後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
工具本体と、清掃体を光コネクタに押し当てるヘッドを有し、前記工具本体から延び出た延出部であって、前記工具本体に対して移動可能に設けられた延出部と、を備え、前記ヘッドにより前記光コネクタに前記清掃体を押し付けた状態で前記工具本体を前記延出部に向かって移動させ、前記清掃体により前記光コネクタを清掃する光コネクタ清掃工具であって、前記工具本体は、本体側引掛部を有し、前記延出部は、ヘッド側引掛部を有し、前記ヘッド側引掛部と前記本体側引掛部との間に前記清掃体が掛け渡されており、前記工具本体を前記延出部に向かって移動させると、前記ヘッド側引掛部と前記本体側引掛部とが離間するとともに、前記ヘッド側引掛部と前記本体側引掛部とが離間した分の前記清掃体が前記ヘッドに供給されることを特徴とする光コネクタ清掃工具が明らかとなる。
このような光コネクタ清掃工具によれば、使用される清掃体の量を一定にすることができる。
前記光コネクタ清掃工具は、前記清掃体が前記本体側引掛部から前記ヘッド側引掛部へ送られることを制限する制限機構を更に有することが望ましい。清掃体が逆送りされることが制限されるので、ヘッド側引掛部と本体側引掛部が離間した分の清掃体がヘッドの上流側から下流側へ送り出されることになる。
前記工具本体は、前記清掃体を巻き取る巻取リールを有し、前記制限機構は、前記巻取リールが前記清掃体を巻き取る巻取方向に回転することを許容し、前記巻取リールが前記巻取方向とは逆方向に回転することを制限するラチェット機構であることが望ましい。これにより、清掃体が逆送りされることを制限しつつ、清掃体を巻取リールに巻き取ることを実現できる。
前記光コネクタ清掃工具は、前記ヘッド側引掛部と前記本体側引掛部とが近接するときに前記清掃体を巻取リールに巻き取らせる巻取機構を更に有することが望ましい。これにより、ヘッド側引掛部と本体側引掛部が近接した分の清掃体を巻取リールに巻き取ることができる。
前記巻取機構は、前記ヘッド側引掛部と前記本体側引掛部とが近接するときに前記清掃体に所定の張力を作用させることが望ましい。これにより、ヘッド側引掛部と本体側引掛部とが近接するときにヘッドの清掃体がヘッドと光コネクタとの間に挟まれていなかったとしても、ヘッドの下流側の清掃体がヘッドの上流側に逆送りされることを防止できる。
前記巻取機構は、前記工具本体と前記延出部との間の相対的な直線運動を回転運動に変換する変換機構と、前記変換機構により変換された回転運動の回転力を、摩擦部材と摩擦面との間の摩擦力により前記巻取リールに伝動する摩擦伝動機構とを備えることが望ましい。これにより、ヘッド側引掛部と本体側引掛部とが近接するときにヘッド側引掛部と本体側引掛部との間の清掃体に所定の張力を作用させることを実現できる。
前記清掃体は、テープ状であることが望ましい。このような場合に特に有効である。
また、(1)工具本体と、清掃体を光コネクタに押し当てるヘッドを有し、前記工具本体から延び出た延出部であって、前記工具本体に対して移動可能に設けられた延出部と、を備えた光コネクタ清掃工具であって、前記工具本体が本体側引掛部を有し、前記延出部がヘッド側引掛部を有し、前記ヘッド側引掛部と前記本体側引掛部との間に前記清掃体が掛け渡されている光コネクタ清掃工具を用い、前記ヘッドにより前記光コネクタに前記清掃体を押し付けること、及び、(2)前記ヘッドにより前記光コネクタに前記清掃体を押し付けた状態で前記工具本体を前記延出部に向かって移動させて、前記ヘッド側引掛部と前記本体側引掛部とを離間させるとともに、前記ヘッド側引掛部と前記本体側引掛部とが離間した分の前記清掃体を前記ヘッドに供給させ、前記清掃体により前記光コネクタを清掃することを行う光コネクタ清掃方法が明らかとなる。
このような光コネクタ清掃方法によれば、使用される清掃体の量を一定にすることができる。
===第1実施形態===
<光コネクタ清掃工具の概要>
図1Aは、第1実施形態の光コネクタ清掃工具(以下、単に「清掃工具」ということがある)の斜視図である。図1Bは、カバー5を外した状態の斜視図である。
清掃工具1は、工具本体10と、工具本体10から延び出た延出部60とを備えている。工具本体10は、カバー5(前カバー5A及び後カバー5B)によって覆われている。延出部60は、前カバー5Aの開口から延び出ており、カバー5の外部に露出している。
延出部60は、ヘッド61を有している。ヘッド61は、光コネクタの接合端面に清掃体3を押し付けるための部材である。ヘッド61は、延出部60の端部に位置しており、光コネクタに清掃体3を押し付けられるように清掃体3が外部に露出している。
なお、第1実施形態の清掃工具1は、例えばMPOコネクタの清掃に用いられる。MPOコネクタは、MT型のプラスチック多心光コネクタ(JIS,C5981)を光コネクタフェルールとして用いた光コネクタであり、光アダプタにより抜き差し自在に結合される光コネクタである。多心光コネクタを清掃対象としているため、清掃体3は、糸状ではなく、幅のあるテープ状である。但し、清掃工具1は、他の種類の光コネクタを清掃対象としても良く、清掃対象が単心光コネクタであれば清掃体3が糸状であっても良い。
以下の説明では、図1A及び図1Bに示すように、前後、左右、上下を定義する。すなわち、工具本体10から延出部60が延び出る方向(若しくは、工具本体10から延出部60が伸縮する方向)を「前後方向」とし、工具本体10から見て延出部60の側を「前」とし、逆側を「後」とする。また、工具本体10の中にある巻取リール35(図4参照、図1A及び図1Bでは不図示)の回転軸の軸方向を「左右方向」とし、前から見たときの右手側を「右」とし、逆側を「左」とする。また、前後方向及び左右方向と垂直な方向を「上下方向」とし、光コネクタを接続する光アダプタのキー溝に挿入される突部(キー74A)のある側を「上」とし、逆側を「下」とする。また、図示はしていないが、清掃体3の送り方向に従って「上流」と「下流」という用語が用いられることがある。
図2Aは、通常状態の清掃工具1の側面図である。図2Bは、プッシュ状態の清掃工具1の側面図である。図2Cは、清掃動作の説明図である。
図2Aと図2Bとを比較して理解できるように、延出部60は、工具本体10に対して、前後方向に移動可能に設けられている。言い換えると、延出部60は、工具本体10に対して前後方向に伸縮する。プッシュ状態では、通常状態よりも延出部60が工具本体10の内部へ引っ込んでいる。図2Bでは、延出部60が後側に向かって移動するように描かれているが、実際の清掃動作では、図2Cに示すように、工具本体10が延出部60に向かって前側に移動することがある。但し、清掃工具1の構造や動作の説明を簡便化するために、図2Bに示すように、延出部60を後側に向かって移動させて説明をすることがある。
清掃工具1を用いて光コネクタを清掃するとき、作業者は、カバー5越しに工具本体10を保持し、延出部60の前側のヘッド61を光アダプタに挿入して、光アダプタ内の光コネクタにヘッド61の清掃体3を押し付け、その状態で工具本体10を前側に向かって移動させる(プッシュ動作)。これにより、清掃工具1は、図2Aの通常状態から図2Bや図2Cのプッシュ状態になる。更に、作業者は、光アダプタに挿入されているヘッド61を引き出して清掃工具1を取り出すために、保持している工具本体10を後側に移動させる(プル動作)。これにより、清掃工具1は、図2Bや図2Cのプッシュ状態から図2Aの通常状態に戻る。
