JP2007162052A - 発泡金属用素材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】所定の温度に再加熱することによっても十分な発泡が進行し、良好な特性を有する発泡金属を得るための素材を製造するための有用な方法、およびこうした製造方法によって得られる発泡金属用素材を提供する。
【解決手段】金属または合金を溶解して溶湯を作製し、これに増粘剤を添加・混合し、更にこの溶湯内に発泡剤を添加・混合して攪拌して、未発泡溶湯または発泡率が4倍以下の発泡未完了溶湯とし、これを急冷凝固させた凝固体に熱間加工を施して緻密化する。
【選択図】なし
【解決手段】金属または合金を溶解して溶湯を作製し、これに増粘剤を添加・混合し、更にこの溶湯内に発泡剤を添加・混合して攪拌して、未発泡溶湯または発泡率が4倍以下の発泡未完了溶湯とし、これを急冷凝固させた凝固体に熱間加工を施して緻密化する。
【選択図】なし
Description
本発明は、吸音材(遮音材)、衝撃吸収材、触媒担体および電極材料の他、各種構造材料として広範な分野で利用される発泡金属用素材、およびその製造方法に関するものであり、特に、金属または合金を素材とし、薄板、棒材、パイプや複雑な形状の製品に製造する上で有用な発泡金属の素材の製造方法、およびこうした製造方法によって製造される発泡金属用素材に関するものである。
発泡金属は、立体網状構造を有し、気孔率を大きくした金属多孔体であり、表面積が大きいことを利用して各種吸音材(遮音材)、衝撃吸収材、触媒担体および電極材料の他、各種構造材料として広範な分野で利用されている。こうした発泡金属の素材として、高強度および軽量化を考慮して、AlまたはAl合金が最も汎用されている。
発泡金属を製造する方法は古くから知られており、例えば特許文献1には、金属溶湯を攪拌しながら、発泡剤を添加して発泡融体を鋳型に注入して所定の形状にすることが開示されている。
上記のような技術においては、均一な気泡を発泡率が高い状態で確保した発泡体とする必要があるが、その条件によっては、発泡金属中における気泡のバラツキが大きくなり、しかも平均粒径が大きくなり、製品品質が劣化することもある。
上記のような問題を解決するための方法として、例えば特許文献2のような技術も提案されている。この技術では、多数の独立気泡を均一な大きさに形成するとともに、発泡体内部に「引け巣」を発生させないような発泡金属の製造方法に関するものであり、そのために「融点が550〜670℃で且つ固液二相域で固相率が35%となる温度が640℃以下である溶融金属」に対して、増粘剤を添加して大気中若しくは酸化性雰囲気中で攪拌し、これに所定の溶湯温度範囲で発泡剤としての水素化チタンを添加すると共に、この添加量を適切な量とすることによって、良好な発泡体を得るものである。また、この技術では、溶湯の粘性増加のための増粘剤としてカルシウムが使用できること、およびこのカルシウムの好ましい量、溶湯金属を鋳型に注入する際の好ましい圧力などについても開示されている。更に、溶湯金属としてはAlやAl合金について開示されている。
上記のように溶湯に発泡剤を添加して発泡金属を製造する方法では、発泡開始直後の発泡未完了満溶湯を短時間で鋳型に挿入する必要があることから、単純形状の成形品に対しては成形が容易であるが、比較的複雑な形状や薄板(数10mm厚さ)に対しては挿入や成形が困難であるという問題がある。
そこで、例えば特許文献3のような技術も提案されている。この技術では、発泡剤を含有する溶湯を一旦冷却凝固させて発泡金属用素材とし、これを型に挿入した後再加熱することによって所定の形状の発泡金属を得るものである。
特公昭36−20351号 「特許請求の範囲」など
特開2002−371327号 「特許請求の範囲」の請求項1〜7など
特開平9−241780号 「特許請求の範囲」の請求項1〜4など
上記のような発泡金属用素材を形成することによって、操業上の不都合を解消することができたのであるが、こうした方法においても改良すべきいくつかの問題が指摘される。即ち、本発明者らが検討したところによれば、発泡剤を含有する溶湯を冷却凝固させた凝固体(発泡金属用素材)を再加熱しても、十分な発泡が起こるとは限らず、密度で1.0g/cm3以下となるような発泡金属を得ることが困難であるということが判明したのである。
