JP5436405B2 - 断熱材用組成物及び断熱材用成形体 - Google Patents

断熱材用組成物及び断熱材用成形体 Download PDF

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Description

本発明は、断熱材用組成物及び断熱材用成形体(以下、これらをまとめて「断熱材」とも言う)に関し、具体的には珪酸カルシウム水和物の一つであるゾノトライトとヒドロキシアパタイトと非晶質シリカからなる複合体を含有する断熱材に関する。
無機系の断熱材として、ゾノトライト、トバモライト等の珪酸カルシウム水和物を用いた成形体タイプ及び不定形の組成物タイプの断熱材が知られている。この中でも特にゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物を用いた断熱材は耐熱性・断熱性・機械的強度が優れており、工業的に広く利用されている。
また、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物を用いた断熱材の断熱性を更に改善するべく、従来、様々な工夫が試みられている。例えば、上記珪酸カルシウム水和物を炭酸化して非晶質シリカと炭酸カルシウムに転化する試み(特許文献1)や、炭酸化後に更に塩酸などで酸処理して炭酸カルシウムを水可溶性のカルシウム塩に変え、その後水洗してカルシウム塩を取り除いて非晶質シリカだけにする試み(特許文献2)が知られている。これらは、上記珪酸カルシウム水和物を非晶質シリカに転化して微細孔を増やすことにより断熱性能を改善するものであるが、これらのものは、成形後の乾燥時に非晶質シリカの収縮により成形体が変形することがあり、安定的に所望の成形体を得ることができないという問題がある。また、酸処理・水洗するものに関しては水可溶性のカルシウム塩の排水の問題もある。更に、炭酸化処理を効率良く行うために圧力容器が必要であり、特許文献2の場合は酸処理・水洗という余分な工程も必要であり、いずれも高価な装置及び/又は複雑な工程を必要とするため製造コストのアップにつながっている。
これらの試みの改良方法として、上記珪酸カルシウム水和物に珪酸アルカリを添加したものを炭酸化した後、塩酸などで酸処理して水洗する試み(特許文献3)が行われている。このものは上記珪酸カルシウム水和物が炭酸化により転化した非晶質シリカに、珪酸アルカリを由来とする粒状の非晶質シリカが付着することで、上記珪酸カルシウム水和物が転化した非晶質シリカが補強されて乾燥時の収縮が改善されるものであるが、前記と同様に水可溶性カルシウム塩の排水の問題や製造コストのアップの問題は残ったままである。
また、その他に上記珪酸カルシウム水和物を有機酸で処理する試み(特許文献4)も行われているが、高価な有機酸を用いることで製造コストのアップに繋がるほか、断熱性能の向上効果も十分ではない。
よって、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物を用いた断熱材を更に改良して、断熱性に優れると共に、乾燥収縮が小さく且つ簡便で排水問題のない製造方法により得られる、実用的な断熱材の開発が望まれている。
特公昭60-35318号公報 特公昭61-58436号公報 特公平6-102533号公報 特公平5-13090号公報
本発明は、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物を基にした改良型の断熱材であって、断熱性に優れると共に、乾燥収縮が小さく、且つ簡便で排水問題のない製造方法により得られる、実用的な断熱材を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の製造方法により得られる特定組成の断熱材によれば上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の断熱材とその製造方法に関する。
1. ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物とヒドロキシアパタイトと非晶質シリカからなる複合体を含有する断熱材用成形体であって、
(1)ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物の二次粒子を含有する水性スラリーAを撹拌しながら前記水性スラリーAにリン酸を添加することにより、前記珪酸カルシウム水和物からヒドロキシアパタイトと非晶質シリカとを生成させ、且つ、前記珪酸カルシウム水和物の未反応分が残存するように前記リン酸を添加することにより、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物とヒドロキシアパタイトと非晶質シリカからなる複合体の水性スラリーBを調製する工程1、並びに、
(2)前記水性スラリーBを脱水成形及び乾燥する工程2、
を有すると共に、工程1に於けるリン酸を添加する前の前記水性スラリーA又は工程2に於ける脱水成形前の前記水性スラリーBに界面活性剤を添加して混合する製造方法により得られることを特徴とする、断熱材用成形体。
2. 工程1において、添加するリン酸の量を,前記珪酸カルシウム水和物中のカルシウムとリン酸中のリンのモル比(Ca/P)が1.9以上5.0以下となる量とする、上記項1に記載の断熱材用成形体。
3. 前記工程1の水性スラリーAにおいて、石灰質原料中のCaOと珪酸質原料中のSiO 2 の配合割合であるモル比(CaO/SiO 2 )が0.9〜1.1である、上記項1又は2に記載の断熱材用成形体。
4. ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物とヒドロキシアパタイトと非晶質シリカからなる複合体を含有する断熱材用成形体を製造する方法であって、
(1)ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物の二次粒子を含有する水性スラリーAを撹拌しながら前記水性スラリーAにリン酸を添加することにより、前記珪酸カルシウム水和物からヒドロキシアパタイトと非晶質シリカとを生成させ、且つ、前記珪酸カルシウム水和物の未反応分が残存するように前記リン酸を添加することにより、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物とヒドロキシアパタイトと非晶質シリカからなる複合体の水性スラリーBを調製する工程1、並びに、
(2)前記水性スラリーBを脱水成形及び乾燥する工程2、
を有すると共に、工程1に於けるリン酸を添加する前の前記水性スラリーA又は工程2に於ける脱水成形前の前記水性スラリーBに界面活性剤を添加して混合することを特徴とする断熱材用成形体の製造方法。
. 工程1において、添加するリン酸の量を,前記珪酸カルシウム水和物中のカルシウムとリン酸中のリンのモル比(Ca/P)が1.9以上5.0以下となる量とする、上記項4に記載の断熱材用成形体の製造方法。
6. 前記工程1の水性スラリーAにおいて、石灰質原料中のCaOと珪酸質原料中のSiO 2 の配合割合であるモル比(CaO/SiO 2 )が0.9〜1.1である、上記項4又は5に記載の断熱材用成形体の製造方法。
以下、本発明の断熱材及びその製造方法について詳細に説明する。
本発明の断熱材(断熱材用組成物及び断熱材用成形体)
本発明の断熱材は、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物とヒドロキシアパタイトと非晶質シリカからなる複合体を含有することを特徴とする。本発明の断熱材は、製造方法の詳細は後記するが、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物を基にした断熱材であって、前記珪酸カルシウム水和物にリン酸を反応させることにより、前記珪酸カルシウム水和物の一部をヒドロキシアパタイトと非晶質シリカに転化させて得られる複合体を含有する。つまり、前記珪酸カルシウム水和物の一部が非晶質シリカに転化されていることにより前記珪酸カルシウム水和物だけからなる断熱材よりも断熱性が向上しており、また前記珪酸カルシウム水和物の一部が残存していることにより製造時(断熱材用組成物の場合は施工時も該当する)の乾燥収縮が抑制されている。
上記複合体の組成については、製造条件に依存して変動するため、製造方法の項目にて詳細に説明する。
本発明の断熱材は、上記複合体のみから構成されていてもよく、必要に応じて、界面活性剤をはじめ公知の添加剤を含有してもよい。添加剤の含有量は限定的ではないが、断熱材中の複合体の含有量が50〜100重量%となる範囲で目的・用途に応じて調整する。
添加剤の種類は限定的ではないが、例えば、エボニックデクサ社のアエロジル(商品名)・キャボット社のナノゲル(商品名)などの微小シリカ,金属酸化物・金属炭化物(例、炭化珪素)・金属窒化物(例、窒化珪素)などの赤外線遮蔽物質,添加剤としてのヒドロキシアパタイト,顔料,染料,繊維,重合体(樹脂),凝集剤,分散剤,撥水剤,充填剤等が挙げられる。
なお、添加剤とは異なるが、断熱性に影響しない範囲で前記珪酸カルシウム水和物にはゾノトライト以外に少量のトバモライト等の他の珪酸カルシウムが混在することは許容される(ゾノトライトの重量割合が80%以上ある珪酸カルシウム水和物を、本願ではゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物として取り扱う)。
本発明の断熱材の密度は限定的ではないが、0.05〜0.40g/cm3程度が好ましく、目的・用途に応じて適宜設定すればよい。
本発明の断熱材用組成物は、通常の不定形タイプの断熱材が使用されている用途で利用でき、例えば、断熱性(遮熱性)や耐熱性(耐火性)を要求される目地材・パテ材・吹き付け材や、断熱材の補修材や、複雑な形状の装置類や配管類の練り付け保温材などに用いることが可能である。
本発明の断熱材用成形体は、通常の成形体タイプの断熱材が使用されている用途で利用でき、大きさ・形状は限定的ではなく、施工する対象物の大きさ・形状、施工性、取扱い性、要求される断熱性能、生産性等を考慮して適宜設定することができるが、例えば、板状の断熱材用成形体の場合の単板の厚みは通常数mm〜100mm程度が好ましい。
断熱材用組成物及び断熱材用成形体の製造方法
本発明の断熱材用組成物及び断熱材用成形体の製造方法は、以下の工程1が共通し、その後に続く工程2が、断熱材用組成物と断熱材用成形体とで異なる。
工程1は、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物の二次粒子を含有する水性スラリーAを撹拌しながら前記水性スラリーAにリン酸を添加することにより、前記珪酸カルシウム水和物からヒドロキシアパタイトと非晶質シリカとを生成させ、且つ、前記珪酸カルシウム水和物の未反応分が残存するように前記リン酸を添加することにより、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物とヒドロキシアパタイトと非晶質シリカからなる複合体の水性スラリーBを調製する工程である。
その後に続く工程2は、
断熱材用組成物の場合は、「前記水性スラリーBを脱水する工程」であり、