このように、作業者は、1回の清掃動作の中で、プッシュ動作とプル動作とを行うことになる。プッシュ動作では、工具本体10が延出部60に対して前側に移動することになる(工具本体10側から見れば、延出部60が工具本体10に向かって移動することになる)。プル動作では、工具本体10が延出部60に対して後側に移動することになる(工具本体10側から見れば、延出部60が工具本体10から離れるように移動することになる)。
作業者の行うプッシュ動作及びプル動作によって、工具本体10と延出部60とが前後方向に相対移動する。清掃工具1は、工具本体10と延出部60との間の相対移動(直線運動)を利用して、未使用の清掃体3の供給と、使用済みの清掃体3の巻き取りを行っている。
<全体構成>
図3Aは、延出部60の筒体71と工具本体10の右ハウジング11を外した斜視図である。図3Bは、工具本体10と延出部60とを分離した斜視図である。
工具本体10と延出部60は、ラックアンドピニオン機構81によって連結されている。ラックアンドピニオン機構81は、工具本体10と延出部60との間の相対的な直線運動を回転運動に変換する変換機構であり、円形歯車であるピニオン52と、直線歯車であるラック67Bとを有する。ピニオン52は工具本体10の側に設けられており、ラック67Bは延出部60の側に設けられている。
工具本体10と延出部60との間にはコイルバネ7が配置されている。コイルバネ7は、工具本体10に対して延出部60を前側に付勢するためのバネである。コイルバネ7は、工具本体10と筒体71との間で圧縮された状態で配置されている。コイルバネ7の後端は、工具本体10の前側のバネ押さえ面20(工具本体10から延出部60(詳しくは延出部60の胴体部65:図5参照)が前側に延び出るために設けられた工具本体10の開口の周囲の前面)と接触している。コイルバネ7の前端は、筒体71の内壁と接触している。これにより、コイルバネ7は、工具本体10と延出部60を離間させる方向への反発力を生じさせている。言い換えると、コイルバネ7は、工具本体10に対して延出部60(詳しくは筒体71)を常に前側へ押している。コイルバネ7の反発力によって、プル動作時に清掃工具1がプッシュ状態から通常動作に戻ることができる。
・工具本体10
図4は、工具本体10の分解斜視図である。
工具本体10は、右ハウジング11と、左ハウジング12と、供給リール31と、巻取リール35と、ガイド筒41とを有する。
右ハウジング11及び左ハウジング12は、工具本体10の他の構成要素を左右から覆うためのハウジングである。左ハウジング12には、供給リール31を回転可能に支持する供給リール支持軸13と、巻取リール35を回転可能に支持する巻取リール支持軸14と、ラチェット爪45の軸穴と勘合するラチェット爪軸15とが形成されている。また、左ハウジング12には、ガイド筒41を回転可能に支持するガイド軸16として、供給側ガイド軸16Aと巻取側ガイド軸16Bとが形成されている。右ハウジング11及び左ハウジング12は樹脂製であり、左ハウジング12には供給リール支持軸13、巻取リール支持軸14、ラチェット爪軸15及びガイド軸16が一体的に形成されている。
右ハウジング11及び左ハウジング12には、係止爪17がそれぞれ形成されている。係止爪17は、供給リール31の左右の側面に放射状に設けられた係合溝32に係合することによって、供給リール31の空回りを抑制する。
また、右ハウジング11及び左ハウジング12には、移動制限窓18がそれぞれ形成されている。移動制限窓18の前縁18Aは、通常状態で延出部60(詳しくは、延出部60の支持部材63の肩部66:図5参照)と接触する接触面になっており、通常状態での工具本体10と延出部60との位置関係を規定している。また、移動制限窓18の後縁18Bは、プッシュ状態で延出部60(詳しくは、延出部60の支持部材63の肩部66)と接触する接触面になっており、プッシュ状態での工具本体10と延出部60との位置関係を規定している。言い換えると、移動制限窓18によって、工具本体10に対する延出部60の移動範囲が規定されている。
右ハウジング11及び左ハウジング12の内側には、腕収容部19がそれぞれ形成されている。腕収容部19は、ラック67Bの形成された延出部60の腕部67(図5参照)を前後方向に移動可能に収容するための部位である。
また、右ハウジング11及び左ハウジング12を組み合わせたとき、延出部60(詳しくは、延出部60の支持部材63の胴体部65:図5参照)が前側に延び出るための開口が前側に形成される。この開口の周囲の前面は、延出部60を前方に付勢するためのコイルバネ7(図5参照)の後端のバネ押さえ面20になっている。
供給リール31は、清掃体3を供給するためのリール(円筒状の巻き枠)である。供給リール31には、未使用の清掃体3が巻かれている。供給リール31は、左ハウジング12の供給リール支持軸13によって回転可能に支持されている。供給リール31から清掃体3が供給されると、供給リール31が供給リール支持軸13を中心に回転することになる。供給リール31の左右の側面には係合溝32が設けられており、右ハウジング11及び左ハウジング12の係止爪17によって供給リール31の空回りが抑制されている。
巻取リール35は、清掃体3を巻き取るためのリールである。巻取リール35によって、使用済みの清掃体3が巻き取られることになる。巻取リール35は、左ハウジング12の巻取リール支持軸14によって回転可能に支持されている。巻取リール35が巻取リール支持軸14を中心に回転することによって、巻取リール35に清掃体3が巻き取られることになる。
巻取リール35の左右の側面には、外環部36及び内環部37が設けられている。外環部36及び内環部37は、巻取リール35の側面から外側に向かって突出して形成された円環状の部位であり、巻取リール35の軸穴を囲むように、軸穴と同心円状に形成されている。外環部36の内周面には、ラチェット機構82を構成するラチェット歯車36Aが形成されている。内環部37の内周面は、摩擦伝動機構84を構成するための摩擦面37A(スリップ面)となる。摩擦伝動機構84については、後述する。
ガイド筒41は、清掃体3を案内するための筒状の部材である。工具本体10は、供給側ガイド筒41A及び巻取側ガイド筒41Bの2つのガイド筒41を有するが、これ以外のガイド筒を有していても良い。供給側ガイド筒41Aは、供給側ガイド軸16Aによって回転可能に支持されている。供給リール31から供給された清掃体3は、供給側ガイド筒41Aによって延出部60のヘッド61に向かって案内されることになる。巻取側ガイド筒41Bは、巻取側ガイド軸16Bによって回転可能に支持されている。使用済みの清掃体3は、巻取側ガイド筒41Bによって巻取リール35に向かって案内されることになる。
なお、回転可能なガイド筒41の代わりに、左ハウジング12に円筒状のガイドを一体的に形成しても良い。但し、回転可能なガイド筒41を設けることによって、清掃体3を円滑に送り出すことができる。
更に、工具本体10は、本体側引掛部42と、一対のラチェット爪45と、一対の伝動車51とを有する。
本体側引掛部42は、ヘッド側引掛部68(後述)とともに定量送出し機構83を構成する部材である。清掃体3は、本体側引掛部42に引っ掛けられて、本体側引掛部42とヘッド側引掛部68との間で掛け渡されることになる(図7A〜図7C参照)。本体側引掛部42は、本体側回転筒42Aと本体側ピン42Bとを有する。本体側回転筒42Aは、前述のガイド筒41のような筒状の部材であり、本体側ピン42Bによって回転可能に支持されている。本体側ピン42Bは、右ハウジング11及び左ハウジング12によって挟持され、前後方向及び上下方向に移動しないように固定されている。なお、本体側ピン42Bが、前述のガイド軸16のように左ハウジング12に一体的に形成されていても良い。本体側引掛部42が構成する定量送出し機構83については、後述する。
