本願発明者は、図19に示した鋳鉄継手A’が上記したような腐食に関する問題点を有していることに鑑み、その鋳鉄継手A’の内面被覆層200の層厚を厚くすることを試みた。具体的には、エポキシ樹脂系塗膜を増厚することにより腐食の進行や成長の有無をさらに調査した。これによると、塗膜施工後の短期間では継手壁の腐食の進行や成長を抑えることができたけれども、長期に亘って継続使用されると、継手壁の腐食の進行や成長を満足できる程度には抑えることができなかった。これは、塗膜を増厚したとしても、塗膜に存在するピンホールの隙間から硫酸が継手壁に浸入するという事態が起こるからであると結論付けられた。その結果、経年使用による継手壁の腐食の進行や成長を抑えるための対策として、鋳鉄継手の内面全体に厚い塗膜を形成することは、抜本的対策とはなり得ないということが判明した。
一方、上掲の特許文献1によって示されている技術を適用することは、鋳鉄継手の内側に、樹脂製通水路が嵌め込まれた金属管を嵌め込むことになる。そのため、鋳鉄継手が必要以上に大形化したり大幅なコスト高になることを避けられないことになり、排水路中に介在される鋳鉄継手としては実用的でない。また、特許文献2によって提案されている技術は、鋼管を曲げて製作したエルボとしての管継手の内面に樹脂粉末を焼き付けることによって製作されているので、樹脂粉末の焼き付けのための高度の技術を必要とし、その割りには、焼付けによって形成される樹脂層(内面被覆層)にピンホールなどが残存しやすいという可能性を否定することができない。そのため、特許文献2によって示されている技術を適用すると、鋳鉄継手が大幅なコスト高になったり、耐食信頼性に問題が残ったりすることを避けられないことになり、排水路中に介在される鋳鉄継手としては実用的でない。
そこで、本願発明者は、「大曲りY」と通称されている図19に示した従来の鋳鉄継手A’の内面被覆層200を、従来のエポキシ樹脂系塗膜に代えて、樹脂で成形することによって得られる樹脂被覆層によって形成しておくと、その内面被覆層に、エポキシ樹脂系塗膜に見られるようなピンホールが生じにくくなるだけでなく、排水路を流れる夾雑物との滑り性が改善されて付着物が生じにくくなり、さらに、排水中の夾雑物との摩擦による摩耗も生じにくくなって、耐食信頼性に優れた鋳鉄継手を得られることを見い出した。
しかしながら、図19に示した鋳鉄継手A’の外管300の内面全体に樹脂で内面被覆層200を成形するに当たり、その外管300の内部に配置した金型と外管300との隙間空間を成形空間とし、その成形空間に加圧下で樹脂を注入するという射出成形法を採用することには、次に説明する困難がある。
すなわち、「大曲りY」と通称される図19に示した鋳鉄継手A’は、冒頭で説明したように、まっすぐな流路F1を形成している主管部310に、流路F1に斜めに連通するまっすぐな合流路F2を形成している直管部340が連設され、さらに、この直管部340に円弧状流路F3を形成している曲り管部350が連設されている。言い換えると、上記鋳鉄継手A’は、まっすぐな管部と円弧状に曲がった管部とを合わせて形作られている分岐した複合形状を有している。
そのため、上記の射出成形法を採用して外管300の内面に樹脂被覆層200を形成させようとすると、金型の必要数が増え、金型構造が非常に複雑になって成形コストが高くつき、ひいては鋳鉄継手A’の製作コストが著しく高騰するという問題が生じる。
これと同様の問題は、直管部の両側に円弧状の曲り管部を有するエルボ型の鋳鉄継手についても生じる。
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、鋳鉄継手の極端な大形化や大幅なコスト高を来たさず、技術的にも容易に製作することが可能でありながら、上記した「大曲りY」と通称される鋳鉄継手において、それらの外管の内面に、射出成形法によって安価に肉厚の十分に厚い樹脂の内面被覆層を形成させることのできる排水管用鋳鉄継手を提供することを目的とする。
また、本発明は、エルボ型の鋳鉄継手や「両口大曲りY」と通称されているような鋳鉄継手(後述する)についても、同様に、外管の内面に、射出成形法によって安価にかつ容易に肉厚の十分に厚い樹脂の内面被覆層を形成させることのできる排水管用鋳鉄継手を提供することを目的とする。
請求項1の発明に係る排水管用鋳鉄継手は、鋳鉄製の外管が、まっすぐな流路を形成して両端部に鋼管の接続部を有する主管部と、上記流路に斜めに連通するまっすぐな合流路を形成して上記主管部に連設された直管部と、上記合流路が接線方向で連通された円弧状流路を形成して上記直管部に連設され、かつ、端部に鋼管の接続部を有する曲り管部と、を備えていると共に、その外管が内面被覆層を備えている。そして、上記外管が、上記主管部と上記直管部とを一体に有する主部と上記曲り管部とに分割され、上記内面被覆層も、上記主部の内面全体に樹脂で射出成形された主部被覆層と、上記曲り管部の内面全体に樹脂で射出成形された曲り管部被覆層とに分割され、上記直管部に上記曲り管部が締結機構を介して接続されている。
この発明によると、主部に主部被覆層を射出成形するに当たっては、主部に含まれる主管部の内部や直管部の内部に、外周面が成形面となっている個別の円柱状ないし円筒状の金型を不都合なく配置することができ、離型もそれらの主管部や直管部から金型をまっすぐに引き抜くことによって容易に行うことができる。また、曲り管部に曲り管部被覆層を射出成形するに当たっては、曲り管部の内部に単一の円弧状の金型を不都合なく配置することができ、離型も曲り管部から円弧状の金型を円弧方向に引き抜くことによって容易に行うことができる。そして、そのような手順を行って主部被覆層を射出成形した主部及び曲り管部被覆層を射出成形した曲り管部を締結機構を介して接続するだけで、図19に示した鋳鉄継手A’と同等の管路機能を発揮するにもかかわらず、耐食性に優れた排水管用鋳鉄継手が得られる。
