JP2008031467A - 皮革着色物およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高品質の画像がプリントされ、かつ耐摩耗性にも優れた皮革着色物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】皮革表面にアニオン性のベースコート層を有し、このベースコート層上にカチオン性のインク受容層を有し、このインク受容層上にトップコート層を有し、インク受容層に顔料が付与されることにより画像が形成されている皮革着色物とする。この皮革着色物は、皮革表面にアニオン性のベースコート層を形成し、このベースコート層が形成された面にカチオン性のインク受容層を形成し、このインク受容層に顔料インクを用いてインクジェット方式により画像を形成し、この画像が形成されたインク受容層上にトップコート層を形成する製造方法により得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、天然皮革上に画像がプリントされた皮革着色物およびその製造方法に関するものである。
天然皮革は高級感のある素材として様々な用途で使用されている。その製品の大部分は無地品であるが、無地品とは違った印象を与えるものとして、意匠が付与されたものも存在する。意匠の付与例としては、スクリーンプリントにより柄付けされたものや皮革表面にエンボス加工により凹凸が付与されたものなどが挙げられるが、これら従来型の加工方法は大量生産に適したものであり、もともと天然皮革素材のような少量生産には向いていない加工方法といえる。また近年、要求されるデザインの高度化により、スクリーンプリントによる柄付けでは表現に限界がみられるようになってきた。
このような実情を背景に、天然皮革の新たな柄付けの方法として、インクジェット方式を利用したものが検討され、これまでにいくつかの報告もなされている。その一例を挙げると、特許文献1には、皮革素材からなる基材上に水性下塗り材層を有し、さらにその上にアルミナ水和物を含有する多孔質インク受容層であって、インクジェット方式により描画された画像を定着した層を有し、さらにその上に透光性保護層を設けた皮革製品が提案されている。
ここで、天然皮革は一般的に、原皮、水漬け、裏打ち、脱毛・石灰漬け、分割、垢だし、再石灰漬け、脱灰・酵解、漬酸、なめし、水絞り、シェービング、再なめし、中和、染色・加脂、水絞り、乾燥、味入れ、ステーキング、張り乾燥、縁断ち、銀むき、塗装、艶出し・アイロン、計量というように多くの工程を経て製品となるが、天然皮革にインクジェット方式を利用して柄付けを行う場合、これらの工程中のどの段階においてインクジェットプリントを実施するのかということは重要である。
つまりインクジェットプリントを実施する場合に使用するインクとしては、その扱い易さから水系のインクを選択する場合が多く、天然皮革にはその水系インクを受け止める充分なインク受容能力が必要となる。このインク受容能力が不充分であるとインクが滲んでしまい、満足な画像が形成されない。
上記皮革製品の製造工程において、塗装工程前までは、ある程度のインク受容能力を期待できるため、塗装工程前にインクジェットプリントを行うのが通常である。しかし、天然皮革には引っ掻き傷、虫食い痕等による欠点や生来の個体差に起因する表面形状バラツキが多いため、高いレベルでの均一なインク受容能力を求めることは難しかった。
特許文献1の発明においては、アルミナ水和物を含有する多孔質インク受容層を備えることで高いレベルでの均一なインク受容能力を得ようとの試みがなされているが、このような構成にて製造された皮革製品では、その中に空隙をもった層が存在することになり、充分な耐摩耗性を得られないと考えられる。またアルミナ水和物の色は白色であるため、皮革製品の縫製部分など、その断面が見える箇所において、皮革表面の色と全く違った白色が視認されることになり、高級感が失われるおそれもある。
特開平09−059700号公報
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、高品質の画像がプリントされ、かつ耐摩耗性にも優れた皮革着色物およびその製造方法を提供することにある。
本発明は、上記課題を解決するため次のような手段を実施するものである。
すなわち、本発明の皮革着色物は、皮革表面にアニオン性のベースコート層を有し、このベースコート層上にカチオン性のインク受容層を有し、このインク受容層上にトップコート層を有し、前記インク受容層に顔料が付与されることにより画像が形成されているものとする。
上記皮革着色物において、インク受容層はカチオン性物質及び水溶性樹脂を含有するものとすることができる。
