JP5446488B2 - カテーテルの製造方法 - Google Patents
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サブルーメンの形成方法の第一例として、マンドレルに装着された内層の外面に沿って、ワイヤ内腔(サブルーメン)を有するスパゲッティチューブ(中空管)を軸方向に敷設し、これを外層で被覆して一体化することが記載されている(同文献の段落0025および0028を参照)。
また、第二例として、内層の押出成形時に加圧流体の注入によってサブルーメンを貫通して形成し、その周囲に外層を被覆することが記載されている(同文献の段落0026および0031を参照)。
そして、内層と外層とは、熱収縮性チューブの収縮圧によって一体化される(同文献の段落0033を参照)。
まず、第一例のように、内層に沿って中空管をまっすぐに配置した状態で外層を被覆する作業は容易ではなく、メインルーメンとサブルーメンとの位置関係を安定して再現することは困難である。また、内層と外層とを熱収縮性チューブで加圧一体化する構成であることから、熱収縮性チューブに所定の層厚を要し、カテーテルを小径化することが困難である。
また、第二例のように、内層の押出成形時に加圧流体でサブルーメンを貫通形成した場合には、かかるサブルーメンに操作線を挿通する作業がきわめて困難となる。サブルーメンの小径化に伴って、内層の押出成形時にその壁面の内部にサブルーメンを均一かつ滑らかに貫通形成することが困難となり、操作線をサブルーメンに押し込む際にその内壁面に引っ掛かりやすくなるためである。
前記樹脂材料よりも高融点かつ低粘着性の中空管と、芯線と、前記樹脂材料と、を共に押し出して前記シースを成形する押出工程と、
前記中空管に対して前記操作線を挿通する挿通工程と、
前記シースから前記芯線を抜去して前記メインルーメンを形成する抜去工程と、
を含む。
さらに、本発明の製造方法は、複数の工程が個々に相違するタイミングで実行されることに限定されない。このため、ある工程の実行中に他の工程が発生すること、ある工程の実行タイミングと他の工程の実行タイミングとの一部ないし全部が重複していること、等も許容される。
はじめに、本実施形態にかかる製造方法(以下、本方法という場合がある)により得られるカテーテルの概要を説明し、その後に本方法を詳細に説明する。
図1は、本方法により得られるカテーテル10の一例(以下、本実施形態のカテーテル10という)を示す縦断面模式図である。同図は、カテーテル10を軸線方向に切った断面を示している。同図の左方がカテーテル10の遠位端(先端)側にあたり、右方が近位端(基端)側にあたる。ただし、同図においては、カテーテル10の近位端側は図示を省略している。カテーテル10の軸線方向は図1の左右方向である。
図2は、図1のII-II断面図(横断面図)である。
そして、カテーテル10の遠位端部15に固定された操作線40が、3個のサブルーメン30にそれぞれ摺動可能に挿通されている。
ここで、カテーテル10の遠位端部15とは、カテーテル10の遠位端DEを含む所定の長さ領域をいう。同様に、カテーテル10の近位端部17(図3を参照)とは、カテーテル10の近位端PEを含む所定の長さ領域をいう。
内層21は、樹脂材料からなり、メインルーメン20が内部に形成された管状をなしている。
ブレード層50は、内層21の周囲にワイヤ52を編成してなる。
外層60は、内層21と同種または異種の樹脂材料12からなり。内層21の周囲に形成されてブレード層50を内包している。
コート層64は、潤滑処理が外表面に施された親水性の層である。
内層21には、一例として、フッ素系の熱可塑性ポリマー材料を用いることができる。より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などを用いることができる。
内層21にフッ素系樹脂を用いることにより、カテーテル10のメインルーメン20を通じて造影剤や薬液などを患部に供給する際のデリバリー性が良好となる。
ワイヤ52の断面形状は特に限定されず、丸線でも平線でもよい。
中空管32は、外層60を構成する樹脂材料12よりも、耐熱性、柔軟性および摺動性の高い熱可塑性のポリマー材料が好適に用いられる。
たとえば、中空管32をPTFE(融点=327℃)、PFA(融点=302℃)またはPEEK(融点=334℃)より構成し、外層60(樹脂材料12)をナイロンエラストマー(融点=160〜220℃)、PU(融点=60〜140℃)またはEVA(融点=約90℃)より構成するとよい。
ここで、中空管32の融点が樹脂材料12の融点よりも10℃以上、好ましくは30℃以上、さらに好ましくは100℃以上高いとよい。これにより、樹脂材料12を融点以上の十分な押出温度に加熱して押出成形を行うにあたって、中空管32の溶融が防止される。