特に、主部被覆層や曲り管部被覆層が、射出成形法、すなわち主部又は曲り管部とそれらの内側に設置した金型との相互間に形成される成形空間に樹脂を加圧下で注入するという成形法で成形されているので、それらの被覆層自体にピンホールなどの隙間が残存しにくい。そのため、主部被覆層や曲り管部被覆層に湿潤性の付着物が付着したとしても、その付着物に起因して生成した硫化水素や硫酸が鋳鉄製の継手壁に接触したり、鋳鉄と接触反応して腐食を進行させたり成長させたりするという事態はことはほとんど起こらない。その結果、長期間に亘る経年使用によっても冒頭で説明したような腐食の進行や成長がおこらず、外管の健全性が保たれるようになる。
さらに、請求項1に係る発明では、上記締結機構が、上記主部被覆層と上記曲り管部被覆層との両方に跨がって密着することによって、上記直管部と上記曲り管部との接続箇所でそれらの鋳鉄肌面を被覆するシール体を有している。これによると、主部や曲り管部を形成している鋳鉄の肌面が流路に露呈しなくなって耐食信頼性がいっそう向上する。
本発明において、主部と主部被覆層、曲り管部と曲り管部被覆層とは、それぞれ接着剤で接合されていることが望ましい。こうしておくと、主部や曲り管部とそれらの被覆層との相互間に隙間が形成されないので、排水路を流れる湿潤物質がそれらの相互間に浸入して鋳鉄製の外管に直接に接触することがなくなり、上記同様に、外管の腐食が防止されて外管の健全性が保たれるようになる。
また、主部被覆層及び曲り管部被覆層は、ポリエチレン樹脂によって成形された樹脂層とすることが可能であり、その層厚は1mm以上であることが望ましい。ポリエチレン樹脂は、滑性や耐薬性、耐摩耗性などに比較的優れている樹脂である。そのため、主部被覆層や曲り管部被覆層をポリエチレン樹脂で成形しておくと、排水路中の酸性物質によってそれらの被覆層が侵されることがなく、また排水路中の水分や夾雑物がそれらの被覆層に付着しにくくなり、さらに、永年使用によるそれらの被覆層の層厚の減少によっても耐食性が損なわれない。したがって、長期間に亘る経年使用によっても冒頭で説明したような外管の腐食の進行や成長がおこらず、外管の健全性が保たれるようになる。特に、射出成形法によって上記被覆層を形成しているので、それらの被覆層の層厚を1mm以上に定めることが容易であり、しかも、そのように肉厚の被覆層であれば、それらの被覆層に容易に割れ目などが生じることがなくなって、長期間に亘る耐食信頼性が得られるようになる。
請求項2に係る発明の排水管用鋳鉄継手は、鋳鉄製の外管が、まっすぐな流路を形成する直管部と、上記流路が接線方向で連通された円弧状流路を形成して上記直管部の一端に連設され、かつ、端部に鋼管の接続部を有する第1曲り管部と、上記流路が接線方向で連通された円弧状流路を形成して上記直管部の他端に連設され、かつ、端部に鋼管の接続部を有する第2曲り管部と、を備えていると共に、その外管が内面被覆層を備えている。
そして、上記外管が、上記直管部と上記第1曲り管部とでなる複合管部と、上記第2曲り管部とに分割され、上記内面被覆層も、上記複合管部の内面全体に樹脂で射出成形された複合管部被覆層と、上記第2曲り管部の内面全体に樹脂で射出成形された曲り管部被覆層とに分割されていると共に、上記複合管部に上記第2曲り管部が締結機構を介して接続されている。
この発明において、複合管部には、当該複合管部に含まれる直管部の内部に、外周面が成形面となっている個別の円柱状ないし円筒状の金型を配置し、かつ、当該複合管部に含まれる第1曲り管部の内部に円弧状の金型を配置することによって、複合管部被覆層を容易に射出成形することが可能である。また、第2曲り管部には、円弧状の金型を配置することによって、曲り管部被覆層を容易に射出成形することが可能である。そして、そのような手順を行って複合管部被覆層を射出成形した複合管部と第2曲り管部とを締結機構を介して接続するだけでエルボ型の排水管用鋳鉄継手が得られる。
この発明によっても、複合管部被覆層や曲り管部被覆層が射出成形法で成形されているので、それらの被覆層自体にピンホールなどの隙間が残存しにくい。そのため、複合管部被覆層や曲り管部被覆層に湿潤性の付着物が付着したとしても、その付着物に起因して生成した硫化水素や硫酸が鋳鉄製の継手壁に接触したり、鋳鉄と接触反応して腐食を進行させたり成長させたりするという事態はことはほとんど起こらない。その結果、長期間に亘る経年使用によっても冒頭で説明したような腐食の進行や成長がおこらず、外管の健全性が保たれるようになる。
さらに、請求項2に係る発明では、上記複合管部に挿口が設けられ、上記第2曲り管部に上記挿口が内側に差し込まれた受口が設けられていると共に、上記挿口及び上記受口の嵌合箇所をシールするシール機構を有し、上記複合管部被覆層を上記複合管部の端部の外側へ突出させることによって上記挿口が筒状に形成され、上記受口は、上記第2曲り管部を延出させることによって形成された膨形筒部と、上記曲り管部被覆層を延出させることによって形成されて上記膨形筒部の内面を被覆している筒状の樹脂延出部とによって形成され、上記シール機構が、筒状の上記挿口の根元部分に樹脂で一体成形されて後上がり勾配の第1パッキン座面を形成している第1パッキン受部と、筒状の上記樹脂延出部の端部に樹脂で一体成形されて後上がり勾配の第2パッキン座面を形成している第2パッキン受部と、それらの第1及び第2のパッキン受部の各パッキン座面の相互間で挟圧されているパッキンと、を有する。
この構成によれば、挿口は、複合管部に複合管部被覆層を形成するときに併せて一体成形することが可能である。また、受口の膨形筒部の内面を被覆している樹脂延出部も、第2曲り管部に曲り管部被覆層を形成するときに併せて一体成形することが可能である。しかも、シール機構に関して、第1パッキン座面が、樹脂製の挿口の根元部分に樹脂で一体成形された第1パッキン受部によって形成され、かつ、第2パッキン座面が、受口の内面を被覆している樹脂延出部の端部に樹脂で一体成形された第2パッキン受部によって形成されているので、それらの第1及び第2のパッキン座面は、研磨などの何らの後加工を施すことなくシール座面としての使用に適するということが云える。そのため、後加工によって高平滑度を有するパッキン座面を形成しなくて済むという作業工程面での利点がある。また、後上がり勾配を有する第1パッキン座面と後上がり勾配を有する第2パッキン座面との相互間でパッキンを挟圧する構成を採用しているので、それらの第1及び第2の各パッキン座面が、内面被覆複合管部と内面被覆曲り管部との接続箇所で調心作用を発揮するという利点がある。