インク受容層は、さらにウレタン樹脂を含有するものとすることもできる。
インク受容層の厚さは2〜10μmの範囲内であることが好ましい。
また、ベースコート層はアニオン性樹脂を含有するものとすることができる。
また、トップコート層としては、上記インク受容層と接するアニオン性の層を少なくとも1層有することが好ましい。
このアニオン性のトップコート層の上に、シリコーン樹脂を含有する第2のトップコート層をさらに有するものとすることができる。
また、上記皮革およびベースコート層のうちの少なくとも一方を、インク受容層に形成された画像の背景色と同系統の色彩を有するものとしてもよい。
本発明の皮革着色物の製造方法は、皮革表面にアニオン性のベースコート層を形成し、このベースコート層が形成された面にカチオン性のインク受容層を形成し、このインク受容層に顔料インクを用いてインクジェット方式により画像を形成し、この画像が形成されたインク受容層上にトップコート層を形成することにより、上記本発明の皮革着色物を得るものとする。
上記本発明の製造方法において、皮革およびベースコート層のうちの少なくとも一方を、インク受容層に形成された画像の背景色と同系統の色彩に予め着色してもよい。
本発明によれば、高品質の画像がプリントされ、かつ耐摩耗性にも優れた皮革着色物とその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。
本発明において使用する皮革は、前述したような公知の天然皮革の加工工程において、塗装工程より前の状態のものであればよく、皮革の種類などについては特に限定されない。
本発明においてはまず、この皮革にアニオン性のベースコート層を形成する。ベースコート層を形成する目的は、皮革表面を均一なものとし、質の高い画像を形成することにある。また層をアニオン性とするのは、後述するインク受容層との接着性を良好なものにするためである。アニオン性のベースコート層を形成するには、例えばアニオン性樹脂を用いればよい。
アニオン性樹脂の例としては、その分子構造中にカルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩等を含む不飽和アルキルアニオン性物質から合成されるホモポリマーもしくはこれらと不飽和アルキル物質から合成されるコポリマーなどのエマルジョンが挙げられる。樹脂としては、ウレタン樹脂やアクリル樹脂等が好適に使用できる。
またアニオン性のベースコート層を形成するには、ノニオン性樹脂エマルジョンに対してアニオン性界面活性剤を添加したものも使用可能である。アニオン性界面活性剤は、上記アニオン性樹脂と同様に、その分子中にカルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩等構造を持つものが多く、脂肪酸系、直鎖アルキルベンゼン系、高級アルコール系、アルファオレイン酸系、ノルマルパラフィン系などの様々な種類のアニオン性界面活性剤が使用可能である。
上記ベースコート層の厚みは、皮革表面を均一にして画像の視認性を向上させるためには、30〜50μmとすることが好ましい。しかし、厚みをそれ以上として、より層剥離しにくい強度の高いものとすることも可能である。
ベースコート層は、必要に応じ、ベースコート樹脂液中に色材を添加することにより着色することが可能である。例えば、プリントする画像の背景色の同系色でベースコート層を着色した場合、後述するインクジェットプリント時にインク受容層にて受容するインクの量を減らすことができるため好ましい。
ここで、「背景色」とは、インク受容層に形成された画像の中で面積が最大である色を示すものとする。また、「背景色の同系色」とは、La*b*色空間においてL値を除外したa*b*空間座標値において、背景色の測定値から原点(0,0)への直線を引いた場合にその直線に対し±45°好ましくは±22.5°の範囲内に置かれる色を指し示す。しかし、使用される色数が多く、かつそれらが点在し、背景色という概念の適用が困難な場合等は、ベースコートの色を白色にしてもよく、又は任意に設定した色を用いることもできる。
また皮革は、予め着色される場合もあるが、ベースコート層の色と同系色で予め染色した場合、天然皮革の断面が目立たなくなるために好ましい。
ベースコート層の形成方法については、スプレー、ロールコーター、手塗り等の公知の方法を用いることができ、特に限定されない。
上記ベースコート層が形成された面に、次にインク受容層を形成する。インク受容層の構成成分としては、カチオン性物質、水溶性樹脂及びウレタン樹脂の3成分を含んでいることが好ましい。またはカチオン変性されたウレタン樹脂を用いることにより、カチオン変性ウレタン樹脂と水溶性樹脂の2成分とすることもできる。
