以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を説明する。
<静電荷像現像用トナー>
実施形態にかかる静電荷像現像用トナーは、結着樹脂と離型剤とを少なくとも有し、アミノ酸および以下に示すオキシ酸を含有することを特徴とする。ここで、n(炭素数)は0〜8の範囲である。
一般に、オイルレス定着工程等において、ベタ画像形成後の定着ロール表面には離型剤が多く付着している。また、トナーを構成する離型剤はトナー表面近傍に存在しており、定着ロールに付着した離型剤と相溶しやすいので、特にベタ画像形成後にハーフトーン画像を定着するときにオフセットが発生しやすい。ここで、オフセットとは、トナー画像の一部が定着ロールに付着し取り去られる現象をいう。
上記実施形態にかかる静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」という場合がある)においては、製造中に少なくとも上記オキシ酸とアミノ酸とを添加してトナー粒子中に離型剤が入り込む程度を制御することによりトナー表面の離型剤の量を調整し、離型剤のトナー粒子からの染み出しを適度に調整しつつ、定着ロールに付着した離型剤との相溶を抑制している。また、アミノ酸とオキシ酸とが離型剤近傍に残留し、定着時にアミド化合物となることによりオキシ酸と結着樹脂との相溶性を抑制することで結着樹脂の軟化を抑制し、定着時に定着ロールへの付着性が高くなることを防止している。以上の構成により、オイルレス定着工程等において、ベタ画像形成後にハーフトーン画像を定着する場合等のオフセットの発生を抑制している。
このように、実施形態にかかる静電荷像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂と離型剤とを有し、オキシ酸とアミノ酸を含有するという条件を満たすことにより、オフセットを抑制した定着画像を形成する。ここで、上記オキシ酸とアミノ酸とは、静電荷像現像用トナー製造時に離型剤分散液に添加するのが好適である。この際、オキシ酸とアミノ酸とは等量添加することが好適である。このオキシ酸とアミノ酸とは、高速液体クロマトグラフ(HPLC)により抽出し、NMR分析により同定する。HPLC及びNMRの測定条件は、後述する実施例において述べる。
上述したように、実施形態にかかる静電荷像現像用トナーには、アミノ酸とオキシ酸とを添加することが必要である。アミノ酸のカルボン酸とアミノ基とオキシ酸とが定着時に反応し、オキシ酸の結着樹脂への相溶を抑制し、オフセットを抑制するためである。本実施形態に用いることができるアミノ酸はアスパラギン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、トレオニン、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、リシン、チロシン、トリプトファン、システイン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンなどが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。特に、オキシ酸との反応性からアスパラギン酸がより好ましい。
実施形態にかかる静電荷像現像用トナーに含有されるオキシ酸のn(炭素数)は、上述したように、1〜8の範囲であるが、1〜3であることがより好ましい。1未満の場合、オキシ酸の疎水性が低下し、離型剤がトナー表面から50nmの範囲に多く存在するようになり、定着ロールに付着した離型剤と相溶しやすくなり、オフセットが発生する場合がある。一方、上記nが9以上の場合、オキシ酸の疎水性が高まり、離型剤がトナー表面から1μm以上の内部に多く存在するようになり、離型剤の染み出し性が低下してトナーの定着ロールからの離型性が低下し、オイルレス定着工程においてベタ画像形成後にハーフトーン画像を定着するときにオフセットが発生する場合がある。
上記静電荷像現像用トナーに含有されるアミノ酸の質量%をA、オキシ酸の質量%をBとしたとき、Aは0.01〜1.5質量%で AとBの比A/B=Cは、0.5〜1.5であることが好ましい。さらにAは0.1〜1.0質量%で AとBの比A/B=Cは、0.8〜1.2であることがより好ましい。Aが0.01質量%未満の場合、アミノ酸が少なくなり、離型剤がトナー表面近傍に多く存在するようになって、定着ロールに付着した離型剤との相溶により定着ロールに付着しやすくなるので好ましくない。また、Aが1.5質量%を超える場合、アミノ酸が多くなり、トナー粒子の中心付近に離型剤が偏在しやすくなって、定着時に離型剤の染み出し性が低下して好ましくない。またAとBの比A/B=Cは、0.8未満の場合、オキシ酸の割合が高くなり、定着時に結着樹脂とオキシ酸が相溶し、相溶した結着樹脂が定着ロールに付着しやすく、オフセットが発生しやすくなるので好ましくない。また、AとBの比A/B=Cが1.5を超える場合、アミノ酸の割合が高くなり、トナー粒子の中心近傍に離型剤が偏在しやすく、離型剤の染み出し性が低下するため好ましくない。
上記結着樹脂としては、ビスフェノールAを含有するポリエステル樹脂が好ましく、離型剤はアルキル系離型剤が好ましい。ビスフェノールAを含有するポリエステル樹脂とアルキル系離型剤とを使用した場合、ビスフェノールAとアルキル離型剤とがなじみにくく、その結果トナー粒子中の離型剤位置の制御性が高くなる。
以下、実施形態にかかる静電荷像現像用トナーを製造方法と共に説明する。本製造方法としては特に制限はないが、乳化重合凝集法が好ましい。乳化重合凝集法は、少なくとも体積平均粒径が1μm以下の結着樹脂の微粒子を分散した樹脂微粒子分散液及びオキシ酸とアミノ酸を添加した離型剤分散液とを混合する混合工程と、この混合液を、一価以上の電荷を有する化合物の存在下で凝集させて凝集粒子を形成する凝集粒子形成工程と、系内のpHを5〜10に調整して上記凝集粒子の成長を停止する粒子成長停止工程と、該凝集粒子を上記結着樹脂の微粒子の溶解温度以上の温度に加熱して融合・合一する融合工程と、を含んでいる。
更に、凝集粒子形成工程において、凝集粒子(コア凝集粒子)を形成した後に、第2の結着樹脂の微粒子を分散した第2の樹脂微粒子分散液を添加して、上記コア凝集粒子表面に上記第2の結着樹脂の微粒子が付着した樹脂付着凝集粒子を形成して、コアシェル構造のトナーを作製することも好ましい。
なお、コアシェル構造のトナーを作製する場合、第2の樹脂微粒子分散液の使用量は、これに含まれる第2の結着樹脂の微粒子の粒径に依存するが、最終的に形成されるシェル層の厚みが20〜500nm程度になる様に選択することが好ましい。なお、固形分換算では第2の結着樹脂の使用量は、トナー全量中の1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。シェル層の厚みが20nmより薄くなると、着色剤が表面に露出しやすくなり、高温高湿下でのかぶりが発生する場合がある。また、シェル層の厚みが500nmを超えると離型剤の染み出し性を低下させ、オフセットが発生する場合がある。
上記結着樹脂は、離型剤との相溶性が低いため、トナー中の離型剤の位置を精密に制御するために上述したビスフェノールAを含有するポリエステル樹脂が好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂微粒子を添加してもよい。
上記結晶性ポリエステル樹脂は、酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分とから合成されるものである。なお、以下において「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。
上記ポリエステル樹脂が結晶性でない場合、即ち非晶性である場合には、良好な低温定着性を確保しつつ、耐トナーブロッキング性、画像保存性を保つことができない。従って、上記「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。また、上記結晶性ポリエステル樹脂の主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50質量%以下の場合、この共重合体も結晶性ポリエステル樹脂と呼ぶ。
−酸由来構成成分−
酸由来構成成分は、脂肪族ジカルボン酸が望ましく特に直鎖型のカルボン酸が望ましい。例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、この限りではない。
上記酸由来構成成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸由来構成成分のほか、2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分等が含まれているのが好ましい。なお、上記2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分には、2重結合を持つジカルボン酸に由来する構成成分のほか、2重結合を持つジカルボン酸の低級アルキルエステル又は酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。また、上記スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分には、スルホン酸基を持つジカルボン酸に由来する構成成分のほか、スルホン酸基を持つジカルボン酸の低級アルキルエステル又は酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。
また、上記2重結合を持つジカルボン酸は、その2重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時のホットオフセット(トナーが過加熱されトナーの凝集力が定着ロール及び用紙との接着力を下回った場合に、トナー層が分断して起こるオフセット現象)を防ぐために好適に用いることができる。このようなジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、汎用性の点で、フマル酸、マレイン酸等が好ましい。
また、上記スルホン酸基を持つジカルボン酸は、顔料等の色材の分散を良好にできる点で有効である。また、樹脂全体を水に乳化或いは懸濁して、トナー母粒子を微粒子にする際に、スルホン酸基があれば、後述するように、界面活性剤の使用量を抑制しつつ乳化或いは懸濁が可能である。このようなスルホン基を持つジカルボン酸としては、例えば、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、生産性の点で、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩等が好ましい。
上述した脂肪族ジカルボン酸由来構成成分以外の酸由来構成成分(2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分及び/又はスルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分)の、酸由来構成成分全体における含有量としては、1〜20構成モル%が好ましく、2〜10構成モル%がより好ましい。該含有量が1構成モル%未満の場合には、顔料分散が良くなかったり、乳化粒子径が大きくなり、凝集によるトナー径の調整が困難となることがある。一方、20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、溶解温度が降下して、画像の保存性が悪くなったり、乳化粒子径が小さ過ぎて水に溶解し、ラテックスが生じないことがある。なお、上記「構成モル%」とは、ポリエステル樹脂における各構成成分(酸由来構成成分、アルコール由来構成成分)を1単位(モル)としたときの百分率を指す。
