JP5460028B2 - インパネ用皮革 - Google Patents

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本発明はインパネ用皮革に関するものである。
動物皮から毛を除去し、主として生活用品として使えるような理化学的性質をもつコラーゲン繊維組織へ加工する作業全般は製革作業と呼ばれている。
その全般の工程は準備工程、なめし工程、再なめし・染色・加脂及び乾燥工程、仕上げ工程の4工程から構成され、各工程でどのような処理を行うかということが明らかにされている。これらの工程では、なめし剤、再なめし剤、染料、加脂剤、塗装剤に用いる処理剤やそれらの使用条件に関し、又各工程で行なわれる処理条件などの研究開発が進められ、新しい特性を有する皮革、より使いやすい皮革の開発が進められている。
これらの研究開発にあっては前記の一工程での条件を新らたにみなおすことによって成功する場合の他、前の工程に引き続いて次の工程にもまたがる処理が行われることも多い。各工程の条件を決定するに際しては、工程にまたがって検討を必要とする総合的な検討を必要とする。問題解決にあたっては多方面にわたる詳細な検討と総合的な検討を必要とし、問題解決に必要とされる努力は並大抵なものではない。
本発明者らは、熱収縮性に優れ、揮発物から発生する曇り(フォギング)と臭気の発生に対して抑制効果を求めるインパネ革が必要であるとの要望に応えるべく、再なめし工程以降の処理剤及び処理条件の検討を進めた結果、「合成タンニンによるなめし処理及び柔軟剤による柔軟処理を施された動物由来の原皮であって、該原皮の繊維質に酸化防止剤が含有され、塗装後に色差ΔEが0.5以下となるように加熱処理された皮革材料」(特許文献1 特開2007−70487号)の発明に成功した。各工程の概要及び前記発明で新たに採用された手段は以下の通りである。
準備工程は、皮なめしを行うに行う準備の工程である。準備工程は、原皮水洗・水漬け工程からトリミング工程となっている。この工程については技術的にほぼ完成していると見てよく、前記特許文献1(特開2007−70487号公報)の発明でも、変更点はなかった。
なめし工程は、準備工程により処理された皮を化学的、物理的操作により、種々の実用性能を有する革に可逆的に変換する。皮に耐熱性、化学試薬や微生物に対する抵抗性、柔軟性を与える。
なめし工程は酸性条件下に皮を、なめし剤を水の存在下に処理するものである。なめし剤は皮のコラーゲン物質に架橋を起こさせて、皮に耐熱性、微生物や化学物質に対する抵抗性を与え、柔軟性を付与する操作である。
なめし剤には、3価のクロム錯体、例えばCr(SOとして表現されるヘキサアコ結晶硫酸を用いるクロム化合物、グルタルアルデヒドなどのアルデヒド化合物のほか多くのなめし剤が知られている。これらはいずれも従来から知られているものであり、市販のものを購入して使用すればよい。
前記特許文献1(特開2007−70487号公報)の発明ではクロムなめしでも、クロムフリーのなめしを行った場合でも、曇り(フォギング)が発生すること自体は変化しないが、クロムフリーなめしでは熱収縮率が小さい(皮革の収縮や剥離による基材の変形が少ない)という観点からクロムフリーなめしによる革を使用することとした。
再なめし・染色・加脂及び乾燥工程は以下の通りである。
従来、再なめし工程では、再なめし剤として、既に知られている合成なめし剤、植物なめし剤などの中から選択して用いられる。場合によっては、前記なめし剤であるクロムやグルタルアルデヒドなども添加して使用することもある。
再なめしに際しては処理対象となる革が中和されているかどうかを予め確認して行う。革の断面にpH指示薬を滴下し、その変色層を観察して行う。おおよその目安として甲革タイプで表面層はpH5から6、内部層は3から4程度とされている。
染色工程については以下の通りである。
前記染色工程は、再なめし工程を経て得られる革を対象にして前記染料を用いて染色を行うものである。酸性水性染料を用いて染色される。酸性水性染料は、水性媒体、染料等の成分により構成される。水性媒体とは、水及び水とアルコール等の水溶性溶媒との混合物を意味する。
染料を含む組成物は、比較的強酸側(pHは3から4)であり、革重量基準で、水250%、前記染料2.5から4%、アニオン界面活性剤からなる均染剤0.5%からなる水溶性組成物として供給される。
処理温度は50℃程度である。1時間程度ドラム内処理する。
染色工程終了後、ギ酸により染料の定着処理を行う。
加脂工程は以下の通りである。
加脂工程では加脂剤による処理が行なわれる。
加脂工程は再なめし後の染色工程の次に行われる処理である。なめしなどの製革湿潤作業を終えた湿潤革の内部構造中のフィブリル間には多くの水が介在し、これが革に柔軟性を与えている。革が乾燥されて、この水が除去されるとフィブリル同士がこう着して組織の硬化が起きる。こう着が過度に進むと、組織全体の物性(伸び、引き裂き強度、曲げ特性など)が低下し、革の品質を損なう。湿潤革中に介在する水の一部を他の物質で置換してから乾燥させると、フィブリルのこう着を防止できる。油剤を革フィブリル間に充填して表面に付着させることが加脂工程の中心である。
油剤の作用によりフィブリル間又はその表面を疎水性油剤の皮膜で覆うことによりフィブリルに防水性を与えることができ、はっ水効果がある油剤を用いることにより耐水性を改善することができる。また、革のしなやかさやふくらみ感なども加脂剤による影響を受ける。
染色工程を経て加脂工程で処理する革は水に濡れた状態にあり、線維束内、線維間隔に存在する水のために線維の柔軟性が保持されているが、乾燥すると線維同志が膠着して線維及び組織が硬化する。乾燥前に予め線維間に膠着を阻害する物質となる油剤により処理することが効果的である。又、革線維の保護(撥水性、防水性)のような機能、感触、膨らみを付与する。このために加脂工程があり、加脂剤が用いられる。
加脂剤には、(1)アニオン性加脂剤、(イ)硫酸化油、(ロ)スルホン化油、(ハ)亜硫酸化油、(ニ)脂肪酸石鹸、(ホ)リン酸化油、(へ)多極性加脂剤、(ト)そのほかのアニオン性加脂剤、(2)カチオン性加脂剤、(3)両性加脂剤、(4)ノニオン性加脂剤、(5)中性油、具体的には、(イ)動物油、(ロ)海産動物油、(ハ)植物、(ニ)合成油などを挙げることができる。
加脂剤を含む組成物は以下の通りである。
水は革重量に対して110%から130%、合成加脂剤は革重量に対して2から5%、液のpHは4.5、水温は50℃程度とされる。
以上の組成物をドラム中の革に供給処理し、処理後に十分に水洗して操作を終了する。
前記特許文献1(特開2007−70487号公報)の発明では、曇り(フォギング)が発生原因分析し、その一つに本革には、ウシ原皮に由来する脂質と、製造工程で使用する薬剤(加脂剤)に由来する脂質が含まれることとした。これらの一部は高温下で揮発した後ガラス表面で冷却されて再凝集し、ガラス曇りの原因となる。また、これらの脂質は高温下で酸化・分解されることにより揮発しやすくなるとともに悪臭の原因となる。加脂剤を用いず、その代わりに柔軟剤を用いることに変更したことが特徴点の一つとなっている。
又、再なめし剤として植物タンニンは脂質に比べ影響は小さいが、ガラス曇りと悪臭の原因になるということを見出し、合成なめしとすることに改めたことも特徴点の一つとなっている。
加脂工程を得た皮革は、なめして柔らかくした皮革の状態となる。
