JP5460151B2 - 難燃性皮革 - Google Patents
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Description
この特性により天然皮革は消防服などに用いられてきた。又、天然皮革は炭化によって燃え、化学繊維のように摩擦熱で繊維が溶融し、皮膚に付着することも起こらないので、ライダースーツに適している。難燃性の素材としては優れた素材であるということができる。
自動車、鉄道車両、航空機等の内装材に用いるときには難燃性や防炎性が求められる。自動車ではFMVSS302(米国の連邦自動車安全基準)、JISD1021(対応国際規格はISO3795)などがある。
具体的に述べると、この発明は難燃化処理に関し、皮革そのものの難燃化を行うこと(以下、第一の特徴という)及び難燃化した塗膜層を形成すること(以下、第二の特徴)、及び塗膜層表面に更に難燃剤層を形成すること(以下、第三の特徴)ことにより塗膜層の難燃化を行うものである。
第一の特徴は、再なめし工程において難燃剤を溶解せしめた浴中に皮革素材を含浸する点にある。難燃剤には、テトラブロムフタール酸ナトリウム塩などのハロゲン系化合物あるいは三酸化アンチモンなどを使用し、これらは組み合わせて用いることができる。このハロゲン系難燃剤は通常、浴中の濃度が3%〜7.5%程度となるような量で用いられる。含浸時間は、通常、30分〜60分である(0013)。
第二の特徴は、上記含浸後に、素材をセッター工程、乾燥工程、バイブレーション工程、バフ工程の各処理を行った後、水性塗装剤による塗装層を形成するに先立ち、この水性塗装剤に難燃剤を混入させておいて、塗装層を難燃化する点にある。使用する難燃剤は、水溶性有機リン系化合物である、脂肪族系ホスホン酸エステルを用いている。この難燃剤の使用量は、塗装剤全量の、5〜15%の量を、塗装処理方法により行う。形成される塗装皮膜層の厚さは、通常10μ〜40μである(0015)。
第三の特徴は、前記難燃剤含有塗装皮膜層の形成後、難燃剤を含有する有機溶剤塗装剤による層を難燃剤含有塗装皮膜層表面に形成する。難燃剤には、有機リン、ハロゲン系化合物であり、例えばアルキルフェニルホスフェートとハロゲン化アルキルホスフェートとの混合物が用いられ、その使用量は有機溶剤全量に対し5〜15%含み、通常5μ〜10μとなる(0016)。
問題点とされているのは、以下の通りである。
(1) 第一の特徴点では、再なめし剤と共に難燃剤を皮革中に含浸させる。この方法そのものは製造工程に難燃化処理工程を独立して設けず、製造工程の合理化が施されていると言うことができる。ところで、この操作の後の水絞りを行うセッター工程では、折角天然皮革中に取り込んだ難燃剤の一部が水と共に流出する結果、天然皮革部分の難燃化に支障が生ずることとなる。水しぼりの際に、難燃剤を含む水溶液がしぼり取られ、革に残る難燃剤の量のコントロールが不充分となり難燃性能にばらつきが出る結果となる。
(2) 第二の特徴点では、難燃剤を混入した水性塗装剤により形成した塗膜層には、乾燥後にも粘着性が残るという問題点がある。このため、乾燥終了後、次行程の難燃剤を添加した有機溶剤塗装剤による皮膜層形成に移る間、革を積み重ねて取り扱うときに、革を表面と裏面が接するようにして積み重ねると裏面の毛羽が表面に付着して不良の原因となる場合があり、これを避けようとして表面どうしが接するように積み重ねると、表面どうしがくっついて剥がしにくくなる。粘着性の原因は難燃剤にあると考えられ、水性塗料に添加する難燃剤を検討する必要がある。
