JP5455454B2 - 簡便固定機能付き温度センサとそれの搭載された電池パック送風用エアダクト - Google Patents

Description

本発明は、自動車に使用される温度センサに関するもので、特に電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される電池パックを強制空冷するための送風用エアダクトに簡単に取り付けられることのできる温度センサに関する。

電気自動車やハイブリッド自動車においては、電動機に電力を供給し、回生制動時に運動エネルギーを電気エネルギーに変換して蓄積するための電池が搭載されている。この電池としては二次電池や電気二重層キャパシタが用いられる。このような電池は、電池セルを積層した電池モジュールとして構成され、この電池モジュールが筐体内に収容された状態で車両に搭載され、この筐体と筐体内に収容された電池モジュールおよびその他の構成部品を電池パックと称している。電池モジュールは内部での電気化学反応によって発熱し、その温度が上昇する。高温になると電池モジュールの発電効率が低下するため、エアダクト内に外部から冷却風を強制的に導入して、電池モジュールを冷却することが通常行なわれる。
送風制御をするために、エアダクト内の温度を測定することが必要で、そのため温度センサがここに取り付けられて測定される。この温度センサをエアダクト内に取り付ける取り付け方としては特許文献１の温度センサの固定例が提案されている。

特開２００６−２５０７６３号公報

〈特許文献１の温度センサ〉
図４は特許文献１記載の温度センサの取り付け例を示す図で、（ａ）はホットメルト樹脂充填前の状態を示す斜視図、（ｂ）はホットメルト樹脂充填後の図４（ａ）におけるＡ−Ａ’断面図である。図４において、３０はハウジング、３０Ｂはハウジング本体部、３０Ｃはクリップ、３０Ｖはサーミスタ収容部、ＴＳはサーミスタ、ＴＴはサーミスタ端子、ＴＬはサーミスタリード線、ＴＷはサーミスタ信号線、ＴＪはホットメルト樹脂充填部である。
図４に示すように、樹脂で形成したハウジング３０は内部にサーミスタ素子ＴＳを収容する素子収容部３０Ｖが形成されたハウジング本体部３０Ｂを備え、この本体部３０Ｂの外側面にアンカー型のクリップ３０Ｃが形成されている。
したがって、固定側に形成された取付孔にこのクリップ３０Ｃを装着することによりハウジング３０を固定側にワンタッチで固定できる構造となっている。

〈温度センサの従来例２〉
図５は従来例２として公然実施されている温度センサの取り付け例で、（ａ）は斜視図、（ｂ）は縦断面図である。従来例２の温度センサの取り付けはグロメットとタイラップによる取り付けである。図５において、グロメット４１は軸方向中央の外周に大きなフランジ４１Ｆが形成され、その後方（反挿入方向）端部に隆起部４１Ｔが形成されることで、その間がくびれ平坦部４１Ｈとなって、ここにタイラップ４２が締め付けられる。一方、フランジ４１Ｆの前方（挿入方向）に隆起部４１Ｒが形成されることで、フランジ４１Ｆと隆起部４１Ｒの間に取り付け板Ｂの孔が嵌まり込むようになっている。そして先端は隆起部４１Ｒより細くなって、取り付け板Ｂの孔に挿入し易くなっている。
グロメット４１は軸方向中央に貫通孔４１Ａが形成されて、この貫通孔４１ＡにサーミスタＴＳを収納している。
したがって、グロメット４１を取り付け板Ｂの取り付け孔に挿入し、フランジ４１Ｆに当接した後、タイラップ４２を上部くびれ部４１Ｈに巻回し、タイラップ４２の先端をタイラップヘッド４２Ｈの孔４２Ｋに通して強く引っ張ることにより、サーミスタＴＳがグロメット４１から抜け出なくなり取り付け板Ｂに固定される。タイラップヘッド４２Ｈから引き出された剰余部分はカットして邪魔にならないようにする。
以上のようにして、図５のように取り付けが行われる。

〈特許文献１の温度センサの欠点〉
特許文献１記載の温度センサの取り付け法の欠点は、（１）取り付け用クランプが温度センサの横に一体成型されているため、製品の寸法が大きくなってしまうことであり、（２）サーミスタを挿入した後、ホットメルト樹脂を充填するため、作製工数がかかり、コスト高となってしまうことであり、（３）クランプを取り付けた側しか測定できないことである。すなわち、ダクト等の筒状内部から外側に向けてクランプを取り付けなければダクト内の温度は測定できないことになるが、ダクトの筒状内部から外側に向けてクランプを取り付ける作業はかなり面倒で困難な作業となる。

