JP5453929B2 - ラックシャフトの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、車両を操舵するステアリング装置等に用いられるラックシャフトの製造方法に関する。
ステアリング装置において、上記ラックシャフトは、ステアリングホイール等の操舵部からステアリングシャフトおよび中間シャフトを介したピニオンシャフトに設けられた歯部と噛み合うことにより、操舵部の動きを車輪へ伝達する。また、一般的に、ラックシャフトは、高硬度が要求されるため、ラックシャフトの歯部が設けられる歯面及びこの歯面とは反対側の面となる背面のそれぞれに焼入れ処理が行われる(例えば、特許文献1参照)。
図9を参照して、従来のラックシャフトの焼入れ装置について説明する。図9(a)は、焼入れ装置100の正面構造を示す正面図であり、図9(b)は、ラックシャフトRSの軸方向の一端側より見た側面構造を示す側面図である。
図9(a)に示すように、焼入れ装置100は、ラックシャフトRSの歯部RS1を直接通電にて加熱する加熱部101と、歯部RS1を冷却水にて冷却する歯面側冷却部102と、ラックシャフトRSの背面側を冷却水にて冷却する背面側冷却部103,104(図9(b)参照)とを備える。歯面側冷却部102及び背面側冷却部103,104は、冷却水を貯水したタンクから供給される。また、ラックシャフトRSは、ラックシャフトRSの軸方向に一定の距離を経て配置された一対の保持装置105によって保持されている。そして、加熱部101の加熱コイルは、歯部RS1の軸方向の全面を覆っている。また、歯面側冷却部102も同様に、歯部RS1の軸方向の全面を覆っている。
また、図9(b)に示すように、背面側冷却部103,104は、ラックシャフトRSの径方向に一定の距離を経てそれぞれ配置されている。また、図9(a)に示すように、背面側冷却部103,104のそれぞれは、歯部RS1の軸方向の全面を覆っている。
この焼入れ装置100における焼入れ方法は、まず、加熱部101によって、ラックシャフトRSの歯面を加熱した後、歯面側冷却部102からの冷却水の噴射により、ラックシャフトRSの歯面を冷却し、背面側冷却部103,104からの冷却水の噴射により、ラックシャフトRSの背面を冷却する。これにより、ラックシャフトRSの焼入れが完了する。
特開平7−268481号公報
ところで、ラックシャフトに焼入れを行う場合、ラックシャフトの冷却の度合が不均一であることに起因して、ラックシャフトが変形してしまうことがある。
例えば、従来の焼入れ装置100のように、歯面側冷却部102と背面側冷却部103,104の冷却水の噴射により冷却を行う構成において、背面側冷却部103からの冷却水の噴射量及び噴射タイミングと、背面側冷却部104からの冷却水の噴射量及び噴射タイミングとの間にずれが生じることもある。この場合には、ラックシャフトRSにおいて
、背面側冷却部103の冷却水の噴射により冷却される部位の冷却の度合と、背面側冷却部104の冷却水の噴射により冷却される部位の冷却の度合とが互いに異なってしまう。したがって、この冷却の度合が異なることに起因して、ラックシャフトに横方向(図9参照)の変形が生じるようになる。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ラックシャフトに焼入れを行う際の冷却に起因して生じるラックシャフトの変形を抑制することのできるラックシャフトの製造方法を提供することである。
請求項1に記載の発明は、ピニオンシャフトと噛み合う歯面を有するラックシャフトの製造方法において、ラックシャフトを形成する第1工程と、このラックシャフトに焼入れを行う第2工程とを備え、前記第2工程は、前記ラックシャフトの歯面を加熱する第3工程と、前記第3工程後に前記歯面の冷却を行う第4工程と、前記歯面とは反対側の面である背面を冷却水の噴射によって冷却する第5工程とを備え、前記第5工程の開始時は、前記第4工程の開始時よりも後であることを要旨とする。
この発明によれば、第4工程の開始時より後に第5工程を開始することにより、歯面側の焼入れが背面の冷却より先に行われることになるため、ラックシャフトの歯面側の硬度を先に向上させることができる。そして、ラックシャフトの歯面側の硬度が向上した状態において、ラックシャフトの背面側の冷却を行うため、ラックシャフトの背面側の冷却に起因するラックシャフトの変形を抑制することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のラックシャフトの製造方法において、前記第5工程の開始時は、前記第4工程において、前記ラックシャフトの焼入れが完了した後であることを要旨とする。