−アルコール由来構成成分−
アルコール由来構成成分としては脂肪族ジオールが望ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9―ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール等が挙げられるが、この限りではない。
上記アルコール由来構成成分が脂肪族ジオール由来構成成分の場合には、脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が80構成モル%以上であって、必要に応じてその他の成分を含む。さらに、上記アルコール由来構成成分が脂肪族ジオール由来構成成分の場合、上記脂肪族ジオール由来構成成分の含有量は90構成モル%以上であるのが好ましい。上記脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が、80構成モル%未満では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、溶解温度が降下するため、耐トナーブロッキング性、画像保存性及び低温定着性が悪化する場合がある。
上記必要に応じて含まれるその他の成分としては、2重結合を持つジオール由来構成成分、スルホン酸基を持つジオール由来構成成分等が挙げられる。
ここで、上記2重結合を持つジオールとしては、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオール等が挙げられる。
また、上記スルホン酸基を持つジオールとしては、1,4−ジヒドロキシ−2−スルホン酸ベンゼンナトリウム塩、1,3−ジヒドロキシメチル−5−スルン酸ベンゼンナトリウム塩、2−スルホ−1,4−ブタンジオールナトリウム塩等が挙げられる。
このように直鎖型の脂肪族ジオール由来構成成分以外のアルコール由来構成成分を加える場合、すなわち2重結合を持つジオール由来構成成分及び/又はスルホン酸基を持つジオール由来構成成分を加える場合、全アルコール由来構成成分における2重結合を持つジオール由来構成成分及び/又はスルホン酸基を持つジオール由来構成成分の含有量は、1〜20構成モル%が好ましく、2〜10構成モル%がより好ましい。なお、脂肪族ジオール由来構成成分以外のアルコール由来構成成分の含有量が、全アルコール由来構成成分に対して1構成モル%未満の場合には、顔料分散が良くなかったり、乳化粒子径が大きくなったり、凝集によるトナー径の調整が困難となる場合がある。一方、20構成モル%を超えると、溶解温度が降下して、画像の保存性が悪かったり、乳化粒子径が小さ過ぎて水に溶解し、ラテックスが生じない場合がある。
前述した結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができる。例えば、直接重縮合、エステル交換法等を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。上記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるが、通常1/1程度である。上記ポリエステル樹脂の製造は、重合温度180〜230℃の間で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。
モノマーが反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。なお、重縮合反応においては、溶解補助剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
上記結晶性ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物及びアミン化合物等が挙げられ、具体的には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。
上述した乳化重合凝集法において、樹脂微粒子分散液は、上記ポリエステル樹脂の乳化粒子(液滴)の分散液であり、水系媒体と、スルホン化等をしたポリエステル樹脂及び必要に応じて着色剤を含む混合液(ポリマー液)とを混合した溶液に、剪断力を与えることにより形成される。
また、樹脂微粒子分散液を調製する際に、結着樹脂の微粒子の安定化や水系媒体の増粘のため、分散剤を使用することもできる。
また、上記結晶性ポリエステル樹脂は、トナー結着樹脂に対し、2%以上、20%以下で用いることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂が2%未満の場合、トナー粒子内での分散性が低下しやすく、トナー内で着色剤と結晶性ポリエステルとが凝集しやすくなり、かぶり(トナーの帯電が低下して極性が反転し、本来画として画像が出ない潜像のない部分にトナーが付着し画像が現れる現象)が発生し、着色剤濃度が低下する場合がある。また、結晶性ポリエステル樹脂が20%を超える場合、トナー粒子表面に結晶性ポリエステル樹脂が析出しやすくなり、離型剤の染み出し性を低下させ、オフセットが発生する場合がある。
実施形態にかかる静電荷像現像用トナーは、結晶性ポリエステル樹脂とともに非晶性ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂を用いない場合、結晶性ポリエステル樹脂と相溶しやすい離型剤はトナー粒子の表面近傍に偏在しやすく、オフセットが発生しやすい。実施形態に用いられる非晶性ポリエステル樹脂は、1種類、もしくは2種類以上用いてもよい。
非晶性ポリエステル樹脂の分子量は特に限定されるものではないが、高分子成分と低分子成分とを各々合成する場合には、高分子成分の重量平均分子量Mwが、30000≦Mw≦200000であることが好ましく、30000≦Mw≦100000であることが更に好ましく、35000≦Mw≦80000であることが特に好ましい。この範囲に分子量を制御することにより結晶性ポリエステル樹脂とより効率的に相溶し、また一旦相溶した結晶性ポリエステル樹脂の分離を抑制することができるので、離型剤の染み出し性を阻害しない。この結果、例えばベタ画像形成後にハーフトーン画像を定着するときのオフセットを抑制できる。
一方、低分子量成分は8000≦Mw≦25000であることが好ましく、8000≦Mw≦22000であることが更に好ましく、9000≦Mw≦20000であることが特に好ましい。この範囲に分子量を制御することで、融合工程における合一時の高分子成分の包含性が良好になり、結晶性ポリエステル樹脂のトナー粒子表面への露出を抑制し、高温高湿下でのかぶりを抑制できる。
上記高分子成分と低分子成分を混合して使用する場合、両者の配合比率は、GPCにおける流出量に対しての組成比率(モル比)が上述した範囲であれば特に限定されないが、一般的には、高分子/低分子=10/90〜70/30の範囲が好ましく、更に好ましくは20/80〜70/30、特に好ましくは25/75〜70/30の範囲である。
高分子成分には構成モノマーとしてアルケニルコハク酸もしくはその無水物とトリメリット酸もしくはその無水物を含有することが好ましい。アルケニルコハク酸もしくはその無水物は、疎水性の高いアルケニル基が存在することにより、より容易に結晶性ポリエステル樹脂と相溶することができる。アルケニルコハク酸成分の例としては、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸ならびにこれらの酸無水物、酸塩化物および炭素数1〜3の低級アルキルエステルを挙げることができる。3価以上の多価カルボン酸を含有することにより、高分子鎖は架橋構造を取ることができる。架橋構造を取ることにより、一旦相溶した結晶性ポリエステル樹脂を固定化し分離しにくくする効果が得られ、低温定着性を保持できる。
3価以上の多価カルボン酸の例としては、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸およびこれらの酸無水物、酸塩化物および炭素数1〜3の低級アルキルエステルを挙げることができる。
非晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、上述した結晶性ポリエステル樹脂の製造方法と同様、特に制限はなく、前述のような一般的なポリエステル重合法で製造することができる。非晶性ポリエステル樹脂の合成に用いるカルボン酸成分としては、結晶性ポリエステル樹脂に関して挙げた種々のジカルボン酸を同様に用いることができる。また、アルコール成分としても、結晶性ポリエステル樹脂の合成に用いる種々のジオールを用いることができるが、結晶性ポリエステル樹脂に関して挙げた脂肪族ジオールに加えて、ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物や水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールSエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物等を用いることができる。さらに、トナーの製造性・耐熱性・透明性を向上させるため、ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物や水素添加ビスフェノールAを用いることが特に好ましい。また、カルボン酸成分、アルコール成分とも複数の成分を含んでもよく、特に、ビスフェノールAはアルキル系離型剤と特に相溶しづらいため、トナー粒子中の離型剤の位置制御がしやすく、離型剤の染み出しを制御することにより、オフセットを抑制しやすい。
次に、必要に応じて用いられる結晶性ポリエステル樹脂の架橋処理や、結着樹脂の合成に際して用いることが可能な共重合成分等について説明する。
ポリエステル樹脂の合成に際しては、他の成分を共重合させることができ、親水性極性基を有する化合物を用いることができる。ポリエステル樹脂においては、スルホニル−テレフタル酸ナトリウム塩、3−スルホニルイソフタル酸ナトリウム塩等の芳香環に直接スルホニル基が置換したジカルボン酸化合物が挙げられる。また、結着樹脂がビニル系樹脂の場合は、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸類、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、脂肪酸変性グリシジル(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸とアルコール類等とのエステル類、オルト、メタ、パラ位のいずれかにスルホニル基を有するスチレンの誘導体、スルホニル基含有ビニルナフタレン等のスルホニル基置換芳香族ビニル等が挙げられる。
また、結着樹脂には、高温度領域における定着時の光沢むら、発色むら、ホットオフセット等を防止する目的で、必要に応じて架橋剤を添加することもできる。
