JP5434845B2 - 鋼材の接合構造および鋼矢板の接合構造 - Google Patents
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鋼材を用いた構造体としては、例えば、鋼矢板を左右に連結して構築される鋼製連壁があり、土留め壁や地下構造、基礎構造として利用されている。このような鋼製連壁において、地盤への鋼矢板の打ち込み深さが深くなって鋼矢板の長さ寸法が大きくなると、鋼矢板を上下に分けて製造し、現場にて下側の鋼矢板を打設した後に、その上端縁に上側の鋼矢板を接合するという接合構造が用いられる。このような鋼矢板の接合構造としては、上下の鋼矢板の端縁同士を全断面溶接(フルペネ溶接、完全溶込溶接)によって接合することが一般的である。
なお、本発明の接合構造は、鋼材同士を長手方向に縦継ぎするものでもよいし、互いの長手方向が傾斜したものや、直交したものでもよい。また、接合方向は、長手方向に限らず、短手方向、板厚方向などでもよい。さらに、鋼材としては、板状のものに限らず、棒状のものや、管状(筒状)のものでもよい。
このような構成によれば、被溶接面が第1端面および前記第2端面に対して、それぞれ傾斜を有しているので、第1端面と第2端面との間の距離にずれが生じても、距離に応じて傾斜の奥行き方向に接合部材をずらし、被溶接面の接合位置を調整することで、適切な溶接距離(幅)を確保しつつ第1端面と第2端面との溶接作業が実施でき、位置決めの手間や時間を削減することができる。また、溶接部の断面が三角形状や台形状になることで、溶接作業のための開口を維持しながらも、溶接量を小さくできて、作業効率を向上させることができる。
このような構成によれば、一対の鋼矢板を長手方向に接合するにあたって、鋼矢板の端面の開先加工を不要にできるので、加工手間や部材コストが削減できる。また、鋼矢板の端面が板厚方向に位置ずれしても、接合部材に鋼矢板の全厚を溶接できるので、位置決めの手間や時間を削減することができ、施工効率を向上させることができる。
このような構成によれば、接合の際、鋼矢板を延出部に沿って配置することで、鋼矢板の厚さ方向の位置決めができ、位置決めの手間や時間をさらに削減できる。また、延出部により鋼矢板の側面側から溶接部が閉じられており、延出部を裏当て金として機能させることができるので、いわゆる溶接流れを防止することができる。
このような構成によれば、接合部材を長尺状に形成し、各ウェブおよびフランジごとに必要な長さに切断するだけで、折り曲げ加工することなく製造でき、製造の手間やコストを削減することができる。また、各々の接合部材同士を溶接によって接合することで、一体の接合部を形成することができ、接合強度や止水性を確保することができる。
ここで、鋼矢板の屈曲状の断面における凸側とは、すなわちウェブおよびフランジにより出隅が形成される側を意味する。このような凸側は空間的制限が少なく、溶接作業時に作業空間が制限されないので、作業性が良好になり、施工効率を向上させることができる。
なお、第2実施形態において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
図1から図3において、本実施形態の接合構造によって接合される鋼矢板1は、一対の鋼矢板である下側鋼矢板2および上側鋼矢板3を、溶接部4を介して接合部材5により長手方向(上下方向)に接合して構築される。すなわち、鋼矢板1は、下側鋼矢板2と上側鋼矢板3とを縦継ぎ接合によって一体に連結することで上下に延びて形成されている。
溶接部4は、この開口部分を埋めるように形成され、この溶接部4により、被溶接面511と下端面3Aおよび上端面2Aがそれぞれ接合されている。
以上の接合構造は、第2接合部材52および第3接合部材53と鋼矢板2,3との接合構造においても同様である。また、隣接する第1接合部材51と第2接合部材52、また第2接合部材52と第3接合部材53とは、互いに上下方向に重ならないようにし、互いに溶接部6を介して接合されている。溶接部6の溶接量が少なくなるよう、また凸面と反対側の凹面からの溶接流れを防止するために、第1接合部材51と第2接合部材52、第2接合部材52と第3接合部材53との端面間は互いにほぼ接するようにすることが好ましい。この際、接合部材5の端面間がきつく接してしまうと接合部材5の設置に支障を来たすため、接合部材5の端面間で数mm程度の余裕を持たせることが好ましい。
また、鋼矢板2,3の打設前に鋼矢板2,3を横に寝かせた状態で、鋼矢板2の上端面2Aまたは鋼矢板3の下端面3Aに第1,第2,第3接合部材51,52,53を溶接固定し、その後、一体化した鋼矢板2,3を地盤に打設しても構わない。
すなわち、上側鋼矢板3の端面への開先加工を不要にできるので、鋼矢板の加工手間や部材コストが削減できる。また、被溶接面511の鋼矢板2,3の長手方向に直交する面への投影寸法hを、鋼矢板2,3の板厚寸法Hよりも大きく形成したので、下側鋼矢板2と上側鋼矢板3とが板厚方向にずれた場合でも、鋼矢板2,3の全厚を溶接することが可能であり、位置合わせの手間や時間が削減できる。