請求項3に係る発明では、上記締結機構が、上記複合管部に含まれる上記直管部の端部に設けられた第1フランジと、上記第2曲り管部に形成された上記膨形筒部の端部に設けられた第2フランジと、それらの第1及び第2のフランジを締め付けて結合する締結具とを有し、上記第1フランジに上記第1パッキン受部が密着してその第1パッキン受部が当該第1フランジによってバックアップされていると共に、上記第2フランジに上記第2パッキン受部が密着してその第2パッキン受部が当該第2フランジによってバックアップされている。この構成であれば、第1及び第2の各パッキン受部が、金属に比べて強度に劣る樹脂で成形されているとしても、各フランジがそれらのパッキン受部をバックアップしてそれらの変形を防止する。そのため、パッキンが第1及び第2のパッキン受座の相互間で挟圧されているとしても、パッキン受部の変形によってシール性が損なわれるという事態が起こらない。
請求項4に係る発明の排水管用鋳鉄継手は、鋳鉄製の外管が、まっすぐな流路を形成して両端部に鋼管の接続部を有する主管部と、上記流路に斜めに連通するまっすぐな合流路を形成して上記主管部に連設された直管部と、上記合流路が接線方向で連通された円弧状流路を形成して上記直管部に連設され、かつ、端部に鋼管の接続部を有する曲り管部と、を備えていると共に、その外管が内面被覆層を備えている。そして、上記外管が、上記直管部の一部でなる第1部分直管部と上記曲り管部とを有する複合管部と、上記主管部と上記直管部の残部でなる第2部分直管部とを一体に有する主部とに分割され、上記内面被覆層も、上記複合管部の内面全体に樹脂で射出成形された複合管部被覆層と、上記主部の内面全体に樹脂で射出成形された主部被覆層とに分割され、上記第1部分直管部が上記第2部分直管部に締結機構を介して接続されている。
この発明に係る鋳鉄継手は、外管が、直管部の一部でなる第1部分直管部と曲り管部とを有する複合管部と、主管部と直管部の残部でなる第2部分直管部とを有する主部とによって形成されている。複合管部には、第1部分直管部に、外周面が成形面となっている個別の円柱状ないし円筒状の金型を配置し、かつ、曲り管部の内部に円弧状の金型を配置することによって、複合管部被覆層を容易に射出成形することが可能である。また、主部には、主管部に外周面が成形面となっている個別の円柱状ないし円筒状の金型を配置し、第2部分直管部にも外周面が成形面となっている個別の円柱状ないし円筒状の金型を配置することによって、主部被覆層を容易に射出成形することが可能である。そして、そのような手順を行って複合管部被覆層を射出成形した複合管部の第1部分直管部と、主部被覆層を射出成形した主部の第1部分直管部とを締結機構を介して接続するだけで「大曲りY」と通称される排水管用鋳鉄継手が得られる。
この発明によっても、主部被覆層や複合管部被覆層が射出成形法で成形されているので、それらの被覆層自体にピンホールなどの隙間が残存しにくい。そのため、主部被覆層や複合管部被覆層に湿潤性の付着物が付着したとしても、その付着物に起因して生成した硫化水素や硫酸が鋳鉄製の継手壁に接触したり、鋳鉄と接触反応して腐食を進行させたり成長させたりするという事態はことはほとんど起こらない。その結果、長期間に亘る経年使用によっても冒頭で説明したような腐食の進行や成長がおこらず、外管の健全性が保たれるようになる。
さらに、請求項4に係る発明では、上記複合管部に挿口が設けられ、上記主部に、上記挿口が内側に差し込まれた受口が設けられていると共に、上記挿口及び上記受口の嵌合箇所をシールするシール機構を有し、上記複合管部被覆層を上記複合管部の第1部分直管部の外側へ突出させることによって上記挿口が筒状に形成され、上記受口は、上記第2部分直管部を延出させることによって形成された膨形筒部と、上記主部被覆層を延出させることによって形成されて上記膨形筒部の内面を被覆している筒状の樹脂延出部とによって形成され、上記シール機構が、筒状の上記挿口の根元部分に樹脂で一体成形されて後上がり勾配の第1パッキン座面を形成している第1パッキン受部と、筒状の上記樹脂延出部の端部に樹脂で一体成形されて後上がり勾配の第2パッキン座面を形成している第2パッキン受部と、それらの第1及び第2のパッキン受部の各パッキン座面の相互間で挟圧されているパッキンと、を有する。
この構成によれば、挿口は、複合管部被覆層を形成するときに併せて一体成形することが可能である。また、受口の膨形筒部の内面を被覆している樹脂延出部も、主部被覆層を形成するときに併せて一体成形することが可能である。しかも、シール機構に関して、第1パッキン座面が、樹脂製の挿口の根元部分に樹脂で一体成形された第1パッキン受部によって形成され、かつ、第2パッキン座面が、受口の内面を被覆している樹脂延出部の端部に樹脂で一体成形された第2パッキン受部によって形成されているので、それらの第1及び第2のパッキン座面は、研磨などの何らの後加工を施すことなくシール座面としての使用に適するということが云える。そのため、後加工によって高平滑度を有するパッキン座面を形成しなくて済むという作業工程面での利点がある。また、後上がり勾配を有する第1パッキン座面と後上がり勾配を有する第2パッキン座面との相互間でパッキンを挟圧する構成を採用しているので、それらの第1及び第2の各パッキン座面が、内面被覆複合管部と内面被覆曲り管部との接続箇所で調心作用を発揮するという利点がある。
請求項5に係る発明では、上記締結機構が、上記第1部分直管部の端部に設けられた第1フランジと、上記第2部分直管部に形成された上記膨形筒部の端部に設けられた第2フランジと、それらの第1及び第2のフランジを締め付けて結合する締結具とを有し、上記第1フランジに上記第1パッキン受部が密着してその第1パッキン受部が当該第1フランジによってバックアップされていると共に、上記第2フランジに上記第2パッキン受部が密着してその第2パッキン受部が当該第2フランジによってバックアップされている。この構成であれば、第1及び第2の各パッキン受部が、金属に比べて強度に劣る樹脂で成形されているとしても、各フランジがそれらのパッキン受部をバックアップしてそれらの変形を防止する。そのため、パッキンが第1及び第2のパッキン受座の相互間で挟圧されているとしても、パッキン受部の変形によってシール性が損なわれるという事態が起こらない。