断熱材用成形体の場合は、「前記水性スラリーBを脱水成形及び乾燥する工程」である。
また、工程1に於けるリン酸を添加する前の前記水性スラリーA又は工程2に於ける「脱水の前(断熱材用組成物の場合)」、「脱水成形前(断熱材用成形体の場合)」の前記水性スラリーBに界面活性剤を添加して混合することを共通の特徴とする。
工程1では、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物の二次粒子を含有する水性スラリーAを撹拌しながら前記水性スラリーAにリン酸を添加することにより、前記珪酸カルシウム水和物からヒドロキシアパタイトと非晶質シリカとを生成させ、且つ、前記珪酸カルシウム水和物の未反応分が残存するように前記リン酸を添加することにより、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物とヒドロキシアパタイトと非晶質シリカからなる複合体の水性スラリーBを調製する。
ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物の二次粒子を含有する水性スラリーAとしては、例えば、特公昭52-43494号公報,特公昭53-12526号公報,特公昭55-29952号公報,特公昭59-41942号公報,特公昭61-10412号公報,特公平2-14285号公報,特公平2-48483号公報等に示される水性スラリーなどを用いることができる。
具体的には、原料中のCaO/SiO2の比が1.0程度になるように調整した、石灰質原料、珪酸質原料及び水を含む原料スラリーを撹拌下に水熱反応させることにより、上記水性スラリーAが得られる。石灰質原料としては限定されないが、例えば、生石灰(酸化カルシウム)、消石灰(水酸化カルシウム)、カーバイド滓、塩化カルシウム等を用いることができる。また、珪酸質原料としては結晶質である珪石、珪砂等に加えて、非晶質であるシリカゲル、ホワイトカーボン、珪藻土、フェロシリコンダスト、シラス等の一種類以上を併用することができる。また、水の含有量は石灰質原料及び珪酸質原料の合計量に対して通常5重量倍以上(好ましくは10〜70重量倍)である。
原料スラリーの水熱反応の条件は、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物の二次粒子が生成される限り限定されないが、例えば、原料スラリーを撹拌しながらオートクレーブ中で加圧・加熱すればよい。水熱反応時の温度、圧力については、圧力は8〜50Kgf/cm2程度が好ましく、温度は170〜260℃程度が好ましい。また、石灰質原料中のCaOと珪酸質原料中のSiO2の配合割合であるモル比(CaO/SiO2)は1.0前後の0.9〜1.1程度が好ましい。また、水熱反応により得られるゾノトライトの二次粒子の粒径は限定的ではないが、5〜150μm程度であり、二次粒子を構成する一次粒子(針状)の長さは1〜20μm程度である。
水性スラリーAを撹拌しながらリン酸を添加することにより、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物からヒドロキシアパタイトと非晶質シリカとが生成する。この化学反応は、例えば、次式で表される。なお、次式は上記珪酸カルシウム水和物が全てゾノトライトであると仮定した場合である。
5〔6CaO・6SiO2・H2O〕+18〔H3PO4〕+(aq) → 6〔Ca5(PO4)3OH〕+30〔SiO2・nH2O〕+(aq)
・6CaO・6SiO2・H2O:ゾノトライト、
・H3PO4:リン酸、
・Ca5(PO4)3OH:ヒドロキシアパタイト
・SiO2・nH2O:非晶質シリカ(但し、nは0.2程度)
撹拌条件は、本発明の効果を損なわない範囲で、水性スラリーAとリン酸が混合できる撹拌条件であればよい。
本発明では、上記化学反応によりゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物からヒドロキシアパタイトと非晶質シリカとを生成させる際に、上記珪酸カルシウム水和物の未反応分が残存するようにリン酸を添加する。即ち、上記珪酸カルシウム水和物に含まれるカルシウム分が全てヒドロキシアパタイトの生成に消費されるリン酸の添加量(化学当量)未満のリン酸を添加する。このように設定することにより、反応後にもゾノトライトが残存し、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物とヒドロキシアパタイトと非晶質シリカからなる複合体が得られる。
本発明では、リン酸の添加量に関しては、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物中のカルシウム(Ca)とリン酸中のリン(P)のモル比(Ca/P)が1.9以上5.0以下(好ましくは1.9以上3.3以下)となる量を加えることが好ましい。上記リン酸量を上記珪酸カルシウム水和物に添加混合することにより、上記珪酸カルシウム水和物の約30〜90%がリン酸と反応する。そして、得られる複合体の組成(重量%)は凡そ以下の通りとなる。なお、非晶質シリカはSiO2・0.2H2O換算である。
(リン酸の添加量がCa/P=1.9〜5.0の場合)
a)ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物:64〜3重量%
b)ヒドロキシアパタイト:24〜61重量%
c)非晶質シリカ:12〜36重量%
〔但し、3成分の合計は100重量%である。〕
(リン酸の添加量がCa/P=1.9〜3.3の場合)