架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族の多ビニル化合物類、フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、テレフタル酸ジビニル、ホモフタル酸ジビニル、トリメシン酸ジビニル/トリビニル、ナフタレンジカルボン酸ジビニル、ビフェニルカルボン酸ジビニル等の芳香族多価カルボン酸の多ビニルエステル類、ピリジンジカルボン酸ジビニル等の含窒素芳香族化合物のジビニルエステル類、ピロール、チオフェン等の不飽和複素環化合物類、ピロムチン酸ビニル、フランカルボン酸ビニル、ピロール−2−カルボン酸ビニル、チオフェンカルボン酸ビニル等の不飽和複素環化合物カルボン酸のビニルエステル類、ブタンジオールメタクリレート、ヘキサンジオールアクリレート、オクタンジオールメタクリレート、デカンジオールアクリレート、ドデカンジオールメタクリレート等の直鎖多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ、1,3−ジアクリロキシプロパン等の分枝、置換多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類、コハク酸ジビニル、フマル酸ジビニル、マレイン酸ビニル/ジビニル、ジグリコール酸ジビニル、イタコン酸ビニル/ジビニル、アセトンジカルボン酸ジビニル、グルタル酸ジビニル、3,3’−チオジプロピオン酸ジビニル、trans−アコニット酸ジビニル/トリビニル、アジピン酸ジビニル、ピメリン酸ジビニル、スベリン酸ジビニル、アゼライン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、ドデカン二酸ジビニル、ブラシル酸ジビニル等の多価カルボン酸の多ビニルエステル類等が挙げられる。
また、結晶性ポリエステル樹脂の溶解温度、分子量等の調整の目的で上記の重合性単量体以外に、より短鎖のアルキル基、アルケニル基、芳香環等を有する化合物を使用することもできる。具体例としては、ジカルボン酸の場合、コハク酸、マロン酸、シュウ酸等のアルキルジカルボン酸類、およびフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ホモフタル酸、4,4’-ビ安息香酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、ジピコリン酸、ジニコチン酸、キノリン酸、2,3-ピラジンジカルボン酸等の含窒素芳香族ジカルボン酸類が挙げられ、ジオール類の場合、コハク酸、マロン酸、アセトンジカルボン酸、ジグリコール酸等の短鎖アルキルのジオール類が挙げられ、短鎖アルキルのビニル系重合性単量体の場合、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等の短鎖アルキル、アルケニルの(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン類、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類等が挙げられる。これらの重合性単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
実施形態にかかる静電荷像現像用トナーの原料に用いられる樹脂としては、共重合可能なポリエステル樹脂であれば、親水性極性基を有する化合物を用いることができる。具体例としては、スルホニル-テレフタル酸ナトリウム塩、3-スルホニルイソフタル酸ナトリウム塩等の芳香環に直接スルホニル基が置換したジカルボン酸化合物が挙げられ、また樹脂がビニル系樹脂の場合は、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸類、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、脂肪酸変性グリシジル(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸とアルコール類等とのエステル類、オルト、メタ、パラ位のいずれかにスルホニル基を有するスチレンの誘導体、スルホニル基含有ビニルナフタレン等のスルホニル基置換芳香族ビニル等が挙げられる。
また、実施形態にかかる静電荷像現像用トナーに用いられる着色剤は、顔料では例えば以下のものが挙げられる。
黄色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、クロムイエロー、ハンザイエロー、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーメネントイエローNCG等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー93等が挙げられ、顔料分散性の点からC.I.ピグメントイエロー74が好ましい。
黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、マグネタイト等が挙げられる。
橙色顔料としては赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジGG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンGK等が挙げられる。
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デイポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、エオキシンレッド、アリザリンレーキ等が挙げられる。
青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレートなどが挙げられる。
紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。
緑色顔料としては、酸化クロム、クロムグリーン、ピグメントグリーン、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等が挙げられる。
白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等が挙げられる。
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等が挙げられる。
また、必要に応じて着色剤として染料を用いることもできる。該染料としては、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料、例えばニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等が挙げられる。また、これらを単独、もしくは混合し、更には固溶体の状態で使用できる。
これらの着色剤は、公知の方法で分散されるが、例えば、回転せん断型ホモジナイザーやボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等が好ましく用いられる。
また、これらの着色剤は、極性を有する界面活性剤を用い、上記ホモジナイザーによって水系に分散される
上記着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、トナー中での分散性の観点から選択される。該着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して1〜15質量部添加されることが好ましい。また、黒色着色剤に磁性体を用いた場合は、他の着色剤とは異なり、結着樹脂100質量部に対して30〜100質量部添加されることが好ましい。
また、実施形態にかかる静電荷像現像用トナーに含まれる着色剤の割合は、4〜15質量%であることが好ましい。上記トナーに含まれる着色剤が4質量%未満の場合、定着画像において着色剤濃度が薄くなり、発色性が低下する場合がある。また、トナーに含まれる着色剤が15%を超える場合は、着色剤がトナー粒子の表面に露出しやすくなる場合がある。
実施形態にかかる静電荷像現像用トナーに使用できる離型剤の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス類、ミツロウ等の動物系ワックス類、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス類、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等の高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルワックス類、ステアリン酸ブチル、オレイン酸プロピル、モノステアリン酸グリセリド、ジステアリン酸グリセリド、ペンタエリスリトールテトラベヘネート等の高級脂肪酸と単価または多価低級アルコールとのエステルワックス類、ジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジステアレート、ジステアリン酸ジグリセリド、テトラステアリン酸トリグリセリド等の高級脂肪酸と多価アルコール多量体とからなるエステルワックス類、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン高級脂肪酸エステルワックス類、コレステリルステアレート等のコレステロール高級脂肪酸エステルワックス類などが挙げられる。
上記離型剤としては、アルキル系離型剤であることが好ましい。アルキル系離型剤は、極性基を有する離型剤よりもポリエステル樹脂に対して親和性が低く、離型剤の位置制御性が高い。すなわち、離型剤の染み出し性の制御性が高まることで、オフセットを抑制できる。このようなアルキル系離型剤としては、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素系ワックスが挙げられる。
上述した各種炭化水素系ワックスは、示差熱分析より求められる吸熱ピークの極大値が70℃以上95℃以下の範囲であることがより好ましい。吸熱ピークの極大値が70℃未満の場合、高温高湿下ではトナー同士のブロッキングが起きやすくなる。また、95℃を越える場合、離型剤が溶融しづらくなる場合がある。上記吸熱ピークの面積より求めた70℃以下の成分の全吸熱面積に対する比率が5%以上15%以下であることがより好ましい。上記比率が5%未満の場合、トナー作製時の融合工程において、離型剤が非晶性ポリエステル樹脂と融着せず、リジェクション(離型剤が結着樹脂からはなれてトナー粒子外に遊離する現象)して定着時に剥離性が悪化する場合がある。また、15%を越える場合、トナー同士のブロッキングが起きやすくなる場合がある。さらに上記吸熱ピークの極大値の高さから求められるトナー中の離型剤量が6質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。トナー中の離型剤量が6質量%未満の場合、離型剤の量が十分でない場合がある。15質量%を越える場合、乳化重合凝集法では、離型剤をトナー粒子内に取り込めない場合がある。この結果、離型剤がトナー表面に融着し、高温高湿下ではトナー同士のブロッキングが起きやすくなる場合がある。
上記離型剤は、140℃におけるコーン角が1.34度のコーンプレートを備えたE型粘度計により求められる粘度が、1.50mPa・S以上5.0mPa・S以下(更に好ましくは 2.5mPa・S以上4.0mPa・S以下)であることがより好ましい。1.5mPa・S未満の場合、トナー合一時(融合工程)において離型剤の粘度が低く、トナー粒子内に離型剤が偏在する場合があり、定着時に離型剤の溶出が不均一となる場合がある。一方、5.0mPa・Sを越える場合、離型剤粘度が高く、定着時に離型剤の溶出が不十分となる場合がある。
実施形態にかかる静電荷像現像用トナーの製造においては、例えば上記乳化重合凝集法における樹脂微粒子分散液、着色剤分散液及び離型剤分散液の分散安定を目的として界面活性剤を用いることができる。
