以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ2の一部が示された断面図である。この図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。このタイヤ2は、図1中の一点鎖線CLを中心としたほぼ左右対称の形状を呈する。この一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面を表す。このタイヤ2は、トレッド4、サイドウォール6、ビード8、カーカス10、ベルト12、インナーライナー14、チェーファー16及び補強層18を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプの空気入りタイヤである。
トレッド4は架橋ゴムからなり、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4の外面は、路面と接地するトレッド面20を形成する。このトレッド面20には、溝22が刻まれている。この溝22により、トレッドパターンが形成されている。
サイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6は、架橋ゴムからなる。サイドウォール6は、撓みによって路面からの衝撃を吸収する。さらにサイドウォール6は、カーカス10の外傷を防止する。
ビード8は、サイドウォール6から半径方向略内向きに延びている。ビード8は、コア24と、このコア24から半径方向外向きに延びるエイペックス26とを備えている。コア24はリング状であり、複数本の非伸縮性ワイヤー(典型的にはスチール製ワイヤー)を含む。エイペックス26は、半径方向外向きに先細りであるテーパ状であり、高硬度な架橋ゴムからなる。
カーカス10は、カーカスプライ28からなる。このカーカスプライ28は、両側のビード8の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6の内側に沿っている。このカーカスプライ28は、コア24の周りを、軸方向内側から外側に向かって巻かれている。このカーカス10に、2枚以上のカーカスプライ28が用いられてもよい。
図示されていないが、カーカスプライ28は、カーカスコードとトッピングゴムとからなる。カーカスコードが周方向に対してなす角度の絶対値は、通常は75°から90°である。換言すれば、このタイヤ2はラジアルタイヤである。カーカスコードは、通常は有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
ベルト12は、カーカス10の半径方向外側に位置している。ベルト12は、カーカス10と積層されている。ベルト12は、カーカス10を補強する。ベルト12は、内側ベルトプライ30及び外側ベルトプライ32からなる。図示されていないが、内側ベルトプライ30及び外側ベルトプライ32のそれぞれは、ベルトコードとトッピングゴムとからなる。ベルトコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、通常は10°以上35°以下である。内側ベルトプライ30のベルトコードの赤道面に対する角度は、外側ベルトプライ32のベルトコードの赤道面に対する角度とは逆である。このタイヤ2では、このベルトコードは、スチールである。ベルトコードに、有機繊維が用いられてもよい。この場合、好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
このタイヤ2が、このベルト12の半径方向外側に、バンドプライからなるバンドをさらに備えてもよい。このバンドプライは、ベルト12を覆う。このバンドプライは、バンドコードとトッピングゴムとからなる。バンドコードは周方向に延びており、螺旋状に巻かれる。このバンドコードは、いわゆるジョイントレスである。このバンドコードはベルト12を拘束して、ベルト12のリフティングを抑制する。バンドコードは、通常は有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
インナーライナー14は、カーカス10の内側に位置している。インナーライナー14は、架橋ゴムからなる。インナーライナー14には、空気透過性の少ないゴムが用いられている。インナーライナー14は、タイヤ2の内圧を保持する役割を果たす。このタイヤ2では、このインナーライナー14は、カーカス10の内周面に接合されている。
