以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態によるハイブリッド車両の制御装置について説明する。図1に示すハイブリッド車両Vは、左右の前輪WF,WFおよび後輪WR,WRを有する四輪車両であり、ハイブリッド車両Vには、動力源としての内燃機関(以下「エンジン」という)3および回転機21が搭載されている。エンジン3は、直列4気筒タイプのガソリンエンジンであり、回転機21は、一般的な1ロータタイプのブラシレスDCモータである。
エンジン3のクランク軸3aには、摩擦式のクラッチCLを介して、回転機21のロータ(図示せず)が連結されており、回転機21のロータは、自動変速装置TM、差動ギヤ機構DGおよび左右の駆動軸DS,DSを介して、前輪WF,WFに連結されている。以上の構成により、回転機21の出力トルクは、自動変速装置TMなどを介して前輪WF,WFに伝達される。また、このクラッチCLの締結・解放により、エンジン3と回転機21の間が接続・遮断され、クラッチCLの締結中には、エンジン3の出力トルクが、回転機21や自動変速装置TMを介して、前輪WF,WFに伝達される。クラッチCLの締結度合は、図3に示す制御装置1のECU2によって制御される。このECU2の詳細については後述する。
また、図2に示すように、エンジン3には、気筒3bごとに、気筒3b内におけるピストン3cとシリンダヘッド3dとの間に、燃焼室3eが形成されている(いずれも1つのみ図示)。さらに、シリンダヘッド3dには、気筒3bごとに、吸気通路4および排気通路5が接続されるとともに、点火プラグ6が、燃焼室3eに臨むように取り付けられている。この点火プラグ6の点火時期は、ECU2によって制御される。また、吸気通路4の吸気マニホルドには、燃料噴射弁7が、気筒3bごとに、吸気ポートに臨むように設けられており、燃料噴射弁7には、燃料タンク内の燃料が、ポンプ(図示せず)などで高圧に昇圧された状態で供給される。燃料噴射弁7に供給された高圧の燃料は、燃料噴射弁7の開弁に伴って、吸気ポートに噴射される。さらに、燃料噴射弁7の開弁時間、すなわち燃料噴射弁7の燃料噴射量は、ECU2によって制御される。
また、エンジン3には、クランク角センサ31が設けられている。クランク角センサ31は、マグネットロータおよびMREピックアップ(いずれも図示せず)で構成されており、クランク軸3aの回転に伴い、いずれもパルス信号であるCRK信号およびTDC信号を、ECU2に出力する。
このCRK信号は、所定のクランク角(例えば30°)ごとに出力される。ECU2は、CRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを求める。上記のTDC信号は、各気筒3bのピストン3cが吸気行程開始時のTDC(上死点)付近の所定のクランク角度位置にあることを表す信号であり、4気筒タイプのエンジン3では、クランク角180゜ごとに1パルスが出力される。さらに、エンジン3には、気筒判別センサ(図示せず)が設けられており、この気筒判別センサは、気筒3bを判別するためのパルス信号である気筒判別信号を、ECU2に出力する。
また、エンジン3の吸気通路4には、これを開閉するためのスロットル弁機構8が設けられている。スロットル弁機構8は、スロットル弁8aと、これを駆動するTHアクチュエータ8bを有している。スロットル弁8aは、吸気通路4内に回動自在に設けられており、その回動に伴う開度の変化により、吸気通路4を開閉することによって、エンジン3の燃焼室3eに吸入される新気の量である吸入空気量を変化させる。THアクチュエータ8bは、モータにギヤ機構(いずれも図示せず)を組み合わせたものであり、ECU2からの駆動信号で駆動され、それにより、スロットル弁8aの開度(以下「スロットル弁開度」という)が変更されることによって、吸入空気量が制御される。また、スロットル弁開度THは、スロットル弁開度センサ32によって検出され、その検出信号はECU2に出力される。
さらに、エンジン3の排気通路5には、上流側から順に、LAFセンサ33および触媒装置9が設けられている。LAFセンサ33は、排ガス中の酸素濃度をリニアに検出し、その酸素濃度に比例する検出信号をECU2に出力する。ECU2は、このLAFセンサ33で検出された酸素濃度に基づいて、エンジン3で燃焼した混合気の実際の空燃比(以下「実空燃比」という)A/FACTを算出する。また、触媒装置9は、三元触媒で構成されており、この三元触媒の酸化還元作用により、排ガス中の有害成分である一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)および窒素酸化物(NOx)を浄化する。さらに、触媒装置9には、O2センサ34が取り付けられている。
O2センサ34は、触媒装置9における排ガス中の酸素濃度に基づく出力(以下「O2センサ出力」という)SO2を、ECU2に送る。このO2センサ出力SO2は、エンジン3で燃焼した混合気が理論空燃比よりもリッチのときには、ハイレベルの電圧値(例えば0.8V)になり、リーンのときには、ローレベルの電圧値(例えば0.2V)になるとともに、混合気が理論空燃比付近のときには、ハイレベルとローレベルの間の所定値SO2REF(例えば0.6V)になる。
また、エンジン3には、EGR通路11と、これを開閉するためのEGR制御弁12が設けられている。EGR通路11は、吸気通路4におけるスロットル弁機構8の下流側と、排気通路5における触媒装置9の上流側に接続されている。このEGR通路11を介して、エンジン3の排ガスの一部がEGRガスとして吸気通路4に還流することにより、燃焼室3e内の燃焼温度が低下し、排ガス中のNOxが低減される。また、EGR制御弁12は、リニア電磁弁であり、そのバルブリフト量がECU2からの駆動信号によって制御されることによって、EGR通路11を開閉し、それにより、吸気通路4に還流するEGRガスの量が制御される。さらに、EGR制御弁12の実際のバルブリフト量LFTEGRは、EGRリフトセンサ35によって検出され、その検出信号はECU2に出力される。
さらに、吸気通路4におけるスロットル弁8aの上流側には、エアフローセンサ36が設けられており、下流側には、吸気圧センサ37および吸気温センサ38が設けられている。このエアフローセンサ36は、吸気通路4内を流れる新気の流量(以下「流入空気量」という)に基づく出力VGAIRを、ECU2に送る。また、吸気圧センサ37は、吸気通路4内の圧力(以下「吸気圧」という)PBAを絶対圧として検出するとともに、吸気温センサ38は、気筒3bに吸入される空気の温度(以下「吸気温」という)TAを検出し、それらの検出信号はECU2に出力される。
また、前述した回転機21は、供給された電力を動力に変換し、そのロータから出力するとともに、ロータに入力された動力を電力に変換(発電)可能に構成されている。さらに、回転機21は、充電・放電可能なバッテリ22に、パワードライブユニット(以下「PDU」という)23を介して接続されており、回転機21で発電された電力は、バッテリ22に充電される。PDU23は、インバータなどからなる電気回路で構成されており、ECU2に接続されている。また、ECU2によるPDU23の制御によって、バッテリ22から回転機21に供給される電力と、回転機21で発電され、バッテリ22に充電される電力が制御される。
さらに、回転機21には、回転角センサ39が設けられており、回転角センサ39は、ロータの回転角度位置を検出するとともに、その検出信号をECU2に出力する。また、バッテリ22には、電流電圧センサ40が接続されており、電流電圧センサ40は、バッテリ22に入出力される電流・電圧値を検出するとともに、その検出信号をECU2に出力する。ECU2は、この検出信号に基づいて、バッテリ22の充電状態SOCを算出する。
ECU2にはさらに、アクセル開度センサ41からアクセルペダルの操作量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が、車速センサ42からハイブリッド車両Vの速度(以下「車速」という)VPを表す検出信号が、大気圧センサ43から大気圧PAを表す検出信号が、出力される。
また、ECU2は、CPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などからなるマイクロコンピュータで構成されている。さらに、ECU2は、上述した各種のセンサ31〜43からの検出信号などに応じて、ハイブリッド車両Vの走行状態を判別し、判別された走行状態に応じ、ROMに記憶された制御プログラムに従って、ハイブリッド車両Vを駆動するための駆動モードを決定するとともに、その決定結果に応じて、エンジン3や回転機21などを制御する。
図4および図5は、上記の駆動モードを決定するための処理を示している。本処理および後述する処理はいずれも、エンジン3の運転中には、前述したTDC信号の発生に同期して気筒3bごとに実行され、エンジン3の停止中には、所定時間ごとに実行される。まず、図4のステップ1(「S1」と図示。以下同じ)では、そのときに得られている要求トルクTREQ(k)を、その前回値TREQ(k−1)としてシフトする。この要求トルクTREQは、エンジン3および回転機21から成る動力源に要求されるトルクである。なお、記号(k)付きのデータは、エンジン3の運転中にはTDC信号が発生するごとに、すなわち当該気筒3bの1燃焼サイクルごとに、サンプリングされたデータであることを示している。また、以下の説明では、記号(k)を適宜、省略するものとする。
次いで、検出された車速VPおよびアクセル開度APに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、要求トルクTREQを算出する(ステップ2)。このマップでは、要求トルクTREQは、車速VPが高いほど、また、アクセル開度APが大きいほど、より大きな値に設定されている。
