JP4501578B2 - 耐疲労特性に優れた中空ドライブシャフトの製造方法 - Google Patents

耐疲労特性に優れた中空ドライブシャフトの製造方法 Download PDF

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本発明は、自動車の動力伝達系の一部を構成するドライブシャフトに係り、とくに中空ドライブシャフトの耐疲労特性の向上に関する。
自動車の動力伝達系の一部を構成するドライブシャフトは、従来は中実の丸棒から加工された中実シャフトが用いられていた。しかし、最近の自動車車体の軽量化要求から、ドライブシャフトにおいても中実材に代えて、中空材の使用が検討され、一部実用化されている。当初、中空ドライブシャフトは丸棒から機械加工により穴あけを行なって製造されていた。しかし、最近では素材として鋼管を用いることが検討されている。
しかし、中空ドライブシャフト用素材として、例えば継目無鋼管を用いた場合には、内面に残存する疵が疲労強度、衝撃強度の低下を招くという懸念があり、また、例えば電縫鋼管を用いた場合には、電縫溶接部の特性低下が懸念される。
このような問題に対し、例えば、特許文献1には、Mn、Cr、B、Mo含有量を適正範囲に調整し適正な焼入れ性を付与した鋼を用い、内面きず深さが0.25mm未満である厚肉継目無鋼管としたのち、内面を研削して幅が0.001mm以下の内面きず深さを0.15mm以下にする工程と、ズブ焼入れして硬さをHv450〜670とする工程とからなる高強度中空鋼管の製造方法が提案されている。特許文献1に記載された技術によれば、内面きずが捩り疲労破壊の起点となることは無く、所望の衝撃強度、疲労強度を確保することができ、重要保安部品としての品質保証を可能とするとしている。
また、特許文献2には、鋼材から形成されたパイプの両端に連結要素を備えた動力伝達シャフトにおいて、鋼材をC、Si、Mn、Al、Sを適正量に調整した鋼材とし、パイプを、電縫部を有し、電縫部およびその近傍が好ましくは高周波焼入れ、焼戻し処理による、硬化処理を施されてHRC45以上に高硬度化されてなるパイプとする、動力伝達シャフトが提案されている。特許文献2に記載された技術によれば、安定した捩り疲労強度を確保でき、長寿命で高信頼性のシャフトが提供できるとしている。
特開平6−128628号公報 特開2002−356742号公報
しかしながら、特許文献1、特許文献2に記載された中空ドライブシャフトでは、同じ静強度に高周波焼入れされた中実ドライブシャフトと比較して、耐疲労特性が低いという問題がある。
特許文献1にも示されているように、中実ドライブシャフトでは、高周波焼入れ処理により表面焼入れを行うと、中心部までは硬化しないため、中心部に非硬化部が存在し、外表面に大きな圧縮の残留応力が発生する。これに対し、中空ドライブシャフトで、同じように高周波焼入れ処理により表面焼入れを行うと、非硬化部が小さいか、あるいは全く形成されないために、外表面の圧縮の残留応力が小さくなる。このような外表面の残留応力の相違が、中空ドライブシャフトと中実ドライブシャフトの疲労強度の違いを生じさせていると考えられている。
また、中空ドライブシャフトで表面焼入れを行うと、強度の低い内表面の不完全焼入れ部が疲労破壊の起点になって疲労強度が向上しないという問題がある。さらには、中空ドライブシャフトの素材として電縫鋼管を用いると表面焼入れの場合板厚方向の加熱範囲を制限する必要があるため、全厚焼入れの場合のように入熱を大きくすることができない。そのため、例えば、溶接に伴う脱炭などで電縫溶接部の焼入れ性が低下している場合には、その部分で十分な硬さが得られずに、逆に疲労強度が低下することがあるという問題があった。
一般に、外表面に圧縮の残留応力を発生させるには、ショットピーニング処理が有効であることが知られ、特許文献2にも示されるように、中空ドライブシャフトの外表面に圧縮の残留応力を発生させるために、硬化処理後、ショットピーニング処理を行うことが考えられる。しかし、この方法では、ドライブシャフトの細かいピッチでかつ深い凹凸のあるスプライン部には、ショット粒が届かずにスプライン部の疲労強度向上が不十分となるという問題がある。
