JP2004051379A - 珪酸カルシウム成形体の製造方法および珪酸カルシウム成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】軽量、高強度、不燃性、耐熱性、断熱性、耐腐巧性、調湿性、加工性の性能を有しつつ、原料コストの低減を可能とし、商品化に問題のない珪酸カルシウム成形体の製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明にかかる珪酸カルシウム成形体の製造方法は、結晶質珪酸原料と石灰原料とからなる固形分から珪酸カルシウム成形体を製造する珪酸カルシウム成形体の製造方法であって、固形分全体の50〜80重量%の固形分に水を所定量加え、水熱合成して珪酸カルシウム水和物からなる種晶Aを生成する種晶生成工程(S20)と、種晶生成工程の水熱合成中に、固形分全体の残りの20〜50重量%の固形分に水を所定量加え、懸濁させて得られたスラリーBを、種晶Aに圧入して、珪酸カルシウム水和物を合成する圧入工程(S30)と、圧入工程で得られた珪酸カルシウム水和物を脱水成形して得られた成形体を乾燥する成形工程(S40)とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明にかかる珪酸カルシウム成形体の製造方法は、結晶質珪酸原料と石灰原料とからなる固形分から珪酸カルシウム成形体を製造する珪酸カルシウム成形体の製造方法であって、固形分全体の50〜80重量%の固形分に水を所定量加え、水熱合成して珪酸カルシウム水和物からなる種晶Aを生成する種晶生成工程(S20)と、種晶生成工程の水熱合成中に、固形分全体の残りの20〜50重量%の固形分に水を所定量加え、懸濁させて得られたスラリーBを、種晶Aに圧入して、珪酸カルシウム水和物を合成する圧入工程(S30)と、圧入工程で得られた珪酸カルシウム水和物を脱水成形して得られた成形体を乾燥する成形工程(S40)とを備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、珪酸カルシウム成形体の製造方法および珪酸カルシウム成形体に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、住宅の壁や床の建材として、珪酸カルシウム成形体が用いられている。この珪酸カルシウム成形体には、軽量、高強度、不燃性、耐熱性、耐腐巧性、寸法安定性、調湿性及び加工性の性能を有することが要求されている。
従来この種の珪酸カルシウム成形体の製造方法としては、1)成形に先立ち珪酸原料と石灰原料を水中煮沸混合し、一旦嵩高い珪酸カルシウムゲル粒子を含むスラリーとなした後、成形し、オートクレーブ養生する方法、2)珪酸カルシウム成形体への成形前に珪酸カルシウム水和物の結晶を造り、成形後直ちに乾燥する方法等がある。
【0003】
前記1)の場合、珪酸原料としては一般的に非晶質珪酸が採用されている。この方法では、常圧下でゲル化する必要があるので、常圧下でゲル化することが困難である結晶質珪酸は採用できない。そのため、非晶質珪酸よりも安価である結晶質珪酸を採用できないので、原料コストの低減ができないという問題がある。さらに、保温、断熱用途の珪酸カルシウム成形体は、軽量化が要求されている。この軽量化の一定の指標となる嵩密度130kg/m3以下の珪酸カルシウム成形体を製造する場合は、前記1)の方法では、製造することが困難である。
【0004】
この嵩密度130kg/m3以下の珪酸カルシウム成形体を製造する場合は、前記2)の方法が好適である。その際、石灰原料としては、嵩の高いスラリーが有利である。そのため、消石灰粉末を水と混合したスラリーならば、製品嵩密度が大きくなるので、石灰原料として、生石灰を多量の水で湿式消化して得られるスラリー状の消石灰(石灰乳)を用いる必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記2)の方法において、前記の石灰乳を使用した場合は、軽量の成形体の成形は可能であるが、成形後の乾燥工程での収縮が非常に大きいため反りが生じ、商品化できないという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、軽量、高強度、不燃性、耐熱性、断熱性、耐腐巧性、調湿性、加工性の性能を有しつつ、原料コストの低減を可能とし、商品化に問題のない珪酸カルシウム成形体の製造方法および珪酸カルシウム成形体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達するために、本発明の珪酸カルシウム成形体の製造方法は、結晶質珪酸原料と石灰原料とからなる固形分から珪酸カルシウム成形体を製造する珪酸カルシウム成形体の製造方法であって、前記固形分全体の50〜80重量%の固形分に水を所定量加え、水熱合成して珪酸カルシウム水和物からなる種晶Aを生成する種晶生成工程と、前記種晶生成工程の水熱合成中に、前記固形分全体の残りの20〜50重量%の固形分に水を所定量加え、懸濁させて得られたスラリーBを、前記種晶Aに圧入して、珪酸カルシウム水和物を合成する圧入工程と、前記圧入工程で得られた珪酸カルシウム水和物を脱水成形して得られた成形体を乾燥する成形工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、結晶質珪酸原料としては、珪石または珪砂等を使用すれば良い。
石灰原料としては、生石灰を多量の水で湿式消化して得られるスラリー状の消石灰(石灰乳)が、嵩が高いので好適である。
【0009】
以上において、前記固形分に対して10〜50倍重量の水を加えることが好ましく、より好ましくは、加える水の量は15〜30倍重量である。
ここで、前記固形分に対して10倍重量未満の水を加えると、固形分を水に溶解させるのに困難である場合がある。前記固形分に対して50倍重量を超える水を加えると、固形分収量が少ないので、不適当である。
【0010】
また、前記固形分のCaO/SiO2モル比を、0.60〜1.20の範囲内とすることが好ましい。
このようにすれば、耐熱性等を備えた実用的な珪酸カルシウム成形体を得ることができる。
【0011】
また、前記固形分のCaO/SiO2モル比を、0.95〜1.20の範囲内とすることが好ましい。
ここで、固形分の組成を上記の範囲内にすると、ゾノトライト(6CaO・6SiO2・H2O)を得ることができる。このゾノトライト(6CaO・6SiO2・H2O)は、珪酸カルシウム水和物の中でも、一層耐熱性に優れており、断熱保温材としてのみならず、耐火被覆材等の用途にまで使用することができる。
【0012】
従って、前記固形分のCaO/SiO2モル比が、0.95〜1.20の範囲内とすれば、確実にゾノトライトを得ることができ、耐火被覆材等、高熱を遮断する用途に好適な珪酸カルシウム成形体を得ることができる。
【0013】
さらに、前記固形分のCaO/SiO2モル比を、0.60〜0.95の範囲内とすることが好ましい。
ここで、固形分の組成を上記の範囲内にすると、トバモライト(5CaO・6SiO2・5H2O)を得ることができる。このトバモライト(5CaO・6SiO2・5H2O)は、ゾノトライト同様、耐熱性に優れている。
【0014】
従って、前記固形分のCaO/SiO2モル比が、0.60〜0.95の範囲内とすれば、確実にトバモライトを得ることができ、耐火被覆材等、高熱を遮断する用途に好適な珪酸カルシウム成形体を得ることができる。
【0015】
