JP5239993B2 - カテーテルの製造方法 - Google Patents
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押し/引きワイヤは、ガイドワイヤを挿通する主管腔よりも小径のワイヤ管腔に貫通されており、これを押し込んだ場合にカテーテルの遠位端を屈曲させることができるよう、所定の剛性を有している。なお、同文献には、押し/引きワイヤをワイヤ管腔に挿通する具体的な方法に関しては記載がない。
同文献では、サブルーメンの内部に加圧流体を充填してこれを拡径した状態で変向ワイヤを一端側から押し込んで挿通する方法(以下、押し込み方法という場合がある。)を開示している。
これに伴い、カテーテルの遠位端を屈曲操作するための操作線をサブルーメンに挿通するに際して、上記特許文献2のような押し込み方法をおこなうことがきわめて困難となっている。その第一の理由は、サブルーメンの小径化に伴って、これを均一かつ滑らかに形成することが困難となり、操作線をサブルーメンに押し込む際にその内壁面に引っ掛かりやすくなったことである。また、第二の理由は、操作線の細径化によって座屈強度が顕著に低下し、サブルーメンに押し込む力によって容易に座屈してしまうことである。たとえば、操作線を長円柱に見立てた場合、柱端を自由端とするオイラー座屈の強度は、線径の二乗に比例して低下する。
そして、サブルーメンに対して操作線を押し込む際の作業性が低下すると、作業工数の増大のみならず、サブルーメンの内壁面や操作線を損耗することによるカテーテルの品質や歩留まりの低下が問題となる。
第一芯線と、前記第一芯線よりも小径の第二芯線と、が互いに離間した状態で埋設された管状本体を、前記樹脂材料により成形する成形工程と、
前記第二芯線を細径化する細径化工程と、
前記第一芯線を前記管状本体から引き抜いて前記メインルーメンを形成する引抜工程と、
細径化した前記第二芯線を前記管状本体から引き抜いて前記サブルーメンを形成するとともに、前記第二芯線の端部に接続された前記操作線を前記サブルーメンに挿通する挿通工程と、
を含む。
前記細径化工程において、前記第二芯線を引っ張って塑性変形させてもよい。
さらに、本発明の製造方法は、複数の工程が個々に相違するタイミングで実行されることに限定されない。このため、ある工程の実行中に他の工程が発生すること、ある工程の実行タイミングと他の工程の実行タイミングとの一部ないし全部が重複していること、等でもよい。
このため、近年のきわめて小径化されたサブルーメンに対しても、操作線を容易に挿通することができる。
また、成形工程で成形される管状本体において第一芯線と第二芯線とを互いに離間しておくことにより、メインルーメンとサブルーメンとが互いに連通してしまうことがない。このため、製造されたカテーテルにて、メインルーメンを通じて薬剤等を供給したり光学系を挿通したりする際に、これらがサブルーメンに脱漏することがない。
以上により、本発明のカテーテルの製造方法によれば、高いスループットおよび歩留まりにより高品質のカテーテルを得ることができる。
はじめに、本実施形態にかかる製造方法(以下、本方法という場合がある。)により得られるカテーテルの概要を説明し、その後に本方法を詳細に説明する。
図1は、本方法により得られるカテーテル10の一例(以下、本実施形態のカテーテル10という)を示す縦断面図である。同図は、カテーテル10を長手方向に切った断面を示している。同図の左方がカテーテル10の遠位端(先端)側にあたり、右方が近位端(基端)側にあたる。ただし、同図においては、カテーテル10の近位端側は図示を省略している。
図2は、図1のII-II断面図(横断面図)である。
ここで、カテーテル10の遠位端部15とは、カテーテル10の遠位端DEを含む所定の長さ領域をいう。同様に、カテーテル10の近位端部17(図3を参照)とは、カテーテル10の近位端PEを含む所定の長さ領域をいう。
また、外層60の周囲には、カテーテル10の最外層として形成された親水性のコート層64を積層形成している。
また、コート層64は、シース16のうち遠位端DE側の一部長さ領域に設けられている。
本実施形態のカテーテル10においては、操作線40がそれぞれ挿通されたサブルーメン30は、外層60の内部であって、ブレード層50の外側に形成されている。