a)ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物:42~3重量%
b)ヒドロキシアパタイト:35~61重量%
c)非晶質シリカ:23~36重量%
〔但し、3成分の合計は100重量%である。〕
リン酸の添加量がCa/P=5.0より大きい場合(珪酸カルシウム水和物の反応割合が約30%未満の場合に相当)には断熱性の向上が期待できず、リン酸の添加量がCa/P=1.9より小さい場合(珪酸カルシウム水和物の反応割合が約90%より大きい場合に相当)には断熱材用組成物や断熱材用成形体の乾燥収縮や強度低下が大きくなり、所定の断熱材用組成物や断熱材用成形体が得られ難くなるので好ましくない。本発明には含まれないが、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物の全て(100%)がリン酸と完全に反応するようなリン酸量を添加して反応させた場合には断熱材用組成物や断熱材用成形体の乾燥収縮や強度低下が著しく、断熱材として実用に供し得ないものである。
リン酸の添加方法に特別な条件はなく、従来行われている方法で添加すればよい。なお、少量ずつゆっくりと添加した方が、後述する脱水成形や脱水の時の成形性(水抜け)がよく、乾燥後の表面状態もよく(特に成形体の場合は乾燥収縮による小さなクラックが表面に無い)、強度低下が少なく、断熱性も若干良くなるので好ましい。
また、断熱材用組成物や断熱材用成形体の乾燥収縮を調整(抑制)する目的で界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などの既存のものが利用でき、各界面活性剤の特性を考慮した適切な方法で使用できる。
界面活性剤の添加時期としては、工程1に於けるリン酸を添加する前の水性スラリーA又は工程2に於ける「脱水の前(断熱材用組成物の場合)」、「脱水成形前(断熱材用成形体の場合)」の水性スラリーBに添加して混合すれば良いが、リン酸を添加する前の水性スラリーAに添加する方が、脱水性や成形性が向上するのでより好ましい。界面活性剤の添加量は本発明の効果を損なわない範囲で適宜決定すれば良いが、水性スラリーA又はスラリーBの固形分に対して0.1〜10重量%の範囲で添加される。
なお、本発明の断熱材用組成物や断熱材用成形体が前記添加剤を含有する場合には、上記複合体を形成する反応の前後や上記珪酸カルシウム水和物の合成段階のいずれかで、本願発明の効果を損なわない方法(添加量,添加方法)で適宜添加剤を配合すればよい。
上記工程1により、ゾノトライトとヒドロキシアパタイトと非晶質シリカからなる複合体の水性スラリーBが得られる。
工程2では、断熱材用組成物の場合は水性スラリーBを脱水する。このとき、脱水に加えて公知の乾燥工程も含めてもよい。また、断熱材用成形体の場合は水性スラリーBを脱水成形及び乾燥する。
断熱材用組成物の場合は、水性スラリーBを脱水及び又は乾燥することにより、断熱材用組成物の使用目的や取扱い性を考慮して水分量を調整する。
断熱材用成形体の場合の脱水成形方法としては、プレス脱水成形,抄造法,ロール脱水成形法,遠心成形法,押出成形法,鋳型注入法等の既存の脱水成形方法が利用できる。また乾燥方法も風乾,加熱乾燥,熱風乾燥,真空乾燥,凍結乾燥,真空凍結乾燥,調湿乾燥,雰囲気制御置換型乾燥,超臨界乾燥等の既存の乾燥方法が利用でき、乾燥温度及び乾燥度合(含水率)は成形体(断熱材)の組成や目的・用途に応じて適宜設定すればよい。
上記工程2により、本発明の断熱材(断熱材用組成物及び断熱材用成形体)が得られる。
本発明の断熱材(断熱材用組成物及び断熱材用成形体)は、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物の一部が非晶質シリカに転化されていることによりゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物だけからなる断熱材よりも断熱性が向上しており、更にゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物の一部が残存していることにより製造時(断熱材用組成物の場合は施工時も該当する)の乾燥収縮が抑制されている。
本発明の断熱材の製造方法によれば、上記特性を有する断熱材を簡便に且つ乾燥収縮の問題を回避しながら断熱材を製造することができる。また、製造時の排水問題の心配もない。
実施例2の複合体の二次粒子の走査型電子顕微鏡写真(倍率500)である。 実施例2の複合体の二次粒子の走査型電子顕微鏡写真(倍率20000)である。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
実施例1
水中で強制分散させたフェロシリコンダストに、12倍の温水中で消和した生石灰をモル比(CaO/SiO2)が1.00になるように混合し、更にこれに水を加えて、水対固形分比を24として原料スラリーとした。これを撹拌翼付きオートクレーブ(容量約3リットル)に入れて回転数100rpmで撹拌翼を回転させながら飽和水蒸気圧15kgf/cm2で3時間反応させて、ゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物の球状二次粒子よりなる水性スラリーを得た。この水性スラリーの一部を採取して乾燥し、蛍光X線を用いた定量分析法により組成割合を求めたところ、「CaO」と「SiO2」と「その他の成分」の重量割合(%)はそれぞれ「47%と50%と3%」であった。