ラチェット爪45は、ラチェット歯車36Aとともにラチェット機構82を構成する部材である。ラチェット爪45は、巻取リール35の左右のそれぞれの側面に対向して設けられており、巻取リール35の外環部36と内環部37との間に配置されている。右ハウジング11又は左ハウジング12に設けられたラチェット爪軸15にラチェット爪45の軸穴が嵌められることによって、ラチェット爪45が右ハウジング11及び左ハウジング12に取り付けられている。ラチェット爪45のバネ部45Aの端部が右ハウジング11及び左ハウジング12から付勢されることによって、ラチェット爪45がラチェット歯車36Aに噛み合う方向に付勢されている。
なお、ラチェット機構82は、巻取リール35が清掃体3を巻き取る巻取方向に回転することを許容し、巻取リール35が巻取方向とは逆方向に回転することを制限する制限機構である。ラチェット爪45がラチェット歯車36Aに噛み合うことによって、巻取リール35の回転方向が一方向(巻取方向)になるように制限されている。これにより、清掃体3が弛む方向に巻取リール35が回転すること(巻取リール35が巻取方向と逆方向に回転すること)が防止されている。
伝動車51は、ピニオン52と摩擦板53とを有する回転部材である。伝動車51は、巻取リール35の内環部37の摩擦面37A(内周面)に嵌められて配置されている。伝動車51は、左ハウジング12の巻取リール支持軸14に回転可能に支持されている。このため、伝動車51は、巻取リール35と同軸で回転可能である。
伝動車51のピニオン52は、ラックアンドピニオン機構81を構成する円形歯車である。ピニオン52がラック67Bから力を受けることによって、伝動車51が回転する。ピニオン52は、延出部60のラック67B(図5参照)と連結できるように、巻取リール35の外環部36及び内環部37よりも外側に突出している。
伝動車51の摩擦板53は、巻取リール35の内環部37の摩擦面37Aとともに摩擦伝動機構84を構成する。摩擦板53は、巻取リール35の内環部37の摩擦面37Aに接触し、摩擦力によって巻取リール35に回転力を伝動するための摩擦部材である。摩擦板53は、板バネとしての機能も有する。摩擦板53のバネ力により、摩擦板53と摩擦面37Aとの間に摩擦力が作用する。
2つの摩擦板53が軸穴のまわりに回転対称に設けられており、それぞれの摩擦板53の中央部を軸穴の方へ弾性変形させた状態で、伝動車51が巻取リール35の内環部37の摩擦面37Aに嵌められて配置されている。これにより、摩擦板53と巻取リール35の内環部37の摩擦面37Aとの接触部分に摩擦力が働くことになる。なお、伝動車51の摩擦板53は、2以上であっても良い。2以上の摩擦板53を軸穴のまわりに回転対称に設けることにより、それぞれの摩擦板53に均等に摩擦力が働くことになる。伝動車51が構成する摩擦伝動機構84の動作については、後述する。
更に、工具本体10の右ハウジング11及び左ハウジング12の前側上部には、それぞれカンチレバーガイド91及び衝突面92が形成されている。カンチレバーガイド91及び衝突面92は、延出部60のカンチレバー93(後述)とともに衝突音発生機構90を構成する。カンチレバーガイド91は、清掃工具1のプッシュ動作及びプル動作を行う際に、後述するカンチレバー93が前後方向及び上下方向へ移動するのをガイドする。カンチレバーガイド91は右ハウジング11及び左ハウジング12でそれぞれ左右方向の外側から内側に突出した略平行四辺形状の部材である。衝突面92は、プッシュ動作が終了した際(プッシュ状態になったとき)に、カンチレバー93が衝突することによって衝突音を発生させるための壁面である。衝突面92は各ハウジングの上方部から前方側に向かって斜め下方向に伸びる板状の部材である。衝突面92の大きさや設置角度は、発生させるべき衝突音の大きさに応じて決定される。カンチレバーガイド91及び衝突面92が構成する衝突音発生機構90については後述する。
・延出部60
図5は、延出部60の分解斜視図である。図6Aは、延出部60のヘッド61近傍の断面図である。図6Bは、清掃時のヘッド61近傍の断面図である。
延出部60は、ヘッド61と、押圧バネ62と、支持部材63と、筒体71とを有する。
ヘッド61は、清掃体3を光コネクタに押し当てるための部材である。ヘッド61の前側端面は、光コネクタに清掃体3を押し当てるための押圧面61Aになっている。押圧面61Aの上側から下側に清掃体3が巻き掛けられている(図1A参照)。ヘッド61の押圧面61Aでは、未使用の清掃体3が上側から供給され、使用済みの清掃体3が下側へ送り出されることになる。押圧面61Aの後側には傾動バネ61Bが形成されている。傾動バネ61Bは、弾性変形することによって、光コネクタの接合端面の傾きに応じて押圧面61Aを傾動させる。ヘッド61の後側には一対の突出部61Cが形成されている。突出部61Cは、左右対称に外側に向かって突出した部位である。
押圧バネ62は、ヘッド61と支持部材63との間に配置され、支持部材63に対してヘッド61を前側に付勢するバネである。押圧バネ62の前端は、ヘッド61の押圧面61Aの裏面を前側に付勢している。光コネクタからの押圧力によってヘッド61が後側への力を受けると、押圧バネ62が弾性変形し、ヘッド61が支持部材63に対して後側にスライドする。
支持部材63は、ヘッド61を前後方向に移動可能に支持する部材である。支持部材63の前側には一対のガイド窓64が設けられている。ガイド窓64は、ヘッド61を前後方向に案内するための窓である。ガイド窓64の中には、ヘッド61の突出部61Cが配置されている。ガイド窓64の前縁は、押圧バネ62によって付勢されたヘッド61が前側から抜け落ちないように、ヘッド61の突出部61Cを係止する。
支持部材63の中央部には、胴体部65が形成されている。胴体部65は前後方向に長い部位である。胴体部65の後方は工具本体10の内部に配置されており、胴体部65の前方は、右ハウジング11及び左ハウジング12の前側に形成される開口から延び出るように配置される。
胴体部65の上面は、工具本体10から供給される清掃体3をヘッド61まで案内するための案内面になっている。胴体部65の下面は、ヘッド61で使用済みの清掃体3をヘッド側引掛部68(後述)まで案内するための案内面になっている。また、胴体部65は、コイルバネ7(図3A参照)を貫通しており、コイルバネ7を支持する機能も有する。
支持部材63の胴体部65の後側には、一対の肩部66が形成されている。肩部66は、胴体部65の左右から外側に向かって突出して形成されており、右ハウジング11又は左ハウジング12の移動制限窓18(図4参照)の中に配置される。肩部66の前面66Aは、通常状態で工具本体10の移動制限窓18の前縁18Aと接触する接触面になっている。肩部66の後面66Bは、プッシュ状態で工具本体10の移動制限窓18の後縁18Bと接触する接触面になっている。
一対の肩部66のそれぞれの外側の側面には、外側に向かって突起66Cが形成されている。肩部66が右ハウジング11又は左ハウジング12の移動制限窓18の中に配置されていると、肩部66の突起66Cは、移動制限窓18から外側に向かって突出している。移動制限窓18から突出した突起66Cが、筒体71の取り付け窓76Aに嵌め込まれることによって、筒体71が支持部材63に取り付けられることになる。筒体71の取り付け窓76Aに突起66Cを嵌め込みやすいようにするため、突起66Cの前側には傾斜面が形成されている。なお、筒体71はコイルバネ7によって常に前側への力を受けているが、支持部材63の肩部66の突起66Cが筒体71の取り付け窓76Aの後縁と接触しているため、筒体71が支持部材63から前側に抜け落ちることなく、筒体71と支持部材63との位置関係が一定に保たれている。