セッター工程に移し、セッティングマシンにより、染色後の革の水分を絞り、水分を50〜60%程度とする。
がら干し乾燥は革の一片を固定し、他の辺を自由端とする懸垂状態で35〜50℃の乾燥用空気を当てて、水分を10から5%程度とする。革を乾燥させ革内に薬品・染料の吸着を完全する。革を1回乾燥させることにより風合いをだす。
味取り工程では、がら干し乾燥により銀面が過度に乾燥し、割れやすく、強く伸ばして過ぎたまま乾燥しているので、不自然な状態となっている。味入れにより水分量を革に与え、味取りシャワー機に移し、乾燥状態にある革に少量の水を塗布することにより味付けを行う。これは、最終的に革の均等な伸び・膨らみ感に関係する。
バイブレーション工程では、革をバイブレーションマシンに移し、十分に引き伸ばしを行い、面積を大きくする。
空打ち工程では、革を空打ちドラムに移し、乾燥後の革の繊維をほぐす。
ネット張り乾燥工程では、革を軽く引っ張りながら、トグルクリップによりネットに固定し、熱風乾燥する方法である。通常、比較的水分が少ない水分状態から乾燥による組織硬化を避けて皮革の平面化を行う。
バフはバフィングマシーンを用いて研磨剤を塗布してあるバフィングペーパーを革に強く押し付けて革を美しく仕上げる。その際に発生する革の屑が革の表面や内面に付着しているので、これらを除去することも行なわれる。
バイブレーション工程では、革をバイブレーションマシンに移して繊維をほぐし、足先縁周り等の硬さを取る。
前記特許文献1(特開2007−70487号公報)の発明では味取り工程では脂質の酸化を防止することにより、脂質が酸化されることを防止し、酸化脂質による悪臭を防止することができるとして、酸化防止剤を添加することを特徴点の一つとした。
仕上げ工程は樹脂塗装工程を中心とする皮革の仕上げ工程である。
前記特許文献1(特開2007−70487号公報)の発明では、革の裏面に樹脂を裏のり剤として塗布すると皮革に含まれている曇り(フォギング)原因物質が発生することを防止できるとして、裏のり剤となる塗布することができることが特徴点の一つである。又加熱処理工程であるプレヒート工程を新たに設置することにより皮革を予め熱収縮させて製品革の熱収縮率を低下させることが特徴点の一つである。これらの工程を組み込んだ最終工程は以下の通りである。
裏糊スプレー工程では、水性スプレーによりバッキング処理を行い、塗装面への裏毛羽の付着を防止する。
革の裏面に樹脂塗装が施される。革の裏面に樹脂塗装が施されることにより、ガラス曇りの原因物質の放出を物理的に遮断することができる。
塗装工程では、リバースロールコーターにより革の表面に1回目の顔料塗装を行い、型押し工程では、革の表面への模様付けを行う。
型押し工程の後、プレヒート工程で1回目のプレヒートを実施する。プレヒートは、工程中で加熱によりできるだけ革を収縮させておくために実施される。
また、フォギングの原因となる物質を揮発除去するために実施される。加熱は変色を伴うために変色の許容範囲内で収縮率が最大となる加熱条件が設定されている。例えば、100℃〜120℃の温度で、1時間の加熱を2回もしくは3回実施する等の条件が設定されている。変色の許容範囲は、後述する2回目のプレヒートとあわせて、例えば、色差の割合が0.5以下となるのが好適であり、収縮率は、例えば、革の縦・横平均の寸法変化率平均が1.5%以上となるのが好適である。
1回目のプレヒート工程の後、塗装工程でスプレーマシンにより革の表面に2回目の顔料塗装を行い、塗装検査台で塗装状態の確認を行う。ウレタン塗装工程では、スプレーマシンによりウレタン(水性ウレタン)を塗布し、強度などの表面物性を付与する。
ウレタン塗装工程の後、プレヒート工程で2回目のプレヒートを実施する。プレヒートは前述した加熱条件に基づいて実施される。1回目のプレヒートを省略して2回目だけのプレヒートを実施することも可能である。2回に分けてプレヒートを実施した場合、革の収縮が大きくなり、フォギングの原因となる物質の揮発除去も効果的に行える。
2回目のプレヒートの後、ウレタン架橋反応時間が経過するまで熟成させる。空打ち工程では、革を空打ちドラムに移し、型押し後の革の繊維をほぐし柔らかくする。バイブレーション工程では、革をバイブレーションマシンに移し、革の繊維をほぐし、足先・縁周り等の硬さをとり、空打ちのしわを取り、面積を大きくする。樹脂塗装工程では、革の裏面に樹脂塗装が施される。尚、裏糊スプレー工程での樹脂の塗装を省略することも可能である。
以上述べてきたことから明らかなように、準備工程から仕上げ工程の段階にいたる四段階工程が終了するまで、種々の処理剤の利用、反応条件の変更を行い、以下の特性を有する皮革の開発に成功した。(1)低フォギング性であり、(2)直射日光が照射する条件下であっても不快な臭気を発生しない、(3)熱収縮率が低い皮革である。
従来このような特性を有する皮革は得られていなかった。
前記の皮革は従来問題であったとされる課題を解決できたことで高い評価を得ることができた。しかしながら、以下のような思わぬ問題点の指摘を受けた。
前記の発明で得られた皮革を自動車のインパネ用として用いた場合にインパネに用いるプラスチック基材に対して、合成素材のクッション部材(ラッセル)を介して、湿気硬化性接着剤により接着した後の養生のために、硬化促進処理(30℃、80%RH、12時間)を行ったところ、インパネ用に張った皮革の表面にシワが発生するという不具合が発生した。同時に、インパネ用皮革は柔軟性が求められるところ、その外観は硬く見えるという指摘を受けた。
前記4工程からなる皮革の製法によって得られた皮革にあって、カーシートとして用いた場合に、皮革に、みみずばれに似た、しわが発生するといったトラブルは発生していない。局部的(湾曲部)な部分に接着剤によってインパネ革として基材に接着したときに限って言えば、カーシートの場合と比較してより難しい条件下の使用に当たるとはいえ、皮革にトラブルが発生したことは予期し得ないことであり、その対策には困難を極めた。
本発明者らは、「自動車のインパネ用として製造した皮革において、プラスチック基材にプラスチック製のクッション部材を介して、接着剤により接着された場合であってもシワの発生がなく、低熱収縮性であり、曇り(フォギング)が発生しない皮革が必要とされ、その開発に迫られることとなった。
特開2007−70487号公報
本発明が解決しようとする課題は、皮革の銀面層と網状層の層間剥離が防止することが可能となり、インパネ革として用いたときに、しわの発生を防止することができ、フォギングの発生を防止することができ、熱収縮率が低く、外観硬さ及び風合いについても良好な新規な皮革を提供することである。これは自動車用インパネ革として最適な皮革であり、自動車のインパネ用として用いる場合に、プラスチック基材に合成素材のクッション部材を介して、接着剤により接着した場合であってもシワの発生がなく、低熱収縮性であり、曇り(ホッギング)が発生しない新規な皮革を提供することである。
発明者らは、従来は、出来上がった皮革に対して聞いたことがない問題点に直面したので、何故、前記トラブルが発生したのかについて、初めに調査分析を行ない、その結果に基づいて対応策を検討することとした。
(1)従来得られていた皮革についての検討
従来の一連の処理工程を経て得られる皮革に対する所見は以下の通りである。