上記界面活性剤としては、例えば硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤、ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でもイオン性界面活性剤が好ましく、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤がより好ましい。
一般的に、アニオン系界面活性剤は分散力が強く、結着樹脂の微粒子、着色剤、離型剤の分散性に優れているため、これらを分散させるための界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。
非イオン系界面活性剤は、上記アニオン系界面活性剤またはカチオン系界面活性剤と併用されるのが好ましい。これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
界面活性剤の各分散液中における含有量としては、本発明の効果を阻害しない程度であれば良く、一般的には少量であり、具体的には0.01〜10質量%程度の範囲であり、より好ましくは0.05〜5質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.1〜2質量%程度の範囲である。含有量が0.01質量%未満であると、樹脂粒子分散液、着色剤分散液、離型剤分散液等の各分散液が不安定になり、そのため凝集を生じたり、また凝集時に各粒子間の安定性が異なるため、特定粒子の遊離が生じる場合がある。また、10質量%を越えると、粒子の粒度分布が広くなったり、また、粒子径の制御が困難になる場合がある。一般的には粒子径の大きい懸濁重合トナー分散物は、界面活性剤の使用量は少量でも安定である。
また、常温固体の水性ポリマー等も分散安定剤として用いることができる。具体的には、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系化合物、ポリビニルアルコール、ゼラチン、デンプン、アラビアゴム等が使用できる。
実施形態にかかる静電荷像現像用トナーの製造に乳化重合凝集法を用いた場合には、凝集工程においてpH変化により凝集を発生させ、粒子を調製することができる。同時に粒子の凝集を安定に、また迅速に、またはより狭い粒度分布を持つ凝集粒子を得るため、凝集剤を添加しても良い。
該凝集剤としては一価以上の電荷を有する化合物が好ましく、その化合物の具体例としては、前述のイオン性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の水溶性界面活性剤類、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸等の酸類、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅、炭酸ナトリウム等の無機酸の金属塩、酢酸ナトリウム、蟻酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム等の脂肪族酸、芳香族酸の金属塩、ナトリウムフェノレート等のフェノール類の金属塩、アミノ酸の金属塩、トリエタノールアミン塩酸塩、アニリン塩酸塩等の脂肪族、芳香族アミン類の無機酸塩類等が挙げられる。
凝集粒子の安定性、凝集剤の熱や時間の経過に対する安定性及び洗浄時の除去の容易性を考慮した場合、凝集剤としては、無機酸の金属塩が性能及び使用の容易性の点で好ましい。具体的には塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅、炭酸ナトリウム等の無機酸の金属塩などが挙げられる。また、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等も好適に使用することができる。
これらの凝集剤の添加量は、電荷の価数により異なるが、いずれも少量であって、一価の場合は3質量%以下程度、二価の場合は1質量%以下程度、三価の場合は0.5質量%以下程度である。凝集剤の量は少ない方が好ましいため、価数の多い化合物を用いることが好ましい。
また、実施形態にかかる静電荷像現像用トナーを磁性粒子として用いる場合は、磁性粉を含有させても良い。このような磁性粉としては、磁場中で磁化される物質が用いられ、鉄、コバルト、ニッケルの如き強磁性の粉末、もしくはフェライト、マグネタイト等の化合物が挙げられる。特に本実施形態では、水層中でトナーを得るため磁性体の水層移行性に注意を払う必要があり、好ましくは表面改質、例えば疎水化処理等を施しておくのが好ましい。
本実施形態における静電荷像現像用トナーは、トナー形状係数SF1が125≦SF1≦140であることが好ましい(但し、トナー形状係数SF1=(ML2/A)×(π/4)×100であり、MLはトナーの最大長(μm)、Aはトナーの投影面積(μm2)を表す。)。トナーの形状係数が125以上140以下の間にある場合、安定した転写性により、安定した定着表面となり、オフセットの少ない良好な画像が得られる。形状係数が125未満の場合、低温低湿度下では極端に転写性が高く、使いこなしが困難となり、定着画像上に均一にトナーが載らず、オフセットが発生する場合がある。形状係数が140を超える場合では、転写性が低下し、定着画像上では所望のトナー量が載らず、定着画像上のトナー載り量にムラが生じ、濃度の高い部分にオフセットを生じる場合がある。
本実施形態にかかる静電荷像現像用トナーは、その表面に少なくとも1種以上の金属酸化物粒子を有しても良い。金属酸化物粒子の具体例としては、シリカ、チタニア、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、またはこれらの複合酸化物等が挙げられる。このうちシリカ、チタニアが、粒径、粒度分布、製造性の観点から好ましく用いられる。
上記金属酸化物粒子の体積平均粒径は、1次粒子径で1nm以上40nm以下の範囲であることが好ましく、5nm以上20nm以下の範囲であることがより好ましい。
これらの金属酸化物粒子は単独で用いても、また複数種を混合して用いてもよい。また、これらのトナーに対する添加量は特に制限はないが、0.1質量%以上10質量%以下の範囲で好ましく用いられる。より好ましくは、0.2質量%以上8質量%以下程度の範囲である。
添加量が0.1質量%未満の場合、添加する金属酸化物等の効果(トナーの流動性等)が得られにくく、また、10質量%を超える場合、画像濃度が得られない場合がある。
これらの金属酸化物粒子は、疎水化等の表面改質を行う方が定着時の離型剤層内に混入しやすく、離型剤が定着ロールへの融着を阻害できる点で好ましい。表面改質の手段としては従来公知の方法を用いることができる。具体的にはシラン、チタネート、アルミネート等の各カップリング処理が挙げられる。
カップリング処理に用いるカップリング剤としては特に制限はないが、例えばメチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等が好適な例として挙げられる。
本実施形態においては、目的に応じて、上記結着樹脂、上記着色剤及び上記離型剤以外に、内添剤、帯電制御剤、有機粒体、滑剤、研磨剤などのその他の成分(粒子)を添加させることが可能である。
内添剤としては、例えば、フェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、マンガン、ニッケル等の金属、合金、またはこれら金属を含有する化合物などの磁性体などが挙げられ、トナー特性としての帯電性を阻害しない程度の量が使用できる。
帯電制御剤としては、特に制限はないが、特にカラートナーを用いた場合、無色または淡色のものが好ましく使用できる。例えば、4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミニウム、鉄、クロムなどの錯体からなる染料、トリフェニルメタン系顔料などが挙げられる。
有機粒体としては、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等の通常トナー表面の外添剤として使用される全ての粒子が挙げられる。なお、これらの無機粒体や有機粒体は、流動性助剤、クリーニング助剤等として使用することができる。
滑剤としては、例えば、エチレンビスステアリル酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩等が挙げられる。
研磨剤としては、例えば、前述のシリカ、アルミナ、酸化セリウムなどが挙げられる。
上記結着樹脂、上記着色剤及び上記離型剤を混合した場合における、上記着色剤の含有量としては、50質量%以下であれば良く、2質量%以上40質量%以下程度の範囲であるのが好ましい。
また、上記その他の成分の含有量としては、本実施形態の目的を阻害しない程度であればよく、一般的には極少量であり、具体的には0.01質量%以上5質量%以下の範囲であり、好ましくは0.5質量%以上2質量%以下の範囲である。
本実施形態における、樹脂微粒子分散液、着色剤分散液、離型剤分散液、およびその他の成分における分散媒としては、例えば水系媒体などが挙げられる。水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
また、実施形態にかかる静電荷像現像用トナーの粒子径分布指標は、体積平均粒度分布指標GSDvが1.30以下であり、且つ該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が0.95以上であることが好ましい。体積分布指標GSDvが1.30を超えると定着画像の凹凸が大きくなるため、オフセットが生じる場合がある。また、体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標の比が0.95未満の場合、小粒径トナーの量が増加することを意味し、トナー載り量にムラが発生しやすくなり、オフセットが生じる場合がある。
実施形態にかかる静電荷像現像用トナーの比表面積は、特に制限はなく、通常のトナーに用いることのできる範囲であれば使用することができる。具体的には、BET法を用いた場合、0.5m2/g以上10m2/g以下の範囲が好ましく、さらに好ましくは1.0m2/g以上7m2/g以下の範囲、より好ましくは1.2m2/g以上5m2/g以下程度の範囲である。さらに1.2m2/g以上3m2/g以下程度の範囲が特に好ましい。
<静電潜像現像剤>
実施形態にかかる静電潜像現像剤は、上述した実施形態にかかる静電荷像現像用トナーを含有する以外は特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成をとることができる。本実施形態における静電潜像現像剤は、静電荷像現像用トナーを単独で用いると一成分系の静電潜像現像剤となり、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電潜像現像剤となる。
上記キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアを用いることができるが、例えば特開昭62−39879号公報、特開昭56−11461号公報等に記載された樹脂被覆キャリア等が挙げられる。
キャリアの具体例としては、以下の樹脂被覆キャリアが挙げられる。該キャリアの核体粒子としては、通常の鉄粉、フェライト、マグネタイト造型物などが挙げられ、その体積平均粒径は30μm以上200μm以下程度の範囲である。