一対の肩部66は隙間を空けて左右方向に対向して配置されている。肩部66の間の隙間は、ヘッド側引掛部68を構成する回転筒68Aを収容するための収容部を構成している。また、肩部66の間の隙間は、清掃体3の経路にもなっている。
それぞれの肩部66の下側には、後側に延びる腕部67が形成されている。腕部67は、右ハウジング11又は左ハウジング12の腕収容部19に収容される。それぞれの腕部67の前側にはピン穴67Aが形成されており、それぞれの腕部67の後側にはラック67Bが形成されている。一対の腕部67の前側(付け根)も、肩部66と同様に、隙間を空けて左右方向に対向している。腕部67の前側の隙間も、回転筒68Aを収容するための収容部を構成している。腕部67の後側は、前側よりも薄肉化されており、前側よりも間隔が広がっている。これは、腕部67の前側の間隔を清掃体3の幅に合わせ、腕部67の後側の間隔を巻取リール35の幅に合わせているためである。ただし、腕部67の前側及び後側における厚さや間隔は、設計に応じて適宜変更可能である。例えば、後側の間隔が前側の間隔よりも狭い構成であってもよい。一対のラック67Bの間に、工具本体10の巻取リール35が配置される。一対のラック67Bは、巻取リール35の外環部36及び内環部37よりも外側に配置されており、巻取リール35の外環部36及び内環部37から外側に突出しているピニオン52に連結される。
支持部材63にはヘッド側引掛部68が設けられている。これにより、延出部60はヘッド側引掛部68を有している。ヘッド側引掛部68は、本体側引掛部42とともに定量送出し機構83を構成する部材である。清掃体3は、ヘッド側引掛部68に引っ掛けられて、ヘッド側引掛部68と工具本体10の本体側引掛部42との間で掛け渡されることになる(図7A〜図7C参照)。
ヘッド側引掛部68は、本体側引掛部42よりも後側に配置されている。このため、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42との間隔は、通常状態からプッシュ状態になるときに離間し、プッシュ状態から通常状態になるときに近接する。
ヘッド側引掛部68は、回転筒68Aとピン68Bとを有する。回転筒68Aは、前述のガイド筒41のような筒状の部材であり、ピン68Bによって回転可能に支持されている。回転筒68Aは、一対の肩部66の間の隙間と一対の腕部67の間の隙間とによって形成された収容部に収容されている。回転筒68Aは、一対の肩部66及び一対の腕部67によって左右から挟まれて配置されており、左右への移動が制限されている。ピン68Bは、腕部67のピン穴67Aから抜け落ちないように、右ハウジング11及び左ハウジング12の間に挟まれて配置されている。ヘッド側引掛部68が構成する定量送出し機構83については、後述する。
筒体71は、延出部60の外側を覆う筒状の部材である。筒体71は、支持部材63の上面及び下面に案内される清掃体3を覆う機能も有している。
筒体71の前側にある前側開口72からは、ヘッド61が突出して露出している。光コネクタからの押圧力によってヘッド61が後側へスライドすると、筒体71が、前側開口72の周囲において、光コネクタのハウジングから後側へ力を受ける(図6B参照)。この力によって、延出部60が工具本体10に対して後側に移動することになる。
筒体71の後側にある後側開口73からは、支持部材63の肩部66及び腕部67が後側に突出している。但し、後側開口73から突出した肩部66及び腕部67は、工具本体10の右ハウジング11及び左ハウジング12の内部に収容されており、外部に露出しているわけではない。
筒体71の前側の先端部74は、光アダプタのコネクタ収容穴に挿入して位置決めされるように形成されている。先端部74の上面には、光アダプタの内部に形成されているキー溝に挿入されるキー74A(突部)が形成されている。先端部74の左右の側面には、前後方向に沿った凹溝74Bが形成されている。凹溝74Bは、光アダプタの内壁に形成されている弾性係合片との干渉を避けるための部位である。先端部74の内壁74Cは、ヘッド61を前後方向に移動可能に案内する案内面になっている。
筒体71の中央部にはテーパ部75が形成されており、テーパ部75の後側は、テーパ部75の前側よりも外径及び内径が大きくなっている。筒体71のテーパ部75よりも後側には、コイルバネ7が配置されている。
筒体71の後側の左右の側面には、一対の板部76が形成されている。筒体71の板部76は、工具本体10の右ハウジング11や左ハウジング12よりも外側に配置される。板部76は、筒体71から後側に突出するように形成されており、突出した部分に取り付け窓76Aが形成されている。この取り付け窓76Aには、右ハウジング11又は左ハウジング12の移動制限窓18から突出した突起66C(支持部材63の突起66C)が嵌め込まれる。
また、筒体71の後側上部には、カンチレバー93が形成されている。カンチレバー93は、上記のカンチレバーガイド91及び衝突面92とともに衝突音発生機構90を構成する。そして、カンチレバー93は、清掃工具1のプッシュ動作を行う際に、工具本体10の右ハウジング11及び左ハウジング12に設けられた衝突面92と衝突することにより衝突音を発生させる。カンチレバー93は前側を支持されて後側に張出した板状の部材である梁部93Aと、梁部93Aの端部(後端)に左右方向に突出するように設けられた丸棒状の部材である衝突部93Bとを有する。衝突音発生機構90によって衝突音を発生させる動作の詳細については後で説明する。
<定量送出し機構83>
本実施形態の清掃工具1は、工具本体10の本体側引掛部42と、延出部60のヘッド側引掛部68とによって、定量送出し機構83が構成されている。定量送出し機構83は、ヘッド61に供給する清掃体3の量を一定にする機構である。
図7A〜図7Cは、定量送出し機構83の動作の説明図である。図7Aは、プッシュ動作前の通常状態の説明図である。図7Bは、プッシュ状態における定量送出し機構83の説明図である。図7Cは、プル動作後の通常状態の説明図である。図中において清掃体3の経路を太線で示している。
供給リール31から供給された清掃体3は、供給側ガイド筒41Aによって工具本体10から延出部60に案内されている。延出部60に案内された清掃体3は、ヘッド61の押圧面61Aにおいて上側から下側に巻き掛けられるとともに、延出部60のヘッド側引掛部68に引っ掛けられることによって、ヘッド61とヘッド側引掛部68との間に掛け渡されている(右から見たとき、S字状に掛け渡されている)。また、清掃体3は、延出部60のヘッド側引掛部68に引っ掛けられるとともに、工具本体10の本体側引掛部42に引っ掛けられることによって、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42との間に掛け渡されている(右から見たとき、逆S字状に掛け渡されている)。そして、清掃体3は、巻取側ガイド筒41Bによって巻取リール35に案内され、巻取リール35に巻き取られている。
まず、プッシュ動作によって清掃工具1が通常状態(図7A参照)からプッシュ状態(図7B参照)になるときの定量送出し機構83の動作について説明する。
プッシュ動作では、ヘッド61により清掃体3を光コネクタに押し付けた状態で、工具本体10が延出部60に対して前側に移動する。延出部60のヘッド側引掛部68が工具本体10の本体側引掛部42よりも後側に配置されているため、プッシュ動作では、延出部60に対する工具本体10の移動量の分だけヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が離間する。
ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42との間には清掃体3が掛け渡されているため、ヘッド61から本体側引掛部42までの間の清掃体3の長さは、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が離間した分(すなわち、延出部60に対する工具本体10の移動量の分)だけ長くする必要がある。言い換えると、ヘッド61より下流側の清掃体3の長さは、移動量の分だけ長くする必要がある。但し、巻取リール35はラチェット機構82によって巻取方向とは逆方向に回転することが制限されており、清掃体3が本体側引掛部42からヘッド側引掛部68へ送られること(清掃体3が逆送りされること)が制限されているため、長くなる分の清掃体3を巻取リール35から供給することはできない。このため、ヘッド61の上流側から下流側へ、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が離間した分(すなわち、延出部60に対する工具本体10の移動量の分)の清掃体3が送り出されることになる。つまり、延出部60に対する工具本体10の移動量の分の未使用の清掃体3がヘッド61に供給され、延出部60に対する工具本体10の移動量の分の使用済みの清掃体3がヘッド61から送り出される。
一方、供給側ガイド筒41Aからヘッド61までの間の距離は、延出部60に対する工具本体10の移動量の分だけ近接する。この結果、供給側ガイド筒41Aからヘッド61までの間の清掃体3の長さ(若しくは、供給リール31からヘッド61までの間の清掃体3の長さ)は、移動量の分だけ短くなる。言い換えると、ヘッド61より上流側の清掃体3の長さは、移動量の分だけ短くなる。このため、この分の清掃体3がヘッド61の下流側に送り出されることになる。
言い換えると、プッシュ動作のとき、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42との間には清掃体3が掛け渡されている状態でヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が離間するため、ヘッド61よりも下流側の清掃体3の張力が高くなる。一方、プッシュ動作のとき、ヘッド61よりも上流側の清掃体3の張力は低くなる。このため、ヘッド61の上流側と下流側の張力差によって、ヘッド61の上流側の清掃体3がヘッド61の下流側に送り出されることになる。
なお、プッシュ動作時には、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42との間の清掃体3に働く張力によって、巻取リール35に巻取方向とは逆方向の力が働くが、ラチェット機構82の作用により巻取リール35は回転しない。また、プッシュ動作時には、ヘッド61の上流側の清掃体3がヘッド61の下流側に移動するだけなので、供給リール31も回転しない。
次に、プル動作によって清掃工具1がプッシュ状態(図7B参照)から通常状態(図7C参照)になるときの定量送出し機構83の動作について説明する。
プル動作では、工具本体10が延出部60に対して後側に移動する。延出部60のヘッド側引掛部68が工具本体10の本体側引掛部42よりも後側に配置されているため、プル動作では、延出部60に対する工具本体10の移動量の分だけヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が近接する。
ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42との間には清掃体3が掛け渡されているため、ヘッド61から本体側引掛部42までの間の清掃体3の長さは、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が近接した分(すなわち、延出部60に対する工具本体10の移動量の分)の余剰が生じる。一方、プル動作では、巻取リール35が巻取方向に回転することになる(後述)。このため、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が近接した分(すなわち、延出部60に対する工具本体10の移動量の分)の清掃体3は、巻取リール35によって巻き取られることになる。
一方、供給側ガイド筒41Aからヘッド61までの間の距離は、延出部60に対する工具本体10の移動量の分だけ離間する。このため、供給側ガイド筒41Aからヘッド61までの間の清掃体3の長さ(若しくは、供給リール31からヘッド61までの間の清掃体3の長さ)は、移動量の分だけ長くする必要がある。但し、通常状態に戻る前までは、ヘッド61の清掃体3はヘッド61と光コネクタとの間に挟まれており、ヘッド61の下流側の清掃体3がヘッド61の上流側に逆送りされ難い状態になっている。このため、延出部60に対する工具本体10の移動量の分の清掃体3が供給リール31から供給されることになる。つまり、延出部60に対する工具本体10の移動量の分の清掃体3が供給リール31から引っ張り出されることになる。
なお、プル動作のとき、摩擦伝動機構84(及びラックアンドピニオン機構81)によって清掃体3に所定の張力が作用するため(後述)、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が近接しても、ヘッド61よりも下流側の清掃体3の張力は低下せず、所定の張力に維持されている。このため、仮にヘッド61の清掃体3がヘッド61と光コネクタとの間に挟まれていなかったとしても(仮に空の清掃動作が行われても)、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が近接するときに、ヘッド61の下流側の清掃体3がヘッド61の上流側に逆送りされることはない。
上記の通り、定量送出し機構83は、工具本体10に設けられた本体側引掛部42と、延出部60に設けられたヘッド側引掛部68とから構成されている。本体側引掛部42とヘッド側引掛部68との間に清掃体3が掛け渡されており、プッシュ動作時の工具本体10と延出部60との間の相対移動(直線運動)によって本体側引掛部42とヘッド側引掛部68とが離間することにより、その離間した分の清掃体3がヘッド61の上流側から下流側に送り出される。これにより、巻取リール35に巻き取られている清掃体3の外径に関わらず、ヘッド61に供給される清掃体3の量が一定になる。
また、上記の清掃工具1は、ラチェット機構82によって、清掃体3が本体側引掛部42からヘッド側引掛部68へ送られること(清掃体3が逆送りされること)を制限している。これにより、本体側引掛部42とヘッド側引掛部68とが離間するときに、ヘッド61の上流側から下流側へ、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が離間した分(すなわち、延出部60に対する工具本体10の移動量の分)の清掃体3が送り出されることになる。
<摩擦伝動機構84>
本実施形態の清掃工具1は、伝動車51の摩擦板53と、巻取リール35の内環部37の摩擦面37Aとにより摩擦伝動機構84が構成されている。摩擦伝動機構84は、摩擦力によって巻取リール35に回転力を伝動する機構である。摩擦伝動機構84は、摩擦板53と摩擦面37Aとの間で滑りが生じると、それ以上の回転力を巻取リール35に伝動できなくなる。このため、摩擦伝動機構84は、トルクリミッターとしての機能を有する。また、摩擦伝動機構84は、ラックアンドピニオン機構81とともに、清掃体3を巻取リール35に巻き取らせる巻取機構を構成する。
