以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明のスパッタリングターゲットは、例えば高純度単体金属や高純度合金からなるターゲットにおいて、その内部に存在する酸素、窒素、炭素などの進入型不純物の量を単に規定するだけではなく、これら進入型不純物の含有量のターゲット各部位でのばらつきを低減したものである。
すなわち、スパッタリングターゲット中に存在する酸素については、ターゲットの各部位の酸素量をターゲット全体の酸素量の平均値に対して±20%以内としている。また、スパッタリングターゲット中に存在する窒素については、ターゲットの各部位の窒素量をターゲット全体の窒素量の平均値に対して±40%以内としている。さらに、スパッタリングターゲット中に存在する炭素については、ターゲットの各部位の炭素量をターゲット全体の炭素量の平均値に対して±70%以内としている。
このように、ターゲット中に存在する進入型不純物、すなわち酸素、窒素、炭素の各含有量のターゲット各部位でのばらつきを低減することによって、従来達成することができなかった、優れた膜分布が得られると共に、各種膜の諸特性を向上させることができ、さらにターゲットから発生するダスト数を削減することが可能となる。
スパッタリングターゲット中の酸素量にばらつきが存在していると、その結果として得られる膜の酸素量がばらつくことから、膜の抵抗値、熱伝導率、膜応力、さらに磁性材料では保磁力や透磁率などの磁気特性が影響を受け、これら各種特性の面内均一性が低下する。また、膜厚分布の均一性なども低下すると共に、ダストの発生数も増加する。このため、スパッタリングターゲットの各部位の酸素量は、ターゲット全体の酸素量の平均値に対して±20%以内とする。各部位の酸素量はターゲット全体の平均値に対して±15%以内とすることがさらに好ましい。
ターゲット全体としての酸素量(平均値)の好ましい値は、ターゲットの構成材料によっても異なるが、おおよそ300ppm以下とすることが好ましい。これは、ターゲット全体としての酸素量(平均値)が300ppmを超えると、そのばらつきの影響よりも酸素の絶対量の方がより大きく影響するようになるためである。ターゲット中に存在する酸素は種々の金属材料に対して影響を及ぼすことから、本発明の第1のスパッタリングターゲットは各種金属材料に対して有効である。
また、スパッタリングターゲット中の窒素量にばらつきが存在していると、その結果として得られる膜の窒素量がばらつくことから、膜の抵抗値、熱伝導率、膜応力などが影響を受け、これら各種特性の面内均一性が低下する。また、膜厚分布の均一性なども低下すると共に、ダストの発生数も増加する。このため、スパッタリングターゲットの各部位の窒素量は、ターゲット全体の窒素量の平均値に対して±40%以内とする。各部位の窒素量はターゲット全体の平均値に対して±30%以内とすることがさらに好ましい。
ターゲット全体としての窒素量(平均値)の好ましい値は、ターゲットの構成材料によっても異なるが、おおよそ300ppm以下とすることが好ましい。これは、ターゲット全体としての窒素量(平均値)が300ppmを超えると、そのばらつきの影響よりも窒素の絶対量の方がより大きく影響するようになるためである。ターゲット中に存在する窒素は、窒素との親和力が強い金属材料に対して影響を及ぼすことから、本発明の第2のスパッタリングターゲットはTi、Zr、Hf、V、Nb、Taなどの金属材料に対して有効である。
さらに、スパッタリングターゲット中の炭素量にばらつきが存在していると、その結果として得られる膜の炭素量がばらつくことから、膜の抵抗値、熱伝導率、膜応力などが影響を受け、これら各種特性の面内均一性が低下する。また、膜厚分布の均一性なども低下すると共に、ダストの発生数も増加する。このため、スパッタリングターゲットの各部位の炭素量は、ターゲット全体の炭素量の平均値に対して±70%以内とする。各部位の炭素量はターゲット全体の平均値に対して±50%以内とすることがさらに好ましい。
ターゲット全体としての炭素量(平均値)の好ましい値は、ターゲットの構成材料によっても異なるが、おおよそ300ppm以下とすることが好ましい。これは、ターゲット全体としての炭素量(平均値)が300ppmを超えると、そのばらつきの影響よりも炭素の絶対量の方がより大きく影響するようになるためである。ターゲット中に存在する炭素は、炭素との親和力が強い金属材料に対して影響を及ぼすことから、本発明の第3のスパッタリングターゲットはTi、Zr、Hf、Nb、Ta、Vなどの金属材料に対して有効である。