操作線40の材料としては、たとえば、PEEK、PPS、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、PIもしくはPTFEなどの高分子ファイバー、または、SUS、耐腐食性被覆した鋼鉄線、チタンもしくはチタン合金などの可撓性の金属細線を用いることができる。
操作線40の基端(近位端)はサブルーメン30から突出している。また、操作線40の基端には、複数の操作線40を個別に牽引してカテーテル10の遠位端部15を屈曲させる操作部70が設けられている。操作部70の詳細は説明を省略する。
そして、3本の操作線40の牽引長さを個別に制御することにより、カテーテル10の遠位端部15を360度に亘り任意の向きに屈曲させることができる。これにより、カテーテル10の全体に対してトルクを負荷して遠位端部15を所定方向に向けるトルク操作をおこなうことなく、操作部70による操作線40の牽引操作のみによってカテーテル10の進入方向を操作することが可能となる。このため、本実施形態のカテーテル10に関しては、たとえば分岐する血管内を所望の方向に進入させることも可能である。
図4(a)は、本方法に用いられるカテーテル10の製造装置80の概要構成図である。同図(b)は、ダイ92と、ダイ92より押し出される樹脂材料12、芯線22および操作線40を示す縦断面模式図であり、同図(a)の円Bの拡大断面図である。
図5(a)は、押出工程後のシース16を示す縦断面模式図である。同図(b)は、挿通工程および抜去工程後のシース16を示す縦断面模式図である。
以下、図4および図5を用いて本方法を詳細に説明する。
本方法は、押出工程と挿通工程と抜去工程とを含む。
押出工程では、樹脂材料12よりも高融点かつ低粘着性の中空管32と、芯線22と、樹脂材料12と、を共に押し出してシース16を成形する。
挿通工程では、中空管32に対して操作線40を挿通する。
抜去工程では、シース16から芯線22を抜去してメインルーメン20を形成する。
ここで、複数の工程を同時に行うとは、当該両工程の少なくとも一部が同時に実施されることをいう。
押出機82は、シース16を構成する樹脂材料12を投入するための材料供給部90と、芯線22および操作線40(図5を参照)と共に樹脂材料12を押し出して細線化するダイ92とを備えている。
サイジング装置84は、押出機82より押し出された樹脂材料12を冷却して、所定の径にシース16を調整する装置である。一例として水槽を用いることができる。
引取機86は、対向して走行するローラー88を含み、押出機82より押し出されてサイジング装置84で冷却されたシース16の先端を所定の引取速度で引き取る装置である。
インダイ922には、芯線22を挿通するための主孔93と、中空管32を挿通するための副孔94とが形成されている。副孔94は、主孔93の周囲に120度間隔で3個形成されている(同図では1個のみ図示)。
かかる芯線22の外周面に対して、押出工程に先だって行われる予備工程にて、内層21を成形する。予備工程では、続けて、ワイヤ52を編組してなるブレード層50を、内層21の外周面に対して網状に被着形成する(図4(b)を参照)。
すなわち、押出工程において、樹脂材料12は溶融状態で、そして中空管32は固形状態で、共に押し出される。これにより、押出工程に供された中空管32の内壁面が溶融することはなく、操作線40と中空管32との摺動性が損なわれることはない。かかる観点から、押出温度は、中空管32の軟化温度よりも低いことがさらに好ましい。
シース16から芯線22を抜去する際には、芯線22の両端を牽引して細線化した状態で、シース16に対して軸線方向に引き抜くとよい。芯線22の表面には離型処理が施されているため、内層21と芯線22との間で剥離が生じ、内層21はシース16に残置される。
したがって、押出工程では、図5(a)に示すように、芯線22をシース16の軸線方向より両側に突出して挿通し、芯線22の両端をシース16から露出させるとよい。
ここで、図5(b)に示すように芯線22をシース16から抜去することで、シース16の内部応力は低減し、中空管32のサブルーメン30は拡径する。このため、抜去工程の後に挿通工程を行うことで、中空管32に対する操作線40の挿通性が良好となる。
さらに、シース16の遠位端部15の外周表面にコート層64を被覆形成し、シース16の近位端PE側に操作部70(図3を参照)を設けることにより、本実施形態のカテーテル10は作製される。
