JP2014109049A - チタン多孔体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】チタン多孔体の製造コスト低減のために、水素化脱水素化法で製造されたチタン水素化物粉末および/またはチタン粉末を含むチタン複合粉を使用し、これを歩留まりよく、また、効率よくするための技術を提供する。
【解決手段】粉末法によるチタン多孔体の製造方法であって、原料として水素化チタン粉にチタン粉を配合して混合粉とし、混合粉を焼結することを特徴とするチタン多孔体の製造方法。
【選択図】図1

Description

粉末冶金によりチタン多孔体を製造する技術に係り、特に、効率よくチタン多孔体シートを製造する技術に関する。
太陽電池や燃料電池及び蓄電池は、近年の環境問題やエネルギー問題の観点より注目を浴びている。これらの太陽電池や燃料電池及び蓄電池には、隔膜や電極としてシート状の多孔体が利用されている。
前記したようなシート状の多孔体は、電解液に対する耐食性を担保する意味から、グラファイト等の炭素系材料で構成されていることが多い(例えば、非特許文献1参照)。
前記したようなグラファイト材は、確かに、耐食性という観点からは、優れて効果を奏するものであるが、加工性や曲げ性のような機械的性質については、改善の余地が残されている。
そこで、このような観点においては、前記したシート状の多孔体をステンレス鋼やチタン材等の金属で構成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
前記したステンレス鋼を始めとする金属材料では、加工性の点では優れているものの、耐食性についてはやや劣る場合が多く、この問題を解決するため、チタン材でこれらの多孔体を構成する技術が知られている。
しかしながら、電池の構成材をチタン材で構成しようとした場合には、今度は、コストが課題となってきており、前記のようなチタン材を安価に製造しうる技術が望まれている。
チタン多孔体は、一般的には、チタン粉あるいはチタン合金粉を成形後、焼結工程を経て製造されている。これらの製造工程に製造されたチタン多孔体の空隙率は、原料粉末として球状ガスアトマイズ粉を使用すること、原料粉末の粒度をコントロールすることにより制御され、焼結温度は融点よりはるかに低い温度範囲で選択されることが知られている(例えば、特許文献2および3参照)。
しかしながら、この製造方法は、同多孔体の生産性や製造コストという観点からすると、必ずしも満足の行くものではなく、改善が求められている。例えば、焼結時の温度を従来よりも高めに設定することにより、焼結時間を短縮して生産性を上げることができるが、その反面、空隙率は低下する傾向を示す傾向にあり、生産性の改善と高い空隙率を維持することは相反するものである。
このように、高い空隙率を維持しつつも、生産性を改善できる手段が望まれている。また、球状ガスアトマイズ粉は一般に高価であり、多孔体の設計上、その粒径を所定の範囲内に選択すると、一層高価になるのが現実的な問題である。
また、多孔体の空隙率に関しては、所定の範囲内の粒径の球状ガスアトマイズ粉を使用したからといって必ずしも目的とする空隙率を有する多孔体を製造できるという保証はなく、或る程度の試行錯誤が伴われる場合がある。その結果、製造された目的とする空隙率を有するチタン多孔体の製品歩留まりが安定しないという課題がある。
このような製品歩留まりのバラツキと原料粉末の高価格は、製造コストの上昇をもたらし、改善が求められている。
WO2008/001488号公報 特開2002−317207号公報 特開2004−071456号公報
セラミックスVol.31(1996)、No.8、p.647、野崎健著
このように、比較的安価なチタン粉末を原料として使用することができ、チタン多孔体の空隙率を容易に制御することができ、従来に比べて高い生産性を達成しうるチタン多孔体の製造技術が求められている。
本発明は、チタン多孔体の製造コスト低減のために、水素化脱水素化法で製造されたチタン水素化物粉末および/またはチタン粉末を含むチタン複合粉を使用し、これを歩留まりよく、また、効率よくするための技術の提供を目的とする。
かかる実情に鑑み前記課題について鋭意検討を進めたところ、水素化チタン粉にチタン粉を所定量配合することにより、チタン粉を単体で使用した場合と比較して焼結温度を上昇させることなく、焼結時間を短縮することができることを見出し、本願発明を完成するに至った。