チェーファー16は、ビード8の近傍に位置している。タイヤ2がリムに組み込まれると、このチェーファー16がリムと当接する。この当接により、ビード8の近傍が保護される。チェーファー16は、通常は布とこの布に含浸したゴムとからなる。ゴム単体からなるチェーファー16が用いられてもよい。
補強層18は、トレッド4の半径方向内側に位置している。換言すれば、この補強層18の外端34は、軸方向においてベルト12の外端36よりも内側に位置する。この補強層18は、インナーライナー14の内側に位置している。換言すれば、この補強層18はこのインナーライナー14の内周面に接合されている。この補強層18は、架橋されたゴム組成物からなる。このゴム組成物は、基材ゴムと短繊維とを含んでいる。換言すれば、この補強層18は、この短繊維を含んでいる。この短繊維は、補強層18の剛性を高める。
このタイヤ2では、補強層18は、タイヤ2を補強する。この補強層18は、このタイヤ2の剛性を効果的に高める。この補強層18は、走行時におけるタイヤ2の変形を抑える。この補強層18を備えたタイヤ2では、その操舵角が5°以下である微小な操舵角でハンドルが操作されたとき、ドライバーが感じる操舵力は、大きい。ハンドル操作に伴うこの操舵力の変化も大きい。このタイヤ2では、ハンドルを操作しているドライバーの意識と、ハンドルを通じてドライバーが感じる感覚とのズレは小さい。このようなタイヤ2は、操縦安定性に優れる。後述するように、このタイヤ2では、補強層18の厚さ及び軸方向幅が最適化される。これにより、タイヤ2の剛性過大が抑えられる。このタイヤ2では、乗り心地の低下が抑えられる。このタイヤ2では、タイヤ2の剛性が高められるために、この補強層18がサイドウォール6の軸方向内側にまで配置される必要はない。このタイヤ2では、この補強層18によるタイヤ質量の増加が最小限に抑えられている。
図1において、両矢印線WTはタイヤ2の総幅を表している。図示されているように、このタイヤ2は、サイドウォール6の軸方向外側にリムプロテクター38をさらに備えている。図中、二点鎖線Lはサイドウォール6とリムプロテクター38との境界を表している。本明細書では、この総幅WTに、このリムプロテクター38の軸方向幅は考慮されない。両矢印線WRは、補強層18の軸方向幅を表している。両矢印線TAは、補強層18の厚さを表している。
このタイヤ2では、補強層18の軸方向幅WRの、総幅WTに対する比率(WR/WT)は40%以上70%以下である。この比率(WR/WT)が40%以上に設定されることにより、この補強層18は、タイヤ2を補強する。この補強層18は、このタイヤ2の剛性を効果的に高める。このようなタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この観点から、この比率(WR/WT)は50%以上がより好ましく、60%以上が特に好ましい。この比率(WR/WT)が70%以下に設定されることにより、タイヤ2の剛性過大が抑えられる。このタイヤ2は、乗り心地が維持されうる。この観点から、この比率(WR/WT)は69%以下がより好ましく、63%以下が特に好ましい。
タイヤ2の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。便宜上、乗用車用タイヤ2の内圧は、180kPaに設定される。
このタイヤ2では、補強層18の厚さTAは、0.5mm以上1.0mm以下である。この厚さTAが0.5mm以上に設定されることにより、この補強層18は、タイヤ2を補強する。この補強層18は、このタイヤ2の剛性を効果的に高める。このようなタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この観点から、この厚さTAは0.6mm以上がより好ましく、0.7mm以上が特に好ましい。この厚さTAが1.0mm以下に設定されることにより、タイヤ2の剛性過大が抑えられる。このタイヤ2は、乗り心地が維持されうる。この観点から、この厚さTAは0.9mm以下がより好ましく、0.8mm以下が特に好ましい。
このタイヤ2では、補強層18に含まれる短繊維の平均長さ(L)は10μm以上3000μm以下である。この平均長さ(L)が10μm以上に設定されることにより、短繊維が補強層18の剛性を高める。この補強層18は、タイヤ2を補強する。この補強層18は、このタイヤ2の剛性を効果的に高める。このようなタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この観点から、この平均長さ(L)は100μm以上がより好ましく、400μm以上が特に好ましい。この平均長さ(L)が3000μm以下に設定されることにより、短繊維がこの補強層18に均一に分散する。この補強層18は、均一な物性を有する。この補強層18を備えるタイヤ2の性能は、安定である。この観点から、この平均長さ(L)は1500μm以下がより好ましく、800μm以下が特に好ましい。なお、この平均長さ(L)は、無作為に抽出された100本の短繊維について計測された長さの平均値で表される。この短繊維の長さは、実体顕微鏡で計測される。