種晶生成工程は、前述したように、前記固形分全体の50〜80重量%の固形分に水を所定量加え、水熱合成して珪酸カルシウム水和物からなる種晶Aを生成する。
この種晶生成工程では、混合・撹拌、水熱合成のために、撹拌式オートクレーブを用いる方法等を採用できる。この種晶生成工程における水熱合成温度は、150〜230℃であることが好ましい。ここで、前記種晶生成工程における水熱合成温度は、150℃未満であると、珪酸カルシウム水和物の生成に長時間を要するため実用的でない場合がある。前記種晶生成工程における水熱合成温度は、230℃を超えると、飽和水蒸気圧が高くなりすぎ、装置面などにおいて経済的に不利となる場合がある。
【0016】
また、水熱合成させる時間は、1〜12時間程度であることが好ましい。水熱合成させる時間が、1時間未満であると、結晶化が十分でない場合がある。水熱合成させる時間が12時間を超えると、珪酸カルシウム水和物の生成に要するエネルギーが大きすぎて、製造コストが必要以上に、大きくなる場合がある。
【0017】
圧入工程は、前述したように、前記種晶生成工程の水熱合成中に、前記固形分全体の残りの20〜50重量%の固形分に水を所定量加え、懸濁させて得られたスラリーBを、前記種晶Aに圧入して、珪酸カルシウム水和物を合成する。
具体的には、高圧ポンプを用いて、種晶Aの水熱合成をさせたままの状態で、撹拌式オートクレーブ等の内部にスラリーBを圧入させ、所定の温度、時間を保持することにより、種晶AとスラリーBを合わせた全量を珪酸カルシウム水和物とする。
【0018】
ここで、スラリーBの圧入量が多いほど、珪酸カルシウム水和物の嵩は低くなるが、珪酸カルシウム水和物を成形して得られた成形体の乾燥収縮は小さくなる傾向にある。
また、種晶生成工程で水を加えて得られるスラリーおよび圧入工程のスラリーBのそれぞれのスラリー中に占める固形分の濃度は同じでなくてもよい。スラリーBのスラリー中に占める固形分の濃度が高い方が、スラリーBの圧入後の温度低下が少ないので、エネルギーを有効に活用することができる。さらに、圧入工程のスラリーBを圧入する前に、常圧下で加温しておいてもよい。
【0019】
成形工程は、前述したように、前記圧入工程で得られた珪酸カルシウム水和物を脱水成形する。
ここで、合成終了した前記珪酸カルシウム水和物を成形する際には、補強繊維、ポリマーエマルジョン及び凝集剤を添加してもよい。
【0020】
この補強繊維としては、例えば、ガラス繊維、パルプ繊維、カーボン繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等を使用すればよく、補給繊維の添加量は、珪酸カルシウム水和物100重量%に対して固形分1〜10重量%が好ましく、固形分1重量%未満では補強効果が小さく、固形分10重量%を越えれば、繊維が塊状になり易く均一に分散されないため、逆に強度を低下させるおそれがある。
【0021】
ポリマーエマルジョンとしては、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を使用すればよく、ポリマーエマルジョンの添加量は、珪酸カルシウム水和物固形分100重量%に対して固形分5〜30重量%が好ましく、固形分30重量%を越えれば、珪酸カルシウム成形体の不燃性が損なわれる。
【0022】
凝集剤としては、ポリアクリルアミド系のカチオン高分子凝集剤等が挙げられる。また、必要に応じて硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等の無機系の凝集剤を併用してもよい。凝集剤の添加量は、珪酸カルシウム水和物固形分100重量%に対して固形分0.1〜5重量%添加するのが好ましく、凝集剤の添加量が固形分0.1重量%未満ではポリマーエマルジョンの珪酸カルシウム水和物及び補強繊維への定着が悪くなり、固形分5重量%を越えると珪酸カルシウム水和物の流動性が失われ、珪酸カルシウム水和物中の補強材の均一な分散・混合及びプレス型枠への投入が困難となる。
【0023】
珪酸カルシウム成形体の成形方法は、珪酸カルシウム水和物に各種補強材を添加、混合してプレス型枠に投入充填した後、脱水加圧するプレス成形法によればよい。その他にも、珪酸カルシウム成形体の使用目的及び用途に応じて押出成形法や抄造成形法を適用することができる。また、珪酸カルシウム成形体の乾燥温度は100〜180℃であり、好ましくは105〜160℃である。
【0024】
このような本発明によれば、軽量、高強度、不燃性、耐熱性、断熱性、耐腐巧性、調湿性、加工性の性能を有しつつ、珪酸原料として結晶質珪酸原料を使用していることにより、結晶質珪酸原料は、今まで一般的に用いられてきた非晶質珪酸原料よりも安価であるので、原料コストの削減を可能とすることができる。
また、種晶生成工程と、圧入工程とを備えることにより、成形後の乾燥収縮が少ないので、商品化に問題のない珪酸カルシウム成形体の製造方法とすることができる。
【0025】
本発明の珪酸カルシウム成形体は、前述の珪酸カルシウム成形体の製造方法によって得られたことを特徴とする。
このような本発明によれば、前述と同様の作用・効果を得ることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る珪酸カルシウム成形体の製造方法のフローチャートが示されている。珪酸カルシウム成形体の製造方法は、準備工程(S10)と、種晶生成工程(S20)と、圧入工程(S30)と、成形工程(S40)とを備えている。
【0027】
準備工程(S10)は、結晶質珪酸原料と石灰原料とからなる固形分を固形分全体の50〜80重量%と20〜50重量%とに分割する。具体的には以下の通りである。
【0028】
まず、結晶質珪酸原料と石灰原料とからなる固形分を用意する(S11)。ここで、結晶質珪酸原料としては、珪石または珪砂等を使用する。石灰原料としては、生石灰を多量の水で湿式消化して得られるスラリー状の消石灰(石灰乳)を使用する。
また、前記固形分のCaO/SiO2モル比が、0.60〜1.20の範囲内である。このようにすれば、耐熱性等を備えた実用的な珪酸カルシウム水和物を得ることができる。
【0029】
ここで、得ようとする珪酸カルシウム水和物がゾノトライトであるから、前記固形分のCaO/SiO2モル比を、0.95〜1.20の範囲内とする。ここで、ゾノトライト(6CaO・6SiO2・H2O)は、珪酸カルシウム水和物の中でも、一層耐熱性に優れており、断熱保温材としてのみならず、耐火被覆材等の用途にまで使用することができる。
【0030】
従って、前記固形分のCaO/SiO2モル比が、0.95〜1.20の範囲内とすれば、確実にゾノトライトを得ることができ、耐火被覆材等、高熱を遮断する用途に好適な珪酸カルシウム水和物を得ることができる。
そして、この固形分の固形分全体の50〜80重量%(S12)と20〜50重量%(S13)とに分割する。
【0031】
次に、種晶生成工程(S20)は、前記固形分全体の50〜80重量%の固形分に水を所定量加え、水熱合成して珪酸カルシウム水和物からなる種晶Aを生成する。具体的には以下の通りである。
まず、前記50〜80重量%に分割した固形分に対して10〜50倍重量の水を加える。より好ましくは、加える水の量は15〜30倍重量である(S21)。
ここで、前記固形分に対して10倍重量未満の水を加えると、固形分を水に溶解させるのに困難である場合がある。前記固形分に対して50倍重量を超える水を加えると、固形分収量が少ないので、不適当である。
【0032】