次に、ステップ1で設定された要求トルクの前回値TREQ(k−1)と、ステップ2で算出された要求トルクの今回値TREQ(k)を用い、次式(1)によって、次サイクル要求トルクNCTREQを算出する(ステップ3)。この次サイクル要求トルクNCTREQは、エンジン3の当該気筒3bにおける次の燃焼サイクル(以下「次燃焼サイクル」という)で要求されると予測される要求トルクTREQ(予測値)である。
NCTREQ=TREQ(k)+K(TREQ(k)−TREQ(k−1))
……(1)
この式(1)において、Kは、所定の係数(0.05<K<0.1)である。また、式(1)における(TREQ(k)−TREQ(k−1))は、当該気筒3bの前回の燃焼サイクルから今回の燃焼サイクルまでにおける要求トルクTREQの変化量を表す。式(1)に示すように、そのような要求トルクTREQの変化量に係数Kを乗算した値を、要求トルクの今回値TREQ(k)に加算することによって、次燃焼サイクルで要求されると予測される次サイクル要求トルクNCTREQを適切に算出することができる。
次いで、次サイクルEGR率NCEGRRを算出する(ステップ4)。この次サイクルEGR率NCEGRRは、次燃焼サイクルにおけるEGR率であり、このEGR率は、燃焼室3eに吸入される吸入ガスの量に対するEGRガスの量の比率である。また、この「吸入ガス」とは、エンジン3に吸入される新気およびEGRガスの双方を合わせたガスのことである。図6は、次サイクルEGR率NCEGRRを算出する処理を示している。
まず、図6のステップ31では、平均化流入空気量GAIRAVE0を次のように算出する。まず、エアフローセンサ36の出力VGAIRに応じ、マップ(図示せず)を検索することによって、検出流入空気量VGAIRX[g/sec]を算出する。この検出流入空気量VGAIRXは、前述した流入空気量(吸気通路4内を流れる新気の流量)の検出値である。次いで、算出された検出流入空気量VGAIRXの移動平均値を、平均化流入空気量GAIRAVE0として算出する。
次いで、スロットル弁通過空気量GAIRTHを算出する(ステップ32)。このスロットル弁通過空気量GAIRTHは、流入空気量を1TDC期間当たりの空気量に換算したものである。図7は、スロットル弁通過空気量GAIRTHを算出する処理を示している。まず、ステップ51、52および53では、図6のステップ31で算出された平均化流入空気量GAIRAVE0に応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、第1係数KTAAFMGH、第2係数KTAAFMGMおよび第3係数KTAAFMGLをそれぞれ算出する。
次いで、上記ステップ51〜53でそれぞれ算出された第1〜第3係数KTAAFMGH〜KTAAFMGLを、検出された吸気温TAに応じて補間演算することにより、吸気温補正係数KTAAFMを算出する(ステップ54)。次に、平均化流入空気量GAIRAVE0に応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、高地用の係数KPAAFMGを算出する(ステップ55)。次いで、このステップ55で算出された係数KPAAFMGと、検出された大気圧PAに応じて、大気圧補正係数KPAAFMを算出する(ステップ56)。
次に、平均化流入空気量GAIRAVE0と、ステップ54および56でそれぞれ算出された吸気温補正係数KTAAFMおよび大気圧補正係数KPAAFMを用い、次式(2)によって、補正平均化流入空気量GAIRAVEを算出する(ステップ57)。
GAIRAVE=GAIRAVE0・KTAAFM・KPAAFM ……(2)
次いで、算出されたエンジン回転数NEを用い、次式(3)によって、ステップ57で算出された補正平均化流入空気量GAIRAVEを、スロットル弁通過空気量GAIRTH[g/TDC]に換算し(ステップ58)、本処理を終了する。
GAIRTH=GAIRAVE・KCV/NE ……(3)
この式(3)において、KCVは、所定の換算係数である。
図6に戻り、前記ステップ32に続くステップ33では、新気率KFARを算出する。この新気率KFARは、吸気通路4におけるEGR通路11との接続部から気筒3bの吸気口までの領域(以下「混合ガス通過領域」という)に流入する混合ガス(新気+EGRガス)に対するこの新気の比率である。図8は、新気率KFARを算出する処理を示している。まず、図8のステップ61では、そのときに得られているEGRガス量GEGR(k)を、その前回値GEGR(k−1)としてシフトする。このEGRガス量GEGRは、EGR制御弁12を通過する、1TDC当たりのEGRガスの量である。その算出手法については後述する。
次いで、ステップ61で設定されたEGRガス量の前回値GEGR(k−1)に応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、EGRガス温度TEGR[℃]を算出する(ステップ62)。このマップでは、EGRガス温度TEGRは、前回値GEGR(k−1)が大きいほど、より大きな値に設定されている。次に、図7のステップ58で算出されたスロットル弁通過空気量GAIRTHに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、排気圧PEX[kPa]を算出する(ステップ63)。このマップでは、排気圧PEXは、スロットル弁通過空気量GAIRTHが大きいほど、より大きな値に設定されている。
次いで、検出されたEGR制御弁12のバルブリフト量LFTEGRに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、EGR制御弁12の有効開口面積AEGR[m2]を算出する(ステップ64)。このマップでは、有効開口面積AEGRは、バルブリフト量LFTEGRが大きいほど、より大きな値に設定されている。
次に、上記ステップ62〜64でそれぞれ算出されたEGRガス温度TEGR、排気圧PEXおよび有効開口面積AEGRと、検出された吸気圧PBAを用い、次式(4)によって、EGR弁通過EGRガス量GEGRVLV[g/sec]を算出する(ステップ65)。
この式(4)において、Rは気体定数[J/(kg・°K)]であり、TEGRKは、EGRガス温度TEGRを絶対温度に換算した値[°K]である。この式(4)は、EGRガスがEGR制御弁12を通過するときのエネルギ損失を値0とし、ベルヌーイの式を用いることによって得られるものである。
次いで、上記ステップ65で算出されたEGR弁通過EGRガス量GEGRVLVを、次式(5)によって、EGRガス量GEGR[g/TDC]に換算する(ステップ66)。次に、そのときに得られている基本新気率の今回値KFARX(k)を、その前回値KFARX(k−1)としてシフトする(ステップ67)。
GEGR=GEGRVLV・KCV/NE ……(5)
次いで、スロットル弁通過空気量GAIRTHと、上記ステップ66で算出されたEGRガス量GEGRを用い、次式(6)によって基本新気率KFARXを算出する(ステップ68)。
KFARX=GAIRTH/(GAIRTH+GEGR) ……(6)
次に、上記ステップ67で設定された基本新気率の前回値KFARX(k−1)と、ステップ68で算出された基本新気率の今回値KFARX(k)を用い、次式(7)によって、新気率KFARを算出し(ステップ69)、本処理を終了する。
KFAR=CD・KFARX(k)+(1−CD)KFARX(k−1)
……(7)
この式(7)において、CDは所定のなまし係数(0<CD<1)である。
図6に戻り、前記ステップ33に続くステップ34では、スロットル弁通過空気量GAIRTH、EGRガス量GEGR、気体定数Rおよび吸気圧PBAを用い、次式(8)によって、単位吸入ガス体積QGASXを算出する。この単位吸入ガス体積QGASXは、前述した混合ガス通過領域(吸気通路4におけるEGR通路11との接続部から気筒3bの吸気口までの領域)に流入する混合ガスの流量を、1TDC期間当たりのガス体積[m3/TDC]に換算したものに相当する。
QGASX=(GAIRTH+GEGR)R・TAK/PBA ……(8)
この式(8)において、TAKは、吸気温TAを絶対温度に換算した値で[°K]である。
次いで、インデクスパラメータjを「1」に初期化する(ステップ35)。次に、図8のステップ69で算出された新気率KFARの記憶値である新気率記憶値KFARBUFを、次式(9)により更新するとともに、吸入ガス体積QGASBUFを次式(10)により更新する(ステップ36)。
KFARBUF(n−j)=KFARBUF(n−(j+1)) ……(9)
QGASBUF(n−j)=QGASBUF(n−(j+1))+QGASX
……(10)
これらの式(9)および(10)において、「n」は記憶するデータの数であり、例えば値50に設定されている。このデータ数nは、混合ガス通過領域の容積(以下「混合ガス通過域容積」という)VOUTと、エンジン3の低負荷・低回転中における吸入空気量に応じて、設定されている。なお、ECU2の起動時に、新気率記憶値KFARBUF(0)〜KFARBUF(n−1)はすべて値1.0に初期化され、吸入ガス体積QGASBUF(0)〜QGASBUF(n−1)はすべて値0に初期化される。
次に、インデクスパラメータjを「1」だけインクリメントする(ステップ37)とともに、インクリメントされたインデクスパラメータjがデータ数nよりも小さいか否かを判別する(ステップ38)。この答がYESのときには、上記ステップ36に戻る一方、NOで、インデクスパラメータjがデータ数n以上になったときには、新気率記憶値KFARBUF(0)を、図8のステップ69で算出された新気率KFARに設定するとともに、吸入ガス体積QGASBUF(0)を、値0に設定する(ステップ39)。
以上のステップ36〜39の実行により、新気率記憶値KFARBUF(0)〜KFARBUF(n−2)が、新気率記憶値KFARBUF(1)〜KFARBUF(n−1)にそれぞれシフトされるとともに、今回の新気率KFARが、新気率記憶値KFARBUF(0)として設定される。また、吸入ガス体積QGASBUF(1)〜QGASBUF(n−1)がそれぞれ、吸入ガス体積QGASBUF(0)〜QGASBUF(n−2)に今回の単位吸入ガス体積QGASXを加算した値に更新されるとともに、吸入ガス体積QGASBUF(0)が値0に設定される。このことから明らかなように、吸入ガス体積QGASBUF(1)は、単位吸入ガス体積の今回値QGASX(k)に設定され、吸入ガス体積QGASBUF(n−j)は、今回から(n−j−1)回前までの単位吸入ガス体積QGASXの総和(QGASX(k)+QGASX(k−1)+……+QGASX(k−(n−j−1))に設定される。
