JP5436297B2 - Rc造底版の耐震補強構造および耐震補強方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基礎杭によって支持された鉄筋コンクリート(以下、「RC」と記す)造の底版の耐震補強構造および耐震補強方法に係り、既存の貯水タンクや水路、建物などの底版の耐震補強に適用することができる。
地上タンクの補強構造として、地上タンクの基礎底版の外周に沿って所定の間隔で離間させて複数の増し杭を地盤中に構築し、増し杭の杭頭を巻き込み且つ基礎底版を取り囲むように補強底版を構築する方法が提案されている(特許文献1参照)。
特開2004−44712号公報
しかしながら、貯水タンクなど、RC造の底版が杭基礎によって支持された構造物のなかには、鉄筋或いはコンクリートの経年劣化や構築時の耐震基準が低かったことなどの理由により、基礎杭ではなく底版の補強が必要なものがある。ところが、特許文献1の補強構造は、地上タンク全体として耐震性を高めることができても、底版自体を補強することはできない。また、作業が大掛かりなものとなり、コストも高くなる。このように、底版を補強できる安価で効果的な方法はこれまで提案されていないため、底版の耐震補強工事の実施例は殆どない。
この他、貯水タンクの底版を貯水タンクの外側から耐震補強する方法として、増し杭を構築して杭反力を軽減する方法や、底版にプレストレスを導入して底版の強度を高める方法などが知られている。しかし、これらの方法はいずれも極めて高価であるだけでなく、効果的に耐震強度を向上させることができないため、一般的な補強方法として普及するには至っていない。そのため、タンク底版の耐震補強を安価且つ合理的に実施するために、タンク内部から補強可能な工法の開発が望まれている。
他方、貯水タンクの内部から補強可能な工法として、底版の押し抜きせん断耐力を増加させて耐震補強する増厚工法が広く知られている。増厚工法は安価で効果的に底版の押し抜きせん断耐力を増加させることができる。例えば、道路橋のRC床版では、コンクリートを増厚することで疲労寿命が延びることが知られている。
ところが、道路橋のRC床版と貯水タンクの底版とでは押し抜きせん断力に抵抗する機構が異なる。すなわち、貯水タンクの底版には地震時に杭反力が作用するため、底版上面側が引張力を受ける応力状態となり、引張力を受ける既設コンクリートに増厚を行うこととなる。一方、増厚で押し抜きせん断耐力が増大することが知られている道路橋RC床版は、圧縮力を受ける既設コンクリート床版に増厚を行うものであり、抵抗機構(応力状態)は両者で逆となる。
貯水タンクの底版のように引張力作用面に増厚を行う場合、既設コンクリートが変形するため、増厚コンクリートには、その変形に追随できる特性が必要となる。一方で、コンクリートの押し抜きせん断耐力を増加させるためには、引張強度やせん断強度の高いいわゆる高強度コンクリートが適しているものの、高強度コンクリートは弾性係数が大きく、変形し難いため、打ち継ぎ面にせん断ずれが生じやすくなる。せん断ずれが生じると、押し抜きせん断面が打ち継ぎ面で水平方向に広がり、すなわち、既設コンクリートと増厚コンクリートとの縁が切れてその影響が隣接する杭上部にまで及ぶ可能性があり、底版の耐震性能が低下する。そのため、底版の安定した耐震性能を確保するためには、新旧両コンクリートの打ち継ぎ面や底版の増厚コンクリートにおけるせん断ずれを抑制する必要があり、そのためには新たな材料および接合方法が必要不可欠となる。また、増厚コンクリートが厚い場合、タンク内の貯水量に影響を及ぼすため、増厚コンクリートは可能な限り薄いことが望まれる。
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、基礎杭に支持された鉄筋コンクリート造底版を安価で効果的に補強することができる構造および方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、基礎杭(11)によって支持された鉄筋コンクリート造の底版(2)の耐震補強構造であって、平面視で基礎杭を取り囲むように底版の上面(2a)に形成された複数の有底孔(5)と、有底孔よりも小径で且つ底版よりも高強度に形成され、底版の上面から突出する態様で複数の有底孔にそれぞれ挿入された複数の筒状部材(6)と、短繊維混入コンクリートからなり、筒状部材を巻き込むように底版上に構築された増厚コンクリート(4)とを備えたことを特徴とする。