本発明のスパッタリングターゲットは、上記した酸素量のばらつきに関する規定、窒素量のばらつきに関する規定、炭素量のばらつきに関する規定の少なくともいずれかを満足していればよいが、これらの全てを満たすことが特に好ましい。また、スパッタリングターゲットの構成材料によっては、酸素量、窒素量、炭素量のばらつきに関する規定のうちの2つを満足させることで良好な結果が得られる場合もある。
ここで、本発明におけるターゲットの各部位の酸素量、窒素量および炭素量とは、図1に示すように、例えば円板状ターゲットの中心部(位置1)と、中心部を通り円周を均等に分割した4本の直線上の外周近傍位置(位置2〜9)およびその1/2の距離の位置(位置10〜17)からそれぞれ試料を採取し、これら17点の試料の分析値を示すものとする。
各分析用試料の大きさは8×8×10mmとし、各試料の酸素量、窒素量および炭素量はそれぞれ5回測定を行った平均値とする。本発明は、これら各位置での酸素量、窒素量および炭素量とそれぞれの平均値との変動幅を規定したものである。なお、酸素量は通常使用されている不活性ガス融解−赤外線吸収法で分析した値とする。窒素量は不活性ガス融解−熱伝導法で分析した値、炭素量は燃焼−赤外線吸収法で分析した値とする。
本発明のスパッタリングターゲットは、種々の単体金属や合金などの金属材料からなるターゲットに適用可能であるが、例えばTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Al、Ge、ランタノイド元素およびSiから選ばれる少なくとも1種の元素を含む金属材料、さらには上記した金属元素群から選ばれる少なくとも1種の元素を主成分とする金属材料からなるスパッタリングターゲットに対して特に好適である。
上記した金属元素、特にTi、Al、Mn、Zr、Hf、Vなどの元素は、酸素、窒素、炭素などとの親和力が強いことから、酸素、窒素、炭素の影響を受けやすく、酸素量、窒素量、炭素量にばらつきが存在していると膜分布や膜特性などが不均一化しやすい。このようなことから、本発明のスパッタリングターゲットは上記したような金属元素を含む金属材料、さらには主成分とする金属材料からなるスパッタリングターゲットに対して特に好適である。
本発明のスパッタリングターゲットの具体的な用途としては、配線形成用ターゲット、磁性膜形成用ターゲット、記録膜形成用ターゲットなどが挙げられる。配線形成用ターゲットとしては、例えば高純度Tiターゲット、高純度Nbターゲット、高純度Taターゲット、高純度Alターゲット、高純度Al合金ターゲットなどが挙げられる。また、磁性膜形成用ターゲットとしては、高純度Co合金ターゲット、高純度Mn合金ターゲットなどが挙げられる。さらに、本発明のスパッタリングターゲットは、DVD−RAM媒体用ターゲット、Ge合金ターゲットなどに対しても有効である。
なお、本発明のスパッタリングターゲット中の酸素、窒素および炭素以外の不純物元素については、一般的な高純度金属材のレベル程度であれは多少含んでいてもよいが、膜特性などを向上させる上で減少およびばらつきの低減を図ることが好ましい。
本発明のスパッタリングターゲットは、例えば以下のようにして作製することができる。
まず、ターゲット原料として溶解材を使用する場合には、溶解原料となる粗金属材中の酸素量、窒素量、炭素量を管理すると共に、これら各元素量を低減し得る真空溶解法(例えばEB溶解)を適用して溶解する。真空溶解時においても、溶解開始時の雰囲気(真空度)を終了時まで維持し、溶解途中での酸素量、窒素量、炭素量の変動を抑制する。
溶解材(インゴット)は、通常、鍛造や圧延などの塑性加工が施され、さらに必要に応じて熱処理された後に、所望形状に加工されてターゲット材として使用される。この際、例えばインゴットに径方向と軸方向の熱間加工を繰り返し、合計の加工率を200%以上とし、さらに加工後に対象材の融点近傍でアニール処理することによって、より一層酸素量、窒素量、炭素量のばらつきを抑制することができる。
また、ターゲット原料として焼結材を使用する場合には、焼結体の原料となる金属粉末中の酸素量、窒素量、炭素量を管理すると共に、粉末の混合時間、混合雰囲気、混合装置や混合メディアの材質などを適宜に設定および選択し、さらには焼結条件の最適化などを図ることによって、酸素量、窒素量、炭素量のばらつきを抑制する。