この発明によれば、第4工程において歯面側の焼入れが完了した後に、第5工程を開始するため、即ち、ラックシャフトの歯面側の硬度が十分に向上した状態において、ラックシャフトの背面側の冷却を行うため、ラックシャフトの背面側の冷却に起因するラックシャフトの変形をより好適に抑制することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1及び請求項2のいずれかに記載のラックシャフトの製造方法において、前記第5工程の開始時は、前記第4工程の終了後、前記ラックシャフトの残熱に起因する復温による前記ラックシャフトの硬度の低下が開始する前であることを要旨とする。
この発明によれば、第4工程の終了後、ラックシャフトの残熱に起因する復温によるラックシャフトの硬度の低下が開始する前に、第5工程を開始することにより、即ち、ラックシャフトの硬度の低下が開始する前に第5工程を開始することにより、ラックシャフトの背面側の冷却に起因するラックシャフトの変形をより好適に抑制することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のラックシャフトの製造方法において、前記第5工程の開始時は、前記第4工程の開始時からの経過時間が3秒以上、且つ、前記第4工程の終了時からの経過時間が7秒以下の間であることを要旨とする。
本願発明者によれば、第4工程の開始から3秒以上の時間が経過した後に、第5工程を開始することにより、ラックシャフトの変形量が十分に小さくなることが確認されている。これは、第4工程の開始から3秒が経過するまでの間に、歯面の組成のマルテンサイト変態が十分に進行していることによるものと考えられる。また、一方で、第4工程の終了
から7秒以上の時間が経過する前に第5工程を開始することによっても、ラックシャフトの変形量が十分に小さくなることが確認されている。これは、第4工程の終了から7秒以上の時間が経過する前は、ラックシャフトの残熱に起因するラックシャフトの復温が生じたとしても、その度合が比較的小さいことによるものと考えられる。そして、上記発明では、こうした事実に鑑み、第5工程の開始時を設定するようにしているため、ラックシャフトの変形をより好適に抑制することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のラックシャフトの製造方法において、前記第5工程の開始時は、前記第4工程の開始時からの経過時間が4秒以上、且つ、前記第4工程の終了時からの経過時間が2秒以下の間であることを要旨とする。
本願発明者によれば、第4工程の開始から4秒以上の時間が経過した後に第5工程を開始する場合、ラックシャフトの変形量が十分小さくなるとともに、4秒以上では、ラックシャフトの変形量が殆ど変化しないことが確認されている。これは、第4工程の開始から4秒が経過するまでの間に、歯面の組成のマルテンサイト変態が十分に進行していることによるものと考えられる。また、一方で、第4工程の終了時から2秒以上の時間が経過する前に第5工程を開始することによっても、ラックシャフトの変形量が十分に小さくなることが確認されている。これは、第4工程の終了から2秒以上の時間が経過する前は、ラックシャフトの残熱に起因するラックシャフトの復温が開始していないことによるものと考えられる。そして、上記発明では、こうした事実に鑑み、第5工程の開始時を設定するようにしているため、ラックシャフトの変形をより好適に抑制することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のラックシャフトの製造方法において、前記第3工程後に前記ラックシャフトを空冷し、前記ラックシャフトの空冷後に前記第4工程を開始し、前記第4工程は、前記歯面に冷却水を噴射する水冷工程であることを要旨とする。
この発明によれば、加熱したラックシャフトの歯面の温度を空冷によって低下させるため、歯部の焼割れを抑制することができる。
本発明によれば、ラックシャフトに焼入れを行う際の冷却に起因して生じるラックシャフトの変形を抑制することのできるラックシャフトの製造方法を提供することができる。
本発明のラックシャフトの製造方法を車両の車輪の操舵を行うステアリング装置に用いられるラックシャフトの製造方法として具体化した一実施形態について、同ステアリング装置の模式図。 (a)同実施形態のラックシャフトの製造方法について、同ラックシャフトの正面構造を示す正面図。(b)同実施形態のラックシャフトの製造方法について、同ラックシャフトをX−Xにて切った断面構造を示す断面図。 同実施形態のラックシャフトの製造方法について、同ラックシャフトに焼入れを行う焼入れ装置の構造を模式的に示す模式図。 (a)同実施形態のラックシャフトの製造方法について、同ラックシャフトに焼入れを行う焼入れ装置の正面構造を示す正面図。(b)同実施形態のラックシャフトの製造方法について、同ラックシャフトに焼入れを行う焼入れ装置の側面構造を示す側面図。 同実施形態のラックシャフトの製造方法について、同ラックシャフトに焼入れを行ったときの同ラックシャフトの温度変化と経過時間との関係を示すグラフ。 同実施形態のラックシャフトの製造方法について、同ラックシャフトの歯面側への冷却の開始時に対する同ラックシャフトの背面側への冷却の開始時の遅延時間と同ラックシャフトの変形量との関係を示すグラフ。 同実施形態のラックシャフトの製造方法について、同ラックシャフトの歯面側及び背面側への冷却に遅延時間を設けた場合と、同遅延時間を設けない場合とに対する同ラックシャフトの変形量を示すグラフ。 同実施形態のラックシャフトの製造方法について、同ラックシャフトの製造過程を示すフローチャート。 (a)従来のラックシャフトの製造方法について、同ラックシャフトに焼入れを行う焼入れ装置の正面構造を示す正面図。(b)同焼入れ装置の側面構造を示す側面図。