以上のように、本発明によれば、まっすぐな流路と円弧状流路とを有する複合形状の流路や、分岐している複合形状の流路を有する鋳鉄継手の内面被覆層を、それほど複雑な構造の金型を使わずに射出成形によって形成することが可能である。そして、内面被覆層が射出成形法で成形されているので、内面被覆層に湿潤性の付着物が付着したとしても、その付着物に起因して生成した硫化水素や硫酸が鋳鉄製の継手壁に接触したり、鋳鉄と接触反応して腐食を進行させたり成長させたりするという事態はほとんど起こらなくなる結果、長期間に亘る経年使用によっても継手本体の健全性が保たれ、ひいては鋳鉄継手の耐用性が改善される。また、本発明によれば、「エルボ」「大曲りY」や「両口大曲りY」と通称されている鋳鉄継手の耐食信頼性を向上させることに役立つ。
図1は本発明の実施形態に係る鋳鉄継手Aを構成するための考え方を示した説明図である。図1に説明的に示した鋳鉄継手Aは、図19に従来例として示した鋳鉄継手A’に相応する「大曲りY」と通称されている鋳鉄継手である。したがって、この鋳鉄継手Aの外管10は、まっすぐな流路を形成している主管部11に、流路に斜めに連通するまっすぐな合流路を形成している直管部12が連設され、さらに、この直管部12に円弧状流路を形成している曲り管部13が連設されていて、直管部12の合流路が曲り管部13の円弧状流路に接線方向で連通している。そして、この鋳鉄継手Aの外管10の全体に内面被覆層(不図示)が形成されている。この形状を有する鋳鉄継手Aは、その外管10を、図1に示した一点鎖線Lの位置で、主管部11と直管部12とを一体に有する主部14と、上記曲り管部13とに分割することができる。
図2は、図1の鋳鉄継手Aの外管10を分割することによって形成された主部14と曲り管部13とを示した説明図である。同図によって判るように、主部14には、主管部11と直管部12とだけが含まれ、それらにはまっすぐな流路だけが備わっていて、まっすぐな流路に円弧状流路が連通していような箇所は存在していない。また、曲り管部13には円弧状流路だけが備わっていて、これについても同様に、まっすぐな流路に円弧状流路が連通していような箇所は存在していない。
図2のように鋳鉄継手Aの外管10を主部14と曲り管部13とに分割すると、外管10に備わっている内面被覆層も同様に、主部14側の主部被覆層と、曲り管部13側の曲り管部被覆層とに分割される。そして、本発明に係る鋳鉄継手Aでは、主部14に含まれる直管部12に、曲り管部13が締結機構を介して接続される。
図3は本発明の他の実施形態に係る鋳鉄継手Aを構成するための考え方を示した説明図である。図3に示した鋳鉄継手Aは、「両口大曲りY」と通称されている鋳鉄継手である。この鋳鉄継手Aの外管10は、まっすぐな流路を形成している主管部11に、流路に斜めに連通するまっすぐな合流路を形成している2つの直管部12が対称の関係で連設され、さらに、これらの直管部12のそれぞれに、円弧状流路を形成している曲り管部13が個別に連設されていて、互いに連設されている直管部12と曲り管部13との関係では、直管部12の合流路が曲り管部13の円弧状流路に接線方向で連通している。そして、外管10に内面被覆層(不図示)が形成されている。この形状を有する鋳鉄継手Aは、その外管10を、図3に示した2箇所の一点鎖線L,Lの位置で、主管部11と直管部12とを一体に有する主部14と、上記曲り管部13とに分割することができる。
図4は、図3の鋳鉄継手Aの外管10を分割することによって形成された主部14と曲り管部13とを示した説明図である。同図によって判るように、主部14には、主管部11とその両側の対称形状の2つの直管部12,12とだけが含まれ、それらにはまっすぐな流路だけが備わっていて、まっすぐな流路に円弧状流路が連通していような箇所は存在していない。また、2つの曲り管部13のそれぞれには円弧状流路だけが備わっていて、これについても同様に、まっすぐな流路に円弧状流路が連通していような箇所は存在していない。
図4のように鋳鉄継手Aの外管10を1つの主部14と2つの曲り管部13とに分割すると、外管10に備わっている内面被覆層も同様に、主部14側の主部被覆層と、曲り管部13側の曲り管部被覆層とに分割される。そして、本発明に係る鋳鉄継手Aは、主部14に含まれる2箇所の直管部12のそれぞれに、曲り管部13が個別に締結機構を介して接続されている。
図5は図2に示した主部14の縦断面図である。また、図6は図2に示した曲り管部13の縦断面図である。なお、図5及び図6には主部被覆層15や曲り管部被覆層16を射出成形するときに用いられる金型の形状を併せて例示してある。
図5に示した主部14は砂型を用いて鋳造され、鋳造された主部14にあっては、主管部11がまっすぐな流路F1を形成して両端部に鋼管の接続部17,18を有している。また、直管部12が、上記流路F1に斜めに連通するまっすぐな合流路F2を形成して主管部11に連設されている。そして、そのような主部14に内面被覆層としての主部被覆層15が形成されている。なお、図5に示されているように、主部被覆層15は、上記した3つの各接続部17,18の内面にまで延び出ている。
図5によって判るように、主部14に主部被覆層15を射出成形するに当たっては、主部14に含まれる主管部11の内部や直管部12の内部に、外周面が成形面となっている円柱ないし円筒状の金型21,22,23を個別に挿入することによって、主管部11と金型21,22との間、及び、直管部12と金型23との間に、1つの空間として繋がった成形空間を形成し、その成形空間に樹脂を加圧下で注入する。そして、注入した樹脂が硬化した後に、金型21,22,23を主管部11や直管部12からまっすぐに引き抜くことによって離型する。
図5の主部14に主部被覆層15を射出成形するのに際しては、樹脂注入前に、主部14の内面に接着剤が塗布されている。そのため、成形空間に射出された樹脂は、硬化したときに接着剤を介して主部14の主管部11の内面や直管部12の内面に隙間を形成せずに接合されている。