次いで、この水性スラリーから固形分量が同じとなるように水性スラリーを3個分取し、それぞれの分取した水性スラリーを撹拌しながら、これらに10%濃度のリン酸水溶液を、上記分取したゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物の水性スラリー中のCa(上記分析値を基に含有量を求める)とリン酸水溶液中のPのモル比(Ca/P)が、それぞれ5.0,2.5,1.9となるような分量、一度に添加して反応させ、ゾノトライトとヒドロキシアパタイトと非晶質シリカからなる複合体を含有する3種類の水性スラリーを得た。また、上記3種類の水性スラリーの一部を採取して乾燥させ、粉末X線回折法により分析したところ、リン酸をCa/P=5.0,2.5の分量で添加したもののX線回折図にはゾノトライトとヒドロキシアパタイトの回折ピークが確認され、Ca/P=1.9の分量で添加したもののX線回折図ではゾノトライトの回折ピークは小さくなってヒドロキシアパタイトのピークと重なり見かけ上は判別できなくなった。また、どの添加量でも2θ=23度付近にブロードなピークを示す非晶質シリカが生成しているが、非晶質なのでピークが小さく、ゾノトライトやヒドロキシアパタイトのピークに重なり見かけ上は判別できなくなっていた。上記において、水性スラリーとリン酸水溶液の接触は常温で行った。
また、リン酸を添加した上記3種類の水性スラリーの一部を採取し、乾燥して得られた試料について、蛍光X線を用いた定量分析法により、試料中の「CaO」と「SiO2」と「P2O5」と「その他の成分」の重量割合(%)を求め、その値を基に試料中の「ゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物」と「ヒドロキシアパタイト」と「非晶質シリカ」の重量割合(%)に換算した結果を以下に示す。
(1)リン酸をCa/P=5.0の分量で添加した場合
反応後の試料の分析結果は「CaOが42%,SiO2が45%,P2O5が12%,その他成分が1%」であった。
P2O5はヒドロキシアパタイトに由来するのでヒドロキシアパタイトは約27%となった。
CaO42%からヒドロキシアパタイトに由来するCaO量を除いたものが、リン酸と反応しなかった残存珪酸カルシウム水和物中のCaO量になることから、残存珪酸カルシウム水和物は約55%となった。
SiO245%から残存珪酸カルシウム水和物に由来するSiO2量を除いたものが、非晶質シリカ中のSiO2量になることから、非晶質シリカ(SiO2・0.2H2O換算)は約18%となった。
(2)リン酸をCa/P=2.5の分量で添加した場合
反応後の試料の分析結果は「CaOが38%,SiO2が39%,P2O5が22%,その他成分が1%」であった。
P2O5はヒドロキシアパタイトに由来するのでヒドロキシアパタイトは約51%となった。
CaO38%からヒドロキシアパタイトに由来するCaO量を除いたものが、リン酸と反応しなかった残存珪酸カルシウム水和物中のCaO量になることから、残存珪酸カルシウム水和物は約19%となった。
SiO239%から残存珪酸カルシウム水和物に由来するSiO2量を除いたものが、非晶質シリカ中のSiO2量になることから、非晶質シリカ(SiO2・0.2H2O換算)は約30%となった。
(3)リン酸をCa/P=1.9の分量で添加した場合
反応後の試料の分析結果は「CaOが36%,SiO2が37%,P2O5が26%,その他成分が1%」であった。
P2O5はヒドロキシアパタイトに由来するのでヒドロキシアパタイトは約60%となった。
CaO36%からヒドロキシアパタイトに由来するCaO量を除いたものが、リン酸と反応しなかった残存珪酸カルシウム水和物中のCaO量になることから、残存珪酸カルシウム水和物は約4%となった。
SiO237%から残存珪酸カルシウム水和物に由来するSiO2量を除いたものが、非晶質シリカ中のSiO2量になることから、非晶質シリカ(SiO2・0.2H2O換算)は約36%となった。
上記3種類の反応後の水性スラリーの所定量に、成形後の成形体中において、水性スラリーの固形分が97重量部、ガラス繊維が3重量部、乾燥収縮防止用の界面活性剤(三洋化成工業(株)製,ナロアクティーCL-100)が上記水性スラリーの固形分に対して2.5重量部となるように、ガラス繊維と界面活性剤を添加して混合した後、脱水成形し、150℃で乾燥して成形体(150mm×50mm×30mm)を得た。成形体は乾燥収縮による変形やクラックなどの無い良好なものであった。
成形体の密度、曲げ強さ、熱伝導率(京都電子工業(株)製の迅速熱伝導率計のQTM-500を用いて150℃での熱伝導率を測定)の測定結果を表1の試験体2〜4に示す。なお、熱伝導率については比較例1の成形体の熱伝導率を基準として、それより低下している割合(%)で示している。
比較例1
実施例1で用いたものと同じゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物の球状二次粒子よりなる水性スラリーから、実施例1と同じ固形分量(成形時)の水性スラリーを分取し、その水性スラリーに、成形後の成形体中に於いて、水性スラリーの固形分が97重量部、ガラス繊維が3重量部、乾燥収縮防止用の界面活性剤(三洋化成工業(株)製,ナロアクティーCL-100)が上記水性スラリーの固形分に対して2.5重量部となるように、ガラス繊維と界面活性剤を添加して混合した後、脱水成形し、150℃で乾燥して成形体(150mm×50mm×30mm)を得た。成形体は乾燥収縮による変形やクラックなどの無い良好なものであった。
上記成形体について、実施例1と同様に、成形体の密度、曲げ強さ、熱伝導率を測定した。測定結果を表1の試験体1に示す。なお、熱伝導率については本例の成形体の熱伝導率を基準として、それより低下している割合(%)で示しているので、本例の場合は低下割合が0%になっている。
