JP5444827B2 - チタン薄板の製造方法 - Google Patents
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Description
チタンの用途は、海水プラント、製塩プラント、化学プラントなどの耐食性構造部材、ゴルフクラブ、腕時計のベルト、航空機部材、熱交換器部材、燃料電池部材、その他、多岐にわたる。
チタン薄板のもう一つの製造方法として、チタンインゴットを分塊、水素化粉砕、脱水素、粉末解砕、および分級してチタン粉末を製造し、チタン粉末を粉末圧延、焼結、および冷間圧延して製造する方法も知られている。
また、チタン粉末を圧延する製造方法では、チタンが六方最密充填構造であって硬くて脆いという性質をもつことから、粉末圧延工程において圧延ロールに少量のチタン粉末を均一に供給して薄板を製造しようとすると、圧延圧密体にクラックが入りやすく、厚さ0.7mm以下の圧延圧密体を安定的に製造することが困難である。そのため、圧延圧密体を焼結および冷間圧延して得られるチタン薄板の厚さは、せいぜい0.5mm程度である。従って、厚さが0.5mmよりも薄いチタン薄板を製造するためには、さらに冷間圧延および焼鈍を繰り返す必要があり、やはりエネルギー的に効率の良い製造プロセスとは言えない。
さらに、水素化チタンは、真空中、あるいは不活性雰囲気中で加熱すると約430℃から脱水素反応が開始し、550℃以上に加熱するとほぼ全体が脱水素してチタンになる。そこで、水素化チタン粉から薄板を成形し、脱脂工程および焼結工程で脱水素してチタン薄板にできれば、前述の方法のエネルギー効率改善に加えて、水素化チタン粉を脱水素、および解砕してチタン粉を製造するプロセスを省くことができるので、さらに、エネルギー的に効率の良いプロセスになる。
しかし、スポンジチタンを水素化粉砕および脱水素して製造したチタン粉末は、炭素、酸素、窒素、シリコン、鉄などの不純物が微量に混入していて、チタンインゴットから製造したチタン粉末よりも加工性が悪く、厚さが0.5mmよりも薄いチタン薄板を製造することがよりいっそう困難になる。
さらに、水素化チタンを直接粉末圧延する場合、水素化チタンは脆性材料であって、圧延の荷重で一部が粉砕されてしまうために、厚さを薄く粉末圧延することはほとんど不可能である。
焼結シート圧延法は、特許文献1に示されるように、Alを7〜20%含有するFe−Cr−Al系合金箔の製造方法として考案された方法であって、原料の合金粉を有機バインダー溶液とともに混練して粘性組成物とし、ドクターブレード法等で薄板状に成形し、ネック焼結して得られる多孔質焼結薄板をプリフォームとし、それを圧延して緻密化して箔を製造する方法である。難加工性の合金箔の製造に適したプロセスであって、圧延後に中間焼鈍を施すことで折り曲げ加工性などが改善される。
すなわち、本発明は、金属粉末、結着剤、可塑剤、溶剤を含む粘性組成物を薄板状に成形、乾燥して焼結前成形体を製造する工程、前記焼結前成形体を焼結して焼結薄板を製造する焼結工程、前記焼結薄板を圧密して焼結圧密薄板を製造する圧密工程、前記焼結圧密薄板を再焼結する再焼結工程、を含み、前記金属粉末がチタン粉末、水素化チタン粉末、および/またはチタン合金粉末である厚さ500μm以下のチタン薄板の製造方法において、前記焼結圧密板の密度比が70%以上であり、前記焼結前成形体の焼結温度をT1℃、前記焼結圧密薄板の再焼結温度をT2℃としたとき、900<T1≦1300、1000<T2≦1400、T1+50<T2であることを特徴とする。
金属粉末の平均粒子径については、必ずしも限定されるものではないが、粘性組成物に適度な粘性と流動性を付与して、薄板状に成形し易くするために、4μm〜200μmが好ましい。
脱脂処理は、焼結時に一般的に行われるものでもよいが、このような脱脂処理とすることにより、炭化チタンの発生を防止できるので好ましい。
さらに、以下のような有利点がある。
(1)ドクターブレード法等であらかじめ薄板を成形するので、原料粉の平均粒子径の3倍以上の厚さであれば平面方向に均一な厚さのプリフォームを製造することができ、そのプリフォームはネック焼結している。それを圧延するので、均一な厚さおよび荷重で圧延できる。そのため、厚さが500μm以下でも、チタンに多少の不純物が含まれていても、圧延時の破損を抑制できる。