(3) 第三の特徴点では、塗膜層に難燃剤を添加して塗膜層を形成しようとするのでは塗膜層全部を難燃化することでは十分でなく、そこで塗膜層の上に難燃剤の層を形成する必要があったため、有機溶剤塗装剤に難燃剤を添加して、皮革表面に塗装することにより、難燃性塗装皮膜層を形成していた。しかし、RoHS指令により外部に有機溶媒を外部に排出させる原因となる有機溶剤の使用は避けることが必要となっている。そこで、難燃剤を添加した水性塗装剤で難燃剤の層を形成しなければならないが、第二の特徴点であげた難燃剤は粘着性の問題で使用することができず、有機溶剤塗装剤に添加していた難燃剤は、水性塗装剤には溶解しない。
第三の特徴点の難燃化処理には根本的な作り替えが必要とされている。
(4) 難燃剤としてハロゲン元素を含む難燃剤を用いている。これは災害の巻き込まれたときには有害ガスが発生する可能性があること、焼却処理時にもハロゲンガスの発生が考えられことである。有害ガスを発生させる恐れのない難燃剤を選択して検討することが必要となる。
これらは天然皮革の塗装層とは相違するものであり、塗装材料も人工皮革とはその構造は相違するものであり、塗膜層を形成した難燃化処理天然皮革の塗膜層も前記人工皮革のポリウレタン層とは相違するものであるから、技術的な対応の点では相違するものである。
(1) 天然皮革の難燃化処理では、従来行われてきた皮革の再なめし工程で難燃剤を再なめし材と共に処理して天然皮革の難燃化処理を行うと、セッター工程で難燃剤に一部が流出し、折角天然皮革の表面に取り込んだ難燃剤を流出するということの反省から、再なめし工程から後のバイブレーション工程が終了した段階で天然皮革に燐酸グアニジン難燃剤を含む難燃剤組成物として天然皮革の表面にスプレー塗装する又はロール塗装することにより難燃剤を天然皮革内部に固定することができる難燃化された天然皮革を得ることができることを見出した。更に、この方法によれば天然皮革の単位重量当たりの難燃剤を正確に調節できることを見出した。
また、難燃剤が存在することにより、天然皮革にそめむらが生ずる場合などでは、燐酸グアニジン難燃剤を含む組成物中に天然皮革を浸すことにより難燃化処理された天然皮革を製造することができることを見出した。
前記天然皮革の難燃化処理は、天然皮革の再なめしが終了し、乾燥工程を経た天然皮革表面に対して行うものであり、天然皮革から既に水を分離した後に行う。したがって、従来法に見られた天然皮革に取りこまれている難燃剤が系外に取り出されることといった危険性はない。表面から送り込まれた燐酸グアニジン誘導体組成物を内部に向かって浸透させることができ、難燃剤を天然皮革中にむら無く、その内部に十分に存在させることができる。
燐酸グアニジン誘導体組成物を表面から塗布して天然皮革中に満遍なく送り込むことができることは従来知られておらず、このように難燃剤を表面に塗装し、単独で天然皮革の内部に浸透させることは通常考えられないところであって、この点では従来にない新しい難燃化処理方法である。
(2) 難燃化処理天然皮革の表面層に形成する塗膜層の中のベースコート層には従来水性塗料層中に添加していた難燃剤として用いてきた脂肪族系ホスホン酸エステルに替えて芳香族縮合燐酸エステルを水に溶解させた状態で導入してベースコート層を中心とした塗膜層の難燃化処理を施すことができる。
(3) 従来行ってきた難燃剤を含有する有機溶剤塗装剤を塗膜層の表面に形成することはやめて、ゲル化を起さない難燃剤として芳香族縮合燐酸エステルを水に溶解させた状態で、塗膜層のトップコート層を形成する塗料層中に送り込んで難燃化処理を行う。
(4) 難燃化された塗膜層をベースコート層及びトップコート層とすることにより難燃化された塗膜層を形成することにより、従来の難燃化された塗膜層を形成すると同時に、塗膜層の表面に形成していた難燃剤を含む塗膜層を設ける必要が無くなったものである。
(5) 以上の難燃化処理に用いられる難燃剤には、いずれもハロゲン原子を含まない非ハロゲン系難燃剤を用いる。
以上の新たな試みにより新規な難燃化処理天然皮革及び新規な難燃処理を施したベースコート層及び難燃処理を施したトップコート層を形成している難燃化処理天然皮革を完成させて、前記課題を解決した。
具体的には以下の通りである。