即ち、本願発明に係るチタン多孔体の製造方法は、粉末法によるチタン多孔体の製造方法であって、原料として水素化チタン粉にチタン粉を配合して混合粉とし、混合粉を焼結することを特徴とするものである。
本発明においては、チタン粉の添加割合を0〜90%とすることを好ましい態様としている。
本発明においては、水素化チタン粉およびチタン粉が水素化脱水素法で製造されたものであって、前記チタン粉のサイズが、10〜45μmの範囲にあることを好ましい態様としている。
本発明においては、焼結時間(t)、多孔体の空隙率(ε)、およびチタン粉に添加する水素化チタン粉の割合(α)とした場合、前記チタン多孔体を製造する際の焼結温度(T)が、
T=Aexp(−t)+B
で決定されることを好ましい態様としている。
ここで、AおよびBは、焼結時間(t)、多孔体の空隙率(ε)、および水素化チタン粉に添加するチタン粉の割合(α)に依存するパラメータである。
本願発明に従うことで、原料チタン混合粉末の水素化チタン粉に配合するチタン粉の配合比率を調整することにより、焼結温度を変更しないで焼結時間を短縮させたり、あるいは、焼結時間を変更しないで焼結温度を低下させたり、効率よく、チタン多孔体を製造することができるという効果を奏するものである。
本発明のチタン多孔体における焼結時間と焼結温度の関係の試験結果を示すグラフである。 本発明のチタン多孔体における焼結時間と焼結温度の関係の解析結果を示すグラフである。
本願発明の最良の実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。
本願発明に係るチタン多孔体の製造方法は、多孔体の原料に使用するチタン粉に水素化チタン粉を配合した混合粉を原料として使用することを特徴とするものである。
本願発明においては、前記水素化チタン粉の添加割合を、10〜100%とすることを好ましい態様とするものである。
図1は、本願発明の好ましい態様の一例を表している。同図は、焼結温度と焼結時間および得られた空隙率との関係を整理し、空隙率が45%のデータを選択・整理して得られたものである。ここで、曲線L1は、水素化チタン粉10%とチタン粉を90%配合した際に得られたデータを表している。また、曲線L2は、チタン粉を添加せずに全量水素化チタンを使用した際に得られたデータを示している。曲線L3は、水素化チタン粉を使用せずに全量チタン粉を使用した際に得られたデータを示している。
L1、L2およびL3は、右下がりの傾向を示しており、これは、同じ空隙率、即ち、焼結度を有する製品を得るためには、焼結時間を短縮すると焼結温度を高める必要があることを意味している。本願を用いることにより、最適な焼結温度と時間を事前に予測することが可能になる。
例えば、図1に示したように850℃で4時間の焼結により空隙率が45%の焼結体を製造する場合に、水素化チタン粉に配合するチタン粉の比率を、10%から100%まで引き上げると焼結温度を引き上げることなく、焼結時間を4時間から2.5時間に短縮することができるという効果を奏するものである。
もしも、チタン粉の配合比を90%のままで焼結時間を2.5時間に短縮するには、焼結温度を何度まで上げればよいかが予測される。図1より900℃まで引き上げれば、焼結時間を2.5時間に短縮しても同じ空隙率の多孔体が得られることがわかる。
更には、水素化チタン粉の配合比を5%、0%と減少させるとどうなるかも予測可能である。図1より、水素化チタン粉を使用せずに全量チタン粉末を用いた場合(曲線L3)は、2.5時間で空隙率45%の多孔体を得るには980℃という高温度での処理が要求され設備負荷が大きくなり好ましくない。水素化チタン粉を添加した場合のように850℃の焼結温度で空隙率45%の多孔体を得ようとしても、処理時間を長くしても求める多孔体は得られない。
これは、水素化チタン粉末の添加量が少なくなって原料粉末の焼結性が悪くなるために起こる現象である。水素化チタン粉末添加量が10%未満では、著しい焼結温度の上昇もしくは、焼結時間の引き延ばしが要求され、設備コストの増大や生産時間の延長を引き起こし好ましくない。
ここでは、空隙率が45%の場合における本願発明の好ましい態様を示したが、図示はしていないが、空隙率が50%、40%、35%、30%の場合にも同様の傾向を示すものである。
本願発明においては、水素化チタン粉に添加するチタン粉の配合比率は、0〜90%を好ましい範囲とすることを好ましい態様とするものである。
