など)であるのが好ましく、特にアルコキシ基(例えば、C1−4アルコキシ基、好ましくはC1−2アルコキシ基)であるのが好ましい。
前記式(1)(さらには後述の式(1A)および式(1B))において、代表的な基−SiR4R5R6としては、例えば、ジアルキルアルコキシシリル基(例えば、ジメチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基などのジC1−4アルキル−C1−4アルコキシシリル基)、ジアリールアルコキシシリル基(例えば、ジフェニルメトキシシリル基、ジフェニルエトキシシリル基などのジC6−10アリール−C1−4アルコキシシリル基)、アルキルアリールアルコキシシリル基(例えば、メチルフェニルメトキシシリル基などのC1−4アルキル−C6−10アリール−C1−4アルコキシシリル基)などのR4、R5およびR6のうち1つが、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、又は基−OR7であるシリル基;アルキルジアルコキシシリル基(例えば、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基などのC1−4アルキル−ジC1−4アルコキシシリル基)、アリールジアルコキシシリル基(例えば、フェニルジメトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基などのC6−10アリール−ジC1−4アルコキシシリル基)などのR4、R5およびR6のうち2つが、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、又は基−OR7であるシリル基;トリアルコキシシリル基(例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリメシリル基、エチルジエトキシシリル基などのトリC1−4アルコキシシリル基)、ジアルコキシアリールオキシシリル基(例えば、ジメトキシフェノキシシリル基などのジC1−4アルコキシ−C6−10アリールオキシシリル基)、トリアリールオキシシリル基(例えば、トリフェノキシシリル基などのトリC6−10アリールオキシシリル基)、トリハロシリル基(例えば、トリクロロシリル基など)などのR4、R5およびR6の全てが、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、又は基−OR7であるシリル基などが含まれる。
これらのなかでも、R4、R5およびR6のうち1つがアルコキシ基であるシリル基、例えば、ジアルキルアルコキシシリル基(例えば、ジC1−4アルキル−C1−4アルコキシシリル基、特にジC1−4アルキル−C1−2アルコキシシリル基)、アルキルジアルコキシシリル基(例えば、C1−4アルキル−ジC1−4アルコキシシリル基、特にC1−4アルキル−ジC1−2アルコキシシリル基)、トリアルコキシシリル基(例えば、トリC1−4アルコキシシリル基、特にトリC1−2アルコキシシリル基)が好ましい。
さらに、前記ケイ素含有基において、連結基Xは、直接結合であってもよいが、通常、ヘテロ原子(窒素原子、酸素原子、硫黄原子など)を含む基であってもよい。代表的には、連結基Xは、例えば、エーテル基(−O−)(又は酸素原子)、エーテル基(−S−)(又は硫黄原子)、およびイミノ基(−NH−)から選択された少なくとも1種の基を含むであってもよい。
代表的には、前記式(1)で表される化合物は、下記式(1A)で表される化合物[すなわち、前記式(1)において、連結基Xが、基−[X1−X2−X3−X4]−で表される基である化合物]であってもよい。
(式中、X1は、エーテル結合含有基、チオエーテル結合含有基、又はイミノ結合含有基を示し、X2は直接結合、又はヒドロキシル基を有していてもよいアルキレン基を示し、X3は直接結合、酸素原子又はイミノ基を示し、X4は直接結合又はアルキレン基を示す。Z、R1、R2、R3、R4、R5、R6、k、m、n、p1、p2は前記と同じ。)
上記式(1A)において、X1で表されるエーテル結合含有基としては、例えば、酸素原子(又はエーテル基、−O−)、エステル基(−OCO−又は−COO−)などが挙げられる。また、X1で表されるチオエーテル結合含有基としては、硫黄原子(又はチオエーテル基、−S−)、チオエステル基(−SCO−又は−COS−)などが挙げられる。また、X1で表されるイミノ結合含有基としては、イミノ基(−NH−)、アミド基(−CONH−又は−NHCO−)、ウレタン基(−OCONH−又は−NHCOO−)、チオウレタン基(−SCONH−又は−NHCOS−)、尿素基(−NHCONH−)などが挙げられる。
また、前記式(1A)において、X2で表されるヒドロキシル基を有していてもよいアルキレン基としては、例えば、アルキレン基[アルキリデン基を含む、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基(又は1,3−プロパンジイル基)、テトラメチレン基(1,4−ブタンジイル基)、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などのC1−10アルキレン基、好ましくはC2−6アルキレン基、さらに好ましくはC2−4アルキレン基など]、ヒドロキシアルキレン基[ヒドロキシアルキリデン基を含む、例えば、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジイル基(−CH2−CH(OH)−CH2−)、2−ヒドロキシ−2,3−ブタンジイル基(−CH2−CH(OH)−CH(CH3)−)などのヒドロキシC2−10アルキレン基、好ましくはヒドロキシC2−6アルキレン基、さらに好ましくはヒドロキシC2−4アルキレン基など]などが含まれる。
さらに、前記式(1A)において、X4で表されるアルキレン基としては、前記X2で表されるアルキレン基と同様の基、例えば、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基(又は1,3−プロパンジイル基)などのC1−10アルキレン基、好ましくはC2−6アルキレン基、さらに好ましくはC2−4アルキレン基などが含まれる。
これらのX1〜X4は、それぞれ、異なる環Zに対して同一又は異なっていてもよく、通常、同一であってもよい。
前記式(1A)において、代表的なX1〜X4の組み合わせを以下に示す。
(1)X1がエーテル結合含有基である組み合わせ:
(1A)X1が酸素原子であり、X2〜X4がいずれも直接結合である組み合わせ
(1B)X1が酸素原子であり、X2およびX3がいずれも直接結合であり、X4がアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ
(1C)X1が酸素原子であり、X2がヒドロキシアルキレン基(例えば、ヒドロキシC2−6アルキレン基)であり、X3が酸素原子であり、X4がアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ
(1D)X1がエステル基であり、X2がヒドロキシアルキレン基(例えば、ヒドロキシC2−6アルキレン基)であり、X3が酸素原子であり、X4がアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ。
(2)X1がチオエーテル結合含有基である組み合わせ:
(2A)X1が硫黄原子であり、X2〜X4がいずれも直接結合である組み合わせ