(a) 準備工程、なめし剤によるなめし工程、及び再なめし・染色・加脂工程、セッター工程、乾燥工程、味取り工程、バイブレーション工程を経て製造する天然皮革の表面及び/又は裏面に燐酸グアニジン難燃剤を含む組成物を塗布して天然皮革中に浸み込ませることにより難燃化処理を施していることを特徴とする難燃化処理天然皮革。
(b) 前記塗布することが燐酸グアニジン難燃剤を含む組成物をロール塗装、又はスプレー塗装することを特徴とする前記a記載の難燃化処理天然皮革。
(c) 前記塗布することが燐酸グアニジン難燃剤を含む組成物中に浸すことであることを特徴とする前記a記載の難燃化処理天然皮革。
(d) 前記燐酸グアニジン難燃剤を含む組成物は、燐酸グアニジン難燃剤及び水、又は燐酸グアニジン難燃剤、浸透剤及び水から構成されていることを特徴とするaからcいずれか記載の難燃化処理天然皮革。
(e) 前記aからdいずれか記載の難燃化処理天然皮革の表面に、芳香族縮合燐酸エステルを含むポリウレタンからなるベースコート層及びトップコート層を形成していることを特徴とする難燃処理を施したベースコート層及び難燃処理を施したトップコート層を形成している難燃化処理天然皮革。
本発明の皮革は、準備工程、なめし剤によるなめし工程、合成なめし剤による再なめし・染色・加脂剤を用いる加脂工程とこれに続く乾燥工程、及び仕上げ工程からなる一連の工程を得て製造される皮革であって、再なめし・染色・加脂剤による加脂工程とこれに続く乾燥工程がセッター工程、がら干し乾燥工程、味取り工程、空打ち工程、ネット張り乾燥工程、バイブレーション工程からなり、必要に応じてバイブレーション工程の後にバフ工程を加える場合がある。
皮水洗・水漬け工程からトリミング工程を示す。原皮水洗・水漬け工程では、低温貯蔵されて鮮度保持・腐敗防止された原皮が石灰ドラムに移され、塩漬け原皮を水戻しして生皮の状態に戻し、塩・不純物を除去し、石灰漬けのためのpH調整を行う。フレッシング・トリミング工程では、フレッシングマシン、トリミングマシンに移され、脂肪等の余分な裏ニベを機械的に除去し、塩や不純物も除去され、縁周りを整形する。石灰漬け工程では、石灰ドラムに移され、皮表面の毛を溶解すると共に垢をとり、皮の内部に石灰を浸透させて繊維をほぐす。生バンドスプリット工程では、バンドマシンに移され、用途に応じた厚さに皮を漉くと共に、皮を銀層と床に分割する。脱灰・酵解・ピックル・なめし工程では、石灰を抜きクロムを含有しないなめし剤でなめしを行い、皮を革にする。脱水工程では革を水絞り機に移し、ウェットホワイトの脱水を行う。傷・穴・面積等の表面状態に応じた等級分けを実施する選別を行う。シェービング工程では、シェービングマシンに革を移し、用途に応じた厚さに削る。トリミング工程では、トリミング台で不要なボロ切れ目等を切り、後工程での破れを防止して作業性能を高める。
なめし工程は酸性条件下に皮を、なめし剤を水の存在下に処理するものである。なめし剤は皮のコラーゲン物質に架橋を起こさせて、皮に耐熱性、微生物や化学物質に対する抵抗性を与え、柔軟性を付与する操作である。
なめし剤には、3価のクロム錯体、例えばCr2(SO4)3として表現されるヘキサアコ結晶硫酸を用いるクロム化合物の他、3価のクロム錯体を用いない方法としてグルタルアルデヒドなどのアルデヒド化合物などのほか、アルミニウムなめし剤、ジルコニウムなめし剤などが知られている。また植物タンニン剤、アルデヒドなめし剤、合成なめし剤などが知られている。クロムなめし剤が環境問題などで制限されることもあって、クロムフリーなめしとしてクロム以外のなめし剤が使用される。
なめし材には、上記したように多くのなめし剤が知られている。これらはいずれも従来から知られているものであり、市販のものを購入して使用すればよい。
再なめし工程では、既に知られている合成なめし剤及び植物なめし剤などの中のから選択して用いられる。場合によっては、前記なめし剤であるクロムやグルタルアルデヒドなども添加して使用することもある。