この場合、前述したように、吸入ガス体積QGASBUF(0)〜QGASBUF(n−1)がすべて、ECU2の起動時に値0に初期化されるため、エンジン3の始動直後で、本処理の実行回数mがデータ数nよりも少ないときには、実行回数mよりも大きな(n−j)で規定される吸入ガス体積QGASBUF(n−j)は、今回から(m−1)回前までの単位吸入ガス体積QGASXの総和に設定される。例えば、実行回数mが値46であり、それよりも大きな(n−j)で規定される吸入ガス体積QGASBUF(n−j)が、QGASBUF(n−3)〜QGASBUF(n−1)であるときには、これらの吸入ガス体積QGASBUF(n−3)〜QGASBUF(n−1)はいずれも、今回から(m−1)回前の単位吸入ガス体積QGASXの総和に設定される。
また、ステップ39に続くステップ40では、インデクスパラメータiを「0」に初期化する。次いで、吸入ガス体積QGASBUF(i)が混合ガス通過域容積VOUT以上であるか否かを判別する(ステップ41)。この答がNOのときには、インデクスパラメータiを「1」だけインクリメントする(ステップ42)とともに、インクリメントされたインデクスパラメータiがデータ数nよりも小さいか否かを判別する(ステップ43)。この答がYESのときには、上記ステップ41に戻る。
一方、ステップ43の答がNOのとき、すなわち、吸入ガス体積QGASBUF(i(=49))が混合ガス通過域容積VOUTよりも小さいときには、エンジン3の始動時または始動直後であるとして、次サイクルEGR率NCEGRRを値0に設定し(ステップ44)、本処理を終了する。
このように、QGASBUF(i(=49))が混合ガス通過域容積VOUTよりも小さいときに、エンジン3の始動時または始動直後であるとみなすのは、次の理由による。前述したように、データ数nは、混合ガス通過域容積VOUTと、エンジン3の低負荷・低回転中における吸入空気量に応じて設定されている。このことと、前述した吸入ガス体積QGASBUF(n−j)の設定手法により、エンジン3の始動時または始動直後であることにより本処理の実行回数がデータ数nよりも少ないときには、吸入ガス体積QGASBUF(i(=49))が混合ガス通過域容積VOUTよりも小さくなり、上記ステップ41および43の答がいずれもNOになるためである。
また、今回から(i−1)回前までの単位吸入ガス体積QGASXの総和である吸入ガス体積QGASBUF(i)が、混合ガス通過域容積VOUTよりも小さいということは、エンジン3の始動後、混合ガス通過領域に流入したガスが気筒3bの吸気口にまだ到達していないことを表している。この場合には、次サイクルEGR率NCEGRRを適切に算出できないため、上述したステップ44において次サイクルEGR率NCEGRRが値0に設定される。なお、エンジン3の始動時または始動直後には、燃焼を安定させるために、目標EGRガス量EGRCMDが値0に設定されるため、そのように次サイクルEGR率NCEGRRを設定しても、特に問題はない。
一方、ステップ41の答がYESで、QGASBUF(i)≧VOUTになったとき、すなわち、今回から(i−1)回前までの単位吸入ガス体積QGASXの総和が、混合ガス通過域容積VOUT以上になったときには、次式(11)によって、次サイクルEGR率NCEGRRを算出し(ステップ45)、本処理を終了する。
NCEGRR=1−KFARBUF(i−2) ……(11)
次サイクルEGR率NCEGRRを上述したように算出するのは、次の理由による。すなわち、TDC信号の発生ごとに単位吸入ガス体積QGASX分の吸入ガスが気筒3bに吸入されると仮定すると、吸入ガス体積QGASBUF(i)が混合ガス通過域容積VOUT以上になったタイミングは、今回から(i−1)回前の単位吸入ガス体積QGASXに対応する混合ガスが気筒3bの吸気口に到達したタイミングを表す。また、この混合ガスには、前記ステップ35〜39の実行内容から明らかなように、新気率記憶値KFARBUF(i−1)が対応し、新気率記憶値KFARBUF(i−2)は、次のTDC信号の発生時に気筒3bの吸気口に到達する混合ガスに対応するとともに、次燃焼サイクルに気筒3bに吸入される吸入ガスの新気率(=新気/(新気+EGRガス))を表す。このことから、そのような新気率記憶値KFARBUF(i−2)を値1.0から減算することによって(式(11))、次サイクルEGR率NCEGRRを適切に算出することができるためである。
図4に戻り、前記ステップ3に続くステップ5〜8では、第1限界EGR率EGRLMT1を算出する。この第1限界EGR率EGRLMT1は、次燃焼サイクルにおいて失火が発生しないと予測される最大(限界)のEGR率である。
まず、ステップ5では、エンジン回転数NEと、前記ステップ3で算出された次サイクル要求トルクNCTREQに応じ、図9に示すマップを検索することによって、リーン側限界EGR率EGRLMTLを算出する。このリーン側限界EGR率EGRLMTLは、次燃焼サイクルで燃焼する混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンであると仮定した場合における第1限界EGR率EGRLMT1である。なお、便宜上、図9には、エンジン回転数NEが所定値の場合の1つのマップのみを示している。このマップでは、リーン側限界EGR率EGRLMTLは、次サイクル要求トルクNCTREQが大きいほど、吸入空気量が大きいことにより失火しにくいため、より大きな値に設定されている。
次いで、ステップ6において、エンジン回転数NEおよび次サイクル要求トルクNCTREQに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、リッチ側限界EGR率EGRLMTRを算出する。このリッチ側限界EGR率EGRLMTRは、次燃焼サイクルで燃焼する混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチであると仮定した場合における第1限界EGR率EGRLMT1である。
上記のマップでは、リッチ側限界EGR率EGRLMTRは、リーン側限界EGR率EGRLMTLと同様、次サイクル要求トルクNCTREQが大きいほど、より大きな値に設定されている。また、リッチ側限界EGR率EGRLMTRは、同じ大きさの次サイクル要求トルクNCTREQに対して、リーン側限界EGR率EGRLMTLよりも大きな値に設定されている。これは、図16を用いて説明したように、エンジン3で燃焼する混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチである場合のほうが、リーンである場合と比較して、燃焼速度が高くなり、失火が発生しにくくなるためである。なお、本実施形態では、エンジン3の空燃比は、前述した燃焼安定空燃比STA/Fよりもリッチ側には制御されない。
次に、ステップ7において、前述したO2センサ出力SO2に基づいて、係数KLを算出する。この係数KLは、O2センサ出力SO2が前述した所定値SO2REFであるときには、値0.5に算出され、ハイレベルの電圧値であるときには、値0.5よりも小さな正の所定値に算出され、ローレベルの電圧値であるときには、値0.5よりも大きく、かつ値1.0よりも小さな所定値に算出される。
次いで、ステップ8において、上記ステップ5〜7でそれぞれ算出されたリーン側限界EGR率EGRLMTL、リッチ側限界EGR率EGRLMTRおよび係数KLを用い、次式(12)によって、第1限界EGR率EGRLMT1を算出する。
EGRLMT1=KL・EGRLMTL+(1−KL)EGRLMTR ……(12)
この式(12)に示すように、第1限界EGR率EGRLMT1は、係数KLを重み係数として、リーン側限界EGR率EGRLMTLおよびリッチ側限界EGR率EGRLMTRを加重平均することによって算出される。また、上述したように、O2センサ出力SO2が所定値SO2REFであるとき、すなわちエンジン3で燃焼した混合気の空燃比が理論空燃比であるときには、係数KLが値0.5に算出され、それにより、第1限界EGR率EGRLMT1に対するリーン側限界EGR率EGRLMTLおよびリッチ側限界EGR率EGRLMTRの重みが、それぞれ1/2に設定される。
また、O2センサ出力SO2がローレベルの電圧値であるとき、すなわち燃焼した混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンのときには、係数KLが値0.5よりも大きく、かつ値1.0よりも小さな所定値に算出され、それにより、第1限界EGR率EGRLMT1に対する、リーン側限界EGR率EGRLMTLの重みが大きくなるとともに、リッチ側限界EGR率EGRLMTRの重みが小さくなる。さらに、O2センサ出力SO2がハイレベルの電圧値であるとき、すなわち燃焼した混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチのときには、係数KLが値0.5よりも小さな正値に算出され、それにより、第1限界EGR率EGRLMT1に対する、リーン側限界EGR率EGRLMTLの重みが小さくなるとともに、リッチ側限界EGR率EGRLMTRの重みが大きくなる。
また、前記ステップ8に続く図5のステップ9では、図6のステップ45で算出された次サイクルEGR率NCEGRRが、ステップ8で算出された第1限界EGR率EGRLMT1よりも大きいか否かを判別する。この答がNOで、NCEGRR≦EGRLMT1のとき、すなわち、次燃焼サイクルにおける実際のEGR率が、次燃焼サイクルにおいて失火が発生しないと予測される限界のEGR率以下のときには、次燃焼サイクルにおいてEGRガスの影響により失火が発生するおそれがないと判定し、駆動モードを通常モードに決定する。また、そのことを表すために、通常モードフラグF_NORMを「1」にセットするとともに、後述する掃気モードフラグF_SCAVM、リッチ燃焼モードフラグF_RICHMおよびエンジン下限トルクモードフラグF_ELMTMをいずれも「0」にリセットし(ステップ10)、本処理を終了する。