(2B)X1が硫黄原子であり、X2およびX3がいずれも直接結合であり、X4がアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ
(2C)X1が硫黄原子であり、X2がヒドロキシアルキレン基(例えば、ヒドロキシC2−6アルキレン基)であり、X3が酸素原子であり、X4がアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ
(2D)X1がチオエステル基であり、X2およびX3がいずれも直接結合であり、X4がアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ。
(3)X1がイミノ結合含有基である組み合わせ:
(3A)X1がイミノ基であり、X2がヒドロキシアルキレン基(例えば、ヒドロキシC2−6アルキレン基)であり、X3が酸素原子であり、X4がアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ
(3B)X1がアミド基であり、X2およびX3がいずれも直接結合であり、X4がアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ
(3C)X1がアミド基であり、X2がアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)であり、X3がイミノ基であり、X4がアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ
(3D)X1がウレタン基であり、X2およびX3がいずれも直接結合であり、X4がアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ
(3E)X1が尿素基であり、X2およびX3がいずれも直接結合であり、X4がアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ。
なお、前記式(1A)において、Z、R1、R2、R3、R4、R5、R6、k、m、n、p1、p2は前記と同じであり、好ましい態様なども同様である。
これらのなかでも、下記式(1B)で表される化合物(前記式(1A)においてX1がウレタン結合である化合物の一種)が代表的である。
(式中、X4aはアルキレン基を示し、Z、R1、R2、R3、R4、R5、R6、k、m、n、p1、p2は前記と同じ。)
上記式(1B)において、アルキレン基X4aとしては、前記X4と同様のアルキレン基、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などのC1−10アルキレン基、好ましくはC2−6アルキレン基、さらに好ましくはC2−4アルキレン基などが挙げられる。
また、前記式(1)(又は前記式(1A)又は前記式(1B))において、p1は1以上であればよく、例えば、1〜8(例えば、1〜6)、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。また、p2は0以上であればよく、例えば、0〜8(例えば、0〜6)、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。p1およびp2は同一であっても、異なっていてもよい。通常、p1およびp2は同一[例えば、1以上(例えば、1〜2)]であってもよい。また、p1およびp2の合計は、例えば、1〜15(例えば、1〜12)、好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜8(例えば、2〜6)、特に2〜4(例えば、2)であってもよい。
上記のような本発明のケイ素化合物は、アルコキシシリル基などの重合性(又は縮合性)のケイ素含有基を有しているとともに、このケイ素含有基と9,9−ビスアリールフルオレン骨格とが、アルキレン基を含む特定の連結基で連結された構造を有しているためか、比較的柔軟性が高く、加水分解処理に供しても、硬化収縮を抑制できる。このような硬化収縮は、後述するように、重合性組成物において組み合わせる加水分解縮合性有機金属化合物の種類にも関係するようである。
(製造方法)
本発明のケイ素化合物は、特に限定されないが、通常、下記式(2)で表される化合物[9,9−ビスアリールフルオレン骨格(前記式(1)において、基−SiR4R5R6を含まない骨格)に対応する化合物]と、下記式(3)で表される化合物(前記式(1)において、基−SiR4R5R6に対応する化合物)とを反応させることにより製造できる。このような方法は、簡便であり、また、原料としてのケイ素化合物なども入手しやすい場合が多く、工業的に有利に本発明のケイ素化合物を製造する方法である。
(式中、Eは酸素原子、硫黄原子、エステル基(−COO−又は−OCO−)、又はイミノ基(−NH−)を示し、Z、R1、R2、R3、k、m、n、p1、p2は前記と同じ。)
(式中、XAは、前記Xに対応する官能基を含む基を示し、R4、R5およびR6は前記と同じ。)
前記式(2)において、Z、R1、R2、R3、k、m、n、p1、p2は前記と同じであり、好ましい態様は前記と同じである。なお、Eがエステル基又はイミノ基であるとき、nは、通常0であってもよい。
代表的な前記式(2)で表される化合物としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類、9,9−ビス(メルカプトアリール)フルオレン類、9,9−ビス(メルカプト(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類、9,9−ビス(カルボキシアリール)フルオレン類、9,9−ビス(アミノアリール)フルオレン類などが含まれる。
9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(ヒドロキシ−アルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−モノ又はジC1−4アルキルフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(ヒドロキシ−アリールフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−モノ又はジC6−10アリールフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(ジ乃至テトラヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類;9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類などが含まれる。
また、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類としては、前記9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類に対応し、前記式(2)においてnが1以上である化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(ヒドロキシジ乃至テトラアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシジC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類;9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレン}、9,9−ビス(ヒドロキシジ乃至テトラアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{6−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]−2−ナフチル}フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシジC2−4アルコキシナフチル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類などが含まれる。