一連の工程を経た皮革の断面は図1及び2に示されている。表面に見られる銀面層は表皮の細胞が消失した乳頭層から変化した真皮部分であり、コラーゲン線維とエラスチン線維が緻密に交絡、繊維の多くは水平方向に走行している、緻密で、水透過性も小さい層である。これを銀面層と呼ぶ。
その下の網状層はコラーゲンからなる組織で、なめし処理により、コラーゲンたんぱく質に化学的に結合(架橋結合又は短結合)し、熱、光水などに対して安定化されており、コラーゲン繊維間に物理的に沈着して充填効果を上げ、組織の物性(強度と柔軟性、耐久性、耐摩耗性など)や官能的性質(風合いなど)を改善する。コラーゲン繊維に化学的又は物理的に結合して染色性を改善したり、加脂剤や再なめし剤の定着を高めたりする。コラーゲン繊維に化学的又は物理的に結合して、撥水性や防汚性などを付与されている。
全体構造を示す前記の図を見ると、一連の工程を得て得られる皮革は全体として密に形成されていることがわかる。
銀面層と網状層の間及び各層には外見上は隙間無く形成されており、皮革として得られた段階では格別問題が生じている点は存在していないことが理解できる。
(2)養生シワが発生している皮革の状況について調べ、本発明者らは以下の点を見出した。
(a)シワが発生していない正常部位とシワが発生している部位についてSEM顕微鏡を用いて皮革の断面を観察した。
その結果、シワが発生している部位ではわずかではあるが、銀面層及び網状層は外見上問題が生じている状態は観察されていないが、皮革の銀面層と網状層の層間剥離が観察された(図3右側)。この状態は通常銀浮き呼ばれている現象である。しわが発生しない部位では、銀面層及び網状層は外見上問題が生じている状態は観察されていないし、皮革の銀面層と網状層の層間剥離は観察されない(図3左側)。
しわの発生は皮革の銀面層と網状層の層間剥離が見られるかどうかによると理解できる。
(b)また、従来しわが発生しやすいとされる国産原皮と発生しにくいとされる革(ドイツ原皮)に前記の発明と同様の処理を行った革を比較してみると、国産原皮では比較的多数の層間剥離が観察され、しわが発生しやすいことがわかった(図4右側)。一方、ドイツ原皮では、層間剥離そのものが観察されず、しわそのものの発生しにくいことを見出した(図4左側)。
(c)前記(a)(b)の結果からシワの発生は、皮革の銀面層と網状層の層間剥離によって引き起こされることが理解できる。
合成素材のクッション部材(ラッセル)を介して、湿気硬化性接着剤により接着した後の養生により発生していることは、革が高湿度下におかれることにより伸びて、横方向(平面方向)に広がろうとする。しかしながら、伸びのない基材/クッション材に接着されているため、横方向に伸びることができない。そこで、力が縦方向(厚み方向)に働き、革繊維が疎で乳頭層(銀面層)と網状層の結合力が弱い革では、層間剥離が起きる。
(d)銀面層及び網状層は密に形成されていること、皮革の銀面層と網状層の層間剥離がない状態の皮革を形成する上では、ドイツ牛によるのか、日本牛によるのかという牛種によるところが大きい。日本牛による場合であっても、銀面層及び網状層は密に形成するとともに、皮革の銀面層と網状層の層間剥離を起しにくい状態の皮革を形成すれば課題を解決することができると、考えられる。
(e)前記したように製革の一連の4工程は、なめし、再なめし、染色及び加脂の各工程により、なめし剤、再なめし剤、染料及び加脂剤を皮革内部に取り込んで十分に湿潤の状態にある皮革を得た後に、乾燥及び塗装を通じて皮革の
密な状態の銀面層と網状層を形成でき、銀面層と網状層の層間剥離を起しにくい状態の皮革を形成することができれば、課題を解決できると考えた。
(f)なめし、再なめし工程の湿潤な皮革を製造することに関しては、先に行なった方法には問題となる点及びその対策になるような点はないと考えられる。
(g)加脂工程では、加脂剤は皮革の柔軟性に影響を与えるばかりでなく、乾燥に際しても有効に作用するから、前回使用しないとした加脂剤の利用を検討すべきである。
先に述べたように、革が乾燥されて、この水が除去されるとフィブリル同士がこう着して組織の硬化が起きる。こう着が過度に進むと、組織全体の物性(伸び、引き裂き強度、曲げ特性など)が低下し、革の品質を損なう。湿潤革中に介在する水の一部を他の物質で置換してから乾燥させると、フィブリルのこう着を防止できる。このために、乾燥の前に加脂剤を革フィブリル間に充填して表面に付着させることが加脂工程の中心である。
加脂剤を効果的に使用することとなり、良好な乾燥処理を行うことが可能となる。特開2006−283229号公報では乾燥工程を適切に行うためには、加脂剤の利用が有効であることを述べる。
一方、本発明者らによる前記特許文献1(特開2007−70487号公報)(この発明では加脂剤を用いずに柔軟剤を用いている。)によれば、乾燥の操作前に加脂剤を用いず柔軟剤で処理しており、皮革を乾燥する結果から見ると、良好な結果をもたらすことはないことが懸念される。前記特許文献1の発明ででは、水と皮革の水素結合により安定化されている形態が、乾燥に伴い脱水により水を媒介しない皮革内部での新たな水素結合を作る結果となり、硬化・収縮変形を起こしている又は起こしやすい状態にあったというように考えた。
特開平5−59399号公報の発明には、フォギングの防止に重合体の再なめし加脂剤(polymeric retanfatliquor)を用いて革を処理する方法を開示している。このことは加脂剤全てが、好ましくいないというのではなく、その加脂剤の使用方法に注意することが重要であることを述べている。そして、乾燥時に発生したり、分離してくる加脂剤は皮革より排除するようにして、皮革に残存する加脂剤は皮革に柔軟性を与え、乾燥処理を適切に行うことを検討することが有効であるということがわかる。
(h)乾燥工程をどのように行うかは皮革の柔軟性などに大きな影響を与えるから、その方法については以下のように行うことが有効であると考える。
従来、がら干し乾燥は、水分として50〜60%程度を含有する皮革を、水分を10から5%程度を含有する皮革とする操作である。このように多量に含まれる水分を急激に除去することは皮革の構造に対しても大きな影響をもたらす結果となると考えられる。
急激な水分の減少は皮革を硬化させることになりかねない。
そこでできるだけ皮革の構造に影響を与えないで水分の含有量をさげることができる方法について検討した。乾燥方法としては従来、がら干し乾燥の他にガラス乾燥、真空乾燥、高周波乾燥が知られている。
乾燥方法として真空乾燥を採用して、皮革を熱板の表面に載せ、気体が漏れない状態に維持しつつ真空ポンプで真空に保ちながら皮革を乾燥させる。急激な水分の除去により皮革の乾燥を行うため、水分の除去という点では工程管理上は適切に行うことができるものの、出来上がりの皮革の構造は緻密すぎたり、硬くなりすぎるなどの問題点があることが確認できた。そこで、皮革の構造に注目して真空乾燥である程度の段階まで乾燥を進めると、皮革の構造については、皮革は厚み方向に圧縮されて緻密な状態を保ち、安定した状態を維持しながら、ある程度の含水量を減少させることができることがわかった。
その後に、がら干し乾燥を行なえば、がら干し乾燥のみ、又、真空乾燥のみにより、水を皮革内部にたっぷり含有した状態から水分の少ない皮革とする場合に比較して、皮革の内部構造の急激な変化を防止し、空隙を柔軟状態に保護できるということが可能となる。このように両者を組み合わせて行うと、従来の方法に比較して良好な結果をえることができることに注目した。