このタイヤ2では、短繊維の平均直径(D)は、1μm以上100μm以下である。この平均直径(D)が1μm以上に設定されることにより、短繊維が補強層18の剛性を高める。この補強層18は、タイヤ2を補強する。この補強層18は、このタイヤ2の剛性を効果的に高める。このようなタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この観点から、この平均直径は2μm以上がより好ましく、5μm以上が特に好ましい。この平均直径(D)が100μm以下に設定されることにより、短繊維がこの補強層18に均一に分散する。この補強層18は、均一な物性を有する。この補強層18を備えるタイヤ2の性能は、安定である。この観点から、この平均直径(D)は80μm以下がより好ましく、50μm以下が特に好ましい。なお、この平均直径(D)は、無作為に抽出された100本の短繊維について計測された直径の平均値で表される。この短繊維の直径は、実体顕微鏡で計測される。
このタイヤ2では、短繊維の平均直径(D)に対する平均長さ(L)の比率(L/D)は、10以上2000以下である。この比率(L/D)が10以上に設定されることにより、基材ゴムと短繊維との接触面積が大きくなるので、短繊維が補強層18の剛性を高める。この補強層18は、タイヤ2を補強する。この補強層18は、このタイヤ2の剛性を効果的に高める。このようなタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この観点から、この比率(L/D)は20以上がより好ましく、40以上が特に好ましい。この比率(L/D)が2000以下に設定されることにより、短繊維がこの補強層18に均一に分散する。この補強層18は、均一な物性を有する。この補強層18を備えるタイヤ2の性能は、安定である。この観点から、この比率(L/D)は1500以下がより好ましく、1000以下が特に好ましい。
図示されていないが、このタイヤ2では短繊維は周方向に配向している。補強層18において、この短繊維は、半径方向の剛性上昇を抑えつつ、周方向の剛性を高める。この短繊維の配向方向が周方向に一致するとき、この短繊維はこの補強層18の周方向の剛性を最も効果的に高める。このような補強層18は、タイヤ2の縦剛性を上げることなく、横剛性を効果的に高めうる。このタイヤ2は、乗り心地及び操縦安定性に優れる。この観点から、この短繊維が周方向に対してなす配向角度は、0°であるのが好ましい。この配向角度の絶対値が0°以上になると、補強層18の周方向の剛性が下がる。このタイヤ2の横剛性が下がるので、操縦安定性が低下する。操縦安定性が維持されうるという観点から、この配向角度の絶対値は、30℃以下であるのが好ましい。従って、このタイヤ2では、この配向角度は、0°以上30°以下である。乗り心地が向上されるという観点から、この配向角度の絶対値は、20°以下がより好ましく、10°以下が特に好ましい。
本発明では、短繊維の配向角度は以下の方法で計測される。まず、補強層18を含んだ観察試料が、タイヤ2の周方向に沿って切り出される。この観察試料には、この補強層18の断面が含まれる。次に、この補強層18の断面が、実体顕微鏡で観察される。この断面観察において、短繊維の長手の周方向に対してなす角度が計測される。周方向が基準(0°)とされて、−90°から+90°の範囲で、この角度は計測される。この明細書では、短繊維の両端が結ばれることにより得られる直線が短繊維の長手として用いられる。無作為に抽出された100本の短繊維について、この角度が計測される。次に、この角度の絶対値と頻度との関係(度数分布)が求められる。この関係において、最大頻度を示す角度の絶対値が、この短繊維が周方向に対してなす配向角度として示される。具体的には、この角度の絶対値と頻度との関係を表す度数分布関数において、最大ピークを示す角度の絶対値が配向角度とされる。(短繊維がランダムに配置されている補強層18では、ピークは観測されない。)このようにして求められた配向角度の下限は0°であり、上限は90°である。