9,9−ビス(メルカプトアリール)フルオレン類としては、前記9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類に対応し、ヒドロキシル基がメルカプト基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(メルカプトフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−メルカプトフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(メルカプト−アルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−メルカプト−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−メルカプト−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(メルカプト−モノ又はジC1−4アルキルフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(メルカプト−アリールフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−メルカプト−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(メルカプト−モノ又はジC6−10アリールフェニル)フルオレン]などが挙げられる。また、9,9−ビス(メルカプト(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類としては、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類に対応し、ヒドロキシル基がメルカプト基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(メルカプトアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−メルカプトエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(メルカプトC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(ヒドロキシジ乃至テトラアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−メルカプトエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス(メルカプトジC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などが含まれる。
9,9−ビス(カルボキシアリール)フルオレン類としては、前記9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類に対応し、ヒドロキシル基がカルボキシル基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(カルボキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(カルボキシ−アルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−カルボキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−カルボキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシ−モノ又はジC1−4アルキルフェニル)フルオレン]などが挙げられる。
また、9,9−ビス(アミノアリール)フルオレン類としては、前記9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類に対応し、ヒドロキシル基がアミノ基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アミノ−アルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(アミノ−モノ又はジC1−4アルキルフェニル)フルオレン]などが挙げられる。
なお、前記式(2)で表される化合物は、前記式(1)において、基−SiR4R5R6を含まない骨格(9,9−ビスアリールフルオレン骨格)に対応する。
また、前記式(3)において、XAが有する官能基としては、例えば、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、イソシアナート基(−NCO)、エポキシ基などが含まれる。特に、前記式(1A)で表される化合物の製造に用いる前記式(3)で表される化合物は、下記式(3A)で表される化合物であってもよい。
(式中、X1Aは、前記X1に対応する官能基を示し、R4、R5、R6、X2、X3、およびX4は前記と同じ。)
上記式(3A)において、X1Aで表される官能基としては、前記X4が有する官能基(又は官能基を含む基)、例えば、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、メルカプト基、アミノ基、イソシアナート基(−NCO)、グリシジル基などが含まれる。
なお、このような化合物の中でも、特に、前記式(1B)で表される化合物の製造に用いる前記式(3)で表される化合物は、通常、下記式(3B)で表される化合物であってもよい。
(式中、R4、R5、R6、およびX4aは前記と同じ。)
代表的な前記式(3)[又は(3A)又は(3B)]で表される化合物としては、例えば、ハロゲン原子を有するアルコキシシラン類、メルカプト基を有するアルコキシシラン類、アミノ基を有するアルコキシシラン類、イソシアナート基を有するアルコキシシラン類、グリシジル基を有するアルコキシシラン類、テトラハロシラン類(例えば、テトラクロロシランなど)などが挙げられる。
ハロゲン原子を有するアルコキシシラン類としては、例えば、ハロゲン原子を有するモノ乃至トリアルコキシシラン類[例えば、ハロアルキルトリアルコキシシラン(例えば、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシランなど)などのハロアルキルモノ乃至トリアルコキシシランなど]などが挙げられる。
メルカプト基を有するアルコキシシラン類としては、例えば、メルカプト基を有するモノ乃至トリアルコキシシラン類[例えば、メルカプトアルキルアルキルジアルコキシシラン(例えば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプトC2−4アルキルC1−4アルキルジC1−4アルコキシシラン)、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン(例えば、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプトC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン)などのメルカプトアルキルモノ乃至トリアルコキシシラン]などが挙げられる。