この発明によれば、引張強度やせん断強度を確保するために増厚コンクリートを高強度にしても、短繊維混入コンクリートを用いることでその弾性係数の増大を抑制することができる。つまり、既設の底版が変形しても増厚コンクリートが追従して変形し易くなり、新旧両コンクリートの打ち継ぎ面の応力を低減してせん断ずれを抑制することができる。そして、筒状部材がせん断キーとなって底版と増厚コンクリートとが強固に一体になるため、より一層せん断ずれの発生を抑制することができる。さらに、短繊維混入コンクリートの架橋効果により、増厚コンクリートのせん断耐力を向上することができる。
また、本発明の一側面によれば、複数の有底孔(5)は、基礎杭(11)の上面端縁(11a)から45度の傾斜角度をもって上方外側へ広がりつつ底版(2)の上面(2a)に至る錐台形(想定せん断面7)の外側に筒状部材(6)を配置する位置に形成された構成とすることができる。
基礎杭から上方への押し抜き力が加わると、底版のせん断面は杭上面周縁から上方へ広がるような形状となり、せん断面の広がり角度は、底版のせん断耐力が小さいほど大きく、せん断耐力を十分に大きくすると45度程度となる。そして、せん断面は底版と増厚コンクリートとの打ち継ぎ面に沿って水平方向に広がり易い、すなわち増厚コンクリートが底版から剥離し易い。そこで、増厚コンクリートによってせん断耐力を向上させた上で、この構成のように、せん断ひび割れが発生する位置の外側に筒状部材を配置することにより、45度程度の広がり角度をもって底版に発生するせん断面が水平方向へ広がるのを防止し、効果的に底版と増厚コンクリートとを一体化させることができる。
また、本発明の一側面によれば、増厚コンクリート(4)は、底版(2)の弾性係数と略同一若しくはそれ以下の弾性係数となる量の短繊維を含む構成とすることができる。
タンクの容量などを確保する目的で増厚コンクリートを薄くするには、引張強度やせん断強度を増加させるために圧縮強度の高い高強度コンクリートを用いる必要があり、通常の高強度コンクリートを用いると増厚コンクリートの弾性係数も高くなって打ち継ぎ面にせん断ずれが生じやすくなるが、増厚コンクリートに短繊維混入コンクリートを用い、この構成のように増厚コンクリートの弾性係数を底版のものと略同一若しくはそれ以下にすることにより、打ち継ぎ面にせん断ずれが生じることを抑制できる。
また、本発明の一側面によれば、増厚コンクリート(4)は、圧縮強度が40MPa〜50MPaの高強度コンクリートにビニロン短繊維を体積割合で2%〜3%混入させたビニロン短繊維混入コンクリートからなる構成とすることができる。
この構成によれば、増厚コンクリートの弾性係数を、耐震補強が必要な貯水タンクなどに通常用いられていた圧縮強度が24MPa程度のコンクリートの弾性係数と同程度にすることができる。そして、ビニロン短繊維を用いることで、表面を異形化するなどの工数や費用をかけることなくコンクリートとの付着を確保して、架橋効果によるせん断耐力の向上を図ることができるとともに、所望の弾性係数を得るために体積割合で2%〜3%混入させても、混錬時に短繊維が良好に分散するため、ファイバーボールの発生を防ぐことができる。
また、本発明の一側面によれば、筒状部材(6)は、ビニロン短繊維混入コンクリートよりも圧縮強度が高い高強度コンクリートからなり、その外周面に凹凸が形成された構成とすることができる。この構成によれば、筒状部材と増厚コンクリートとをより強固に一体化することができる。
また、本発明の一側面によれば、有底孔(5)の内周面に凹凸が形成された構成とすることができる。この構成によれば、有底孔と筒状部材との間隙に進入したビニロン短繊維混入コンクリートが底版に強固に付着するため、増厚コンクリートが剥離して底版との打ち継ぎ面にせん断ひび割れが生じることを防止できる。