〈従来例２の温度センサの欠点〉
従来例２の温度センサの取り付け法の欠点は、（１）センサ本体の保持のために別部品のグロメットやタイラップを用意する必要があることであり、（２）センサ本体を組み付ける際、グロメットへ取り付けた後、タイラップにて固定をしているが、センサ本体を取り付け板に押し付ける作用をするスプリング機構がどこにもないため、気密確保が不十分であること、（３）一般的な温度センサ取り付けの主流となっているねじ締め法と比較して、締め付け力が不十分なことである。

そこで、本発明は、上記欠点を解決するためになされたもので、（１）製品の寸法が大きくなってしまうことのない、（２）作製工数が少なくできることで、コスト高とならない、（３）ダクト等の筒状の外側から取り付ることができ、（４）３６０度全方位の温度を測定することができ、（５）センサ本体の保持のために別部品を必要としない、（６）センサ本体を取り付け板に確実に押し付けて固定することができて、ねじ締め法と比較して遜色がない、したがって気密確保が十分な温度センサ取り付け構造を提供することを目的としている。

上記の欠点を解決するため、簡便固定機能付き温度センサの第１発明は、取り付け対象物の貫通孔に挿入し固定される取り付け用クランプと前記取り付け用クランプの 内部の先端近傍に埋設されたサーミスタ素子と、から成る温度センサであって、前記取り付け用クランプは、軸部と前記軸部の先端近傍から斜め後方に立設された弾性係止部と前記軸部の後端にて前記軸部と直角に立設された笠部とから構成され、前記弾性係止部の先端には切り欠きが形成され、前記笠部は、軸部の後端から軸方向に対して直角方向に立設する立設部とその先端近傍で前方向（挿入方向）に彎曲した彎曲部とから成り、前記弾性係止部の前記切り欠きと前記笠部の先端の前記彎曲部との間に軸方向の隙間があり、前記取り付け対象物の貫通孔に前記軸部の先端近傍および前記弾性係止部が挿入されることで前記弾性係止部の前記切り欠きと前記笠部の前記彎曲部との前記隙間に前記取り付け対象物を挟んで固定されることを特徴としている。

第２発明は、第１発明の簡便固定機能付き温度センサにおいて、前記取り付け用クランプと前記サーミスタ素子とがインサート成形されていることを特徴としている。

第３発明は温度センサ付き自動車用電池パック送風用エアダクトに係り、電池セルを積層した電池モジュールを筐体内に収容して成る電池パックを強制空冷するため前記電池パックに近接配置された自動車用電池パック送風用エアダクトにおいて、前記エアダクトに取り付け孔を設け、前記取り付け孔に請求項１または２記載の簡便固定機能付き温度センサを取り付けたことを特徴としている。

上記温度センサを用いると、エアダクトの取り付け孔にこの温度センサの取り付け用クランプを差し込むだけでよいので外側から簡単に取り付ることができるようになり、センサ本体の保持のために別部品を必要とせず、そして空気漏れなく確実に固定することができるようになる。しかも取り付けた状態で３６０度全方位の温度を測定することができる。

図１は本発明の実施例１に係る温度センサを表す図で、（ａ）は正面図、（ｂ）は側面図、（ｃ）は斜視図である。 図２はサーミスタ素子を内蔵した取り付け用クランプをエアダクトのケース板に取り付ける取り付け方法を説明する図で、（１）から（３）の順で取り付けが行われる。 図３は本発明に係る温度センサを自動車用電池パックの強制風冷用エアダクトに固定した使用例の概念斜視図である。 図４は特許文献１記載の温度センサの取り付け例を示す図で、（ａ）はホットメルト樹脂充填前の状態を示す斜視図、（ｂ）はホットメルト樹脂充填後の（ａ）におけるＡ−Ａ’断面図である。 図５は従来例２として公然実施されている温度センサの取り付け例で、（ａ）は斜視図、（ｂ）は縦断面図である。

以下、製品の寸法が小さくなり、作製工数が少ない、筒状の外側から取り付けができる、３６０度全方位の温度を測定できる、センサ本体の保持のために別部品を必要としない、取り付け板に確実に押し付けて固定することができる本発明の温度センサの取り付け構造について、図面に基づいて説明する。

〈本発明に係る温度センサ１００〉
図１は本発明の実施例１に係る温度センサを表す図で、（ａ）は正面図、（ｂ）は側面図、（ｃ）は斜視図である。
本発明にかかる温度センサ１００は取り付け用クランプ１０とこの内部にインサート成形されたサーミスタ素子ＴＳとその端子ＴＴ（図２（３））と、この端子ＴＴに接続されて外部に温度信号を取り出すリード線ＴＬ（図２（３））とから成っている。