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、所定の温度に再加熱することによっても十分な発泡が進行し、良好な特性を有する発泡金属を得る素材を製造するための有用な方法、およびこうした製造方法によって得られる発泡金属用素材を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明方法とは、金属または合金を溶解して溶湯を作製し、これに増粘剤を添加・混合し、更にこの溶湯内に発泡剤を添加・混合して攪拌して、未発泡溶湯または発泡率が4倍以下の発泡未完了溶湯とし、これを急冷凝固させた凝固体に熱間加工を施して緻密化する点に要旨を有するものである。尚、上記「発泡率」とは、通常の発泡前の金属溶湯の体積に対する発泡金属溶湯の体積の比率である。
本発明方法においては、用いる金属または合金としては、前述のアルミニウムの他、マグネシウム、亜鉛、鉄、鉛または銅、或いはこれらの合金が挙げられる。また、用いる増粘剤としては、金属カルシウムが好ましいものとして挙げられ、この金属カルシウムは、溶湯全体に対する質量割合で0.5〜4.0%添加・混合することが好ましい。
一方、発泡剤としては、水素化チタン(TiH2)または水素化ジルコニウム(ZrH2)などが代表的なものとして挙げられるが、この水素化チタンまたは水素化ジルコニウムは、溶湯全体に対する質量割合で0.5〜2.0%添加・混合することが好ましい。
本発明の製造方法によれば、所定の温度に再加熱することによっても十分な発泡が進行し、良好な特性を有する発泡金属を得るための素材を製造することができる。
本発明によれば、未発泡溶湯または発泡率が4倍以下の発泡率を有する発泡未完了溶湯を急冷凝固して発泡金属用素材とし、これを熱間加工して緻密化するようにしたので、その後所定温度に再加熱することによって、所望の発泡金属を得ることができる。
発泡剤を含有する溶湯を急冷凝固させた発泡金属用素材では、その後単純に加熱しても十分な発泡が進行せず、所定形状の発泡金属を得ることはできない。本発明者らが、その原因について検討したところ、次のような知見が得られた。
例えば、発泡剤として含有される水素化チタン(TiH2)は、その分解・解離反応は450℃以上で活発であり、450℃未満では不活性で分解・解離反応はほぼ停止状態となる。そのため、未分解の水素化チタンを添加、混合された溶湯を急冷凝固させるだけでは、発泡剤の分解・解離反応を完全に抑制、阻止することは極めて困難であり、発泡剤の一部が凝固途中に分解・解離反応を開始して、H2ガスが放出し、このガスによって形成される多数の気泡が凝固体中に不可避的に発生、残存することになる。そして、これらの多数の残存気泡は、凝固時或いは再加熱時に隣接気泡と連通する傾向を有するために、再加熱時に未分解の発泡剤から発生するガスはこれらの連通孔を通して発泡金属外表面に逃散、散逸し、発泡金属内部での気泡形成に関与しなくなるものと考えられた。
残存気泡が連通する原因としては、凝固時或いは再加熱時に気泡セル壁に不可避的に発生する熱応力、または残存気泡や発泡剤から発生するガスの圧力による応力等によって、残存気泡形成のために薄くなった気泡セル壁が破壊し、微小割れやピンホール等が生成するためと考察できた。即ち、一旦冷却凝固させると、凝固体中に開気孔が生成し、その後再加熱しても発生するガスはこの開気孔を通して発泡金属外部に逃げてしまい、凝固体の発泡には寄与しないことになる。
本発明者らは、上記のような連通気孔を消失させれば、再加熱時に効果的な発泡が実現できるとの着想の下で更に鋭意、研究を重ねた。その結果、急冷凝固させた凝固体に対して、所定の温度に加熱して塑性変形(即ち、熱間加工)を施してやれば、残存気孔が圧着されて消失させることができ、こうした凝固体を再加熱すれば、ガスが外部に逃げることなく発泡に寄与することを見出し、本発明を完成した。