(2)焼結体をプリフォームに使用するので、焼結工程の熱処理によって水素化チタンをチタンに脱水素することができる。従って、原料に水素化チタンを使用した場合にも、圧
延工程の段階では脱水素してチタンになっているので、原料に水素化チタンを使用することができる。
(3)スポンジチタンから水素化チタンを製造し、それを原料に使用して焼結シート圧延法の概念を適用してチタン薄板を製造すれば、スポンジチタンからチタンインゴットを製造する工程を省くことができるので、エネルギー的に効率の良いプロセスになる。
したがって、従来のチタンインゴットを出発材料とする方法に比べて、少ない工程数でチタン薄板を製造できることが明らかであり、省エネルギー化が実現できる。
この実施形態の製造方法は、図1のフローチャートに示したように、結着剤、可塑剤、溶剤とチタン原料粉を混合してチタン含有粘性組成物を調製する工程と、チタン含有粘性組成物を薄板状に成形および乾燥して焼結前成形体を製造する工程と、焼結前成形体を脱脂・焼結してチタン焼結薄板を製造する工程と、チタン焼結薄板を圧密してチタン焼結圧密薄板を製造する工程と、チタン焼結圧密薄板を再焼結する工程とを含む。
これら各工程を順に説明する。
結着剤は、水溶性のものと有機溶剤溶解性のもののどちらも利用することができる。水溶性の結着剤にはたとえば、メチルセルロース系、エチルセルロース系、ポリビニルアルコール系の結着剤を使用でき、有機溶剤溶解性の結着剤にはたとえば、アクリル系、ポリビニルブチラール系、エチルセルロース系の結着剤を使用できる。
可塑剤は、水溶性結着剤を使用する場合にはグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどを使用でき、有機溶剤溶解性結着剤を使用する場合にはフタル酸エステルなどを使用できる。
溶剤は、水溶性結着剤を使用する場合には水を使用し、有機溶剤溶解性結着剤を使用する場合にはエタノール、トルエン、イソプロパノール、ターピネオール、ブチルカルビトール、シクロヘキサン、メチルエチルケトンなどが使用できる。ただし、工程の環境負荷低減を考慮すると水溶性の結着剤を使用することが望ましい。
チタン含有粘性組成物の配合組成において、チタン原料粉に対する結着剤の割合が、後述する焼結前成形体の強さを決めるので、焼結前成形体の強さという観点からは結着剤の割合が高い方がよい。しかし、それが高くなると、焼結前成形体を焼結して得られるチタン焼結薄板に含まれる炭素量と酸素量が増加して、次工程の圧密時に破損しやすくなる。従って、チタン原料粉に対する結着剤の割合を低く抑制する必要があり、その結果、チタン原料粉に対する結着剤の配合比率Bは質量%で0.03%〜3%、望ましくは0.1%〜1%の範囲がよい。
次に、前述のように調製したチタン含有粘性組成物を薄板状に成形し、溶剤を蒸発させて、板状の焼結前成形体を製造する。
チタン含有粘性組成物の成形は、ドクターブレード法などの粘性組成物をキャリヤシート上に直接塗布する方法、リップコーティング法などの粘性組成物をキャリヤシート上に押出しながら塗布する方法、オフセット印刷、グラビア印刷などの粘性組成物を転写塗布する方法、のいずれの方法を利用してもよい。ドクターブレード法、リップコーティング法は、チタン含有粘性組成物が均一分散し易いので成形方法として好ましい。
乾燥は、溶剤の蒸発が速すぎると焼結前成形体にクラックが入ってしまうことがあるので、クラックが入らない温度および風量を選んで行う。
次に、焼結前成形体を焼結してチタン焼結薄板を製造する。
焼結前成形体はチタン原料粉の他に結着剤と可塑剤を含んでいる。可塑剤は通常、300℃以下で蒸発してしまうのでチタンの焼結に悪影響を及ぼさない。これに対して、結着剤は、非酸化性雰囲気では約500℃までにほぼ90%以上が熱分解するが、一部が残炭成分として800℃以上まで残り、800℃を超えると残炭成分がチタンと反応して炭化チタン粒子を形成するようになる。炭化チタン粒子が形成するとチタン焼結薄板が脆くなって、次工程の圧密工程で破損する原因となる。従って、焼結の昇温過程では、残炭量を少なく抑制するために結着剤を十分に分解、除去できるように、結着剤の熱分解温度の前後で昇温速度を遅くしたり、保持時間を設定したりすることが望ましい。具体的には、350〜600℃の温度範囲に10〜300分保持するとよい。
焼結の雰囲気は、チタンは酸化しやすく、窒化しやすいので、アルゴン雰囲気、もしくは真空中で行う。焼結の温度(T1)は、この焼結工程ではあまり粒成長させない方が次工程の圧密工程をスムーズに行えることから、ネック焼結する程度の温度に加熱すればよく、チタン原料粉の粒径および保持時間にも依存するが、900℃〜1300℃で行うとよい。