図1〜図8を参照して、本発明に係るラックシャフトの製造方法を車両の車輪の操舵を行うステアリング装置に用いられるラックシャフトの製造方法として具体化した一実施形態について説明する。
まず、図1を参照して、ステアリング装置の構成について説明する。
図1に示すように、ステアリング装置1は、操作者がステアリングホイール等の操舵部2を操作することにより、車両の車輪9の方向を変更させる装置である。具体的には、ステアリング装置1の操舵部2により、操舵部2に連結されたステアリングシャフト3を回転させる。そして、ステアリングシャフト3の回転は、中間シャフト5及びピニオンシャフト7を介して車両の車輪9に向かい伸びる転舵軸としてのラックシャフト8の直線方向の移動に変換され、ラックシャフト8の直線方向の移動に伴い、車輪9の方向が変更される。
また、ステアリングシャフト3と中間シャフト5との間、及びピニオンシャフト7と中間シャフト5との間には、それぞれ十字軸継手4,6が連結されることにより、中間シャフト5及びピニオンシャフト7を回転及び移動が許容されている。したがって、ステアリングシャフト3の回転は、中間シャフト5を介して、ピニオンシャフト7に伝達される。
また、ピニオンシャフト7には、ピニオン歯7aが設けられており、ラックシャフト8に設けられたラック歯8aと噛み合うことにより、ピニオンシャフト7の回転が、ラックシャフト8の直線方向の移動に変換される。
次に、図2を参照して、ラックシャフト8の構成について説明する。
図2(a)に示すように、ラックシャフト8は、中実構造、且つ略円柱形状に構成されている。そして、ラックシャフト8の軸方向の一端側には、はすば歯車としてのラック歯8aが設けられている。本実施形態では、ラックシャフト8に炭素鋼であるS45Cが用いられる。
以降では、図2(b)に示すように、ラックシャフト8において、ラック歯8aが設けられた領域Y1を「歯面側」といい、ラック歯8aが設けられた領域Y1と反対側の領域Y2を「背面側」という。
次に、図3及び図4を参照して、ラックシャフト8の焼入れ装置10について説明する。
図3に示すように、焼入れ装置10は、ラックシャフト8のラック歯8aを加熱する加熱部11と、ラック歯8aを冷却する歯面側冷却部12と、ラックシャフト8の背面側を冷却する背面側冷却部13a,13bと、歯面側冷却部12及び背面側冷却部13a,13bに冷却水を供給するタンク14とにより構成されている。
加熱部11は、加熱コイルを備えた高周波直接通電加熱装置である。即ち、本実施形態では、ラックシャフト8のラック歯8aに高周波焼入れを行う。加熱部11において、ラックシャフト8は、ラック歯8aが加熱コイルと対向する方向に電極11a,11bと接した状態で一対の保持装置20により固定される。そして、この加熱コイルに高周波電力を供給することによりラック歯8aを加熱する。
歯面側冷却部12は、加熱部11の縦方向の下側に設けられている。そして、タンク1
4から供給された冷却水は、歯面側冷却部12により、加熱部11(加熱コイル)を介して、ラック歯8aに噴射される。
背面側冷却部13a,13bは、ラックシャフト8から一定の距離を経て、縦方向の上側に設けられている。そして、タンク14から供給された冷却水は、背面側冷却部13a,13bにより、ラックシャフト8の背面側に向けて噴射される。
タンク14と、歯面側冷却部12及び背面側冷却部13a,13bとの間には、歯面側冷却部12へ供給する冷却水の流量を調整する第1電磁弁15、及び背面側冷却部13a,13bへ供給する冷却水の流量を調整する第2電磁弁16が設けられている。歯面側冷却部12及び背面側冷却部13a,13bへの冷却水の供給は、ポンプ17により行われる。
歯面側冷却部12及び背面側冷却部13a,13bからラックシャフト8に向かい噴射された冷却水は、補助タンク18に供給される。そして、補助タンク18に貯められた冷却水は、ポンプ19により、タンク14に戻される。
図4(a)に示すように、ラックシャフト8は、ラックシャフト8の軸方向に一定の距離を経て配置された一対の保持装置20によって、保持される。この一対の保持装置20は、ラックシャフト8のラック歯8aを軸方向の両側より保持する。そして、加熱部11の加熱コイルは、ラック歯8aの軸方向の全面を覆う。また、歯面側冷却部12も同様に、ラック歯8aの軸方向の全面を覆う。