操作線40の先端(遠位端)は、カテーテル10の遠位端部15に固定されている。操作線40の先端を遠位端部15に固定する態様は特に限定されない。たとえば、操作線40の先端をマーカー66に締結してもよく、シース16の遠位端部15に溶着してもよく、または接着剤によりマーカー66またはシース16の遠位端部15に接着固定してもよい。
そして、3本の操作線40の牽引長さを個別に制御することにより、カテーテル10の遠位端部15を360度に亘り任意の向きに屈曲させることができる。これにより、カテーテル10の全体を軸回転させるトルク操作をおこなうことなく、操作部70による操作線40の牽引操作のみによって、カテーテル10の進入方向を自在に操作することが可能となる。このため、本実施形態のカテーテル10は、たとえば分岐する血管等の体腔に対して、所望の方向に進入させることが可能である。
このため、操作者が操作線40をカテーテル10に対して押し込んだとしても、操作線40がカテーテル10の遠位端部15から外れて遠位端DEより突出することがない。このため、体腔内に挿入されたカテーテル10を操作するに際して、被験者の安全が図られている。
メインルーメン20の半径は200〜300μm程度、内層21の厚さは10〜30μm程度、外層60の厚さは100〜150μm程度、ブレード層50の厚さは20〜30μm程度とすることができる。そして、カテーテル10の軸心からサブルーメン30の中心までの半径は300〜350μm程度、サブルーメン30の内径(直径)は40〜100μm程度とし、操作線40の太さを30〜60μm程度とすることができる。
そして、カテーテル10の最外径(半径)を350〜450μm程度とすることができる。
すなわち、本実施形態のカテーテル10の外径は直径1mm未満であり、腹腔動脈などの血管に挿通可能である。
以下、本実施形態にかかるカテーテルの製造方法(本方法)について詳細に説明する。
本方法は、メインルーメン20と、メインルーメン20よりも小径のサブルーメン30と、サブルーメン30に摺動可能に挿通された操作線40と、を備えるとともに樹脂材料12からなるカテーテル10の製造方法に関する。
そして、本方法は、成形工程と、細径化工程と、引抜工程と、挿通工程とを含む。
成形工程では、第一芯線22と、第一芯線22よりも小径の第二芯線24と、が互いに離間した状態で埋設された管状本体(シース16)を、樹脂材料12により成形する。
細径化工程では、第二芯線24を細径化する。
引抜工程では、第一芯線22を管状本体(シース16)から引き抜いてメインルーメン20を形成する。
挿通工程では、細径化した第二芯線24を管状本体(シース16)から引き抜いてサブルーメン30を形成するとともに、第二芯線24の端部26に接続された操作線40をサブルーメン30に挿通する。
図4(a)は、成形工程に用いられるシース16の製造装置80の概要構成図である。同図(b)は、成形工程により成形されたシース16を長手方向に切った縦断面図である。同図(c)は、第二芯線24に細径化工程を施した状態を示す縦断面図である。
図6は、成形工程にてダイ92より押し出される樹脂材料12、第一芯線22および第二芯線24を示す縦断面図であり、図4(a)に示す円VIの拡大断面図である。
図4(a)に示す製造装置80は、押出機82と、サイジング装置84と、引取機86とを直列に配置してなる。
押出機82は、シース16を構成する外層60の樹脂材料12を投入する材料供給部90と、樹脂材料12を押し出して細線化するダイ92とを含む。
サイジング装置84は、押出機82より押し出されたシース16を冷却して所定の径に調整する装置であり、一例として水槽を用いることができる。
引取機86は、対向して走行するローラー88からなり、押出機82より押し出されてサイジング装置84で冷却されたシース16の先端を所定の引取速度で引き取る装置である。
より具体的には、本方法で用いる製造装置80は、少なくとも、樹脂材料12、第一芯線22および第二芯線24をダイ92より共に押し出して、シース16における外層60を成形する。
これにより、図4(b)に示すように、樹脂材料12からなる外層60には、第一芯線22および第二芯線24が長手方向に貫通して挿通されることとなる。
また、第二芯線24は、第一芯線22よりも小径の円柱状に形成された線材であり、挿通工程にてシース16より引き抜かれることにより、カテーテル10のサブルーメン30を形成する部材である。
第二芯線24の線径はカテーテル10のサブルーメン30の内径に相当し、その直径は40〜100μmである。