また、上記樹脂被覆キャリアの被覆樹脂としては、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のα−メチレン脂肪酸モノカルボン酸類、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の含窒素アクリル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニルピリジン類、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロぺニルケトン等のビニルケトン類、エチレン、プロピレン等のオレフィン類、弗化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン等のビニル系フッ素含有モノマなどの単独重合体、または2種類以上のモノマからなる共重合体、さらに、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等を含むシリコーン樹脂類、ビスフェノール、グリコール等を含有するポリエステル類、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上併用してもよい。被覆樹脂の被覆量としては、上記核体粒子100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下程度の範囲が好ましく、0.5重量部以上3.0重量部以下の範囲がより好ましい。
キャリアの製造には、加熱型ニーダー、加熱型ヘンシェルミキサー、UMミキサーなどを使用することができ、上記被覆樹脂の量によっては、加熱型流動転動床、加熱型キルンなどを使用することができる。
また、実施形態にかかる静電荷像現像剤における静電荷像現像用トナーとキャリアとの混合比としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<画像形成装置>
実施形態にかかる画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、静電潜像を現像剤を用いて現像してトナー画像を形成する現像手段と、現像されたトナー画像を被転写体に転写する転写手段と、被転写体表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段とを含み、現像剤として上記静電潜像現像剤が用いられる。また、実施形態にかかる画像形成装置は、上記手段以外の手段、例えば像保持体を帯電する帯電手段、像保持体表面に残存したトナーを除去するクリーニング手段等を含むものであってもよい。
実施形態にかかる画像形成装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。画像形成装置1は、帯電部10と、露光部12と、像保持体である電子写真感光体14と、現像部16と、転写部18と、クリーニング部20と、定着部22とを備える。
画像形成装置1において、電子写真感光体14の周囲には、電子写真感光体14の表面を帯電する帯電手段である帯電部10と、帯電された電子写真感光体14を露光し画像情報に応じて静電潜像を形成する潜像形成手段である露光部12と、静電潜像をトナーにより現像してトナー画像を形成する現像手段である現像部16と、電子写真感光体14の表面に形成されたトナー画像を被転写体24の表面に転写する転写手段である転写部18と、転写後の電子写真感光体14表面上に残存したトナーを除去するクリーニング手段であるクリーニング部20とがこの順で配置されている。また、被転写体24に転写されたトナー画像を定着する定着手段である定着部22が転写部18の左側に配置されている。
本実施形態に係る画像形成装置1の動作について説明する。まず、帯電部10により電子写真感光体14の表面が均一に帯電される(帯電工程)。次に、露光部12により電子写真感光体14の表面に光が当てられ、光の当てられた部分の帯電電荷が除去され、画像情報に応じて静電荷像(静電潜像)が形成される(潜像形成工程)。その後、静電荷像が現像部16により現像され、電子写真感光体14の表面にトナー画像が形成される(現像工程)。例えば、電子写真感光体14として有機感光体を用い、露光部12としてレーザビーム光を用いたデジタル式電子写真複写機の場合、電子写真感光体14の表面は、帯電部10により負電荷を付与され、レーザビーム光によりドット状にデジタル潜像が形成され、レーザビーム光の当たった部分に現像部16でトナーを付与され可視像化される。この場合、現像部16にはマイナスのバイアスが印加されている。次に転写部18で、用紙等の被転写体24がこのトナー画像に重ねられ、被転写体24の裏側からトナーとは逆極性の電荷が被転写体24に与えられ、静電気力によりトナー画像が被転写体24に転写される(転写工程)。転写されたトナー画像は、定着部22において定着部材により熱及び圧力が加えられ、被転写体24に融着されて定着される(定着工程)。一方、転写されずに電子写真感光体14の表面に残存したトナーはクリーニング部20で除去される(クリーニング工程)。この帯電からクリーニングに至る一連のプロセスで一回のサイクルが終了する。なお、図1において、転写部18で用紙等の被転写体24に直接トナー画像が転写されているが、中間転写体等の転写体を介して転写されても良い。
以下、図1の画像形成装置1における帯電手段、像保持体、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、定着手段について説明する。
(帯電手段)
帯電手段である帯電部10としては、例えば、図1に示すようなコロトロンなどの帯電器が用いられるが、導電性又は半導電性の帯電ロールを用いても良い。導電性又は半導電性の帯電ロールを用いた接触型帯電器は、電子写真感光体14に対し、直流電流を印加するか、交流電流を重畳させて印加してもよい。例えばこのような帯電部10により、電子写真感光体14との接触部近傍の微小空間で放電を発生させることにより電子写真感光体14表面を帯電させる。なお、通常は、−300〜−1000Vに帯電される。また前記の導電性又は半導電性の帯電ロールは単層構造あるいは多重構造でも良い。また、帯電ロールの表面をクリーニングする機構を設けてもよい。
(像保持体)
像保持体は、少なくとも潜像(静電荷像)が形成される機能を有する。像保持体としては、電子写真感光体が好適に挙げられる。電子写真感光体14は、円筒状の導電性の基体外周面に有機感光体等を含む塗膜を有する。塗膜は、基体上に、必要に応じて下引き層、及び、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを含む感光層がこの順序で形成されたものである。電荷発生層と電荷輸送層の積層順序は逆であってもよい。これらは、電荷発生物質と電荷輸送物質とを別個の層(電荷発生層、電荷輸送層)に含有させて積層した積層型感光体であるが、電荷発生物質と電荷輸送物質との双方を同一の層に含む単層型感光体であってもよく、好ましくは積層型感光体である。また、下引き層と感光層との間に中間層を有していてもよい。また、有機感光体に限らずアモルファスシリコン感光膜等他の種類の感光層を使用してもよい。
(露光手段)
露光手段である露光部12としては、特に制限はなく、例えば、像保持体表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光源を、所望の像様に露光できる光学系機器等が挙げられる。
(現像手段)
現像手段である現像部16は、像保持体上に形成された潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー画像を形成する機能を有する。そのような現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、静電荷像現像用トナーをブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体14に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。電子写真感光体14には、通常直流電圧が使用されるが、更に交流電圧を重畳させて使用してもよい。
(転写手段)
転写手段である転写部18としては、例えば、図1に示すような被転写体24の裏側からトナーとは逆極性の電荷を被転写体24に与え、静電気力によりトナー画像を被転写体24に転写するもの、あるいは被転写体24の表面に被転写体24を介して直接接触して転写する導電性又は半導電性のロール等を用いた転写ロール及び転写ロール押圧装置を用いることができる。転写ロールには、像保持体に付与する転写電流として、直流電流を印加してもよいし、交流電流を重畳させて印加してもよい。転写ロールは、帯電すべき画像領域幅、転写帯電器の形状、開口幅、プロセススピード(周速)等により、任意に設定することができる。また、低コスト化のため、転写ロールとして単層の発泡ロール等が好適に用いられる。転写方式としては、紙等の被転写体24に直接転写する方式でも、中間転写体を介して被転写体24に転写する方式でもよい。
中間転写体としては、公知の中間転写体を用いることができる。中間転写体に用いられる材料としては、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンフタレート、PC/ポリアルキレンテレフタレート(PAT)のブレンド材料、エチレンテトラフロロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料等が挙げられるが、機械的強度の観点から熱硬化ポリイミド樹脂を用いた中間転写ベルトが好ましい。
(クリーニング手段)
クリーニング手段であるクリーニング部20については、像保持体上の残留トナーを清掃するものであれば、ブレードクリーニング方式、ブラシクリーニング方式、ロールクリーニング方式を採用したもの等、適宜選定して差し支えない。これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。中でも、耐摩耗性に優れていることから、特にポリウレタン弾性体を用いることが好ましい。但し、転写効率の高いトナーを使用する場合にはクリーニング部20を使用しない態様もありえる。
(定着手段)
定着手段(画像定着装置)である定着部22としては、被転写体24に転写されたトナー像を加熱、加圧あるいは加熱加圧により定着するものであり、定着部材を具備する。
(被転写体)
トナー画像を転写する被転写体(用紙)24としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、被転写体の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等を好適に使用することができる。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<各測定方法>
(トナー形状)
形状係数SF1はルーゼックス画像解析装置(株式会社ニレコ製、FT)を用いて次のように測定した。まず、スライドグラス上に散布したトナーの光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個のトナーについて最大長(ML)と投影面積(A)を測定し、個々のトナーについて、(ML2/A)×(π/4)×100を算出し、これを平均した値を形状係数SF1として求めた。
(トナー粒度)