アミノ基を有するアルコキシシラン類としては、例えば、アミノ基を有するモノ乃至トリアルコキシシラン類{例えば、アミノアルキルアルキルジアルコキシシラン(例えば、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのアミノC2−4アルキルC1−4アルキルジC1−4アルコキシシラン)、アミノアルキルトリアルコキシシラン(例えば、2−アミノエチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン)などのアミノアルキルモノ乃至トリアルコキシシラン;(アミノアルキルアミノ)アルキル−アルキルジアルコキシシラン[例えば、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルメチルジメトキシシランなどの(アミノC2−4アルキルアミノ)C1−4アルキル−C1−4アルキルジC1−4アルコキシシランなど]、(アミノアルキルアミノ)アルキル−トリアルコキシシラン[例えば、2−[N−(2−アミノエチル)アミノ]エチルトリメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシランなどのN−(アミノC2−4アルキル)アミノC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシランなど]など}などが挙げられる。
イソシアナート基を有するアルコキシシラン類としては、例えば、イソシアナート基を有するモノ乃至トリアルコキシシラン類[例えば、イソシアナトアルキルアルキルジアルコキシシラン(例えば、3−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシランなどのイソシアナトC2−4アルキルC1−4アルキルジC1−4アルコキシシラン)、イソシアナトアルキルトリアルコキシシラン(例えば、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランなどのイソシアナトC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン)などのイソシアナトアルキルモノ乃至トリアルコキシシラン]などが挙げられる。
グリシジル基を有するアルコキシシラン類としては、例えば、グリシジル基を有するモノ乃至トリアルコキシシラン類[例えば、グリシジルオキシアルキルアルキルジアルコキシシラン(例えば、3−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルエチルジエトキシシランなどのグリシジルオキシC2−4アルキルC1−4アルキルジC1−4アルコキシシランなど)、グリシジルオキシアルキルトリアルコキシシラン(例えば、2−グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシジルオキシC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシランなど)などのグリシジルオキシアルキルモノ乃至トリアルコキシシラン]などが挙げられる。
反応において、前記式(3)で表される化合物(前記式(3A)で表される化合物、前記式(3B)で表される化合物を含む。以下同じ)の使用割合は、前記式(1)におけるp1およびp2の数に応じて適宜選択でき、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば、1モル以上(例えば、1〜20モル)、好ましくは1.2〜15モル(例えば、1.5〜10モル)、さらに好ましくは2〜8モル(例えば、2.2〜5モル)程度であってもよい。特に、前記式(1)においてp1およびp2が1である化合物を得る場合には、前記式(3)で表される化合物の使用割合は、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば、2モル以上(例えば、2〜20モル)、好ましくは2.1〜15モル(例えば、2.2〜10モル)、さらに好ましくは2.3〜5モル程度であってもよい。なお、前記式(3)で表される化合物の反応性によっては、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば、2〜3モル(例えば、2〜2.5モル)、好ましくは2〜2.4モル、さらに好ましくは2〜2.3モル程度の比較的少ない割合で前記式(3)で表される化合物を使用してもよい。
なお、反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、前記式(2)で表される化合物および前記式(3)で表される化合物に対して不活性な又は非反応性の溶媒であれば特に限定されず、例えば、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル、1,4−ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソプロピルケトン、イソブチルメチルケトンなどのジアルキルケトン)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類など)、炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類)、ニトリル類(アセトニトリルなど)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
また、反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、前記式(2)で表される化合物および前記式(3)で表される化合物の官能基の種類、さらにはこれらの化合物との反応により形成される結合の種類に応じて適宜選択できる。例えば、前記式(3)で表される化合物のうち、イソシアナート基を有する化合物(例えば、前記式(3B)で表される化合物)を用いる場合には、有機スズ系化合物(例えば、オクチル酸スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレートなどのスズカルボキシレート類)、ナフテン酸金属塩(ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルトなど)などの有機金属触媒;第3級アミン類[例えば、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの鎖状第3級アミン;ピリジン、メチルピリジン、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミンなどの環状第3級アミンなど]などの触媒を使用してもよい。これらの触媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
反応は、冷却下又は常温下で行ってもよく、加温下(例えば、40〜150℃、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃程度)で行ってもよい。なお、反応は、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧、加圧下又は減圧下で行ってもよい。