内層21には、一例として、フッ素系の熱可塑性ポリマー材料を用いることができる。より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などを用いることができる。
内層21にフッ素系樹脂を用いることにより、カテーテル10のメインルーメン20を通じて造影剤や薬液などを患部に供給する際のデリバリー性が良好となる。
ワイヤ52には、ステンレス鋼やニッケルチタン合金など金属細線のほか、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)またはポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子ファイバーの細線を用いることができる。
ワイヤ52の断面形状は特に限定されず、丸線でも平線でもよい。
外層60を構成する樹脂材料12は熱可塑性ポリマーが広く用いられる。一例として、PI、PAI、PETのほか、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ナイロンエラストマー、ポリウレタン(PU)、エチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリプロピレン(PP)などを用いることができる。
インダイ922には、メインルーメン20を形成するための主孔93と、サブルーメン30を形成するための副孔94とが形成されている。
アウトダイ921は、インダイ922より供給された樹脂材料12の外周側面を保持しつつ、これをノズル96から押し出す部材である。
主孔93および副孔94は、ダイ92の押出方向(同図左方)に、所定の長さに亘って形成されている。
また、副孔94は、主孔93の周囲に120度間隔で3個形成されている(同図では1個のみ図示)。
より具体的には、図6に示すようにインダイ922の副孔94に対して雰囲気圧よりも高圧の気流Fを吹き込む。これにより、引取機86(図4(a)を参照)に引き取られて細線化されるシース16の内部において外層60が第二芯線24に接合することが抑えられる。また、気流Fの総圧を所定以上とすることにより、サイジング装置84でサイジングされたシース16の内部において、第二芯線24の周囲に気体46を保持することができる。
気体材料には、空気のほか、窒素などの不活性ガスを用いてもよい。
図4(c)に示す細径化工程では、成形工程で作成されたシース16に挿通されている第二芯線24を細径化する。細径化の具体的な方法は種々を採ることができる。
このため、同図(b)に示すように、成形工程にて成形されたシース16の長手方向の両端からは、第二芯線24の端部25,26をそれぞれ露出させておくとよい。
そして、第二芯線24の牽引は、端部25,26にチャック治具(図示せず)を装着しておこなうことができる。
これにより、第二芯線24のポアソン比にしたがって第二芯線24は径方向に縮小して細線化する。
これにより、シース16は大径の第一芯線22に対して強く密着しており、第二芯線24の両端部25,26を牽引するときにシース16が追随して延伸してしまうことを防止することができる。
また、本方法のように第二芯線24を塑性的に細線化することにより、チャック治具による引張力の抜重時に第二芯線24の線径が初期径に回復することがない。これにより、後述する挿通工程においては第二芯線24の両端に引張力を負荷する必要がなく作業性に優れる。
すなわち、第二芯線24が管状本体(シース16)よりも線膨張係数の大きい材料からなり、細径化工程において、第二芯線24を管状本体(シース16)に対して熱収縮させることにより第二芯線24を細線化してもよい。
引抜工程では、第一芯線22を管状本体(シース16)から引き抜いてメインルーメン20を形成する。図5(a)は、引抜工程後のシース16を示している。
操作線40を第二芯線24に接続するタイミングは、引抜工程の前でも後でもよい。
また、操作線40と第二芯線24の端部26との接続に関しては、たとえば接着剤により両者を接続するとよい。これにより、第二芯線24と操作線40とは端部同士が突き当てとなり、操作線40が第二芯線24の外径を超えて径方向に突出することがない。このため、サブルーメン30に対して操作線40がスムーズに挿通される。
本方法で用いる操作線40は、上述のように30〜60μmときわめて小径である。
