JP5468841B2 - アーク溶接方法およびアーク溶接システム - Google Patents

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Description

本発明は、アーク溶接方法およびアーク溶接システムに関する。
図8は、従来の溶接システムの一例を示す図である。同図における溶接システム91は、いわゆるステッチパルス溶接法を用いて溶接を行う。ステッチパルス溶接法とは、溶接時の入熱と冷却をコントロールすることにより、母材に与える熱影響を抑えやすい溶接法である。このステッチパルス溶接法を用いると、従来の薄板溶接に比べ、溶接外観を向上させ、溶接歪み量を低減させることができるとされている(たとえば特許文献1参照)。
マニピュレータ9Mは、ワーク9Wに対してアーク溶接を自動で行うものであり、上アーム93、下アーム94及び手首部95と、これらを回転駆動するための複数のサーボモータ(図示せず)とによって構成されている。
アーク溶接トーチ9Tは、マニピュレータ9Mの手首部95の先端部分に取り付けられており、ワイヤリール96に巻回された直径1mm程度の溶接ワイヤ97をワーク9Wの教示された溶接位置に導くためのものである。溶接電源9WPは、アーク溶接トーチ9Tとワーク9Wとの間に溶接電圧を供給する。ワーク9Wに溶接を行う際は、溶接ワイヤ97をアーク溶接トーチ9Tの先端から所望の突き出し長だけ突き出した状態で行われる。
コンジットケーブル92は、内部に溶接ワイヤ97を案内するためのコイルライナ(図示せず)を備えており、アーク溶接トーチ9Tに接続されている。さらにコンジットケーブル92は、溶接電源9WPからの電力及びガスボンベ98からのシールドガスをもアーク溶接トーチ9Tに供給する。
操作手段としてのティーチペンダント9TPは、いわゆる可搬式操作盤であって、マニピュレータ9Mの動作、ステッチパルス溶接を行わせるために必要な条件等を設定するためのものである。
ロボット制御装置9RCは、マニピュレータ9Mに溶接動作の制御を実行させるためのものであり、内部に主制御部、動作制御部およびサーボドライバ(いずれも図示せず)等を備えている。そして、作業者がティーチペンダント9TPによって教示した作業プログラムに基づき、サーボドライバからマニピュレータ9Mの各サーボモータに動作制御信号を出力し、マニピュレータ9Mの複数の軸をそれぞれ回転させる。ロボット制御装置9RCは、マニピュレータ9Mのサーボモータに備えられたエンコーダ(図示せず)からの出力によって現在位置を認識しているのでアーク溶接トーチ9Tの先端位置を制御することができる。そして溶接部においては、以下に説明する溶接、移動、冷却を繰り返しながらステッチパルス溶接を行う。
図9は、ステッチパルス溶接を行っているときの状態を説明するための図である。溶接ワイヤ97はアーク溶接トーチ9Tの先端から突出している。シールドガスGは、溶接開始時から溶接終了時まで常に一定の流量でアーク溶接トーチ9Tから吹き出される。以下、ステッチパルス溶接時の各状態について説明する。
同図(a)は、アーク発生時の様子を示している。設定された溶接電流および溶接電圧に基づいて、溶接ワイヤ97の先端とワーク9Wとの間にアークaが発生し、溶接ワイヤ97が溶融してワーク9Wに溶融池Yが形成される。アークaが発生してから、教示された溶接時間が経過した後に、アークaを停止する。
同図(b)は、アーク停止後の様子を示している。アーク停止後は、設定された冷却時間が経過するまで溶接後の状態を維持させる。すなわち、マニピュレータ9Mおよびアーク溶接トーチ9Tは溶接時の状態と同様に停止した状態で、アーク溶接トーチ9TからシールドガスGが吹き出されるだけとなるので、溶融池YがシールドガスGによって実質的に冷却されて凝固する。
同図(c)は、アーク溶接トーチ9Tを次の溶接位置に移動させる様子を示している。冷却時間の経過後は、アーク溶接トーチ9Tを溶接進行方向に予め設定された移動ピッチMPだけ離間した位置であるアーク再開始点に移動させる。このときの移動速度は、設定された移動速度である。上記移動ピッチは、同図(c)で示すように溶融池Yが凝固した後の溶接痕Y’の外周側に溶接ワイヤ97を位置づけるように調整された距離である。
同図(d)は、アーク再開始点においてアークaを再発生する様子を示している。溶接痕Y’の前端部に新たに溶融池Yが形成されて溶接が行われるようになる。このように、ステッチパルス溶接システム91では、アークを発生させて溶接を行っている状態と、冷却、移動を行っている状態とが交互に繰り返されることになる。そして、溶接痕であるウロコが重ね合わさるように溶接ビードが形成される。
図10は、溶接施工後に形成される溶接ビードを説明するための図である。同図に示すように、最初のアーク開始点P1において溶接痕Scが形成され、溶接進行方向Drに向けて移動ピッチMpだけ離間した再アーク開始点P2においても同様の溶接痕Scが形成される。再アーク開始点P3以降においてもさらなる溶接痕Scが順次形成されていく。このように、溶接痕Scであるウロコが重なり合うように形成された結果、ウロコ状の溶接ビードBが形成されるのである。
上述した方法では、図9(b)、図9(c)等に示したように、アークaを停止させ、その後アークaを再発生させる工程を繰り返している。アークaを再発生するには時間を要する。そのため、上述した方法では、溶接時間が長くなるといった問題が生じていた。また、アークaを再発生させるたびに、スパッタが発生し、溶接ビードBの外観が悪化するといった問題もあった。そこで、図11に示すように、アークaを停止させずアークaの再発生を不要にする溶接法が提案されている(たとえば特許文献2参照)。