〈取り付け用クランプ１０〉
図１において、クランプ１０は軸部１１と軸部１１の先端近傍から斜め後方に立設された弾性係止部１２と軸部１１の後端にて軸部１１に対して直角に立設された笠部１３とから構成されている。
以下、軸部１１と弾性係止部１２と笠部１３について、図２（３）で説明する。

《軸部１１》
軸部１１は円柱状・楕円柱・角柱などをしており、その太さ（直径）は取り付け板（エアダクトのケース板）Ｂにあけられた挿入孔Ｂｈ（図２（１））に挿入されるようにその孔よりも小さく形成されており、また、その長さは取り付け板Ｂの板厚よりも充分長く形成されている。
本発明では取り付け用のクランプの軸部１１の軸方向先端にサーミスタ素子ＴＳとその端子ＴＴとそこから後方にそのリード線ＴＬとを埋設したのが特徴で、取り付け用クランプとサーミスタ素子ＴＳ等が一体成形されることにより、小型化され、作製工数を短縮できる。サーミスタ素子ＴＳ等の埋設は、インサート成形で行われるのがよい。

《弾性係止部１２》
弾性係止部１２は、軸部１１の先端近傍から軸方向後方に向かうにつれて軸部１１から遠ざかるように離反して成る斜めに立設された片持ちアーム１２Ａが軸部１１の周方向の複数箇所からそれぞれ斜めに立設されて成る。また、片持ちアーム１２Ａの先端には直角状の切り欠き１２Ｃ（図２（１））が形成されている。片持ちアーム１２Ａは材料による弾性を備えているので、先端を軸部１１方向に押さえると弾性で軸部１１方向に撓（しな）り、押さえがなくなると復元力が働いて現状復帰する。

《笠部１３》
笠部１３は、軸部１１の後端から軸方向に対して直角方向に軸部１１の３６０度全周から立設する立設部１３Ｖ（図２（１））とその先端近傍で全周縁に亘り若干前方向（挿入方向）に彎曲した彎曲部１３Ｃ（図２（１））とから成っている。
弾性係止部１２の切り欠き１２Ｃと笠部１３の先端の彎曲部１３Ｃとの間に軸方向の隙間があり、その隙間は挿入するエアダクトのケース板Ｂの板厚に一致している。

〈取り付け方法〉
図２はサーミスタ素子を内蔵した取り付け用クランプをエアダクトのケース板に取り付ける取り付け方法を説明する図で、（１）から（３）の順で取り付けが行われる。
図２（１）において、サーミスタ素子ＴＳを内蔵した取り付け用クランプ１０をエアダクトのケース板Ｂに取り付けるため、ケース板Ｂの取り付け孔Ｂｈに近づけ、その先端部分を取り付け孔Ｂｈに挿入する。
図２（２）において、取り付け用クランプ１０の先端部分を取り付け孔Ｂｈに挿入していくと、弾性係止部１２が取り付け孔Ｂｈの縁部に当接して、材料の持つ弾性で内側に彎曲しながら取り付け孔Ｂｈを進む。
図２（３）において、取り付け用クランプ１０の先端部分が取り付け孔Ｂｈを通り抜けると、彎曲していた弾性係止部１２は復元力で元の位置に戻り、弾性係止部１２の切り欠き１２Ｃがケース板Ｂの縁部に係合し、抜けなくなり、固定される。これと同時に笠部１３の先端の彎曲部１３Ｃがケース板Ｂに当接し笠部１３の弾性力で若干反ってそれ以上の取り付け用クランプ１０の挿入を阻止する。この状態で、ケース板Ｂは弾性係止部１２の切り欠き１２Ｃと笠部１３の先端の彎曲部１３Ｃとの間に挟まれてしっかりと固定されるので、取り付け孔Ｂｈが笠部１３で塞がれ、ここからのエア漏れが防止できる。

〈本発明による取り付け方法の長所〉
（１）本発明では取り付け用クランプの中にサーミスタ素子を埋設したので、小型化される。
（２）取り付け用クランプとサーミスタ素子がインサート成形で一体成形されるので、作製工数を短縮でき、したがってコストダウンとなる。
（３）本発明の取り付け用クランプは形状・構造的にエアダクト（筒状）の外部から取り付けることができるため、筒状への取り付けが容易に行えるようになる。
（４）取り付け用クランプの弾性係止部と笠部とが取り付け板に密着することにより、吸気ダクトからのエアー漏れが防止できる。
（５）取り付け用クランプとサーミスタ素子が一体成形されているため、部品点数の削減となる。
（６）取り付け用クランプの中にサーミスタ素子を埋設したので、取り付け用クランプだけを取り付け孔に単に差し込むだけで固定が完了する。