そこで、発明者らは、今回、以下に述べるように、真空乾燥の条件を定め、がら干し乾燥を行うことを組み合わせることにより、皮革が適当な範囲の緻密さを保持し、硬くなることを防止できることを実験により確かめた。
前記真空乾燥工程・がら干し乾燥工程は、セッターされた皮革に対して真空乾燥を60〜80℃、120〜180秒の条件下に行い、水を含んだ皮革を厚み方向に圧縮されて緻密な状態を保ち、安定した状態を維持して含水量を生乾きの状態のまで除去した後、がら干し乾燥する。
通常の乾燥処理では50〜70℃で3〜10分間程度条件下に処理する。乾燥手段に真空乾燥を採用すること、又は、乾燥の予備手段として採用することが場合によって行われる。この場合には、時間短縮ができるなどの工程管理の理由から、水除去を適切に行うための手段として、乾燥の前に真空乾燥を採用する。真空乾燥により皮革内部構造の急激な変化防止するという皮革内部構造を考慮して、真空乾燥を行うことは、従来、知られていない。
真空乾燥工程の後、前記がら干し乾燥工程、味取り工程、バイブレーション工程及びバフ工程を採用することにより、がら干し乾燥工程で皮革に含まれる水分量を皮革重量に対して2以上10重量%の範囲とし、味とりをおこなって水分を補給してバイブレーションを行って、十分に引き伸ばしを行い、バフ処理をおこない、皮革の内部構造の急激な変化を防止し、柔軟な状態の空隙有する平板状の平らな表面の皮革を得ることができる。
(i)併せて、従来行なってきた、空打工程を省略した。空打は線維をほぐしてやわらかくするための工程であり、線維が短く切れて、線維密度は低下する。このため従来、味取り工程後と、トップコート後に行っていた空打工程をいずれも省略し、線維密度の低下を防いだ。空打の省略に伴い,空打後の革の平滑化を目的とするネット張り乾燥も必要性がなくなったので、併せて省略した。
(j)仕上げ工程で従来行ってきたプレヒート工程は仕上げ工程の最初の段階で行いフォギングの原因となる物質を揮発除去することを、徹底的に行い、併せて予め熱収縮をさせて皮革の熱収縮率を低い状態に保つこととした。
(k)加脂工程を行い、がら干し乾燥工程を真空乾燥とがら干し乾燥を組み合わせることとし、空打工程及びネット張り乾燥を止め、プレヒート工程を仕上げ工程の最初に行うことにより、課題であった、銀面層及び網状層は密に形成されているとともに、皮革の銀面層と網状層の層間剥離が防止することが可能となり、従来問題とされてきた、しわの発生を防止することに成功した。また、従来からの課題であるフォギングの発生防止に成功した。又、熱収縮率が低い皮革を得ることができた。
また、前記皮革は国産牛由来の皮から得られたもので行う処理の場合には有効であり、一方、ドイツ製の牛由来の革の場合には、層間剥離そのものが発生しにくいとされている。したがって、国産牛由来の皮に対して本発明を適用することは有効な処理手段となる。
本発明によれば、銀面層及び網状層は密に形成されているとともに、皮革の銀面層と網状層の層間剥離が防止することが可能となり、インパネ革として用いたときに、しわの発生を防止することができ、フォギングの発生を防止することができ、熱収縮率が低く、外観硬さ及び風合いについても良好な皮革を得ることができる。これは自動車用インパネ革として最適な皮革である。
本発明の皮革は、皮を処理することからなり、皮革を製造するための準備工程、なめし工程、再なめし・染色・加脂剤に替わり柔軟剤による柔軟処理工程これに続く乾燥工程、及び仕上げ工程からなる一連の工程を得て製造される皮革である。
(1)従来の一連の工程を得て製造される皮革の構造は以下の通りである。
従来の一連の工程を経た皮革の断面は図1右側及び2右側に示されている。表面に見られる銀面層は表皮の細胞が消失した乳頭層から変化した真皮部分であり、コラーゲン線維とエラスチン線維が緻密に交絡、繊維の多くは水平方向に走行している、緻密で、水透過性も小さい層である。これを銀面層と呼ぶ。
その下の網状層はコラーゲンからなる組織で、なめし処理により、コラーゲンたんぱく質に化学的に結合(架橋結合又は短結合)し、熱、光水などに対して安定化されており、コラーゲン繊維間に物理的に沈着して充填効果を上げ、組織の物性(強度と柔軟性、耐久性、耐摩耗性など)や官能的性質(風合いなど)を改善する。コラーゲン繊維に化学的又は物理的に結合して染色性を改善したり、加脂剤や再なめし剤の定着を高めたりる。コラーゲン繊維に化学的又は物理的に結合して、撥水性や防汚性などを付与されている。
全体構造から見ると、一連の工程を得て得られる皮革は全体として密に形成されていることがわかる。
銀面層と網状層の間及び各層は隙間無く形成されており、皮革の段階では問題点は発生していないことが理解できる。
特開2007−70487号により製造された皮革を自動車のインパネ用として用いた場合にインパネに用いるプラスチック基材に対して、合成素材のクッション部材(ラッセル)を介して、湿気硬化性接着剤により接着した後の養生のために、硬化促進処理(30℃、80%RH、12時間)を行ったところ、インパネ用に張った皮革の表面にシワが発生するという不具合が発生した。同時に、柔軟性が求められるところ、外観が硬く見えるという点の指摘を受けた。
養生シワが発生している原因の究明につとめ、本発明者らは以下の点を見出した。
(a)シワが発生していない正常部位とシワが発生している部位についてSEM顕微鏡を用いて皮革の断面を観察した。
その結果、シワが発生して入る部位ではわずかではあるが、銀面層及び網状層には外見上格段の問題の発生はみられないが、皮革の銀面層と網状層の層間剥離が観察された(図3右側)。これに対して、しわが発生しない部位では、銀面層及び網状層は外見上格段の問題の発生はみられないし、皮革の銀面層と網状層の層間剥離が観察されない(図3左側)。
しわの発生は皮革の銀面層と網状層の層間剥離が見られるかどうかによると理解できる。
(b)また、従来しわが発生しやすいとされる国産原皮と発生しにくいとされる革(ドイツ原皮)に前記の発明と同様の処理を行った革を比較してみると、国産原皮では比較的多数の層間剥離が観察され、しわが発生しやすいことがわかった(図4右側)。一方、ドイツ原皮では、層間剥離そのものが観察されず、しわそのものの発生しにくいことを見出した(図4左側)。
(c)前記(a)(b)の結果からシワの発生は、皮革の銀面層と網状層の層間剥離によって引き起こされることが理解できる。
合成素材のクッション部材(ラッセル)を介して、湿気硬化性接着剤により接着した後の養生(高湿度処理)により発生していることから、層間剥離が起きるしくみは次のように考えられる。まず、革が高湿度下におかれることにより伸びて、横方向(平面方向)に広がろうとする。しかしながら、伸びのない基材/クッション材に接着されているため、横方向に伸びることができない。そこで、力が縦方向(厚み方向)に働き、革繊維が疎で乳頭層(銀面層)と網状層の結合力が弱い革では、層間剥離が起きる。
(d)銀面層及び網状層は密に形成されていること、皮革の銀面層と網状層の層間剥離を起さない状態の皮革を形成する上ではドイツ牛によるのか、日本牛によるのかという牛種によるところが大きい。日本牛による場合であっても、銀面層及び網状層は密に形成されるとともに、皮革の銀面層と網状層の層間剥離を起しにくい状態の皮革を形成すれば課題を解決することができると考えられる。