つまりカチオン性物質を添加することでインク受容層をカチオン性とすることができ、これによりアニオン性のベースコート層との接着性向上が可能となる。また後述するインクジェットプリントを行う際には色材として顔料インクを使用するが、顔料インクは概ねアニオン性であるため、インク受容層がカチオン性であると受容層表面でインクを析出させ、固着化することができ、質の高い画像を形成することが可能である。
カチオン性物質としては、分子量、化学構造の異なるものを単独で、もしくは混合して、使用することが可能である。例としては、カチオン性樹脂、カチオン性界面活性剤等が挙げられ、具体的にはポリアルキレンイミン等のポリイミン、ポリアルキルアミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミン、若しくはポリジアリルアミン等のポリアミン、ポリアルキレンポリアミド、ポリアリルアミド、若しくはポリアクリルアミド等のポリアミド、さらにはこれらのカチオン性官能基を複数種類有するジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン、ジシアンジアミドトリエチレンテトラアミン等やこれらのカチオン性官能基を有する化合物の共重合体、これらカチオン性官能基を有する化合物とノニオン性であるアルキレンオキサイド、ビニルアルコール、スチレン、エピハロヒドリン等の共重合体の樹脂や、モノアルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化ジアルキルジメチルアンモニウム、ハロゲン化アルキルベンザルコニウム等の界面活性剤が挙げられる。
また水溶性樹脂は、インク着滴後のインク中の水分を保持させ、インクの滲みを防止する目的で添加する。具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、カルボキシビニルポリマー、でんぷん、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、トロロアオイ、アラビアガム、トラガントガム、こんにゃく、アルギン酸ソーダ、ふのり、カラーギーナン、寒天、ゼラチン、ガゼイン、キチン、キサンタンガム、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、ブリティシュガム、カルボキシメチルでんぷん、ヒドロキシエチルでんぷん、カルボキシエチルでんぷん、カルボキシメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシエチルグアーガム等が挙げられる。
さらにウレタン樹脂は、インク受容層の被膜強度や柔軟性の向上や、後述するトップコート層との接着性向上の目的で添加する。なかでも耐光性が良いという点から、無黄変タイプの脂肪族ウレタン樹脂が好ましく、その他の要求される物性により、エーテル系、エステル系、ポリカーボネート系のいずれのタイプも単独であるいは混合して使用することができる。
インク受容層の色は、ベースとなる皮革の色(着色されている場合もあり、着色されていない場合もある)を阻害しないように無色透明であることが好ましい。
またインク受容層の厚みは、2μmから10μmの範囲内であることが望ましい。2μm未満の場合、インク受容能力が不十分となり、10μmを超える場合、皮革の風合いが硬くなり、柔軟性を保つのに困難を生じたり、耐磨耗性などの物性が悪くなるといった問題が生じうる。
インク受容層の形成方法としても、スプレー、ロールコーター、手塗り等の公知の方法を用いることができ、特に限定されない。
本発明においては、上記のように皮革にインク受容層を設けた後、顔料インクを用いてインクジェットプリントを行う。色材として顔料を使用する理由は、染料に比べて耐光性や耐候性に優れているためである。
顔料の種類は、有機、無機を問わず、何れも使用可能であり、有機顔料の例としては、ニトロソ類、染付レーキ類、アゾレーキ類、不溶性アゾ類、モノアゾ類、ジスアゾ類、縮合アゾ類、ベンゾイミダゾロン類、フタロシアニン類、アントラキノン類、ペリレン類、キナクリドン類、ジオキサジン類、イソインドリン類、アゾメチン類、ピロロピロール類等が挙げられ、また無機顔料の例としては、酸化物類、水酸化物類、硫化物類、フェロシアン化物類、クロム酸塩類、炭酸塩類、ケイ酸塩類、リン酸塩類、炭素類(カーボンブラック)、金属粉類等が挙げられる。
顔料インクにおいて、顔料は通常分散剤によって分散安定化されている。その分散剤としては、界面活性剤タイプまたは高分子タイプのいずれも使用可能であるが、インク受容層へのインク着滴時における、析出、固着化の効果をより高める目的で、アニオン性であることが好ましい。