図8A及び図8Bは、摩擦伝動機構84の動作の説明図である。図8Aは、プッシュ動作時の説明図である。図8Bは、プル動作時の説明図である。図中の巻取リール35の巻取方向は、反時計回りである。なお、巻取リール35は、ラチェット機構82によって、反時計回り(巻取方向)には回転できるが、時計回りに回転することは制限(禁止)されている。
まず、プッシュ動作時の摩擦伝動機構84の動作について説明する(図8A参照)。
プッシュ動作では、工具本体10が延出部60に対して前側に移動する。延出部60のラック67Bがピニオン52に対して後側に移動するため、この直線運動は、ラックアンドピニオン機構81によって、図中の時計回りの回転運動(巻取方向とは逆方向に巻取リール35を回転させる方向の回転運動)に変換される。つまり、伝動車51は、ピニオン52から図中の時計回りの回転力を受けることになる。
伝動車51は、ピニオン52から受けた回転力を、摩擦板53と摩擦面37Aとの間の摩擦力により巻取リール35に伝動する。但し、巻取リール35は、摩擦面37Aを介して時計回りの回転力を受けても、ラチェット機構82によって時計回りに回転することができない。このため、摩擦板53と摩擦面37Aとの間に滑りが生じ、伝動車51は時計回りに空回りすることになる。
なお、伝動車51が時計回りに空回りすることによって、延出部60のラック67Bがピニオン52に対して後側に移動することができる。このため、ラチェット機構82が巻取リール35の回転を制限していても、工具本体10は延出部60に対して前側に移動することができる。
次に、プル動作時の摩擦伝動機構84の動作について説明する(図8B参照)。
プル動作では、工具本体10が延出部60に対して後側に移動する。延出部60のラック67Bがピニオン52に対して前側に移動するため、この直線運動は、ラックアンドピニオン機構81によって、図中の反時計回りの回転運動(巻取リール35を巻取方向に回転させる方向の回転運動)に変換される。つまり、伝動車51は、ピニオン52から図中の反時計回りの回転力を受けることになる。
伝動車51は、ピニオン52から受けた反時計回りの回転力を、摩擦板53と摩擦面37Aとの間の摩擦力により巻取リール35に伝動する。ラチェット機構82は反時計回りへの巻取リール35の回転を許容しているため、巻取リール35は、摩擦面37Aを介して受けた摩擦力により、反時計回り(巻取方向)に回転する。これにより、清掃体3が巻取リール35に巻き取られることになる。
巻取リール35が清掃体3を巻き取ることによって、清掃体3に張力が作用する。清掃体3の張力は、時計回りに回転させる方向の回転力を巻取リール35に与えることになる。清掃体3の張力により巻取リール35が受ける回転力は、摩擦力により巻取リール35が受ける回転力とは逆方向である。そして、清掃体3の張力により巻取リール35が受ける回転力が、摩擦力により巻取リール35が受ける回転力を超えると(摩擦伝動機構84で伝動可能な回転力を超えると)、摩擦板53と摩擦面37Aとの間に滑りが生じ、伝動車51は反時計回りに空回りすることになる。伝動車51が空回りした分だけ巻取リール35の回転量(回転角度)が減るので、巻取リール35が巻き取る清掃体3の量が減り、清掃体3に作用する張力も抑制される。
ところで、清掃工具1の使用回数が増えると、巻取リール35に巻き取られた清掃体3の外径が大きくなる。清掃体3の外径が大きくなると、巻取リール35の回転量(回転角度)が同じでも、回転リールに巻き取られる清掃体3の量が多くなってしまう。このため、一定の回転量で巻取リール35を回転させて清掃体3を巻き取る構造では、巻取リール35の外径が大きいほど、1回の清掃動作で使用される清掃体3の量が多くなってしまう。
これに対し、本実施形態では、巻取リール35の清掃体3の外径が大きくなっても、1回の清掃動作に使用される清掃体3の量は、定量送出し機構83によって一定に制限されている(図7A〜図7C参照)。このため、本実施形態では、巻取リール35の清掃体3の外径が大きくなっても、プル動作時の伝動車51の空回り量が増え、巻取リール35の回転量(回転角度)が減り、巻取リール35に巻き取られる清掃体3は一定量に制限される。したがって、清掃工具1の使用回数が増えても、1回の清掃動作で使用される清掃体3の量が一定に維持される。
また、本実施形態では、プル動作のとき、摩擦伝動機構84によって清掃体3に所定の張力(摩擦板53と摩擦面37Aとの間で滑りを生じさせる程度の張力)が作用するため、定量送出し機構83のヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が近接しても、ヘッド61よりも下流側の清掃体3の張力は低下せず、所定の張力に維持されている。(この結果、既に説明したように、仮にヘッド61の清掃体3がヘッド61と光コネクタとの間に挟まれていなかったとしても、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が近接するときに、ヘッド61の下流側の清掃体3がヘッド61の上流側に逆送りされることはない。)
<衝突音発生機構90>
衝突音発生機構90によって衝突音を発生させる動作について説明する。本実施形態では、既に説明したように、プッシュ動作及びプル動作を行う毎に清掃体3が一定量ずつヘッド61に供給される。したがって、光コネクタの清掃時において清掃体3を安定的に供給するためには、プッシュ動作、プル動作がそれぞれ正確に行われることが重要である。
そこで、清掃工具1では、プッシュ動作が終了したときに所定の音(衝突音)を発生させ、プッシュ動作が正常に終了したことを作業者が確認できるようにしている。衝突音は、カンチレバーガイド91、衝突面92、及びカンチレバー93からなる衝突音発生機構90によって発生させることができる。
図9Aは、プッシュ動作前における衝突音発生機構90の様子を表す俯瞰図である。図9Bは、プッシュ状態における衝突音発生機構90の様子を表す俯瞰図である。図10A〜図10Dは、プッシュ動作及びプル動作を行う際の衝突音発生機構90の動作を時系列順に説明する側面図である。
プッシュ動作前の状態において、カンチレバー93はカンチレバーガイド91(及び衝突面92)の前方に位置し、両者は接触していない(図9A及び図10A)。この状態からプッシュ動作が開始されると、カンチレバー93は延出部60とともに本体部10に対して後側に移動する。そして、カンチレバー93の衝突部93Bは、カンチレバーガイド91の上面側と接触する。カンチレバーガイド91の上面は所定の角度で傾斜したガイド上面91Aと、ガイド上面Aよりも小さい角度で傾斜した(若しくは傾斜していない)ガイド上面91Bとが形成されている。なお、ガイド上面91Aの先端部の上下方向位置は、カンチレバー93の衝突部93Bの上下方向位置よりも低くなるように配置されている。これにより、プッシュ動作時において、カンチレバー93の衝突部93Bはカンチレバーガイド91の下面側(図10Aで91D)ではなく上面側(図10Aで91A)と接触することとなる。
カンチレバー93の衝突部93Bは、ガイド上面91Aに沿って後方側に移動しつつ上方向に変位する。このときカンチレバー93の梁部93Aは前側を支持された片持ち梁のような状態であるため、カンチレバー93は上方向にたわむ(しなる)ように変形する(図10B)。