比較例2
実施例1で用いたものと同じゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物の球状二次粒子よりなる水性スラリーから、実施例1と同じ固形分量の水性スラリーを分取し、それを撹拌しながら、それに10%濃度のリン酸水溶液を、上記分取したゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物の水性スラリー中のCaとリン酸水溶液中のPのモル比(Ca/P)が1.6となるような分量(即ち、ゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物中の全てのCaがリン酸水溶液中のPと反応する分量)、一度に添加して反応させ、ヒドロキシアパタイトと非晶質シリカよりなる複合体よりなる水性スラリーを得た。なお、上記に於いて、水性スラリーとリン酸水溶液の接触は常温で行った。
上記反応後の水性スラリーの所定量に、成形後の成形体中に於いて、水性スラリーの固形分が97重量部、ガラス繊維が3重量部、乾燥収縮防止用の界面活性剤(三洋化成工業(株)製,ナロアクティーCL-100)が上記水性スラリーの固形分に対して2.5重量部となるように、ガラス繊維と界面活性剤を添加して混合した後、脱水成形し、150℃で乾燥して成形体(150mm×50mm×30mm)を得た。成形体は乾燥収縮により変形を生じ、表面にはクラックも見られ、断熱材用の成形体としては不適切なものであった。
上記成形体について、実施例1と同様に、成形体の密度、曲げ強さ、熱伝導率を測定した。測定結果を表1の試験体5に示す。なお、熱伝導率については比較例1の成形体の熱伝導率を基準として、それより低下している割合(%)で示している。
実施例2
実施例1で用いたものと同じゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物の球状二次粒子よりなる水性スラリーから、実施例1と同じ固形分量の水性スラリーを分取し、それを撹拌しながら、それに10%濃度のリン酸水溶液を、上記分取したゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物の水性スラリー中のCaとリン酸水溶液中のPのモル比(Ca/P)が2.5となるような分量、1時間かけて少量ずつゆっくり添加して反応させ、ゾノトライトとヒドロキシアパタイトと非晶質シリカよりなる複合体よりなる水性スラリーを得た。なお、上記に於いて、水性スラリーとリン酸水溶液の接触は70℃に水性スラリーを加温しながら行った。
上記反応後の水性スラリーの所定量に、成形後の成形体中に於いて、水性スラリーの固形分が97重量部、ガラス繊維が3重量部、乾燥収縮防止用の界面活性剤(三洋化成工業(株)製,ナロアクティーCL-100)が上記水性スラリーの固形分に対して2.5重量部となるように、ガラス繊維と界面活性剤を添加して混合した後、脱水成形し、150℃で乾燥して成形体(150mm×50mm×30mm)を得た。成形体は乾燥収縮による変形やクラックなどの無い良好なものであった。
上記成形体について、実施例1と同様に、成形体の密度、曲げ強さ、熱伝導率を測定した。測定結果を表1の試験体6に示す。なお、熱伝導率については比較例1の成形体の熱伝導率を基準として、それより低下している割合(%)で示している。
また、反応後の水性スラリーの一部を採取して走査型電子顕微鏡観察用の試料とした。試料(ゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物とヒドロキシアパタイトと非晶質シリカよりなる複合体の二次粒子)の倍率500の走査型電子顕微鏡写真を図1に、それを更に拡大した倍率20000の走査型電子顕微鏡写真を図2に示した。
実施例3
水中で強制分散させたフェロシリコンダストに、60倍の温水中で消和しホモミキサー処理した生石灰をモル比(CaO/SiO2)が1.00になるように混合し、更にこれに水を加えて、水対固形分比を60として原料スラリーとした。これを撹拌翼付きオートクレーブ(容量約3リットル)に入れ回転数100rpmで撹拌翼を回転させながら飽和水蒸気圧12kgf/cm2で8時間反応させて、ゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物の球状二次粒子よりなる水性スラリーを得た。
次いで、この水性スラリーの一部を採取して乾燥し、実施例1と同様に蛍光X線を用いた定量分析法によりCaO及びSiO2等の組成割合を求めた後、この水性スラリーから実施例1と同じ固形分量の水性スラリーを分取し、その分取した水性スラリーに、乾燥収縮防止用の界面活性剤(花王(株)製のペレックスOT-P)を水性スラリーの固形分に対して5重量%加え、それを撹拌しながら、それに10%濃度のリン酸水溶液を、上記分析した組成割合を基に、分取した水性スラリー中のゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物のCaとリン酸水溶液中のPのモル比(Ca/P)が2.5となるような分量、1時間かけて少量ずつゆっくり添加して反応させ、ゾノトライトとヒドロキシアパタイトと非晶質シリカよりなる複合体よりなる水性スラリーを得た。なお、上記に於いて、水性スラリーとリン酸水溶液の接触は70℃に水性スラリーを加温しながら行った。