図11(b)、図11(c)によく表れているように、図9(b)、図9(c)に示した場合と異なり、溶融池Yを冷却する際にもアークaを停止させておらず、アークaが発生している状態を保っている。これにより、溶接時間の短縮化が図られている。また、アークaを再発生させる必要がなくなっているため、スパッタの発生を抑制することが可能になっている。
しかしながら、図11(b)、図11(c)に示すように、溶融池Yを冷却する際には、溶滴移行を防止すべく溶接電流を極めて小さくする必要がある。溶接電流が小さくなれば、溶融池Yを冷却している際にアーク切れが頻発する。アーク切れが頻発すると、溶接ビードBの外観の悪化を招いてしまう。このように、図11に示す方法は、溶接ビードBの外観の悪化を防止するのに十分ではなかった。
特開平6−55268号公報 特開平11−267839号公報
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、よりきれいなウロコ状のビードを形成可能なアーク溶接方法、およびアーク溶接装置を提供することをその課題とする。
本発明の第1の側面によって提供されるアーク溶接方法は、消耗電極と母材との間に溶接電流を、絶対値の平均値が第1の値であるように流すことにより、アークを発生させつつ溶滴移行させる第1工程と、上記溶接電流を、絶対値の平均値が上記第1の値より小さい第2の値であるように流し、上記アークが発生している状態を継続させる第2工程と、を備え、上記第1工程と上記第2工程とを繰り返すアーク溶接方法であって、上記第2工程において上記アークが消滅した場合、上記第2の値を上記アークが消滅した時以前の値より大きい値に変化させる工程と、上記消耗電極と上記母材との間に上記アークを再発生させる工程と、をさらに備えることを特徴としている。
このような構成によれば、上記変化させる工程がなされた後には、上記第2工程において上記アークが消滅しにくくなる。これにより、上記母材におけるスパッタの発生を抑制することができる。その結果、上記母材に形成されるビードの外観をよりきれいにすることができる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記変化させる工程の後に、上記アークを再発生させる工程を実行する。このような構成によれば、上記アークを再発生させた時には上記第2の値は既に大きくなっている。そのため、上記アークを再発生させた時から、上記アークが消滅しにくい状態にすることができる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記変化させる工程は、上記アークが複数回消滅した場合にのみ実行する。このような構成によれば、上記アークがただ一度だけ消滅したことをもって、上記変化させる工程を行うことはない。そのため、過度に上記第2の値を大きくすることを抑制することができる。これにより、上記第2工程において上記消耗電極や上記母材が溶融することを抑制できる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記変化させる工程は、上記アークが消滅した時から一定時間内に所定回数上記アークが消滅した場合にのみ実行する。このような構成によれば、上記変化させる工程を、上記一定時間内に上記アークが消滅する回数、すなわち上記アークが消滅する頻度に応じて実行できる。そのため、上記頻度がさほど大きくない場合には、上記変化させる工程を実行する必要がない。これにより、過度に上記第2の値を大きくすることを抑制できる。
本発明の第2の側面によって提供されるアーク溶接方法は、消耗電極と母材との間に溶接電流を、絶対値の平均値が第1の値であるように流すことにより、アークを発生させつつ溶滴移行させる第1工程と、上記溶接電流を、絶対値の平均値が上記第1の値より小さい第2の値であるように流し、上記アークが発生している状態を継続させる第2工程と、を備え、上記第1工程と上記第2工程とを繰り返すアーク溶接方法であって、上記第2工程において上記アークが消滅する兆候が検知された場合、上記第2の値を、上記兆候が検知された時以前の値より大きい値に変化させる工程をさらに備えることを特徴としている。
このような構成によれば、上記変化させる工程がなされた後には、上記第2工程において上記アークが消滅しにくくなる。これにより、上記母材におけるスパッタの発生を抑制できる。その結果、上記母材に形成されるビードの外観をよりきれいにすることができる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1工程において、上記母材の面内方向に沿って、上記消耗電極は上記母材に対して第1の速さで相対移動しており、上記第2工程において、上記面内方向に沿って、上記消耗電極は上記母材に対して上記第1の速さより大きい第2の速さで相対移動している。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1の速さは0である。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1工程における上記溶接電流は、交流パルス電流である。このような構成によれば、上記第1工程における上記母材への入熱を抑制できる。これは、上記母材が薄板である場合に好適である。
本発明の第3の側面によって提供されるアーク溶接システムは、消耗電極と母材との間に溶接電流を流すことにより、アークを発生させ溶接を行うアーク溶接システムであって、上記溶接電流の絶対値の平均値を第1の値に設定する第1の期間と、上記溶接電流の絶対値の平均値を第1の値より小さい第2の値に設定する第2の期間と、を繰り返し発生させる電流制御手段と、上記アークの消滅を検知する検知手段と、を備え、上記電流制御手段は、上記第2の期間において上記アークが消滅したと上記検知手段が判断した場合、上記第2の値を上記アークが消滅した時以前の値より大きい値に変化させることを特徴としている。
