JP5434715B2 - エポキシ樹脂粉体塗料 - Google Patents

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本発明は、エポキシ樹脂粉体塗料に関するものである。
エポキシ樹脂粉体塗料は電気的特性、機械的特性、熱的特性に優れており、従来の溶剤型塗料と比較して、塗料中に溶剤を含有しないため、低公害で作業環境性にも優れたものである。さらに多層の重ね塗りが可能で塗膜を厚くできること、比較的安価であること、塗装時に余過剰分の塗料が回収利用できることなどの利点から、電子部品、OA機器、家電製品、建材、自動車部品等の絶縁保護装飾用塗料として近年需要が高い。
電子部品や電装モーターへエポキシ樹脂粉体塗料を付着する際には、静電気を利用した静電塗装によって行われることが多い。近年、小型化に伴い、均一な塗装が可能である摩擦帯電方式を利用した静電塗装機が使用されている。この塗装方式では、粉体塗料の帯電はテフロン(登録商標)製の塗装機内壁との摩擦によって行う。高電圧を必要としない本方式ではファラデーケージ効果が起こらず、凹部への入り込み性に優れている。しかし本方式は静電気の発生が粉体粒子と塗装機内壁との接触による帯電のみによるため、粉体塗料の帯電量が少なく、塗装の際に十分な付着量を確保できないという問題が生ずる。また粉体塗料の組成によって帯電量が大きく異なるなどの問題も存在する。
一方、従来からの粉体塗料の塗装方法としてコロナ式静電塗装がある。この塗装方法は高電圧を印加する事によりコロナ放電を起こして粉体に静電気を帯びさせる方法であり、高電圧を印加するため帯電部と被塗装物の間に電界が発生する。粉体付着または環境中の水分の影響を受けにくく、安定して粉体を付着させることができる。
しかし、コロナ帯電方式では電圧の印加によってフリーイオンが大量に発生するため、ファラデーケージ効果の影響が非常に強くなり、被塗装物が凹凸を有する場合、凸部に電界が集中し、凹部には有効な電界が形成されないため、凹部には粉体塗料が入りにくく、逆に凸部には粉体塗料が付着しすぎる傾向がある。このため、モーターのような複雑な形状をした被塗装物に塗装した場合、凹部であるモータースロット間が凸部である端面に比べて極端に膜厚が薄くなる傾向があり、絶縁性の低下が懸念されている。一方、スロット間(凹部)の膜厚を増加させた場合、端面(凸部)が極端に厚くなり、線積率(巻線回数)の低下を招く。
また、特許文献1には、成膜表面に粒状の凹凸が殆ど無く、しかも平滑性に優れた塗膜を形成することができる粉体塗料組成物とその流動化剤が記載されているが、複雑な形状をした被塗装物に塗装した場合の効果は十分ではない。
特開2004−210875号公報
本発明はコロナ帯電式の塗装機で塗装した時に、被塗装物の凹凸部分で膜厚の差が小さく、均一な塗膜を得ることができるエポキシ樹脂粉体塗料を提供するものである。
このような目的は、下記の本発明(1)〜()により達成される。
(1) コロナ帯電方式の塗装機用のエポキシ樹脂粉体塗料であって、前記エポキシ樹脂粉体塗料がエポキシ樹脂(A)、無機充填材(B)、硬化剤(C)及びポリシロキサン処理酸化亜鉛微粒子(D)を必須成分としてなり、前記ポリシロキサン処理酸化亜鉛微粒子(D)の含有量が前記エポキシ樹脂粉体塗料全体に対して0.01〜2.0重量%であり、前記ポリシロキサン処理酸化亜鉛微粒子(D)の平均一次粒子径が1〜100nmであることを特徴とするコロナ帯電方式の塗装機用のエポキシ樹脂粉体塗料
) (1)記載のエポキシ樹脂粉体塗料で塗装された物品。
) 電子電気部品である()記載の物品
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料は、従来のエポキシ樹脂粉体塗料と比較して、コロナ帯電方式の塗装機で塗装した際に凹部への付着性が良好で、凹凸部の膜厚差が少なく、表面平滑性に優れた塗膜を得ることができるエポキシ樹脂粉体塗料である。
以下、本発明のエポキシ樹脂粉体塗料について詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料(以下、単に「粉体塗料」ということがある)に配合されるエポキシ樹脂(A)としては特に限定されない。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などを用いることができ、これらを単独または混合して用いてもよい。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた場合は、塗膜が機械的特性、電気的特性に優れたものになり好ましい。また、これらのエポキシ樹脂の分子量やエポキシ当量なども特に限定されず、粉体塗料の配合や要求される性状に合わせて適宜選択すればよい。