インクには、その他、必要に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、浸透剤、バインダー等の添加剤を加えることも当然可能である。
なおインク中のバインダー添加量を顔料と同量以上とし、顔料固形分同士の密着性を上げることもできるが、その場合、ノズル面での皮膜形成によるノズル詰まり発生を引き起こす可能性が高いため、顔料よりも少量にした方が好ましい。
上記顔料等をロールミル、ボールミル、コロイドミル、ジェットミル、ビーズミル等の分散機を使って分散させ、その後、ろ過を行うことで顔料インクを得ることができる。
またインクジェットプリントをおこなう際に用いる装置は特に限定されるものではなく、任意のプリント装置を使用可能である。
ここで上記インク受容層のインク受容能力は20〜200g/mが好ましく、50〜100g/mであることがより好ましい。20g/m未満ではインクを充分に受け止められず、質の高い画像形成が困難であり、200g/mを超えると、インクの吸収能力が高すぎ、適度なインクドット滲みを得るためにはインクの付与量を増加させる必要が生じ、付与量が少ない場合にはドット間の空白部分による筋が発生するおそれがあるためである。
またインクの付与量は、インク受容層のインク受容能力の70%以下とすることが好ましく、50%以下とすることがより好ましい。なおインク受容能力は、本明細書においては、水溶性染料を溶かしたインクにて、5g/m間隔で無地柄マトリックスをインクジェットプリントし、インクの滲みが発生した付与量をいうものとする。
インク受容層と後述するトップコート層との接着性を考慮した場合、顔料の固形分付与量は少ないことが望ましい。その理由は次の通りである。
すなわち、インク受容層に顔料インクが着滴後、イオン性の違いにより、顔料インク中の顔料の大部分は水と分離され析出する。なお、ここで一部の顔料インクは、インク受容層中に浸透する。
時間の経過と共にインク受容層上に析出した顔料固形分周辺の水分は乾燥し、最終的に顔料インク固形物がインク受容層上に存在することとなる。
その結果、顔料は粒子としてインク受容層上に存在することになり、そのため顔料がインク受容層面上の多くの部分をカバーしてしまうと、インク受容層のカチオン性を消去してしまうだけではなく、粒子として存在する顔料固形分があるため十分な密着性を得ることができない。
そこでインク受容層中に付与される顔料固形分は、1cmの面積に0.4mg以下が好ましく、より好ましくは0.2mg以下、更に好ましくは0.1mg以下とする。
さらに本発明においては、インクジェットプリントによる画像形成後、形成した画像の保護の目的でトップコート層の形成をおこなう。トップコート層は、インク受容層との接着性という観点からアニオン性とするのが好ましく、アニオン性の層はアニオン性の樹脂を使用して形成することができる。
樹脂の種類については、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等が使用でき、特に限定されるものではないが、ベースコート層、インク受容層と同様、トップコート層にもウレタン樹脂を配合することにより、接着性をさらに優れたものとすることができるので好ましい。その際使用するウレタン樹脂は特には限定されないが、物性が良好という点でポリカーボネートタイプポリウレタンが好ましい。
またトップコート層の塗布方法としては、化学組成の異なる2種類以上のトップコート層を順に形成させることが好ましい。
すなわち第1のトップコート層は、インク受容層に対する接着性の面からアニオン性樹脂を用いて形成するのが好ましく、更には接着性向上や強度アップを目的として架橋成分を添加した組成のものを使用することが好ましい。
そして第2のトップコート層中にはシリコーン樹脂を配合することにより、さらに耐磨耗性に優れた製品を得ることが可能となる。第2のトップコート層は、第1のトップコート層に類似の組成であると接着がよく、具体的には第1のトップコート層形成に用いた樹脂組成物にシリコーン樹脂を添加し使用することが好ましい。なお、第1のトップコート層に用いる樹脂と構造的に類似していればノニオン性樹脂を用いてもよい。
上記のような第1のトップコート層を設けた場合、シリコーン成分を含有する第2のトップコート層と第1のトップコート層との接着が良く、顔料層及びインク受容層と第1のトップコート層との接着も良いため、接着性の更なる向上が期待できる。またその他の成分として、光沢調整剤、耐光向上剤、熱安定剤、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、浸透剤等の添加剤を加えることも当然可能である。