メインルーメン20の半径は200〜300μm程度、内層21の厚さは10〜30μm程度、外層60の厚さは100〜150μm程度、ブレード層50の厚さは20〜30μmとすることができる。そして、カテーテル10の軸心からサブルーメン30の中心までの半径は300〜350μm程度、サブルーメン30の内直径は40〜100μmとし、操作線40の太さを30〜60μmとすることができる。また、中空管32の肉厚を10〜30μmとし、カテーテル10の最外径を350〜450μm程度とすることができる。
すなわち、本実施形態のカテーテル10の外径は直径1mm未満であり、腹腔動脈などの血管に挿通可能である。
樹脂材料12にナイロンエラストマーを用い、肉厚20μmかつ内直径80μmの中空管32と共に、内径2.5mmの円形のノズル96から押し出す。
そして、ノズル96とサイジング装置84との距離を200〜500mm、サイジング装置84による冷却温度を常温として、引取速度を10〜20m/秒として引き取りながらカテーテル10を押し出して成形する。これにより、最外径(直径)800μmのカテーテル10(シース16)を得ることができる。
図6は、本実施形態にかかる製造方法にて用いられるダイ92と、ダイ92より押し出される樹脂材料12、芯線22および操作線40を示す縦断面模式図である。芯線22の外周に設けられる内層21とブレード層50は図示を省略している。
たとえば上記第一または第二実施形態においては、サブルーメン30をブレード層50の外部に形成する態様を例示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、変形例として、サブルーメン30を内層21の内部に形成し、その周囲にブレード層50および外層60を設けてもよい。
押出工程では、芯線22、樹脂材料12および中空管32を共に押し出して内層21を形成する。中空管32には、予め操作線40を挿通していてもよい。すなわち、押出工程の前に挿通工程を行ってもよい。
つぎに、編成工程にて、押し出された内層21の周囲にブレード層50を編成する。
さらに、外層形成工程にて、ブレード層50が編成された内層21の周囲に、樹脂材料12と同種または異種の樹脂材料からなる外層60(シース16)を押出成形する。
そして、抜去工程にて、成形されたシース16から芯線22を抜去する。
12 樹脂材料
15 遠位端部
16 シース
17 近位端部
20 メインルーメン
21 内層
22 芯線
30 サブルーメン
32 中空管
40 操作線
41 基端
42 先端
50 ブレード層
52 ワイヤ
60 外層
64 コート層
66 マーカー
70 操作部
80 製造装置
82 押出機
84 サイジング装置
86 引取機
88 ローラー
90 材料供給部
92 ダイ
921 アウトダイ
922 インダイ
93 主孔
94 副孔
95 供給孔
96 ノズル
DE 遠位端
PE 近位端
Claims (7)
- 樹脂材料からなり、メインルーメンおよび前記メインルーメンよりも小径のサブルーメンが軸線方向に形成された長尺のシースと、前記サブルーメンに摺動可能に挿通されて前記シースの遠位端部に先端が固定された操作線と、を備えるカテーテルの製造方法であって、
前記樹脂材料よりも高融点かつ低粘着性の中空管と、芯線と、前記樹脂材料と、を共に押し出して前記シースを成形する押出工程と、
前記中空管に対して前記操作線を挿通する挿通工程と、
前記シースから前記芯線を抜去して前記メインルーメンを形成する抜去工程と、
を含むカテーテルの製造方法。 - 前記操作線は、円形断面であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテルの製造方法。
- 前記押出工程における押出温度が、前記樹脂材料の融点温度よりも高く、前記中空管の融点温度よりも低いことを特徴とする請求項1または2に記載のカテーテルの製造方法。
- 前記押出工程にて前記シースに埋設された前記中空管に対して、前記挿通工程にて前記操作線を挿通することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカテーテルの製造方法。
- 前記挿通工程にて前記操作線が挿通された前記中空管を、前記押出工程にて前記樹脂材料と共に押し出すことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカテーテルの製造方法。
- 前記挿通工程を常温で行うことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のカテーテルの製造方法。
- 前記樹脂材料が熱可塑性ポリマーであり、前記中空管がフッ素系ポリマー材料からなる請求項1から6のいずれかに記載のカテーテルの製造方法。
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