なお、図9A及び図9Bに示されるように、カンチレバー93の衝突部93Bは左右方向に突出し、その突出した部分がカンチレバーガイド91によって支持される。言い換えると、カンチレバー93が前後方向に移動する際には、カンチレバー93の左右方向の両端がカンチレバーガイド91によって支持された状態となる。両端が支持された状態で移動するため、カンチレバー93の動作が安定する。また、移動の際、カンチレバーガイド91と梁部93Aとは接触しないため、プッシュ動作及びプル動作を通して、カンチレバーガイド91によってカンチレバー93の移動が妨げられることはない。
カンチレバー93の衝突部93Bはガイド上面91Aを通過した後、ガイド上面91Bに沿って後方側へ移動する。そして、所定の位置に到達するとガイド上面91Bの後端から外れる。上記したように、カンチレバー93は上方向にたわむように変形しているため、衝突部93Bがガイド上面91Bによる支持から外れると、梁部93Aが板ばねのように作用して衝突部93Bはばねの弾性力によって下方向に変位して衝突面92と衝突する(図10C)。衝突部93Bが衝突面92と衝突することにより衝突音が発生し、プッシュ動作が正常に終了したことを作業者に知らせる。
本実施形態の衝突音発生機構90では、衝突面92と工具本体10との間に空間92Sが形成される。空間92Sは、衝突面92で衝突部93Bが衝突する面とは反対側に設けられる。衝突部93Bが衝突面92と衝突した際に発生する衝突音を該空間92Sで反響させることによって、作業者が聞き取ることが可能な程度の大きさで衝突音を発生させることができる。空間92Sの大きさや形状は、発生させたい衝突音に応じて決定される。
また、本実施形態で衝突部93Bの断面形状は円形である(例えば、図10A参照)。これにより、衝突部93Bはカンチレバーガイド91の表面を滑らかに移動することができる。さらに、断面形状を円形にすることで、衝突面92の設置角度等が変更された場合であっても、衝突面92に対して衝突部93Bを均等に衝突させることにより、安定して衝突音を発生させることができる。但し、衝突部93Bの断面形状を楕円形や多角形の形状としても衝突音を発生させることは可能である。
また、カンチレバーガイド91の表面(上面)は、ガイド上面91A及びガイド上面91Bの2段階に傾斜が設けられ、ガイド上面91Bの傾斜角度はガイド上面91Aの傾斜角度よりも小さくなるように構成されている。ガイド上面91Bの傾斜角度を小さくすることにより、カンチレバーガイド91や衝突部93Bが磨耗するのを抑制するとともに、梁部93Aの上下方向へのたわみ量を調整することでカンチレバー93が破損するのを抑制している。但し、ガイド上面の傾斜角度は必ずしも変更されていなくてもよい。また、ガイド上面が曲線状であってもよい。
プッシュ動作が正常に終了した後、プル動作が開始される。カンチレバー93は延出部60とともに本体部10に対して前側に移動する。そして、衝突部93Bは、カンチレバーガイド91の下面側と接触する。カンチレバーガイド91の下面側は、ガイド下面91Cと、ガイド下面91Dとが形成されている。ガイド下面91C及びガイド下面91Dは、それぞれガイド上面91A及びガイド上面91Bと対応するような形状であり、カンチレバーガイド91は略平行四辺形の形状である。したがって、プル動作時においては、プッシュ動作時と反対に衝突部93Bはカンチレバーガイド91のガイド下面91C及びガイド下面91Dに沿って前側に移動する。ガイド下面91Dとガイド下面91Cとの傾斜が異なるのは、上記したガイド上面91A及びガイド上面91Bとほぼ同様の理由による。
プル動作のとき、衝突部93Bがカンチレバーガイド91の下面側と接触することによって、カンチレバー93が下方向に変形し、衝突部93Bが下側に変位する。つまり、衝突部93Bはプッシュ動作時の変位方向と反対側に変位する。プル動作後には衝突音を発生させないので、プル動作時の衝突部93Bの下側への変位量は、プッシュ動作時の衝突部93Bの上側への変位量と比べて、小さく設定されている。これにより、カンチレバー93の疲労を軽減でき、損傷を抑制できる。
本実施形態の衝突音発生機構90では、プッシュ動作及びプル動作時における工具本体10に対する延出部60の移動方向と交差する方向にカンチレバー93の衝突部93Bが変位することにより、衝突音を発生させる。すなわち、カンチレバー93を移動方向と交差する方向にたわませることで、小さなたわみ量で効率的に衝突音を発生させることができる。
図11に、比較例の衝突音発生機構90’を示す。比較例の衝突音発生機構90’では、本体部10に突起95及び衝突面96が設けられ、延出部60の後端部にカンチレバー97が設けられている。比較例のカンチレバー97は上下方向に伸びるように形成され、一端側は延出部60に接合され、他端側(図11Aの97A)は本体部10の壁面に接触している。
プッシュ動作時において、本体部10に対して延出部60が後方側に移動すると、カンチレバー97も本体部10の壁面に沿って移動する(図11A参照)。移動中、カンチレバー97の端部97Aが本体部10の壁面に設けられた突起95に引っかかると、カンチレバー97は前方側にたわむ。そして、延出部60が後方側に移動を続けると、他端部97Aが突起95からはずれ、たわみの反発力によってカンチレバー97が衝突面96に衝突し、衝突音を発生させる(図11B参照)。
比較例では、本体部10に対する延出部60の移動方向(前後方向)と平行な方向にカンチレバー97のたわみが発生する。この場合、たわみ量が大きいため、カンチレバー97と延出部60との接合部に応力集中が生じやすく、カンチレバー97が破損しやすかった。また、突起部95等の磨耗により、安定した衝突音を発生させることが難しかった。また、比較例では、プッシュ動作時のカンチレバーの変形量とプル動作時のカンチレバーの変形量が同程度になり、カンチレバー97が疲労しやすい構造であった。
これに対して、本実施形態の衝突音発生機構90では、カンチレバー93のたわみ方向が、上記のように移動方向と交差する方向であるため、応力集中等が生じにくくカンチレバー93が破損しにくくなり、安定して衝突音を発生させやすくなる。
===第2実施形態===
第1実施形態では、清掃体3が本体側引掛部42からヘッド側引掛部68へ送られること(清掃体3が逆送りされること)を制限する制限機構として、ラチェット機構82が採用されていた。但し、制限機構はラチェット機構82に限られるものではない。以下に説明する第2実施形態では、制限機構としてピンチ機構86を採用している。
また、第2実施形態では、清掃体3を巻取リール35に巻き取らせる巻取機構として、ラックアンドピニオン機構81と摩擦伝動機構84が採用されていた。但し、巻取機構はラックアンドピニオン機構81と摩擦伝動機構84に限られるものではない。以下に説明する第2実施形態では、巻取機構として、ぜんまいバネを用いたぜんまい機構87を採用している。
図12A及び図12Bは、第2実施形態のピンチ機構86及びぜんまい機構87の動作の説明図である。図12Aは、プッシュ動作時の説明図である。図12Bは、プル動作時の説明図である。なお、定量送出し機構83を含む他の構成については、第1実施形態と同様なので、説明を省略する。
ピンチ機構86は、清掃体3の表裏に設けられたピンチ部材によって清掃体3を挟む機構である。ピンチ機構86は、不図示のリンク機構によって、プッシュ動作時(工具本体10が延出部60に対して前側に移動するとき)にピンチ部材で清掃体3を拘束し、プル動作時(工具本体10が延出部60に対して後側に移動するとき)に清掃体3を開放するように、構成されている。ピンチ機構86は、定量送出し機構83の下流側に配置されている。
