JP5448587B2 - X線回折計測用の試料ホルダ及びx線回折計測方法 - Google Patents

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Description

本発明は、大気暴露により変質しやすい化学物質のX線回計測技術に関する。
物質の結晶構造を調べる技術として、X線回計測法が知られている。このX線回計測法では、試料にX線を照射するため、試料の保持が重要となる。試料を保持する試料ホルダの構造が各種提案されている(例えば、特許文献1(図1)、特許文献2(図3)参照。)。
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図8は従来の試料ホルダの断面図であり、試料台101と、この試料台101に取り外し可能に取り付けることができるホルダ本体102と、このホルダ本体102にねじ込みことで一体化できるプラグ103とを準備する。なお、フラグ103には保持ピン104が設けられ、ホルダ本体102には保持ピン104を覆う筒状の試料封入部105が一体的に設けられている。
試料台101と、ホルダ本体102と、プラグ103とを分離しておく。そして、グローブボックス内で、保持ピン104の先端に試料106を付着させる。次に、フラグ103をホルダ本体102にねじ込み、このホルダ本体102を試料台101に取付けることで、図の形態が完成する。そして、X線回計測装置にかけ、コリメータ107からX線を試料106へ照射し、回X線が顕微鏡108に至る。これで、試料106の結晶構造を計測することができる。
しかし、試料106は、微細でかつ顕微鏡108で観察することができる透明な材料、例えばプラスチックやガラスに限られる。グローブボックス内での作業も細かい。
多量の試料を測定対象にでき、且つグローブボックス内での作業が簡便であることが望まれる。この要望に応えうる技術が、特許文献2に示されている。
特許文献2を次図に基づいて説明する。
図9は従来の別の試料ホルダの断面図であり、試料収納凹部111が設けられているホルダ本体112と、X線を透過するフィルム113と、リングパッキン114と、押さえリング115と、ビス116、116とを準備する。
グローブボックス内で、試料収納凹部111へ試料117を載せる。次に、フィルム113を被せ、このフィルム113の縁をリングパッキン114及び押さえリング115で軽く押さえる。続いて、ビス116、116で押さえリング115をホルダ本体112に固定する。フィルム113で密封された試料117を、X線回計測装置にかけることで、多量の試料を測定することができる。
しかし、フィルム113は繰り返して使用すると、皺が寄り、亀裂が入る。そのため、フィルムの交換頻度が高まり、計測コストが嵩む。
また、近年、高温における試料の結晶構造を調べる必要がでてきた。例えば、燃料電池の構成材料などがそうである。常温計測を前提とした特許文献1及び2の技術では、高温計測が困難である。対策として、仮に、X線回計測装置を恒温槽仕様にすると、X線回計測装置が極めて高価なものとなる。
そこで、普通のX線回計測装置を用いるにも拘わらず高温測定が可能であり且つ繰り返して使用することができる試料ホルダが必要となる。
特開平5−307012号公報 特開平11−6805号公報
本発明は、普通のX線回計測装置を用いるにも拘わらず高温測定が可能であり且つ繰り返して使用することができる試料ホルダ及びその使用方法を提供することを課題とする。
請求項1に係る発明は、料を載せる試料載せ部を有するホルダ本体、このホルダ本体に被せられX線透過部材を備えた上蓋、この上蓋と前記ホルダ本体との間に気密シール用ガスケットを備えているX線回折計測用の試料ホルダであって、
前記ホルダ本体は、上へ延びて上面に前記試料載せ部を備える柱部と、この柱部の下部から水平に張り出され前記気密シール用ガスケットを嵌めるガスケット溝を備えるフランジ部とからなり、
前記上蓋は、前記柱部に嵌る筒部と、この筒部の下部から水平に張り出されるフランジ部と、前記筒部の上部に渡された前記X線透過部材とからなることを特徴とする。
請求項2に係る発明では、請求項1記載のX線回計測用の試料ホルダは、グローブボックスに搬入搬出可能な大きさ及び重さの物であることを特徴とする。