このようなアーク溶接システムは、上記第1の側面によって提供されるアーク溶接方法を使用するのに好適である。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記電流制御手段は、上記アークが複数回消滅したことを上記検知手段が検知した場合にのみ、上記第2の値を上記アークが消滅した時以前より大きい値に変化させる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1の期間において、上記母材の面内方向に沿って、上記消耗電極を上記母材に対して第1の速さで相対移動させ、上記第2の期間において、上記面内方向に沿って、上記消耗電極を上記母材に対して上記第1の速さより大きい第2の速さで相対移動させる消耗電極移動手段をさらに備える。
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
本発明の第1実施形態にかかる溶接システムの一例の構成を示す図である。 図1に示した溶接システムの内部構成を示す図である。 第1実施形態にかかる溶接システムの各信号等のタイミングチャートを示す図である。 アーク継続期間における溶接電流の変化を示す図である。 第2実施形態にかかる溶接システムの各信号等のタイミングチャートを示す図である。 第3実施形態にかかる溶接システムの各信号等のタイミングチャートを示す図である。 第4実施形態にかかる溶接システムの各信号等のタイミングチャートを示す図である。 従来の溶接システムの一例の構成を示す図である。 ステッチパルス溶接を行っているときの状態を説明する図である。 溶接施工後に形成される溶接ビードを説明するための図である。 ステッチパルス溶接を行っているときの状態を説明するための図である。
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる溶接システムの一例の構成を示す図である。
図1に示された溶接システムAは、溶接ロボット1、ロボット制御装置2、および溶接電源装置3を備えている。溶接ロボット1は、溶接母材Wに対してたとえばアーク溶接を自動で行うものである。溶接ロボット1は、ベース部材11、複数のアーム12、複数のモータ13、溶接トーチ14、ワイヤ送給装置16、およびコイルライナ19を備えている。
ベース部材11は、フロア等の適当な箇所に固定される。各アーム12は、ベース部材11に軸を介して連結されている。
溶接トーチ14は、溶接ロボット1の最も先端側に設けられた手首部12aの先端部に設けられている。溶接トーチ14は、消耗電極としてのたとえば直径1mm程度の溶接ワイヤ15を、溶接母材W近傍の所定の位置に導くものである。溶接トーチ14には、Arなどのシールドガスを供給するためのシールドガスノズル(図示略)が備えられている。モータ13は、アーム12の両端または一端に設けられている(一部図示略)。モータ13は、ロボット制御装置2により回転駆動する。この回転駆動により、複数のアーム12の移動が制御され、溶接トーチ14が上下前後左右に自在に移動できるようになっている。
モータ13には、図示しないエンコーダが設けられている。このエンコーダの出力は、ロボット制御装置2に与えられる。この出力値により、ロボット制御装置2では、溶接トーチ14の現在位置を認識するようになっている。
ワイヤ送給装置16は、溶接ロボット1における上部に設けられている。ワイヤ送給装置16は、溶接トーチ14に対して、溶接ワイヤ15を送り出すためのものである。ワイヤ送給装置16は、送給モータ161、ワイヤリール(図示略)、およびワイヤプッシュ手段(図示略)、を備えている。送給モータ161を駆動源として、上記ワイヤプッシュ手段が、上記ワイヤリールに巻かれた溶接ワイヤ15を溶接トーチ14へと送り出す。
コイルライナ19は、その一端がワイヤ送給装置16に、その他端が溶接トーチ14に、それぞれ接続されている。コイルライナ19は、チューブ状に形成されており、その内部には、溶接ワイヤ15が挿通されている。コイルライナ19は、ワイヤ送給装置16から送り出された溶接ワイヤ15を、溶接トーチ14に導くものである。送り出された溶接ワイヤ15は、溶接トーチ14から外部に突出して消耗電極として機能する。
図2は、図1に示した溶接システムAの内部構成を示す図である。
図1、図2に示したロボット制御装置2は、溶接ロボット1の動作を制御するためのものである。図2に示すように、ロボット制御装置2は、動作制御回路21とインターフェイス回路22とによって構成されている。
動作制御回路21は、図示しないマイクロコンピュータおよびメモリを有している。このメモリには、溶接ロボット1の各種の動作が設定された作業プログラムが記憶されている。また動作制御回路21は、後述のロボット移動速度VRを設定する。動作制御回路21は、上記作業プログラム、上記エンコーダからの座標情報、およびロボット移動速度VR等に基づいて、溶接ロボット1に対して動作制御信号Mcを与える。この動作制御信号Mcにより、各モータ13は回転駆動し、溶接トーチ14を溶接母材Wの所定の溶接開始位置に移動させたり、溶接母材Wの面内方向に沿って移動させたりする。
動作制御回路21には、図示しない操作設定装置が接続されている。この操作設定装置は、ユーザによって各種動作を設定するためのものである。
インターフェイス回路22は、溶接電源装置3と各種信号をやり取りするためのものである。インターフェイス回路22には、動作制御回路21から、電流設定信号Is、出力開始信号On、および送給速度設定信号Wsが送られる。インターフェイス回路22からは、動作制御回路21に、アーク消滅信号Saが送られる。
溶接電源装置3は、溶接ワイヤ15と溶接母材Wとの間に、溶接電圧Vwを印加し、溶接電流Iwを流すための装置であるとともに、溶接ワイヤ15の送給を行うための装置である。図2に示すように、溶接電源装置3は、出力制御回路31、電流検出回路32、アーク消滅検出回路33、送給制御回路34、インターフェイス回路35、および電圧検出回路36を備えている。