前述した度数分布関数において、最大ピークの半値幅は短繊維の配向性を表す。短繊維の配向性が高まると、この半値幅は狭くなる。短繊維の配向性が高められることにより、補強層18の周方向の剛性が効果的に高められる。このような補強層18を備えたタイヤ2は、乗り心地を損なうことなく、操縦安定性に優れる。この観点から、この半値幅は小さいことが好ましい。このタイヤ2では、この半値幅は30°以下が好ましい。この半値幅は20°以下であるのがより好ましく、10°以下が特に好ましい。
前述したように、このタイヤ2では、補強層18は短繊維を含んだゴム組成物が架橋されることにより形成される。このゴム組成物への短繊維の配合量は、基材ゴム100質量部に対して2質量部以上40質量部以下である。この短繊維の配合量が2質量部以上に設定されることにより、短繊維が補強層18の剛性を高める。この補強層18は、タイヤ2を補強する。この補強層18は、このタイヤ2の剛性を効果的に高める。このようなタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この観点から、この短繊維の配合量は3質量部以上がより好ましく、4質量部以上が特に好ましい。この短繊維の配合量が40質量部以下に設定されることにより、タイヤ2の剛性の過大が抑えられる。このタイヤ2では、乗り心地が維持されうる。この観点から、この短繊維の配合量は20質量部以下がより好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
このタイヤ2では、補強層18に含まれる短繊維は、有機繊維又は紙繊維である。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びポリエステル繊維が例示される。タイヤ質量の軽量化及びタイヤ2の低コスト化の観点から、この短繊維としては、紙繊維が好ましい。
紙繊維は、細片化された原料紙が叩解されることにより得られる。この原料紙としては、クラフト紙及び新聞古紙が例示される。このクラフト紙は、クラフトパルプが抄紙されることにより得られる。このクラフトパルプとしては、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプが例示される。この紙繊維は、架橋ゴムの補強効果が高められるために用いられるカーボンのような充填剤に比べて安価である。紙繊維で補強されたタイヤ2では、その剛性が安価にかつ効果的に高められる。
このタイヤ2では、補強層18の硬度(デュロメータA硬さ)は、70以上90以下であるのが好ましい。この硬度が70以上に設定されることにより、この補強層18はタイヤ2を補強する。この補強層18は、このタイヤ2の剛性を効果的に高める。このようなタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この観点から、この硬度は74以上がより好ましく、78以上が特に好ましい。この硬度が90以下に設定されることにより、タイヤ2の剛性の過大が抑えられる。このタイヤ2では、乗り心地が維持されうる。この観点から、この硬度は86以下がより好ましく、82以下が特に好ましい。
本発明において硬度は、JIS−K6253に準じて、タイプAのデュロメータによって測定される。この測定には、ゴム組成物が架橋されることにより形成される試験片が用いられる。温度が160℃である金型内でゴム組成物が10分間保持されることで、この試験片は得られる。この硬度が、タイヤ2から切り出される厚さが1.0mmであるシート状の試験片が3枚重ねられて測定されてもよい。なお、この硬度は、温度が25℃である条件下で測定される。
図2は、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤ40の一部が示された断面図である。この図2において、上下方向がタイヤ40の半径方向であり、左右方向がタイヤ40の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ40の周方向である。このタイヤ40は、図2中の一点鎖線CLを中心としたほぼ左右対称の形状を呈する。この一点鎖線CLは、タイヤ40の赤道面を表す。このタイヤ40は、トレッド42、サイドウォール44、ビード46、カーカス48、ベルト50、インナーライナー52、チェーファー54、第一補強層56及び第二補強層58を備えている。このタイヤ40は、チューブレスタイプの空気入りタイヤ40である。このタイヤ40では、この第一補強層56及び第二補強層58以外の構成は、図1のタイヤ2と同一である。