本発明は、このような従来技術の問題を有利に解決し、耐疲労特性に優れた中空ドライブシャフトの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した課題を達成するために、中空ドライブシャフトの外表面に大きな圧縮の残留応力を発生させる方法について、鋭意検討した。その結果、本発明者らは、中空ドライブシャフトの焼入れ処理に際しては、まず、十分に加熱して全厚、全周に亘り焼入れ硬化させておき、その後に行われる焼戻し処理を、外表面に高い圧縮の残留応力を発生させる特殊な処理とすることにより、中空ドライブシャフトの耐疲労特性を顕著に向上させることができることに思い至った。そして、本発明者らは、焼戻し処理を、焼戻し加熱温度に加熱したのち、中空ドライブシャフト(鋼管)の外表面を特殊な条件で急冷する処理とすることにより、中空ドライブシャフト(鋼管)の外表面に高い圧縮の残留応力を発生させることができることを知見し、必要な冷却条件を明確にし、本発明を完成させた。
本発明者らは、焼戻し加熱後の中空ドライブシャフト(鋼管)外表面の急冷による残留応力の発生機構として、つぎのように考えた。
冷却の初期には、外表面側が相対的に速く冷却されて、温度差を生じ、外表面側が内表面側より大きく縮むため、外表面側に引張応力が、内表面側に圧縮応力が生じる。このときはまだ冷却の初期であるために、外表面側、内表面側とも温度が高く、外表面側で引張の、内表面側で圧縮の塑性変形を容易に生じることができ、応力は緩和される。
さらに冷却が進むと、内面側の熱収縮が相対的に大きくなり、内部応力は反転して外表面側が圧縮、内表面側が引張の応力となる。この段階となると、鋼管はすでに低温となっているため、塑性変形はきわめて小さく、この内部応力は塑性変形により緩和されることなく増大し、冷却が完了した際に最大応力となり残留する。
このような考えから、外表面に圧縮の残留応力を発生させるためには、本発明者らは、焼戻し加熱温度に加熱した後、鋼管の外表面を急冷するに際し、外表面側が熱応力による塑性変形が生じなくなる温度に到達したときに、まだ内表面側の温度が熱応力による塑性変形が可能な温度域内の温度となるように冷却を制御することが肝要であることに想到した。
まず、本発明者らが行なった、本発明の基礎となった実験結果について、説明する。
C:0.35質量%の鋼管(25.4mmΦ×8mmt)に、焼入れ処理を施し、全肉厚に亘り硬化させたのち、ついで、高周波加熱により全肉厚を200〜650℃の範囲の温度に加熱し0.1s間保持したのち、外表面を急冷(水冷)する焼戻し処理を施した。得られた鋼管について、外表面側の残留応力を測定した。残留応力の測定は、日本材料学会のX線応力測定標準に準じた方法を用いた。得られた結果を、残留応力と焼戻し加熱温度との関係で図1に示す。
図1から、焼戻し加熱温度が350℃以下では、外表面に残留応力の発生は認められない。このことから、熱応力による塑性変形が生じなくなる温度は350℃であると考えられる。
つぎに、本発明者らは、外表面側が塑性変形を生じなくなる350℃となった時の内表面側の温度と発生する残留応力の関係を調査した。
C:0.35質量%の鋼管(25.4mmΦ×8mmt)に、焼入れ処理を施し、全肉厚に亘り硬化させたのち、ついで、高周波加熱により全肉厚を450℃、550℃の各温度に加熱し0.1s間保持したのち、外表面を種々の冷却条件で急冷する焼戻し処理を施した。なお、焼戻し処理の冷却に際しては、肉厚の各位置(外表面、肉厚1/4、肉厚2/4、肉厚3/4、内表面)に熱電対を設置し、各位置の温度を測定した。
得られた鋼管について、外表面側の残留応力を測定した。残留応力の測定は上記実験と同様とした。また、外径、肉厚の異なる鋼管(30.0mmΦ×8mmt、30.4mmΦ×7mmt)についても同様の実験(焼戻し加熱温度:520℃)を行なった。得られた結果を、外表面と外表面から肉厚1/4の位置の範囲の平均温度{(T0+T1)/2}が350℃になった時の外表面から肉厚1/4位置と内表面の範囲の平均温度{(T1+T2+T3+T4)/4}と、すなわち外表面側平均温度が350℃になった時の内表面側平均温度と、外表面の残留応力との関係で図2に示す。ここでは、T0:外表面温度、T1:肉厚1/4の位置の温度、T2:肉厚2/4の位置の温度、T3:肉厚3/4の位置の温度、T4:内表面温度である。
図2から、外径、肉厚の絶対値によらず、外表面側平均温度が350℃となった時に内表面側平均温度が400℃以上、好ましくは450℃以上であれば、外表面に216MPa以上の圧縮の残留応力、好ましくは440MPa以上の圧縮の残留応力が発生するという知見を得た。