本発明の皮革は、準備工程、クロムフリーなめし剤によるなめし工程、合成なめし剤による再なめし・染色・加脂剤を用いる加脂工程とこれに続く乾燥工程、及び仕上げ工程からなる一連の工程を得て製造される皮革であって、再なめし・染色・加脂剤による加脂工程とこれに続く乾燥工程がセッター工程、真空乾燥工程・がら干し乾燥工程、味取り工程、バイブレーション工程及びバフ工程からなり、仕上げ工程のプレヒート工程を経て、裏のり工程、ベースコート形成工程、型押し工程、カラーコート工程、トップコート形成工程、バイブレーション工程、裏すき工程からなる製造工程により製造される皮革である。
次に準備工程、クロムフリーなめし剤によるなめし工程、合成なめし剤による再なめし・染色・加脂工程これに続く乾燥工程、及び仕上げ工程の説明を行う。
皮革を製造するための準備工程は既によく知られている工程である。
皮水洗・水漬け工程からトリミング工程を示す。原皮水洗・水漬け工程では、低温貯蔵されて鮮度保持・腐敗防止された原皮が石灰ドラムに移され、塩漬け原皮を水戻しして生皮の状態に戻し、塩・不純物を除去し、石灰漬けのためのpH調整を行う。フレッシング・トリミング工程では、フレッシングマシン、トリミングマシンに移され、脂肪等の余分な裏ニベを機械的に除去し、塩や不純物も除去され、縁周りを整形する。石灰漬け工程では、石灰ドラムに移され、皮表面の毛を溶解すると共に垢をとり、皮の内部に石灰を浸透させて繊維をほぐす。生バンドスプリット工程では、バンドマシンに移され、用途に応じた厚さに皮を漉くと共に、皮を銀層と床に分割する。脱灰・酵解・ピックル・なめし工程では、石灰を抜きクロムを含有しないなめし剤でなめしを行い、皮を革にする。脱水工程では革を水絞り機に移し、ウェットホワイトの脱水を行う。傷・穴・面積等の表面状態に応じた等級分けを実施する選別を行う。シェービング工程では、シェービングマシンに革を移し、用途に応じた厚さに削る。トリミング工程では、トリミング台で不要なボロ切れ目等を切り、後工程での破れを防止して作業性能を高める。
なめし工程は、準備工程により処理された皮を化学的、物理的操作により、種々の実用性能を有する革に可逆的に変換する。皮に耐熱性、化学試薬や微生物に対する抵抗性、柔軟性を与える。
なめし工程は酸性条件下に皮を、なめし剤を水の存在下に処理するものである。なめし剤は皮のコラーゲン物質に架橋を起こさせて、皮に耐熱性、微生物や化学物質に対する抵抗性を与え、柔軟性を付与する操作である。
なめし剤には、3価のクロム錯体、例えばCr(SOとして表現されるヘキサアコ結晶硫酸を用いるクロム化合物、グルタルアルデヒドなどのアルデヒド化合物などのほか、アルミニウムなめし剤、ジルコニウムなめし剤などが知られている。また植物タンニン剤、アルデヒドなめし剤、合成なめし剤などが知られている。クロムなめし剤が環境問題などで制限されることもあって、クロムフリーなめしとしてクロム以外のなめし剤が使用される。
多くのなめし剤が知られている。これらはいずれも従来から知られているものであり、市販のものを購入して使用すればよい。
特開2007−70487号公報の発明ではクロムなめしでも、クロムフリーのなめしを行った場合でも、曇り(フォギング)が発生すること自体は変化しないが、クロムフリーなめしでは熱収縮率が小さい(皮革の収縮や剥離による基材の変形が少ないという観点からクロムフリーなめし(なめし剤にクロム化合物を使用しないで、他のなめし剤を用いる)による革を使用することとした。
再なめし・染色・加脂及び乾燥工程は以下の通りである(図5右側の工程は本発明の工程を示している。以下本発明の工程を説明するときは図5右(番号)で示す。図5左側の工程は特許文献1(特開2007−70487号公報)の工程を示す。以下特許文献1の工程は図5左(番号)に示す。
再なめし工程では、既に知られている合成なめし剤及び植物なめし剤などの中のから選択して用いられる。場合によっては、前記なめし剤であるクロムやグルタルアルデヒドなども添加して使用することもある。
再なめしに際しては処理対象となる革が中和されているかどうかを予め確認して行う。革の断面にpH指示薬を滴下し、その変色層を観察して行う。おおよその目安として甲革タイプで表面層はpH5から6、内部層は3から4程度とされている。
染色工程については以下の通りである。
前記染色工程は、再なめし工程を経て得られる革を対象にして前記染料を用いて染色を行うものである。酸性水性染料を用いて染色される。酸性水性染料は、水性媒体、染料等の成分により構成される。水性媒体とは、水及び水とアルコール等の水溶性溶媒との混合物を意味する。
染料を含む組成物は、比較的強酸側(pHは3から4)であり、革重量基準で、水250%、前記染料2.5から4%、アニオン界面活性剤からなる均染剤0.5%からなる水溶性組成物として供給される。
処理温度は50℃程度である。1時間程度ドラム内処理する。
染色工程終了後、ギ酸により染料の定着処理を行う。
加脂工程は以下の通りである。
加脂工程では加脂剤による処理が行なわれる。
加脂工程は再なめし後の染色工程の次に行われる処理である。なめしなどの製革湿潤作業を終えた湿潤革の内部構造中のフィブリル間には多くの水が介在し、これが革に柔軟性を与えている。革が乾燥されて、この水が除去されるとフィブリル同士がこう着して組織の硬化が起きる。こう着が過度に進むと、組織全体の物性(伸び、引き裂き強度、曲げ特性など)が低下し、革の品質を損なう。湿潤革中に介在する水の一部を他の物質で置換してから乾燥させると、フィブリルのこう着を防止できる。加脂剤(油剤ともいう)を革フィブリル間に充填して表面に付着させることが加脂工程の中心である。
油剤の作用によりフィブリル間又はその表面を疎水性油剤の皮膜で覆うことによりフィブリルに防水性を与えることができ、はっ水効果がある油剤を用いることにより耐水性を改善することができる。また、革のしなやかさやふくらみ感なども加脂剤による影響を受ける。
染色工程を経て加脂工程で処理する革は水に濡れた状態にあり、線維束内、線維間隔に存在する水のために線維の柔軟性が保持されているが、乾燥すると線維同志が膠着して線維及び組織が硬化する。乾燥前に予め線維間に膠着を阻害する物質となる油剤により処理することが効果的である。又、革線維の保護(撥水性、防水性)のような機能、感触、膨らみを付与する。このために加脂工程があり、加脂剤が用いられる。
皮革の加脂剤には、従来から知られているものを広く用いることができる。本発明ではフォギングの発生を防止するうえから、(1)アニオン性加脂剤中、(イ)硫酸化油、(ロ)スルホン化油、及び(ハ)亜硫酸化油から選択される
ものを用いることが好ましい。これらの加脂剤を用いることにより、フォギングの発生を防止することができる。
加脂剤を含む組成物は以下の通りである。
水は革重量に対して110%から130%、前記合成加脂剤は革重量に対して2から5%、液のpHは4.5、水温は50℃程度とされる。
以上の組成物をドラム中の革に供給処理し、処理後に十分に水洗して操作を終了する。
加脂工程を得た皮革は、なめして柔らかくした皮革の状態となる。
セッター工程(図5右2)に移し、染色後の革の水分を絞り、水分を50〜60重量%程度とする。
真空乾燥工程(図5右3)は熱板の表面に皮革を載せ、気体が漏れない状態に維持しつつ真空ポンプで真空に保ちながら皮革を乾燥させる。急激な乾燥を行うため、出来上がりの皮革は緻密すぎたり、硬くなりすぎるなどの問題点があるとされる。しかしながら、真空乾燥である程度の段階まで乾燥を進めると、皮革の構造については、皮革は厚み方向に圧縮されて緻密な状態を保ち、安定した状態を維持しながら、含水量を減少させることができる。上記の真空乾燥工程の説明は水分の除去方法に特徴がある。