この種晶生成工程では、混合・撹拌、水熱合成のために、撹拌式オートクレーブを用いる方法等を使用している。
次に、10〜50倍重量の水を加えた固形分を撹拌式オートクレーブ内で、混合・撹拌してスラリーとする(S22)。
その後、撹拌式オートクレーブ内でスラリーの混合・撹拌を行いながら、加温することにより水熱合成して珪酸カルシウム水和物からなる種晶Aを生成する(S23)。
【0033】
この種晶生成工程における水熱合成温度は、150〜230℃であることが好ましい。ここで、前記種晶生成工程における水熱合成温度は、150℃未満であると、珪酸カルシウム水和物の生成に長時間を要するため実用的でない場合がある。この水熱合成温度は、230℃を超えると、飽和水蒸気圧が高くなりすぎ、装置面などにおいて経済的に不利となる場合がある。
【0034】
また、水熱合成させる時間は、1〜12時間程度であることが好ましい。水熱合成させる時間が、1時間未満であると、結晶化が十分でない場合がある。水熱合成させる時間が12時間を超えると、珪酸カルシウム水和物の生成に要するエネルギーが大きすぎて、製造コストが必要以上に、大きくなる場合がある。
【0035】
圧入工程(S30)は、前記種晶生成工程の水熱合成中に、前記固形分全体の残りの20〜50重量%の固形分に水を所定量加え、懸濁させて得られたスラリーBを、前記種晶Aに圧入して、珪酸カルシウム水和物を合成する。具体的には以下の通りである。
【0036】
まず、前記20〜50重量%に分割した固形分に対して、(S21)と同様にして、10〜50倍重量の水を加える。より好ましくは、加える水の量は15〜30倍重量である(S31)。
次に、種晶生成工程で用いている撹拌式オートクレーブとは、別の装置で、10〜50倍重量の水を加えた固形分を混合・撹拌し、懸濁させてスラリーBを得る(S32)。
その後、高圧ポンプを用いて、種晶Aの水熱合成をさせたままの状態で、撹拌式オートクレーブ内部にスラリーBを圧入する(S33)。
【0037】
ここで、スラリーBの圧入量が多いほど、珪酸カルシウム水和物の嵩は低くなるが、珪酸カルシウム水和物を成形して得られた成形体の乾燥収縮は小さくなる傾向にある。
【0038】
また、種晶生成工程で水を加えて得られるスラリー、および圧入工程のスラリーBのそれぞれの固形分の濃度は同じでなくてもよい。
ここで、スラリーBのスラリー中に占める固形分の濃度が高い方が、スラリーBの圧入後の温度低下が少ないので、エネルギーを有効に活用することができる。さらに、圧入工程のスラリーBを圧入する前に、常圧下で加温しておいてもよい。
【0039】
以上の水熱合成の前述した所定の温度、時間を保持することにより、種晶AとスラリーBを合わせた全量が珪酸カルシウム水和物となる(S34)。
【0040】
成形工程(S40)は、前記圧入工程で得られた珪酸カルシウム水和物を脱水成形して得られた成形体を乾燥して珪酸カルシウム成形体を得るものである。具体的には、以下の通りである。
なお、珪酸カルシウム水和物の固形分の成分分析を適宜行ってもよい。成分分析の方法としては、粉末X線回折等が挙げられる。本実施形態では、珪酸カルシウム水和物の固形分の成分分析を粉末X線回折により行ったところ、ゾノトライトであることが同定できた。
【0041】
珪酸カルシウム水和物の固形分100重量%に対して、補強繊維を添加し(S41)、攪拌・混合する(S42)。
ここで、補強繊維としては、例えば、ガラス繊維、パルプ繊維、カーボン繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等を使用すればよく、補給繊維の添加量は、珪酸カルシウム水和物100重量%に対して固形分1〜10重量%が好ましく、固形分1重量%未満では補強効果が小さく、固形分10重量%を越えれば、繊維が塊状になり易く均一に分散されないため、逆に強度を低下させるおそれがある。
【0042】
攪拌・混合後、珪酸カルシウム水和物の固形分を250mm×250mmの型枠に流し込んで目標嵩密度130kg/m3として、脱水プレス成形する(S43)。この後、温度120℃で13時間乾燥させて珪酸カルシウム成形体を得る(S44)。この時、乾燥前に標線を珪酸カルシウム成形体に引いておき、乾燥後の収縮率を測定する。
【0043】
上述のような本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)軽量、高強度、不燃性、耐熱性、断熱性、耐腐巧性、調湿性、加工性の性能を有しつつ、しかも、珪酸原料として結晶質珪酸原料を使用していることにより、結晶質珪酸原料は、今まで一般的に用いられてきた非晶質珪酸原料よりも安価であるので、原料コストの削減を可能とすることができる。
【0044】
(2)種晶生成工程(S20)と、圧入工程(S30)とを備えることにより、成形後の乾燥収縮が少ないので、商品化に問題のない珪酸カルシウム成形体の製造方法とすることができる。
【0045】
なお、本発明は前記一実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は、本発明に含まれるものである。例えば、得ようとする珪酸カルシウム水和物がゾノトライトであり、固形分のCaO/SiO2モル比を、0.95〜1.20の範囲内としていたが、これに限られず、この他にも、得ようとする珪酸カルシウム水和物がトバモライトである場合には、前記固形分のCaO/SiO2モル比が、0.60〜0.95の範囲内とする。ここで、トバモライト(5CaO・6SiO2・5H2O)は、ゾノトライト同様、耐熱性に優れている。
【0046】
従って、前記固形分のCaO/SiO2モル比が、0.60〜0.95の範囲内とすれば、トバモライトを得ることができ、耐火被覆材等、高熱を遮断する用途に好適な珪酸カルシウム成形体を得ることができる。
【0047】
また、前記一実施形態では、珪酸カルシウム水和物の固形分100重量%に対して、補強繊維を添加していた(S41)が、これに限られず、ポリマーエマルジョンや凝集剤等を添加してもよい。
ポリマーエマルジョンとしては、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を使用すればよい。
ポリマーエマルジョンの添加量は、珪酸カルシウム水和物固形分100重量%に対して固形分5〜30重量%が好ましく、固形分30重量%を越えれば、珪酸カルシウム成形体の不燃性が損なわれる。
【0048】
凝集剤としては、ポリアクリルアミド系のカチオン高分子凝集剤等が挙げられる。また、必要に応じて硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等の無機系の凝集剤を併用してもよい。
凝集剤の添加量は、珪酸カルシウム水和物固形分100重量%に対して固形分0.1〜5重量%添加するのが好ましく、凝集剤の添加量が固形分0.1重量%未満ではポリマーエマルジョンの珪酸カルシウム水和物及び補強繊維への定着が悪くなり、固形分5重量%を越えると珪酸カルシウム水和物の流動性が失われ、珪酸カルシウム水和物中の補強材の均一な分散・混合及びプレス型枠への投入が困難となる。
その他、本発明を実施する際の具体的な構造および形状等は、本発明の目的を達成できる範囲内で他の構造等としてもよい。
【0049】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
[実施例1]
前記実施形態において、具体的条件を下記の通りとして珪酸カルシウム水和物および珪酸カルシウム成形体を得た。
【0050】