また、上記課題を解決するために、本発明は、基礎杭(11)によって支持された鉄筋コンクリート造の底版(2)の耐震補強方法であって、平面視で基礎杭を取り囲むように底版の上面(2a)に有底孔(5)を複数形成するステップと、有底孔よりも小径で且つ底版よりも高強度の筒状部材(6)を複数用意する工程と、筒状部材を底版の上面から突出する態様で有底孔のそれぞれに挿入するステップと、筒状部材を巻き込むように底版上に短繊維混入コンクリートを打設して増厚コンクリート(4)を構築するステップとを含むことを特徴とする。この発明によれば、上記耐震補強構造と同様の効果を得ることができる。
このように本発明によれば、基礎杭を有する鉄筋コンクリート造底版を安価で効果的に補強できる構造および方法を提供することができる。
本発明に係る貯水タンクの耐震補強構造の概略断面図である。 図1中のa部拡大図である。 図2中のIII−III断面図である。 本発明に係る貯水タンクの耐震補強手順の説明図である。 本発明に係る貯水タンクの耐震補強構造による効果説明図である。
以下、図面を参照しながら本発明に係る貯水タンク1の耐震補強構造について説明する。
図1に示すように、その内部に水を貯留する貯水タンク1は、地盤G上に構築され、杭基礎10によって支持された鉄筋コンクリートからなる底版2と、底版2の周縁から立ち上げられた側壁3を有している。杭基礎10は、略同一の間隔で配置された多数本の基礎杭11により構成されている。各基礎杭11は、円形断面を呈し、底版2の下方に延在する地層21を貫き、その下方に略水平に広がる支持層22にその杭先端11uが所定の根入れ長さをもって貫入するとともに、所定長さにわたって杭頭11tが底版2に巻き込まれることによって相互に連結されている。そして、側壁3の内側全面に底版2に積層されるように増厚コンクリート4が構築されることによって底版2が耐震補強されている。
図2は、底版2の補強構造を示す拡大縦断面図であり、図3は、図2中のIII−IIIに沿って示す底版2の補強構造を示す拡大平断面である。なお、図3では、図が煩雑となるのを避けるためにハッチ線を省略して示しており、図4(C)に示す状態の平面図と一致する。また、底版2に含まれる鉄筋は図示を省略している。
図2、図3に示すように、底版2の補強構造は、平面視で基礎杭11を取り囲むように底版2の上面2aに形成された複数の有底孔5と、有底孔5よりも小径で且つ底版2よりも高強度に形成され、底版2の上面2aから突出する態様で複数の有底孔5にそれぞれ挿入された複数の円筒状部材6と、短繊維混入コンクリートからなり、円筒状部材6を巻き込むように底版2上に構築された増厚コンクリート4とを備えるように構成される。
有底孔5は、基礎杭11の上面端縁11aから45度の傾斜角度をもって上方外側へ広がる想定せん断面7によって画定される円錐台形が底版2の上面2aと交わる領域Aに外接する位置と、さらにその外側へ所定間隔α(ここではα=円筒状部材6の直径)をもって離間した位置との2つの円周状の列に沿って、基礎杭11を中心Xとして所定角度β(ここでは45度)をもって周方向に複数(ここでは1列につき8個、1本の基礎杭11に対して合計16個)形成されている。すなわち、1本の基礎杭11に対して16個の円筒状部材6が、底版2の上面2aにおいて基礎杭11を点対称な配置で二重に取り囲むように領域Aの外側に配置されている。
図2の拡大図に示すように、有底孔5の内周面および底面は凹凸に形成されている。そして、有底孔5の底に配置されたエポキシ樹脂パテ8が有底孔5の底面を水平な平坦面に形成し、その上に円筒状部材6が配置されている。円筒状部材6は、増厚コンクリート4よりも圧縮強度が高い(例えば、100MPa)高強度コンクリートからなり、その外周面が凹凸に形成された異形コンクリートシリンダである。なお、円筒状部材6には、鋼繊維などの短繊維を混入した高強度コンクリートを用いることや、鉄筋を入れることもできる。
増厚コンクリート4は、格子状に配置された鉄筋9を含むRC造であり、底版2の弾性係数と略同一若しくはそれ以下の弾性係数となる量の短繊維を含むように配合される。より詳しくは、増厚コンクリート4は、圧縮強度が40MPa〜50MPaの高強度コンクリートにビニロン短繊維を体積割合で2%〜3%混入させたビニロン短繊維混入コンクリートからなる。このような配合とすることにより、増厚コンクリート4の弾性係数は、ビニロン短繊維が混入されない場合の80%程度に低減され、圧縮強度が24MPa程度のコンクリートで構築された底版2の弾性係数と略同等とされている。