このようにして前記式(1)で表される化合物が得られる。反応生成物(前記式(1)で表される化合物)慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により、反応混合物から分離精製してもよい。
(用途)
本発明のケイ素化合物は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格およびケイ素骨格を有し、高耐熱性、高透明性、高屈折率などの優れた特性を有しているため、種々の用途に適用できる。例えば、本発明のケイ素化合物は、ケイ素原子に結合した重合性基を有し、ポリマー化できるため、樹脂成分として利用することができる。また、この重合性基を利用して、前記式(1)で表される化合物をさらに誘導体化することもできる。
特に、本発明のケイ素化合物は、膜形成可能であるため、コーティング剤として好適に使用できる。なお、コーティング剤として使用する場合、分離精製後の前記ケイ素化合物そのものを使用してもよく、前記反応混合物としてそのまま利用してもよく、前記反応混合物から溶媒の一部又は全部除去したものを使用してもよい。
コーティング剤は、前記ケイ素化合物を含むコーティング組成物の形態であってもよい。コーティング組成物は、例えば、溶媒、触媒(酸触媒など)などの添加剤を含んでいてもよい。
膜(又は薄膜)の形成には、慣用の方法、例えば、フローコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法、バーコート法、カーテンコート法、ロールコート法、ディップ法などを用いることができる。また、コーティング剤の適用後(塗布後)、慣用の方法により乾燥処理を行ってもよく、必要に応じて加熱により乾燥させてもよい。また、コーティングに先立って、前記ケイ素化合物を加水分解処理してもよい。このような加水分解処理により、ゾルゲル反応を利用した膜を形成することができる。
なお、膜(又は薄膜)の厚みは、用途に応じて例えば、0.01〜100μm、好ましくは0.05〜10μm、さらに好ましくは0.1〜1μm程度であってもよい。
前記のように、本発明のケイ素化合物は、重合性基(加水分解縮合性基)を有しているため、重合性組成物を構成することができる。以下に重合性組成物について詳述する。
(重合性組成物)
重合性組成物において、重合成分(加水分解縮合性成分)は、前記ケイ素化合物のみで構成してもよく、前記ケイ素化合物と、加水分解縮合性有機金属化合物(詳細には、前記ケイ素化合物の範疇に属さない加水分解縮合性有機金属化合物、他の加水分解縮合性有機金属化合物)とで構成してもよい。
加水分解縮合性有機金属化合物としては、加水分解縮合性有機ケイ素化合物{例えば、ビニルジメチルエトキシシランなどのモノアルコキシシラン類;ジアルキルジアルコキシシラン(例えば、ジメチルジメトキシシランなどのジC1−4アルキルジC1−4アルコキシシランなど)、官能基[エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ハロゲン原子(塩素原子など)、重合性不飽和基(例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基)など]を有するジアルコキシシラン{例えば、3−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなど)などのジアルコキシシラン類;トリアルコキシシラン(例えば、トリメトキシシランなどのトリC1−4アルコキシシランなど)、アルキルトリアルコキシシラン(例えば、メチルトリメトキシシランなどのC1−4アルキルトリC1−4アルコキシシランなど)、アリールトリアルコキシシラン(例えば、フェニルトリメトキシシランなど)、官能基[エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ハロゲン原子(塩素原子など)、重合性不飽和基(例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基)など]を有するトリアルコキシシラン{例えば、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなど)などのトリアルコキシシラン類;テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラC1−4アルコキシシランなど)などのテトラアルコキシシラン類;これらのモノ乃至テトラアルコキシシラン類のオリゴマー(又は部分縮合物)など}、加水分解縮合性非ケイ素系有機金属化合物などが挙げられる。これらの加水分解縮合性有機金属化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
重合性組成物(又はその硬化物)の特性を改善又は向上させる場合には、加水分解縮合性有機金属化合物を、少なくとも加水分解縮合性非ケイ素系有機金属化合物で構成するのが好ましい。例えば、重合性組成物(又はその硬化物)の屈折率をさらに改善又は向上させる場合には、加水分解縮合性有機金属化合物を、加水分解縮合性有機チタン化合物、加水分解縮合性有機ジルコニウム化合物など(特に、加水分解縮合性有機チタン化合物)で少なくとも構成してもよい。
加水分解縮合性非ケイ素系有機金属化合物(以下、単に非ケイ素系金属化合物ということがある)としては、例えば、非ケイ素系金属アルコキシド又はその部分縮合物などが挙げられる。非ケイ素系金属アルコキシドとしては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、および亜鉛から選択された非ケイ素系金属の金属アルコキシド、例えば、下記式(4)で表される金属アルコキシドなどが挙げられる。
M(OR11)q(R12)r (4)
[式中、Mはチタン、ジルコニウム、アルミニウム又は亜鉛を表す。R11は、アルキル基又は基−[(R13O)s−R14](式中、R13は、アルキレン基であり、R14はアルキル基であり、sは1以上の整数を示す)、R12は、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、qは1以上の整数、rは0又は1以上の整数を表す。]
前記式(4)において、基R11(および基R14)で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのC1−18アルキル基、好ましくはC1−10アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基)などが例示できる。基R12で表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが例示できる。また、基−O−[(R13O)s−R14]で表されるポリアルコキシ基において、基R13で表されるアルキレン基としては、限定されないが、例えば、C2−4アルキレン基(エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブタン−1,2−ジイル基など)などが例示でき、特に、C2−3アルキレン基(特に、エチレン基、プロピレン基)が好ましい。アルキレンオキシ(R13O)単位の付加数sは、1以上であればよく、例えば、1〜4、好ましくは1〜2、さらに好ましくは1であってもよい。好ましいポリアルコキシ基には、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基などのC1−4アルコキシC2−4アルコキシ基(特に、C1−2アルコキシエトキシ基)などが含まれる。