結晶質珪酸原料としては、珪石粉末(SiO2:97.4%)を使用した。石灰原料としては、生石灰を温水で消化した石灰乳を使用した。原料の固形分のCaO/SiO2モル比が1.0になるように珪石粉末と石灰乳を配合した。
【0051】
種晶生成工程に用いる固形分として、原料固形分100重量%のうち、固形分の80重量%を分割して、この固形分に25重量倍の水を加えて混合・攪拌しスラリーを調整した。続いて、このスラリーを攪拌式オートクレーブ中で、攪拌数100rpmで攪拌しながら205℃で2.5時間保持し、種晶Aを得る。
【0052】
圧入工程に用いる固形分として、前記原料固形分の残り20重量%に20重量倍の水を加えて混合・攪拌しスラリーBを調整した。その後、高圧ポンプにより攪拌式オートクレーブ内に圧入した。スラリーBを種晶Aに圧入後、205℃で1.5時間保持後、降温し、珪酸カルシウム水和物のスラリーを得た。
【0053】
以上のようにして合成した珪酸カルシウム水和物を真空濾過後、温度110℃で12時間乾燥させた生成物について、粉末X線回折により測定したところ、ゾノトライトであることが同定できた。
【0054】
次に、前記珪酸カルシウム水和物固形分100重量%に対して、Eガラス繊維固形分4重量%を添加し、攪拌混合した後、250mm×250mmの型枠に流し込んで目標嵩密度130kg/m3に脱水プレス成形し、この後、温度120℃で13時間乾燥させて珪酸カルシウム成形体を得た。この時、乾燥前に標線を成形体に引いておき、乾燥後の収縮率を測定した。
【0055】
[実施例2]
実施例2における種晶生成工程に用いる固形分としては固形分の65重量%とし、圧入工程に用いる固形分としては35重量%とした以外は、実施例1と同様の方法により珪酸カルシウム成形体を得た。
なお、粉末X線回折の結果、合成された珪酸カルシウム水和物はゾノトライトであった。
【0056】
[実施例3]
実施例3における種晶生成工程に用いる固形分としては固形分の50重量%とし、圧入工程に用いる固形分としては50重量%とした以外は、実施例1と同様の方法により珪酸カルシウム成形体を得た。
なお、粉末X線回折の結果、合成された珪酸カルシウム水和物はゾノトライトであった。
【0057】
[比較例1]
比較例1における種晶生成工程に用いる固形分としては固形分の35重量%とし、圧入工程に用いる固形分としては65重量%とした以外は、実施例1と同様の方法により珪酸カルシウム成形体を得た。
しかしながら、珪酸カルシウム水和物スラリーの嵩が低く、目標嵩密度130kg/m3ではハンドリングできず、目標嵩密度170kg/m3として珪酸カルシウム成形体を得た。
粉末X線回折の結果、合成された珪酸カルシウム水和物は、ゾノトライトとCSH(非晶質ケイ酸カルシウム水和物:ケイ酸カルシウム水和物が水和反応する際に生成する中間体、準結晶)が混在していた。
【0058】
[比較例2]
比較例2では、実施例1と同様の成分である原料固形分100重量%を25重量倍の水に混合攪拌しスラリーを調整した。続いて、このスラリーを攪拌式オートクレーブ中で、攪拌数100rpmで攪拌しながら205℃で4.0時間保持した。保持後、降温し珪酸カルシウム水和物のスラリーを得た。
次に、実施例1と同様の方法により珪酸カルシウム成形体の成形を行い、乾燥を行ったが乾燥収縮が大きいため、成形体は得られなかった。
粉末X線回折の結果、合成された珪酸カルシウム水和物はゾノトライトであった。
【0059】
[比較例3]
比較例3では、珪石粉末(SiO2:97.4%)と消石灰粉末(73.5%)とをCaO/SiO2モル比が1.0になるように配合し原料固形分を用意した。この原料固形分100重量%に対して、25重量倍の水を加えて原料スラリーを調整した。
続いて、この原料スラリーを攪拌式オートクレーブ中で、攪拌数100rpmで攪拌しながら205℃で4.0時間保持した。保持後、降温し珪酸カルシウム水和物スラリーを得た。
【0060】
次に、実施例1と同様の方法により珪酸カルシウム水和物スラリーを脱水プレス成形したが、珪酸カルシウム水和物スラリーの嵩が低く、目標嵩密度130kg/m3ではハンドリングできず、目標嵩密度200kg/m3として珪酸カルシウム成形体を得た。
粉末X線回折の結果、合成された珪酸カルシウム水和物は、ゾノトライトであった。
【0061】
実施例1〜3及び比較例1、3の各成形体について、嵩密度、曲げ強度、比強度、乾燥収縮率、珪酸カルシウム水和物の成分を測定または評価した。
なお、嵩密度(kg/m3)は、珪酸カルシウム成形体の試験体の絶乾重量(kg)/試験体の体積(m3)により算出した。
曲げ強度(N/cm2)は、JIS A1408に準拠した方法により測定した。
【0062】
比強度は、曲げ強度/(嵩密度)2×1000より算出した。
乾燥収縮率は、乾燥前の珪酸カルシウム成形体の標線の長さをL1、乾燥後の珪酸カルシウム成形体の標線の長さをL2とし、式(1)によって求めた。
乾燥収縮率(%)=(L1−L2)/L1×100・・・・(1)
各実施例、比較例の製造条件、評価結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
乾燥収縮率の面では、実施例1〜3と、比較例1を比較すると、実施例1〜3のほうが乾燥収縮率が小さいことがわかる。従って、乾燥収縮率の面で、実施例1〜3のほうが優れていることがわかる。なお、比較例2は、反りが生じ、実施例1〜3とは、比較できない程、乾燥収縮率が大きかった。比較例3は、乾燥収縮率が小さく、乾燥収縮率の面では優れていることがわかる。
【0065】
嵩密度の面では、実施例1〜3と比較例1〜3とを比較すると、軽量化の一定の指標となる嵩密度130kg/m3を、実施例1〜3は、略満足している。しかし、比較例1〜3は、大幅に嵩密度130kg/m3を上回っている。従って、比較例1〜3の方法では、軽量化を進めることが難しいことがわかる。
【0066】
曲げ強度および比強度の面では、特に比強度では、実施例1〜3は、比較例1〜3を上回っており、軽量化を実現しつつ、強度を保持していることがわかる。さらに、各実施例、比較例の珪酸カルシウム水和物の成分分析によれば、比較例1で、ゾノトライト以外のCSH(非晶質ケイ酸カルシウム水和物:ケイ酸カルシウム水和物が水和反応する際に生成する中間体、準結晶)が混在していた。従って、比較例1の条件では、耐火被覆材等、高熱を遮断する用途に好適な珪酸カルシウム水和物を得ることができないことがわかる。
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、軽量、高強度、不燃性、耐熱性、断熱性、耐腐巧性、調湿性、加工性の性能を有しつつ、珪酸原料として結晶質珪酸原料を使用していることにより、結晶質珪酸原料は、今まで一般的に用いられてきた非晶質珪酸原料よりも安価であるので、原料コストの削減を可能とすることができる。
また、種晶生成工程と、圧入工程とを備えることにより、成形後の乾燥収縮が少ないので、商品化に問題のない珪酸カルシウム成形体の製造方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る珪酸カルシウム成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
S20 種晶生成工程
S30 圧入工程
S40 成形工程
【発明の属する技術分野】