図5(b)に示す挿通工程では、細径化された第二芯線24をシース16から引き抜いてサブルーメン30を形成するとともに、第二芯線24に接続された操作線40をサブルーメン30に挿通する。
操作線40は、シース16の遠位端部15から近位端部17まで挿通されている。
本方法では、操作線40の挿通後の工程として、シース16の先端部外周にマーカー66を圧締するとともに操作線40の先端をマーカー66に固定するマーカー被着工程と、外層60の外周に親水性のコート層64を形成する親水化工程とをおこなう。
以上により、本実施形態のカテーテル10を得ることができる。
これにより、細径化工程においては第二芯線24が外層60の内壁面に付着することを防止し、挿通工程においては第二芯線24をシース16より容易に引き抜くことができる。
編成工程では、押し出された内層21の周囲にブレード層50を編成する。
そして、外層形成工程では、ブレード層50が編成されたカテーテル10の周囲に、内層21の成形材料と同種または異種の樹脂材料からなる外層60を形成する。
なお、サブルーメン30が形成された内層21の先端部には、任意でマーカー66を装着し、操作線40の先端を固定する。そして、外層60のさらに周囲には、親水性のコート層64を形成するとよい。
これにより、カテーテル10の遠位端部15における屈曲性を十分に確保しつつ、操作時に曲げモーメントがもっとも負荷される近位端部17におけるカテーテル10の曲げ強度を十分に得ることができる。
12 樹脂材料
15 遠位端部
16 シース
17 近位端部
20 メインルーメン
21 内層
22 第一芯線
24 第二芯線
25,26 端部
30 サブルーメン
40 操作線
41 近位端
46 気体
50 ブレード層
52 ワイヤ
60 外層
64 コート層
66 マーカー
70 操作部
80 製造装置
82 押出機
84 サイジング装置
86 引取機
88 ローラー
90 材料供給部
92 ダイ
DE 遠位端
PE 近位端
F 気流
Claims (9)
- メインルーメンと、前記メインルーメンよりも小径のサブルーメンと、前記サブルーメンに摺動可能に挿通された操作線と、を備えるとともに樹脂材料からなるカテーテルの製造方法であって、
第一芯線と、前記第一芯線よりも小径の第二芯線と、が互いに離間した状態で埋設された管状本体を、前記樹脂材料により成形する成形工程と、
前記第二芯線を細径化する細径化工程と、
前記第一芯線を前記管状本体から引き抜いて前記メインルーメンを形成する引抜工程と、
細径化した前記第二芯線を前記管状本体から引き抜いて前記サブルーメンを形成するとともに、前記第二芯線の端部に接続された前記操作線を前記サブルーメンに挿通する挿通工程と、
を含むカテーテルの製造方法。 - 前記細径化工程において、前記管状本体に埋設された前記第二芯線の両端部を引っ張って、前記第二芯線を細径化することを特徴とする請求項1に記載のカテーテルの製造方法。
- 前記第二芯線が金属材料からなり、
前記細径化工程において、前記第二芯線を引っ張って塑性変形させることを特徴とする請求項2に記載のカテーテルの製造方法。 - 前記引抜工程の後に前記挿通工程をおこなうことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカテーテルの製造方法。
- 前記細径化工程と前記挿通工程との間に前記引抜工程をおこなうことを特徴とする請求項4に記載のカテーテルの製造方法。
- 前記第二芯線が前記管状本体よりも線膨張係数の大きい材料からなり、
前記細径化工程において、前記第二芯線を前記管状本体に対して熱収縮させることにより前記第二芯線を細径化する請求項1に記載のカテーテルの製造方法。 - 前記操作線が、前記細径化工程で細径化された前記第二芯線よりも細径であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のカテーテルの製造方法。
- 前記成形工程において、前記第二芯線を前記樹脂材料と共に押し出して前記管状本体を成形することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のカテーテルの製造方法。
- 前記成形工程において、前記第二芯線の径方向の周囲に気体材料を吹き込みながら前記樹脂材料を押し出して前記管状本体を成形することを特徴とする請求項8に記載のカテーテルの製造方法。
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