またトップコート層の厚みについては、耐摩耗性と柔軟性を考慮し、10〜40μmが好ましい。トップコート層を2層以上積層する場合は、全層合わせてこの範囲内になるようにするのが好ましい。
トップコート層の形成方法については、スプレー、ロールコーター、手塗り等の公知の方法により実施することができ、特に限定されない。
以上ように、本発明においては、ベースコート層、インク受容層、顔料インク、トップコート層のイオン性を順に異なるものとすることにより、各層間の接着性を向上させている。
以下、本発明について実施例を挙げて説明する。なお本発明は必ずしもその実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
天然皮革として、常法により、原皮(成牛)、水漬け、裏打ち、脱毛・石灰漬け、分割、垢だし、再石灰漬け、脱灰・酵解、漬酸、なめし、水絞り、シェービング、再なめし、中和、染色・加脂、水絞り、乾燥、味入れ、ステーキング、張り乾燥、縁断ち、銀むき、までおこなったものを準備した。なお天然皮革は白色に染色されている。
(ベースコート層の付与)
ベースコート液としては下記処方のものを用いた。
LCC FFカラー WHITE R−5(ノニオン・アニオン) 10重量部
LCC Filler MK(フィラー剤:ノニオン・アニオン) 10重量部
LCC BINDER S−640K
(アクリルエマルジョン:ノニオン・アニオン) 40重量部
LCC BINDER UB−1512
(ウレタンエマルジョン:アニオン) 20重量部
LCC ASSISTER RL(レベリング剤:アニオン) 2重量部
LCC Thickner NA−3(増粘剤) 2重量部
純水 10重量部
(※薬剤はいずれも大日本インキ化学工業(株)製)
室温25℃でNKカップ(アネスト岩田製)を用いて、上記処方のベースコート液の流出時間が40秒になるように、増粘剤及び純水を用いて粘度調整を行った。そして準備した天然皮革にリバースロールコーターを使用して、総Wet塗布量150g/mでベースコート液を付与し、乾燥機で80℃で5分間乾燥を行った。電子顕微鏡を用いて乾燥後のベースコート層の厚みを測定したところ、35μmであった。なお、以下においても厚みの測定は電子顕微鏡を用いて行った。
(インク受容層の付与)
インク受容層用液としては下記処方のものを用いた。
パテラコール IJ−26(変性ウレタン:カチオン:不揮発分15%
:大日本インキ化学工業(株)製) 100重量部
ゴーセノールKL−03
(ポリビニルアルコール:ノニオン:日本合成化学(株)製) 3重量部
純水 30重量部
室温25℃でNKカップ(アネスト岩田製)を用いて、上記処方のインク受容層用液の流出時間が50秒になるように、純水で粘度調整を行った。そしてベースコートされた面にリバースロールコーターを使用して、総Wet塗布量30g/mでインク受容層用液を付与し、乾燥機で80℃で2分間乾燥を行った。乾燥後の天然皮革は、付与したインクジェット受容層が透明である為、ベースコート層の塗装色である白色を有し、白色の色調等に変化は無かった。またインク受容層のインク受容能力は80g/mであり、インク受容層の厚みは7μmであった。インク受容能力の測定方法としては、水溶性染料(青色直接染料 C.I.Direct Blue 86、商品名Sumilight Supra Turquoise Blue G、住化ケム・田岡化学工業(株)製)を染料溶解分1%水溶液としたインクにて、5g/m間隔で無地柄マトリックスをインクジェットプリントし、インクの滲みが発生した付与量を調べたインク受容能力とした。
(インクジェットプリントの実施)
〔顔料インクの調製〕
下記処方による各成分をミキサーにて混合後、ビーズミルにて3時間分散を実施し、ろ過をして顔料インクを調製した。
・イエローインク
PV FAST YELLOW HG
(ベンズイミダゾロン:クラリアント(株)製) 5重量部
ポリティPS−1900
(ポリスチレンスルホン酸Na塩:アニオン:ライオン(株)製) 2重量部
ダイナマイトグリセリン(グリセリン:日本油脂(株)製) 10重量部
純水 83重量部
・マゼンタインク
PV FAST PINK E
(キナクリドン:クラリアント(株)製) 5重量部
ポリティPS−1900 2重量部
ダイナマイトグリセリン 10重量部
純水 83重量部
・シアンインク
IRGALITE BLUE GLNF
(銅フタロシアニン:チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 5重量部
ポリティPS−1900 2重量部
ダイナマイトグリセリン 10重量部
純水 83重量部
・ブラックインク