一方、ステップ9の答がYESで、NCEGRR>EGRLMT1のときには、次燃焼サイクルにおいてEGRガスの影響により失火が発生するおそれがあると判定し、続くステップ11以降において、失火を回避するために、駆動モードを、掃気モード、リッチ燃焼モードおよびエンジン下限トルクモードのいずれかに決定する。まず、ステップ11では、エンジン回転数NEおよび次サイクル要求トルクNCTREQに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、第2限界EGR率EGRLMT2を算出する。この第2限界EGR率EGRLMT2は、次燃焼サイクルにおいて、燃焼する混合気の空燃比が前述した燃焼安定空燃比STA/F(例えば値12.0)であると仮定した場合に、失火が発生しないと予測される最大(限界)のEGR率である。
上記のマップでは、第2限界EGR率EGRLMT2は、前述したリーン側限界EGR率EGRLMTLと同様、次サイクル要求トルクNCTREQが大きいほど、より大きな値に設定されている。また、第2限界EGR率EGRLMT2は、リッチ側限界EGR率EGRLMTRと同様、同じ大きさの次サイクル要求トルクNCTREQに対して、リーン側限界EGR率EGRLMTLよりも大きな値に設定されている。なお、本実施形態では、第2限界EGR率EGRLMT2は、同じ大きさのエンジン回転数NEおよび次サイクル要求トルクNCTREQに対し、リッチ側限界EGR率EGRLMTRと同じ値に設定されている。
上記ステップ11に続くステップ12では、算出されたバッテリ22の充電状態SOCが所定値SOCREFよりも大きいか否かを判別する。この所定値SOCREFは、回転機21のみを動力源としてハイブリッド車両Vを駆動できるような最低の充電状態SOCに設定されている。
このステップ12の答がYESで、SOC>SOCREFのときには、回転機21のみを動力源としてハイブリッド車両Vを駆動可能であるとして、エンジン回転数NEに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、機械損失トルクFRTRQを算出する(ステップ13)。この機械損失トルクFRTRQは、エンジン3の燃焼運転中に発生するエンジン3の機械損失を、正のトルクに換算した値である。このマップでは、機械損失トルクFRTRQは、エンジン回転数NEが高いほど、単位時間あたりのフリクションやポンピングロスなどの機械損失がより大きくなるため、より大きな値に設定されている。
次いで、次サイクル要求トルクNCTREQが、上記ステップ13で算出された機械損失トルクFRTRQよりも小さいか否かを判別する(ステップ14)。この答がYESのときには、駆動モードを掃気モードに決定し、そのことを表すために、掃気モードフラグF_SCAVMを「1」にセットするとともに、通常モードフラグF_NORM、リッチ燃焼モードフラグF_RICHMおよびエンジン下限トルクモードフラグF_ELMTMをいずれも「0」にリセットし(ステップ15)、本処理を終了する。この掃気モード中、後述するように、失火を回避するために、ハイブリッド車両Vが、回転機21のみを動力源として駆動されるとともに、EGRガスが掃気される。
以上のように、次の条件a〜cがすべて成立しているときに、駆動モードが掃気モードに決定される。
a:次燃焼サイクルにおいてEGRガスの影響により失火が発生するおそれがあると判定されていること(ステップ9:YES)。
b:バッテリ22の電力が、回転機21のみを動力源としてハイブリッド車両Vを駆動可能な、十分な大きさであること(ステップ12:YES)。
c:次サイクル要求トルクNCTREQが機械損失トルクFRTRQよりも小さいこと(ステップ14:YES)。
このように、掃気モードの決定に条件cの成立を必要とするのは、条件cが成立しているときに、次サイクル要求トルクNCTREQに見合った量の燃料をエンジン3に供給すると、燃料の燃焼エネルギがすべて機械損失として無駄に消費されてしまうことから、駆動モードを掃気モードに決定することによって、エンジン3を動力源として用いずに、回転機21のみを動力源として用いるためである。以下、上記の条件aおよびbをそれぞれ、「次サイクル失火条件」および「回転機駆動条件」という。
一方、上記ステップ14の答がNOで、次サイクル要求トルクNCTREQが機械損失トルクFRTRQ以上であるときには、次サイクルEGR率NCEGRRが、前記ステップ11で算出された第2限界EGR率EGRLMT2よりも大きいか否かを判別する(ステップ16)。この答がNOで、NCEGRR≦EGRLMT2のとき、すなわち、次燃焼サイクルにおいて、実際のEGR率(NCEGRR)が、空燃比が燃焼安定空燃比STA/Fであると仮定した場合に失火が発生しないと予測される限界のEGR率(EGRLMT2)以下であるときには、エンジン3に供給される混合気の空燃比を燃焼安定空燃比STA/Fに制御することによって、エンジン3の失火を発生させずに、エンジン3の出力トルク(以下「エンジントルク」という)を次サイクル要求トルクNCTREQに制御することが可能であると判定する。次いで、O2センサ出力SO2が所定値SO2REFよりも大きいか否かを判別する(ステップ17)。
この答がNOで、SO2≦SO2REFのときには、エンジン3で燃焼した混合気の空燃比が理論空燃比または理論空燃比よりもリーンであるため、触媒装置9における排ガス中の酸素濃度が、排ガス中のHCなどを十分に酸化可能な所定値以上であるとみなし、駆動モードをリッチ燃焼モードに決定する。また、そのことを表すために、リッチ燃焼モードフラグF_RICHMを「1」にセットするとともに、通常モードフラグF_NORM、掃気モードフラグF_SCAVMおよびエンジン下限トルクモードフラグF_ELMTMをいずれも「0」にリセットし(ステップ18)、本処理を終了する。このリッチ燃焼モード中、後述するように、ハイブリッド車両Vが、エンジン3のみを動力源として駆動されるとともに、失火を回避するために、エンジン3に供給される混合気の空燃比が、理論空燃比よりもリッチな燃焼安定空燃比STA/Fになるように制御される。
一方、上記ステップ17の答がYESで、SO2>SO2REFのときには、燃焼した混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチであるため、触媒装置9における排ガス中の酸素濃度が上記の所定値よりも小さいとみなし、前記ステップ15以降を実行し、駆動モードを掃気モードに決定する。
一方、前記ステップ16の答がYESで、次サイクルEGR率NCEGRRが第2限界EGR率EGRLMT2よりも大きいときには、エンジン3に供給される混合気の空燃比を燃焼安定空燃比STA/Fに制御しても、エンジン3の失火を発生させることなく、エンジントルクを次サイクル要求トルクNCTREQに制御することが困難であると判定する。次いで、駆動モードをエンジン下限トルクモードに決定し、そのことを表すために、エンジン下限トルクモードフラグF_ELMTMを「1」にセットするとともに、通常モードフラグF_NORM、掃気モードフラグF_SCAVMおよびリッチ燃焼モードフラグF_RICHMをいずれも「0」にリセットし(ステップ19)、本処理を終了する。このエンジン下限トルクモード中、後述するように、ハイブリッド車両Vが、エンジン3のみを動力源として駆動され、失火を回避するために、エンジントルクが、次サイクル要求トルクNCTREQよりも大きくなるように制御されるとともに、次サイクル要求トルクNCTREQに対するエンジントルクの余剰分が、電気エネルギとしてバッテリ22に充電される。
一方、前記ステップ12の答がNOで、SOC≦SOCREFのときには、回転機21のみを動力源としてハイブリッド車両Vを駆動することができないとして、次のステップ20以降において、駆動モードを、エンジン3を動力源として用いるリッチ燃焼モードまたはエンジン下限トルクモードに決定する。まず、ステップ20では、次サイクルEGR率NCEGRRが第2限界EGR率EGRLMT2よりも大きいか否かを判別する。
この答がNOで、NCEGRR≦EGRLMT2のときには、前記ステップ16と同様、エンジン3に供給される混合気の空燃比を燃焼安定空燃比STA/Fに制御することによって、エンジン3の失火を発生させずに、エンジントルクを次サイクル要求トルクNCTREQに制御することが可能であると判定するとともに、前記ステップ18以降を実行し、駆動モードをリッチ燃焼モードに決定する。一方、上記ステップ20の答がYESのときには、エンジン3に供給される混合気の空燃比を燃焼安定空燃比STA/Fに制御しても、エンジン3の失火を発生させることなく、エンジントルクを次サイクル要求トルクNCTREQに制御することが困難であると判定し、前記ステップ19以降を実行し、駆動モードをエンジン下限トルクモードに決定する。
以上のように、リッチ燃焼モードおよびエンジン下限トルクモードへの駆動モードの決定には、前述した次サイクル失火条件(ステップ9:YES)に加え、回転機駆動条件(ステップ12:YES)が成立している場合には、次の条件dの成立が必要とされる。
d:次サイクル要求トルクNCTREQが機械損失トルクFRTRQ以上であること(ステップ14:NO)。
これは、リッチ燃焼モードおよびエンジン下限トルクモードではいずれも、エンジン3がハイブリッド車両Vの動力源として用いられるので、次サイクル要求トルクNCTREQに見合った大きさのトルクをエンジン3から適切に出力できるような状況で、リッチ燃焼モードまたはエンジン下限トルクモードによりハイブリッド車両Vを駆動するためである。以下、この条件dを「エンジン駆動条件」という。
この場合、リッチ燃焼モードの決定にはさらに、次の条件eおよびfの双方の成立が必要とされる。