なお、ビニロン短繊維混入コンクリートは、ビニロン短繊維の混入量を増やすほど弾性係数が小さくなる特性を有しており、ビニロン短繊維の混入量は、混入する高強度コンクリートの強度や耐震補強の対象である底版2のコンクリート強度などに応じて適宜設定することができる。ビニロン短繊維の混入量とビニロン短繊維混入コンクリートの弾性係数との関係については、本願発明者らによる論文:「ビニロン短繊維を混入したRC梁の耐衝撃性に及ぼす短繊維混入率の影響」、構造工学論文集Vol.50A(2004年3月)を参照されたい。
次に、図4を参照して本発明に係る貯水タンク1の耐震補強方法について説明する。まず、(A)に示すように、耐震補強の準備として、貯水タンク1内部の水を抜き取り、基礎杭11によって支持された鉄筋コンクリート造の底版2を露出させる。次に、(B)に示すように、基礎杭11の上面端縁11aから45度の傾斜角度をもって上方外側へ広がる想定せん断面7が底版2の上面2aにつくる領域Aの外側において、平面視で基礎杭11を取り囲むように底版2の上面2aに有底孔5を複数形成する。有底孔5は、コアボーリングを用いて削孔することで容易に形成することができる。なお、コアボーリングで有底孔5を削孔した後、有底孔5の内周面をチッピングやブラストにより粗面化するとよい。
コアボーリングにより形成された有底孔5は、底面が平坦とならないため、(C)に示すように、エポキシ樹脂パテ8を用いて有底孔5の底面を水平な平坦面にし、その上に円筒状部材6を配置する。なお、円筒状部材6は、増厚コンクリート4よりも圧縮強度が高い(例えば、100MPa)高強度コンクリートを用いて予め作成しておいたものを用いる。エポキシ樹脂パテ8を有底孔5の底に設ける際には、有底孔5の深さが円筒状部材6の高さの半分程度となるようにし、有底孔5に配置した円筒状部材6の上半部が底版2の上面2aから突出するようにする。また、円筒状部材6は、平面視で有底孔5の中央に配置し、全周にわたって有底孔5の内周面との間に間隙が形成されるようにする。さらに、エポキシ樹脂パテ8が硬化する前に配置することで円筒状部材6が仮固定されるようにするとよい。本実施形態では、一例として、円筒状部材6を、直径10cm、高さ20cm程度の略円柱形状に形成しており、この場合、有底孔5を、直径15cm、エポキシ樹脂パテ8配置後の深さを10cm程度に形成し、円筒状部材6と有底孔5との間に、ビニロン短繊維混入コンクリートが流入し易い25mm程度の隙間が形成されるようにするとよい。
その後、(D)に示すように、鉄筋9を格子状に組み、円筒状部材6および鉄筋9を巻き込むように底版2上にビニロン短繊維混入コンクリートを打設して増厚コンクリート4を構築する。なお、鉄筋9は、耐食性の高いアルミニウムまたはステンレスを素材としたものが好ましい。また、ビニロン短繊維混入コンクリートは、上記したように、底版2の弾性係数と同程度またはそれ以下となるようにビニロン短繊維の混入率を設定し、本例では、圧縮強度が40MPa〜50MPaの高強度コンクリートにビニロン短繊維を体積割合で2%〜3%混入させる。
このような手順で構築された耐震補強構造によれば、以下のような作用効果が発揮される。すなわち、地震時に貯水タンク1の底版2に対する杭反力は、底版2の上面2a側が引張力を受ける応力状態となる押し抜きせん断力となって作用する。すると、底版2と同程度の弾性係数を有するビニロン短繊維混入コンクリートからなる増厚コンクリート4は、底版2の変形に追随し、すなわち底版2と一体的に変形する。増厚コンクリート4によって補強された構造体のせん断面は、基礎杭11の上面端縁11aから約45度の傾斜角度をもって上方外側へ広がる錐台形となる。