また、好ましい置換数qは、金属原子Mの種類に応じて、例えば、2〜4程度である。なお、置換数qが複数である場合、複数の基R11は、同一又は異なっていてもよい。
基R12で表される炭化水素基としては、前記と同様の炭化水素基、例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基など)、アリール基(例えば、C6−10アリール基など)などが含まれる。また、基R12で表される炭化水素基は、置換基{例えば、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子など、特に、塩素原子)、アミノ基又はN−置換アミノ基[例えば、アミノアルキルアミノ基(2−アミノエチルアミノ基などのアミノC2−4アルキルアミノ基など)、アルケニルアミノ基(アリルアミノ基などのC2−4アルケニルアミノ基など)、アルケニルアミノアルキル基(アリルアミノプロピル基など)など]、メルカプト基(又は置換メルカプト基)、エポキシ基含有基[エポキシシクロアルキル基(3,4−エポキシシクロヘキシル基などのエポキシC3−8シクロヘキシル基、好ましくはエポキシC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはエポキシC5−6シクロアルキル基)、グリシジルオキシ基など]、(メタ)アクリロイルオキシ基など}を有していてもよい。これらの置換基は単独で又は2種以上組み合わせて置換していてもよい。なお、好ましい置換数rは、0〜2である。また、置換数rが複数である場合、複数の基R12は、同一又は異なっていてもよい。
代表的な非ケイ素系金属アルコキシドとしては、アルミニウムアルコキシド類[例えば、トリアルコキシアルミニウム(トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリn−ブトキシアルミニウム、トリs−ブトキシアルミニウム、トリt−ブトキシアルミニウムなどのトリC1−4アルコキシアルミニウムなど)など]、チタンアルコキシド類[例えば、ジアルキルジアルコキシチタン(ジエチルジエトキシチタンなどのジC1−4アルキルジC1−4アルコキシチタン)などのジアルコキシチタン;トリアルコキシチタン(例えば、トリメトキシチタンなどのトリC1−4アルコキシチタン)、アルキルトリアルコキシチタン(例えば、メチルトリメトキシチタン、エチルトリメトキシチタンなどのアルキルトリC1−4アルコキシチタン)、アリールトリアルコキシチタン(例えば、フェニルトリメトキシチタンなどのアリールトリC1−4アルコキシチタン)などのトリアルコキシチタン;テトラアルコキシチタン(例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラt−ブトキシチタン、テトラノニルオキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラキス(メトキシプロポキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタン、テトライソステアリルオキシチタンなどのテトラC1−18アルコキシチタン、好ましくはテトラC1−10アルコキシチタン、さらに好ましくテトラC1−6アルコキシチタンなど)など]、ジルコニウムアルコキシド類[例えば、テトラアルコキシジルコニウム(例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトライソブトキシジルコニウム、テトラn−ブトキシジルコニウム、テトラt−ブトキシジルコニウム、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)ジルコニウム、テトラキス(2−メチル−2−ブトキシ)ジルコニウムなどのテトラC1−18アルコキシジルコニウム、好ましくはテトラC1−10アルコキシジルコニウム、さらに好ましくはテトラC1−6アルコキシジルコニウムなど)など]、亜鉛アルコキシド類(例えば、ビスメトキシエトキシ亜鉛など)などが挙げられる。
なお、非ケイ素系金属アルコキシドは、錯体(金属錯体)を形成していていもよい。錯体において、配位子(又は配位子を形成する化合物)としては、特に制限されないが、例えば、有機化合物[キレート形成性有機化合物(例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのβ−ジケトン構造を有する化合物など)など]などが挙げられる。
また、非ケイ素系金属アルコキシドの部分縮合物(又はオリゴマー)としては、前記式(4)で表される金属アルコキシド(例えば、テトラアルコキシチタンなど)のオリゴマー(又は縮合物)などが挙げられる。このようなオリゴマーは、単一の非ケイ素系金属アルコキシドのオリゴマーであってもよく、複数の非ケイ素系金属アルコキシドの縮合物(例えば、トリアルコキシチタンとテトラアルコキシチタンとのオリゴマー、異種のテトラアルコキシチタンのオリゴマーなど)であってもよい。
前記オリゴマーの数平均重合度は、例えば、2〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは3〜6程度であってもよい。なお、前記オリゴマーは、通常、鎖状(又は直鎖状)の縮合物(又は部分縮合物)であってもよい。
代表的なオリゴマーとしては、3以上のアルコキシ基を有する非ケイ素系金属アルコキシド(例えば、トリアルコキシチタン、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシジルコニウムなど)のオリゴマー(部分縮合物)などが挙げられる。例えば、テトラアルコキシチタンのオリゴマーには、下記式(5)で表される直鎖状のアルコキシチタンオリゴマーなどが含まれる。
(式中、tは2以上の整数を示し、R11は、前記と同じ。)
上記式(5)において、基R11は前記と同じである。好ましい基R11には、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、などのC1−10アルキル基、好ましくはC1−4アルキル基)が含まれる。なお、前記のように、複数の基R11は、同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。また、tは、2以上であればよく、例えば、2〜15、好ましくは2〜10、さらに好ましくは3〜6程度であってもよい。
好ましい加水分解縮合性非ケイ素系有機金属化合物は、前記のように、屈折率を大きくするという観点からは、チタンアルコキシド類、ジルコニウムアルコキシド類、これらのオリゴマー(特に、チタンアルコキシド類又はそのオリゴマー)などが好ましい。特に、反応性の点では、チタンアルコキシド類のオリゴマーが好ましい。また、比較的大きな炭化水素基を有するチタンアルコキシド類(例えば、テトラC2−10アルコキシチタン、好ましくはテトラC3−6アルコキシチタン)およびそのオリゴマーも好ましい。
加水分解縮合性非ケイ素系有機金属化合物は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
重合性組成物において、加水分解縮合性非ケイ素系有機金属化合物(例えば、加水分解縮合性有機チタン化合物)の割合は、例えば、前記式(1)で表される化合物(又は前記ケイ素化合物)1重量部に対して、0.01〜20重量部(例えば、0.05〜10重量部)、好ましくは0.1〜8重量部、さらに好ましくは0.3〜5重量部、特に0.5〜4重量部(例えば、0.6〜3.5重量部)程度であってもよい。