インターフェイス回路35は、ロボット制御装置2と各種信号をやり取りするためのものである。具体的には、インターフェイス回路35には、インターフェイス回路22から、電流設定信号Is、出力開始信号On、および送給速度設定信号Wsが送られる。また、インターフェイス回路35からは、インターフェイス回路22に、アーク消滅信号Saが送られる。
出力制御回路31は、複数のトランジスタ素子からなるインバータ制御回路を有する。出力制御回路31は外部から入力される商用電源(たとえば3相200V)をインバータ制御回路によって高速応答で精密な溶接電流波形制御を行う。
出力制御回路31の出力は、一端が溶接トーチ14に接続され、他端が溶接母材Wに接続されている。出力制御回路31は、溶接トーチ14の先端に設けられたコンタクトチップを介して、溶接ワイヤ15と溶接母材Wとの間に溶接電圧Vwを印加し、溶接電流Iwを流す。これにより、溶接ワイヤ15の先端と溶接母材Wとの間にアークaが発生する。このアークaによりもたらされる熱で溶接ワイヤ15が溶融する。そして、溶接母材Wに対して溶接が施されるようになっている。
出力制御回路31には、インターフェイス回路35,22を介して、動作制御回路21からの電流設定信号Is、および出力開始信号Onが送られる。
電流検出回路32は、溶接ワイヤ15に流れる溶接電流Iwを検出するためのものである。電流検出回路32は、溶接電流Iwに対応する電流検出信号Idを出力する。
アーク消滅検出回路33は、アークaが消滅したことを検出する回路である。アーク消滅検出回路33には、電流検出信号Idが入力される。アーク消滅検出回路33は、入力された電流検出信号Idによって溶接電流Iwが0であると判断した場合には、アークaが消滅したと判断する。このとき、アーク消滅検出回路33は、アーク消滅信号Saを出力制御回路31に出力する。また、アーク消滅検出回路33は、インターフェイス回路35,22を介して、アーク消滅信号Saを動作制御回路21にも出力する。
電圧検出回路36は、出力制御回路31の出力端の電圧である溶接電圧Vwを検出するためのものである。電圧検出回路36は、溶接電圧Vwに対応する電圧検出信号Vdを出力制御回路31に出力する。
送給制御回路34は、溶接ワイヤ15の送給を行うための送給制御信号Fcを送給モータ161に出力するものである。送給制御信号Fcは、溶接ワイヤ15の送給速度を示す信号である。また、送給制御回路34には、インターフェイス回路35,22を介して、動作制御回路21からの出力開始信号On、および送給速度設定信号Wsが送られる。
次に、本発明にかかるアーク溶接方法の一例について、図3を参照しつつ説明する。
同図(a)は、ロボット移動速度VRの変化状態を示し、(b)は電流設定信号Isの変化状態を示し、(c)は溶接電流Iwの変化状態を示す。ロボット移動速度VRは、溶接母材Wの面内方向のうちの所定の溶接進行方向(図10に示した従来技術の溶接進行方向Drに対応する)に沿った溶接トーチ14の移動速度である。
まず、外部からの溶接開始信号St(図2参照)が入力されることにより、一般的には、過渡的な溶接開始処理が行われる。溶接開始処理においては、動作制御回路21は、出力開始信号Onを出力制御回路31および送給制御回路34に出力する。出力制御回路31は、溶接ワイヤ15と溶接母材Wとの間に溶接電圧Vwを印加する。これにより、アークaが点弧される。そして、図3に示すように、溶滴移行期間T1とアーク継続期間T2とを繰り返すことにより溶接を行う。溶滴移行期間T1においては、溶接電流Iw1を流すことにより溶滴移行を行い、溶融池を形成する。一方、アーク継続期間T2においては、溶接電流Iw2を流すことにより、溶滴移行をほとんどさせることなく、且つ、アークaを維持しつつ溶接トーチ14を移動させる。以下具体的に説明する。
(1)溶滴移行期間T1(時刻t1〜t2)
溶滴移行期間T1では、従来技術の説明において図9(a)、図11(a)で示した、溶融池Yを形成する処理を行う。溶滴移行期間T1においては、図3(a)に示すように、ロボット移動速度VRを0に設定する。そのため溶接トーチ14は溶接母材Wに対して停止している。溶滴移行期間T1におけるロボット移動速度VRは、本発明にかかる第1の速さの一例に相当する。同図(c)に示すように、溶接電流Iwとして、絶対値の平均値が電流値iw1である交流のパルスの溶接電流Iw1が流れている。溶滴移行期間T1においては、定電圧制御がなされている。定電圧制御では、溶接電流Iwは、溶接ワイヤ15の材質、直径、溶接ワイヤ15の突出し長さ、電極極性等の溶接条件が決定されれば、溶接ワイヤ15の送給速度により定まる。すなわち、溶接電流Iw1は、送給速度設定信号Wsにより設定される。溶接ワイヤ15の送給速度は、たとえば650〜1000cm/minである。また、溶滴移行期間T1は、たとえば0.4〜0.5secである。
図4は、溶接電流Iw1の時間変化を詳細に示す図である。図3においては、理解の便宜上、溶接電流Iw1は簡略化して示しているが、溶接電流Iw1は図4に示すような交流パルス電流である。図4における電流値iw1は、図3における電流値iw1に一致する。図4における時間のスケールは、図3における時間のスケールに比べ極めて小さい。図4において、溶接電流Iwを示す縦軸は、溶接ワイヤ15が陽極となったときに流れる電流をプラスとしている。