底版2と増厚コンクリート4との打ち継ぎ面32(底版2の上面2a)においてはせん断ずれが生じ易いが、この部分の外側に円筒状部材6が配置されているため、円筒状部材6がせん断キーとなり、せん断ずれが生じることなくせん断面が増厚コンクリート4の上面に至る。そのため、せん断ひび割れ31が図5(A)に示すように現れる。また、増厚コンクリート4はビニロン短繊維の架橋効果によってせん断耐力が高まっており、せん断ひび割れ31が現れ難くなっている。なお、図5は、押し抜きせん断力を加えた際に発生したせん断ひび割れ31を示すものであり、底版2および増厚コンクリート4からなる版状構造体を示す断面図であるが、切断側面を示す如くハッチ線を省略して示している。
一方、底版2と増厚コンクリート4との打ち継ぎ面32に円筒状部材6が配置されていない場合、例え増厚コンクリート4に同じ配合のビニロン短繊維混入コンクリートを用いたとしても、図5(B)に示すように、底版2と増厚コンクリート4との打ち継ぎ面32でせん断ずれが生じ、せん断ひび割れ31が打ち継ぎ面32に沿って水平方向に広がり、その影響が隣接する基礎杭11にまで及ぶ。そのため、補強された構造体のせん断耐力は本発明に比べて低い。
ここで、増厚コンクリート4の厚さを厚くすることで、構造体のせん断耐力を高め且つせん断ずれを防止することも考えられるが、このような方法を採ると貯水タンク1の貯水量を低減させることになる。すなわち、本発明に係る耐震補強構造は、増厚コンクリート4の厚さを薄くすることで、貯水タンク1の貯水量に及ぼす影響を低減しつつ効果的に底版2を補強することができる。また、施工が容易であるため、本発明に係る耐震補強構造は安価に底版2を補強することができる。
また、本実施形態では、直径10cmの円筒状部材6を底版2の上面2aから10cm程度突出させ、直径の突出長さに対する比を大きく(1:1程度)することにより、せん断キーとなる円筒状部材6の曲げ変形を抑制し、ずれ止めの効果を最大限に発揮させている。また、円筒状部材6の直径に対して有底孔5の直径を大きくしたことにより、両者の間にビニロン短繊維混入コンクリートが充填されて新旧両コンクリートおよび接合材(円筒状部材6)の一体化が強固なものとされている。さらに、円筒状部材6の外周面を異形化し、有底孔5の内周面を粗面化したことにより、コンクリートの付着強度を増大させてこれらがより一層強固に一体化している。したがって、増厚コンクリート4が剥離して底版2との間の打ち継ぎ面32にせん断ひび割れ31が生じることが確実に防止される。
また、増厚コンクリート4に鋼繊維を混入したコンクリートを用いた場合には、腐蝕による貯水タンク1内の水への悪影響が発生し得るが、増厚コンクリート4にビニロン短繊維混入コンクリートを用いたことで、腐蝕による悪影響を排除されている。一方、円筒状部材6は、貯水タンク1の表面に露出せず、腐蝕による悪影響を生じないため、鋼繊維を用いることによる不利益はない。
なお、本実施形態では、円周状に2列に配置された有底孔5同士の間隔α(基礎杭11から放射状に延びる直線を基準とした列間離れとしての間隔)を、円筒状部材6の直径と同一にしている、すなわち、外側の円周列上に配置された円筒状部材6が、内側の円周列上に配置された円筒状部材6からシリンダ直径の2倍離れた位置に配置されている。このような円筒状部材6同士の間隔は、外側の円筒状部材6が効果的にずれ防止機能を発揮し、且つ内側の円筒状部材6のずれ防止機能を低下させないように設定したものであり、本実施形態のように同一の角度間隔(β)で同一の角度位置に両列の円筒状部材6を配置する場合には、その間隔をシリンダ直径の1〜2倍程度に設定するのが好ましい。一方、外側の円筒状部材6を内側の円筒状部材6と異なる角度位置に配置する場合には、その間隔をシリンダ直径の1倍以下に設定することも可能である。
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、基礎杭11を中心Xにして点対称となるように2列にわたって円筒状部材6を配置しているが、円筒状部材6を1列または3列以上に配置したり、点対称以外の角度位置に配置したりしてもよい。いずれの配置を採用する場合であっても、底版2の想定せん断面7の内側に円筒状部材6を配置したとしてもずれ防止効果が発揮されないため、底版2の想定せん断面7の外側近傍に最内側列の円筒状部材6が位置するような配置にするとよい。そして、底版2の想定せん断面7から離れ過ぎてもずれ防止効果が低下するため、外側列の円筒状部材6も底版2の想定せん断面7から離れ過ぎない位置に配置するとよい。