つぎに、C:0.35質量%の鋼管(25.4mmΦ×8mmt)に、焼入れ処理を施し、全肉厚に亘り硬化させたのち、ついで、高周波加熱により全肉厚を450℃、550℃の各温度に加熱し0.1s間保持したのち、外表面を種々の冷却条件で急冷する焼戻し処理を施した。得られた鋼管について、外表面側の残留応力を測定するとともに、外表面の剪断応力τが490MPaとなる条件で両振り捩り疲労試験を実施し疲労寿命を求めた。疲労寿命は、亀裂が発生して、疲労試験での最大捩り角度が開始時より20%以上大きくなった時の繰り返し回数とした。
図3に、疲労寿命と外表面の圧縮残留応力との関係を示す。図3から、外表面の圧縮残留応力が216MPa以上となると疲労寿命が顕著に向上するという知見を得た。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨は、つぎのとおりである。
(1)鋼管に、所定のドライブシャフト形状に成形する成形加工を施したのち、焼入れ処理および焼戻し処理を行う中空ドライブシャフトの製造方法において、前記鋼管を、質量%で、C:0.25〜0.55%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.2〜3.0%、Al:0.1%以下を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する鋼管とし、前記焼入れ処理を、肉厚方向全域をAc変態点以上の温度に加熱し急冷する処理とし、前記焼戻し処理を、肉厚方向全域を450℃以上Ac1変態点未満の温度に加熱した後、外表面と外表面から肉厚1/4の位置までの範囲の平均温度が350℃となった時に、前記外表面から肉厚1/4の位置から内表面までの範囲の平均温度が400℃以上、好ましくは450℃以上となる肉厚方向温度勾配を生ずるように前記外表面を冷却する処理とし、外表面に216MPa以上、好ましくは440MPa以上の圧縮の残留応力を有することを特徴とする高疲労強度を有する中空ドライブシャフトの製造方法。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:2%以下、Mo:2%以下、W:2%以下、Ni:2%以下、Cu:2%以下、B:0.0050%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする中空ドライブシャフトの製造方法。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.1%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする中空ドライブシャフトの製造方法。
本発明によれば、高疲労強度を有する中空ドライブシャフトを容易にしかも安価に製造でき、自動車車体の軽量化がさらに促進され産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、中空ドライブシャフトの耐久性が増加し、中空ドライブシャフトの自動車への搭載がさらに加速されるという効果もある。
本発明で使用する鋼管は、その種類をとくに限定する必要はなく、通常の製造プロセスで製造された継目無鋼管、あるいは電縫鋼管等の溶接鋼管がいずれも好適に利用できる。
まず、本発明で使用する鋼管の組成限定理由について説明する。なお、以下、組成における質量%は単に%と記す。
本発明で使用する鋼管は、C:0.25〜0.55%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.2〜3.0%、Al:0.1%以下を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する鋼管とする。
C:0.25〜0.55%
Cは、素材の強度ならびに、ドライブシャフトの焼入れ後の強度を増加させる元素であり、目標強度を確保するために、本発明では0.25%以上含有させる。一方、0.55%を超えて含有すると、粒界脆化等焼入れ処理後の靭性が低下する。このため、Cは0.25〜0.55%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.3〜0.5%である。
Si:0.01〜1.0%