また、加水分解縮合性非ケイ素系有機金属化合物(例えば、加水分解縮合性有機チタン化合物)の割合は、例えば、前記式(1)で表される化合物のケイ素原子1モルに対して、金属原子(例えば、チタン原子)換算で、0.01〜20モル(例えば、0.05〜10モル)、好ましくは0.1〜8モル、さらに好ましくは0.3〜5モル、特に0.5〜4モル(例えば、0.6〜3.5モル)程度であってもよい。
前記重合性組成物は、前記ケイ素化合物(および加水分解縮合性有機金属化合物)のゾルゲル反応のため、さらに、酸触媒を含んでいてもよい。酸触媒としては、無機酸(例えば、硫酸、塩化水素、塩酸、リン酸など)、有機酸[スルホン酸(メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸など)など]、固体酸などが挙げられる。なお、このような酸触媒は、前記ケイ素化合物(および加水分解縮合性有機金属化合物)との混合により、ゾルゲル反応が進行するため、使用直前(硬化直前)に混合し、重合性組成物を構成してもよい。
また、酸触媒には、光酸発生剤も含まれる。このような光酸発生剤は、非露光下では酸を発生しないため、使用前に重合性組成物を構成してもゾルゲル反応を進行させることがなく、ハンドリング性の点で有利である。光酸発生剤としては、光の作用により酸を発生する化合物(成分)であれば特に限定されず、慣用の化合物を用いることができ、例えば、オニウム塩、メタロセン錯体などを好適に使用できる。オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩などが例示でき、これらの対イオンとしては、CF3SO3 −、BF4 −、B(C6F5)4 −、PF6 −、AsF6 −およびSbF6 −などのアニオンが用いられる。
代表的な光酸発生剤としては、スルホニウム塩{例えば、トリアリールスルホニウム塩[トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートなどのトリフェニルスルホニウム塩など]、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート)など}、ジアゾニウム塩(4−クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなど)、ヨードニウム塩{例えば、ビス(アリール)ヨードニウム塩[例えば、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジアリールヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど]、アルコキシカルボニルアルコキシアリール−トリアルキルアリールヨードニウム塩[例えば、4−[(1−エトキシカルボニル−エトキシ)フェニル]−(2,4,6−トリメチルフェニル)−ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなど]、ビス(アルコキシアリール)ヨードニウム塩[例えば、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのビス(アルコキシフェニル)ヨードニウム塩など]など}、ホスホニウム塩(ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネートなど)、セレニウム塩(トリフェニルセレニウムヘキサフルオロホスフェートなど)、メタロセン錯体[例えば、(η5又はη6−イソプロピルベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェートなど]などが挙げられる。
これらの光酸発生剤のうち、オニウム塩[特に、スルホニウム塩(トリアリールスルホニウム塩など)、ヨードニウム塩(ビス(アリール)ヨードニウム塩など)]などが好ましい。光酸発生剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
酸触媒(例えば、光酸発生剤)の割合は、前記式(1)で表される化合物100重量部に対して、0.1〜10重量部程度の範囲から選択でき、例えば、0.5〜10重量部(例えば、1〜10重量部)、好ましくは0.5〜5重量部、さらに好ましくは1〜5重量部(例えば、1〜3重量部)程度であってもよい。また、重合性組成物が、加水分解縮合性有機金属化合物を含む場合、光酸発生剤の割合は、前記式(1)で表される化合物および加水分解縮合性有機金属化合物の総量100重量部に対して、例えば、0.1〜8重量部(例えば、0.2〜7重量部)、好ましくは0.2〜5重量部、さらに好ましくは0.3〜3重量部(例えば、0.5〜2重量部)程度であってもよい。
なお、本発明の組成物は、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、顔料、着色剤、増粘剤、増感剤、消泡剤、レベリング剤、塗布性改良剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、耐光安定剤、光安定剤など)、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性剤、溶解促進剤、充填剤、帯電防止剤、硬化剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
また、前記組成物は、溶媒を含んでいてもよい。このような溶媒を含む組成物は、例えば、基材上に膜(硬化膜)を形成するための塗布液(コーティング液)として好適に用いることができる。このような塗布液を構成する溶媒としては、特に限定されず、慣用の溶媒、例えば、炭化水素類(ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロアルカン、クロロベンゼンなどのハロアレーンなど)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルカノール類など)、ジオール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールなどの(ポリ)アルキレングリコールなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、オキソランなどの環状エーテル類など)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステル)、ケトン類(アセトン、エチルメチルケトンなどのジアルキルケトン類、シクロヘキサノンなど)、グリコールエーテルエステル類(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セロソルブアセテートなど)、グリコールエーテル類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジグライムなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。なお、溶媒を含む前記組成物において、各固形成分は、溶媒に溶解又は分散していてもよい。また、重合性組成物は、加水分解を促進するため、水を含んでいてもよい。
また、溶媒を含む重合性組成物において、前記式(1)で表される化合物および加水分解縮合性有機金属化合物の総量の割合は、塗布液の粘度などに応じて適宜調整できるが、例えば、溶媒1重量部に対して0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.15〜3重量部、特に0.2〜1重量部程度であってもよい。