MA7(カーボンブラック:三菱化学(株)製) 5重量部
ポリティPS−1900 2重量部
ダイナマイトグリセリン 10重量部
純水 83重量部
調製したインクを用いて、インクジェットプリンタを使用し、以下の条件でインク受容層が付与された面にプリントした。プリント後は室温で30分放置した後、乾燥機にて80℃で2分間乾燥を行った。
〔プリント条件〕
イ)ノズル径 : 70(μm)
ロ)印加電圧 : 50(V)
ハ)パルス幅 : 20(μs)
ニ)駆動周波数 : 1(kHz)
ホ)解像度 : 180(dpi)
ヘ)評価柄 :次のa、b
a)ISO/JIS−SCD(認識記号)N3(名称)果物かご
(この場合、画像の背景色と同系統の色彩を付与するという考え方からすればベースコート層色は黒色が望ましいが、黒色にした場合、インクジェットプリントによる着色層の色が黒色に打ち消されてしまうため、ここでは白色ベースコート層を適用した)
b)ISO/JIS−SCD(認識記号)N5(名称)自転車
(この場合、画像の背景色と同系統の色彩を付与するという考え方から、ベースコート層色は白色が望ましい)
(トップコート層の付与)
トップコート液としては下記処方のものを用いた。
LCC WL CLEAR UX−2007
(ウレタンエマルジョン:アニオン) 60重量部
LCC WL CONDITIONER SL−5
(シリコーン:ノニオン・アニオン) 5重量部
LCC Thickner NA−3(増粘剤) 2重量部
純水 20重量部
(※薬剤はいずれも大日本インキ化学工業(株)製)
室温25℃でNKカップ(アネスト岩田製)を用いて、上記処方のトップコート液の流出時間が30秒になるように、増粘剤、純水で粘度調整を行った。そして画像形成面にスプレーを使用して、総Wet塗布量50g/mでトップコート液を付与し、乾燥機で80℃で5分間乾燥を行って、本発明の皮革着色物を得た。またトップコート層の厚みは15μmであった。
プリントした評価柄を目視にて評価したところ、滲みや擦れ等の欠点も見られず、高品位の画像が形成されていた。またテーバー磨耗試験機を使用し、磨耗輪CS−10、500g×2000回の条件にて試験(JIS−K5600)をおこなったところ、破れやすり減り等の欠点も見られず、耐摩耗性も良好であった。また皮革着色物は、付与したインク受容層が無色透明である為、ベースコート層の塗装色である白色であり、白色の色調等に変化は無かった。
[実施例2]
実施例1にてインク受容層の処方を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして本発明の皮革着色物を得た。
インク受容層用液としては下記処方のものを用いた。
ハイドランWLI−602(ウレタン:不揮発分40%:ノニオン
:大日本インキ化学工業(株)製) 50重量部
PVP K−30(ポリビニルピロリドン:ノニオン
:アイエスピージャパン(株)製) 5重量部
ハイマックスSC−507(ポリアルキレンポリアミン・ジメチルアミン
・エピクロロヒドリン重縮合物:カチオン:ハイモ(株)製) 20重量部
純水 20重量部
なお上記インク受容層用液の付与量は、総Wet塗布量30g/mであり、インク受容層のインク受容能力は70g/mであり、インク受容層の厚みは8μmであった。
プリントした評価柄を目視にて評価したところ、滲みや擦れ等の欠点も見られず、高品位の画像が形成されていた。またテーバー磨耗試験機を使用し、磨耗輪CS−10、500g×2000回の条件にて試験(JIS−K5600)をおこなったところ、破れやすり減り等の欠点も見られず、耐摩耗性についても良好であった。また皮革着色物は、付与したインク受容層が無色透明である為、ベースコート層の塗装色である白色であり、白色の色調等に変化は無かった。
[実施例3]
実施例1にてトップコート液の処方及び付与方法を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして本発明の皮革着色物を得た。
トップコート液としては下記処方のものを用いた。
〈トップコート1液〉
LCC WL CLEAR UX−2007
(ウレタンエマルジョン:アニオン) 60重量部
LCC WL FIXER UX−10
(イソシアネート、溶剤) 5重量部
LCC Thickner NA−3(増粘剤) 2重量部
純水 20重量部
(※薬剤はいずれも大日本インキ化学工業(株)製)
〈トップコート2液〉
LCC WL CLEAR UX−2007
(ウレタンエマルジョン:アニオン) 60重量部
LCC WL CONDITIONER SL−5
(シリコーン:ノニオン・アニオン) 5重量部
LCC Thickner NA−3(増粘剤) 2重量部
純水 20重量部