e:エンジン3に供給される混合気の空燃比を理論空燃比よりもリッチな燃焼安定空燃比STA/Fに制御することによって、エンジン3の失火を発生させずに、エンジントルクを次サイクル要求トルクNCTREQに制御可能であること(ステップ16:NO)。
f:O2センサ出力SO2が所定値SO2REF以下であり、触媒装置9における排ガス中の酸素濃度が比較的大きいこと(ステップ17:NO)。
このように、次サイクル失火条件、回転機駆動条件およびエンジン駆動条件がすべて成立していても、条件eが成立していないときには、リッチ燃焼モードでは、失火の回避とエンジンルクの適切な制御を両立させることができないため、駆動モードは、エンジン下限トルクモードに決定される。以下、この条件eを「第1リッチ化条件」という。
また、上記のように、リッチ燃焼モードの決定に条件fの成立を必要とするのは、リッチ燃焼モード中には、エンジン3の空燃比が、理論空燃比よりもリッチな燃焼安定空燃比STA/Fになるように制御され、それにより、排ガス中の炭化水素などの有害物質が比較的多くなるので、この有害物質を触媒装置9により十分に酸化させ、浄化するためである。このため、条件fが成立しておらず、触媒装置9における排ガス中の酸素濃度が比較的小さいとき(ステップ17:YES)には、駆動モードは、前述した回転機21のみを動力源として用いる掃気モードに決定される。以下、この条件fを「第2リッチ化条件」という。
さらに、次サイクル失火条件が成立している場合において、回転機駆動条件が成立していないとき(ステップ12:NO)には、回転機21のみでハイブリッド車両Vを駆動することができないため、駆動モードは、回転機21を動力源として用いる掃気モードには決定されず、ステップ16と同じ内容のステップ20の答に応じて、すなわち上記の第1リッチ化条件に応じて、リッチ燃焼モードまたはエンジン下限トルクモードに決定される。
図10は、図4および図5に示す処理で決定された駆動モードに応じて、エンジン3や回転機21などの動作を制御するための処理を示している。まず、図10のステップ71では、通常モードフラグF_NORMが「1」であるか否かを判別する。この答がYESで、駆動モードが通常モードに決定されているときには、通常モードによりエンジン3や回転機21を制御するために、通常モード制御処理を実行し(ステップ72)、本処理を終了する。
この通常モード制御処理では、充電状態SOCが前記ステップ12で用いた所定値SOCREFよりも大きく、かつ、要求トルクTREQが比較的小さな車両の低・中負荷走行中には、EVモードによって、ハイブリッド車両Vの動力源として回転機21のみが用いられ、それ以外のときには、ENGモードによってエンジン3のみが、HVモードによってエンジン3および回転機21の双方が、動力源として用いられる。以下、これらのEVモード、ENGモードおよびHVモードにおける制御動作について、簡単に説明する。
・EVモード
EVモード中には、クラッチCLを解放することによって、エンジン3と回転機21の間が遮断される。また、燃料噴射量の目標値である最終燃料噴射量TOUTを値0に設定するとともに、この最終燃料噴射量TOUTに基づく駆動信号を燃料噴射弁7に出力する。これにより、燃料噴射弁7からエンジン3への燃料の供給が停止されることによって、エンジン3の燃焼運転が停止される。さらに、点火プラグ6の点火動作が停止される。また、要求トルクTREQに応じ、PDU23を制御することにより、バッテリ22から回転機21に供給される電力を制御することによって、回転機21の出力トルク(以下「回転機トルク」という)が、要求トルクTREQになるように制御される。
・ENGモード
ENGモード中には、クラッチCLを締結することによって、エンジン3と回転機21の間が接続される。また、吸入空気量を次のように制御する。まず、エンジン回転数NEおよび要求トルクTREQに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、吸入空気量の目標値である目標吸入空気量AIROBJを算出する。このマップでは、目標吸入空気量AIROBJは、要求トルクTREQが大きいほど、エンジン3のより大きな出力トルクを得るために、より大きな値に設定されている。次いで、算出された目標吸入空気量AIROBJに基づく駆動信号をTHアクチュエータ8bに出力する。これにより、スロットル弁開度THが制御されることによって、吸入空気量が、目標吸入空気量AIROBJになるように制御される。
さらに、燃料噴射量を次のように制御する。すなわち、エンジン回転数NEおよび吸気圧PBAに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、基本噴射量TIBを算出し、算出された基本噴射量TIBに空燃比補正係数KAFを乗算することによって、最終燃料噴射量TOUTを算出するとともに、この最終燃料噴射量TOUTに基づく駆動信号を燃料噴射弁7に出力する。これにより、燃料噴射量が、最終燃料噴射量TOUTになるように制御される。この場合、基本的には、空燃比補正係数KAFは、O2センサ出力SO2が所定値SO2REFになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムに従って、算出される。
また、EGRガスの量を次のように制御する。すなわち、エンジン回転数NEおよび要求トルクTREQに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、EGRガスの量の目標値である目標EGRガス量EGROBJを算出するとともに、算出された目標EGRガス量EGROBJに基づく駆動信号をEGR制御弁12に出力する。これにより、EGR制御弁12のバルブリフト量LFTEGRが制御されることによって、EGRガスの量が、目標EGRガス量EGROBJになるように制御される。また、上記のマップでは、要求トルクTREQが大きいほど、吸入空気量が大きいことにより失火が発生しにくいので、目標EGRガス量EGROBJは、より大きな値に設定されている。
さらに、点火時期を次のように制御する。すなわち、エンジン回転数NEおよび要求トルクTREQに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、点火時期の目標値である目標点火時期IGOBJを算出するとともに、算出された目標点火時期IGOBJに基づく駆動信号を点火プラグ6に出力する。これにより、点火時期が、目標点火時期IGOBJになるように制御される。また、上記のマップでは、目標点火時期IGOBJは、要求トルクTREQが大きいほど、より遅角側の値に設定されている。ENGモード中、以上の吸入空気量、燃料噴射量、EGRガスの量および点火時期の制御によって、エンジントルクが、要求トルクTREQになるように制御されるとともに、エンジン3に供給される混合気の空燃比が、理論空燃比になるように制御される。また、ENGモード中、PDU23を制御することによって、バッテリ22から回転機21への電力供給と、回転機21における発電がいずれも停止される。
・HVモード
HVモード中には、上述したENGモードの場合と同様、クラッチCLの締結により、エンジン3と回転機21の間が接続される。また、ENGモードの場合と比較して、吸入空気量、燃料噴射量、EGRガスの量および点火時期を、エンジントルクが要求トルクTREQになるように制御するのではなく、そのときのエンジン回転数NEに対してエンジン3の最良の燃費が得られるように制御する点が、主に異なっている。
また、HVモード中には、そのような吸入空気量などの制御によって発生したエンジントルクが、要求トルクTREQに対して余る場合には、その余剰分が、PDU23の制御により、回転機21において電気エネルギに変換されるとともに、バッテリ22に充電される。一方、エンジントルクが要求トルクTREQに対して不足する場合には、PDU23の制御によるバッテリ22から回転機21への電力の供給により、回転機21からトルクを出力することによって、その不足分が補われる。以上により、HVモード中には、エンジントルクと回転機トルクの和が、要求トルクTREQになるように制御される。
一方、前記ステップ71の答がNOのときには、掃気モードフラグF_SCAVMが「1」であるか否かを判別する(ステップ73)。この答がYESで、駆動モードが掃気モードに決定されているときには、掃気モードによりエンジン3や回転機21を制御するために、掃気モード制御処理を後述するように実行し(ステップ74)、本処理を終了する。一方、ステップ73の答がNOのときには、リッチ燃焼モードフラグF_RICHMが「1」であるか否かを判別する(ステップ75)。
この答がYESで、駆動モードがリッチ燃焼モードに決定されているときには、リッチ燃焼モードによりエンジン3や回転機21を制御するために、リッチ燃焼モード制御処理を後述するように実行し(ステップ76)、本処理を終了する。一方、ステップ75の答がNOのとき、すなわち、駆動モードがエンジン下限トルクモードに決定されているときには、エンジン下限トルクモードによりエンジン3や回転機21を制御するために、エンジン下限トルクモード制御処理を後述するように実行し(ステップ77)、本処理を終了する。
図11は、図10のステップ74で実行される掃気モード制御処理を示している。まず、ステップ81では、クラッチCLを解放状態に制御し、それにより、エンジン3と回転機21の間を遮断状態に保持する。次いで、スロットル弁開度THを全開状態に制御する(ステップ82)とともに、最終燃料噴射量TOUTを値0に設定する(ステップ83)。このステップ83の実行に伴い、最終燃料噴射量TOUTに基づく駆動信号が燃料噴射弁7に出力される。これにより、燃料噴射量が値0になるように制御されることによって、エンジン3への燃料の供給が停止され、ひいては、エンジン3の燃焼運転が停止される。
次に、EGR制御弁12を全閉状態に制御する(ステップ84)。これにより、吸気通路4へのEGRガスの還流が停止される。次いで、点火プラグ6による点火動作を停止する(ステップ85)。次に、次サイクル要求トルクNCTREQに応じ、PDU23を制御することによって、バッテリ22から回転機21に供給される電力を制御し(ステップ86)、本処理を終了する。これにより、回転機トルクが、次サイクル要求トルクNCTREQになるように制御される。