図2に示されているように、第一補強層56及び第二補強層58はトレッド42の半径方向内側に位置している。この第一補強層56及び第二補強層58は、インナーライナー52の内側に位置している。この第一補強層56の軸方向外側に位置する外端60は、軸方向においてベルト50の一方の外端62よりも内側に配置される。図示されていないが、この第二補強層58の軸方向外側に位置する外端も、軸方向においてベルト50の他方の外端よりも内側に配置される。この第一補強層56と第二補強層58とは、軸方向において離間している。このタイヤ40では、この第一補強層56と第二補強層58とは、赤道面から等しい位置に配置されている。
第一補強層56は、周方向に延びる一枚のテープ64aである。第二補強層58も、周方向に延びる一枚のテープ64bである。これらのテープ64の長手方向長さは、このタイヤ40の内周面の周方向長さと略一致する。このタイヤ40では、左右のバランスが考慮されて、第一補強層56を構成するテープ64aと、第二補強層58を構成するテープ64bとは、同一の仕様とされている。
このタイヤ40では、テープ64はインナーライナー52の内周面に接合されている。このテープ64は、加硫工程を経たタイヤ成形体に、接合手段を用いて接合される。このタイヤ40では、接合手段としての粘着剤が、テープ64の接合面に予め塗布されている粘着テープが用いられている。テープ64の接合面に接合手段としての接着剤を塗布しつつ、このテープ64が内周面に接合されてもよい。このタイヤ40では、作業の容易の観点から、短尺テープが間隔を開けて周方向に配置されることにより、この第一補強層56及び第二補強層58が構成されてもよい。この場合、この補強層18がタイヤ40の剛性を効果的に上げるという観点から、周方向に並ぶ短尺テープの間隔は、40mm以下とされるのが好ましい。短尺テープが重ね合わされて周方向に配置されることにより、この第一補強層56及び第二補強層58が構成されてもよい。この場合、タイヤ40の剛性が維持されるという観点から、この重なり幅は30mm以下であるのが好ましい。
このタイヤ40では、第一補強層56及び第二補強層58は走行時におけるタイヤ40の変形を抑える。この第一補強層56及び第二補強層58は、タイヤ40を補強する。この第一補強層56及び第二補強層58は、このタイヤ40の剛性を効果的に高める。このようなタイヤ40では、その操舵角が5°以下である微小な操舵角でハンドルが操作されたとき、ドライバーが感じる操舵力は、大きい。ハンドル操作に伴うこの操舵力の変化も大きい。このタイヤ40では、ハンドルを操作しているドライバーの意識と、ハンドルを通じてドライバーが感じる感覚とのズレは小さい。このようなタイヤ40は、操縦安定性に優れる。後述するが、このタイヤ40では、テープ64の厚さ及び幅が最適化される。これにより、タイヤ40の剛性過大が抑えられる。このタイヤ40では、乗り心地の低下が抑えられる。この第一補強層56及び第二補強層58はテープ64で構成されるので、タイヤ質量の増加が抑えられる。なお、この第一補強層56及び第二補強層58が、図1のタイヤ2のように、短繊維を含んだゴム組成物が架橋されることにより形成されてもよい。図1のタイヤ2の補強層18が、このタイヤ40と同じようにテープ64で構成されてもよい。
図2において、両矢印線WTはタイヤ40の総幅を表している。図1のタイヤ2と同じように、このタイヤ40の総幅WTには、サイドウォール44の軸方向外側に位置するリムプロテクター66の軸方向幅は考慮されない。図中、二点鎖線Lはサイドウォール44とリムプロテクター66との境界を表している。両矢印線WS1は、第一補強層56の軸方向幅を表している。この軸方向幅WS1は、第一補強層56を構成するテープ64aの幅に相当する。両矢印線WS2は、第二補強層58の軸方向幅を表している。この軸方向幅WS2は、第二補強層58を構成するテープ64bの幅に相当する。このタイヤ40では、第一補強層56の幅WS1と第二補強層58の幅WS2との和が、補強層18の幅WRとして表される。両矢印線TA1は、第一補強層56の厚さを表している。この厚さTA1は、第一補強層56を構成するテープ64aの厚さに相当する。両矢印線TA2は、第二補強層58の厚さを表している。この厚さTA2は、第二補強層58を構成するテープ64bの厚さに相当する。