本発明では真空乾燥の条件を、温度を60℃〜80℃とし、時間を120秒から180秒の程度の条件とすることが好ましい。この条件は実験で確認したものである。この範囲を外れる60℃、60秒(真空乾燥不足)、80℃、240秒(真空乾燥過度)では、各々しわの発生及び風合いの点で良好な範囲の真空乾燥を行った場合より劣る結果となっている(この場合には、がら干し乾燥を同時に行うこと、ネット張り乾燥を行わないこと、プレヒートは同様に行うことでは、条件は同じである。)。
この条件下に皮革を処理すると、皮革は生乾きの状態で取り出される。真空乾燥処理の終点は皮革が固有の光沢を有している状態となることにより確認できる。水を多く含んだ状態で得られる場合には、固有の光沢を発していない。
本発明では、前記真空乾燥工程を60〜80℃、120〜180秒の条件下に行い、得られ皮革は生乾きの状態で取り出すこと、引き続き、がら干し乾燥工程に接続し、乾燥を行うことが特徴である。
前記真空乾燥工程・がら干し乾燥工程(図5右4)は、セッターされた皮革を真空乾燥60〜80℃、120〜180秒の条件下に行い、水を含んだ皮革を厚み方向に圧縮されて緻密な状態を保ち、安定した状態を維持して含水量を生乾きの状態のまで除去した後、残っている水を除去するために、がら干し乾燥を行う。
がら干し乾燥工程では水分を2から10重量%の範囲となるまで乾燥させる。がら干し乾燥は、革の一辺を固定し、他の辺を自由端とする懸垂状態で熱風乾燥を行なう乾燥方法であり、通常用いられている乾燥方法の一つである。革を乾燥させ革内に薬品・染料を吸着するように行う。又、革を1回乾燥させることにより風合いをだす。
真空乾燥工程の次に、がら干し乾燥を行うことにより水分の除去に関しては無理な乾燥は行なわれず、皮革の構造はなめし、再なめし及び加脂剤による処理による、皮革が湿潤状態が維持された状態の後、安定した皮革の構造が保持され、銀面層及び網状層は外見上問題なく形成されているとともに、皮革の銀面層と網状層の柔軟に形成されており、外力に対しても柔軟に対応できるので、層間剥離は起こりにくい状態であることが理解できる。
がら干し乾燥によっても銀面の過度な乾燥が防止され、割れや無理な伸ばしも防止されており、皮革は自然な状態を維持している。
味入れにより水分量を革に与え、味付けを行う。これは、最終的に革の均等な伸び・膨らみ感を保つ上で重要な操作である。
前記がら干し乾燥工程、味取り工程(図5右5)、バイブレーション工程及びバフ工程では、がら干し乾燥工程で皮革に含まれる水分量を皮革重量に対して2以上10重量%の範囲とし、味とりを行って水分を補給してバイブレーションを行って、十分に引き伸ばしを行い、バフ処理をおこない、皮革の内部構造の急激な変化を防止し、柔軟な状態の空隙を有する平板状の平らな表面の皮革を得ることができる。
バイブレーション工程(図5右6)では、革をバイブレーションマシンに移し、革全体の硬さを取り、面積を大きくする。
従来行なってきた、空打工程を省略した。空打は線維をほぐしてやわらかくするための工程であり、線維が短く切れて、線維密度は低下する。このため従来、味取り工程後と、トップコート後に行っていた空打工程をいずれも省略し、線維密度の低下を防いだ。空打の省略に伴い,空打後の革の平滑化を目的とするネット張り乾燥も必要性がなくなったので、併せて省略した。
バフ(図5右9)を行い、皮革の表面を平らな状態に仕上げる。
下地検査を行い、この下地工程を終了する。
従来仕上げ工程の中頃で行ってきたプレヒート工程(図5左16)を、仕上げ工程の最初の段階に移してプレヒート工程(図5右12)で行う。
この操作によりフォギングの原因となる物質を揮発除去することを、徹底的に行い、併せて予め熱収縮をさせて、以後の皮革の熱収縮率を低い状態に保つことができる。例えば、前記仕上げ工程のプレヒート工程では皮革を65から80℃で、60分程度加熱して、皮革の熱収縮を進めることにより、さらに熱収縮が進行することを防止し、併せて皮革より遊離発生するフォギング原因物質を十分に排除する。前記真空乾燥の条件のもとに真空乾燥を行い、がら干し乾燥を行い、空打ち、ネット張り乾燥及びプレヒートを行わない場合には、しわの発生を防止することはできないし、熱収縮率の低下を防止できない。
この結果よりプレヒートの有効性を確認できる。
裏糊の塗布(図5右13)。は、ロールコーターによりアクリル樹脂を塗布してバッキング処理を行い、塗装面への裏毛羽の付着を防止する。裏糊(アクリル樹脂)は、裏すき工程(皮革厚さを均一化するために皮革裏面を漉く工程)で除去される。
塗装工程では、リバースロールコーターまたはスプレーマシンにより革の表面に1回目の顔料塗装(ベースコート層の形成(図5右14)を行い、型押し工程(図5右15)では、革の表面への模様付けを行う。
次いで2回目の顔料塗装(カラーコート、図5右17)を行い、さらに強度などの表面物性を付与するためスプレーマシンによりウレタン(水性ウレタン)塗装を行い(トップコート、図5右18)、ウレタン架橋反応時間が経過するまで熟成させた後、塗装検査台で塗装状態の確認を行う。バイブレーション工程(図5右21)では、革をバイブレーションマシンに移し、革の繊維をほぐし、足先・縁周り等の硬さをとり、面積を大きくする。裏すきを行う(図5右22)。
最後に、製品検査として、生産品の最終検査が行われ、等級、紋、風合い、色調、厚度等の項目について検査が行われる。
前記皮革は国産牛由来の皮から得られたもので十分に対処できる。
得られた皮革をインパネ革に使用する場合には以下のように行う。
皮革をプラスチック基材にプラスチック製のクッション部材を介して、接着剤に接着して自動車用インパネを完成させる。
この結果、本発明の自動車用内装部材によれば、シワの発生がなく、低熱収縮性であり、曇り(フォギング、Fogging)が発生しない状態を維持していることがわかる。
得られた皮革の各種の試験方法について以下に述べる。
革のフォギング性能については、フォギング発生装置内で皮革より発生したフォギングとなる原因物質をガラス板表面に捕らえ、ガラス板表面のフォギングとなる原因物質について反射率検査を行って、フォギングとなる原因物質の測定を行う。
[フォギング発生装置]
本実施例で用いたフォギング発生装置の概略を図6に示す。
皮革材料1を容器2に収容し、容器2を加熱容器3内に配置する。加熱容器3内には加熱液体4が入れられ、例えば、容器2内の温度が100℃の恒温状態になるように保たれている。容器2の開口部はガラス板5で塞がれ、ガラス板5は冷却手段6によって所定の温度に冷却されている。
所定の温度(例えば、100℃)に皮革材料1が保たれることにより、ガラス曇りの原因物質が揮発してガラス板5に付着する。冷却手段6によりガラス板5は冷却されて原因物質が定着される。
[フォギングとなる原因物質の測定]
フォギングとなる原因物質の測定方法を図7に示す。ガラス板5は、原因物質が定着したガラス板5に光を当て、その時の投光量と反射量に基づいて反射率を導出して測定する。
得られた皮革の加熱による熱収縮率は、加熱時間及び加熱温度の所定の条件のもとの変化を測定することにより行う。
しわの発生は、どの部分にどの程度発生するかを目視することにより行う。