凝固体に対して熱間加工するときの手段については、熱間鍛造、熱間押出、熱間圧延のいずれも採用できるが、凝固体内の残存気泡の圧着を効果的に行うためには、できるだけ加工率は大きくすることが好ましい。例えば、熱間圧延では圧延率[圧下量を初期板厚さで除した値×100、即ち、初期厚さ:t0、圧延後の厚さ:t1としたとき(t0−t1)/t0×100]で50%以上の加工率を採用することが好ましい。これに対して、冷間加工では、残存気泡の圧着を十分に行うことができず、十分な発泡率を有する発泡金属が得られなくなる。
本発明方法を実施するに当り、急冷凝固させるときの凝固体における発泡率も適切に制御する必要がある。このときの発泡率が余り大きくなり過ぎると、熱間加工を施しても、その後の加熱時に十分な発泡が進行せず発泡金属密度が高くなる。これは、急冷凝固時に既に発泡剤の大部分が分解してしまい、もはや発泡能力は消失しており、その後の加熱時に所定の発泡が生じなくなるためである。こうした観点から、未発泡溶湯状態若しくは発泡率が4倍以下の状態の溶湯(発泡未完了溶湯)を急冷凝固させ凝固体の発泡率を4倍以下(未発泡状態も含む)、より好ましくは3倍以下とするのが良い。
本発明方法を実施するに当り、気泡が均一な発泡金属を得るためには、溶湯の粘度も適切に調製する必要がある。溶湯の粘度調整のために増粘剤としては、金属カルシウム(Ca)、アルミナ(Al2O3)、酸化珪素(SiO2)、シリコンカーバイト等、様々なものが挙げられるが、このうち金属カルシウムが最も好ましい。溶湯の粘度を適切な範囲に調整するためには、金属カルシウムの添加量も適切に制御するのが良い。こうした観点から、増粘剤としての金属カルシウムの添加量は、溶湯全体に対する質量割合で0.5〜4.0質量%することが好ましい。
本発明方法では、上記のような溶湯に発泡剤を添加することによって、溶湯内に多数の気泡を形成する作用を有する未分解発泡剤を含有する溶湯を急冷させるものであるが、このとき用いる発泡剤としては、水素化チタン、水素化ジルコニウム、炭酸カルシウム等、様々なものが挙げられるが、発泡剤の分解温度を考慮すると、水素化チタンまたは水素化ジルコニウムを用いることが好ましい。この水素化チタンや水素化ジルコニウムを発泡剤として用いる場合には、その添加量は0.5〜2.0質量%(溶湯全質量に対する割合)であることが好ましい。その添加量が0.5質量%未満となると、再加熱後の後の発泡が不十分となって良好な発泡金属が得られない。また添加量が2.0質量%を超えると、溶湯中への発泡剤の均一分散を行なうための混合処理に長時間を要することになったり、また高価な発泡剤を無用に使用することになる。尚、こうした発泡剤の量は、溶湯を急冷凝固させた後に再加熱したときに凝固体が発泡能力を有するに十分な量であることを意味し、これよりも少ない場合には、発泡率が4倍以下であっても溶湯の発泡が不十分となってしまうことになる。以上のことから、急冷凝固させるときの溶湯は「未発泡溶湯」或は「発泡未完了溶湯」とした。
本発明では発泡金属の素材としては、前述したAlやAl合金の他、マグネシウム、亜鉛、鉄、鉛または銅、或いはこれらの合金等を用いることができる。
本発明によって得られる発泡金属前駆体では、その後の加熱によって、所望の特性と密度を有する発泡金属を得ることができる。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
大気中にてAl:38.8kgを溶解し、これにCa:600g(1.5質量%)を添加し、5分間攪拌を行った。この段階で、水素化チタンを600g(1.5質量%)添加し、1分間攪拌を行った後、溶湯を鋳型に流し込んで凝固させて鋳塊を得た。
このとき、鋳型での冷却速度を変えることによって、凝固した鋳塊の発泡率を変化させた。例えば、注湯された溶湯を急冷する場合には、鋳型に溶湯を注湯後直ちに鋳型ごと強制冷却した。また、溶湯の入った鋳型を強制空冷、大気放冷、炉冷等の処理を行うことによって、冷却速度を変化させ、発泡率を変化させた各種鋳塊を得た。
使用した鋳型は、内寸が直径:50mm、高さ:100mmの銅製のものであり、急冷凝固等の高冷却速度を得るときには、鋳型温度を25℃(常温)とし、空冷や炉冷等の低冷却速度を得るときには、鋳型を約500℃に予熱して使用した。