また、図4(b)に示すように、背面側冷却部13a,13bは、ラックシャフト8の径方向に一定の距離を経て2つ配置されている。詳細には、背面側冷却部13a,13bは、ラックシャフト8に対して、横方向との成す鋭角θが45度となる位置、且つ、保持装置20の中心線に対して対称となる位置にそれぞれ配置されている。また、図4(a)に示すように、背面側冷却部13a,13bのそれぞれは、ラック歯8aの軸方向の全面を覆う。
次に、図5〜図7を参照して、歯面側冷却部12の冷却開始時と、背面側冷却部13a,13bの冷却開始時とを異ならせた場合におけるラックシャフト8の変形の度合について説明する。
図5〜図7では、ラックシャフト8の直径が24mm、ラックシャフト8の軸方向の長さが630mmのものを使用している。また、加熱部11には、出力100kWの発振機を使用している。また、歯面側冷却部12及び背面側冷却部13a,13bには、それぞれの冷却水の流量を、90L/minに設定している。
図5は、加熱部11(図4参照)により、ラックシャフト8のラック歯8aを加熱した後に、歯面側冷却部12(図4参照)及び背面側冷却部13a,13b(図4参照)によって、ラックシャフト8を冷却したときのラック歯8aの歯先及び歯底の温度変化を示すグラフである。より詳細には、ラック歯8aの歯先における径方向の2点の温度(図5中のR1,L1)と、歯底における径方向の2点の温度(図5中のR2,L2)との変化について示すグラフである。また、ラック歯8aの各部位の温度は、測定点(R1,R2,L1,L2)に熱電対を取り付けることにより、測定することができる。
図5において、ラックシャフト8の焼入れは、次のように行なわれる。即ち、まずラックシャフト8は、加熱部11により、7.8秒間にわたり加熱される(図5中の加熱時間)。そして、0.3秒の空冷(図5中の空冷時間)の後、歯面側冷却部12により、ラッ
ク歯8a(歯面側)の冷却が8秒間行われる(図5中の歯面冷却時間)。そして、空冷から10秒経過した後(図5中の背面冷却遅延時間)、即ち、歯面側冷却部12の冷却終了から2秒経過した後、背面側冷却部13a,13bにより、ラックシャフト8の背面側の冷却が行われる(図5中の背面冷却時間)。これらにより、ラックシャフト8の焼入れは完了する。
図5に示すように、加熱部11によるラックシャフト8の加熱により、ラックシャフト8のラック歯8aの温度は、750℃〜800℃まで上昇する。そして、空冷により、ラック歯8aの温度は、600℃〜700℃まで低下する。この空冷により、ラック歯8aの焼き割れが抑制される。
空冷後の歯面側冷却部12によるラック歯8aの冷却によって、ラック歯8aの温度は、100℃以下まで低下する。ここで、歯面側冷却部12によるラック歯8aの冷却では、歯底の温度R2,L2が、歯先の温度R1,L1よりも高い。即ち、歯先の温度R1,L1は、約30℃まで低下するのに対して、歯底の温度R2,L2は、約50℃までしか低下しない。
また、歯面側冷却部12によるラック歯8aの冷却開始から1.2秒が経過するまでの間において、歯先の温度R1,L1及び歯底の温度R2,L2がそれぞれ230℃以下まで低下する。ここで、ラックシャフト8のラック歯8aを加熱して、700℃〜800℃に加熱後に急冷しているため、この急冷に伴い、ラック歯8aの温度を350℃まで低下したとき、ラック歯8aには、マルテンサイト変態が生じる。そして、さらにラック歯8aを冷却して、ラック歯8aの温度が230℃まで低下したときには、ラック歯8aでは、マルテンサイト変態が90%まで進行する。ここでは、ラック歯8aにおいて、マルテンサイト変態が90%まで進行した状態を焼入れ完了とする。即ち、ラック歯8aを加熱した後、230℃まで急冷した時点において、ラック歯8aの焼入れが完了する。
ここで、ラック歯8aの歯先の温度R1,L1及び歯底の温度R2,L2は、ラック歯8aの径方向の両端の温度である。本願発明者によれば、ラック歯8aの径方向の中央、且つ、ラック歯8aの内部である歯元芯部(図5参照)の温度は、歯底の温度R2,L2が230℃に達した時点から、約1.5秒が経過した後に、230℃に達することが確認されている。したがって、ラック歯8aの焼入れは、歯面側冷却部12によるラック歯8aの冷却を開始してから約2.7秒後に完了することになる。
そして、歯面側冷却部12の冷却終了後から背面側冷却部13a,13bの冷却開始までの間は、ラックシャフト8に冷却水が供給されないため、ラック歯8aの歯先の温度R1,L1及び歯底の温度R2,L2は、ラックシャフト8の残熱がラック歯8aに復温することにより、それぞれ100℃付近まで上昇する。ここで、ラック歯8aを100℃以下まで冷却した後、ラック歯8aが復温して100℃より高い温度に上昇すると、焼入れが完了した後のラック歯8aの硬度の低下が生じる可能性がある。したがって、背面側冷却部13a,13bの冷却開始時は、歯面側冷却部12の冷却終了後から、ラックシャフト8の残熱によりラック歯8aに復温することによって、焼入れが完了した後のラック歯8aの硬度の低下が開始される前であることが望ましい。特に、ラック歯8aの復温を100℃付近までに抑えることにより、確実に、ラック歯8aの復温による硬度の低下を抑制することができる。