インパネに用いるプラスチック基材に対して、合成素材のクッション部材(ラッセル)を介して、湿気硬化性接着剤により接着した後の養生のために、硬化促進処理(30℃、80%RH、12時間)を行ったところ、インパネ用に張った皮革の表面にシワが発生するかどうかを目視する。
風合いは実際に得られた皮革を実際に触れたときの感触を官能で表現したものである。
以下本発明の内容について実施例により詳細に説明するとともに従来例を比較例として示す。本発明の内容はこれにより限定されるものではない。
皮革を製造するための準備工程及びクロムフリーなめしを行うなめし工程は既に特許文献1で述べている通りであり、この点に変更はない。従来の方法により得られる皮革を用いる。
再なめし・染色・加脂の各工程は一連の工程として同一ドラム内で処理される。
再なめしは再なめし剤として合成なめしであるナフタレンスルホン酸及び植物タンニン及び植物タンニンを添加し、35から45℃温度条件下に、中和されているかどうかを予め確認した後に行う。なめしは、その変色層を観察して行う。おおよその目安として甲革タイプで表面層はpH5から6、内部層は3から4程度であった。
染色については染料には、酸性染料を用いた。染料を含む組成物は、比較的強酸側(pHは3から4)であり、革重量基準で、水250%、前記染料2.5から4%からなる水溶性組成物として供給される。
処理温度は35〜50℃程度である。1時間程度ドラム内処理する。
染色工程終了後、ギ酸により染料の定着処理を行う。
加脂工程では、加脂剤として、スルホン化油を用いた。
加脂剤を含む組成物は以下の通りである。
水は革重量に対して110%から130%、合成加脂剤は革重量に対して2から5%、液のpHは4〜4.5、水温は50℃程度とされる。
以上の組成物をドラム中の革に供給処理し、処理後に十分に水洗して操作を終了する。
再なめし、染色及び加脂を経て十分に水洗した皮革をセッターにかけた。
セッティングマシンにより、皮革の伸ばしを行って、革の水分を絞り、水分を60〜70重量%程度とする。
真空乾燥工程では熱板の表面に皮革を載せ、気体が漏れない状態に維持しつつ真空ポンプで真空に保ちながら(70℃、150秒間)処理を行った。皮革は半乾の状態であった。次に,皮革を、がら干し乾燥を行った。
がら干し乾燥工程では水分をおよそ5重量%の範囲となるまで乾燥させた。
次に味入れにより皮革に水分を与え、味取りを行う。
バイブレーション工程(図5右6)では、革全体の硬さを取り、面積を大きくした。
この段階では特開2007−70487号公報の場合に行ってきた空打ちは行わない。
次にバフを行い、皮革の表面を平らな状態に仕上げる。
下地検査を行い、下地工程を終了する。
仕上げ工程の最初の段階にプレヒート工程(図5右側12)を行う。
プレヒートの条件は皮革を70℃で1時間加熱する。皮革の熱収縮を進めることにより、さらに熱収縮が進行することを防止し、併せて皮革より遊離発生するフォギング原因物質を十分に排除することができる。本実施例では熱収縮率110℃、2400H縦5.1%、熱収縮率110℃、2400H横5.3%であった。
裏糊の塗布(図5右13)。は、ロールコーターによりアクリル樹脂を塗布してバッキング処理を行い、塗装面への裏毛羽の付着を防止する。裏糊(アクリル樹脂)は、裏すき工程(皮革厚さを均一化するために皮革裏面を削る工程)で除去される。
塗装工程では、リバースロールコーターまたはスプレーマシンにより革の表面に1回目の顔料塗装(ベースコート層の形成(図5右14)を行い、型押し工程(図5右15)では、革の表面への模様付けを行った。
この段階では特開2007−70487号公報の場合に行ってきたプレヒートは行わない。
次いで2回目の顔料塗装(カラーコート、図5右17)を行い、さらに強度などの表面物性を付与するためスプレーマシンによりウレタン(水性ウレタン)塗装を行い(トップコート、図5右18)、ウレタン架橋反応時間が経過するまで熟成させた後、塗装検査台で塗装状態の確認を行う。
この段階では特開2007−70487号公報の場合に行ってきたプレヒートは行わない(図5左19)。また空打ちも行わない(図5左20)。
バイブレーション工程(図5右21)では、革をバイブレーションマシンに移し、革の繊維をほぐし、足先・縁周り等の硬さをとり、空打ちのしわを取り、面積を大きくする。裏すきを行う(図5右22)。
最後に、製品検査として、生産品の最終検査が行われ、等級、紋、風合い、色調、厚度等の項目について検査を行った。
この結果、得られた皮革では、以下の通り所期の効果を得ていることを確認した。しわの発生は見られなかった。フォギングの発生(反射率は92.6%)を防止できたことを確認した。熱収縮率は、熱収縮率110℃、2400H縦5.1%、熱収縮率110℃、2400H横5.3%であり、良好であると判断した。外観硬さ及び風合いについても良好であることを確認した。以上から、良好な皮革を得ることができることを確認した。
比較例1
特開2007−70487号公報の実施例を比較例として示す。
皮革を製造するための準備工程及びクロムフリーなめしを行うなめし工程は前記公報で述べている通りである。
クロムなめしの本革に比較して熱収縮し難いという利点があるクロムフリーなめしを用いた。
再なめし・染色・加脂の工程の再なめし材には(1)合成タンニンを用いた。合成タンニンの使用によりフォギングや悪臭の原因物質である植物タンニンの使用を避けた。
加脂剤を用いず、合成タンニン及び柔軟剤及び染色剤等の薬剤を供給し、革の再なめしを行うと共に目的の色に染色し、柔軟剤により革を軟らかくする。合成タンニンはガラスが曇るフォギングや悪臭の原因とならないので、フォギング及び悪臭の原因を減少させることができる。また、柔軟剤によりフォギング及び悪臭の原因となる加脂剤を用いることなく風合いの劣化を改善することができる。柔軟剤としてはアクリル系ポリマーを用いた。
セッター工程(図5左2)は、なめして柔らかくした革をセッティングマシンに移し、染色後の革の水分を絞り乾燥を容易にする。また、しわを伸ばして革を大きくする。
水分乾燥には実施例1で用いられ真空乾燥は用いない(図5右3)。
水分除去には柄干乾燥工程(図5左4)は、革を柄干乾燥機に移し、革を乾燥させて薬品・染料の吸着を完全にし、革を1回乾燥させることにより風合いをだす
味取り工程(図5左5)では、革を味取りシャワー機に移し、酸化防止剤の水溶液を塗布する。乾燥状態にある革に少量の水を塗布することにより味付けを行う。酸化防止剤を革の繊維質に含有させる。酸化防止剤水溶液は、例えば酸化防止剤濃度1.4重量%、20℃のものを用い、革の乾燥重量に対して酸化防止剤が0.025%となるように使用量を決定する。用いた酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、水系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ジオエーテル系酸化防止剤である。
バイブレーション工程では、革をバイブレーションマシンに移し、全体の面積を大きくする。
空打ち工程では、革を空打ちドラムに移し、乾燥後の革の繊維をほぐす(図5左7)。その後、乾燥・バフ・バイブレーション工程では、革をネット張り乾燥機に移して空打ち後の革をトグルで止めて革を伸ばして乾燥させ(ネット張乾燥)、革を平らにする。革をバイブレーションマシンに移して繊維をほぐし、空打ちのしわを取り、面積を大きくする(図5左8)。そして、生産品の中間検査を行い、等級、紋、風合い、色調、厚度等の項目を検査する。