Siは、脱酸剤として作用するとともに、焼戻し時の炭化物を微細にして粒界脆化を防止する元素であり、このような効果を得るために、本発明では0.01%以上含有させる必要がある。一方、1.0%を超えて含有すると、加工性が低下し、ドライブシャフトに成形することが困難となる。このため、Siは0.01〜1.0%に限定した。なお、好ましくは0.05〜0.3%である。
Mn:0.2〜3.0%
Mnは、鋼管強度を増加させ、また鋼の焼入れ性を向上させる作用を有する元素であり、本発明では0.2%以上含有させる。一方、3.0%を超える含有は、残留オーステナイト量の増加を招き、焼戻し後の靭性を低下させる。このため、本発明では、Mnは0.2〜3.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.4〜2.0%である。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用するとともに、Nを固定し焼入れ性向上に有効な固溶Bを確保するために有用な元素であり、脱酸剤としての作用を十分に確保するためには0.05%以上含有することが望ましいが、0.1%を超えて含有しても、脱酸剤としての作用は飽和し、経済的に不利となるうえ、介在物が増加し清浄度が低下して、靭性が低下する。このため、Alは0.1%以下に限定した。なお、好ましくは0.01〜0.05%である。
上記した基本組成に加えて、さらにCr、Mo、W、Ni、Cu、Bのうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Ti、Nb、Vのうちから選ばれた1種または2種以上を選択して含有できる。
Cr:2%以下、Mo:2%以下、W:2%以下、Ni:2%以下、Cu:2%以下、B:0.0050%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Cr、Mo、W、Ni、Cu、Bは、いずれも鋼管の焼入れ性を高める作用を有する元素であり、必要に応じ選択して1種又は2種以上含有できる。
Cr、Mo、Wは、焼入れ性向上に加えて、さらに鋼管の強度を高めるために有効な元素であり、また、焼戻し軟化抵抗を向上させる元素で、本発明のような熱応力を利用したプロセスに適した元素である。このような効果は、Cr:0.05%以上、Mo:0.05%以上、W:0.05%以上の含有で顕著となるが、Cr:2%、Mo:2%、W:2%をそれぞれ超えて含有しても、これらの効果は飽和し含有量に見合う効果が期待できず経済的に不利となるうえ、加工性が低下する。このため、Cr:2%以下、Mo:2%以下、W:2%以下に限定することが好ましい。
Ni、Cuは、焼入れ性向上に加えて、さらに鋼管の靭性を向上させる作用を有する元素である。このような効果は、Ni:0.05%以上、Cu:0.05%以上の含有で顕著となるが、Ni:2%、Cu:2%をそれぞれ超えて含有しても、これらの効果は飽和し含有量に見合う効果が期待できず経済的に不利となるうえ、加工性が低下する。このため、Ni:2%以下、Cu:2%以下に限定することが好ましい。
Bは、焼入れ性向上に加えて、さらに粒界を強化して焼割れを防止する作用を有する元素である。このような効果は0.0003%以上の含有で顕著となるが、0.0050%を超えて含有しても、効果は飽和し含有量に見合う効果が期待できず経済的に不利となる。このため、Bは0.0050%以下に限定することが好ましい。
Ti:0.1%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Ti、Nb、Vは、いずれも微細な炭化物、窒化物を生成して溶接時や熱処理時の結晶粒の粗大化を抑制し、靭性を向上させる有効な元素であり、必要に応じて選択して含有できる。
Tiは、溶接時や熱処理時の結晶粒の粗大化を抑制し、靭性を向上させるとともに、Nを固定して、焼入れ性に有効な固溶Bを確保する作用や、焼戻し軟化抵抗を向上させる作用を有する元素である。このような効果は、0.01%以上の含有で顕著となるが、0.1%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、Tiは0.1%以下に限定することが好ましい。