このタイヤ40では、補強層18の幅WRの、総幅WTに対する比率(WR/WT)は40%以上70%以下である。この比率(WR/WT)が40%以上に設定されることにより、この補強層18は、タイヤ40を補強する。この補強層18は、このタイヤ40の剛性を効果的に高める。このようなタイヤ40は、操縦安定性に優れる。この観点から、この比率(WR/WT)は50%以上がより好ましく、60%以上が特に好ましい。この比率(WR/WT)が70%以下に設定されることにより、タイヤ40の剛性過大が抑えられる。このタイヤ40は、乗り心地が維持されうる。この観点から、この比率(WR/WT)は69%以下がより好ましく、63%以下が特に好ましい。
このタイヤ40では、厚さTA1は、0.05mm以上1.0mm以下である。この厚さTA1が0.05mm以上に設定されることにより、この補強層18は、タイヤ40を効果的に補強する。この補強層18は、このタイヤ40の剛性を効果的に高める。このようなタイヤ40は、操縦安定性に優れる。この観点から、この厚さTA1は0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が特に好ましい。この厚さTA1が1.0mm以下に設定されることにより、タイヤ40の剛性過大が抑えられる。このタイヤ40は、乗り心地が維持されうる。この観点から、この厚さTA1は0.5mm以下がより好ましく、0.3mm以下が特に好ましい。前述したように、このタイヤ40では、第一補強層56を構成するテープ64aと、第二補強層58を構成するテープ64bとは、同一の仕様とされる。従って、厚さTA2も、0.05mm以上1.0mm以下である。
このタイヤ40では、第一補強層56及び第二補強層58を構成するテープ64の引張強さは15N/cm以上500N/cm以下であるのが好ましい。この引張強さが15N/cm以上に設定されることにより、このテープ64からなる補強層18はタイヤ40を補強する。この補強層18は、このタイヤ40の剛性を効果的に高める。このようなタイヤ40は、操縦安定性に優れる。この観点から、この引張強さは20N/cm以上がより好ましく、25N/cm以上が特に好ましい。この引張強さが500N/cm以下に設定されることにより、タイヤ40の剛性過大が抑えられる。この観点から、この引張強さは200N/cm以下がより好ましく、100N/cm以下が特に好ましい。なお、この引張強さは、JIS−K7127に準じて計測される。この引張強さは、テープ64の単位幅当たりの力で表されている。
このタイヤ40では、テープ64とインナーライナー52との接着力は4N/cm以上8N/cm以下であるのが好ましい。この接着力が4N/cm以上に設定されることにより、このテープ64とインナーライナー52との接合が維持されうる。これにより、このテープ64が第一補強層56及び第二補強層58として安定に機能しうる。この観点から、この接着力は4.5N/cm以上がより好ましく、5.0N/cm以上が特に好ましい。この接着力が8N/cm以下に設定されることにより、タイヤ40の剛性過大が抑えられる。この観点から、この接着力は7.5N/cm以下であるのが好ましい。なお、この接着力は、JIS−K6256に準じて計測される。この接着力は、テープ64の単位幅当たりの力で表されている。
このタイヤ40では、補強層18に用いられるテープ64としては、フィルム、シート及び不織布が例示される。このフィルム及びシートの材質としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン及びポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリアセタール、ナイロン並びにポリエステルのような熱可塑性樹脂が例示される。不織布が構成される基材繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維及びポリエステル繊維のような合成繊維が例示される。
図3は、本発明のさらに他の実施形態に係る空気入りタイヤ68の一部が示された断面図である。この図3において、上下方向がタイヤ68の半径方向であり、左右方向がタイヤ68の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ68の周方向である。このタイヤ68は、図3中の一点鎖線CLを中心としたほぼ左右対称の形状を呈する。この一点鎖線CLは、タイヤ68の赤道面を表す。このタイヤ68は、トレッド70、サイドウォール72、ビード74、カーカス76、ベルト78、インナーライナー80、チェーファー82及び補強層84を備えている。このタイヤ68は、チューブレスタイプの空気入りタイヤ68である。このタイヤ68の補強層84及びインナーライナー80の構成以外は、図1のタイヤ2と同一である。