図6に示した曲り管部13も砂型を用いて鋳造され、鋳造された曲り管部13は、円弧状流路F3を形成して端部に鋼管の接続部19を有している。そして、そのような曲り管部13に内面被覆層としての曲り管部被覆層16が形成されている。なお、図6に示されているように、曲り管部被覆層16は、上記した接続部19の内面にまで延び出ている。
図6によって判るように、曲り管部13に曲り管部被覆層16を射出成形するに当たっては、曲り管部13の内部に、外周面が成形面となっている円弧状に曲がった柱状ないし筒状の金型24,25を挿入することによって、曲り管部13と金型24,25との間に1つの空間として繋がった成形空間を形成し、その成形空間に樹脂を加圧下で注入する。そして、注入した樹脂が硬化した後に、金型24,25を曲り管部13から円弧方向に引き抜くことによって離型する。
図6の曲り管部13に曲り管部被覆層16を射出成形するときにも、上記同様に、樹脂注入前に、曲り管部13の内面に接着剤が塗布されている。そのため、成形空間に射出された樹脂は、硬化したときに接着剤を介して曲り管部13の内面に隙間を形成せずに接合されている。
図7は図1の鋳鉄継手Aの縦断側面図である。この鋳鉄継手Aは、図5に示した主部14の直管部12と、図6に示した曲り管部13とを締結機構を介して接続することによって製作されている。
図7によって判るように、製作された鋳鉄継手Aの外管10は、主管部11と、主管部11に連設された直管部12と、直管部12に連設された曲り管部13とを備えている。また、外管10の内面を被覆している内面被覆層としての主部被覆層15及び曲り管部被覆層16を有している。
この鋳鉄継手Aで鋼管を接続することによって形成される排水路では、継手部分に主に付着物を発生する傾向を生じ、鋼管部分には付着物をほとんど発生しない。これは、鋼管部分では排水中の夾雑物が排水によって流されてしまうのに対し、継手部分では夾雑物が流されにくいことによると考えられる。しかし、排水路中の継手部分に付着物が発生したとしても、その鋳鉄継手Aの主部14と曲り管部13との内面が樹脂で筒状に成形された内面被覆層、具体的には主部被覆層15や曲り管部被覆層16で被覆されているので、付着物はそれらの主部被覆層15又は曲り管部被覆層16に付着するだけであって、鋳鉄製の外管10に直接に接触することはない。加えて、主部被覆層15や曲り管部被覆層16がピンホールなどの隙間を生じにくい射出成形法で成形されているので、主部被覆層15や曲り管部被覆層16に湿潤性の付着物が付着したとしても、その付着物に起因して生成した硫化水素や硫酸が鋳鉄製の外管10に接触したり、鋳鉄と接触反応して腐食を進行させたり成長させたりするという事態はほとんど起こらない。その結果、長期間に亘る経年使用によっても冒頭で説明したような腐食の進行や成長がおこらず、外管10の健全性が保たれるようになる。
また、図7の鋳鉄継手Aは、主部被覆層15や曲り管部被覆層16と外管10の内面とが接着剤で隙間を生じないように接合されているので、排水路を流れる湿潤物質がそれらの相互間に浸入して鋳鉄製の外管10に直接に接触することがなくなり、それによっても、外管10の腐食が防止されて外管10の健全性が保たれるようになる。
なお、鋼管は、鋳鉄継手Aの接続部17,18,19に接続される。しかも、その接続箇所では、鋼管の端部に装着した樹脂コア(不図示)が鋳鉄継手Aの主部被覆層15や曲り管部被覆層16に密着状態で重ね合わされる。したがって、排水路を流れる排水が上記3箇所の接続箇所で鋳鉄製の外管10に直接に接触することはない。
上記実施形態では、主部被覆層15や曲り管部被覆層16をポリエチレン樹脂によって射出成形した事例を説明したけれども、それらをポリエチレン樹脂以外の樹脂で射出成形したものを除外するものではない。ただし、ポリエチレン樹脂は安価で入手が容易である割りには、滑性や耐薬性、耐摩耗性などに優れている樹脂であるため、排水路中の酸性物質によって内面被覆層が侵されることがなく、また排水路中の水分や夾雑物が主部被覆層15や曲り管部被覆層16に付着しにくくなり、さらに、永年使用による主部被覆層15や曲り管部被覆層16の層厚の減少も抑制される。したがって、主部被覆層15や曲り管部被覆層16をポリエチレン樹脂で射出成形しておくと、長期間に亘る経年使用によっても鋳鉄製の継手本体の腐食の進行や成長がおこらず、継手本体の健全性が保たれるようになる。
主部被覆層15や曲り管部被覆層16をポリエチレン樹脂で射出成形する場合、その層厚を1mm以上に定めておくと、ピンホールなどの隙間がいっそう生じにくくなるだけでなく、厨房施設から出る雑排水中の魚肉片や野菜屑などの夾雑物が主部被覆層15や曲り管部被覆層16に擦れても、それらが容易に剥がれたり割れたりすることがなくなり、耐食信頼性に優れた鋳鉄継手Aを得やすくなる。また、主部被覆層15や曲り管部被覆層16の層厚をいたずらに厚くし過ぎると、排水路の有効断面積が狭くなって排水能力が低下する。そこで、主部被覆層15や曲り管部被覆層16の層厚を5mm以下に抑えておくことが望ましい。
図7に示したように、この実施形態では、主部14の直管部12と曲り管部13とが、フランジタイプの接続部31,32によって接続されている。そのため、その接続箇所では、主部被覆層15と曲り管部被覆層16との間に隙間が生じ、その隙間から露呈した直管部12や曲り管部13の鋳鉄肌面の耐食性が問題になることがある。そこで、上記隙間から露呈した直管部12や曲り管部13の鋳鉄の肌面を、耐食性を有するゴムや樹脂で被覆しておくことが有益である。
この点に鑑み、図7に示した実施形態では、主部14に含まれている直管部12に曲り管部13を接続するための締結機構30として、上記した接続部31,32に加えて、シール性を発揮するゴム製又は樹脂製のシール体33を含ませてある。シール体33は、フランジタイプの2つの接続部31,32の相互間で挟まれてそれらのパッキン座に密着するパッキン部34と、このパッキン部34の内周部に連設されて主部被覆層15と曲り管部被覆層16とに密着する筒状のコア部35とを有している。このように、締結機構30を2つの接続部31,32とシール体33とによって形成し、シール体33に、2つの接続部31,32の相互間で挟まれてそれらのパッキン座に密着するパッキン部34と、主部被覆層15と曲り管部被覆層16とに密着する筒状のコア部35とを具備させておくと、上記した隙間から鋳鉄肌面が露呈しなくなって、その肌面に雑排水や雑排水中の夾雑物が接触しなくなるので、鋳鉄継手Aの全体に優れた耐食性を付与しておくことが可能になる。