体積平均粒径D50v、体積平均粒度分布指標GSDv及び数平均粒度分布指標GSDpは、コールターマルチサイザーII型(ベックマン−コールター社製)を用いて、100μmのアパーチャ径で測定することにより得た。この時、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行なった。コールターマルチサイザーII型で測定されたトナーの粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積D16v、数D16p、累積50%となる粒径を体積D50v、数D50p、累積84%となる粒径を体積D84v、数D84pと定義する。この際、D50vは体積平均粒径を表し、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2として、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として求めた。
(高速液体クロマトグラフ(HPLC)測定)
高速液体クロマトグラフ(HPLC)により、トナー粒子中のオキシ酸とアミノ酸等の成分を抽出する。その測定条件は以下の通りである。
分析装置:日本分析工業株式会社製 LC−08
カラム:JA工GEL−2H(20Φmm×600mm×2)
検出器:示差屈折計、紫外線吸収検出器(254nm)
溶出液:クロロホルム 流量4mL/分
測定試料:トナー1gをクロロホルム10mLに溶解させ、ろ過などにより溶液を抽出したものを用いた。
リテンションタイム:L−アスパラギン酸の場合、ピーク位置は5分であった。
(NMR(核磁気共鳴)測定)
1H−NMRにより、各種原料、トナー粒子中のオキシ酸とアミノ酸等の成分を同定及び定量する。1H−NMR装置はJNM−AL400(日本電子株式会社製)を用い、測定条件は、5mmガラス管、3質量%重クロロホルム溶液、測定温度25℃である。また、測定サンプルは、現像剤からキャリアを脱離させ、トナーから有機溶媒などで溶解し、ろ過等により結着樹脂を分離したものを用いることができる。
<トナーの製造>
本実施例のトナーは、以下の如き方法にて得られる。即ち、下記の樹脂微粒子分散液、着色剤粒子分散液、離形剤分散液、無機粒子分散液をそれぞれ調製した。次いで、これらを所定量混合撹拌しながら、これに無機金属塩の重合体を添加、イオン的に中和させ上記各粒子の凝集体を形成せしめた。所望のトナー粒子径到達前に樹脂微粒子分散液を追添加し、トナー粒子径を得た。次いで、無機水酸化物で系内のpHを弱酸性から中性の範囲に調製後、当該樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱し、合一融合せしめた。反応終了後、十分な洗浄、固液分離、乾燥の工程を経て所望のトナーを得た。
(結晶性ポリエステル樹脂の合成)
5L(リットル)のフラスコに、セバシン酸1982部、エチレングリコール1490部、イソフタル酸ジメチル5−スルホン酸ナトリウム59.2部、及びジブチルスズオキシド0.8部を、窒素雰囲気下、180℃で5時間反応させ、続いて、減圧下220℃で縮合反応を行なった。途中ポリマーをサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分子量がMw(重量平均分子量)=20000、Mn(数平均分子量)=8500になったところで、反応を止め、結晶性ポリエステル樹脂を得た。溶解温度(DSCのピーク温度)は71℃であった。NMRによるイソフタル酸ジメチル5−スルホン酸ナトリウムの含有量の測定結果は1モル%(対全構成成分)であった。
(結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液)
結晶性ポリエステル樹脂160部と、酢酸エチル233部と、水酸化ナトリウム水溶液(0.3N)0.1部とを用意し、これらを500mlのセパラブルフラスコに入れ、75℃で加熱し、スリーワンモーター(新東科学株式会社製)により撹拌して樹脂混合液を調製した。この樹脂混合液をさらに撹拌しながら、徐々にイオン交換水373部を加え、転相乳化させ、10℃/分の降温速度にて40℃まで降温し、脱溶剤することにより結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(固形分濃度:30%)を得た
(非結晶性ポリエステル樹脂の合成)
加熱乾燥した二口フラスコに、テレフタル酸ジメチルを200部と、1,3−ブタンジオール85部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.3部と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気とし、機械攪拌にて180rpmで5時間攪拌を行った。その後、減圧下にて230℃まで徐々に昇温を行い2時間攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、非結晶性ポリエステル樹脂(芳香族ジカルボン酸由来構成成分の含有量が100構成モル%である酸由来構成成分と、脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が100構成モル%であるアルコール由来構成成分と、を含む非結晶性ポリエステル樹脂)を240部を合成した。
GPCによる分子量測定(ポリスチレン換算)の結果、得られた非結晶性ポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は9500であり、数平均分子量(Mn)は4200であった。また、非結晶性ポリエステル樹脂(1)のDSCスペクトルを、前述の示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確なピークを示さず、階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の中間点をとったガラス転移温度は55℃であった。なお樹脂酸価は18mgKOH/gであった。
(非結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液)
非結晶性ポリエステル樹脂(1)160部と、酢酸エチル233部と、水酸化ナトリウム水溶液(0.3N)0.1部とを用意し、これらを500mlのセパラブルフラスコに入れ、70℃で加熱し、スリーワンモーター(新東科学株式会社)により撹拌して樹脂混合液を調製した。この樹脂混合液をさらに撹拌しながら、徐々にイオン交換水373部を加え、転相乳化させ、1℃/分の降温速度にて40℃まで降温し脱溶剤することにより非結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(固形分濃度:30%)を得た。
(スチレンアクリル樹脂微粒子分散液の調製)
(油層)
スチレン(和光純薬製) 30重量部
n−ブチルアクリレート(和光純薬製) 10重量部
β−カルボエチルアクリレート(ローディア日華製) 1.5重量部
アクリル酸 0.3重量部
ドデカンチオール(和光純薬製) 0.2重量部
(水層1)
イオン交換水 17.0重量部
アニオン性界面活性剤(ローディア社製) 0.4重量部
(水層2)
イオン交換水 40重量部
アニオン性界面活性剤(ローディア社製) 0.08重量部
過硫酸カリウム(和光純薬製) 0.30重量部
過硫酸アンモニウム(和光純薬製) 0.10重量部
上記油層成分と水層1の成分とをフラスコ中に入れて撹拌混合し、単量体乳化分散液とした。反応容器に上記水層2の成分を投入し、容器内を窒素で充分に置換し撹拌をしながら、オイルバスで反応系内が75℃になるまで加熱した。反応容器内に単量体乳化分散液を3時間かけて徐々に滴下し乳化重合を行った。滴下終了後さらに75℃で重合を継続し、3時間後に重合を終了させた。
得られた樹脂粒子は、レーザ回折式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、LA−700)で樹脂粒子の個数平均粒子径D50pを測定したところ200nmであり、示差走査熱量計(株式会社島津製作所製、DSC−50)を用いて昇温速度10℃/分で樹脂のガラス転移温度を測定したところ51.5℃であり、GPCを用い、重量平均分子量Mw(ポリスチレン換算)を測定したところ30000であった。これにより個数平均粒子径D50pが200nm、固形分量が42重量%、ガラス転移温度が51.5℃、Mwが30,000のスチレンアクリル樹脂微粒子分散液を得た。
(着色剤分散液1の調製)
シアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3、大日精化製) 45重量部
イオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬製) 5重量部
イオン交換水 200重量部
以上を混合溶解し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により10分間分散し、体積平均粒径170nmの着色剤分散液1を得た。
(アミノ酸分散液の調製)
アミノ酸1分散液の調整
アスパラギン酸 20重量部
イオン交換水 60重量部
以上を撹拌混合して、固形分量10.2重量%のアミノ酸1分散液を得た。
アミノ酸2分散液の調整
グリシン 20重量部
イオン交換水 60重量部
以上を撹拌混合して、固形分量10.1重量%のアミノ酸2分散液を得た。
アミノ酸3分散液の調整
アラニン 20重量部
イオン交換水 60重量部
以上を撹拌混合して、固形分量10.2重量%のアミノ酸3分散液を得た。
ギ酸分散液の調整
ギ酸 20重量部
イオン交換水 60重量部
以上を撹拌混合して、固形分量10.2重量%のギ酸分散液を得た。
(オキシ酸分散液の調整)
オキシ酸1(n=2)分散液の調整
オキシ酸(n=2) 20重量部
イオン交換水 60重量部
以上を撹拌混合して、固形分量10.2重量%のオキシ酸1(n=2)分散液を得た。
オキシ酸2(n=1)分散液の調整
オキシ酸(n=1) 20重量部
イオン交換水 60重量部
以上を撹拌混合して、固形分量10.2重量%のオキシ酸2(n=1)分散液を得た。
オキシ酸3(n=8)分散液の調整
オキシ酸(n=8) 20重量部
イオン交換水 60重量部
以上を撹拌混合して、固形分量10.2重量%のオキシ酸3(n=6)分散液を得た。
オキシ酸4(n=0)分散液の調整
オキシ酸(n=0) 20重量部
イオン交換水 60重量部
以上を撹拌混合して、固形分量10.2重量%のオキシ酸4(n=0)分散液を得た。
オキシ酸5(n=9)分散液の調整
オキシ酸(n=9) 20重量部
イオン交換水 60重量部
以上を撹拌混合して、固形分量10.2重量%のオキシ酸5(n=9)分散液を得た。
(離型剤分散液1の調製)
アルキルワックスFNP0085(溶解温度86℃、日本精蝋社製) 45重量部
カチオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬製) 5重量部
イオン交換水 200重量部
以上を90℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、さらにアミノ酸1分散液5重量部およびオキシ酸1分散液5重量部を添加することにより、体積平均粒径200nm、固形分量24.3重量%の離型剤分散液1を得た。
(離型剤分散液2の調製)
オキシ酸1分散液の代わりにオキシ酸2分散液を添加した以外は、離型剤分散液1と同様に作成し、体積平均粒径200nm、固形分量24.3重量%の離型剤分散液2を得た。
(離型剤分散液3の調製)
オキシ酸1分散液の代わりにオキシ酸3分散液を添加した以外は、離型剤分散液1と同様に作成し、体積平均粒径200nm、固形分量24.3重量%の離型剤分散液3を得た。
(離型剤分散液4の調製)
アミノ酸1分散液の代わりにアミノ酸2分散液を添加した以外は、離型剤分散液1と同様に作成し、体積平均粒径200nm、固形分量24.3重量%の離型剤分散液4を得た。