次に、チタン焼結薄板を圧密し、チタン焼結圧密板を製造する。
圧密の方法は一軸プレス、ロール圧延、その他、どのような方法を用いてもよいが、長尺品を連続的に製造する場合にはロール圧延法が適している。焼結シート圧延法では、被圧延材の面内の密度分布が小さいので、難加工材でも容易にロール圧延できる。圧密体の密度比が70%未満であると、次工程の再焼結工程で密度比98.5%以上の緻密なチタン薄板を得るために例えば1450℃を超える高温で保持する必要が生じるなど、プロセスのエネルギー効率が悪くなり、一方、93%を超えると圧延割れが生じやすくなる。従って、圧密工程では、得られるチタン焼結圧密板の密度比が70%〜93%の範囲、望ましくは80%〜92%に収まるように圧密するとよい。この密度比は、寸法および質量から算出される。
次に、チタン焼結圧密板を再焼結して、チタン薄板を製造する。
再焼結の雰囲気は、焼結工程と同様に、アルゴン雰囲気、もしくは真空中で行う。焼結工程ではネック焼結する程度の温度に加熱すればよかったのに対して、この再焼結工程では密度比98.5%以上の緻密なチタン薄板を焼成するので、焼結工程よりも少なくとも50℃以上、望ましくは100℃以上高い温度に加熱するとよい。チタン原料粉の粒径および保持時間にも依存するが、再焼結温度(T2)を950℃〜1400℃、望ましくは1000〜1360℃とすることにより、密度比98.5%以上の緻密なチタン薄板が得られる。
チタン含有粘性組成物としては、表1に示す成分組成のチタン原料粉、結着剤、可塑剤を混合して調整した。表1中、実施例4のチタン原料粉は、チタン(Ti)粉末と水素化チタン(TiH2)粉末とを10:90の質量比で混合して得た混合粉である。また、結着剤の配合比B及び可塑剤の配合比Pは、それぞれチタン原料粉の質量を100としたときの質量比である。
そして、この焼結前成形体を表2に示す条件で脱脂処理を行った後に焼結処理することにより、チタン焼結薄板を製造した。焼結工程はアルゴン雰囲気で行った。製造されたチタン焼結薄板の厚さ、密度比、炭素量、酸素量を測定した。炭素量は、燃焼−赤外線吸収法により、酸素量は、不活性ガス融解−赤外線吸収法により、それぞれ測定した。
また、表の試料6は、一部にクラックが生じるものがあったため比較例としたが、クラックが生じないものから密度比96.5%の高密度品を製造可能であり、本発明の範囲から必ずしも除外されるものではない。
Claims (5)
- 金属粉末、結着剤、可塑剤、溶剤を含む粘性組成物を薄板状に成形、乾燥して焼結前成形体を製造する工程、前記焼結前成形体を焼結して焼結薄板を製造する焼結工程、前記焼結薄板を圧密して焼結圧密薄板を製造する圧密工程、前記焼結圧密薄板を再焼結する再焼結工程、を含み、前記金属粉末がチタン粉末、水素化チタン粉末、および/またはチタン合金粉末である厚さ500μm以下のチタン薄板の製造方法において、
前記焼結圧密板の密度比が70%以上であり、
前記焼結前成形体の焼結温度をT1℃、前記焼結圧密薄板の再焼結温度をT2℃としたとき、
900<T1≦1300、
1000<T2≦1400、
T1+50<T2
であることを特徴とするチタン薄板の製造方法。 - 前記焼結前成形体を焼結して得られる焼結薄板の炭素含有量および酸素含有量は、質量%で、炭素含有量が0.5%以下、酸素含有量が1%以下であることを特徴とする請求項1に記載のチタン薄板の製造方法。
- 前記粘性組成物の金属粉末、結着剤、可塑剤の配合比において、金属粉の質量を100としたときの結着剤の質量B、可塑剤の質量Pが、
0.03<B≦3、
2<P≦30、
B<P
であることを特徴とする請求項1又は2に記載のチタン薄板の製造方法。 - 前記金属粉末の平均粒子径が4μm〜200μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のチタン薄板の製造方法。
- 前記焼結工程において、前記焼結温度に加熱する前に、350〜600℃で10〜300分の脱脂処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のチタン薄板の製造方法。
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