図3を参照した説明した「両口大曲りY」と通称されている鋳鉄継手Aについても、図7を参照して説明した構造によって類推することのできる構造を適用することが可能である。なお、図1〜図7では、内容理解を容易にするために同一又は相応する部分に同一符号を付してある。
図8は本発明のさらに他の実施形態に係る鋳鉄継手Bを構成するための考え方を示した説明図である。この鋳鉄継手Bは直角エルボ型の鋳鉄継手である。この鋳鉄継手Bは、鋳鉄製の外管40が、まっすぐな流路F4を形成する直管部41と、上記流路F4が接線方向で連通された円弧状流路F5を形成して直管部41の一端に連設された第1曲り管部42と、上記流路F4が接線方向で連通された円弧状流路F6を形成して直管部41の他端に連設された第2曲り管部43とを備えている(図12参照)。そして、この鋳鉄継手Bの外管40に内面被覆層(図8において不図示)が形成されている。この形状を有する鋳鉄継手Bは、その外管40を、図8に示した一点鎖線Lの位置で、直管部41と第1曲り管部42とでなる複合管部44と、第2曲り管部43とに分割することができる。
図9は図8の鋳鉄継手Bの外管40を分割することによって形成された複合管部44と第2曲り管部43とを示した説明図である。同図によって判るように、複合管部44には、まっすぐなを流路F4を形成する直管部41と円弧状流路F5を形成する第1曲り管部42が含まれている。また、第2曲り管部63には円弧状流路だけが備わっている。
図9のように鋳鉄継手Bの外管40を複合管部44と第2曲り管部43とに分割すると、外管40に備わっている内面被覆層も同様に、複合管部44側の複合管部被覆層と、第2曲り管部43側の曲り管部被覆層とに分割される。そして、鋳鉄継手Bは、複合管部44の直管部41に第2曲り管部43が締結機構を介して接続される。
図10は図9に示した複合管部44の縦断面図である。また、図11は図9に示した第2曲り管部43の縦断面図である。なお、図10及び図11には複合管部被覆層や曲り管部被覆層を射出成形するときに用いられる金型の形状を併せて例示してある。
図10に示した複合管部44は砂型を用いて鋳造され、鋳造された複合管部44にあっては、直管部41がまっすぐな流路F4を形成し、第1曲り管部42が接続部48を有して円弧状流路F5を形成している。そして、そのような複合管部44に内面被覆層としての複合管部被覆層45が形成されている。
図10によって判るように、複合管部44に複合管部被覆層45を射出成形するに当たっては、複合管部44に含まれる直管部41の内部に、外周面が成形面となっている円柱ないし円筒状の金型51を挿入し、かつ、第1曲り管部42の内部に、外周面が成形面となっている円弧状に曲がった柱状ないし筒状の金型52を挿入することによって、それらの金型51,52と直管部41及び第1曲り管部42との間に1つの空間として繋がった成形空間を形成し、その成形空間に樹脂を加圧下で注入する。そして、注入した樹脂が硬化した後に、金型51,52を引き抜くことによって離型する。
図11に示した第2曲り管部43も砂型を用いて鋳造され、鋳造された第2曲り管部43は、接続部49を有して円弧状流路F6を形成する。そして、そのような第2曲り管部43に内面被覆層としての曲り管部被覆層46が形成されている。第2曲り管部43に曲り管部被覆層46を射出成形するに当たっては、第2曲り管部43の内部に、外周面が成形面となっている円弧状に曲がった柱状ないし筒状の金型53,54を両側から挿入することによって、第2曲り管部43と金型53,54との間に1つの空間として繋がった成形空間を形成し、その成形空間に樹脂を加圧下で注入する。そして、注入した樹脂が硬化した後に、金型53,54を第2曲り管部43から円弧方向に引き抜くことによって離型する。
図12は鋳鉄継手Cの縦断側面図である。この鋳鉄継手Cは、複合管部44の直管部41と第2曲り管部43とを締結機構を介して接続することによって製作されている。
この構成を採用したエルボ型の鋳鉄継手Cで鋼管を接続することによって形成される排水路では、継手部分に主に付着物を発生する傾向を生じ、鋼管部分には付着物をほとんど発生しない。これは、鋼管部分では排水中の夾雑物が排水によって流されてしまうのに対し、継手部分では夾雑物が流されにくいことによると考えられる。しかし、排水路中の継手部分に付着物が発生したとしても、その鋳鉄継手Cの外管40の内面が複合管部被覆層45と曲り管部被覆層46とで被覆されているので、付着物はそれらの被覆層45,46に付着するだけであって、鋳鉄製の外管40に直接に接触することはない。加えて、複合管部被覆層45と曲り管部被覆層46とがピンホールなどの隙間を生じにくい射出成形法で成形されているので、複合管部被覆層45や曲り管部被覆層46に湿潤性の付着物が付着したとしても、その付着物に起因して生成した硫化水素や硫酸が鋳鉄製の外管40に接触したり、鋳鉄と接触反応して腐食を進行させたり成長させたりするという事態はほとんど起こらない。その結果、長期間に亘る経年使用によっても冒頭で説明したような腐食の進行や成長がおこらず、外管40の健全性が保たれるようになる。
その他の事項、たとえば、複合管部44と複合管部被覆層45、第2曲り管部43と曲り管部被覆層46とが接着剤で隙間を生じないように接合されていること、複合管部被覆層45や曲り管部被覆層46がポリエチレン樹脂によって射出成形されていること、それらの被覆層45,46の層厚を1〜5mmに定めてあること、などは、図7に示した事例と同様である。