(離型剤分散液5の調製)
アミノ酸1分散液の代わりにアミノ酸3分散液を添加した以外は、離型剤分散液1と同様に作成し、体積平均粒径200nm、固形分量24.3重量%の離型剤分散液5を得た。
(離型剤分散液6の調製)
アミノ酸1分散液の5重量部、オキシ酸1分散液5重量部を添加する代わりに、アミノ酸1分散液の0.2重量部、オキシ酸1分散液0.2重量部を添加した以外は、離型剤分散液1と同様に作成し、体積平均粒径200nm、固形分量24.3重量%の離型剤分散液6を得た。
(離型剤分散液7の調製)
アミノ酸1分散液の5重量部、オキシ酸1分散液5重量部を添加する代わりに、アミノ酸1分散液の40重量部、オキシ酸1分散液40重量部を添加した以外は、離型剤分散液1と同様に作成し、体積平均粒径200nm、固形分量24.3重量%の離型剤分散液7を得た。
(離型剤分散液8の調製)
オキシ酸1分散液5重量部を添加する代わりに、オキシ酸1分散液12.5重量部を添加した以外は、離型剤分散液1と同様に作成し、体積平均粒径200nm、固形分量24.3重量%の離型剤分散液8を得た。
(離型剤分散液9の調製)
オキシ酸1分散液5重量部を添加する代わりに、オキシ酸1分散液の3.13重量部を添加した以外は、離型剤分散液1と同様に作成し、体積平均粒径200nm、固形分量24.3重量%の離型剤分散液9を得た。
(離型剤分散液10の調製)
アルキルワックスFNP0085を45重量部添加する代わりに、エステルワックスWEP5(日本精蝋株式会社製)45重量部を添加し、加熱温度80℃とした以外は、離型剤分散液1と同様に作成し、体積平均粒径200nm、固形分量24.3重量%の離型剤分散液10を得た。
(離型剤分散液11の調製)
アミノ酸1分散液5重量部を添加しない以外は、離型剤分散液1と同様に作成し、体積平均粒径200nm、固形分量24.3重量%の離型剤分散液11を得た。
(離型剤分散液12の調製)
オキシ酸1分散液の代わりにオキシ酸4分散液5重量部を添加した以外は、離型剤分散液1と同様に作成し、体積平均粒径200nm、固形分量24.3重量%の離型剤分散液12を得た。
(離型剤分散液13の調製)
オキシ酸1分散液の代わりにオキシ酸5分散液5重量部を添加した以外は、離型剤分散液1と同様に作成し、体積平均粒径200nm、固形分量24.3重量%の離型剤分散液13を得た。
(離型剤分散液14の調製)
オキシ酸1分散液を添加しない以外は、離型剤分散液1と同様に作成し、体積平均粒径200nm、固形分量24.3重量%の離型剤分散液14を得た。
(離型剤分散液15の調製)
アミノ酸1分散液の代わりにギ酸分散液を5重量部添加した以外は、離型剤分散液1と同様に作成し、体積平均粒径200nm、固形分量24.3重量%の離型剤分散液15を得た。
(離型剤分散液16の調製)
アミノ酸1分散液の5重量部、オキシ酸1分散液5重量部を添加しない以外は、離型剤分散液1と同様に作成し、体積平均粒径200nm、固形分量24.3重量%の離型剤分散液16を得た。
(トナー製造例1)
結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液 15重量部
非結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液 80重量部
着色剤分散液 18重量部
離型剤分散液1 18重量部
以上の成分に固形分量16重量%となるようイオン交換水を添加し、丸型ステンレス製フラスコ中においてウルトラタラックスT50で十分に混合、分散した。次いで、これにポリ塩化アルミニウム0.36重量部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら47℃まで加熱した。47℃で60分保持した後、ここに非結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を緩やかに46重量部を追加した。その後、0.55モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを9.0にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら90℃まで加熱し、3.5時間保持した。
上記処理の終了後、冷却し、濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これを更に40℃のイオン交換水3Lに再分散し、15分300rpmで撹拌、洗浄した。これを更に5回繰り返し、濾液のpHが7.01、電気伝導度9.7μS/cm、表面張力が71.2Nmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで、真空乾燥を12時間継続し、トナー母粒子1を得た。この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.26、数平均粒度分布指標GSDpは1.25であり、該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が0.99であった。また、トナー形状係数SF1は134であった。
さらに、作製したトナー母粒子1の50重量部に対して1.0重量部の疎水性シリカ(TS720:キャボット製)および2.0重量部の疎水性シリカ(X24:信越化学工業株式会社製)を添加し、サンプルミルにてブレンドした。これをメタアクリレート(総研化学株式会社製)を1%コートした体積平均粒径50μmのフェライトキャリアに対しトナー濃度が5重量%になるように秤量し、ボールミルで5分間撹拌、混合し現像剤1を調整した。
(トナー製造例2)
離型剤分散液2分散液 18重量部
とした以外は、トナー製造例1と同様に操作しトナー母粒子2を得た。
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は6.0μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.26、数平均粒度分布指標GSDpは1.25であり、該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が0.99であった。また、トナー形状係数SF1は133であった。さらに、トナー製造例1と同様にして現像剤2を調整した。
(トナー製造例3)
離型剤分散液3分散液 18重量部
とした以外は、トナー製造例1と同様に操作しトナー母粒子3を得た。
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は5.9μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.25、数平均粒度分布指標GSDpは1.25であり、該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が1.00であった。また、トナー形状係数SF1は132であった。さらに、トナー製造例1と同様にして現像剤3を調整した。
(トナー製造例4)
離型剤分散液4分散液 18重量部
とした以外は、トナー製造例1と同様に操作しトナー母粒子4を得た。
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.26、数平均粒度分布指標GSDpは1.26であり、該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が1.00であった。また、トナー形状係数SF1は134であった。さらに、トナー製造例1と同様にして現像剤4を調整した。
(トナー製造例5)
離型剤分散液5分散液 18重量部
とした以外は、実施例1と同様に操作しトナー母粒子5を得た。
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は6.3μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.25、数平均粒度分布指標GSDpは1.25であり、該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が1.00であった。また、トナー形状係数SF1は135であった。さらに、トナー製造例1と同様にして現像剤5を調整した。
(トナー製造例6)
離型剤分散液6分散液 18重量部
とした以外は、トナー製造例1と同様に操作しトナー母粒子6を得た。
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.26、数平均粒度分布指標GSDpは1.25であり、該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が0.99であった。また、トナー形状係数SF1は134であった。さらに、トナー製造例1と同様にして現像剤6を調整した。
(トナー製造例7)
離型剤分散液7分散液 18重量部
とした以外は、トナー製造例1と同様に操作しトナー母粒子7を得た。
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.26、数平均粒度分布指標GSDpは1.25であり、該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が0.99であった。また、トナー形状係数SF1は134であった。また、このときにアスパラギン酸とオキシ酸(n=0)は、HPLCにて含有していることを確認した。さらに、トナー製造例1と同様にして現像剤7を調整した。
(トナー製造例8)
離型剤分散液8分散液 18重量部
とした以外は、トナー製造例1と同様に操作しトナー母粒子8を得た。
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.26、数平均粒度分布指標GSDpは1.25であり、該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が0.99であった。また、トナー形状係数SF1は134であった。さらに、トナー製造例1と同様にして現像剤8を調整した。
(トナー製造例9)
離型剤分散液9分散液 18重量部
とした以外は、トナー製造例1と同様に操作しトナー母粒子9を得た。
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.26、数平均粒度分布指標GSDpは1.25であり、該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が0.99であった。また、トナー形状係数SF1は134であった。さらに、トナー製造例1と同様にして現像剤9を調整した。
(トナー製造例10)
離型剤分散液10分散液 18重量部
とした以外は、トナー製造例1と同様に操作しトナー母粒子10を得た。
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.26、数平均粒度分布指標GSDpは1.25であり、該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が0.99であった。また、トナー形状係数SF1は134であった。さらに、トナー製造例1と同様にして現像剤10を調整した。
(トナー製造例11)
結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の15重量部及び非結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の80重量部の代わりに
スチレンアクリル樹脂微粒子分散液 95重量部