(※薬剤はいずれも大日本インキ化学工業(株)製)
トップコート1液、2液とも、室温25℃でNKカップ(アネスト岩田製)を用いて、上記処方のトップコート液の流出時間が30秒になるように、増粘剤、純水で粘度調整を行った。そして画像形成面にスプレーを使用して、Wet塗布量25g/mでトップコート1液を付与し、乾燥機80℃で5分間乾燥を行った。その後同様にWet塗布量25g/mでトップコート2液を付与し、乾燥機80℃で5分間乾燥を実施し、皮革着色物を得た。1液及び2液の両液が乾燥した後のトップコート層全体の厚みは15μmであった。
プリントした評価柄を目視にて評価したところ、滲みや擦れ等の欠点も見られず、高品位の画像が形成されていた。またテーバー磨耗試験機を使用し、磨耗輪CS−10、500g×2000回の条件にて試験(JIS−K5600)をおこなったところ、破れやすり減り等の欠点も見られず、耐摩耗性も良好であった。更にCS−10、500g×4000回条件まで試験を継続したが、破れやすり減り等の欠点は確認されなかった。また皮革着色物は、付与したインク受容層が無色透明である為、ベースコート層の塗装色である白色であり、白色の色調等に変化は無かった。
[比較例1]
実施例1にてインク受容層の処方を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして、皮革着色物を得た。
インク受容層用液としては下記処方のものを用いた。
ハイドランWLI−602(ウレタン:不揮発分40%:ノニオン
:大日本インキ化学工業(株)製) 50重量部
PVP K−30(ポリビニルピロリドン:ノニオン
:アイエスピージャパン(株)製) 5重量部
純水 10重量部
なお上記インク受容層用液の付与量は、総Wet塗布量50g/mであり、インク受容層のインク受容能力は15g/mであり、インク受容層の厚みは10μmであった。
プリントした評価柄を目視にて評価したところ、滲みがみられた。またテーバー磨耗試験機を使用し、磨耗輪CS−10、500g×2000回の条件にて試験(JIS−K5600)をおこなったところ、500回を越えた程度から破れが生じた。また皮革着色物は、付与したインク受容層が無色透明である為、ベースコート層の塗装色である白色であり、白色の色調等に変化は無かった。

Claims (10)

  1. 皮革表面にアニオン性のベースコート層を有し、このベースコート層上にカチオン性のインク受容層を有し、このインク受容層上にトップコート層を有し、前記インク受容層に顔料が付与されることにより画像が形成されていることを特徴とする皮革着色物。
  2. 前記インク受容層がカチオン性物質及び水溶性樹脂を含有することを特徴とする、請求項1に記載の皮革着色物。
  3. 前記インク受容層がさらにウレタン樹脂を含有することを特徴とする、請求項2に記載の皮革着色物。
  4. 前記インク受容層の厚さが2〜10μmの範囲内であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮革着色物。
  5. 前記ベースコート層がアニオン性樹脂を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の皮革着色物。
  6. 前記トップコート層として、前記インク受容層と接するアニオン性の層を少なくとも1層有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の皮革着色物。
  7. 前記アニオン性のトップコート層の上に、シリコーン樹脂を含有する第2のトップコート層をさらに有することを特徴とする、請求項6に記載の皮革着色物。
  8. 前記皮革およびベースコート層のうちの少なくとも一方が、インク受容層に形成された画像の背景色と同系統の色彩を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の皮革着色物。
  9. 皮革表面にアニオン性のベースコート層を形成し、このベースコート層が形成された面にカチオン性のインク受容層を形成し、このインク受容層に顔料インクを用いてインクジェット方式により画像を形成し、この画像が形成されたインク受容層上にトップコート層を形成することにより、請求項1〜8のいずれか1項に記載の皮革着色物を得ることを特徴とする皮革着色物の製造方法。
  10. 前記皮革およびベースコート層のうちの少なくとも一方を、インク受容層に形成された画像の背景色と同系統の色彩に予め着色することを特徴とする、請求項9に記載の皮革着色物の製造方法。
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