なお、本発明の重合性組成物は、慣用の方法、例えば、前記式(1)で表される化合物と、前記加水分解縮合性有機金属化合物と、前記酸触媒(光酸発生剤など)と、必要に応じて他の成分(溶媒など)とを混合することにより調製できる。
また、加水分解縮合性有機金属化合物を部分縮合物として使用する場合、部分縮合物は、市販品として入手したものを使用してもよく、部分縮合物に対応するモノマー及び/又はオリゴマーを、適当な溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチルなどの前記例示の溶媒)に分散又は溶解させ、酸触媒(塩酸、硫酸などの無機酸、ギ酸、シュウ酸などの有機酸)の存在下で、加熱(加熱処理)することにより調製できる。このような部分縮合物の調製においては、必要に応じて、水などを混合して加水分解縮合を促進させてもよい。
このような本発明の重合性組成物は、重合性(加水分解縮合性)を有しており、硬化物(有機無機ハイブリッド硬化物)を形成するための組成物として使用できる。特に、このような本発明の重合性組成物は、高屈折率などの特性を有し、基板に対する高密着性、ハードコート性、透明性(又は可視光に対する透明性)などの特性もバランスよく備えた高性能の硬化物(ハイブリッド硬化物)を得るのに有用である。
(硬化物)
本発明の硬化物(前記重合性樹脂組成物が硬化(又は架橋)した硬化物)は、前記組成物を、加水分解縮合(硬化又は架橋)させることにより製造又は調製できる。特に、酸触媒が光酸発生剤で構成されている重合性組成物は、この重合性組成物に光を照射し、加水分解縮合させることにより製造又は調製できる。すなわち、この重合性組成物では、光照射により発生した酸により、加水分解縮合が進行する。
硬化物(有機無機ハイブリッド硬化物)は、特に限定されず、三次元的硬化物、硬化膜や硬化パターンなどの一次元又は二次元的硬化物、点又はドット状硬化物などであってもよい。このような本発明の硬化物(特に、硬化膜)は、高屈折率、可視光に対する高透明性などの優れた特性を有し、基材に対する密着性にも優れている。前記重合性組成物は、硬化収縮が小さく、基材上での薄膜を製造するのに適しているため、本発明の硬化物は、特に、硬化膜の形態であってもよい。以下、硬化膜について詳述する。
硬化膜は、前記重合性組成物を、基材上に塗布して塗膜を形成したのち、酸触媒の種類などに応じた適当な方法により、加水分解縮合させる(硬化処理する)ことにより製造できる。
基材の材質は、用途に応じて選択でき、例えば、シリコン、ガリウム砒素、窒化ガリウム、炭化シリコンなどの半導体;アルミニウム、銅などの金属;酸化ジルコニウム、酸化チタン、PZTなどのセラミック;透明無機材料(ガラス、石英、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなど);透明樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリスチレンなど)などが挙げられる。
塗布方法としては、例えば、フローコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法、スリット法などを挙げることができる。
塗膜(又は硬化膜)の厚みは、硬化膜の用途によって応じて、0.01μm〜10mm程度の範囲から選択でき、例えば、光学用途の薄膜(反射防止膜など)の場合、硬化膜の厚みは、0.1〜100μm(好ましくは0.3〜50μm)程度であってもよい。特に、本発明の硬化膜は、柔軟性に優れ、比較的大きな厚みであっても、クラックの生成がなく、表面が平滑である。そのため、本発明の硬化膜(光学用途の薄膜など)の厚み(又は平均厚み)は、例えば、300nm以上(例えば、300nm〜10μm)、好ましくは400nm以上(例えば、500nm〜5μm)、さらに好ましくは500nm以上(例えば、600nm〜3μm、特に650nm以上(例えば、700nm〜2μm)程度であってもよい。
塗膜の加水分解縮合処理(硬化処理)は、酸触媒の種類などに応じて、加熱(処理)、光照射(処理)などが挙げられ、これらを組み合わせてもよい。加熱と光照射とを組み合わせる場合、加熱と光照射を併行して行ってもよく、加熱後、光照射してもよく、光照射後、加熱してもよい。加熱処理する場合、加熱温度は、例えば、60〜250℃、好ましくは80〜200℃、さらに好ましくは100〜160℃程度であってもよい。
また、光照射する場合、照射又は露光する光は、例えば、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線などであってもよく、通常、可視光又は紫外線、特に紫外線である場合が多い。光の波長は、例えば、150〜800nm、好ましくは150〜600nm、さらに好ましくは200〜400nm(特に300〜400nm)程度である。照射光量は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、2〜5000mJ/cm2、好ましくは5〜3000mJ/cm2程度であってもよい。光源としては、露光する光線の種類に応じて選択でき、例えば、紫外線の場合は、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、重水素ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光(ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザーなど)などを用いることができる。
酸触媒を光酸発生剤で構成する場合には、前記のように、光照射に加えて、さらに塗膜を加熱することにより、硬化又は架橋反応(およびゾル−ゲル反応)が促進され、高度の三次元架橋が起こり、より一層高硬度の硬化物(硬化塗膜)を得ることができる。塗膜の加熱は、通常、光照射後、又は光照射とともに行われ、通常、光照射後(アフターキュア)に行われる場合が多い。加熱温度は、前記と同様の範囲から選択できる。また、加熱(アフターキュア)時間は、3秒以上(例えば、3秒〜5時間程度)の範囲から選択でき、例えば、5秒〜2時間、好ましくは20秒〜30分程度であってもよく、通常、1分〜3時間(例えば、5分〜2.5時間)程度であってもよい。
なお、パターンや画像を形成する場合(例えば、プリント配線基板などを製造する場合)、基材上に形成した塗膜をパターン露光してもよく、このパターン露光は、レーザ光の走査により行ってもよく、フォトマスクを介して光照射することにより行ってもよい。このようなパターン露光により生成した非照射領域(未露光部)を現像剤で現像(又は溶解)することによりパターン又は画像を形成できる。現像剤としては、水、アルカリ水溶液、親水性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、セロソルブ類、セロソルブアセテート類など)や、これらの混合液などを用いることができる。
光学薄膜を形成する場合には、前記重合性樹脂組成物を、基材上に複数層形成してもよい。
例えば、反射防止膜は、高屈折率薄膜と低屈折率薄膜とを幾層も積層することにより製造されているが、本発明の硬化膜は、この高屈折率薄膜として好適である。しかも、本発明の硬化膜は、前記のように、厚みを厚くしてもクラックの生成がないため、比較的厚みのある高屈折率薄膜を作成することができ、反射防止膜の製造プロセスおよびコスト的に非常に有利である。
なお、上記の例では、基材上に直接的に硬化膜を形成しているが、基材上に他の機能層などを形成した後、その機能層の上に、前記硬化膜を形成してもよい。