その後、背面側冷却部13a,13bによるラックシャフト8の背面側の冷却によって、歯先の温度R1,L1及び歯元の温度R2,L2は、それぞれ100℃以下(本実施形態では、約30℃)まで低下するとともに、歯先の温度R1,L1及び歯元の温度R2,L2は等しくなる。
図6は、歯面側冷却部12によるラック歯8aの冷却開始時に対して、背面側冷却部13a,13bのラックシャフト8の背面側への冷却開始時が遅れた時間(秒)と、ラックシャフト8のラック歯8aが設けられる方向に対して垂直な幅方向(図2(b)参照)の変形量(μm)との関係を示すグラフである。
図6において、歯面側冷却部12による冷却開始時に対して背面側冷却部13a,13bによる冷却開始時を遅延させた時間(以下、単に「遅延時間」という。)は、2秒を超えてから、ラックシャフト8の変形量に対して大きな影響を与える。即ち、遅延時間が2秒を超えたあたりから、ラックシャフト8の変形量が大幅に低減する傾向を示し、4秒あたりまでの期間にわたり、この傾向が継続する。
そして、遅延時間が4秒を越えてから、ラックシャフト8の変形量に対する影響が小さくなる。即ち、図6の曲線にみられるように、遅延時間が4秒を越えたあたりから、変形量は遅延時間に対して略一定の値を示す。このことは、遅延時間が4秒より長い時間に設定しても、ラックシャフト8の変形量は、遅延時間が4秒でのラックシャフト8の変形量とほとんど変わらないことを示している。
本実施形態では、ラックシャフト8の変形量の規格値を150μmに設定している。ここで、図6において、遅延時間が3秒のとき、ラックシャフト8の変形量は、150μmとなる。したがって、遅延時間は、少なくとも3秒以上に設定することが望ましい。
図7は、遅延時間を5秒としたときのラックシャフト8のラック歯8a付近の変形量と、比較例として、遅延時間を0秒としたとき、即ち、遅延時間を設けないときのラックシャフト8のラック歯8a付近の変形量との比較を示すグラフである。ここで、ラックシャフト8の変形量を、ラックシャフト8の軸方向を中心に1回転させたときのラックシャフト8の振れ量として計測している。
図7において、遅延時間を5秒としたときの曲線Aは、曲線Aの下限値が、約75μmである。したがって、遅延時間を5秒としたときのラックシャフト8の変形量は、最大値で約75μmである。一方、遅延時間を0秒としたときの曲線Bは、曲線Bの下限値が、約260μmである。したがって、遅延時間を0秒としたときのラックシャフト8の変形量は、最大値で約260μmである。このグラフの結果により、ラックシャフト8の変形量は、遅延時間を5秒とした方が、遅延時間を0秒としたときよりも小さくなることが分かる。
次に、図8を参照して、ラックシャフト8の製造方法について説明する。
まず、ステップS1(第1工程)において、棒材を加工することより、ラックシャフト8を形成する。具体的には、炭素鋼であるS45Cの棒材を切削加工することにより、略円柱形状に形成するとともに、ラック歯8aを形成する。
次に、ステップS2〜ステップS6において、ラックシャフト8に焼入れを行う。即ち、ラックシャフト8のラック歯8aに高周波焼入れを行う。なお、ステップS3,S5,及びS6が、第2工程に相当する。
具体的には、まず、ステップS2において、ラックシャフト8を焼入れ装置10に配置する。より詳細には、図4に示すように、ラックシャフト8を焼入れ装置10の保持装置20によって保持する。ここで、ラックシャフト8のラック歯8aは、加熱部11の加熱コイルと対向するとともに、近接して配置される。
次に、ステップS3(第3工程)において、加熱部11により、ラックシャフト8のラック歯8aを加熱する。具体的には、加熱部11により、ラックシャフト8のラック歯8aに7.8秒間、加熱する。そして、この加熱部11のラックシャフト8への加熱により、ラック歯8aの温度は、750℃〜800℃となる。
次に、ステップS4において、ステップS3の加熱部11の加熱の後、ラックシャフト8を空冷する。この空冷の時間は、0.3秒である。そして、ラックシャフト8の空冷により、ラック歯8aの温度は、600℃〜700℃となる。ここで、ラックシャフト8を空冷することにより、ラック歯8aの焼き割れを抑制することができる。
次に、ステップS5(第4工程)において、ステップS4の空冷の後、歯面側冷却部12により、ラックシャフト8のラック歯8a(歯面側)を冷却する。具体的には、歯面側冷却部12により、ラックシャフト8のラック歯8a(歯面側)に8秒間、冷却水を噴射する。そして、この歯面側冷却部12により、ラック歯8aの温度は、100℃以下となる。また、歯面側冷却部12の冷却水の流量は、90L/minである。この歯面側冷却部12の冷却水の流量は、焼入れ装置10の第1電磁弁15により調整される。