再なめしに際しては処理対象となる革が中和されているかどうかを予め確認して行う。革の断面にpH指示薬を滴下し、その変色層を観察して行う。おおよその目安として甲革タイプで表面層はpH5から6、内部層は3から4程度とされている。
前記染色工程は、再なめし工程を経て得られる革を対象にして前記染料を用いて染色を行うものである。酸性水性染料を用いて染色される。酸性水性染料は、水性媒体、染料等の成分により構成される。水性媒体とは、水及び水とアルコール等の水溶性溶媒との混合物を意味する。
染料を含む組成物は、比較的強酸側(pHは3から4)であり、革重量基準で、水250%、前記染料2.5から4%、アニオン界面活性剤からなる均染剤0.5%からなる水溶性組成物として供給される。
処理温度は50℃程度である。1時間程度ドラム内処理する。
染色工程終了後、ギ酸により染料の定着処理を行う。
加脂工程では加脂剤による処理が行なわれる。
加脂工程は再なめし後の染色工程の次に行われる処理である。なめしなどの製革湿潤作業を終えた湿潤革の内部構造中のフィブリル間には多くの水が介在し、これが革に柔軟性を与えている。革が乾燥されて、この水が除去されるとフィブリル同士がこう着して組織の硬化が起きる。こう着が過度に進むと、組織全体の物性(伸び、引き裂き強度、曲げ特性など)が低下し、革の品質を損なう。湿潤革中に介在する水の一部を他の物質で置換してから乾燥させると、フィブリルのこう着を防止できる。油剤を革フィブリル間に充填して表面に付着させることが加脂工程の中心である。
油剤の作用によりフィブリル間又はその表面を疎水性油剤の皮膜で覆うことによりフィブリルに防水性を与えることができ、はっ水効果がある油剤を用いることにより耐水性を改善することができる。また、革のしなやかさやふくらみ感なども加脂剤による影響を受ける。
染色工程を経て加脂工程で処理する革は水に濡れた状態にあり、線維束内、線維間隔に存在する水のために線維の柔軟性が保持されているが、乾燥すると線維同志が膠着して線維及び組織が硬化する。乾燥前に予め線維間に膠着を阻害する物質となる油剤により処理することが効果的である。又、革線維の保護(撥水性、防水性)のような機能、感触、膨らみを付与する。このために加脂工程があり、加脂剤が用いられる。
皮革の加脂剤には、従来から知られているものを広く用いることができる。本発明ではフォギングの発生を防止するうえから、(1)アニオン性加脂剤中、(イ)硫酸化油、(ロ)スルホン化油、及び(ハ)亜硫酸化油から選択される。
ものを用いることが好ましい。これらの加脂剤を用いることにより、フォギングの発生を防止することがでぃる。
加脂剤を含む組成物は以下の通りである。
水は革重量に対して110%から130%、前記合成加脂剤は革重量に対して2から5%、液のpHは3.5、水温は50℃程度とされる。
以上の組成物をドラム中の革に供給処理し、処理後に十分に水洗して操作を終了する。
セッター工程に移し、染色後の革の水分を絞り、水分を50〜60重量%程度とする。
その結果、無理な乾燥は行なわれない。得られる皮革は、なめし、再なめし及び加脂剤による処理の結果、皮革は湿潤状態が維持された後、安定した皮革の構造が保持され、銀面層及び網状層は外見上問題なく形成されているとともに、皮革の銀面層と網状層の柔軟に形成されており、外力に対しても柔軟に対応できるので、層間剥離は起こりにくい状態であることが理解できる。
がら干し乾燥によっても銀面の過度な乾燥が防止され、割れや無理な伸ばしも防止されており、皮革は自然な状態を維持している。
味入れにより水分量を革に与え、味付けを行う。これは、最終的に革の均等な伸び・膨らみ感を保つ上で重要な操作である。
バイブレーション工程では、革をバイブレーションマシンに移し、革全体の硬さを取り、十分に引き伸ばしを行い、面積を大きくする。