上記反応後の水性スラリーの所定量に、成形後の成形体中に於いて、水性スラリーの固形分が97重量部、ガラス繊維が3重量部となるように、ガラス繊維を添加して混合した後、脱水成形し、150℃で乾燥して成形体(150mm×50mm×30mm)を得た。成形体は乾燥収縮による変形やクラックなどの無い良好なものであった。
上記成形体について、実施例1と同様に、成形体の密度、曲げ強さ、熱伝導率を測定した。測定結果を表1の試験体7に示す。なお、熱伝導率については比較例1の成形体の熱伝導率を基準として、それより低下している割合(%)で示している。
実施例4
水中で強制分散させたフェロシリコンダストに、40倍の温水中で消和し高速撹拌処理した生石灰をモル比(CaO/SiO2)が1.00になるように混合し、更にこれに水を加えて、水対固形分比を40として原料スラリーとした。これを撹拌翼付きオートクレーブ(容量約1m3)に入れ回転数29rpmで撹拌翼を回転させながら飽和水蒸気圧13.5kgf/cm2で8時間反応させて、ゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物の球状二次粒子よりなる水性スラリーを得た。
次いで、この水性スラリーの一部を採取して乾燥し、実施例1と同様に蛍光X線を用いた定量分析法によりCaO及びSiO2等の組成割合を求めた後、この水性スラリーから所定量の水性スラリーを分取し、その分取した水性スラリーに、乾燥収縮防止用の界面活性剤(花王(株)製のペレックスOT-P)を水性スラリーの固形分に対して5重量%加え、それを撹拌しながら、それに10%濃度のリン酸水溶液を、上記分析した組成割合を基に、分取した水性スラリー中のゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物のCaとリン酸水溶液中のPのモル比(Ca/P)が2.5となるような分量、1時間かけて少量ずつゆっくり添加して反応させ、ゾノトライトとヒドロキシアパタイトと非晶質シリカよりなる複合体よりなる水性スラリーを得た。なお、上記に於いて、水性スラリーとリン酸水溶液の接触は70℃に水性スラリーを加温しながら行った。
上記反応後の水性スラリーの所定量に、成形後の成形体中に於いて、水性スラリーの固形分が74重量部、ガラス繊維が3重量部、炭化珪素粉末が20重量部、パルプ3重量部となるように、ガラス繊維・炭化珪素粉末・パルプを添加して混合した後、脱水成形し、150℃で乾燥して成形体(150mm×50mm×30mm)を得た。成形体は乾燥収縮による変形やクラックなどの無い良好なものであった。
上記成形体について、実施例1と同様に、成形体の密度、曲げ強さ、熱伝導率を測定した。測定結果を表1の試験体8に示す。なお、熱伝導率については比較例1の成形体の熱伝導率を基準として、それより低下している割合(%)で示している。
実施例5
珪石粉と、12倍の温水中で消和し高速撹拌処理した生石灰をモル比(CaO/SiO2)が1.00になるように混合し、更にこれに水を加えて、水対固形分比を20として原料スラリーとした。これを撹拌翼付きオートクレーブ(容量約1m3)に入れ回転数29rpmで撹拌翼を回転させながら飽和水蒸気圧13.5kgf/cm2で8時間反応させて、ゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物の球状二次粒子よりなる水性スラリーを得た。
次いで、この水性スラリーの一部を採取して乾燥し、実施例1と同様に蛍光X線を用いた定量分析法によりCaO及びSiO2等の組成割合を求めた後、この水性スラリーから所定量の水性スラリーを分取し、その分取した水性スラリーに、乾燥収縮防止用の界面活性剤(花王(株)製のペレックスOT-P)を水性スラリーの固形分に対して5重量%加え、それを撹拌しながら、それに10%濃度のリン酸水溶液を、上記分析した組成割合を基に、分取した水性スラリー中のゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物のCaとリン酸水溶液中のPのモル比(Ca/P)が2.5となるような分量、1時間かけて少量ずつゆっくり添加して反応させ、ゾノトライトとヒドロキシアパタイトと非晶質シリカよりなる複合体よりなる水性スラリーを得た。なお、上記に於いて、水性スラリーとリン酸水溶液の接触は70℃に水性スラリーを加温しながら行った。
上記反応後の水性スラリーの所定量に、成形後の成形体中に於いて、水性スラリーの固形分が97重量部、ガラス繊維が3重量部となるように、ガラス繊維を添加して混合した後、脱水成形し、150℃で乾燥して成形体(150mm×50mm×30mm)を得た。成形体は乾燥収縮による変形やクラックなどの無い良好なものであった。
上記成形体について、実施例1と同様に、成形体の密度、曲げ強さ、熱伝導率を測定した。測定結果を表1の試験体9に示す。なお、熱伝導率については比較例1の成形体の熱伝導率を基準として、それより低下している割合(%)で示している。
実施例6
水中で強制分散させたフェロシリコンダストに、40倍の温水中で消和し高速撹拌処理した生石灰をモル比(CaO/SiO2)が1.00になるように混合し、更にこれに水を加えて、水対固形分比を40として原料スラリーとした。これを撹拌翼付きオートクレーブ(容量約1m3)に入れ回転数29rpmで撹拌翼を回転させながら飽和水蒸気圧13.5kgf/cm2で8時間反応させて、ゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物の球状二次粒子よりなる水性スラリーを得た。