仕上げ工程では、裏糊スプレー工程から樹脂塗装工程が含まれる。裏糊スプレー工程では、水性スプレーによりバッキング処理を行い、塗装面への裏毛羽の付着を防止する(図5左13)。この時、革の裏面に樹脂塗装が施される。革の裏面に樹脂塗装が施されることにより、ガラス曇りの原因物質の放出を物理的に遮断することができる。塗装工程では、リバースロールコーターまたはスプレーマシンにより革の表面に1回目の顔料塗装を行う(図5左14)。
型押し工程では、革の表面への模様付けを行う(図5左15)。
型押し工程の後、プレヒート工程で1回目のプレヒートを実施する(図5左16)。
プレヒートの条件は100℃〜120℃の温度で、1時間の加熱を行う。
プレヒートは、工程中で加熱によりできるだけ革を収縮させておくために実施される。また、フォギングの原因となる物質を揮発除去するために実施される。加熱は変色を伴うために変色の許容範囲内で収縮率が最大となる加熱条件が設定されている。変色の許容範囲は、後述する2回目のプレヒートとあわせて、例えば、色差の割合が0.5以下となるのが好適であり、収縮率は、例えば、革の縦・横平均の寸法変化率平均が1.5%以上となるのが好適である。
1回目のプレヒート工程の後、塗装工程で水性スプレーにより革の表面に2回目の顔料塗装を行い、塗装検査台で塗装状態の確認を行う。ウレタン塗装工程では、スプレーマシンによりウレタン(水性ウレタン)を塗布し、強度などの表面物性を付与する(図5左17)。
ウレタン塗装工程の後、プレヒート工程で2回目のプレヒートを実施する(図5左19)。プレヒートは前述した加熱条件100℃〜120℃の温度で、1時間の加熱である。
2回に分けてプレヒートを実施した場合、革の収縮が大きくなり、フォギングの原因となる物質の揮発除去も効果的に行える。
2回目のプレヒートの後、ウレタン架橋反応時間が経過するまで熟成させる。
空打ち工程では、革を空打ちドラムに移し、型押し後の革の繊維をほぐし柔らかくする(図5左20)。バイブレーション工程では、革をバイブレーションマシンに移し、革の繊維をほぐし、空打ちのしわをとり、面積を大きくする(図5左21)。
樹脂塗装工程では、革の裏面に樹脂塗装が施される(図5左22)。尚、裏糊スプレー工程での樹脂の塗装を省略することも可能である。
操作により得られる皮革の特性は以下の通りである。
しわの発生が見られる。
フォギングの発生は防止できた。
熱収縮率は、良好であると判断した。
外観硬さ及び風合いについては不十分である。
結論としては、本発明は、しわの発生及び外観硬さ及び風合いの点で良好であることがわかった。
本発明の実施例1で示した条件を確認するうえで実施例1と条件が一部のみ相違する以下の比較例を示す。
比較例2
再なめし材には実施例1と同じく合成タンニン及び植物タンニン、同じ加脂剤を使用した。
真空乾燥を行うことなく、がら干し乾燥のみを行い、空打ちを6時間行い、ネット張り乾燥を行い、プレヒートを実施例1と同様に行い(70℃、1時間)、仕上げ工程の空打ちを30分行った。
操作により得られる皮革の特性は以下の通りである。
しわの発生が見られる。
フォギングの発生は防止できた。
熱収縮率は、良好であると判断した。
外観硬さ及び風合いについては十分である。
結論としては、本発明の場合と比較してしわの発生が見られる。
本発明の真空乾燥の利用が有効であることがわかる。
比較例3
再なめし材には実施例1と同じく合成タンニン及び植物タンニン、同じ加脂剤を使用した。
真空乾燥を行うことなく、がら干し乾燥のみを行い、空打ちは行わない。ネット張り乾燥を行い、プレヒートを実施例1と同様に行い(70℃、1時間)、仕上げ工程の空打ちを30分行った。
操作により得られる皮革の特性は以下の通りである。
しわの発生が見られる。
フォギングの発生は防止できた。
熱収縮率は、良好であると判断した。
外観硬さ及び風合いについては十分である。
結論としては、本発明の場合と比較してしわの発生が見られる。
本発明の真空乾燥の利用が有効であることがわかる。
比較例4
再なめし材には実施例1と同じく合成タンニン及び植物タンニン、同じ加脂剤を使用した。
真空乾燥を実施例1と同じく70℃150秒行い、がら干し乾燥のみを行い、空打ちは行わない。ネット張り乾燥を行わない。プレヒートを実施例1と同様に行い(70℃、1時間)、仕上げ工程の空打ちを30分行った。
操作により得られる皮革の特性は以下の通りである。
しわの発生が見られる。
フォギングの発生は防止できた。
熱収縮率は、良好であると判断した。
外観硬さ及び風合いについては十分である。
結論としては、本発明の場合と比較してしわの発生が見られる。
仕上げ工程の空打ちを行うことは適当でないことがわかる。
従来の一連の工程を経た牛皮革の表面(左側)及び断面図(右側) 従来の一連の工程を経た牛皮革の表面(左側)及び断面図(右側) 皮革の正常の部分を示す断面図及び層間剥離を起こしている断面図 ドイツ牛の皮革断面図及び日本牛の皮革断面図 インパネ用皮革の製造工程を示す図(左側、特開2007−70487号公報の場合を示す図、右側本発明の場合を示す図) フォギング発生装置の概略を示す図 フォギングとなる原因物質の測定方法を示す図
符号の説明
1:皮革材料
2:容器
3:加熱容器
4:加熱液体
5:ガラス板
6:冷却手段

Claims (2)

  1. 国産牛由来の皮を、準備工程、クロムフリーなめし剤によるなめし工程を経て得られる、銀面層と網状層が接合されており、網状層の内部構造中のフィブリル間に水を存在させた皮革を、合成なめし剤による再なめし工程、染色工程及び(イ)硫酸化油、(ロ)スルホン化油及び(ハ)亜硫酸化油から選ばれるアニオン性加脂剤による加脂工程において、前記フィブリル間に存在させた水を前記加脂剤に換えることにより、フィブリルの表面を加脂剤による皮膜で覆った状態の網状層とし、セッター工程により網状層の内部構造中のフィブリル間にある水分量を含む皮革に含まれる水分量を、皮革重量に対して50〜60重量%に減少させ、乾燥処理工程の、真空乾燥装置により、60〜80℃、120〜180秒の条件下に処理し、厚み方向に圧縮して含水量を減少させ、引き続いて、がら干し乾燥装置により水分量を2から10重量%の範囲とし、味取りをして、バイブレーション処理した後、引き伸ばしを行い、バフ工程を経て、得られることを特徴とする、銀面層と網状層が接合されており、前記網状層の内部構造中のフィブリル間には空隙を有する網状層であり、平らな表面を有する皮革の製造方法。
  2. 請求項記載の製造方法により得られた皮革を、65〜80℃で60分間加熱するプレヒートをした後に、網状層側を裏糊処理し、銀面層には顔料塗装によるベースコート層を形成し、型押しをした後、顔料塗装によるカラーコート層、スプレーマシンにより水性ウレタンによる塗装を行うことによりトップコート層を形成した後、バイブレーション処理を行い、裏すき処理を行って、バフを行うことを特徴とする、フォギング原因物質を発生しない、ベースコート層、カラーコート層及びトップコート層を形成した銀面層と網状層が接合されており、網状層の内部構造中のフィブリル間には空隙を有する網状層からなる平らな表面を有する皮革の製造方法。
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