本発明は、珪酸カルシウム成形体の製造方法および珪酸カルシウム成形体に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、住宅の壁や床の建材として、珪酸カルシウム成形体が用いられている。この珪酸カルシウム成形体には、軽量、高強度、不燃性、耐熱性、耐腐巧性、寸法安定性、調湿性及び加工性の性能を有することが要求されている。
従来この種の珪酸カルシウム成形体の製造方法としては、1)成形に先立ち珪酸原料と石灰原料を水中煮沸混合し、一旦嵩高い珪酸カルシウムゲル粒子を含むスラリーとなした後、成形し、オートクレーブ養生する方法、2)珪酸カルシウム成形体への成形前に珪酸カルシウム水和物の結晶を造り、成形後直ちに乾燥する方法等がある。
【0003】
前記1)の場合、珪酸原料としては一般的に非晶質珪酸が採用されている。この方法では、常圧下でゲル化する必要があるので、常圧下でゲル化することが困難である結晶質珪酸は採用できない。そのため、非晶質珪酸よりも安価である結晶質珪酸を採用できないので、原料コストの低減ができないという問題がある。さらに、保温、断熱用途の珪酸カルシウム成形体は、軽量化が要求されている。この軽量化の一定の指標となる嵩密度130kg/m3以下の珪酸カルシウム成形体を製造する場合は、前記1)の方法では、製造することが困難である。
【0004】
この嵩密度130kg/m3以下の珪酸カルシウム成形体を製造する場合は、前記2)の方法が好適である。その際、石灰原料としては、嵩の高いスラリーが有利である。そのため、消石灰粉末を水と混合したスラリーならば、製品嵩密度が大きくなるので、石灰原料として、生石灰を多量の水で湿式消化して得られるスラリー状の消石灰(石灰乳)を用いる必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記2)の方法において、前記の石灰乳を使用した場合は、軽量の成形体の成形は可能であるが、成形後の乾燥工程での収縮が非常に大きいため反りが生じ、商品化できないという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、軽量、高強度、不燃性、耐熱性、断熱性、耐腐巧性、調湿性、加工性の性能を有しつつ、原料コストの低減を可能とし、商品化に問題のない珪酸カルシウム成形体の製造方法および珪酸カルシウム成形体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達するために、本発明の珪酸カルシウム成形体の製造方法は、結晶質珪酸原料と石灰原料とからなる固形分から珪酸カルシウム成形体を製造する珪酸カルシウム成形体の製造方法であって、前記固形分全体の50〜80重量%の固形分に水を所定量加え、水熱合成して珪酸カルシウム水和物からなる種晶Aを生成する種晶生成工程と、前記種晶生成工程の水熱合成中に、前記固形分全体の残りの20〜50重量%の固形分に水を所定量加え、懸濁させて得られたスラリーBを、前記種晶Aに圧入して、珪酸カルシウム水和物を合成する圧入工程と、前記圧入工程で得られた珪酸カルシウム水和物を脱水成形して得られた成形体を乾燥する成形工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、結晶質珪酸原料としては、珪石または珪砂等を使用すれば良い。
石灰原料としては、生石灰を多量の水で湿式消化して得られるスラリー状の消石灰(石灰乳)が、嵩が高いので好適である。
【0009】
以上において、前記固形分に対して10〜50倍重量の水を加えることが好ましく、より好ましくは、加える水の量は15〜30倍重量である。
ここで、前記固形分に対して10倍重量未満の水を加えると、固形分を水に溶解させるのに困難である場合がある。前記固形分に対して50倍重量を超える水を加えると、固形分収量が少ないので、不適当である。
【0010】
また、前記固形分のCaO/SiO2モル比を、0.60〜1.20の範囲内とすることが好ましい。
このようにすれば、耐熱性等を備えた実用的な珪酸カルシウム成形体を得ることができる。
【0011】
また、前記固形分のCaO/SiO2モル比を、0.95〜1.20の範囲内とすることが好ましい。
ここで、固形分の組成を上記の範囲内にすると、ゾノトライト(6CaO・6SiO2・H2O)を得ることができる。このゾノトライト(6CaO・6SiO2・H2O)は、珪酸カルシウム水和物の中でも、一層耐熱性に優れており、断熱保温材としてのみならず、耐火被覆材等の用途にまで使用することができる。
【0012】
従って、前記固形分のCaO/SiO2モル比が、0.95〜1.20の範囲内とすれば、確実にゾノトライトを得ることができ、耐火被覆材等、高熱を遮断する用途に好適な珪酸カルシウム成形体を得ることができる。
【0013】
さらに、前記固形分のCaO/SiO2モル比を、0.60〜0.95の範囲内とすることが好ましい。
ここで、固形分の組成を上記の範囲内にすると、トバモライト(5CaO・6SiO2・5H2O)を得ることができる。このトバモライト(5CaO・6SiO2・5H2O)は、ゾノトライト同様、耐熱性に優れている。
【0014】
従って、前記固形分のCaO/SiO2モル比が、0.60〜0.95の範囲内とすれば、確実にトバモライトを得ることができ、耐火被覆材等、高熱を遮断する用途に好適な珪酸カルシウム成形体を得ることができる。
【0015】
種晶生成工程は、前述したように、前記固形分全体の50〜80重量%の固形分に水を所定量加え、水熱合成して珪酸カルシウム水和物からなる種晶Aを生成する。
この種晶生成工程では、混合・撹拌、水熱合成のために、撹拌式オートクレーブを用いる方法等を採用できる。この種晶生成工程における水熱合成温度は、150〜230℃であることが好ましい。ここで、前記種晶生成工程における水熱合成温度は、150℃未満であると、珪酸カルシウム水和物の生成に長時間を要するため実用的でない場合がある。前記種晶生成工程における水熱合成温度は、230℃を超えると、飽和水蒸気圧が高くなりすぎ、装置面などにおいて経済的に不利となる場合がある。
【0016】
また、水熱合成させる時間は、1〜12時間程度であることが好ましい。水熱合成させる時間が、1時間未満であると、結晶化が十分でない場合がある。水熱合成させる時間が12時間を超えると、珪酸カルシウム水和物の生成に要するエネルギーが大きすぎて、製造コストが必要以上に、大きくなる場合がある。
【0017】
圧入工程は、前述したように、前記種晶生成工程の水熱合成中に、前記固形分全体の残りの20〜50重量%の固形分に水を所定量加え、懸濁させて得られたスラリーBを、前記種晶Aに圧入して、珪酸カルシウム水和物を合成する。
具体的には、高圧ポンプを用いて、種晶Aの水熱合成をさせたままの状態で、撹拌式オートクレーブ等の内部にスラリーBを圧入させ、所定の温度、時間を保持することにより、種晶AとスラリーBを合わせた全量を珪酸カルシウム水和物とする。
【0018】
ここで、スラリーBの圧入量が多いほど、珪酸カルシウム水和物の嵩は低くなるが、珪酸カルシウム水和物を成形して得られた成形体の乾燥収縮は小さくなる傾向にある。
また、種晶生成工程で水を加えて得られるスラリーおよび圧入工程のスラリーBのそれぞれのスラリー中に占める固形分の濃度は同じでなくてもよい。スラリーBのスラリー中に占める固形分の濃度が高い方が、スラリーBの圧入後の温度低下が少ないので、エネルギーを有効に活用することができる。さらに、圧入工程のスラリーBを圧入する前に、常圧下で加温しておいてもよい。
【0019】
成形工程は、前述したように、前記圧入工程で得られた珪酸カルシウム水和物を脱水成形する。