また、図12は、図10のステップ76で実行されるリッチ燃焼モード制御処理を示している。まず、ステップ91では、クラッチCLを締結状態に制御し、それにより、エンジン3と回転機21の間を接続状態に保持する。次いで、エンジン回転数NEおよび次サイクル要求トルクNCTREQに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、目標吸入空気量AIROBJを算出する(ステップ92)。このマップでは、目標吸入空気量AIROBJは、前述した通常モード制御処理の場合と同じ理由により、次サイクル要求トルクNCTREQが大きいほど、より大きな値に設定されている。また、ステップ92の実行に伴って、目標吸入空気量AIROBJに基づく駆動信号がTHアクチュエータ8bに出力され、それにより、スロットル弁開度THが制御されることによって、吸入空気量が、目標吸入空気量AIROBJになるように制御される。
次に、通常モード制御処理の場合と同様、エンジン回転数NEおよび吸気圧PBAに応じ、所定のマップを検索することによって、基本噴射量TIBを算出する(ステップ93)。次いで、燃焼安定空燃比STA/Fと、算出された実空燃比A/FACTとの偏差(STA/F−A/FACT)を、空燃比偏差DEA/Fとして算出する(ステップ94)。次に、算出された空燃比偏差DEA/Fに応じ、所定のフィードバック制御アルゴリズムに従って、空燃比補正係数KAFを算出する(ステップ95)。
次いで、上記ステップ93で算出された基本噴射量TIBに、空燃比補正係数KAFを乗算することによって、最終燃料噴射量TOUTを算出する(ステップ96)。これに伴って、最終燃料噴射量TOUTに基づく駆動信号が燃料噴射弁7に出力され、それにより、燃料噴射量が、最終燃料噴射量TOUTになるように制御される。
次に、エンジン回転数NEおよび次サイクル要求トルクNCTREQに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、目標EGRガス量EGROBJを算出する(ステップ97)。このマップでは、目標EGRガス量EGROBJは、通常モード制御処理の場合と同じ理由により、次サイクル要求トルクNCTREQが大きいほど、より大きな値に設定されている。また、ステップ97の実行に伴って、目標EGRガス量EGROBJに基づく駆動信号がEGR制御弁12に出力され、それにより、バルブリフトLFTEGRが制御されることによって、EGRガスの量が、目標EGRガス量EGROBJになるように制御される。
次いで、エンジン回転数NEおよび次サイクル要求トルクNCTREQに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、目標点火時期IGOBJを算出する(ステップ98)。このマップでは、目標点火時期IGOBJは、次サイクル要求トルクNCTREQが大きいほど、より遅角側の値に設定されている。また、ステップ98の実行に伴って、目標点火時期IGOBJに基づく駆動信号が点火プラグ6に出力され、それにより、点火時期が、目標点火時期IGOBJになるように制御される。次に、PDU23を制御することによって、バッテリ21から回転機21への電力供給と、回転機21における発電をいずれも停止し(ステップ99)、本処理を終了する。以上のステップ92〜98の実行による吸入空気量、燃料噴射量、EGRガスの量および点火時期の制御によって、エンジントルクが、次サイクル要求トルクNCTREQになるように制御されるとともに、エンジン3に供給される混合気の空燃比が、燃焼安定空燃比STA/Fになるように制御される。
図13は、図10のステップ77で実行されるエンジン下限トルクモード制御処理を示している。まず、エンジン下限トルクモードの技術的意義について説明する。図14は、エンジントルクと前述した第1限界EGR率EGRLMT1の関係を、エンジン3の空燃比が燃焼安定空燃比STA/Fよりもリーン側の所定の空燃比である場合について示している。図5のステップ9により次燃焼サイクル中に失火が発生するおそれがあると判定されている場合において、エンジントルクを次サイクル要求トルクNCTREQになるように制御したときには、このエンジントルクと次サイクルEGR率NCEGRRとの関係は、例えば点Aで示される。この点Aで示すように、次サイクルEGR率NCEGRRは、このエンジントルクに対応する第1限界EGR率EGRLMT1よりも大きくなる。
このエンジン下限トルクモードは、このような失火の発生を確実に回避するために、点Bに示すように、第1限界EGR率EGRLMT1が次サイクルEGR率NCEGRRよりも大きくなるうちの最小のエンジントルク(以下「エンジン下限トルク」という)TELMTに、エンジントルクを制御する駆動モードである。また、この場合、図14に示すように、エンジントルクは、エンジン下限トルクTELMTに制御されることによって、次サイクル要求トルクNCTREQよりも大きくなる。これに対し、エンジン下限トルクモードでは、この次サイクル要求トルクNCTREQに対するエンジントルクの余剰分が、回転機21で電気エネルギに変換され、バッテリ22に充電される。
まず、図13のステップ101では、クラッチCLを締結状態に制御し、それにより、エンジン3と回転機21の間を接続状態に保持する。次いで、次サイクルEGR率NCEGRRに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、エンジン下限トルクTELMTを算出する(ステップ102)。このマップでは、エンジン下限トルクTELMTは、上述した技術的意義に従って、エンジン下限トルクTELMTに対応する第1限界EGR率EGRLMT1が次サイクルEGR率NCEGRRよりも大きくなるような最小のエンジントルクに設定されており、次サイクルEGR率NCEGRRが大きいほど、より大きな値に設定されている。
次に、エンジン回転数NEと、上記ステップ102で算出されたエンジン下限トルクTELMTに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、目標吸入空気量AIROBJを算出する(ステップ103)。このマップでは、目標吸入空気量AIROBJは、通常モード制御処理の場合と同じ理由により、エンジン下限トルクTELMTが大きいほど、より大きな値に設定されている。また、ステップ103の実行に伴って、図12のステップ92の場合と同様、スロットル弁開度THが制御されることによって、吸入空気量が、目標吸入空気量AIROBJになるように制御される。
次いで、図12のステップ93と同様、エンジン回転数NEおよび吸気圧PBAに応じ、所定のマップを検索することによって基本噴射量TIBを算出する(ステップ104)。次に、通常モード制御処理の場合と同様、O2センサ出力SO2が所定値SO2REFになるように、所定のフィードバック制御アルゴリズムに従って、空燃比補正係数KAFを算出する(ステップ105)とともに、ステップ104で算出された基本噴射量TIBに、ステップ105で算出された空燃比補正係数KAFを乗算することによって、最終燃料噴射量TOUTを算出する(ステップ106)。これに伴って、図12のステップ96の場合と同様、燃料噴射量が、最終燃料噴射量TOUTになるように制御される。
次いで、図12のステップ97と同様、エンジン回転数NEおよび次サイクル要求トルクNCTREQに応じ、所定のマップを検索することによって、目標EGRガス量EGROBJを算出する(ステップ107)。これに伴い、ステップ97の場合と同様、バルブリフト量LFTEGRが制御されることによって、EGRガスの量が、目標EGRガス量EGROBJになるように制御される。
次に、エンジン回転数NEおよびエンジン下限トルクTELMTに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、目標点火時期IGOBJを算出する(ステップ108)。このマップでは、目標点火時期IGOBJは、エンジン下限トルクTELMTが大きいほど、より遅角側の値に設定されている。また、ステップ108の実行に伴って、図12のステップ98の場合と同様、点火プラグ6の点火時期が、目標点火時期IGOBJになるように制御される。以上のステップ103〜108の実行による吸入空気量、燃料噴射量および点火時期の制御によって、エンジントルクが、エンジン下限トルクTELMTになるように制御されるとともに、エンジン3に供給される混合気の空燃比が、理論空燃比になるように制御される。
次いで、エンジン下限トルクTELMTと次サイクル要求トルクNCTREQとの偏差(TELMT−NCTREQ)を、トルク偏差DETREQとして算出する(ステップ109)。次に、ステップ109で算出されたトルク偏差DETREQに基づき、PDU23を制御することによって、回転機21で発電する電力を制御し(ステップ110)、本処理を終了する。これにより、回転機21で発電する電力が、トルク偏差DETREQが値0になるように制御されるとともに、発電された電力がバッテリ22に充電される。すなわち、次サイクル要求トルクNCTREQに対する、エンジン下限トルクTELMTに制御されるエンジントルクの余剰分が、バッテリ22に充電される。
また、これまでに述べた第1実施形態における各種の要素と、特許請求の範囲に記載された発明(以下「本発明」という)における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第1実施形態におけるスロットル弁機構8および燃料噴射弁7が、本発明における吸気制御弁および燃料供給手段にそれぞれ相当するとともに、第1実施形態におけるバッテリ22が、本発明における蓄電装置に相当する。また、第1実施形態におけるクランク角センサ31が、本発明における運転状態検出手段および回転数検出手段に相当するとともに、第1実施形態におけるEGRリフトセンサ35およびエアフローセンサ36が、本発明における運転状態検出手段に相当する。