本図から理解されるように、溶接電流Iw1は、周期Teにおいて電極プラス極性電流Iepと電極マイナス極性電流Ienとを1回ずつとる。周期Teは、たとえば20msec程度である。電極プラス極性電流Iepは、溶接ワイヤ15が陽極、溶接母材Wが陰極となった状態で流れる電流である。電極プラス極性電流Iepは、プラス極性ピーク電流Ippと、プラス極性ベース電流Ipbとを含む。プラス極性ピーク電流Ippは、電極プラス極性期間Tppの間、流れる。電極プラス極性期間Tppは、たとえば2msecである。プラス極性ピーク電流Ippの絶対値Ieppは、たとえば300〜350Aである。一方、プラス極性ベース電流Ipbは、電極プラス極性期間Tpbの間、流れる。電極プラス極性期間Tpbは、たとえば14msecである。プラス極性ベース電流Ipbの絶対値Iepbは、たとえば50〜100Aである。
電極マイナス極性電流Ienは、溶接ワイヤ15が陰極、溶接母材Wが陽極となった状態で流れる電流である。電極マイナス極性電流Ienは、電極マイナス極性期間Tenの間、流れる。電極マイナス極性期間Tenは、たとえば3.0〜4.0msecである。電極マイナス極性電流Ienの絶対値Ienpは、たとえば50〜100Aである。
プラス極性ピーク電流Ipp、プラス極性ベース電流Ipb、電極マイナス極性電流Ien、電極プラス極性期間Tpp、および電極マイナス極性期間Tenは、所定値に設定される。電極プラス極性期間Tpbは、溶接電圧の平均値が予め定められた溶接電圧設定値と等しくなるようにフィードバック制御される。この制御によってアークaの長さが適正値に制御される。プラス極性ピーク電流Ipp、プラス極性ベース電流Ipb、および電極マイナス極性電流Ienの絶対値について時間平均した値が、電流値iw1に一致する。電流値iw1は、たとえば90Aである。
(2)アーク継続期間T2(時刻t2〜t1)
図3に示すアーク継続期間T2では、従来技術の説明において図11(b),(c)で示した、溶融池Yを冷却する処理を、アークaを継続させつつ行う。アーク継続期間T2は、たとえば0.2〜0.3secである。
(ア)アーク継続期間T2の開始〜アークa消滅までの期間(時刻t2〜tv1)
図3(a)に示すように、アーク継続期間T2の開始時である時刻t2において、ロボット移動速度VRをV2に設定する。これにより溶接トーチ14は、所定の溶接進行方向に沿って移動を開始する。V2は、たとえば100cm/minである。アーク継続期間T2におけるロボット移動速度VRは、本発明にかかる第2の速さの一例に相当する。アーク継続期間T2においては、溶滴移行期間T1と異なり、定電流制御がなされている。同図(b)に示すように、電流設定信号Isは、電流値is1である定電流(すなわち、絶対値の平均値は電流値is1である)が溶接電流Iwとして流れるよう、設定されている。そのため同図(c)に示すように、溶接電流Iwとして、電流値is1で一定の溶接電流Iw2が流れている。電流値is1は、たとえば15〜20A程度である。電流値is1は、溶滴移行が行われにくい程度の小さい値である。また、溶接電流Iw2は、溶接ワイヤ15が陽極、溶接母材Wが陰極となった状態で流れる、いわゆる電極プラス極性電流である。なお溶接ワイヤ15は、溶接母材Wに向かって溶滴移行期間T1における値より小さな値の送給速度で送給されている(図示略)。この送給速度は、たとえば70cm/minである。
(イ)アークaの消滅〜アークaの再発生までの期間(時刻tv1〜tr1)
時刻tv1において、アークaが消滅する。すると、同図(c)に示すように、溶接電流Iwが0になる。図2の電流検出回路32は、溶接電流Iwが0であるとする電流検出信号Idを、アーク消滅検出回路33に出力する。アーク消滅検出回路33は、入力されている電流検出信号Idから、溶接電流Iwが0であると判断する。そして、アーク消滅検出回路33は、アークaが消滅したと判断する。そして、アーク消滅検出回路33は、アーク消滅信号Saを、出力制御回路31および動作制御回路21に出力する。
(ウ)アークaの再発生〜アーク継続期間T2の終了時までの期間(時刻tr1〜t1)
図2の動作制御回路21はアーク消滅信号Saを入力すると、図3(b)に示すように、電流設定信号Isを、電流値is1から電流値is2にわずかに上昇させる。電流値is2は、電流値is1よりもたとえば1〜10A程度大きい。これと同時に、送給されている溶接ワイヤ15が溶接母材Wと接触してアークaが再発生する。すると同図(c)に示すように、溶接電流Iw2は、電流値is2で流れ始める。なお、電流設定信号Isを電流値is1から電流値is2へと上昇させることは、本発明において第2の値をアークが消滅した時以前の値より大きい値に変化させることの一例に相当する。
その後、時刻t1からは、再度、溶滴移行期間T1が開始する。このようにして、溶滴移行期間T1とアーク継続期間T2とが繰り返される。以後、溶接電流Iw2は、電流値is2で流れる。なお、再度アークaが消滅した場合には、上述の工程を再度行ってもよい。
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態によれば、時刻tr1以降、溶接電流Iw2は、電流値is1より大きい電流値is2で流れる。そのため、時刻tr1以降、アーク継続期間T2においてアークaが消滅しにくくなる。これにより、溶接母材Wにおけるスパッタの発生を抑制することができる。その結果、溶接母材Wに形成されるウロコ状のビードの外観をよりきれいにすることができる。
また、アークaが再発生する時に、電流設定信号Isを上昇させている。こうすることで、アークaが再発生した時からアークaが消滅しにくい状態にすることができる。その結果、アークaが再発生した時からスパッタの発生を抑制でき、さらにビードの外観をきれいにすることが期待できる。
本実施形態によれば、図3(a)に示すように、溶滴移行期間T1においては、溶接トーチ14を溶接母材Wに対して停止させ、アーク継続期間T2においてのみ、溶接トーチ14を溶接母材Wに対して移動させている。これは、よりきれいな外観のビードを形成するのに好適である。