ここで、合成終了した前記珪酸カルシウム水和物を成形する際には、補強繊維、ポリマーエマルジョン及び凝集剤を添加してもよい。
【0020】
この補強繊維としては、例えば、ガラス繊維、パルプ繊維、カーボン繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等を使用すればよく、補給繊維の添加量は、珪酸カルシウム水和物100重量%に対して固形分1〜10重量%が好ましく、固形分1重量%未満では補強効果が小さく、固形分10重量%を越えれば、繊維が塊状になり易く均一に分散されないため、逆に強度を低下させるおそれがある。
【0021】
ポリマーエマルジョンとしては、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を使用すればよく、ポリマーエマルジョンの添加量は、珪酸カルシウム水和物固形分100重量%に対して固形分5〜30重量%が好ましく、固形分30重量%を越えれば、珪酸カルシウム成形体の不燃性が損なわれる。
【0022】
凝集剤としては、ポリアクリルアミド系のカチオン高分子凝集剤等が挙げられる。また、必要に応じて硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等の無機系の凝集剤を併用してもよい。凝集剤の添加量は、珪酸カルシウム水和物固形分100重量%に対して固形分0.1〜5重量%添加するのが好ましく、凝集剤の添加量が固形分0.1重量%未満ではポリマーエマルジョンの珪酸カルシウム水和物及び補強繊維への定着が悪くなり、固形分5重量%を越えると珪酸カルシウム水和物の流動性が失われ、珪酸カルシウム水和物中の補強材の均一な分散・混合及びプレス型枠への投入が困難となる。
【0023】
珪酸カルシウム成形体の成形方法は、珪酸カルシウム水和物に各種補強材を添加、混合してプレス型枠に投入充填した後、脱水加圧するプレス成形法によればよい。その他にも、珪酸カルシウム成形体の使用目的及び用途に応じて押出成形法や抄造成形法を適用することができる。また、珪酸カルシウム成形体の乾燥温度は100〜180℃であり、好ましくは105〜160℃である。
【0024】
このような本発明によれば、軽量、高強度、不燃性、耐熱性、断熱性、耐腐巧性、調湿性、加工性の性能を有しつつ、珪酸原料として結晶質珪酸原料を使用していることにより、結晶質珪酸原料は、今まで一般的に用いられてきた非晶質珪酸原料よりも安価であるので、原料コストの削減を可能とすることができる。
また、種晶生成工程と、圧入工程とを備えることにより、成形後の乾燥収縮が少ないので、商品化に問題のない珪酸カルシウム成形体の製造方法とすることができる。
【0025】
本発明の珪酸カルシウム成形体は、前述の珪酸カルシウム成形体の製造方法によって得られたことを特徴とする。
このような本発明によれば、前述と同様の作用・効果を得ることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る珪酸カルシウム成形体の製造方法のフローチャートが示されている。珪酸カルシウム成形体の製造方法は、準備工程(S10)と、種晶生成工程(S20)と、圧入工程(S30)と、成形工程(S40)とを備えている。
【0027】
準備工程(S10)は、結晶質珪酸原料と石灰原料とからなる固形分を固形分全体の50〜80重量%と20〜50重量%とに分割する。具体的には以下の通りである。
【0028】
まず、結晶質珪酸原料と石灰原料とからなる固形分を用意する(S11)。ここで、結晶質珪酸原料としては、珪石または珪砂等を使用する。石灰原料としては、生石灰を多量の水で湿式消化して得られるスラリー状の消石灰(石灰乳)を使用する。
また、前記固形分のCaO/SiO2モル比が、0.60〜1.20の範囲内である。このようにすれば、耐熱性等を備えた実用的な珪酸カルシウム水和物を得ることができる。
【0029】
ここで、得ようとする珪酸カルシウム水和物がゾノトライトであるから、前記固形分のCaO/SiO2モル比を、0.95〜1.20の範囲内とする。ここで、ゾノトライト(6CaO・6SiO2・H2O)は、珪酸カルシウム水和物の中でも、一層耐熱性に優れており、断熱保温材としてのみならず、耐火被覆材等の用途にまで使用することができる。
【0030】
従って、前記固形分のCaO/SiO2モル比が、0.95〜1.20の範囲内とすれば、確実にゾノトライトを得ることができ、耐火被覆材等、高熱を遮断する用途に好適な珪酸カルシウム水和物を得ることができる。
そして、この固形分の固形分全体の50〜80重量%(S12)と20〜50重量%(S13)とに分割する。
【0031】
次に、種晶生成工程(S20)は、前記固形分全体の50〜80重量%の固形分に水を所定量加え、水熱合成して珪酸カルシウム水和物からなる種晶Aを生成する。具体的には以下の通りである。
まず、前記50〜80重量%に分割した固形分に対して10〜50倍重量の水を加える。より好ましくは、加える水の量は15〜30倍重量である(S21)。
ここで、前記固形分に対して10倍重量未満の水を加えると、固形分を水に溶解させるのに困難である場合がある。前記固形分に対して50倍重量を超える水を加えると、固形分収量が少ないので、不適当である。
【0032】
この種晶生成工程では、混合・撹拌、水熱合成のために、撹拌式オートクレーブを用いる方法等を使用している。
次に、10〜50倍重量の水を加えた固形分を撹拌式オートクレーブ内で、混合・撹拌してスラリーとする(S22)。
その後、撹拌式オートクレーブ内でスラリーの混合・撹拌を行いながら、加温することにより水熱合成して珪酸カルシウム水和物からなる種晶Aを生成する(S23)。
【0033】
この種晶生成工程における水熱合成温度は、150〜230℃であることが好ましい。ここで、前記種晶生成工程における水熱合成温度は、150℃未満であると、珪酸カルシウム水和物の生成に長時間を要するため実用的でない場合がある。この水熱合成温度は、230℃を超えると、飽和水蒸気圧が高くなりすぎ、装置面などにおいて経済的に不利となる場合がある。
【0034】
また、水熱合成させる時間は、1〜12時間程度であることが好ましい。水熱合成させる時間が、1時間未満であると、結晶化が十分でない場合がある。水熱合成させる時間が12時間を超えると、珪酸カルシウム水和物の生成に要するエネルギーが大きすぎて、製造コストが必要以上に、大きくなる場合がある。
【0035】
圧入工程(S30)は、前記種晶生成工程の水熱合成中に、前記固形分全体の残りの20〜50重量%の固形分に水を所定量加え、懸濁させて得られたスラリーBを、前記種晶Aに圧入して、珪酸カルシウム水和物を合成する。具体的には以下の通りである。
【0036】
まず、前記20〜50重量%に分割した固形分に対して、(S21)と同様にして、10〜50倍重量の水を加える。より好ましくは、加える水の量は15〜30倍重量である(S31)。
次に、種晶生成工程で用いている撹拌式オートクレーブとは、別の装置で、10〜50倍重量の水を加えた固形分を混合・撹拌し、懸濁させてスラリーBを得る(S32)。
その後、高圧ポンプを用いて、種晶Aの水熱合成をさせたままの状態で、撹拌式オートクレーブ内部にスラリーBを圧入する(S33)。
【0037】
ここで、スラリーBの圧入量が多いほど、珪酸カルシウム水和物の嵩は低くなるが、珪酸カルシウム水和物を成形して得られた成形体の乾燥収縮は小さくなる傾向にある。
【0038】