また、接合部材5を、その被溶接面511が鋼矢板の凸側の面に向かって傾斜し、開口するよう配置したので、空間的制限の少ない鋼矢板1の凸側の面から、溶接作業を行うことができ、作業効率を向上できる。
次に、本発明の第2実施形態の鋼矢板1の接合構造を図5に基づいて説明する。
第2実施形態の接合構造では、接合部材5の形態が前記第1実施形態と相違するものの、鋼矢板2,3の構造など、他の構成は第1実施形態と同様である。以下、相違点について、詳細に説明する。
例えば、前記実施形態ではハット形鋼矢板で構成された下側鋼矢板2および上側鋼矢板3を例示したが、本発明の鋼矢板としては、ハット形鋼矢板に限らず、U形鋼矢板やZ形鋼矢板、I形鋼矢板など他の形態の鋼矢板も利用可能である。また、前記実施形態では、上下二段の鋼矢板同士を縦継ぎする構造を説明したが、上下三段以上の鋼矢板を縦継ぎしてもよい。また、接合部材の取り付け位置としては、前記実施形態のように第1フランジ21,31やウェブ22,32に限定、もしくは縦継位置に必要な設計上の強度,剛性によってはいずれか一箇所のみに取り付けてもよい。ただし、壁体としての止水性および打設時に縦継位置に発生する応力均等分散の観点からは、第1フランジ21,31、ウェブ22,32および第2フランジ23,33の全長に亘って接合部材5を取り付けることが好ましい。
また、接合構造としては、以下の図6および図7に示す接合部材5A〜5Eを用いてもよい。
また図6(B)に示すように接合部材5Bの断面形状は台形に限らず、平行四辺形とし、被溶接面511Bを鋼矢板2,3の端面2A,3Aに溶接接合してもよい。さらに、図6(C)に示すように、接合部材5Cの被溶接面511Cは、平面状に限らず、鋼矢板2,3の端面に対し、凹状のカーブを備えていてもよい。
そして、図6(D) の接合部材5Dに示すように、上側鋼矢板3と下側鋼矢板2との被溶接面は、上下面で必ずしも同じ傾斜を有している必要はない。例えば、下側鋼矢板2の上端面2Aと対向する被溶接面511Dは傾斜を有し、上側鋼矢板3の下端面31Aと対向する被溶接面511D’が傾斜を有さず、すなわち、下端面31Aと被溶接面511D’とが平行に形成されていてもよいし、下端面31Aが傾斜を有して形成されていてもよい。被溶接面511D’が材軸(長手方向)と直交して形成されていれば、上側鋼矢板3の下端面31Aに開先加工が施されていても下側鋼矢板2との溶接が困難な場合や、位置合わせが難しい場合などに接合部材5Dを用いて、下端面31Aに被溶接面511D’を溶接し、下側鋼矢板2と上側鋼矢板3とを接合することが可能となる。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
Claims (6)
- 開先加工されていない第1鋼材の第1端面と第2鋼材の第2端面とを接合する鋼材の接合構造であって、
前記第1端面と前記第2端面との間に設けられる接合部材を介して前記第1鋼材と前記第2鋼材とが接合され、
前記接合部材は、前記第1端面および前記第2端面に対向する2つの被溶接面を有する単一部材であり、
前記被溶接面は、それぞれ前記第1端面および前記第2端面への投影寸法が、前記第1端面および前記第2端面の断面寸法よりも大きく設定され、それぞれ1つの溶接部を介して、前記第1端面および前記第2端面に溶接されていることを特徴とする鋼材の接合構造。 - 請求項1に記載の鋼材の接合構造であって、
前記被溶接面は、前記第1端面および前記第2端面に対して、それぞれ傾斜を有して形成されていることを特徴とする鋼材の接合構造。 - 端面が開先加工されていない一対の鋼矢板を長手方向に接合する鋼矢板の接合構造であって、
前記一対の鋼矢板における互いに対向する一対の前記端面間に設けられる接合部材を介して当該一対の鋼矢板が接合され、
前記接合部材は、前記一対の端面に傾斜を有して対向する2つの被溶接面を有する単一部材であり、
前記被溶接面は、それぞれ前記端面に投影した厚さ方向の寸法が、前記鋼矢板の板厚寸法よりも大きく設定され、それぞれ1つの溶接部を介して、前記端面に溶接されていることを特徴とする鋼矢板の接合構造。 - 請求項3に記載の鋼矢板の接合構造であって、
前記接合部材は、前記被溶接面から前記端面を有する鋼矢板側に向かって延出するとともに、当該鋼矢板の側面に沿った延出部を備えて形成されていることを特徴とする鋼矢板の接合構造。 - 請求項3または請求項4に記載の鋼矢板の接合構造であって、
前記鋼矢板は少なくとも各1つ以上のウェブおよびフランジを有して断面屈曲状に形成され、
前記接合部材は、前記ウェブおよび前記フランジごとに分割された複数で構成され、各々の接合部材同士が、溶接によって互いに接合されていることを特徴とする鋼矢板の接合構造。 - 請求項5に記載の鋼矢板の接合構造であって、
前記端面と前記被溶接面とが前記鋼矢板の屈曲状の断面における凸側に向かって開口して設けられていることを特徴とする鋼矢板の接合構造。
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