請求項3に係る発明では、試料載せ部は、X線透過部材に沿って延びており、作業中に試料がずれることがなく且つX線回計測に必要な初期の試料表面状態が保持できる浅い凹部であることを特徴とする。
請求項4に係る発明では、X線透過部材は、ベリリウム又はベリリウム合金製であることを特徴とする。
請求項5に係る発明では、請求項1〜4のいずれか1項記載のX線回計測用の試料ホルダは、前記試料を加熱するヒータを内蔵すると共に加熱時における前記試料の近傍の温度を計測する測温手段を備えていることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載のX線回計測用の試料ホルダを、X線回計測装置に設置し、不活性ガス雰囲気の気密を保持した前記試料を加熱し高温時の結晶構造変化をその場でX線回計測することを特徴とする。
請求項1に係る発明では、気密シール用ガスケットにより、ホルダ本体と上蓋との間の気密性を確保することができ、試料載せ部に試料と共に不活性ガスを封じ込めることができる。結果、試料が大気暴露で変質することを防ぐことが可能となる。
また、X線透過部材に金属を使用すれば、高温での測定が可能になると共に繰り返しの使用が可能となる。
請求項2に係る発明では、X線回計測用の試料ホルダは、グローブボックスに搬入搬出可能な大きさ及び重さの物であって、筐体内で試料載せ部へ試料の充填作業が行え不活性ガスを封入することができて、筐体の外へ出しても試料の大気暴露による変質を防ぐことができる。
請求項3に係る発明では、試料載せ部は、X線透過部材に沿って延びた浅い凹部であり、作業中に試料がずれることがなく且つX線回計測に必要な初期の試料表面状態が保持できる。
請求項4に係る発明では、X線透過部材は、ベリリウム又はベリリウム合金製である。
ベリリウム又はベリリウム合金は、X線透過率が極めて高い金属である。金属であるため、耐熱温度が高いため高温での使用が可能であり、機械的強度が高く、劣化しにくいといった利点がある。
請求項5に係る発明では、請求項1〜4のいずれか1項記載のX線回計測用の試料ホルダは、前記試料を加熱するヒータを内蔵すると共に加熱時における前記試料の近傍の温度を計測する測温手段を備えているため、高温でのX線回計測が可能となる。しかも、ヒータを試料ホルダに内蔵したため、X線回計測装置にヒータを備える必要が無い。
すなわち、普通のX線回計測装置を用いるにも拘わらず高温測定が可能である。
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載のX線回計測用の試料ホルダを、X線回計測装置に設置し、不活性ガス雰囲気の気密を保持した試料を加熱し高温時の結晶構造変化をその場でX線回計測することを特徴とする。
請求項6によれば、普通の汎用のX線回計測装置を用いるにも拘わらず、試料が大気暴露により変質することを防ぐことが可能となり、且つ試料加熱高温時の結晶構造変化をその場で計測することが可能となり、且つ容易に試料交換作業ができ、運搬時に試料の表面状態を保つことが可能であるX線回計測方法が提供される。
本発明に係る試料ホルダの分解図である。 本発明の試料封入工程を説明する図である。 ヒータの取付要領を説明する図である。 本発明の試料ホルダをX線回計測装置に取り付ける際に用いるアタッチメントの説明図である。 本発明のX線回工程を説明する図である。 温度曲線の例を説明する図である。 ベリリウムの回強度を調べたグラフ図である。 従来の試料ホルダの断面図である。 従来の別の試料ホルダの断面図である。
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、試料ホルダ10は、上方に開いた凹状の試料載せ部11を有するホルダ本体12と、このホルダ本体12の上面に被せる上蓋13と、ホルダ本体12の下面に当てる下蓋14と、ヒータ15とを主要素とする。次に、各要素について詳しく説明する。
試料載せ部11は、X線透過部材31に沿って延びており、図2(b)に示されるように、作業中に試料がずれることがなく且つX線回計測に必要な初期の試料表面状態が保持できる浅い凹部である。
