JP5465915B2 - 薄膜導電膜の形成方法 - Google Patents

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本発明は薄膜導電膜の形成方法に関し、例えば、強誘電体や太陽電池などの電極、抵抗体として機能する薄膜導電膜の形成方法に関する。
従来、電子部品の電極や配線を構成する材料として厚膜導電ペーストが用いられており、このような厚膜導電ペーストにはガラス粉末が添加される場合がある。厚膜導電ペーストにガラス粉末を添加することで、
(1)導電膜の焼成時に軟化流動して導電粉末の焼結を促進させる
(2)厚膜導電膜の密着強度を向上させる
などの効果が得られる。また、厚膜導電ペースト中に添加されるガラス粉末としては、鉛系ガラスが用いられているが、近年では環境に配慮して鉛レス化が求められるようになっている。
一方、導電性の金属成分として、例えば、特許文献1に記載されているようにルテニウムを用いる例が知られているが、ルテニウムなどの希少金属(レアメタル)は、その価格変動が製品原価に大きく影響する。そのため、導電ペースト中でのレアメタルの使用量を極力控えたいとするのが一般的である。その一方で、ルテニウムの使用量を抑えたとしても、導電膜特性の安定は不可欠であり、導電膜の平面形状や厚さ分布など、その形状の安定化を図ることが必要となる。
特開2004−88019号公報
上述した従来の厚膜導電ペーストは、例えば、特許文献1では酸化ルテニウム化合物とガラス粉とを(70〜90):(5〜30)の重量比で混合しているため、大量のルテニウムを必要とする。また、ガラス粉末を含有していることから、例えば800℃程度の焼成が必要となり、材料費を含めた製造コストが問題となる。
さらに各種電子デバイスの製造にあっては、酸化物材料の結晶化などのために熱処理が行われることがある。その際、電子デバイスに形成された導電膜に通常の金属材料を使用すると、その表面が酸化されてしまい、その特性が著しく変動する。このため、金属材料ではなく酸化物の導電膜が用いられることがあり、安定した酸化物金属による導電膜の形成が切望されている。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、その表面状態が平滑で均一であり、導電層を構成するルテニウムの使用量を抑えることが可能な薄膜導電膜の形成方法を提供することである。
上記の目的を達成し、上述した課題を解決する一手段として以下の構成を備える。すなわち、本発明に係る薄膜導電膜の形成方法は、絶縁性の基体に向けてチタンまたはスズ材料を含有する第1の前駆体溶液を噴霧することによって酸化チタンまたは酸化スズからなるバッファ層を形成し、そのバッファ層にルテニウムを含有する第2の前駆体溶液を噴霧することによって薄膜の酸化ルテニウム導電膜を形成することを特徴とする。
例えば、あらかじめ前記基体を加熱して所定の基体温度とした後、加熱しながら、その基体に向けて前記第1の前駆体溶液および前記第2の前駆体溶液を噴霧することを特徴とする。例えば、前記基体温度は190℃〜500℃であることを特徴とする。また、例えば、前記第1の前駆体溶液および前記第2の前駆体溶液の噴霧をそれぞれ複数回行うことを特徴とする。
本発明によれば、平滑で均一、かつ低抵抗値の酸化ルテニウム導電膜を形成でき、その薄膜導電膜の形成に要するルテニウムの使用量を低減できるとともに、各種デバイスの低背化や鉛レス化も可能になる。
本発明に係る実施の形態例における導電膜の着膜(成膜)工程を時系列で示したフローチャートである。 本発明に係る実施例における導電膜の着膜工程で使用する噴霧装置の概略構成を示す図である。 本発明に係る実施例における基板および被膜の断面構造を示す図である。 実施例1と比較例1のコンダクタンスを示すグラフである。 実施例2,3および比較例2のコンダクタンスを示すグラフである。 実施例4,5および比較例3のコンダクタンスを示すグラフである。 実施例6,7および比較例4のコンダクタンスを示すグラフである。