焼結材についても、通常、鍛造や圧延などの塑性加工が施され、さらに必要に応じて熱処理された後に、所望形状に加工されてターゲット材として使用される。この際に溶解材と同様な条件を選択することによって、より一層酸素量、窒素量、炭素量のばらつきを抑制することができる。
また、焼結材の場合に重要な要件は焼結時の条件であり、ホットプレスで焼結する場合には予め予圧なしで長時間脱ガス、脱炭素、脱窒素処理を行い、その後加圧することによって、酸素量、窒素量、炭素量のばらつきを抑制することができる。
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
実施例1、比較例1
この実施例では、本発明のスパッタリングターゲットをTiターゲットに適用した例について述べる。
ターゲット原料としては溶融塩電解Tiを用いた。溶融塩電解Tiは酸素量、窒素量、炭素量が電析条件(例えば電析の開始時と終了時)や電析する場所により異なるため、場所による分析を十分に行い、さらにふるいにより粒径を揃えて、原料での酸素量のばらつきを±20%、炭素量のばらつきを±50%、窒素量のばらつきを±30%に抑えた。このようなTi原料を80×80×800mmの電極形状にプレス成形し、溶解中の真空度を一定に保つために、溶解原料の投入量を制御しながらEB溶解した。溶解中の真空度は10-3Pa以下とした。
次に、上記したTiインゴットに径方向と軸方向の熱間加工を繰り返し、合計の加工率を200%以上とし、さらにTiの融点近傍でアニール処理した後、Al製バッキングプレートに拡散接合し、さらに機械加工することによって、直径320mm×厚さ10mmのTiターゲットを2枚作製した。これら2枚のTiターゲットは同一原料、同一条件で作製したものであり、同一の不純物分布を有しているものと見なすことができるものである。
このようにして得たTiターゲットのうち1枚は分析用として用い、前述した方法(図1参照)にしたがって各測定位置からそれぞれ分析用試料を切り出し、各試料について5回繰り返し分析を行い、その平均値を各部位における酸素量、窒素量、炭素量として求めた。表1に各部位における酸素量、窒素量、炭素量(それぞれ5回平均)とそれぞれの全体としての平均値を示す。また、表2に各部位における酸素量、窒素量、炭素量のそれぞれの全体平均に対する変動率[%](=(各部位の5回平均−全体平均)×100/全体平均)を示す。
一方、本発明との比較例1として、以下のようにしてTiターゲットを作製した。原料としては実施例1と同様に溶融塩電解Tiを用いたが、原料の選別は特に行わず、80×80×800mmの電極形状にプレス成形し、通常のEB溶解を行った。
次に、上記したTiインゴットを冷間鍛造、冷間圧延した後、Al製バッキングプレートに拡散接合し、さらに機械加工することによって、直径320mm×厚さ10mmのTiターゲットを2枚作製した。これら2枚のTiターゲットは同一原料、同一条件で作製したものであり、同一の不純物分布を有しているものと見なすことができるものである。
これら比較例1のTiターゲットのうち1枚は分析用として用いて、実施例1と同様にして各部位における酸素量、窒素量、炭素量を測定した。また、それぞれの全体としての平均値、各部位における酸素量、窒素量、炭素量のそれぞれの全体平均に対する変動率を求めた。これらの値を表3および表4に示す。
次に、上述した実施例1および比較例1の各Tiターゲットを用いて、それぞれ8インチのSiウェハー上にTi膜(膜厚約1μm)を成膜し、Siウェハー上に付着したダストの数をパーティクルカウンターで測定した。それらの結果を図2に示す。また、Ti膜の比抵抗分布を測定した。その結果を図3に示す。これらの測定結果から明らかなように、本発明のTiターゲットはダストの発生数が少なく、かつ得られるTi膜の比抵抗分布を向上させることができる。
実施例2、比較例2
この実施例では、本発明のスパッタリングターゲットをNbターゲットに適用した例について述べる。
ターゲット原料としては、Nb2O5鉱石をテルミット還元した粗Nb材を用い、これを5回EB溶解してガス成分の均一化を行った。さらに、得られた高純度Nbに対して2000℃×24時間の条件で均一化熱処理を施し、酸素、窒素、炭素の均一分散化を実施した。