また、種晶生成工程で水を加えて得られるスラリー、および圧入工程のスラリーBのそれぞれの固形分の濃度は同じでなくてもよい。
ここで、スラリーBのスラリー中に占める固形分の濃度が高い方が、スラリーBの圧入後の温度低下が少ないので、エネルギーを有効に活用することができる。さらに、圧入工程のスラリーBを圧入する前に、常圧下で加温しておいてもよい。
【0039】
以上の水熱合成の前述した所定の温度、時間を保持することにより、種晶AとスラリーBを合わせた全量が珪酸カルシウム水和物となる(S34)。
【0040】
成形工程(S40)は、前記圧入工程で得られた珪酸カルシウム水和物を脱水成形して得られた成形体を乾燥して珪酸カルシウム成形体を得るものである。具体的には、以下の通りである。
なお、珪酸カルシウム水和物の固形分の成分分析を適宜行ってもよい。成分分析の方法としては、粉末X線回折等が挙げられる。本実施形態では、珪酸カルシウム水和物の固形分の成分分析を粉末X線回折により行ったところ、ゾノトライトであることが同定できた。
【0041】
珪酸カルシウム水和物の固形分100重量%に対して、補強繊維を添加し(S41)、攪拌・混合する(S42)。
ここで、補強繊維としては、例えば、ガラス繊維、パルプ繊維、カーボン繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等を使用すればよく、補給繊維の添加量は、珪酸カルシウム水和物100重量%に対して固形分1〜10重量%が好ましく、固形分1重量%未満では補強効果が小さく、固形分10重量%を越えれば、繊維が塊状になり易く均一に分散されないため、逆に強度を低下させるおそれがある。
【0042】
攪拌・混合後、珪酸カルシウム水和物の固形分を250mm×250mmの型枠に流し込んで目標嵩密度130kg/m3として、脱水プレス成形する(S43)。この後、温度120℃で13時間乾燥させて珪酸カルシウム成形体を得る(S44)。この時、乾燥前に標線を珪酸カルシウム成形体に引いておき、乾燥後の収縮率を測定する。
【0043】
上述のような本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)軽量、高強度、不燃性、耐熱性、断熱性、耐腐巧性、調湿性、加工性の性能を有しつつ、しかも、珪酸原料として結晶質珪酸原料を使用していることにより、結晶質珪酸原料は、今まで一般的に用いられてきた非晶質珪酸原料よりも安価であるので、原料コストの削減を可能とすることができる。
【0044】
(2)種晶生成工程(S20)と、圧入工程(S30)とを備えることにより、成形後の乾燥収縮が少ないので、商品化に問題のない珪酸カルシウム成形体の製造方法とすることができる。
【0045】
なお、本発明は前記一実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は、本発明に含まれるものである。例えば、得ようとする珪酸カルシウム水和物がゾノトライトであり、固形分のCaO/SiO2モル比を、0.95〜1.20の範囲内としていたが、これに限られず、この他にも、得ようとする珪酸カルシウム水和物がトバモライトである場合には、前記固形分のCaO/SiO2モル比が、0.60〜0.95の範囲内とする。ここで、トバモライト(5CaO・6SiO2・5H2O)は、ゾノトライト同様、耐熱性に優れている。
【0046】
従って、前記固形分のCaO/SiO2モル比が、0.60〜0.95の範囲内とすれば、トバモライトを得ることができ、耐火被覆材等、高熱を遮断する用途に好適な珪酸カルシウム成形体を得ることができる。
【0047】
また、前記一実施形態では、珪酸カルシウム水和物の固形分100重量%に対して、補強繊維を添加していた(S41)が、これに限られず、ポリマーエマルジョンや凝集剤等を添加してもよい。
ポリマーエマルジョンとしては、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を使用すればよい。
ポリマーエマルジョンの添加量は、珪酸カルシウム水和物固形分100重量%に対して固形分5〜30重量%が好ましく、固形分30重量%を越えれば、珪酸カルシウム成形体の不燃性が損なわれる。
【0048】
凝集剤としては、ポリアクリルアミド系のカチオン高分子凝集剤等が挙げられる。また、必要に応じて硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等の無機系の凝集剤を併用してもよい。
凝集剤の添加量は、珪酸カルシウム水和物固形分100重量%に対して固形分0.1〜5重量%添加するのが好ましく、凝集剤の添加量が固形分0.1重量%未満ではポリマーエマルジョンの珪酸カルシウム水和物及び補強繊維への定着が悪くなり、固形分5重量%を越えると珪酸カルシウム水和物の流動性が失われ、珪酸カルシウム水和物中の補強材の均一な分散・混合及びプレス型枠への投入が困難となる。
その他、本発明を実施する際の具体的な構造および形状等は、本発明の目的を達成できる範囲内で他の構造等としてもよい。
【0049】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
[実施例1]
前記実施形態において、具体的条件を下記の通りとして珪酸カルシウム水和物および珪酸カルシウム成形体を得た。
【0050】
結晶質珪酸原料としては、珪石粉末(SiO2:97.4%)を使用した。石灰原料としては、生石灰を温水で消化した石灰乳を使用した。原料の固形分のCaO/SiO2モル比が1.0になるように珪石粉末と石灰乳を配合した。
【0051】
種晶生成工程に用いる固形分として、原料固形分100重量%のうち、固形分の80重量%を分割して、この固形分に25重量倍の水を加えて混合・攪拌しスラリーを調整した。続いて、このスラリーを攪拌式オートクレーブ中で、攪拌数100rpmで攪拌しながら205℃で2.5時間保持し、種晶Aを得る。
【0052】
圧入工程に用いる固形分として、前記原料固形分の残り20重量%に20重量倍の水を加えて混合・攪拌しスラリーBを調整した。その後、高圧ポンプにより攪拌式オートクレーブ内に圧入した。スラリーBを種晶Aに圧入後、205℃で1.5時間保持後、降温し、珪酸カルシウム水和物のスラリーを得た。
【0053】
以上のようにして合成した珪酸カルシウム水和物を真空濾過後、温度110℃で12時間乾燥させた生成物について、粉末X線回折により測定したところ、ゾノトライトであることが同定できた。
【0054】
次に、前記珪酸カルシウム水和物固形分100重量%に対して、Eガラス繊維固形分4重量%を添加し、攪拌混合した後、250mm×250mmの型枠に流し込んで目標嵩密度130kg/m3に脱水プレス成形し、この後、温度120℃で13時間乾燥させて珪酸カルシウム成形体を得た。この時、乾燥前に標線を成形体に引いておき、乾燥後の収縮率を測定した。
【0055】
[実施例2]
実施例2における種晶生成工程に用いる固形分としては固形分の65重量%とし、圧入工程に用いる固形分としては35重量%とした以外は、実施例1と同様の方法により珪酸カルシウム成形体を得た。
なお、粉末X線回折の結果、合成された珪酸カルシウム水和物はゾノトライトであった。
【0056】
[実施例3]
実施例3における種晶生成工程に用いる固形分としては固形分の50重量%とし、圧入工程に用いる固形分としては50重量%とした以外は、実施例1と同様の方法により珪酸カルシウム成形体を得た。
なお、粉末X線回折の結果、合成された珪酸カルシウム水和物はゾノトライトであった。