ホルダ本体12は、円柱などの柱部16と、この柱部16の下部から水平に張り出したフランジ部17と、このフランジ部17に設けたガスケット溝18及び第1雌ねじ部19、19と、柱部16の底の中央に設けたヒータ収納凹部21と、柱部16の底に且つヒータ収納凹部21の周囲に上向きに設けた第2雌ねじ部22及び測温手段23を装入する測温手段挿入穴24とからなり、柱部16の上部に試料載せ部11が設けられ、ガスケット溝18に気密シール用ガスケット25が嵌められている。測温手段23は、熱電対が好適であるが、測温抵抗体など他の手段であってもよい。
上蓋13は、柱部16に嵌る円筒などの筒部27と、この筒部27の下部から水平に張り出したフランジ部28と、このフランジ部28に設けた第1ボルト穴29、29と、筒部27の上部に渡し、ろう付けされたX線透過部材31とからなる。
このX線透過部材31の材質は、耐久性から金属とし、金属の中でベリリウム(金属ベリリウム)やベリリウム合金が好適である。その理由は後述する。
第1ボルト32は、第1ボルト穴29を介して、第1雌ねじ部19へねじ込むことができる。
下蓋14は、第2ボルト穴33及び測温手段通孔34とを備えた円板等の板である。
第2ボルト35は、第2ボルト穴33を介して、第2雌ねじ部22へねじ込むことができる。
次に、試料の準備について説明するが、試料は大気暴露が許されないため、不活性ガス雰囲気例えばグローブボックス内で以下の作業を行う。
先ず、図2(a)に示すように、試料瓶46から所定量の試料48を試料載せ部11へ移す。次に、(b)に示すように、上蓋13を被せ、第1ボルト32、32で、ホルダ本体12へ上蓋13を固定する。
これで、(c)に示す試料ホルダ10Bが完成する。フランジ部17とフランジ部28との間の隙間は、気密シール用ガスケット25でシールされている。そのため、この形態で、大気に晒しても、試料48が変質する心配はない。
続いて、図3(a)に示すように、ヒータ収納凹部21へヒータ15を入れ、下蓋14を被せ、第2ボルト35で固定する。これで、(b)に示す形態のヒータ付き試料ホルダ10が完成する。
すなわち、気密シール用ガスケット25により、ホルダ本体12と上蓋13との間の気密性を確保することができ、試料載せ部21に試料48と共に不活性ガスを封じ込めることができる。結果、試料48が大気暴露で変質することを防ぐことが可能となる。
さらに、試料ホルダ10は、研究者がグローブボックスなどの不活性ガス雰囲気の筐体に搬入搬出可能な大きさ及び重さの物であって、筐体内で試料載せ部へ試料の充填作業が行え不活性ガスを封入することができて、筐体の外へ出しても試料の大気暴露による変質を防ぐことができる。
図2(c)に示す試料ホルダ10Bや図3(b)に示すヒータ付き試料ホルダ10の形態で、グローブボックスから取り出す。
取り出した試料ホルダ10B又は10を、X線回計測装置へセットすることは差し支えないが、好ましくは、次に述べるアタッチメントを用いてX線回計測装置へセットする。
アタッチメント50は、図4(a)に示すように、平坦なベース51と、このベース51から立ち上げた筒体52と、この筒体52に収納すると共にベース51に載せたコイルスプリング53と、このコイルスプリング53の上部に載せた昇降板54と、筒体52の上部外周から水平に外方へ突出させたピン55、55と、これらのピン55、55に係合する傾斜溝56を有するリング蓋57とからなる。リング蓋57には、X線通過用開口部58が設けられている。
そして、昇降板54に試料ホルダ10を載せ、上からリング蓋57を取り付ける。次に、(b)に示すように、測温手段23を挿入する。
試料ホルダ10を含むアタッチメント50を、図5に示すX線回計測装置60にセットする。
次に、ヒータ15に通電する。温度制御部61は、測温手段23で得た温度情報に基づいてヒータ出力を制御し、試料48が所定の温度になるように、加熱する。
所定の温度に達したら、X線回計測装置60のX線照射部62からX線63を発射し、試料48に当て、受線部64でX線を受ける。受けたX線は、演算部65で解析される。
加熱及びその後の冷却は任意に設定することができる。例えば、図6に示すように、加熱、保温後に、1°/分程度の冷却速度で徐冷する曲線Aや、加熱、保温後に、17°/分程度の冷却速度で急冷する曲線Bを実施することができる。
図5に示すX線回計測装置60自体には、ヒータ等の加熱手段は不要である。仮に、X線回計測装置60を全体的に加熱しようとすると、大容量のヒータが必要となる。この点、本発明によれば、試料48の近傍にヒータ15を配置するため、ヒータ15の容量は小さくなる。