次に、上記したNbインゴットに径方向と軸方向の熱間加工を繰り返し、合計の加工率を200%以上とし、さらにNbの融点近傍でアニール処理した後、Al製バッキングプレートに拡散接合し、さらに機械加工することによって、直径320mm×厚さ10mmのNbターゲットを2枚作製した。これら2枚のNbターゲットは同一原料、同一条件で作製したものであり、同一の不純物分布を有しているものと見なすことができるものである。
このようにして得たNbターゲットのうち1枚は分析用として用い、前述した方法(図1参照)にしたがって各測定位置からそれぞれ分析用試料を切り出し、各試料について5回繰り返し分析を行い、その平均値を各部位における酸素量、窒素量、炭素量として求めた。表5に各部位における酸素量、窒素量、炭素量(それぞれ5回平均)とそれぞれの全体としての平均値を示す。また、表6に各部位における酸素量、窒素量、炭素量のそれぞれの全体平均に対する変動率[%](=(各部位の5回平均−全体平均)×100/全体平均)を示す。
一方、本発明との比較例2として、以下のようにしてNbターゲットを作製した。原料に市販のEB溶解Nbインゴットを用い、冷間鍛造、冷間圧延した後、Al製バッキングプレートに拡散接合し、さらに機械加工することによって、直径320mm×厚さ10mmのNbターゲットを2枚作製した。これら2枚のNbターゲットは同一原料、同一条件で作製したものであり、同一の不純物分布を有しているものと見なすことができるものである。
これら比較例2のNbターゲットのうち1枚は分析用として用いて、実施例2と同様にして各部位における酸素量、窒素量、炭素量を測定した。また、それぞれの全体としての平均値、各部位における酸素量、窒素量、炭素量のそれぞれの全体平均に対する変動率を求めた。これらの値を表7および表8に示す。
次に、上述した実施例2および比較例2の各Nbターゲットを用いて、それぞれ8インチのSiウェハー上にNb膜(膜厚約1μm)を成膜し、Siウェハー上に付着したダストの数をパーティクルカウンターで測定した。それらの結果を図4に示す。また、Nb膜の比抵抗分布を測定した。その結果を図5に示す。これらの測定結果から明らかなように、本発明のNbターゲットはダストの発生数が少なく、かつ得られるNb膜の比抵抗分布を向上させることができる。
実施例3、比較例3
この実施例では、本発明のスパッタリングターゲットをTaターゲットに適用した例について述べる。
まず、テルミット還元した粗Ta材をプレスで固めて電極を形成した後、EB溶解を5回実施し、さらに帯溶融精練により不純物除去を行った後、2500℃×24時間の条件で均一化熱処理を施した。これらによって、酸素、窒素、炭素の均一分散化処理を実施した。
次に、上記したTaインゴットに径方向と軸方向の熱間加工を繰り返し、合計の加工率を200%以上とし、さらにTaの融点近傍でアニール処理した後、Al製バッキングプレートに拡散接合し、さらに機械加工することによって、直径320mm×厚さ10mmのTaターゲットを2枚作製した。これら2枚のTaターゲットは同一原料、同一条件で作製したものであり、同一の不純物分布を有しているものと見なすことができるものである。
このようにして得たTaターゲットのうち1枚は分析用として用い、前述した方法(図1参照)にしたがって各測定位置からそれぞれ分析用試料を切り出し、各試料について5回繰り返し分析を行い、その平均値を各部位における酸素量、窒素量、炭素量として求めた。表9に各部位における酸素量、窒素量、炭素量(それぞれ5回平均)とそれぞれの全体としての平均値を示す。また表10に各部位における酸素量、窒素量、炭素量のそれぞれの全体平均に対する変動率[%](=(各部位の5回平均−全体平均)×100/全体平均)を示す。
一方、本発明との比較例3として、以下のようにしてTaターゲットを作製した。原料に市販のEB溶解Taインゴットを用い、冷間鍛造、冷間圧延した後、Al製バッキングプレートに拡散接合し、さらに機械加工することによって、直径320mm×厚さ10mmのTaターゲットを2枚作製した。これら2枚のTaターゲットは同一原料、同一条件で作製したものであり、同一の不純物分布を有しているものと見なすことができるものである。
これら比較例3のTaターゲットのうち1枚は分析用として用いて、実施例3と同様にして各部位における酸素量、窒素量、炭素量を測定した。また、それぞれの全体としての平均値、各部位における酸素量、窒素量、炭素量のそれぞれの全体平均に対する変動率を求めた。これらの値を表11および表12に示す。