次に、ステップS6(第5工程)において、ステップS4の空冷の後、且つ歯面側冷却部12の冷却開始後、背面側冷却部13a,13bにより、ラックシャフト8の背面側を冷却する。即ち、背面側冷却部13a,13bによるラックシャフト8の背面側を冷却する第5工程の開始時は、歯面側冷却部12によるラックシャフト8の歯面側を冷却する第4工程の開始時より後に行われる。具体的には、第4工程により、ラックシャフト8のラック歯8aの焼入れが完了した後、第5工程が開始される。より具体的には、歯面側冷却部12の冷却開始時から5秒の遅延時間の後、背面側冷却部13a,13bのラックシャフト8の背面側への冷却を開始する。ここで、第5工程の開始時は、第4工程の終了時より前であってもよい。
ここで、背面側冷却部13a,13bの冷却が開始されたとき、第1電磁弁15により、歯面側冷却部12の流量は、80L/minに調整される。そして、背面側冷却部13a,13bの冷却水の流量は、歯面側冷却部12による冷却が行われている間は、80L/minであり、歯面側冷却部12による冷却が終了した後、即ち、ラックシャフト8への冷却が、背面側冷却部13a,13bのみとなったとき、80L/minから90L/minに変更される。この背面側冷却部13a,13bの冷却水の流量は、焼入れ装置10の第2電磁弁16により調整される。そして、背面側冷却部13a,13bによるラックシャフト8の背面側への冷却により、ラックシャフト8が約30℃になるとともに、ラック歯8aの歯先の温度と歯元の温度とが等しくなる。
また、第5工程であるステップS6が第4工程であるステップS5の開始時よりも遅れて開始される時間である遅延時間は、ステップS5の開始時からの経過時間が3秒以上、且つ、ステップS5の終了時からの経過時間が7秒以下の間、より好ましくは、ステップS5の開始時からの経過時間が4秒以上、且つ、ステップS5の終了時からの経過時間が2秒以下の間であることが好ましい。遅延時間が上記の間であることにより、ラックシャフト8の硬度が高い状態、即ち、ラックシャフト8が変形しにくい状態において、ラックシャフト8の背面側の冷却を行うことができる。したがって、背面側冷却部13a,13bのラックシャフト8へ噴射する冷却水の流量や、背面側冷却部13a,13bの噴射タイミングにずれがあったとしても、ラックシャフト8の冷却に伴う変形が生じることを抑制することができる。
この背面側冷却部13a,13bによるラックシャフト8の背面側への冷却により、ラックシャフト8の残熱を取り除くことができる。したがって、ラックシャフト8の残熱に
より、ラック歯8aに復温することによって、ラック歯8aの硬度が低下することを抑制することができる。これにより、ラックシャフト8の焼入れが完了する。
次に、ステップS7において、焼入れ装置10とは別の電気炉または誘導加熱装置にて、ラックシャフト8のラック歯8aを再度加熱する。具体的には、焼入れ装置10からラックシャフト8を取り出し、電気炉また誘導加熱装置にシャフト8を載置する。そして、電気炉または誘導加熱装置にてラックシャフト8のラック歯8aを加熱する。この工程において、加熱部11は、ステップS3での加熱によるラック歯8aの温度よりも十分に低い温度となるようにラック歯8aを加熱する。これにより、ラックシャフト8のラック歯8aの焼き戻しが完了する。この焼き戻し工程(ステップS7)により、ラックシャフト8の焼入れ組織が安定し、十分な靭性が確保される。
次に、ステップS8において、ラックシャフト8の変形量を低減するため、ラックシャフト8の変形を修正する。即ち、ラックシャフト8の歪を矯正する。これにより、ラックシャフト8の製造が完了する。
本実施形態のラックシャフト8の製造方法によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態のラックシャフト8の製造方法では、ラックシャフト8の背面側の冷却を行う第5工程の開始時が、ラック歯8a(歯面側)の冷却を行う第4工程の開始時よりも後である。この方法によれば、ラックシャフト8の変形量を抑えることができる。即ち、ラック歯8aのみを先に冷却することにより、ラック歯8aのみ焼入れが先に行われるため、ラック歯8aの硬度、即ち、ラックシャフト8の硬度が向上する。したがって、ラックシャフト8の硬度が向上するため、ラックシャフト8が変形しにくい状態となる。その状態において、ラックシャフト8の背面側を冷却するため、背面側冷却部13a,13bの冷却水の流量にばらつきが生じたとしても、ラックシャフト8の変形量を低減することができる。
したがって、ラックシャフト8の変形量を抑制することができるため、ラックシャフト8の後の工程である、ラックシャフト8の変形を修正する工程におけるラックシャフト8の変形の修正量を低減することができる。その結果、ラックシャフト8の第4工程と第5工程とに遅延時間を設けない場合、即ち、第4工程と第5工程とが同時に行われる場合と比較して、ラックシャフト8の変形を修正するための作業時間を短縮することができる。