すなわち、試料ホルダを、X線回計測装置60に設置し、不活性ガス雰囲気の気密を保持した試料を加熱し高温時の結晶構造変化をその場でX線回計測することができる。
普通の汎用のX線回計測装置を用いるにも拘わらず、試料が大気暴露により変質することを防ぐことが可能となり、且つ試料加熱高温時の結晶構造変化をその場で計測することが可能となり、且つ容易に試料交換作業ができ、運搬時に試料の表面状態を保つことが可能であるX線回計測方法が提供される。
また、計測後に、図2(c)、(b)、(a)の順で、ホルダ本体12から上蓋13を外し、使用済みの試料48を除去する。そして、図2(a)、(b)、(c)の手順で試料収納凹部11に新しい試料48を入れ、試料ホルダ10Bを完成させて、次の計測を行う。
また、X線透過部材31が金属であるため、皺が寄ったり劣化する心配が無く、繰り返し使用することができると共に高温にも耐える。
したがって、本発明によれば、普通のX線回計測装置を用いるにも拘わらず高温測定が可能であり且つ繰り返して使用することができる試料ホルダが提供される。
次に、ベリリウム又はベリリウム合金について説明する。
X線透過部材31が無い状態(図2(a)の形態)で、標準試料についてX線回計測を行い、図7(a)の比較例を得た。3箇所に大きなピークが認められる。
X線透過部材31が有る状態(図2(c)の形態)で、標準試料についてX線回計測を行い、図7(b)の実施例を得た。3箇所に大きなピークが認められる。回強度は30%程度低減したが、図7(a)と同一の2θにおいて、大きなピークが認められる。
したがって、標準試料を用いて透過部材の有無によるピーク強度の補正を行うことにより、回計測の信頼性は、実施例は比較例に遜色ないと言える。
尚、X線透過部材31は、X線が透過する金属で構成される部材であれば、金属の材質は問わない。
本発明は、大気暴露により変質しやすい化学物質の高温でのX線回計測技術に好適である。
10、10B…試料ホルダ、11…試料載せ部、12…ホルダ本体、13…上蓋、15…ヒータ、23…測温手段、25…気密シール用ガスケット、31…X線透過部材、37…グローブボックス、45…不活性ガス供給源、60…X線回計測装置。

Claims (6)

  1. 料を載せる試料載せ部を有するホルダ本体、このホルダ本体に被せられX線透過部材を備えた上蓋、この上蓋と前記ホルダ本体との間に気密シール用ガスケットを備えているX線回折計測用の試料ホルダであって、
    前記ホルダ本体は、上へ延びて上面に前記試料載せ部を備える柱部と、この柱部の下部から水平に張り出され前記気密シール用ガスケットを嵌めるガスケット溝を備えるフランジ部とからなり、
    前記上蓋は、前記柱部に嵌る筒部と、この筒部の下部から水平に張り出されるフランジ部と、前記筒部の上部に渡された前記X線透過部材とからなることを特徴とするX線回計測用の試料ホルダ。
  2. 請求項1記載のX線回計測用の試料ホルダは、グローブボックスに搬入搬出可能な大きさ及び重さの物であることを特徴とするX線回計測用の試料ホルダ。
  3. 前記試料載せ部は、前記X線透過部材に沿って延びており、作業中に試料がずれることがなく且つX線回計測に必要な初期の試料表面状態が保持できる浅い凹部であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のX線回計測用の試料ホルダ。
  4. 前記X線透過部材は、ベリリウム又はベリリウム合金製であることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載のX線回計測用の試料ホルダ。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載のX線回計測用の試料ホルダは、前記試料を加熱するヒータを内蔵すると共に加熱時における前記試料の近傍の温度を計測する測温手段を備えていることを特徴とするX線回計測用の試料ホルダ。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載のX線回計測用の試料ホルダを、X線回計測装置に設置し、不活性ガス雰囲気の気密を保持した前記試料を加熱し高温時の結晶構造変化をその場でX線回計測することを特徴とするX線回計測方法。
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