次に、上述した実施例3および比較例3の各Taターゲットを用いて、それぞれ8インチのSiウェハー上にTa膜(膜厚約1μm)を成膜し、Siウェハー上に付着したダストの数をパーティクルカウンターで測定した。それらの結果を図6に示す。また、Ta膜の比抵抗分布を測定した。その結果を図7に示す。これらの測定結果から明らかなように、本発明のTaターゲットはダストの発生数が少なく、かつ得られるTa膜の比抵抗分布を向上させることができる。
実施例4、比較例4
この実施例では、本発明のスパッタリングターゲットをAl−Cu合金ターゲットに適用した例について述べる。
まず、5Nの高純度Alと6Nの高純度Cuを原料として用い、Arガスのバブリング処理溶解を行い、進入型元素の精製を行った後、さらに真空溶解を行った。これに550℃×36時間の条件で均一化熱処理を施し、酸素、窒素、炭素の均一分散化を実施した。
次に、上記したAl−Cu合金インゴットに径方向と軸方向の熱間加工を繰り返し、合計の加工率を200%以上とし、さらに合金の融点近傍でアニール処理した後、Cu製バッキングプレートにIn合金を用いて接合し、さらに機械加工することによって、直径320mm×厚さ10mmのAl−Cu合金ターゲットを2枚作製した。これら2枚のターゲットは同一原料、同一条件で作製したものであり、同一の不純物分布を有しているものと見なすことができるものである。
このようにして得たAl−Cu合金ターゲットのうち1枚は分析用として用い、前述した方法(図1参照)にしたがって各測定位置からそれぞれ分析用試料を切り出し、各試料について5回繰り返し分析を行い、その平均値を各部位における酸素量として求めた。表13に各部位における酸素量(5回平均)とその全体としての平均値を示す。また、表14に各部位における酸素量の全体平均に対する変動率[%](=(各部位の5回平均−全体平均)×100/全体平均)を示す。
一方、本発明との比較例4として、以下のようにしてAl−Cu合金ターゲットを作製した。まず、5Nの高純度Alと6Nの高純度Cuを原料として用いて真空溶解を行った後、450℃×5時間の条件で均一化熱処理を施した。得られた合金インゴットに冷間鍛造、冷間圧延、300℃で2時間の再結晶化熱処理を施した後、Cu製バッキングプレートにIn合金を用いて接合し、さらに機械加工することによって、直径320mm×厚さ10mmのAl−Cu合金ターゲットを2枚作製した。これら2枚のAl−Cu合金ターゲットは同一原料、同一条件で作製したものであり、同一の不純物分布を有しているものと見なすことができるものである。
これら比較例4のAl−Cu合金ターゲットのうち1枚は分析用として用いて、実施例4と同様にして各部位における酸素量を測定した。また、全体としての平均値、各部位における酸素量の全体平均に対する変動率を求めた。これらの値を表15および表16に示す。
次に、上述した実施例4および比較例4の各Al−Cu合金ターゲットを用いて、それぞれ 8インチのSiウェハー上にAl−Cu合金膜(膜厚約1μm)を成膜し、Siウェハー上に付着したダストの数をパーティクルカウンターで測定した。それらの結果を図8
に示す。また、Al−Cu合金膜の比抵抗分布を測定した。その結果を図9に示す。これらの測定結果から明らかなように、本発明のAl−Cu合金ターゲットはダストの発生数が少なく、かつ得られるAl−Cu合金膜の比抵抗分布を向上させることができる。
実施例5、比較例5
この実施例では、本発明のスパッタリングターゲットをCo−Pt−Cr合金ターゲットに適用した例について述べる。
まず原料として、4Nの電解Co、4Nの電解Cr、4NのPtを用い、高周波誘導溶解にて真空溶解を行い、これを原料に用いてRDP法により合金粉末を作製した。この合金粉末を100〜300μmにAr雰囲気中で篩い分けし、得られた合金粉末を温度1200℃、圧力24.5MPa、3時間の条件で真空ホットプレスした後、機械加工することによって、直径127mm×厚さ3mmのCo−Pt−Cr合金ターゲットを2枚作製した。これら2枚のターゲットは同一原料、同一条件で作製したものであり、同一の不純物分布を有しているものと見なすことができるものである。