【0057】
[比較例1]
比較例1における種晶生成工程に用いる固形分としては固形分の35重量%とし、圧入工程に用いる固形分としては65重量%とした以外は、実施例1と同様の方法により珪酸カルシウム成形体を得た。
しかしながら、珪酸カルシウム水和物スラリーの嵩が低く、目標嵩密度130kg/m3ではハンドリングできず、目標嵩密度170kg/m3として珪酸カルシウム成形体を得た。
粉末X線回折の結果、合成された珪酸カルシウム水和物は、ゾノトライトとCSH(非晶質ケイ酸カルシウム水和物:ケイ酸カルシウム水和物が水和反応する際に生成する中間体、準結晶)が混在していた。
【0058】
[比較例2]
比較例2では、実施例1と同様の成分である原料固形分100重量%を25重量倍の水に混合攪拌しスラリーを調整した。続いて、このスラリーを攪拌式オートクレーブ中で、攪拌数100rpmで攪拌しながら205℃で4.0時間保持した。保持後、降温し珪酸カルシウム水和物のスラリーを得た。
次に、実施例1と同様の方法により珪酸カルシウム成形体の成形を行い、乾燥を行ったが乾燥収縮が大きいため、成形体は得られなかった。
粉末X線回折の結果、合成された珪酸カルシウム水和物はゾノトライトであった。
【0059】
[比較例3]
比較例3では、珪石粉末(SiO2:97.4%)と消石灰粉末(73.5%)とをCaO/SiO2モル比が1.0になるように配合し原料固形分を用意した。この原料固形分100重量%に対して、25重量倍の水を加えて原料スラリーを調整した。
続いて、この原料スラリーを攪拌式オートクレーブ中で、攪拌数100rpmで攪拌しながら205℃で4.0時間保持した。保持後、降温し珪酸カルシウム水和物スラリーを得た。
【0060】
次に、実施例1と同様の方法により珪酸カルシウム水和物スラリーを脱水プレス成形したが、珪酸カルシウム水和物スラリーの嵩が低く、目標嵩密度130kg/m3ではハンドリングできず、目標嵩密度200kg/m3として珪酸カルシウム成形体を得た。
粉末X線回折の結果、合成された珪酸カルシウム水和物は、ゾノトライトであった。
【0061】
実施例1〜3及び比較例1、3の各成形体について、嵩密度、曲げ強度、比強度、乾燥収縮率、珪酸カルシウム水和物の成分を測定または評価した。
なお、嵩密度(kg/m3)は、珪酸カルシウム成形体の試験体の絶乾重量(kg)/試験体の体積(m3)により算出した。
曲げ強度(N/cm2)は、JIS A1408に準拠した方法により測定した。
【0062】
比強度は、曲げ強度/(嵩密度)2×1000より算出した。
乾燥収縮率は、乾燥前の珪酸カルシウム成形体の標線の長さをL1、乾燥後の珪酸カルシウム成形体の標線の長さをL2とし、式(1)によって求めた。
乾燥収縮率(%)=(L1−L2)/L1×100・・・・(1)
各実施例、比較例の製造条件、評価結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
乾燥収縮率の面では、実施例1〜3と、比較例1を比較すると、実施例1〜3のほうが乾燥収縮率が小さいことがわかる。従って、乾燥収縮率の面で、実施例1〜3のほうが優れていることがわかる。なお、比較例2は、反りが生じ、実施例1〜3とは、比較できない程、乾燥収縮率が大きかった。比較例3は、乾燥収縮率が小さく、乾燥収縮率の面では優れていることがわかる。
【0065】
嵩密度の面では、実施例1〜3と比較例1〜3とを比較すると、軽量化の一定の指標となる嵩密度130kg/m3を、実施例1〜3は、略満足している。しかし、比較例1〜3は、大幅に嵩密度130kg/m3を上回っている。従って、比較例1〜3の方法では、軽量化を進めることが難しいことがわかる。
【0066】
曲げ強度および比強度の面では、特に比強度では、実施例1〜3は、比較例1〜3を上回っており、軽量化を実現しつつ、強度を保持していることがわかる。さらに、各実施例、比較例の珪酸カルシウム水和物の成分分析によれば、比較例1で、ゾノトライト以外のCSH(非晶質ケイ酸カルシウム水和物:ケイ酸カルシウム水和物が水和反応する際に生成する中間体、準結晶)が混在していた。従って、比較例1の条件では、耐火被覆材等、高熱を遮断する用途に好適な珪酸カルシウム水和物を得ることができないことがわかる。
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、軽量、高強度、不燃性、耐熱性、断熱性、耐腐巧性、調湿性、加工性の性能を有しつつ、珪酸原料として結晶質珪酸原料を使用していることにより、結晶質珪酸原料は、今まで一般的に用いられてきた非晶質珪酸原料よりも安価であるので、原料コストの削減を可能とすることができる。
また、種晶生成工程と、圧入工程とを備えることにより、成形後の乾燥収縮が少ないので、商品化に問題のない珪酸カルシウム成形体の製造方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る珪酸カルシウム成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
S20 種晶生成工程
S30 圧入工程
S40 成形工程
Claims (7)
- 結晶質珪酸原料と石灰原料とからなる固形分から珪酸カルシウム成形体を製造する珪酸カルシウム成形体の製造方法であって、
前記固形分全体の50〜80重量%の固形分に水を所定量加え、水熱合成して珪酸カルシウム水和物からなる種晶Aを生成する種晶生成工程と、
前記種晶生成工程の水熱合成中に、前記固形分全体の残りの20〜50重量%の固形分に水を所定量加え、懸濁させて得られたスラリーBを、前記種晶Aに圧入して、珪酸カルシウム水和物を合成する圧入工程と、
前記圧入工程で得られた珪酸カルシウム水和物を脱水成形して得られた成形体を乾燥する成形工程とを備えることを特徴とする珪酸カルシウム成形体の製造方法。 - 請求項1に記載の珪酸カルシウム成形体の製造方法において、前記固形分に対して10〜50倍重量の水を加えることを特徴とする珪酸カルシウム成形体の製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載の珪酸カルシウム成形体の製造方法において、
前記固形分のCaO/SiO2モル比を、0.60〜1.20の範囲内とすることを特徴とする珪酸カルシウム成形体の製造方法。 - 請求項3に記載の珪酸カルシウム成形体の製造方法において、前記固形分のCaO/SiO2モル比を、0.95〜1.20の範囲内とすることを特徴とする珪酸カルシウム成形体の製造方法。
- 請求項3に記載の珪酸カルシウム成形体の製造方法において、前記固形分のCaO/SiO2モル比を、0.60〜0.95の範囲内とすることを特徴とする珪酸カルシウム成形体の製造方法。
- 請求項1から請求項5のいずれかに記載の珪酸カルシウム成形体の製造方法において、
前記種晶生成工程における水熱合成温度は、150〜230℃であることを特徴とする珪酸カルシウム成形体の製造方法。 - 請求項1から請求項6のいずれかに記載の珪酸カルシウム成形体の製造方法によって得られたことを特徴とする珪酸カルシウム成形体。
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-
2002
- 2002-07-16 JP JP2002206827A patent/JP2004051379A/ja active Pending
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