図13は本発明のさらに他の実施形態に係る鋳鉄継手Dを構成するための考え方を示した説明図である。この鋳鉄継手Dは、図1に示した鋳鉄継手Aに相応する「大曲りY」と通称されている鋳鉄継手である。この鋳鉄継手Dの外管60は、まっすぐな流路を形成している主管部61に、流路に斜めに連通するまっすぐな合流路を形成している直管部62が連設され、さらに、この直管部62に円弧状流路を形成している曲り管部63が連設されていて、直管部62の合流路が曲り管部63の円弧状流路に接線方向で連通している。そして、直管部62が比較的長く形成されている。また、この鋳鉄継手Dの外管60の全体に内面被覆層(不図示)が形成されている。この形状を有する鋳鉄継手Dは、その外管60を、図13に示した一点鎖線Lの位置、すなわち、直管部62の長手方向中間位置で、直管部62の一部である第1部分直管部62aと曲り管部63とを有する複合管部64と、主管部61と直管部62の残部である第2部分直管部62bとを有する主部65とに分割することができる。
図14は、図13の鋳鉄継手Dの外管60を分割することによって形成された複合管部64と主部65とを示した説明図である。
図14のように鋳鉄継手Dの外管60を複合管部64と主部65とに分割すると、外管60に備わっている内面被覆層も同様に、複合管部64側の複合管部被覆層と、主部65側の主部被覆層とに分割される。そして、本発明に係る鋳鉄継手Dは、複合管部64の第1部分直管部62aが主部65の第2部分直管部62bに締結機構を介して接続されている。
図14によって判るように、複合管部64には、まっすぐな流路を形成している第1部分直管部62aと円弧状流路を形成してる曲り管部63とが含まれ、主部65には、共にまっすぐな流路を形成している主管部61と第2部分直管部62bとが含まれている。したがって、複合管部64は、その形状が図9に示した鋳鉄継手Bの外管40の複合管部44に相応している。また、主部65は、その形状が図2に示した鋳鉄継手Aの外管10の主部14に相応している。
図15は鋳鉄継手Dの縦断側面図である。図15に示されている複合管部64は砂型を用いて鋳造され、鋳造された複合管部64にあっては、第1部分直管部62aがまっすぐな流路F8を形成し、曲り管部63が接続部63aを有して円弧状流路F9を形成している。そして、そのような複合管部64に内面被覆層としての複合管部被覆層66が形成されている。図10について説明したところから類推することができるように、複合管部64に複合管部被覆層66を射出成形するに当たっては、複合管部64に含まれる第1部分直管部62aの内部に、外周面が成形面となっている円柱ないし円筒状の金型を挿入し、かつ、曲り管部63の内部に、外周面が成形面となっている円弧状に曲がった柱状ないし筒状の金型を挿入することによって、それらの金型と第1部分直管部62a及び曲り管部63との間に1つの空間として繋がった成形空間を形成し、その成形空間に樹脂を加圧下で注入する。そして、注入した樹脂が硬化した後に、金型を引き抜くことによって離型する。
図15の複合管部64に複合管部被覆層66を射出成形するのに際しては、樹脂注入前に、複合管部64の内面に接着剤が塗布されている。そのため、成形空間に射出された樹脂は、硬化したときに接着剤を介して複合管部64の第1部分直管部62aの内面や曲り管部63の内面に隙間を形成せずに接合されている。
図15に示されている主部65は砂型を用いて鋳造され、鋳造された主部65にあっては、主管部61がまっすぐな流路F7を形成して両端部に鋼管の接続部67,68を有している。また、第2部分直管部62bが、上記流路F7に斜めに連通するまっすぐな上記合流路F8を形成して主管部61に連設されている。そして、そのような主部65に内面被覆層としての主部被覆層69が形成されている。なお、図15に示されているように、主部被覆層69は、上記した2つの各接続部67,68の内面にまで延び出ている。
図5について説明したところから類推することができるように、主部65に主部被覆層69を射出成形するに当たっては、主部65に含まれる主管部61の内部や第2部分直管部62bの内部に、外周面が成形面となっている円柱ないし円筒状の金型を個別に挿入することによって、主管部61と金型との間、及び、第2部分直管部62bと金型との間に、1つの空間として繋がった成形空間を形成し、その成形空間に樹脂を加圧下で注入する。そして、注入した樹脂が硬化した後に、金型を主管部61や第2部分直管部62bからまっすぐに引き抜くことによって離型する。
図15の主部65に主部被覆層69を射出成形するのに際しては、樹脂注入前に、主部65の内面に接着剤が塗布されている。そのため、成形空間に射出された樹脂は、硬化したときに接着剤を介して主部65の主管部61の内面や第2部分直管部62bの内面に隙間を形成せずに接合されている。
この構成を採用した鋳鉄継手Dで鋼管を接続することによって形成される排水路では、継手部分に主に付着物を発生する傾向を生じ、鋼管部分には付着物をほとんど発生しない。これは、鋼管部分では排水中の夾雑物が排水によって流されてしまうのに対し、継手部分では夾雑物が流されにくいことによると考えられる。しかし、排水路中の継手部分に付着物が発生したとしても、その鋳鉄継手D外管60の内面が複合管部被覆層66と主部被覆層69とで被覆されているので、付着物はそれらの被覆層66,69に付着するだけであって、鋳鉄製の外管60に直接に接触することはない。加えて、複合管部被覆層66と主部被覆層69とがピンホールなどの隙間を生じにくい射出成形法で成形されているので、複合管部被覆層66や主部被覆層69に湿潤性の付着物が付着したとしても、その付着物に起因して生成した硫化水素や硫酸が鋳鉄製の外管60に接触したり、鋳鉄と接触反応して腐食を進行させたり成長させたりするという事態はほとんど起こらない。その結果、長期間に亘る経年使用によっても冒頭で説明したような腐食の進行や成長がおこらず、外管60の健全性が保たれるようになる。
複合管部被覆層66や主部被覆層69がポリエチレン樹脂によって射出成形されていること、それらの被覆層66,69の層厚を1〜5mmに定めてあること、などは、図7などを参照して説明したところと同様である。
図16は、図12の鋳鉄継手Cの複合管部44に含まれる直管部41の他端と第2曲り管部43とを接続している締結機構70の要部を拡大して示した断面図である。
この締結機構70では、複合管部44に含まれる直管部41の端部に筒状の挿口71が設けられ、第2曲り管部43の端部に筒状の受口72が設けられている。そして、挿口71が受口72の内側に差し込まれていて、それらの挿口71及び受口72の嵌合箇所がシール機構80によってシールされている。