Nb、Vは、溶接時や熱処理時の結晶粒の粗大化を抑制し、靭性を向上させるとともに、焼戻し軟化抵抗を向上させる元素であり、本発明におけるような熱応力を利用したプロセスでは有効な元素である。このような効果は、Nb:0.01%以上、V:0.01%以上の含有で顕著となるが、0.1%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、Nbは0.1%以下、Vは0.1%以下にそれぞれ限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、P:0.025%以下、S:0.02%以下、N:0.01%以下、O:0.01%以下が許容できる。
つぎに、上記した組成の鋼管を、所望のドライブシャフト形状に成形加工したのち、焼入れ処理と引き続き焼戻し処理を施す。
焼入れ処理は、肉厚方向全域をAc変態点以上の温度に加熱し急冷する処理とする。焼入れに際しては、鋼管全体で、かつ鋼管の肉厚方向全域がAc変態点以上の温度となるように均一に加熱する。焼入れ加熱温度がAc変態点未満では、その後に急冷しても硬化せず、十分な焼入れ硬さを確保することができず、耐疲労特性に優れた鋼管(ドライブシャフト)を得ることができない。なお、好ましくは850〜950℃である。
焼入れ加熱後の冷却は、ドライブシャフト形状に成形加工された鋼管の肉厚方向全域でマルテンサイト変態し硬化する程度の急冷であれば、その冷却速度はとくに限定されない。水中へ浸漬または冷却水あるいは冷却水を含むミストを噴霧する水冷、あるいは水に焼入油を含む冷却剤を用いる方法、あるいは水の替りに冷却油を用いる方法等がいずれも好適に利用できる。
ドライブシャフト形状に成形加工され、焼入れ処理を施された鋼管は、ついで、焼戻し処理を施される。本発明では、焼戻し処理は、鋼管の肉厚方向全域を450℃以上Ac1変態点未満の温度に加熱した後、外表面を冷却する処理とする。
焼戻し処理における加熱温度が450℃未満では、焼戻し後の冷却で上記した肉厚方向の温度差を生じさせることが困難となるため、所望の圧縮の残留応力が確保できない。一方、加熱温度がAc1変態点以上では、変態に伴い焼入組織が著しく軟化するため所望の強度が得られず、耐疲労特性が低下する。このため、焼戻し処理における加熱温度を450℃以上Ac1変態点未満の温度に限定した。なお、好ましくは450〜500℃である。焼戻し処理における加熱保持時間は、鋼管組成や、狙い硬さに応じて、焼戻し温度T(℃)、焼戻し時間t(h)とした場合、上記した加熱温度の範囲内で、硬さの低下ができるだけ少ないように、T(logt+20)が、9000〜12000の範囲となるように適宜選択することが好ましい。なお、加熱は肉厚方向に均一に加熱する必要はない。圧縮の残留応力を発生させるという観点からは、上記した加熱温度範囲内で、むしろ、外表面側の加熱温度が内表面側の加熱温度より低い方が有利となる。
本発明の焼戻し処理では、好ましくは上記した条件(加熱温度、保持時間)で加熱したのち、外表面を急冷する冷却を行なう。本発明では、冷却前の肉厚方向の温度分布は特に限定されない。例えば、外表面が内表面よりも温度が高かったり、その逆であっても、外表面と外表面から肉厚1/4の位置までの範囲の平均温度が350℃となった時に、外表面から肉厚1/4の位置と内表面までの範囲の平均温度が400℃以上、好ましくは450℃以上であるような肉厚方向温度勾配が発生するように外表面を急冷することができれば良い。
外表面の冷却は、水冷、油冷、強制空冷等の急冷とし、鋼管の外径、肉厚に応じて、外表面を、外表面と外表面から肉厚1/4の位置までの範囲の平均温度が350℃となった時に、前記外表面から肉厚1/4の位置から内表面までの範囲の平均温度が400℃以上、好ましくは450℃以上となる肉厚方向温度勾配を生ずるように、冷却手段を選択して冷却する。
上記したような肉厚方向温度勾配を生ずる冷却方法としては、例えば、加熱後、水槽、油槽等の冷却槽にドブ漬け(水冷、油冷)したり、あるいは高周波加熱コイルを移動または静止して加熱したのち、直ちに冷却水の吹付け、あるいは冷却水を含むミスト、あるいは冷却気体(空気)の吹付け(強制空冷)により冷却する方法がいずれも好適である。なお、予め、肉厚方向の各位置に熱電対を取り付け、所望の冷却条件になっていることを確認しておくことが望ましい。
上記したような焼戻し処理を施すことにより、外表面に、216MPa以上の圧縮の残留応力、好ましくは440MPa以上の圧縮の残留応力を発生させることができる。