図4に示したように、溶接電流Iw1は、交流のパルス電流である。そのため、溶滴移行期間T1における溶接母材Wへの入熱を抑制できる。これは、溶接母材Wがたとえばアルミニウムからなる薄板である場合に好適である。
また、溶接電流Iw2は、いわゆる電極プラス極性の電流である。溶接電流Iw2が、溶接ワイヤ15が陰極となり溶接母材Wが陽極となった状態で流れる電極マイナス極性電流であったならば、溶接ワイヤ15の溶融量が多く、溶滴が溶接母材Wに落ちやすい、といった不都合が生じやすい。だが、本実施形態では、溶接電流Iw2は、電極マイナス極性電流でなく電極プラス極性電流であるので、このような不都合が生じにくい。
また、本実施形態にかかる方法を、溶接母材Wを水平方向に対して傾けた状態で、用いてもよい。このようにすると、溶滴が溶接母材Wに落ちにくい。その結果、よりきれいなビードを形成することができる。
なお、上記実施形態においては、1度アークaが消滅しただけで電流設定信号Isを上昇させた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数回アークaが消滅した場合にのみ、電流設定信号Isを上昇させてもよい。
図5は、本発明の第2実施形態を示している。なお、同図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。同図(d)は、タイマTiの時間変化を示している。本実施形態は、一度アークaが消滅した後所定時間内に再びアークaが消滅した場合に、電流設定信号Isを上昇させている点において、第1実施形態と相違する。以下、具体的に説明する。ここでは溶滴移行期間T1における工程は第1実施形態と同様であるので説明を省略し、アーク継続期間T2における工程について説明する。
(ア)アーク継続期間T2の開始〜最初のアークa消滅までの期間(時刻t2〜tv1)
同図(a)に示すように、時刻t2において、第1実施形態と同様、ロボット移動速度VRをV2に設定する。これにより溶接トーチ14は、所定の溶接進行方向に沿って移動を開始する。同図(b)に示すように電流設定信号Isは、電流値is1である定電流が溶接電流Iw2として流れるよう、設定されている。そのため同図(c)に示すように、溶接電流Iwとしては、電流値is1である一定の溶接電流Iw2が流れている。
(イ)最初のアークaの消滅〜アークaの再発生までの期間(時刻tv1〜tr1)
時刻tv1において、アークaが消滅する。すると、同図(c)に示すように、溶接電流Iwが0になる。図2のアーク消滅検出回路33は、入力した電流検出信号Idにより、アークaが消滅したと判断する。そして、アーク消滅検出回路33は、アーク消滅信号Saを、出力制御回路31および動作制御回路21に出力する。図5には示していないが、アークaが消滅している間(たとえば時刻tv1〜tr1の期間)、アーク消滅信号Saは常に出力されている。
(ウ)アークaの再発生〜再度のアークaの消滅までの期間(時刻tr1〜tv2)
時刻tr1において、送給されている溶接ワイヤ15が溶接母材Wと接触してアークaが再発生する。すると図2のアーク消滅検出回路33は、アーク消滅信号Saの出力を停止する。そして、アーク消滅信号Saの入力が停止すると動作制御回路21において、図5(d)に示すように、タイマTiをOn状態にする。タイマTiは、時刻tr1から期間ΔTが経過するまで、On状態となる。期間ΔTは、たとえば20〜100msecである。
(エ)再度のアークaの消滅〜アークaの再発生までの期間(時刻tv2〜tr2)
時刻tv2において再びアークaが消滅する。すると、図5(c)に示すように時刻tv1における場合と同様、溶接電流Iwが0になる。そして図2の動作制御回路21にはアーク消滅信号Saが入力される。そして動作制御回路21において次のプロセスを実行する。すなわち、動作制御回路21は、タイマTiがOnとなっている場合に再びアーク消滅信号Saが入力されたときには、電流設定信号Isを上昇させる。一方、動作制御回路21は、再びアーク消滅信号Saが入力されたがタイマTiがOffとなっている場合には、電流設定信号Isを上昇させない。図5に示すように、本実施形態では、再びアーク消滅信号Saが動作制御回路21に入力された時刻tv2においては、タイマTiがOnとなっている。そのため、同図(b)に示すように、電流設定信号Isを、電流値is1から電流値is2へと上昇させる。
(オ)アークaの再発生〜アーク継続期間T2の終了時までの期間(時刻tr2〜t1)
時刻tr2において、アークaが再発生する。上述のように電流設定信号Isを電流値is1から電流値is2へと上昇させているから、溶接電流Iw2は電流値is2で流れる。
その後時刻t1から、溶滴移行期間T1とアーク継続期間T2とを繰り返す。なお、再度アークaが消滅した場合には、さらに上述の工程を行ってもよい。
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態によれば、時刻tr2以降、溶接電流Iw2は、電流値is1より大きい電流値is2で流れる。そのため、時刻tr2以降、アーク継続期間T2においてアークaが消滅しにくくなる。これにより、溶接母材Wにおけるスパッタの発生を抑制することができる。その結果、溶接母材Wに形成されるウロコ状のビードの外観をよりきれいにすることができる。
本実施形態においては、アークaがただ一度だけ消滅したことをもって、電流設定信号Isを上昇させているのではない。そのため、過度に溶接電流Iw2が大きくなることを抑制できる。これにより、アーク継続期間T2において溶接ワイヤ15や溶接母材Wが溶融してしまうことを抑制できる。