図16のように、複合管部64にあっては、複合管部被覆層45が複合管部44に含まれている直管部41の端部47の外側へ突出されていて、その突出部分によって筒状の上記挿口71が形成されている。図例では、直管部41の端部47の外側へ突出されている樹脂製の上記挿口71の肉厚がその外周側に向けて増厚されていて、その挿口71の肉厚が、上記した直管部41の肉厚と複合管部被覆層45との肉厚とを合わせた肉厚と略同等に定められている。こうして挿口71の肉厚を増厚しておくと、その挿口71が樹脂によって形成されているとしても大きな耐曲り強度を発揮するので、挿口71に要求される大きな強度を満たしやすくなるだけでなく、複合管部被覆層45によって取り囲まれた管路の口径が挿口71によって狭められないので、流路面積が減少するという事態をきたすことがない。
一方、同図のように、受口72は、第2曲り管部43を延出させることによって形成された膨形筒部73と、曲り管部被覆層46を延出させることによって形成されて上記膨形筒部73の内面を被覆している筒状の樹脂延出部74とによって形成されている。なお、上記膨形筒部73は第2曲り管部43の端部を拡径処理することによって形成されている。
シール機構80は、上記挿口71の根元部分に樹脂で一体成形されている第1パッキン受部81と、上記樹脂延出部74の端部に樹脂で一体成形されている第2パッキン受部82と、それらのパッキン受部81,82の相互間に介在されているパッキン83とを有している。シール機構80をさらに詳細に説明すると、第1パッキン受部81の表面は後上がり勾配の第1パッキン座面84を形成している。これに対し、第2パッキン受部82の裏面は後上がり勾配の第2パッキン座面85を形成している。さらに、パッキン83は、その裏面が上記した第1パッキン座面84と同様に後上がり勾配を有して、その傾斜角度は当該第1パッキン座面84と同等になっている。また、パッキン83の表面は、上記した第2パッキン座面85と同様に後上がり勾配を有して、その傾斜角度は当該第2パッキン座面85と同等になっている。
締結機構70は、複合管部44に含まれている直管部41の端部に設けられた第1フランジ75と、第2曲り管部43側の上記膨形筒部73の端部に設けられた第2フランジ76と、それらの第1及び第2のフランジ75,76を締め付けて結合する締結具77とを有している。第1及び第2のフランジ75,76は、円環状に形成されていて、その周囲の等角度おきの3箇所にボルト挿通孔を備えたブラケット部を有している。そして、それのブラケット部の各ボルト挿通孔78,79に挿通された締結ボルトと、その締結ボルトにねじ込まれたナットとによって、上記した締結具77が構成されている。
そして、図1又は図3のように、第1フランジ75に第1パッキン受部81が密着してその第1パッキン受部81が第1フランジ75によってバックアップされている。同様に、第2フランジ76に第2パッキン受部82が密着してその第2パッキン受部82が第2フランジ76によってバックアップされている。したがって、第1パッキン受部81や第2パッキン受部82が締結機構70の締付力を受けて撓み変形することはない。
図16を参照して説明した締結機構70やシール機構80の構成は、図15に示した鋳鉄継手Dの複合管部64と主部65との接続箇所の構成にも同様に採用されている。したがって、図15では、説明の便宜上、締結機構に符号70を付し、シール機構に符号80を付すと共に、挿口に符号71,受口に符号72を付し、さらに、第1フランジに符号75を付し、第2フランジに符号76を付して詳細な説明を省略する。
上記した各実施形態による鋳鉄継手A〜Dは、外管を所定箇所で分割し、そのように分割された部材に対して内面被覆層を個別に射出成形した後、それらの部材を締結機構を用いて接続することによって構成されている。そのため、射出成形された内面被覆層を備えている。このことにより、上記した各実施形態は、外管に内面被覆層を射出成形することが困難であるか、あるいは、可能であるとしてもきわめて複雑な金型の使用を余儀なくされる全体形状を有している鋳鉄継手の上記内面被覆層を容易に射出成形することができるようになるという利点を備えている。
ところで、図5に示した主部14は、主管部11に対して直管部12が斜め方向に分岐している。そのため、主管部11と直管部12との相互間にV字状の谷形部分が存在するけれども、この谷形部分は、主管部11や直管部12に部分的につながっている鋳造層によって埋められている。一方、主管部11や直管部12とそれらに挿入した金型21,22,23との相互間の隙間に樹脂を加圧下で注入して主部被覆層15を射出成形する工程では、加圧(たとえば150kg/cm2 )に伴って上記した谷形部分に大きな外力が加わる。そのため、その谷形部分が鋳造層によって埋まっているとしても、その鋳造層に亀裂が生じたり、場合によって鋳造層が割れてしまったりするおそれがある。
そこで、本発明者は、上記した鋳造層の強度不足を補う対策を講じた上で、射出成形によって主部被覆層15を成形した。次に、鋳造層の強度不足を補う対策を、図17及び図18を参照して説明する。
図17は上記対策が講じられた主部14の側面図、図18は図17の要部を破断して示した平面図である。図17及び図18では、主管部11と直管部12との相互間のV字状の谷形部分を埋めている鋳造層を符号Tで示している。ここで説明する対策では、引張り強度が45kg/mm2 程度を示す鋳造層Tに孔開け加工を行ってその鋳造層Tを厚み方向に貫通する孔部100を開設している。そして、その孔部100に、引張り強さが130kg/mm2 )程度の高張力ボルト110を挿通させ、その高張力ボルト110にナット120をねじ込んで締め付けてある。こうしておくと、主部被覆層15を射出成形する工程で加えられる成形圧力(推測で150kg/cm2 程度)に鋳造層Tが耐えるようになり、成形工程で鋳造層Tに亀裂や割れの生じないことが判った。図15に示した主部65に主部被覆層69を加圧下で射出成形する場合についても同様である。
また、上記した高張力ボルト110とナット120とによって鋳造層Tを締め付けるという対策を行う代わりに、鋳造層Tを成形金型で保持させてもよく、そのようにすることによっても、射出成形時の亀裂や割れの発生を防ぐことができる。