表1に示す組成を有する鋼管を素材とし、これら素材鋼管に、成形加工を加えて、中空ドライブシャフトとした。素材鋼管は、表1に示す組成を有する鋼板を用いて冷間成形により造管し、電縫溶接した電縫鋼管(ERW)、またはマンネスマン−マンドレルミル方式で穿孔・延伸圧延した継目無鋼管(SML)を用いた。素材鋼管の外径、肉厚を表2に示す。
得られた中空ドライブシャフトについて、各鋼のAc変態点以上の温度である、表2に示すように850〜950℃の範囲の温度に高周波加熱したのち、水冷して全肉厚に亘り硬化させた。ついで、これら中空ドライブシャフトに、肉厚方向全域が表2に示す焼戻し加熱温度になるように加熱したのち、表2に示す冷却方法で外表面を冷却する焼戻し処理を施した。なお、焼戻し処理の冷却に際しては、肉厚方向各位置に熱電対を設置し、各位置、すなわちT0:外表面温度、T1:肉厚1/4の位置の温度、T2:肉厚2/4の位置の温度、T3:肉厚3/4の位置の温度、T4:内表面温度、の温度を測定した。表2には、外表面側の平均温度:{(T0+T1)/2}が350℃になった時の内表面側の平均温度{(T1+T2+T3+T4)/4}を示している。
得られた中空ドライブシャフトについて、外表面の残留応力を測定するとともに、外表面での剪断応力τが490MPaとなる条件で両振り捩り疲労試験を実施し、疲労寿命を求めた。疲労寿命は亀裂が発生して、疲労試験での最大捩り角度が開始時より20%以上大きくなった時の繰返し回数とした。また外表面の残留応力は、X線によって測定した。なお、参考までに内表面の残留応力をSachs法によって測定した。
なお、比較として、焼戻し加熱後の冷却を空冷とした場合を従来例とした。
得られた結果を表3に示す。
Figure 0004501578
Figure 0004501578
Figure 0004501578
Figure 0004501578
Figure 0004501578
本発明例はいずれも、従来例に比較して外表面に高い圧縮の残留応力が発生しており、その結果、疲労寿命が長くなっている。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、外表面の圧縮の残留応力は少なく、したがって短い疲労寿命となっている。
外表面の残留応力と焼戻し加熱温度との関係を示すグラフである。 外表面の残留応力と外表面側平均温度が350℃となった時の内表面側平均温度との関係を示すグラフである。 両振りねじり疲労寿命に及ぼす外表面圧縮残留応力の影響を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 鋼管に、所定のドライブシャフト形状に成形する成形加工を施したのち、焼入れ処理および焼戻し処理を行う中空ドライブシャフトの製造方法において、
    前記鋼管を、質量%で、
    C:0.25〜0.55%、 Si:0.01〜1.0%、
    Mn:0.2〜3.0%、 Al:0.1%以下
    を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する鋼管とし、
    前記焼入れ処理を、肉厚方向全域をAc変態点以上の温度に加熱し急冷する処理とし、
    前記焼戻し処理を、肉厚方向全域を450℃以上Ac1変態点未満の温度に加熱した後、外表面と外表面から肉厚1/4の位置までの範囲の平均温度が350℃となった時に、前記外表面から肉厚1/4の位置から内表面までの範囲の平均温度が400℃以上となる肉厚方向温度勾配を生ずるように前記外表面を冷却する処理とし、
    外表面に216MPa以上の圧縮の残留応力を有することを特徴とする耐疲労特性に優れた中空ドライブシャフトの製造方法。
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:2%以下、Mo:2%以下、W:2%以下、Ni:2%以下、Cu:2%以下、B:0.0050%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の中空ドライブシャフトの製造方法。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.1%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の中空ドライブシャフトの製造方法。
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