水素化チタンに添加するチタン粉の配合比率が90%以上の場合には、焼結時間の短縮が困難になるという結果をたらす。よって、本願発明においては水素化チタン粉に添加するチタン粉の配合比率は、0〜90%を好ましい態様とするものである。
本願発明に用いる水素化チタン粉の粒度は、10〜45μmの範囲にあることを好ましい態様とするものである。
前記水素化チタン粉の粒度が10μm未満の場合には、酸素含有量が上昇する傾向を示して好ましくない。一方、水素化チタン粉の粒度が45μmを超える場合には、20〜40μmといった比較的薄い厚みの多孔体シートを製造することが困難となり好ましくない。 よって、本願発明においては、前記した範囲でチタン粉を用いることを好ましい態様とするものである。
本願発明に係るチタン多孔体の製法は、粉末法によるチタン多孔体の製法であって、前記チタン多孔体の焼結温度(T)が、焼結時間(t)、多孔体の空隙率(ε)、および水素化チタン粉に添加するチタン粉の割合(α)とした場合、焼結温度(T)は
T=Aexp(−t)+B
で決定されることを好ましい態様とするものである。
図1に示した試験データおよびその他の試験データの解析により、本願発明に係る製造条件においては、気孔率が45%のときには、パラメータAは、350〜380の値をとり、パラメータBは、810〜940の値をとる。
また、気孔率が50%のときには、また、パラメータAは310〜350の値、Bは、770〜870の値をとる。前記したパラメータを採用することで、本願発明に係る多孔体の気孔率を達成するために必要な焼結温度、水素化チタンの配合比および焼結時間を選択することができるという効果を奏するものである。
なお、前記したパラメータのバラツキは、原料粉に添加する水素化チタンの配合比の変動によるものである。
図2は、空隙率45%のときの焼結温度と焼結時間の関係を記載したものである。測定データを表すプロットとの一致の程度は良好である。
ここで、図2における各曲線を規定しているパラメータAおよびパラメータBの値は
次のとおりである。
Figure 2014109049
図1のような関係を事前に把握しておくことで、目的とする空隙率を有する多孔体を特定の温度で規定した場合の焼結時間を事前に決定することができるという効果を奏するものである。
1.原料粉
1)水素化チタン粉
製法:チタンインゴット切粉の水素化により製造された粉末
粒度:≦24μm、≦36μm
酸素含有率:0.25%、0.15%
2)チタン粉
製法:チタンインゴット切粉の水素化脱水素化法により製造された粉末
粒度:≦24μm、≦36μm
酸素含有率:0.28%、0.19%
2.グリーンシートの準備方法
上記水素化チタン粉およびチタン粉をペースト化した後、前記ペーストを高分子フィルム上にコーティングした後、脱バインダー処理、脱水素および焼結処理を行なって、シート状の多孔体を得た。
1)ペーストの構成
金属粉組成:水素化チタン粉(0〜100wt%)、チタン粉(0〜100wt%)
バインダー:アクリル樹脂:イソプロピルアルコールを4:5の割合で混合した混合物を、混合金属粉に対して15wt%になるように添加混合し、粘度が1200mPa・Sになるよう調整した。
2)高分子フィルム上への塗工方法
高分子フィルム:PETフィルム(厚み:40μm)
塗工方法:スクリーン印刷
塗工厚み:50μm
3)脱アルコール処理
温度:150℃
雰囲気:大気中または減圧処理
4)乾燥成形体
脱バインダー処理されたPETフィルム上に形成したコーティング層をPETフィルム上より剥離して、単味の乾燥成形体を得た。
3.焼結多孔体シートの製造方法
1)脱バインダー処理工程
前記乾燥成形体を減圧雰囲気下で焼成した。詳細は、以下のとおりである。
昇温速度:3℃/分(室温〜300℃)
雰囲気:アルゴンガス
焼成温度:300℃
焼成時間:2時間
真空焼結炉:島津メクティム・真空焼鈍炉
2)脱水素工程
前記処理に引き続き、以下の条件で脱水素処理を行なった。
昇温速度:1〜4℃/分(300℃〜脱水素温度)
雰囲気:真空雰囲気
焼成温度:400〜600℃
保持時間:真空度が10−1Pa以下に回復するまで
3)焼結工程
前記処理に引き続き、以下の条件で焼結処理を行なった。
昇温速度:5℃/分(脱水素温度〜焼結温度)
雰囲気:真空雰囲気
焼結温度:800℃〜1200℃
保持時間:1時間〜5時間
[実施例1](TiH、Tiの粒度 最大24μm、混合比率50:50、10:90、100:0の3種類)