非結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液 80重量部
とした以外は、トナー製造例1と同様に操作しトナー母粒子11を得た。
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は6.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.26、数平均粒度分布指標GSDpは1.25であり、該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が0.99であった。また、トナー形状係数SF1は134であった。さらに、トナー製造例1と同様にして現像剤11を調整した。
(トナー製造例12)
離型剤分散液11分散液 18重量部
とした以外は、トナー製造例1と同様に操作しトナー母粒子12を得た。
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は6.2μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.26、数平均粒度分布指標GSDpは1.25であり、該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が0.99であった。また、トナー形状係数SF1は134であった。さらに、トナー製造例1と同様にして現像剤12を調整した。
(トナー製造例13)
離型剤分散液12分散液 18重量部
とした以外は、トナー製造例1と同様に操作しトナー母粒子13を得た。
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は6.2μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.26、数平均粒度分布指標GSDpは1.25であり、該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が0.99であった。また、トナー形状係数SF1は134であった。さらに、トナー製造例1と同様にして現像剤13を調整した。
(トナー製造例14)
離型剤分散液13分散液 18重量部
とした以外は、トナー製造例1と同様に操作しトナー母粒子14を得た。
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は6.2μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.26、数平均粒度分布指標GSDpは1.25であり、該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が0.99であった。また、トナー形状係数SF1は134であった。さらに、トナー製造例1と同様にして現像剤14を調整した。
(トナー製造例15)
離型剤分散液14分散液 18重量部
とした以外は、トナー製造例1と同様に操作しトナー母粒子15を得た。
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は6.2μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.26、数平均粒度分布指標GSDpは1.25であり、該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が0.99であった。また、トナー形状係数SF1は134であった。さらに、トナー製造例1と同様にして現像剤15を調整した。
(トナー製造例16)
離型剤分散液15分散液 18重量部
とした以外は、トナー製造例1と同様に操作しトナー母粒子16を得た。
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は6.2μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.26、数平均粒度分布指標GSDpは1.25であり、該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が0.99であった。また、トナー形状係数SF1は134であった。さらに、トナー製造例1と同様にして現像剤16を調整した。
(トナー製造例17)
離型剤分散液16分散液 18重量部
とした以外は、トナー製造例1と同様に操作しトナー母粒子17を得た。
この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は6.2μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.26、数平均粒度分布指標GSDpは1.25であり、該体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDp/GSDv)が0.99であった。また、トナー形状係数SF1は134であった。さらに、トナー製造例1と同様にして現像剤17を調整した。
(トナーの評価)
画質評価:評価機としてDocuCentreColor400CP(富士ゼロックス株式会社製)、用紙としてC2紙(富士ゼロックス株式会社製)にて調整して画像出しした後、インプット濃度100%の画像濃度を5.0に調整した際の画像定着後、、インプット濃度100%の画像濃度を1.5に調整した際の50%および20%ハーフトーン画像のオフセットを確認し、以下の基準で評価した。外部定着器(定着ロール表面はPFAコート、オイルレス仕様)を用い、ニップ幅6.5mm、定着速度220mm/秒、定着温度160℃にて定着した。現像剤として上記現像剤1〜17を用いた。
(ハーフトーン評価)
ハーフトーン評価は、上記マシンにて、富士ゼロックス社製上質紙(J紙)を用いトナー載り量0.5g/m2に調整して画像形成を行い、160℃で定着を行った後、画像を目視評価した。評価指標は下記の通りである。
◎:オフセットが全くなく鮮やかなハーフトーン。
○:オフセットとは認識できない程度の定着オフセット領域0〜5%のハーフトーン。
△:定着オフセット領域6〜15%の軽微なハーフトーン。
×:定着オフセット領域16%以上と明らかに認識できる程度のハーフトーン。
以上の結果をまとめて表1に示す。なお、上記現像剤1〜現像剤11(トナー製造例1〜11で製造したトナー1〜11を使用)が本発明の実施例1〜11であり、上記現像剤12〜現像剤17(トナー製造例12〜17で製造したトナー12〜17を使用)が比較例1〜6である。
表1において、実施例1は、アミノ酸としてアスパラギン酸を使用し、オキシ酸のnが2であり、アミノ酸を0.2質量%、オキシ酸を0.2質量%使用してアミノ酸とオキシ酸との比(C=A/B比と表記)が1である。また、結着樹脂としてポリエステル、離型剤としてアルキルワックスをそれぞれ使用した。
実施例2は、アミノ酸としてアスパラギン酸を使用し、オキシ酸のnが1であり、アミノ酸を0.2質量%、オキシ酸を0.2質量%使用してアミノ酸とオキシ酸との比(C=A/B比と表記)が1である。また、結着樹脂としてポリエステル、離型剤としてアルキルワックスをそれぞれ使用した。
実施例3は、アミノ酸としてアスパラギン酸を使用し、オキシ酸のnが8であり、アミノ酸を0.2質量%、オキシ酸を0.2質量%使用してアミノ酸とオキシ酸との比(C=A/B比と表記)が1である。また、結着樹脂としてポリエステル、離型剤としてアルキルワックスをそれぞれ使用した。
実施例4は、アミノ酸としてグリシンを使用し、オキシ酸のnが2であり、アミノ酸を0.2質量%、オキシ酸を0.2質量%使用してアミノ酸とオキシ酸との比(C=A/B比と表記)が1である。また、結着樹脂としてポリエステル、離型剤としてアルキルワックスをそれぞれ使用した。
実施例5は、アミノ酸としてアラニンを使用し、オキシ酸のnが2であり、アミノ酸を0.2質量%、オキシ酸を0.2質量%使用してアミノ酸とオキシ酸との比(C=A/B比と表記)が1である。また、結着樹脂としてポリエステル、離型剤としてアルキルワックスをそれぞれ使用した。
実施例6は、アミノ酸としてアスパラギン酸を使用し、オキシ酸のnが2であり、アミノ酸を0.009質量%、オキシ酸を0.009質量%使用してアミノ酸とオキシ酸との比(C=A/B比と表記)が1である。また、結着樹脂としてポリエステル、離型剤としてアルキルワックスをそれぞれ使用した。
実施例7は、アミノ酸としてアスパラギン酸を使用し、オキシ酸のnが2であり、アミノ酸を1.6質量%、オキシ酸を1.6質量%使用してアミノ酸とオキシ酸との比(C=A/B比と表記)が1である。また、結着樹脂としてポリエステル、離型剤としてアルキルワックスをそれぞれ使用した。
実施例8は、アミノ酸としてアスパラギン酸を使用し、オキシ酸のnが2であり、アミノ酸を0.2質量%、オキシ酸を0.5質量%使用してアミノ酸とオキシ酸との比(C=A/B比と表記)が0.4である。また、結着樹脂としてポリエステル、離型剤としてアルキルワックスをそれぞれ使用した。
実施例9は、アミノ酸としてアスパラギン酸を使用し、オキシ酸のnが2であり、アミノ酸を0.2質量%、オキシ酸を0.125質量%使用してアミノ酸とオキシ酸との比(C=A/B比と表記)が1.6である。また、結着樹脂としてポリエステル、離型剤としてアルキルワックスをそれぞれ使用した。
実施例10は、アミノ酸としてアスパラギン酸を使用し、オキシ酸のnが2であり、アミノ酸を0.2質量%、オキシ酸を0.2質量%使用してアミノ酸とオキシ酸との比(C=A/B比と表記)が1である。また、結着樹脂としてポリエステル、離型剤としてエステルワックスをそれぞれ使用した。
実施例11は、アミノ酸としてアスパラギン酸を使用し、オキシ酸のnが2であり、アミノ酸を0.2質量%、オキシ酸を0.2質量%使用してアミノ酸とオキシ酸との比(C=A/B比と表記)が1である。また、結着樹脂としてスチレンアクリル、離型剤としてアルキルワックスをそれぞれ使用した。
また、比較例1は、アミノ酸を使用せず、オキシ酸のnが2であり、オキシ酸を0.2質量%使用した。また、結着樹脂としてポリエステル、離型剤としてアルキルワックスをそれぞれ使用した。
比較例2は、アミノ酸としてアスパラギン酸を使用し、オキシ酸のnが0であり、アミノ酸を0.2質量%、オキシ酸を0.2質量%使用してアミノ酸とオキシ酸との比(C=A/B比と表記)が1である。また、結着樹脂としてポリエステル、離型剤としてアルキルワックスをそれぞれ使用した。
比較例3は、アミノ酸としてアスパラギン酸を使用し、オキシ酸のnが9であり、アミノ酸を0.2質量%、オキシ酸を0.2質量%使用してアミノ酸とオキシ酸との比(C=A/B比と表記)が1である。また、結着樹脂としてポリエステル、離型剤としてアルキルワックスをそれぞれ使用した。
比較例4は、アミノ酸としてアスパラギン酸を使用し、オキシ酸を使用せず、アミノ酸を0.2質量%使用した。また、結着樹脂としてポリエステル、離型剤としてアルキルワックスをそれぞれ使用した。
比較例5は、アミノ酸の代わりにギ酸を使用し、オキシ酸のnが2であり、ギ酸を0.2質量%、オキシ酸を0.2質量%使用してギ酸とオキシ酸との比(C=A/B比と表記)が1である。また、結着樹脂としてポリエステル、離型剤としてアルキルワックスをそれぞれ使用した。
比較例6は、アミノ酸及びオキシ酸を使用せず、結着樹脂としてポリエステル、離型剤としてアルキルワックスをそれぞれ使用した。
表1に示されるように、実施例1〜11の現像剤を使用した場合は、オフセットの少ない画像が得られた。一方、比較例1〜6の現像剤を使用した場合は、オフセットが発生した。