本実施形態においては、期間ΔTにアークaが再度消滅した場合に、電流設定信号Isを上昇させている。すなわち、本実施形態では、期間ΔTにアークaが1回消滅する程度の頻度と比べてアークaの消滅する頻度が大きい場合に、電流設定信号Isを上昇させている。そのため、期間ΔTを適当な値に調整することで、アークaが消滅する頻度がさほど大きくない場合には電流設定信号Isを上昇させない、といった処理が可能となる。これにより、溶接電流Iw2が過度に大きくなることをさらに抑制できる。その結果、アーク継続期間T2において、さらに溶接ワイヤ15や溶接母材Wが溶融することを抑制できる。
なお、本実施形態では、期間ΔTに1回アークaが消滅しただけで、電流設定信号Isを上昇させる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、期間ΔTに2回や3回アークaが消滅した場合にのみ、電流設定信号Isを上昇させてもよい。また本実施形態では、アークaの消滅した時刻tr1から期間ΔTが開始するものとしたが、本発明はこれに限られない。たとえば、期間ΔTが時刻t2から開始してもよい。そして、期間ΔTをアーク継続期間T2に一致させてもよい。
また、第1実施形態で述べたその他の利点と同様の利点も有する。
図6は、本発明の第3実施形態を示している。なお、同図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。同図では、アークaが消滅したアーク継続期間T2を、アーク継続期間T2aとしている。アーク継続期間T2aに続くアーク継続期間T2を、アーク継続期間T2bとしている。アーク継続期間T2bの開始時刻を、時刻t2bとしている。本実施形態は、アークaが消滅したアーク継続期間T2aにおいて電流設定信号Isを電流値is2に上昇させておらず、アーク継続期間T2bから電流設定信号Isを電流値is2に上昇させている点において、第1実施形態と異なる。
このような構成によれば、時刻t2b以降、アーク継続期間T2においてアークaが消滅しにくくなる。これにより、溶接母材Wにおけるスパッタの発生を抑制することができる。その結果、本実施形態によっても、溶接母材Wに形成されるウロコ状のビードの外観をよりきれいにすることができる。
図7は、本発明の第4実施形態を示している。なお、同図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。図7は(a)ロボット移動速度、(b)電流設定信号Is、(c)溶接電流Iw、に加え、(e)溶接電圧Vw、の変化状態をそれぞれ示している。図7においては、アーク継続期間T2における各変化状態のみを記載しており、溶滴移行期間T1における各変化状態は、上記実施形態と同様であるから記載を省略している。
本実施形態は、アークaが消滅した後に電流設定信号Isを上昇させているのではなく、アークaが消滅する兆候を検知して電流設定信号Isを上昇させている点において、上記の実施形態と相違する。本実施形態では、アークaが消滅する直前に溶接電圧Vwが過度に上昇することに着目して、アークaが消滅する兆候を検知している。以下具体的に説明する。
図7(b)、図7(c)に示すように、電流設定信号Isを電流値is1に設定し、電流値is1の溶接電流Iw2を流していると、同図(e)に示すように、時刻tu1において溶接電圧Vwが閾値Vthを超える。これは、アークaが消滅する兆候である。図2の出力制御回路31には、溶接電圧Vwに対応する電圧検出信号Vdが入力されている。そして、電圧検出信号Vdの入力により、出力制御回路31は、溶接電圧Vwが閾値Vthを超えたと判断する。溶接電圧Vwが閾値Vthを超えたと判断すると出力制御回路31は、図7(b)に示すように、時刻tu2において電流設定信号Isを電流値is1から電流値is2へと上昇させる。そして、同図(c)に示すように、溶接電流Iwは電流値is2で流れることとなる。
本実施形態によれば、上述の実施形態と同様に、電流設定信号Isを上昇させた後には、アーク継続期間T2においてアークaが消滅しにくくなる。これにより、溶接母材Wにおけるスパッタの発生を抑制できる。その結果、溶接母材Wに形成されるビードの外観をよりきれいにすることができる。
さらに、電流設定信号Isの上昇は、アークaが消滅する兆候である、溶接電圧Vwの上昇に基づいてなされている。そのため、アークaが消滅する前に、電流設定信号Isを上昇させることにより、アークaの消滅を防ぐことが可能となる。これにより、さらに溶接母材Wに形成されるビードの外観をきれいにすることができる。ただし、これは結果的にアークaが消滅する場合を本発明の技術的範囲から除外する趣旨ではない。
本実施形態では、溶接電圧Vwが閾値Vthを超えたことによりアークaが消滅する兆候を検知する例を示したが、溶接電圧Vwの単位時間当たりの変化量dVw/dtが閾値dVthを超えたことによりアークaが消滅する兆候を検知してもよい。このようにしてアークaが消滅する兆候を検知すると、前述のように電流設定信号Isを電流値is1から電流値is2に上昇させればよい。
本発明の範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の具体的構成は、種々に設計変更自在である。上記実施形態では、溶接電流が0となったことにより、アークが消滅したことを検知したが、本発明はこれには限られない。たとえばアークが発生している部分を撮影した画像もしくは映像の変化を解析することにより、アークの消滅を検知してもよい。
また、よりきれいなビードの外観を形成するためには、溶滴移行期間T1においてロボット移動速度VRを0とするのが好ましいが、本発明はこれに限られない。たとえば、溶滴移行期間T1におけるロボット移動速度VRを、アーク継続期間T2におけるロボット移動速度VR(V2)よりも小さく、且つ、0より大きい値に設定してもよい。そして、ロボット移動速度VRに応じて、溶滴移行期間T1とアーク継続期間T2を適宜調整してもよい。
上記では、溶接電流Iw1が交流のパルス電流である例を示したが、本発明はこれに限られず、溶接電流Iw1が直流の定電流等であってもよい。もちろん、溶接電流Iw2についても同様のことがいえる。