(2)本実施形態のラックシャフト8の製造方法では、ラックシャフト8の背面側の冷却を行う第5工程の開始時が、ラック歯8a(歯面側)の冷却を行う第4工程において、焼入れが完了した後である。この方法によれば、第4工程において、ラックシャフト8の歯面側の焼入れが完了することにより、ラック歯8aの硬度、即ち、ラックシャフト8の硬度が確実に向上する。したがって、第4工程によって、ラックシャフト8の硬度が向上するため、ラックシャフト8が変形しにくい状態となる。その状態において、第5工程において、ラックシャフト8の背面側を冷却するため、背面側冷却部13a,13bの冷却水の流量にばらつきが生じたとしても、ラックシャフト8の変形量を確実に低減することができる。
したがって、ラックシャフト8の変形量を抑制することができるため、ラックシャフト8の後の工程である、ラックシャフト8の変形を修正する工程におけるラックシャフト8の変形の修正量を低減することができる。その結果、ラックシャフト8の第4工程と第5工程とに遅延時間を設けない場合、即ち、第4工程と第5工程とが同時に行われる場合と比較して、ラックシャフト8の変形を修正するための作業時間を大幅に短縮することができる。
(3)本実施形態のラックシャフト8の製造方法では、第5工程の開始時は、第4工程の終了後、ラックシャフト8の残熱に起因する復温によるラックシャフト8の硬度の低下が開始される前である。この方法によれば、第5工程であるラックシャフト8の背面側への冷却を、ラックシャフト8の残熱に起因する復温によるラックシャフト8の硬度の低下が開始される前に行われることにより、ラックシャフト8の硬度の低下を抑制することができる。したがって、ラックシャフト8の硬度が高い状態において、背面側冷却部13a,13bによって、ラックシャフト8の背面側への冷却が行われるため、ラックシャフト8の変形量を低減することができる。
(4)本実施形態のラックシャフト8の製造方法では、第5工程の開始時は、第4工程の開始時からの経過時間が3秒以上、且つ、第4工程の終了時からの経過時間が7秒以内の間である。この方法によれば、第4工程の開始時から3秒以上が経過した後に、第5工程を開始することにより、図6に示すように、ラックシャフト8の変形量が規格値以下とすることができる。また、第4工程の終了時から7秒以内に第5工程を開始することにより、ラックシャフト8の残熱に起因する復温を抑制することができるため、ラックシャフト8の硬度の低下を抑制することができる。
(5)本実施形態のラックシャフト8の製造方法では、第5工程の開始時は、第4工程の開始時からの経過時間が4秒以上、且つ、第4工程の終了時からの経過時間が2秒以内の間である。この方法によれば、第4工程の開始時から4秒以上が経過した後に、第5工程を開始することにより、図6に示すように、ラックシャフト8の変形量を大幅に低減することができる。また、第4工程の終了時から10秒以内に第5工程を開始することにより、図5に示すように、ラックシャフト8の残熱に起因する復温をより確実に抑制することができるため、ラックシャフト8の硬度の低下をより確実に抑制することができる。
(その他の実施形態)
本実施形態のラックシャフト8の製造方法は、以下のような変更も可能である。
・本実施形態のラックシャフト8の製造方法では、ラックシャフト8が中実構造、且つ、略円柱形状であったが、本発明のラックシャフト8の形状は、これに限定されることはない。例えば、ラックシャフト8は、中空構造、且つ、略円筒形状であってもよい。また、本実施形態のラックシャフト8は、切削加工により形成されたが、上記中空構造、且つ、略円筒形状のラックシャフトでは、プレス加工により形成されてもよい。
・本実施形態のラックシャフト8の製造方法では、第3工程によるラックシャフト8への加熱後、ラックシャフト8を空冷したが、本発明は、この工程に限定されることはない。例えば、ラックシャフト8を空冷する工程はなくしてもよい。
・本実施形態のラックシャフト8の製造方法では、第3工程において、ラックシャフト8への加熱を7.8秒とし、ラックシャフト8の空冷を0.3秒とし、第4工程として、ラックシャフト8の歯面側の冷却を8秒とし、第5工程として、ラックシャフト8の背面側の冷却を8秒としたが、本発明は、これら工程の時間に限定されることはない。各工程において、ラックシャフト8が所定の温度になればよいため、加熱部11の出力や歯面側冷却部12及び背面側出力の冷却水の流量によって、これら工程の時間が変更されてもよい。
・本実施形態のラックシャフト8の製造方法では、焼入れ装置10において、背面側冷却部13a,13bを2個としたが、背面側冷却部13a,13bの個数は、これに限定されることはない。例えば、背面側冷却部13a,13bは、どちらか1個でもよい。この場合、歯面側冷却部12と対向するように、ラックシャフト8の縦方向(図2参照)の
上側に配置することが望ましい。