以上のように、本発明による温度センサの取り付けによれば、製品の寸法が大きくならず、作製工数が少なくでき、筒状の外側から簡単に取り付ることができ、取り付けた状態で３６０度全方位の温度を測定することができ、センサ本体の保持のために別部品を必要とせず、そして取り付け板に確実に固定することができるようになる。

〈自動車用電池パック送風用エアダクトへの取り付け〉
図３は本発明に係る温度センサを自動車用電池パックの強制風冷用エアダクトに固定した使用例の概念斜視図である。
上述したように、近時、温度センサが自動車用電池パック近傍のエアダクトに取り付けられることがあるが、特許文献１記載の温度センサの場合は構造上エアダクトの内部から取り付ける作業となるので取り付け作業が困難であった。しかしながら、本発明による温度センサを用いると、図３のように、エアダクトの外側から取り付け孔に挿入すればよいだけなので、作業が著しく簡便となる。
図３において、自動車用電池パックＰが多数並列配置（図では７個）されており、これらの自動車用電池パックＰ全体を強制風冷するためこれらに空気を送り込むエアダクト２０１が手前に設けられ、送り込まれて自動車用電池パックＰを冷却した後の加熱された空気が排出されるエアダクト２０２が向こう側に設けられている。これらのエアダクト２０１と１０２から成るエアダクト内の通路の任意位置に送風機２０Ｓが設けられている（図ではエアダクト２０１に設けている。）。図ではエアダクトと電池パックＰとの取り付け関係を判りやすく示すために、エアダクトのダクト板２０３〜２０６を外して描いているが、実際はすべて取り付けられている。このようなエアダクト２０のいずれかの位置に取り付け孔をあけて、そこに本発明に係る温度センサ１０の取り付け用クランプを差し込むだけでよいので、外側から簡単に取り付ることができ、取り付けた状態で３６０度全方位の温度を測定することができ、センサ本体の保持のために別部品を必要とせず、そして空気漏れなく確実に固定することができるようになる。
このように、本発明に係る温度センサを用いると、外側から簡単に取り付ることができ、取り付けた状態で３６０度全方位の温度を測定することができ、センサ本体の保持のために別部品を必要とせず、そして空気漏れなく確実に固定することができるようになる。

１００ 本発明にかかる温度センサ
１０ 取り付け用クランプ
１１ 軸部
１２ 弾性係止部
１２Ａ 片持ちアーム
１２Ｃ 切り欠き
１３ 笠部
１３Ｃ 彎曲部
１３Ｖ 立設部
２０ エアダクト
２０１ 送風側エアダクト
２０２ 排気側エアダクト
２０Ｓ 送風機
２０３〜２０６ ダクト板
ＴＳ サーミスタ素子
ＴＴ 端子
ＴＬ リード線
Ｂ 取り付け板
Ｂｈ 取り付け孔
Ｐ 自動車用電池パック

Claims (3)

1. 取り付け対象物の貫通孔に挿入し固定される取り付け用クランプと前記取り付け用クランプの 内部の先端近傍に埋設されたサーミスタ素子と、から成る温度センサであって、
   前記取り付け用クランプは、軸部と前記軸部の先端近傍から斜め後方に立設された弾性係止部と前記軸部の後端にて前記軸部と直角に立設された笠部とから構成され、
   前記弾性係止部の先端には切り欠きが形成され、前記笠部は、軸部の後端から軸方向に対して直角方向に立設する立設部とその先端近傍で前方向（挿入方向）に彎曲した彎曲部とから成り、前記弾性係止部の前記切り欠きと前記笠部の先端の前記彎曲部との間に軸方向の隙間があり、前記取り付け対象物の貫通孔に前記軸部の先端近傍および前記弾性係止部が挿入されることで前記弾性係止部の前記切り欠きと前記笠部の前記彎曲部との前記隙間に前記取り付け対象物を挟んで固定されることを特徴とする簡便固定機能付き温度センサ。
2. 前記取り付け用クランプと前記サーミスタ素子とがインサート成形されていることを特徴とする請求項１記載の簡便固定機能付き温度センサ。
3. 電池セルを積層した電池モジュールを筐体内に収容して成る電池パックを強制空冷するため前記電池パックに近接配置された自動車用電池パック送風用エアダクトにおいて、
   前記エアダクトに取り付け孔を設け、前記取り付け孔に請求項１または２記載の簡便固定機能付き温度センサを取り付けたことを特徴とする温度センサ付き自動車用電池パック送風用エアダクト。

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