次いで、この水性スラリーの一部を採取して乾燥し、実施例1と同様に蛍光X線を用いた定量分析法によりCaO及びSiO2等の組成割合を求めた後、この水性スラリーから所定量の水性スラリーを分取し、その分取した水性スラリーに、乾燥収縮防止用の界面活性剤(花王(株)製のペレックスOT-P)を水性スラリーの固形分に対して5重量%加え、それを撹拌しながら、それに10%濃度のリン酸水溶液を、上記分析した組成割合を基に、分取した水性スラリー中のゾノトライトからなる珪酸カルシウム水和物のCaとリン酸水溶液中のPのモル比(Ca/P)が2.5となるような分量、1時間かけて少量ずつゆっくり添加して反応させ、ゾノトライトとヒドロキシアパタイトと非晶質シリカよりなる複合体よりなる水性スラリーを得た。なお、上記に於いて、水性スラリーとリン酸水溶液の接触は70℃に水性スラリーを加温しながら行った。
上記反応後の水性スラリーの所定量に、成形後の成形体中に於いて、反応後の水性スラリーの固形分が68重量部、下記に示す方法で調製したヒドロキシアパタイトの水性スラリーの固形分が29重量部、ガラス繊維が3重量部となるように、ヒドロキシアパタイトの水性スラリーとガラス繊維を添加して混合した後、脱水成形し、150℃で乾燥して成形体(150mm×50mm×30mm)を得た。成形体は乾燥収縮による変形やクラックなどの無い良好なものであった。
上記成形体について、実施例1と同様に、成形体の密度、曲げ強さ、熱伝導率を測定した。測定結果を表1の試験体10に示す。なお、熱伝導率については比較例1の成形体の熱伝導率を基準として、それより低下している割合(%)で示している。
(ヒドロキシアパタイトの水性スラリーの調製方法)
12倍の温水中で消和した生石灰を、80℃に加温・撹拌しながら、それに10%濃度のリン酸水溶液を、生石灰中のCa分が全てリン酸と反応する様、生石灰中のCaとリン酸水溶液中のPのモル比(Ca/P)が1.6となるような分量、1時間かけて少量ずつゆっくり添加して反応させて、ヒドロキシアパタイトの水性スラリーを得た。得られたヒドロキシアパタイトの水性スラリーを更にホモミキサーを用いて分散処理して、上記添加用のヒドロキシアパタイトの水性スラリーを調製した。
Figure 0005436405
注1)リン酸添加方法
A:一度に添加(常温)
B:1時間かけて少量ずつゆっくり添加(70℃に加温)

Claims (6)

  1. ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物とヒドロキシアパタイトと非晶質シリカからなる複合体を含有する断熱材用成形体であって、
    (1)ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物の二次粒子を含有する水性スラリーAを撹拌しながら前記水性スラリーAにリン酸を添加することにより、前記珪酸カルシウム水和物からヒドロキシアパタイトと非晶質シリカとを生成させ、且つ、前記珪酸カルシウム水和物の未反応分が残存するように前記リン酸を添加することにより、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物とヒドロキシアパタイトと非晶質シリカからなる複合体の水性スラリーBを調製する工程1、並びに、
    (2)前記水性スラリーBを脱水成形及び乾燥する工程2、
    を有すると共に、工程1に於けるリン酸を添加する前の前記水性スラリーA又は工程2に於ける脱水成形前の前記水性スラリーBに界面活性剤を添加して混合する製造方法により得られることを特徴とする、断熱材用成形体。
  2. 工程1において、添加するリン酸の量を,前記珪酸カルシウム水和物中のカルシウムとリン酸中のリンのモル比(Ca/P)が1.9以上5.0以下となる量とする、請求項1に記載の断熱材用成形体。
  3. 前記工程1の水性スラリーAにおいて、石灰質原料中のCaOと珪酸質原料中のSiO 2 の配合割合であるモル比(CaO/SiO 2 )が0.9〜1.1である、請求項1又は2に記載の断熱材用成形体。
  4. ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物とヒドロキシアパタイトと非晶質シリカからなる複合体を含有する断熱材用成形体を製造する方法であって、
    (1)ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物の二次粒子を含有する水性スラリーAを撹拌しながら前記水性スラリーAにリン酸を添加することにより、前記珪酸カルシウム水和物からヒドロキシアパタイトと非晶質シリカとを生成させ、且つ、前記珪酸カルシウム水和物の未反応分が残存するように前記リン酸を添加することにより、ゾノトライトを主成分とする珪酸カルシウム水和物とヒドロキシアパタイトと非晶質シリカからなる複合体の水性スラリーBを調製する工程1、並びに、
    (2)前記水性スラリーBを脱水成形及び乾燥する工程2、
    を有すると共に、工程1に於けるリン酸を添加する前の前記水性スラリーA又は工程2に於ける脱水成形前の前記水性スラリーBに界面活性剤を添加して混合することを特徴とする断熱材用成形体の製造方法。
  5. 工程1において、添加するリン酸の量を,前記珪酸カルシウム水和物中のカルシウムとリン酸中のリンのモル比(Ca/P)が1.9以上5.0以下となる量とする、請求項4に記載の断熱材用成形体の製造方法。
  6. 前記工程1の水性スラリーAにおいて、石灰質原料中のCaOと珪酸質原料中のSiO 2 の配合割合であるモル比(CaO/SiO 2 )が0.9〜1.1である、請求項4又は5に記載の断熱材用成形体の製造方法。
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