このタイヤ68では、補強層84は、トレッド70の半径方向内側に位置する。換言すれば、この補強層84の外端86は、軸方向においてベルト78の外端88よりも内側に位置する。この補強層84は、カーカス76とインナーライナー80との間に位置している。この補強層84は、インナーライナー80の外側に位置している。この補強層84は、インナーライナー80で覆われている。この補強層84は、図1のタイヤ2と同じように、短繊維を含んだゴム組成物が架橋されることにより形成されている。従って、このタイヤ68においても、短繊維の配合量は基材ゴム100質量部に対して2質量部以上40質量部以下である。この短繊維の平均長さは、10μm以上3000μm以下である。この短繊維の平均直径は、1μm以上100μm以下である。この短繊維は、周方向に配向している。この短繊維が周方向に対してなす配向角度は、0°以上30°以下である。このタイヤ68では、この短繊維は紙繊維である。
このタイヤ68では、補強層84は走行時におけるタイヤ68の変形を抑える。この補強層84は、タイヤ68を補強する。この補強層84は、このタイヤ68の剛性を効果的に高める。この補強層84を備えたタイヤ68では、その操舵角が5°以下である微小な操舵角でハンドルが操作されたとき、ドライバーが感じる操舵力は、大きい。ハンドル操作に伴うこの操舵力の変化も大きい。このタイヤ68では、ハンドルを操作しているドライバーの意識と、ハンドルを通じてドライバーが感じる感覚とのズレは小さい。このようなタイヤ68は、操縦安定性に優れる。後述するが、このタイヤ68では、補強層84の厚さ及び軸方向幅が最適化される。これにより、タイヤ68の剛性過大が抑えられる。このタイヤ68では、乗り心地の低下が抑えられる。このタイヤ68では、タイヤ68の剛性が高められるために、この補強層84がサイドウォール72の軸方向内側にまで配置される必要はない。このタイヤ68では、この補強層84によるタイヤ質量の増加が最小限に抑えられている。
図3において、両矢印線WTはタイヤ68の総幅を表している。図1のタイヤ2と同じように、このタイヤ68の総幅WTには、サイドウォール72の軸方向外側に位置するリムプロテクター90の軸方向幅は考慮されない。図中、二点鎖線Lはサイドウォール72とリムプロテクター90との境界を表している。両矢印線WRは、補強層84の軸方向幅を表している。両矢印線TAは、補強層84の厚さを表している。
このタイヤ68では、補強層84の軸方向幅WRの、総幅WTに対する比率(WR/WT)は40%以上70%以下である。この比率(WR/WT)が40%以上に設定されることにより、この補強層84は、タイヤ68を効果的に補強する。この補強層84は、このタイヤ68の剛性を高める。このようなタイヤ68は、操縦安定性に優れる。この観点から、この比率(WR/WT)は50%以上がより好ましく、60%以上が特に好ましい。この比率(WR/WT)が70%以下に設定されることにより、タイヤ68の剛性過大が抑えられる。このタイヤ68は、乗り心地が維持されうる。この観点から、この比率(WR/WT)は69%以下がより好ましく、63%以下が特に好ましい。
このタイヤ68では、補強層84の厚さTAは、0.5mm以上1.0mm以下である。この厚さTAが0.5mm以上に設定されることにより、この補強層84は、タイヤ68を効果的に補強する。この補強層84は、このタイヤ68の剛性を高める。このようなタイヤ68は、操縦安定性に優れる。この観点から、この厚さTAは0.6mm以上がより好ましく、0.7mm以上が特に好ましい。この厚さTAが1.0mm以下に設定されることにより、タイヤ68の剛性過大が抑えられる。このタイヤ68は、乗り心地が維持されうる。この観点から、この厚さTAは0.9mm以下がより好ましく、0.8mm以下が特に好ましい。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記表2に示された仕様を備えた実施例1の乗用車用の空気入りタイヤを得た。このタイヤのサイズは、「215/45R17」である。このタイヤの補強層は、短繊維を含むゴム組成物が架橋されて形成されている。この補強層の幅WRの、タイヤ総幅WTに対する比率(WR/WT)は、62.5%である。この補強層の厚さは、1.0mmである。この短繊維の配合量は、基材ゴム100質量部に対して5質量部である。この短繊維の配向角度は、0°である。この短繊維の平均長さLは、400μmである。この短繊維の平均直径は、5μmである。このタイヤでは、この短繊維は紙繊維である。