さらに、第1実施形態におけるLAFセンサ33、触媒装置9およびO2センサ34が、本発明における空燃比検出手段、触媒および酸素濃度パラメータ検出手段にそれぞれ相当する。また、第1実施形態におけるECU2が、本発明における運転状態検出手段、次サイクルEGR率算出手段、限界EGR率算出手段、次サイクル失火判定手段、要求トルク算出手段、制御手段、機械損失トルク算出手段、空燃比検出手段、回転数検出手段、およびリッチ化判定手段に相当するとともに、第1実施形態におけるPDU23が、本発明における制御手段に相当する。さらに、第1実施形態における第1限界EGR率EGRLMT1、O2センサ出力SO2、エンジン回転数NEおよび燃焼安定空燃比STA/Fが、本発明における限界EGR率、酸素濃度パラメータ、検出された内燃機関の回転数および所定のリッチ空燃比にそれぞれ相当する。
以上のように、第1実施形態によれば、次サイクルEGR率NCEGRRが、スロットル弁通過空気量GAIRTHやEGRガス量GEGRなどのエンジン3の運転状態に基づいて算出される(図4のステップ4)とともに、第1限界EGR率EGRLMT1が、エンジン回転数NEや次サイクル要求トルクNCTREQなどのエンジン3の運転状態に基づいて算出される(図4のステップ5〜8)。また、両者EGRLMT1,NCTREQの比較結果に基づいて、次燃焼サイクルにおいてEGRガスの影響により失火が発生するおそれがあるか否かが判定される(図5のステップ9)。
さらに、次燃焼サイクルにおいてEGRガスの影響により失火が発生するおそれがあると判定されているとき(図5のステップ9:YES)、すなわち次サイクル失火条件が成立しているときに、掃気モード制御処理が実行され(図5のステップ15、図10のステップ72)、その実行中、エンジン3への燃料の供給の停止(図11のステップ83)によりエンジン3の燃焼運転が停止されるとともに、吸気通路4へのEGRガスの還流が停止される(図11のステップ84)。これにより、EGR通路11におけるEGR制御弁12の下流側と、吸気通路4におけるEGR通路11との接続部よりも下流側に残留していたEGRガス(以下「残留EGRガス」という)を、燃焼室3eを介して排気通路5に掃気(排出)することができる。したがって、その後、エンジン3の燃焼運転を再開するに際し、残留EGRガスによる影響を受けることなく、燃焼運転を再開することができる。また、掃気モード制御処理の実行中、スロットル弁8aが全開状態に制御されるので、燃焼室3eへの残留EGRガスの吸入量を大きくすることができ、したがって、残留EGRガスを迅速に掃気することができる。
さらに、次燃焼サイクルにおいてEGRガスの影響により失火が発生するおそれがあるか否かの判定が、次サイクルEGR率NCEGRRと第1限界EGR率EGRLMT1との比較結果に基づいて行われ、両パラメータNCEGRR,EGRLMT1はいずれも、エンジン3の次の燃焼サイクルを対象として算出された予測値である。これにより、EGRガスの影響によりエンジン3の失火が発生すると予測された時点で、掃気モード制御処理を開始することができ、したがって、例えばハイブリッド車両Vの減速走行の開始時で、残留EGRガスの影響により失火が発生するおそれがあるときに、失火を確実に回避することができる。
また、掃気モード制御処理の実行中、ハイブリッド車両Vの動力源として、回転機21のみが用いられるとともに、回転機トルクが、次サイクル要求トルクNCTREQになるように制御される(図11のステップ86)。したがって、ハイブリッド車両Vが減速走行状態にあることにより要求トルクTREQが急減する状態(以下「減速時トルク急減状態」という)において、急減する要求トルクTREQに見合った大きさのトルクを回転機21から出力することができ、それにより、ドライバビリティを向上させることができる。
さらに、次サイクル失火条件が成立している場合において、次サイクル要求トルクNCTREQが機械損失トルクFRTRQ以上のとき(図5のステップ14:NO)、すなわちエンジン駆動条件が成立しているときに、エンジン3を動力源として用いるリッチ燃焼モード制御処理が実行される(図5のステップ18、図10のステップ76)。また、エンジン駆動条件が成立していないとき(NCTREQ<FRTRQ)に、回転機21のみを動力源として用いる掃気モード制御処理が実行される。したがって、減速時トルク急減状態において、急減する要求トルクTREQに応じて、リッチ燃焼モード制御処理および掃気モード制御処理のいずれを実行するかを適切に判定することができ、ひいては、燃料を有効に使用することができる。
さらに、リッチ燃焼モード制御処理の実行中、次サイクル要求トルクNCTREQおよび実空燃比A/FACTに応じ、吸入空気量および燃焼噴射量を制御することによって、エンジン3に供給される混合気の空燃比が、理論空燃比よりもリッチな所定の燃焼安定空燃比STA/Fになるように制御されるとともに、エンジントルクが、次サイクル要求トルクNCTREQになるように制御される(図12のステップ92〜96)。したがって、失火を確実に回避することができるとともに、減速時トルク急減状態において、急減する要求トルクTREQに見合った大きさのトルクをエンジン3から出力することができる。
また、掃気モード制御処理の実行中には、エンジン3への燃料供給を停止するので、その開始時と、その後のエンジン3への燃料供給の再開時に、トルクショックが発生する場合がある。したがって、エンジン駆動条件が成立しているとき(NCTREQ≧FRTRQ)に、掃気モード制御処理を実行せずに、リッチ燃焼モード制御処理を実行することによって、上記のようなトルクショックを発生させることがない。さらに、機械損失トルクFRTRQを、エンジン回転数NEに基づいて算出する(図5のステップ13)ので、この算出を適切に行うことができる。また、掃気モード制御処理の実行中、クラッチCLにより回転機21とエンジン3の間を遮断する(図11のステップ81)ので、燃焼運転が停止されたエンジン3が、回転機21の負荷にならない。
さらに、次サイクル失火条件およびエンジン駆動条件に加え、O2センサ出力SO2が所定値SO2REF以下のとき(図5のステップ17:NO)、すなわち第2リッチ化条件が成立しているときに、リッチ燃焼モード制御処理が実行される。これにより、リッチ燃焼モード制御処理の実行に伴って発生した排ガス中のHCを、触媒装置9で十分に酸化させることができ、良好な排ガス特性を確保することができる。また、第2リッチ化条件が成立していないとき(SO2>SO2REF)、すなわち、炭化水素を触媒装置9で十分に酸化させることができないようなときに、リッチ燃焼モード制御処理を実行せずに、掃気モード制御処理を実行するので、排ガス特性が悪化することがない。
さらに、次サイクル失火条件が成立しているときに、エンジン3に供給される混合気の空燃比を燃焼安定空燃比STA/Fに制御することによって、エンジン3の失火を発生させずに、エンジントルクを次サイクル要求トルクNCTREQに制御可能であるか否かが、すなわち第1リッチ化条件が成立しているか否かが、次サイクルEGR率NCEGRRおよび次サイクル要求トルクNCTREQに応じて判定される(図5のステップ11、16、20)。したがって、減速時トルク急減状態において、この判定を、急減する要求トルクTREQに応じて適切に行うことができる。
また、第1リッチ化条件が成立しているとき(図5のステップ16:YES、ステップ20:YES)に、エンジン下限トルクモード制御処理が実行される(図5のステップ19、図10のステップ77)。さらに、その実行中、エンジントルクがエンジン下限トルクTELMTになるように、吸入空気量および燃料噴射量が制御される(図13のステップ103〜106)。このことと、第1限界EGR率EGRLMT1が次サイクルEGR率NCEGRRよりも大きくなり、かつ、エンジントルクが次サイクル要求トルクNCTREQよりも大きくなるような最小のエンジントルクに、このエンジン下限トルクTELMTが次サイクルEGR率NCEGRRに応じて設定される(図13のステップ102)ことから、失火を確実に回避することができる。また、この場合、目標EGRガス量EGROBJの算出を、次サイクル要求トルクNCTREQよりも大きなエンジン下限トルクTELMTではなく、次サイクル要求トルクNCTREQに応じて行うので、EGRガス量を増大させることがない。
さらに、エンジン下限トルクモード制御処理の実行中、次サイクル要求トルクNCTREQに対するエンジントルクの余剰分が電気エネルギとして、バッテリ22に充電される(図13のステップ109、110)ので、減速時トルク急減状態において、急減する要求トルクTREQに見合った大きさのトルクを出力することができるとともに、エンジン3の良好な燃費を確保することができる。
次に、本発明の第2実施形態によるハイブリッド車両Vの制御装置について説明する。図15は、この第2実施形態による駆動モードの決定処理を示している。本処理は、第1実施形態と比較し、前述した掃気モード制御処理を、その開始から後述する掃気完了時間TSCAVが経過するまで、継続して実行する点が、主に異なっている。図15において、前述した図4に示す第1実施形態による駆動モードの決定処理と同じ実行内容のステップについては、同じステップ番号を付している。以下、図15に示す処理について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
前記ステップ8に続くステップ121では、掃気モードフラグF_SCAVMが「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、掃気モード制御処理の実行中でないときには、後述する掃気完了時間算出済みフラグF_DONEを「0」にリセットする(ステップ122)とともに、アップカウント式の掃気タイマのタイマ値tSCAVを値0にリセットし(ステップ123)、図5のステップ9以降を実行する。