本発明者らは、基板表面にルテニウムの粉末を含有した溶液を複数回にわたって吹き付けることで酸化ルテニウムの被膜を形成するにあたり、吹き付けの初期に得られた被膜が導電性に寄与しないことを見出し、本発明をするに至った。以下、本発明の一実施の形態例について添付図面および表を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態例に係る導電膜の着膜(成膜)工程を時系列で示したフローチャートである。図1に示す着膜工程において、最初のステップS1では、導電膜となるルテニウムの金属粉末を溶媒で溶解し、前駆体溶液A(第2の前駆体溶液)を作製する。また、後述するバッファ層を形成するための前駆体溶液B(第1の前駆体溶液)を準備する。前駆体溶液Bは、バッファ層を構成する金属粉末(第1の金属材料)と溶媒とを混合し、所定濃度の溶液としたものである。
ステップS3では、後述する噴霧工程に入る前段階として、成膜対象である基板(基体)をあらかじめ所定の温度になるまで加熱する。続くステップS5において、所定の温度に加熱された基板に向けて、先ず、前駆体溶液Bを噴霧し、次に前駆体溶液Aを噴霧する。ステップS7は着膜工程であり、上記ステップS5で噴霧された前駆体溶液Aまたは前駆体溶液Bが基板5の表面に到達して、所定の被膜が形成される。
図2は、本実施の形態例に係る導電膜の着膜工程で使用する噴霧(スプレー)装置の概略構成を示している。図2において、容器2内には、上述した前駆体溶液Aまたは前駆体溶液Bのいずれかが貯留されており、配管3を通じて噴射器1に導入される。この噴射器1により前駆体溶液Aまたは前駆体溶液Bが、空気とともに霧化され、ノズル7より基板5に向けて噴霧される。テーブル4は、約500℃程度に加熱可能なヒータ9を内蔵している。ノズル7は、基板5の中心部から垂直方向上部に位置し、ノズル7と基板5との間隔は、成膜条件や成膜環境などに応じて適宜変更できるようになっている。
図3は、図1に示す着膜(成膜)工程により完成した皮膜構造体(基板および被膜の断面構造)を示す図である。具体的には、この皮膜構造体は、基板5の上に前駆体溶液Bによるバッファ層10が形成され、バッファ層10の上に前駆体溶液Aによる導電膜11が形成された構造を示している。
以下、本発明に係る薄膜導電膜の形成方法について、実施例およびその効果などについて詳細に説明する。最初に、本発明の実施例および比較例を作成するための前駆体溶液の作成について説明する。前駆体溶液Aとして、例えばルテニウムを含有する溶液を準備する。ここでは、金属粉末としてのトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)0.4gと、溶媒としてのトルエン10.125gとを5分間、攪拌混合して前駆体溶液Aを得た。ルテニウムの溶解性や基板との固着性などを考慮してトルエンを選択した。溶媒はトルエンに限定されないが、好ましくは80℃程度以下の低沸点の溶媒を用いる。なお、さらに均一に混合するために超音波を用いてもよい。かかる金属材料と溶媒との混合により、0.086mol/Lの濃度を有する前駆体溶液Aを作成した。
前駆体溶液Bは、チタンを主な金属成分として含有する前駆体溶液b1と、スズを主な金属成分として含有する前駆体溶液b2の2種類を用意した。前駆体溶液b1は、75wt%のチタニウム−ジ−イソプロポキシド−ビス−アセチルアセトナトからなるIPA溶液と、溶媒であるトルエンを混合したものである。前駆体溶液b2は、ジ−n−ブチル−ジラウリルスズと、溶媒であるトルエンを混合したものである。前駆体溶液b1,b2の濃度は、いずれも0.086mol/Lとした。また、噴霧後の熱分解速度を同一とするため、前駆体溶液A,Bは、どちらも金属モル濃度が略同じ濃度となるようにした。
本発明の実施例で使用する基板5として、石英基板、無アルカリガラス基板、アルミナ96%基板、アルミナ99%基板の4種類を準備した。
本発明の実施例1では、最初に、図2に示すテーブル4に基板5を載置した。基板5として石英基板(ガラス基板)を用いた。次に、容器2内には、上述した前駆体溶液b1を入れて設置した。ヒータ9の温度を450℃に設定して、噴霧する前にあらかじめ基板5を加熱した。次に、加熱した状態の基板5に対して前駆体溶液b1を噴霧した。あらかじめ基板5を加熱してあるため、噴霧した前駆体溶液に含まれる溶媒が基板5の表面に到達することで蒸発し、金属化合物が熱分解され、基板5には前駆体溶液に含まれる金属の酸化膜であるバッファ層が形成される。なお、基板温度が150℃程度では熱分解が起こらない。そのため、基板5の加熱温度は190℃以上とすることが好ましい。本実施例では、噴霧を3秒間隔で、10回行なった。以上の工程により基板5の上に酸化チタン(TiO2)のバッファ層10を形成した。