得られた各種鋳塊より所定形状の試験片を切り出し、熱間押出、熱間鍛造、熱間圧延、または冷間圧延を行うことによって、各種素材(発泡金属製造用素材)を作製した。
得られた発泡金属用素材について、650℃に加熱した炉に入れ、10分間保持後取り出し、発泡金属用素材もしくは発泡体の密度を測定した。その結果を、冷却後の発泡倍率、加工条件(方法、加工温度、加工率)と共に、下記表1に示す。尚、各加工での「加工率」は、押出しの場合は押出方向に垂直な断面の断面積比(押出前断面積:S1、押出後断面積:S2のとき、S1/S2)(押出比)で示し、鍛造の場合は荷重方向での加工量を試料初期厚さで除した割合[鍛造比:即ち、初期厚さ:h0、鍛造後厚さ:h1としたとき、(h0−h1)/h0×100]で示し、圧延の場合は前述した圧延率で示した。
冷却時の発泡倍率が4以下のものに、熱間加工を施したもの(試験No.1〜4)では、650℃の加熱によって発泡が起こり、密度が0.31〜0.48g/cm3の発泡体が得られていた(評価:○)。
これに対して、冷間圧延を施したもの(試験No.5)では、650℃の加熱によって若干の発泡は認められたものの、形状は殆ど変化することなく、密度は2.1g/cm3であった。また、冷却時の発泡倍率が、6.5倍と大きいもの(試験No.6)では、650℃の加熱によっても発泡は殆ど認められず、密度も2.3g/cm3と大きくなっていた。
上記のように、冷却時の鋳塊の発泡率が4倍以下であり、その鋳塊に熱間加工を施したものでは、発泡体の密度が0.3〜0.5g/cm3程度となる適切な発泡が実現できていることが分かる(試験No.1〜4)。
一方、冷却後の発泡倍率が2.8倍程度であっても、冷間圧延を施したもの(試験No.5)では、見かけ上緻密化されてはいるが、鋳塊内の残存気泡が完全には圧着せず、連通孔が残存することになって、その後の加熱によっても十分に発泡せず、密度で0.3〜0.5g/cm3程度となる適切な発泡が実現できていないことが分かる。また、加工前の発泡倍率(冷却後の発泡倍率)が高くなり過ぎると(試験No.6)、その後熱間圧延を施しても十分な発泡を確保することができないことが分かる。
Claims (7)
- 金属または合金を溶解して溶湯を作製し、これに増粘剤を添加・混合し、更にこの溶湯内に発泡剤を添加・混合して攪拌して、未発泡溶湯または発泡率が4倍以下の発泡未完了溶湯とし、これを急冷凝固させた凝固体に熱間加工を施して緻密化することを特徴とする発泡金属用素材の製造方法。
- 金属または合金は、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、鉛または銅、或いはこれらの合金である請求項1に記載の製造方法。
- 前記増粘剤は、金属カルシウムである請求項1または2のいずれかに記載の製造方法。
- 前記増粘剤としての金属カルシウムは、溶湯全体に対する質量割合で0.5〜4.0%添加・混合する請求項3に記載の製造方法。
- 前記発泡剤は、水素化チタンまたは水素化ジルコニウムである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 前記発泡剤としての水素化チタンまたは水素化ジルコニウムは、溶湯全体に対する質量割合で0.5〜2.0%添加・混合する請求項5に記載の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の方法によって製造されたものである発泡金属用素材。
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JP2016503575A (ja) * | 2012-09-28 | 2016-02-04 | ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー | 無線通信タワー用の発泡金属コンポーネント |
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