A 溶接システム
1 溶接ロボット
11 ベース部材
12 アーム
12a 手首部
13 モータ
14 溶接トーチ
15 溶接ワイヤ(消耗電極)
16 ワイヤ送給装置
161 送給モータ
2 ロボット制御装置
21 動作制御回路(消耗電極移動手段)
22 インターフェイス回路
3 溶接電源装置
31 出力制御回路(電流制御手段)
32 電流検出回路
33 アーク消滅検出回路(検知手段)
34 送給制御回路
35 インターフェイス回路
36 電圧検出回路
W 溶接母材(母材)
St 溶接開始信号
On 出力開始信号
Sa アーク消滅検出信号
Ws 送給速度設定信号
Mc 動作制御信号
Fc 送給制御信号
VR ロボット移動速度
Iw,Iw1,Iw2 溶接電流
iw1 電流値(第1の値)
Vw 溶接電圧
Vth 閾値
T1 溶滴移行期間(第1の期間)
T2 アーク継続期間(第2の期間)
Ti タイマ
Iep 電極プラス極性電流
Ien 電極マイナス極性電流
Ipp プラス極性ピーク電流
Ipb プラス極性ベース電流
Te 周期
Tpp,Tpb 電極プラス極性期間
Ten 電極マイナス極性期間
ΔT 期間
Is 電流設定信号
is1,is2 電流値(第2の値)

Claims (11)

  1. 消耗電極と母材との間に溶接電流を、絶対値の平均値が第1の値であるように流すことにより、アークを発生させつつ溶滴移行させる第1工程と、
    上記溶接電流を、絶対値の平均値が上記第1の値より小さい第2の値であるように流し、上記アークが発生している状態を継続させる第2工程と、を備え、
    上記第1工程と上記第2工程とを繰り返すアーク溶接方法であって、
    上記第2工程において上記アークが消滅した場合、上記第2の値を上記アークが消滅した時以前の値より大きい値に変化させる工程と、
    上記消耗電極と上記母材との間に上記アークを再発生させる工程と、をさらに備え
    特定第2工程の開始時から上記特定第2工程の終了時までの間常に、上記第2の値を上記アークが消滅した時以前の最大値より大きい値に維持し、
    上記特定第2工程は、上記アークが消滅した時点の第2工程よりも後の第2工程であること特徴とする、アーク溶接方法。
  2. 上記変化させる工程の後に、上記アークを再発生させる工程を実行する、請求項1に記載のアーク溶接方法。
  3. 上記変化させる工程は、上記アークが複数回消滅した場合にのみ実行する、請求項1または2に記載のアーク溶接方法。
  4. 上記変化させる工程は、上記アークが消滅した時から一定時間内に所定回数上記アークが消滅した場合にのみ実行する、請求項1ないし3のいずれかに記載のアーク溶接方法。
  5. 消耗電極と母材との間に溶接電流を、絶対値の平均値を第1の値であるように流すことにより、アークを発生させつつ溶滴移行させる第1工程と、
    上記溶接電流を、絶対値の平均値が上記第1の値より小さい第2の値であるように流し、上記アークが発生している状態を継続させる第2工程と、を備え、
    上記第1工程と上記第2工程とを繰り返すアーク溶接方法であって、
    上記第2工程において上記アークが消滅する兆候が検知された場合、上記第2の値を、上記兆候が検知された時以前の値より大きい値に変化させる工程をさらに備え
    特定第2工程の開始時から上記特定第2工程の終了時までの間常に、上記第2の値を上記アークが消滅した時以前の最大値より大きい値に維持し、
    上記特定第2工程は、上記アークが消滅する兆候が検知された時点の第2工程よりも後の第2工程であること特徴とする、アーク溶接方法。
  6. 上記第1工程において、上記母材の面内方向に沿って、上記消耗電極は上記母材に対して第1の速さで相対移動しており、
    上記第2工程において、上記面内方向に沿って、上記消耗電極は上記母材に対して上記第1の速さより大きい第2の速さで相対移動している、請求項1ないし5のいずれかに記載のアーク溶接方法。
  7. 上記第1の速さは0である、請求項6に記載のアーク溶接方法。
  8. 上記第1工程における上記溶接電流は、交流パルス電流である、請求項1ないし7のいずれかに記載のアーク溶接方法。
  9. 消耗電極と母材との間に溶接電流を流すことにより、アークを発生させ溶接を行うアーク溶接システムであって、
    上記溶接電流の絶対値の平均値を第1の値に設定する第1の期間と、上記溶接電流の絶対値の平均値を第1の値より小さい第2の値に設定する第2の期間と、を繰り返し発生させる電流制御手段と、
    上記アークの消滅を検知する検知手段と、を備え、
    上記電流制御手段は、上記第2の期間において上記アークが消滅したと上記検知手段が判断した場合、上記第2の値を上記アークが消滅した時以前の値より大きい値に変化させ
    特定第2の期間の開始時から上記特定第2の期間の終了時までの間常に、上記第2の値を上記アークが消滅した時以前の最大値より大きい値に維持し、
    上記特定第2の期間は、上記アークが消滅した時点の第2の期間よりも後の第2の期間であることを特徴とする、アーク溶接システム。
  10. 上記電流制御手段は、上記アークが複数回消滅したことを上記検知手段が検知した場合にのみ、上記第2の値を上記アークが消滅した時以前より大きい値に変化させる、請求項9に記載のアーク溶接システム。
  11. 上記第1の期間において、上記母材の面内方向に沿って、上記消耗電極を上記母材に対して第1の速さで相対移動させ、
    上記第2の期間において、上記面内方向に沿って、上記消耗電極を上記母材に対して上記第1の速さより大きい第2の速さで相対移動させる消耗電極移動手段をさらに備える、請求項9または10に記載のアーク溶接システム。
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