必要に応じて、さらにバフを行い、皮革の表面を平らな状態に仕上げる。
下地検査を行い、この下地工程を終了する。
皮革表面の状態の急激な変化を防止し、柔軟な状態の空隙有する平板状の平らな表面の皮革を得ることができる。
空打は線維をほぐしてやわらかくするための工程である。
次に、バフを行い、皮革の表面を平らな状態に仕上げる。
下地検査を行い、この下地工程を終了する。
得られる天然皮革の表面及び/又は裏面に、難燃剤として燐酸グアニジン誘導体を含む組成物を塗布することにより、難燃化処理をほどこして難燃化処理天然皮革を完成させる。
前記塗布することが難燃剤として燐酸グアニジン難燃剤を含む組成物によりロール塗装やスプレー塗装を行う。又、十分にむら無く難燃剤を染込ませるために燐酸グアニジン難燃剤を含む組成物中に天然皮革を浸して難燃化処理天然皮革を得ることができる。
難燃剤である燐酸グアニジン誘導体は、燐酸グアニジン、ポリ燐酸グアニジン及び燐酸グアニジンとホルマリン縮合物である燐酸グアニジン誘導体である。公知物質であり、製品としてビゴールNo415大京化学株式会社製が市販されており購入して使用できる。
この水溶液に更に浸透剤を加えることによって、天然皮革の内部に浸透する時間を短縮することができる。短縮できる時間は30秒程度となる。
浸透剤は、加脂剤に由来する革中の油分に対して有効に作用すると考えられる。スプレー液として親和性を高める作用を有しており、親水性の有機溶剤(たとえば、イソプロピルアルコール)又はアニオン性界面活性剤(アニオン性界面活性剤は、例えば、アルキルアリルポリエーテルリン酸エステル、エチレングリコールモノブチルエーテルである。商品名ペネトレーター219、製造者:ローム&ハース 活性剤成分50%、PH 4.0)を有機溶剤に溶解したものを用いる。
実際に用いる難燃剤組成物の組成を求めると以下の通りである。
スプレー塗装又はロール塗装は天然皮革の表面又は/及び裏面に対して行うことができる。表面の銀面側からスプレー塗装すると、乾燥後に浸透しきれなかった難燃剤が表面に残ってしまうことがあり得るので、このような場合には革の裏面からスプレー塗装している。むら無く難燃剤を塗装する場合には表面及び裏面の両方を塗装してもよい。
難燃剤スプレー後の乾燥を行わない場合には次工程の着色塗装の塗装斑、下地銀面との塗膜の密着にばらつきが出る可能性が考えられる。渇きの斑から塗料の吸い込みに斑が発生する。プレヒート工程を設けて乾かす操作として行うこともできる。
併せて予め熱収縮をさせて、以後の皮革の熱収縮率を低い状態に保つことができる。例えば、前記仕上げ工程のプレヒート工程では皮革を65から80℃で、60分程度加熱して、皮革の熱収縮を進めることにより、さらに熱収縮率が進行することを防止する。
使用目的によっては天然皮革を難燃化して得られる難燃化天然皮革の段階で製品とすることも可能である。このよう場合としては航空機と鉄道車両に用いる天然皮革の場合である。
天然皮革基材表面に、顔料を含有した水性塗装剤をコートしてなるベースコート層と、そのコート層上に水性塗装剤をコートしてなるカラーコート層と、さらに、そのコート層上に、トップコート層とを形成する。
(1) ベースコート層
ベースコート層は、塗膜層の最下層にあたる。皮革の表面にある凹凸を平らにし、安定して上部に層を形成する準備のための層である。この層を形成するにあたっては、水溶性ポリウレタン樹脂を、水を含んだ状態で皮革の表面に塗布する。この層を難燃化使用とするときには、難燃剤を水に含ませた水分散体の状態で水溶性ポリウレタン樹脂に供給する。
これらは公知化合物であり、ビゴールGPE―515(大京化学株式会社性を用いる。)などの燐酸エステル系化合物を用いる。この燐酸エステル系化合物は常温で液状物である。かつ添加量も低減できるため、樹脂に混合した場合、樹脂物性に対する影響は比較的少ないとされる。液状であるが故に表面ブリードが起こりやすいといわれている。