[比較例1、11及び12並びに実施例2及び18]
比率(WR/WT)を下記表1、表3及び表4の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
[比較例5及び13並びに実施例9]
補強層の厚さを下記表2及び表4の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
[実施例10、11及び12]
短繊維の材質を下記表2の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
[比較例4及び6並びに実施例6、7、8、13、14及び15]
短繊維の質量部数を下記表1、表2及び表3の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
[比較例2、3、4、7及び8並びに実施例3、5及び16]
短繊維の平均長さL及び平均直径Dを下記表1及び表3の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
[比較例9及び10並びに実施例17]
短繊維の配向角度を下記表3の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
[実施例19]
図2に示された基本構成を備え、下記表4に示された仕様を備えた他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。このタイヤでは、第一補強層及び第二補強層が、短繊維を含むゴム組成物が架橋されて形成されている。
[実施例20]
図3に示された基本構成を備え、下記表4に示された仕様を備えた他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。このタイヤでは、補強層はインナーライナーとカーカスとの間に位置している。
[比較例18]
補強層を設けなかった他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。このタイヤは市販されている従来のタイヤである。
[実施例23]
図1に示された基本構成を備え、下記表5に示された仕様を備えた実施例23の乗用車用の空気入りタイヤを得た。このタイヤのサイズは、「215/45R17」である。このタイヤでは、補強層の幅WRの、タイヤ総幅WTに対する比率(WR/WT)は、62.5%である。この補強層は、テープである。このテープは、その接合面にアクリル系粘着剤が塗布された不織布である。このテープの厚さは、0.16mmである。このテープの引張強さは、20N/cmである。このテープとインナーライナーとの接着力は、7.5N/cmである。
[比較例15及び16並びに実施例22及び24]
比率(WR/WT)を下記表4及び表5の通りとした他は実施例23と同様にして、タイヤを得た。
[比較例14及び17並びに実施例21及び28]
補強層の厚さを下記表4及び表5の通りとした他は実施例23と同様にして、タイヤを得た。
[実施例26]
図2に示された基本構成を備え、下記表5に示された仕様を備えた実施例26の乗用車用の空気入りタイヤを得た。このタイヤのサイズは、「215/45R17」である。このタイヤでは、補強層の幅WRの、タイヤ総幅WTに対する比率(WR/WT)は、62.5%である。この補強層は、テープである。このテープは、その接合面にアクリル系粘着剤が塗布された不織布である。このテープの厚さは、0.16mmである。このテープの引張強さは、20N/cmである。このテープとインナーライナーとの接着力は、7.5N/cmである。
[実施例25及び27]
比率(WR/WT)を下記表5の通りとした他は実施例26と同様にして、タイヤを得た。
[実車評価]
タイヤを、排気量が2000cm3である前側エンジン後輪駆動の乗用車に装着した。なお、このタイヤの内圧を230kPaとした。この乗用車を、アスファルト製路面の上で、走行テストを行い、操縦安定性及び乗り心地についてドライバーによる官能評価を行った。なお、乗り心地については、衝撃吸収性と、振動減衰性とが評価された。この結果が、下記の表1、表2、表3、表4及び表5に指数値で示されている。点数が高いほど、良好であることが表されている。
表1、表2、表3、表4及び表5に示されるように、実施例のタイヤは、乗り心地の低下を抑えつつ、操縦安定性に優れる。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。