背面側冷却部13a,13bがどちらか1個の場合、上記実施形態とは異なりラックシャフト8の背面側の冷却において、背面側冷却部13aと背面側冷却部13bとの間で冷却水の流量にずれが生じることはないため、そうした流量のずれに起因したラックシャフト8の変形のおそれはない。しかしながら、単一の背面側冷却部(例えば、背面冷却部13a)によりラックシャフト8の背面側の冷却を行う場合において、背面側冷却部13aからの冷却水が背面側全体に対して均一に供給されるとは限らないため、ラックシャフト8の背面側の冷却にともない変形が生じる可能性は依然として残されている。例えば、ラックシャフト8の幅方向において、ラックシャフト8の中心軸よりも左側半分の部位を左側部位とし、右側半分の部位を右側部位として、背面側冷却部13aによりラックシャフト8の背面側に冷却水を噴射した際において、左側部位への冷却水の供給量が右側部位への冷却水の供給量よりも多いときには、ラックシャフト8に変形が生じる。
そして、上記変形例はこのような理由によりラックシャフト8の変形が生じる可能性を有するものであるとはいえ、ラックシャフト8の焼入れに際して、先に歯面側の冷却を行うようにしているため、背面側の冷却時に上述したような背面側のある部位とこれとは別の部位との間における冷却水の流量にずれが生じたとしても、歯面側の強度が既に十分に高められていることにより、そうした冷却水の流量のずれに起因したラックシャフト8の変形量の増大は抑制される。
また、背面側冷却部13a,13bは、3個以上であってもよい。そして、背面側冷却部13a,13bが偶数個の場合、横方向において、背面側冷却部13a,13bを対称に配置することが望ましい。また、背面側冷却部13a,13bが奇数個の場合、背面側冷却部13a,13bのうちの1個を図4(b)に示す中心線、且つ、ラックシャフト8の縦方向の上側に配置し、残りの背面側冷却部13a,13bを、横方向において、対称に配置することが望ましい。
・本実施形態のラックシャフト8の製造方法では、ステップS7において電気炉または誘導加熱装置にてラックシャフト8の焼き戻しを行ったが、この焼き戻し工程は、電気炉または誘導加熱装置にて行われるものに限定されることはない。例えば、焼入れ装置10の加熱部11にてラックシャフト8の焼き戻し工程を行ってもよい。
・本実施形態のラックシャフト8の製造方法では、ラックシャフト8は、ステアリング装置1に用いられたが、ラックシャフト8の使用用途は、これに限定されることはない。ステアリング装置以外の装置であって、回転動作を直線方向の移動に変換される機構を有するものに適用されてもよい。
1…ステアリング装置、2…操舵部、3…ステアリングシャフト、4,6…十字軸継手、5…中間シャフト、7…ピニオンシャフト、7a…ピニオン歯、8…ラックシャフト、8a…ラック歯、10…焼入れ装置、11…加熱部、11a,11b…電極、12…歯面側冷却部、13a,13b…背面側冷却部、14…タンク、15…第1電磁弁、16…第2電磁弁、17…ポンプ、18…補助タンク、19…ポンプ、20…保持装置。

Claims (6)

  1. ピニオンシャフトと噛み合う歯面を有するラックシャフトの製造方法において、
    ラックシャフトを形成する第1工程と、このラックシャフトに焼入れを行う第2工程とを備え、
    前記第2工程は、
    前記ラックシャフトの歯面を加熱する第3工程と、
    前記第3工程後に前記歯面の冷却を行う第4工程と、
    前記歯面とは反対側の面である背面を冷却水の噴射によって冷却する第5工程とを備え、
    前記第5工程の開始時は、前記第4工程の開始時よりも後である
    ことを特徴とするラックシャフトの製造方法。
  2. 請求項1に記載のラックシャフトの製造方法において、
    前記第5工程の開始時は、前記第4工程において、前記ラックシャフトの焼入れが完了した後である
    ことを特徴とするラックシャフトの製造方法。
  3. 請求項1及び請求項2のいずれかに記載のラックシャフトの製造方法において、
    前記第5工程の開始時は、前記第4工程の終了後、前記ラックシャフトの残熱に起因する復温による前記ラックシャフトの硬度の低下が開始する前である
    ことを特徴とするラックシャフトの製造方法。
  4. 請求項1に記載のラックシャフトの製造方法において、
    前記第5工程の開始時は、前記第4工程の開始時からの経過時間が3秒以上、且つ、前記第4工程の終了時からの経過時間が7秒以下の間である
    ことを特徴とするラックシャフトの製造方法。
  5. 請求項1に記載のラックシャフトの製造方法において、
    前記第5工程の開始時は、前記第4工程の開始時からの経過時間が4秒以上、且つ、前記第4工程の終了時からの経過時間が2秒以下の間である
    ことを特徴とするラックシャフトの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のラックシャフトの製造方法において、
    前記第3工程後に前記ラックシャフトを空冷し、前記ラックシャフトの空冷後に前記第4工程を開始し、
    前記第4工程は、前記歯面に冷却水を噴射する水冷工程である
    ことを特徴とするラックシャフトの製造方法。
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