顔料には色付けしたい色の顔料を用いる。助剤には界面活性剤、増粘剤、調整剤、マット剤などが含まれる。
塗布方法は、前記樹脂や各添加成分を含んだ状態で、はけ塗り、スプレー、吹き付け、カーテン塗装、ロール塗装などの中から適宜選択して使用する。塗布量は70から150g/m2、塗布後に温風を表面にあてて水分を蒸発させる。膜厚は20〜50μmである。
次いで、型押しを行なう。型押しは、革表面に高圧プレスにより凹凸を出す加工で、革にさまざまな模様(シボ)をつけるものである。次に、空打ち工程そしてステーキング工程により、皮革繊維をほぐし風合いを調整する。
ベースコート表面上にカラーコートを形成する。カラーコート層は、塗装幕の中間層にあたり、皮革を着色するための顔料及び染料を存在させるための層であって、皮革から見てベースコートの上部に設けられている。この層を形成するにあたっても、樹脂、顔料、助剤、架橋剤、触感剤及び水からなる組成物を皮革の表面に塗布する。樹脂には、二液性ポリウレタン樹脂が用いられる。顔料には色付けしたい色の顔料を用いる。助剤には界面活性剤(レベリング剤等)、増粘剤、調整剤などが含まれる。塗布方法には水溶液を含んだ状態で、はけ塗り、スプレー、カーテン塗装、ロール塗装が適宜選択して使用される。塗布量は20〜70g/m2 、塗布後に温風を表面にあてて水分を蒸発させる。膜厚は5〜25μmである。
この層を難燃化使用とするときには、難燃剤を水に含ませた水分散体の状態で水溶性ポリウレタン樹脂に供給する。
難燃剤には芳香族縮合燐酸エステル難燃剤を用いる。
これらは公知化合物であり、ビゴールGPE―515(大京化学株式会社性)を用いる。特に燐酸エステル系化合物を使用したものが検討されている、この燐酸エステル系化合物は常温で液状物である。かつ添加量も低減できるため、樹脂に混合した場合、樹脂物性に対する影響は比較的少ないとされる。液状であるが故に表面ブリードが起こりやすいといわれている。
カラーコート表面上にトップコートを形成する。トップコート層は、塗装膜の最上層にあたり、耐摩耗性などの耐久性や、良好な外観(色、つや)、触感を付与するものである。
水溶性ポリウレタン樹脂を、水を含んだ状態で皮革の表面に塗布する。この層を難燃化使用とするときには、難燃剤を水に含ませた水分散体の状態で水溶性ポリウレタン樹脂に供給する。
難燃剤には芳香族縮合燐酸エステル難燃剤を用いる。
これらは公知化合物であり、ビゴールGPE―515(大京化学株式会社性を用いる。)特開2006−161193記載。
特に燐酸エステル系化合物を使用したものが検討されている、この燐酸エステル系化合物は常温で液状物である。かつ添加量も低減できるため、樹脂に混合した場合、樹脂物性に対する影響は比較的少ないとされる。液状であるが故に表面ブリードが起こりやすいといわれている。
これは以下の理由による。インテリア材料や産業資材の分野に適用する場合は、たとえば、自動車内装材にはJIS−D−1201又はFMVSS No.302、壁装材にはJIS−A−1321、航空機用内装材には FAA 等により、難燃性の法的な法規制があり、火災による人的被害を極力少なくすることが要請されている。この目標を達成するためには、難燃剤を多く使用することが必要とされる。難燃化された天然皮革の塗膜層を形成するポリウレタンに対して、多量の難燃剤を含有させることにより上述の厳しい難燃性規格を満足させようとすると、風合が粗剛化し、更にはベタツキ感を惹起すという問題がある。したがって、水性ポリウレタンに難燃剤を送り込む場合には、前記のような問題が起きないような配慮が要求される(特許第4169581号)。
本発明ではポリウレタン水溶液に添加できる難燃剤の添加量を弊害の出ない範囲で、定めたものである。本発明者らの従来例である特公平7−2960号公報の場合には、塗膜層に難燃剤を添加して塗膜層を形成しようとするのでは塗膜層全部を難燃化することでは十分でなく、そこで塗膜層の上に難燃剤の層を形成する必要があった。