次に、上述した前駆体溶液Aを容器2に入れて設置した。ヒータ9は450℃に設定して、基板5が加熱された状態で、バッファ層10の表面に前駆体溶液Aを噴霧した。あらかじめ基板5を加熱してあるため、噴霧した前駆体溶液Aに含まれる溶媒が基板5若しくはバッファ層に到達することで蒸発し、有機金属化合物が熱分解されて、バッファ膜10の表面に酸化ルテニウムの導電膜11が形成される。なお、基板温度が150℃程度では熱分解が起こらず、600℃以上では、RuO2膜が揮発してしまう。そのため、基板5の加熱温度は190℃〜500℃とすることが好ましい。また、実際にはRuO2膜形成後に、基板5をリフロー等で加熱することがある。その場合、RuO2膜の特性変化の抑制など、膜の安定化のためには、基板5の加熱温度を300〜450℃程度とすることが、より好ましい。前駆体溶液Aの噴霧は、所定の時間間隔をおいて複数回を行う。本実施例では3秒間隔で噴霧し、噴霧の回数が異なるサンプルを用意して、それぞれの導電性を確認した。
本発明の実施例2では、上記実施例1において、基板5を無アルカリガラス基板とし、前駆体溶液b1を前駆体溶液b2に変更し、スプレー回数を100回とし、酸化スズ(SnO2)のバッファ層10を形成するとともに、その厚みを増すようにした例である。それ以外の条件は実施例1と同じである。
本発明の実施例3は、上記実施例1において、基板5を無アルカリガラス基板とし、前駆体溶液b1のスプレー回数を100回にして、酸化チタン(TiO2)のバッファ層10の厚みを増した例である。それ以外の条件は実施例1と同じである。
本発明の実施例4は、上記実施例1において、基板5をアルミナ99%基板とし、前駆体溶液b1のスプレー回数を100回にすることで、酸化チタン(TiO2)のバッファ層10の厚みを増した例である。それ以外の条件は実施例1と同じである。
本発明の実施例5は、上記実施例1において、基板5をアルミナ99%基板とし、前駆体溶液b1を前駆体溶液b2に変更し、前駆体溶液b2のスプレー回数を100回として、バッファ層10を酸化スズ(SnO2)にするとともに、その厚みを増すようにした例である。それ以外の条件は実施例1と同じである。
本発明の実施例6は、上述した実施例1において、基板5をアルミナ96%基板とし、前駆体溶液b1のスプレー回数を100回にすることで、酸化チタン(TiO2)のバッファ層10の厚みを増した例である。それ以外の条件は実施例1と同じである。
本発明の実施例7は、上記実施例1において、基板5をアルミナ96%基板とし、前駆体溶液b1を前駆体溶液b2に変更し、前駆体溶液b2のスプレー回数を100回として、バッファ層10を酸化スズ(SnO2)にするとともに、その厚みを増すようにした例である。それ以外の条件は実施例1と同じである。
比較例1〜4
本発明の実施例との比較のため、比較例としてバッファ層10を形成せずに、基板5に直接、導電層11を形成した。比較例1は、石英(SiO2)基板を用いており、比較例2は無アルカリ(Al23−SiO2−OR:Rは二価金属)ガラス基板を用いている。これらの基板は、基板の表面状態が異なるため、着膜の状態にも相違が生じる。このため、両基板に形成された導電膜は、例えば噴霧の回数が同じであってもコンダクタンスに相違が生じる。比較例3は、基板5としてアルミナ99%基板を用いた例である。比較例4は、基板5としてアルミナ96%基板を用いた例である。バッファ層10を形成しないこと以外は、上述の実施例1と同様に作成した。
表1は、上述した実施例および比較例の主要な構成を示したものである。
Figure 0005465915
図4は、実施例1と比較例1について、導電層11を形成する際の噴霧回数の変化(すなわち、導電層11の厚みの変化であり、噴霧の回数が多いほど厚い層となる。)に伴うコンダクタンスを示している。比較例1については、噴霧回数が5回までのサンプルについてコンダクタンスを得ることができない、すなわち、電気的抵抗を発現することができていない。そして、6回およびそれ以上の噴霧回数のサンプルについてコンダクタンスを得ることができている。従って、5回までに噴霧された前駆体溶液Aに含まれる金属成分は、導電層11を構成する上で導電性に寄与していないと考えられ、5回目までの噴霧により形成される層を、別の材料に置き換えることができれば、ルテニウムの使用量を削減することができると考えられる。