一方、ステップ121の答がYES(F_SCAVM=1)で、掃気モード制御処理の実行中であるときには、掃気完了時間算出済みフラグF_DONEが「1」であるか否かを判別する(ステップ124)。この答がNOで、F_DONE=0のときには、所定の残留EGRガス容積RESEGRを吸入ガス量GFLOで除算することによって、掃気完了時間TSCAVを算出する(ステップ125)。この残留EGRガス容積RESEGRは、残留EGRガスが残留している領域の容積、すなわち、EGR通路11におけるEGR制御弁12の下流側と、吸気通路4におけるEGR通路11との接続部よりも下流側とから成る領域の容積[m3]である。また、吸入ガス量GFLOは、単位時間当たりに燃焼室3eに吸入される混合ガスの量[m3/sec]であり、エンジン回転数NEおよびエンジン3の行程容積に基づいて算出される。
次いで、掃気完了時間算出済みフラグF_DONEを「1」にセットし(ステップ126)、ステップ127に進む。また、ステップ126を実行した後には、上記ステップ124の答がYES(F_DONE=1)になり、その場合には、ステップ127に進む。以上により、掃気完了時間TSCAVは、掃気モード制御処理の開始時にのみ算出される。
このステップ127では、掃気タイマのタイマ値tSCAVが、ステップ125で算出された掃気完了時間TSCAV以上か否かを判別する。この答がNOのときには、そのまま本処理を終了する。一方、ステップ127の答がYESで、掃気タイマのタイマ値tSCAVが掃気完了時間TSCAV以上になったとき、すなわち、掃気モードの開始から掃気完了時間TSCAVが経過したときには、掃気モード制御処理を終了するために、掃気モードフラグF_SCAVを「0」にリセットする(ステップ128)とともに、前記ステップ122以降を実行する。
以上のように、第2実施形態によれば、掃気モードフラグF_SCAVは、「0」から「1」に切り換わってから、掃気完了時間TSCAVが経過するまで(ステップ127:NO)は、「1」に保持される。これにより、掃気モード制御処理は、その開始から掃気完了時間TSCAVが経過するまで、継続して実行される。また、掃気完了時間TSCAVが、残留EGRガスが残留している領域の容積である残留EGRガス容積RESEGRと、単位時間当たりに燃焼室3eに流入する混合ガスの量である吸入ガス量GFLOに応じて算出される。以上により、残留EGRガスを確実に掃気することができるとともに、掃気モード制御処理の実行によるエンジン3への燃料供給の停止と、掃気モード制御処理の終了による燃料供給の再開が短時間で繰り返されるのを回避することができ、それにより、ドライバビリティを向上させることができる。また、第2実施形態におけるECU2が、本発明における実行期間算出手段に相当するとともに、第2実施形態における掃気完了時間TSCAVが、本発明における実行期間に相当する。
なお、本発明は、説明した第1および第2実施形態(以下、総称して「実施形態」という)に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、次サイクル失火条件(図5のステップ9)に加え、回転機駆動条件(ステップ12)などの各種の条件が成立しているときに、掃気モード制御処理を実行しているが、本発明の趣旨の範囲内で、これらの各種の条件を適宜、省略してもよい。また、実施形態では、次サイクル失火条件、回転機駆動条件およびエンジン駆動条件(ステップ14)がいずれも成立するとともに、第1および第2リッチ化条件(ステップ16、17)の双方が成立しているときに、リッチ燃焼モード制御処理を実行しているが、本発明の趣旨の範囲内で、これらの回転機駆動条件、第1および第2リッチ化条件を適宜、省略してもよい。
さらに、実施形態では、次の算出、判別および制御に、次サイクル要求トルクNCTREQを用いているが、要求トルクTREQを用いてもよい。
・第2限界EGR率EGRLMT2の算出(図5のステップ11)。
・機械損失トルクFRTRQとの比較による判別(ステップ14)。
・掃気モード制御処理における回転機21の制御(図11のステップ86)。
・リッチ燃焼モード制御処理における吸入空気量などの制御(図12のステップ92)。
また、実施形態は、混合ガス通過領域に流入する混合ガスに対する新気の比率である新気率KFARを算出し、新気率記憶値KFARBUFとして記憶するとともに、記憶された複数の新気率記憶値KFARBUFから、次の燃焼サイクルにおいて混合ガスが気筒3bの吸気口に到達するタイミングに対応するものを選択し、選択された新気率記憶値KFARBUFに基づいて、次サイクルEGR率NCEGRRを算出した例であるが、その算出手法は、エンジン3の運転状態に基づく限り、任意である。例えば次のような算出手法が可能である。
すなわち、まず、前述したスロットル弁通過空気量GAIRTHおよびEGRガス量GEGRに応じて、混合ガス通過領域に流入する混合ガスに対するEGRガスの比率を算出するとともに、記憶する。次いで、エンジン回転数NEに基づいて、混合ガス通過領域に流入した混合ガスが気筒3bの吸入口に到達するまでのむだ時間を算出する。次に、算出された無駄時間に基づいて、記憶された複数のEGRガスの比率から、次の燃焼サイクルにおいて混合ガスが気筒3bの吸気口に到達するタイミングに対応するものを選択するとともに、選択されたEGRガスの比率を、次サイクルEGR率NCEGRRとして設定する。
さらに、実施形態では、第1限界EGR率EGRLMT1の算出に、エンジン回転数NEや次サイクル要求トルクNCTREQを用いているが、エンジン3の運転状態を表すパラメータであれば他のパラメータ、例えば次燃焼サイクルに吸入される吸入空気量(以下「次サイクル吸入空気量」という)の推定値を用いてもよい。この場合、例えば、次サイクル吸入空気量の推定は、次サイクル要求トルクNCTREQと同様の算出手法によって行われる。また、実施形態では、次サイクルEGR率NCEGRRが第1限界EGR率EGRLMT1よりも大きいときに、次燃焼サイクルにおいてEGRガスの影響により失火が発生するおそれがあると判定しているが、次サイクルEGR率NCEGRRと第1限界EGR率EGRLMT1との比(NCEGRR/EGRLMT1)が所定値よりも大きいときに、または、第1限界EGR率EGRLMT1と次サイクルEGR率NCEGRRとの偏差(EGRLMT1−NCEGRR)が所定値よりも大きいときに、そのように判定してもよい。
さらに、実施形態では、掃気モード制御処理において、スロットル弁8aを全開状態に制御しているが、スロットル弁8aが開弁しているのであれば、全開でなくてもよい。また、実施形態では、LAFセンサ33で検出された排ガス中の酸素濃度に基づいて実空燃比A/FACTを算出(取得)しているが、他の任意の手法によって取得してもよい。例えば、排ガス中のHCやCOは、燃焼室3eで燃焼した混合気の空燃比と相関関係にあるので、これらのパラメータをセンサで検出するとともに、その検出値に基づいて実空燃比A/FACTを算出してもよい。さらに、実施形態では、リッチ燃焼モード制御処理において、エンジントルクが次サイクル要求トルクNCTREQになるように、吸入空気量を制御するとともに、空燃比が燃焼安定空燃比STA/Fになるように、燃料噴射量を制御しているが、これとは逆に、エンジントルクが次サイクル要求トルクNCTREQになるように、燃料噴射量を制御するとともに、空燃比が燃焼安定空燃比STA/Fになるように、吸入空気量を制御してもよい。この場合にも、次サイクル要求トルクNCTREQに代えて、要求トルクTREQを用いてもよい。
また、実施形態では、触媒装置9は、三元触媒で構成されたタイプのものであるが、排ガス中の炭化水素を酸化させることによって排ガスを浄化する触媒であれば、他の任意の触媒、例えば酸化触媒で構成されたタイプのものでもよい。さらに、実施形態では、本発明における酸素濃度パラメータとして、O2センサ出力SO2を用いているが、触媒装置9における排ガス中の酸素濃度を表すパラメータであれば、他の任意のパラメータを用いてもよい。例えば、排ガス中のHCやCO、NOxの濃度は、酸素濃度と相関関係にあるので、触媒装置9における排ガス中のHCやCO、NOxの濃度を、酸素濃度パラメータとして用いてもよい。また、酸素濃度パラメータとして、LAFセンサ33で検出された排ガス中の酸素濃度を用いるとともに、O2センサ34を省略してもよい。
さらに、実施形態では、本発明における蓄電装置は、バッテリ22であるが、キャパシタでもよい。また、実施形態では、エンジン下限トルクモード制御処理において、エンジントルクを、エンジン下限トルクTELMTに、すなわち第1限界EGR率EGRLMT1が次サイクルEGR率NCEGRRよりも大きくなるような最小のエンジントルクに、制御しているが、第1限界EGR率EGRLMT1が次サイクルEGR率NCEGRRよりも大きくなるようなエンジントルクであれば、最小のトルクでなくてもよい。さらに、実施形態では、エンジン下限トルクモード制御処理において、エンジントルクがエンジン下限トルクTELMTになるように、エンジン下限トルクTELMTに応じて、吸入空気量を制御しているが、燃料噴射量を制御してもよく、あるいは、吸入空気量および燃料噴射量の双方を制御してもよい。これらの場合にも、エンジントルクを上記のように制御してもよい。
また、実施形態では、掃気モード制御処理において、クラッチCLによって、エンジン3と回転機21の間を遮断状態に保持しているが、両者3,21の間を接続状態に保持してもよい。これにより、エンジン3のクランク軸3aを回転機21で強制的に回転させることによって、残留EGRガスをより迅速に掃気することができる。さらに、実施形態では、回転機21の制御を、ECU2およびPDU23を用いて行っているが、マイクロコンピュータを搭載した電気回路を用いて行ってもよい。また、実施形態では、エンジン3は、火花点火式のガソリンエンジンであるが、圧縮着火式のディーゼルエンジンや、LPGエンジンなど、産業用の各種の内燃機関に適用可能である。さらに、実施形態は、制御装置1を、ハイブリッド車両Vに適用した例であるが、制御装置1は、船舶や航空機にも適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。