本発明では前記従来例に見られる塗膜層の上に難燃剤の層を形成することを止めて、難燃化に必要な難燃材の添加量を塗膜層の内のトップコート層及びベースコート層の水性ポリウレタンに添加したものとして、難燃剤の層を塗膜層中に取り込むことに成功したものである
水性ポリウレタン成分の組成としては以下のものが例示される。
(1) ポリオール成分としては、約600〜約3,500の数平均分子量を有する少なくとも1つのポリエーテル(コポリエーテルを含む)、約1,400〜約2,400の数平均分子量を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリエチレンアジペートグリコールなどのポリエステルジオール類、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルグリコール類、ポリカーボネートジオール類、
(2) イソシアネート成分としては、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート等を用いる。
(3) 鎖伸張剤としては、エチレングリコール等のグリコール類、エチレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタン等のジアミン類などを用いる(特表2007−526400公報、特表2005−523999号公報など参照)。
水性ポリウレタン組成物はいずれも公知であり、購入して使用することができる。
最後に、製品検査として、生産品の最終検査が行われ、等級、紋、風合い、色調、厚度等の項目について検査が行われ、完成される。
その結果、表面から吹き付けを行った場合には銀面にわずかに天然皮革中に吸い込まれない組成物の痕跡が見られた。
特公平7−2960号公報の方法に従い再なめし工程で、テトラブロムフタール酸ナトリウム塩を重量で3.5%含有する状態で天然皮革の重量あたり40g/1000cm2の割合で含むように天然皮革を処理した。
比較例1で得られた難燃化処理を行った天然皮革に同じく、特公平7−2960号公報の方法に、水溶性有機リン系化合物として脂肪族系ホスホン酸エステルを、塗装剤全量あたり、15%(重量)を含む塗膜層を形成し、さらに、難燃剤としてアルキルフェニルホスフェートとハロゲン化アルキルホスフェートを15重量%を含有する皮膜層を形成した。
上記で得られた実施例1から5について及び比較例1及び2について、以下の加熱燃焼試験を行った。
Claims (5)
- 準備工程、なめし剤によるなめし工程、及び再なめし・染色・加脂工程、セッター工程、乾燥工程、味取り工程及びバイブレーション工程を経て製造する天然皮革の表面及び/又は裏面に燐酸グアニジン難燃剤を含む組成物を塗布して天然皮革中に浸み込ませることにより難燃化処理を施していることを特徴とする難燃化処理天然皮革。
- 前記塗布することが燐酸グアニジン難燃剤を含む組成物をロール塗装、又はスプレー塗装することを特徴とする請求項1記載の難燃化処理天然皮革。
- 前記塗布することが燐酸グアニジン難燃剤を含む組成物中に浸すことであることを特徴とする請求項1記載の難燃化処理天然皮革。
- 前記燐酸グアニジン難燃剤を含む組成物は、燐酸グアニジン難燃剤及び水、又は燐酸グアニジン難燃剤、浸透剤及び水から構成されていることを特徴とする請求項1から3いずれか記載の難燃化処理天然皮革。
- 請求項1から4いずれか記載の難燃化処理天然皮革の表面に、芳香族縮合燐酸エステルを含むポリウレタンからなるベースコート層及びトップコート層を形成していることを特徴とする難燃処理を施したベースコート層及び難燃処理を施したトップコート層を形成している難燃化処理天然皮革。
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