また、上記実施形態では、有底孔5の内周面を粗面化して凹凸に形成しているが、粗面化処理を行わず、コアボーリングで削孔した状態のまま増厚コンクリート4を構築してもよい。さらに、上記実施形態では、円筒状部材6を、外周面に凹凸を形成して異形としているが、異形の態様は図示したものに限定されるものではなく、例えば、中央部が上部および下部に比べて細い断面テーパー状の形状にしたり、それ以外の形状にしたりしてもよい。或いは、異形とせずに円柱形状としてもよい。また、円筒状部材6は、高強度コンクリートを用いて形成される必要はなく、所望のせん断強度を有する鋼材を用いて形成されてもよい。
また、上記実施形態では、底版2の圧縮強度が24MPaである場合を例にとり、増厚コンクリート4に用いる高強度コンクリートの強度およびビニロン短繊維の混入割合を設定しているが、増厚コンクリート4の配合は適宜設定すればよい。この場合、増厚コンクリート4の弾性係数が底版2と同程度若しくは底版2よりも小さくなるような設定とするのが好ましい。これら変更のほか、各部材の具体的形状や、配置、数量など、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
1 貯水タンク
2 底版
2a 上面
4 増厚コンクリート
5 有底孔
6 円筒状部材
7 想定せん断面
11 基礎杭
11a 上面端縁
31 せん断ひび割れ
32 打ち継ぎ面

Claims (7)

  1. 基礎杭によって支持された鉄筋コンクリート造の底版の耐震補強構造であって、
    平面視で前記基礎杭を取り囲むように前記底版の上面に形成された複数の有底孔と、
    前記有底孔よりも小径で且つ前記底版よりも高強度に形成され、前記底版の上面から突出する態様で前記複数の有底孔にそれぞれ挿入された複数の筒状部材と、
    短繊維混入コンクリートからなり、前記筒状部材を巻き込むように前記底版上に構築された増厚コンクリートと
    を備えたことを特徴とする底版の耐震補強構造。
  2. 前記複数の有底孔は、前記基礎杭の上面端縁から45度の傾斜角度をもって上方外側へ広がる錐台形が前記底版の上面と交わる領域の外側に前記筒状部材を配置する位置に形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の底版の耐震補強構造。
  3. 前記増厚コンクリートは、前記底版の弾性係数と略同一若しくはそれ以下の弾性係数となる量の短繊維を含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の底版の耐震補強構造。
  4. 前記増厚コンクリートは、圧縮強度が40MPa〜50MPaの高強度コンクリートにビニロン短繊維を体積割合で2%〜3%混入させたビニロン短繊維混入コンクリートからなることを特徴とする、請求項3に記載の底版の耐震補強構造。
  5. 前記筒状部材は、前記ビニロン短繊維混入コンクリートよりも圧縮強度が高い高強度コンクリートからなり、その外周面に凹凸が形成されたことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の底版の耐震補強構造。
  6. 前記有底孔の内周面に凹凸が形成されたことを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の底版の耐震補強構造。
  7. 基礎杭によって支持された鉄筋コンクリート造の底版の耐震補強方法であって、
    平面視で前記基礎杭を取り囲むように前記底版の上面に有底孔を複数形成するステップと、
    前記有底孔よりも小径で且つ前記底版よりも高強度の筒状部材を複数用意する工程と、
    前記筒状部材を前記底版の上面から突出する態様で前記有底孔のそれぞれに挿入するステップと、
    前記筒状部材を巻き込むように前記底版上に短繊維混入コンクリートを打設して増厚コンクリートを構築するステップと
    を含むことを特徴とする底版の耐震補強方法。
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