ぜんまい機構87は、ぜんまいバネによって巻取リール35を巻取方向に回転させる機構である。ぜんまいバネの外端は、巻取リール35に固定されている。ぜんまいバネの中心端は、手動によって、若しくは工具本体10と延出部60との相対移動を利用したリンク機構によって、巻取リール35を巻取方向に回転させるように巻き上げられる。
プッシュ動作では、定量送出し機構83のヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が離間する。このとき、ピンチ機構86が清掃体3を拘束しており、清掃体3が本体側引掛部42からヘッド側引掛部68へ送られること(清掃体3が逆送りされること)が制限されている。このため、ヘッド61の上流側から下流側へ、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が離間した分(すなわち、延出部60に対する工具本体10の移動量の分)の清掃体3が送り出されることになる。つまり、延出部60に対する工具本体10の移動量の分の未使用の清掃体3がヘッド61に供給され、延出部60に対する工具本体10の移動量の分の使用済みの清掃体3がヘッド61から送り出される。
なお、プッシュ動作時には、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42との間の清掃体3に張力が作用するが、ピンチ機構86により清掃体3が拘束されているため、巻取リール35が逆方向に回転することが防止されている。また、プッシュ動作時には、ヘッド61の上流側の清掃体3がヘッド61の下流側に移動するだけなので、供給リール31も回転しない。
プル動作では、定量送出し機構83のヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が近接する。このとき、ピンチ機構86は清掃体3を開放しているため、ぜんまい機構87によって、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が近接した分(すなわち、延出部60に対する工具本体10の移動量の分)の清掃体3が、巻取リール35によって巻き取られることになる。
上記の清掃工具1は、ピンチ機構86によって、清掃体3が本体側引掛部42からヘッド側引掛部68へ送られること(清掃体3が逆送りされること)を制限している。これにより、本体側引掛部42とヘッド側引掛部68とが離間するときに、ヘッド61の上流側から下流側へ、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が離間した分(すなわち、延出部60に対する工具本体10の移動量の分)の清掃体3が送り出されることになる。
また、上記の清掃工具1は、ぜんまい機構87によって、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42とが近接するときに清掃体3を巻取リール35に巻き取らせている。これにより、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が近接した分(すなわち、延出部60に対する工具本体10の移動量の分)の清掃体3を巻取リール35に巻き取らせることができる。なお、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42とが近接するときに清掃体3を巻取リール35に巻き取らせる巻取機構であれば、前述の摩擦伝動機構84やぜんまい機構87とは別の構成であっても、一定量の清掃体3を巻取リール35に巻き取らせるという効果を同様に得ることができる。
また、上記の清掃工具1は、ぜんまい機構87によって、清掃体3に所定の張力を作用させている。これにより、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が近接しても、ヘッド61よりも下流側の清掃体3の張力は低下せず、所定の張力に維持されている。このため、仮にヘッド61の清掃体3がヘッド61と光コネクタとの間に挟まれていなかったとしても、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が近接するときに、ヘッド61の下流側の清掃体3がヘッド61の上流側に逆送りされることはない。なお、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が近接しても清掃体3の所定の張力を作用させる巻取機構であれば、前述の摩擦伝動機構84やぜんまい機構87とは別の構成であっても、同様の効果を得ることができる。
===その他===
上記の実施形態は、主に光コネクタ清掃工具1について記載されているが、その記載の中には、光コネクタ清掃工具1の使用方法や製造方法、光コネクタの清掃方法などの開示が含まれていることは言うまでもない。
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
<清掃動作について>
前述の実施形態では、清掃工具1を用いて光コネクタを清掃するとき、作業者は、カバー5越しに工具本体10を保持し、延出部60の前側のヘッド61を光アダプタに挿入して、光アダプタ内の光コネクタを清掃していた。但し、清掃工具1を用いた光コネクタの清掃動作は、これに限られるものではない。また、清掃対象は、光アダプタ内の光コネクタでなくても良い。
例えば、作業者は、清掃工具1の延出部60の先端に光アダプタ状のキャップ(不図示)を取り付けて、このキャップに清掃対象となる光プラグを挿入することによって、キャップ内において光プラグの光コネクタを清掃することも可能である。この場合、作業者が、清掃工具1に対して清掃対象を移動させることによって、延出部60を工具本体10に向かって後側に移動させることもある。
<清掃体3について>
第1実施形態及び第2実施形態では、清掃体3はテープ状であった。但し、清掃体3は、糸状でも良いし、他の断面形状でも良い。
なお、清掃体3がテープ状の場合、糸状の場合と比べて、巻取リール35の清掃体3の外径が大きくなりやすい。このため、清掃体3がテープ状の場合に、清掃工具1が定量送出し機構83を備えることによる効果が特に現れやすい。つまり、清掃体3がテープ状の場合に清掃工具1が定量送出し機構83を備えることは特に有効である。
<ラチェット機構82について>
第1実施形態のラチェット機構82によれば、巻取リール35側にラチェット歯車36Aが設けられ、ハウジング側にラチェット爪45が設けられていた。但し、巻取リール35側にラチェット爪45を配置し、ハウジング側にラチェット歯車36Aを配置することによって、ラチェット機構82が構成されても良い。
また、第2実施形態で説明したように、清掃工具1が、ラチェット機構82を備えていなくても、清掃体3が本体側引掛部42からヘッド側引掛部68へ送られること(清掃体3が逆送りされること)を制限することができる制限機構を備えていれば、本体側引掛部42とヘッド側引掛部68とが離間するときに、ヘッド61の上流側から下流側へ、ヘッド側引掛部68と本体側引掛部42が離間した分(すなわち、延出部60に対する工具本体10の移動量の分)の清掃体3を送り出すことができる。
<摩擦伝動機構84について>
第1実施形態の摩擦伝動機構84によれば、巻取リール35側に摩擦面が設けられ、伝動車51側に摩擦板53が設けられていた。但し、巻取リール35側に摩擦板53を配置し、伝動車51側に摩擦面を配置することによって、摩擦伝動機構84を構成しても良い。
また、第1実施形態の摩擦伝動機構84の摩擦板53は、摩擦面に接触する摩擦部材としての機能と、板バネとしての機能を有している。但し、摩擦面に接触する摩擦部材と、摩擦部材を摩擦面に押し付けるバネとを別々の部材で構成しても良い。