このようにして得たCo−Pt−Cr合金ターゲットのうち1枚は分析用として用い、前述した方法(図1参照)にしたがって各測定位置からそれぞれ分析用試料を切り出し、各試料について5回繰り返し分析を行い、その平均値を各部位における酸素量、炭素量として求めた。表17に各部位における酸素量、炭素量(それぞれ5回平均)とそれぞれの全体としての平均値を示す。また、表18に各部位における酸素量、炭素量のそれぞれの全体平均に対する変動率[%](=(各部位の5回平均−全体平均)×100/全体平均)を示す。
一方、本発明との比較例5として、以下のようにしてCo−Pt−Cr合金ターゲットを作製した。まず原料として、4Nの電解Co、4Nの電解Cr、4NのPtを用い、高周波誘導溶解にて真空溶解を行ってインゴットを作製した後、1200℃で熱間鍛造、熱間圧延を実施し、さらに機械加工して直径152.4mm×厚さ3mmのCo−Pt−Cr合金ターゲットを2枚作製した。これら2枚のターゲットは同一原料、同一条件で作製したものであり、同一の不純物分布を有しているものと見なすことができるものである。
これら比較例5のCo−Pt−Cr合金ターゲットのうち1枚は分析用として用いて、実施例5と同様にして各部位における酸素量、炭素量を測定した。また、それぞれの全体としての平均値、各部位における酸素量、炭素量のそれぞれの全体平均に対する変動率を求めた。これらの値を表19および表20に示す。
次に、上述した実施例5および比較例5の各Co−Pt−Cr合金ターゲットを用いて、それぞれ4インチのガラス基板上にCo−Pt−Cr合金膜(膜厚約1μm)を成膜し、ガラス基板上に付着したダストの数をパーティクルカウンターで測定した。それらの結果を図10に示す。また、合金膜の比抵抗分布を測定した。本発明によるCo−Pt−Cr合金ターゲットはダストの発生数が少なく、かつ得られるCo−Pt−Cr合金膜の比抵抗分布を向上させることができる。
実施例6、比較例6
この実施例では、本発明のスパッタリングターゲットをPt−Mn合金ターゲットに適用した例について述べる。
まず、電界MnとPt原料とを所定量配合し、カルシアるつぼで真空溶解した後、直径40mm、長さ500mmのインゴットを数本得た。これらを回転電極として使用して、REP法によりPt40Mn60の組成を有する粉末を作製した。得られた粉末をふるいにかけ、粒径100μm以下の粉末を用いて真空ホットプレスすることによって、直径200mm×厚さ3mmのPt−Mn合金ターゲットを2枚作製した。なお、真空ホットプレス前に予圧なしで脱ガス、脱炭素、脱窒素処理を行った。これら2枚のターゲットは同一原料、同一条件で作製したものであり、同一の不純物分布を有しているものと見なすことができるものである。
このようにして得たPt−Mn合金ターゲットのうち1枚は分析用として用い、前述した方法(図1参照)にしたがって各測定位置からそれぞれ分析用試料を切り出し、各試料について5回繰り返し分析を行い、その平均値を各部位における酸素量、窒素量、炭素量として求めた。表21に各部位における酸素量、窒素量、炭素量(それぞれ5回平均)とそれぞれの全体としての平均値を示す。また、表22に各部位における酸素量、窒素量、炭素量のそれぞれの全体平均に対する変動率[%](=(各部位の5回平均−全体平均)×100/全体平均)を示す。
一方、本発明との比較例6として、以下のようにしてPt−Mn合金ターゲットを作製した。まず、Mn粉末とPt粉末を所定量配合し、真空中でナイロンポットにより混合した。この混合粉末を直接真空ホットプレスすることによって、直径200mm×厚さ3mmのPt−Mn合金ターゲットを2枚作製した。これら2枚のターゲットは同一原料、同一条件で作製したものであり、同一の不純物分布を有しているものと見なすことができるものである。
これら比較例6のPt−Mn合金ターゲットのうち1枚は分析用として用いて、実施例6と同様にして各部位における酸素量、窒素量、炭素量を測定した。また、それぞれの全体としての平均値、各部位における酸素量、窒素量、炭素量のそれぞれの全体平均に対する変動率を求めた。これらの値を表23および表24に示す。
次に、上述した実施例6および比較例6の各Pt−Mn合金ターゲットを用いて、それぞれ4インチのガラス基板上にPt−Mn合金膜(膜厚約100nm)を成膜し、ガラス基板上に付着したダストの数をパーティクルカウンターで測定した。それらの結果を図11に示す。また、Pt−Mn合金膜の比抵抗分布を測定した。その結果、本発明のPt−Mn合金ターゲットはダストの発生数が少なく、かつ得られるPt−Mn合金膜の比抵抗分布が向上することが分かった。