上記方法で製造された最大粒径24μm、酸素含有量0.25%の水素化チタン粉末と最大粒径24μm、酸素含有量0.28%のチタン粉末を用いて、混合比率の異なる3種類のチタンペーストを作製した。それぞれのペーストにおける水素化チタン粉とチタン粉の混合比率は次の通りである。
ペースト1:TiH:Ti=50:50(wt%)
ペースト2:TiH:Ti=10:90(wt%)
ペースト3:TiH:Ti=100:0(wt%)
それぞれのペーストをPETフィルムに塗膜後、乾燥、脱バインダー処理、脱水素、850℃での焼結をして、チタン多孔体シートを得た。この時、3種のペーストのいずれを用いた場合でも、空隙率が45%になるように焼結時間を調整した。45%の空隙率が得られる焼結時間は
ペースト1:3.2Hr
ペースト2:4Hr
ペースト3:2.1Hr
[実施例2](TiH、Tiの粒度 最大36μm、混合比率50:50、10:90、100:0、の3種類)
最大粒径36μm、酸素含有量0.15%の水素化チタン粉末と最大粒径36μm、酸素含有量0.19%のチタン粉末を用いて、実施例1と同じ要領で、混合比率の異なる3種類のチタンペーストを作製した。それぞれのペーストにおける水素化チタン粉とチタン粉の混合比率は次の通りである。
ペースト4:TiH:Ti=50:50(wt%)
ペースト5:TiH:Ti=10:90(wt%)
ペースト6:TiH:Ti=100:0(wt%)
それぞれのペーストをPETフィルムに塗膜後、乾燥、脱バインダー処理、脱水素、950℃での焼結をして、チタン多孔体シートを得た。この時、3種のペーストのいずれを用いた場合でも、空隙率が45%になるように焼結時間を調整した。45%の空隙率が得られる焼結時間は
ペースト4:2Hr
ペースト5:2.5Hr
ペースト6:1.5Hr
[比較例1](TiH、Tiの粒度 最大24μm、混合比率 5:95、0:100の2種類)
実施例1において、TiH:Tiの混合比率をTiH:Ti=5:95、0:100(wt%)とした以外は、同じ条件下にて、対応した。
ペースト7:TiH:Ti=5:95(wt%)
ペースト8:TiH:Ti=0:100(wt%)
その結果、850℃の焼結温度では、最大6Hrまで焼結時間を伸ばして試験をしてみたが、ペースト7では空隙率49%、ペースト8では空隙率50%の多孔体しか得られず、空隙率45%の多孔体を得ることは出来なかった。
[比較例2](TiH、Tiの粒度 最大36μm、混合比率 5:95、0:100の2種類)
実施例2において、TiH:Tiの混合比率をTiH:Ti=5:95、0:100(wt%)とした以外は、同じ条件下にて、対応した。
ペースト9:TiH:Ti=5:95(wt%)
ペースト10:TiH:Ti=0:100(wt%)
その結果、950℃の焼結温度で空隙率45%の多孔体を得るには焼結、ペースト9、ペースト10とも時間6Hrを要し、水素化チタン粉が10%以上添加されている場合と比べて2.4倍から6倍の焼結時間がかかった。
本発明は、粉末法によるチタン多孔体の製法に係り、従来法に比べて安価にチタン多孔体を製造することができる。

Claims (4)

  1. 粉末法によるチタン多孔体の製造方法であって、
    原料として水素化チタン粉にチタン粉を配合して混合粉とし、
    前記混合粉を焼結することを特徴とするチタン多孔体の製造方法。
  2. 前記チタン粉の添加割合を0〜90%とすることを特徴とする請求項1に記載のチタン多孔体の製造方法。
  3. 前記水素化チタン粉およびチタン粉が水素化脱水素法で製造されたものであって、前記チタン粉のサイズが、10〜45μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のチタン多孔体の製造方法。
  4. 焼結時間(t)、多孔体の空隙率(ε)、および水素化チタン粉に添加するチタン粉の割合(α)とした場合、前記チタン多孔体を製造する際の焼結温度(T)が、
    T=Aexp(−t)+B
    で決定されることを特徴とする請求項1に記載のチタン多孔体の製造方法。
    ここで、AおよびBは、焼結時間(t)、多孔体の空隙率(ε)、および水素化チタン粉に添加するチタン粉の割合(α)に依存するパラメータである。
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