なお、5回目までのスプレーにより形成された導電層11がコンダクタンスを発現しない理由としては、基体との結晶構造の不整合によりコンダクタンスを発現するために必要な結晶構造が得られないことや、基体と導電成分と濡れ性の違いから導電成分が島状に点在することとなり、酸化金属の結晶粒同士が接触せずコンダクタンスが得られないこと、などの理由が考えられる。
また、図4より、実施例1については、スプレー回数が1回のサンプルからコンダクタンスが得られており、電気的抵抗を発現できていることを示している。比較例1に比べて、スプレー回数が少ない段階からコンダクタンスが得られた理由としては、基体との結晶構造の不整合を、結晶構造の似た酸化金属が橋渡しとなり構造上のマッチングが得られたことや、導電成分とバッファ層成分の濡れ性が向上し、導電成分の結晶粒同士が接触してコンダクタンスが得られたこと、などの理由が考えられる。このように、バッファ層10を形成することにより、導電層11を構成するルテニウムの使用量を削減することができる。
図5は、実施例2、実施例3および比較例2について、導電層11を形成する際のスプレー回数の変化(すなわち、導電層11の厚みの変化)に伴うコンダクタンスを示している。実施例2,3においては、比較例2と比べて、スプレー回数の少ない段階から高いコンダクタンスが得られている。すなわち、バッファ層を設けることで、より少ない回数のスプレーによって、バッファ層を設けない場合と同等のコンダクタンス(または、抵抗値)を得ることができる。従って、導電層11を構成するルテニウムの使用量を削減することができる。
図6は、実施例4、実施例5および比較例3について、また、図7は、実施例6、実施例7および比較例4について、導電層11を形成する際のスプレー回数の変化(すなわち、導電層11の厚みの変化)に伴うコンダクタンスを示している。図6および図7より、バッファ層を設けることで、比較例3,4と比べて、スプレー回数の少ない段階から高いコンダクタンスが得られていることがわかる。従って、前述と同様、導電層11を構成する金属材料の使用量を削減することができる。
また、図5、図6および図7から、基板の種類にかかわらず、バッファ層を設けることで金属材料の使用量を削減することができる、という効果があることがわかる。なお、以上の説明では、基体として、板状の基板を用いる例について説明したが、これに限定されず、例えば棒状など、様々な形状の基体に適用できる。
以上説明したように、本発明に係る薄膜導電膜の形成方法では、導電層およびバッファ層の形成に使用する前駆体溶液A,Bには鉛ガラスを使用しないので、環境に悪影響を及ぼすとともに人体にも有害な鉛を排除することができ、資源であるレアメタルの使用量も低減することができる。また、従来のガラスを含有した導電ペーストでは、800℃程度の焼成温度が必要であったが、本発明では、基板を400℃程度の温度で加熱することで成膜できるので、導電膜の製造コストを低く抑えることができる。さらには、透明性を有する薄膜導電膜の形成が可能であり、例えばディスプレイや太陽電池など、透明電極が用いられる様々な用途への利用が可能となる。
1 噴射器
2 容器
3 配管
4 テーブル
5 基板
7 ノズル
9 ヒータ
10 バッファ層
11 導電膜

Claims (4)

  1. 絶縁性の基体に向けて、チタンまたはスズ材料を含有する第1の前駆体溶液を噴霧することによって酸化チタンまたは酸化スズからなるバッファ層を形成し、そのバッファ層にルテニウムを含有する第2の前駆体溶液を噴霧することによって薄膜の酸化ルテニウム導電膜を形成することを特徴とする薄膜導電膜の形成方法。
  2. あらかじめ前記基体を加熱して所定の基体温度とした後、加熱しながら、その基体に向けて前記第1の前駆体溶液および前記第2の前駆体溶液を噴霧することを特徴とする請求項1に記載の薄膜導電膜の形成方法。
  3. 前記基体温度は190℃〜500℃であることを特徴とする請求項に記載の薄膜導電膜の形成方法。
  4. 前記第1の前駆体溶液および前記第2の前駆体溶液の噴霧をそれぞれ複数回行うことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の薄膜導電膜の形成方法。
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