一例を挙げると、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた場合は、エポキシ当量が450〜2000であるのものを用いると、粉体塗料の塗装性が優れたものになり好ましい。
エポキシ樹脂(A)の配合量についても特に限定されないが、エポキシ樹脂(A)、無機充填材(B)及び硬化剤(C)の合計量に対して30〜60重量%であることが好ましく、さらに好ましくは40〜55重量%である。エポキシ樹脂(A)をかかる範囲の配合量とすることで、粉体塗料の塗装性を良好なものにできる。配合量が上記下限値よりも少ないと塗膜の平滑性が低下することがあり、一方、上記上限値よりも多いと塗装後の硬化工程である焼成時にタレやトガリといった外観不良を起こすことがある。
本発明の粉体塗料に配合される無機充填材(B)としては特に限定されないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、タルク等が挙げられ、これらを単独または混合して用いることができる。
無機充填材(B)の配合量についても特に限定されないが、エポキシ樹脂(A)、無機充填材(B)及び硬化剤(C)の合計量に対して30〜60重量%であることが好ましく、さらに好ましくは40〜55重量%である。無機充填材(B)をかかる範囲の配合量とすることで、粉体塗料の塗装性を良好なものにできる。配合量が上記下限値よりも少ないと焼成時にタレやトガリといった外観上の不具合を起こすことがあり、一方、上記上限値よりも多いと塗膜の平滑性が低下することがある。
また、無機充填材(B)の粒径は特に限定されないが、通常、平均粒径として30μm以下のものが用いられる。かかる平均粒径を有する無機充填材を用いることにより、粉体塗料に良好な流動性と塗膜の強度を付与することができる。
本発明の粉体塗料に用いられる硬化剤(C)としては特に限定されず、一般にエポキシ樹脂用の硬化剤として用いられている公知のものが使用できる。例えば、ジシアンジアミド、アジピン酸、イミダゾール化合物、アミン系硬化剤、芳香族系酸無水物などが挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた場合は、ジシアンジアミドやイミダゾール化合物、酸無水物を用いると、硬化性、密着性、耐熱性等が優れ好ましい。なお、硬化剤(C)の含有量についても特に限定されず、用いるエポキシ樹脂の種類、硬化剤の種類などを考慮して適宜設定すればよい。
本発明はポリシロキサン処理酸化亜鉛微粒子(D)を含有することを特徴とする。本微粒子は酸化亜鉛微粒子の粒子表面をポリシロキサンで処理した疎水化処理微粒子である。本微粒子の添加によってコロナ帯電方式で塗装した際にファラデーケージ効果による被塗装物の凸部への付着量が抑制され、凹部への入り込みが相対的に高くなる。これにより被塗装物の凹凸による膜厚差が小さくなり、均一な膜厚の塗装物を得ることができる。
ポリシロキサン処理酸化亜鉛微粒子(D)の配合量は特に限定されないが、前記粉体塗料全体に対して0.01〜2.0重量%であることが好ましく、さらには0.1〜1.0重量%であることが好ましい。
これにより本粉体塗料をコロナ帯電方式の塗装機で塗装した場合でも、形状によらず均一な塗装膜厚を有する塗装物を得ることができる。
配合量が上記下限値未満では凸部に付着する粉体塗料が多くなり、均一な膜厚を有する硬化物を得ることが出来ないことがあり好ましくない。一方、上記上限値を越えるとレベリング性の低下とボイドの発生のため、塗膜を形成する際表面がきれいに仕上がらず、さらに滑り性向上による付着粉体の落下が発生し好ましくない。
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料が、均一な膜厚を有する硬化物を得ることができる理由としては、ポリシロキサン処理酸化亜鉛微粒子の疎水性が極めて高いために、粉体表面の水分量が低下し、凸部付着時に付着粉同士が凝集の原因となる粉体塗料に付着した水分量が少なく、さらに凹部への入り込みに必要な電荷量を有していることによるものと考えられる。
ポリシロキサン処理酸化亜鉛微粒子(D)の1次粒径は特に限定されないが、1〜100nm、好ましくは20〜50nmが望ましい。上記下限値以下では粉体の滑り性が増大し、付着粉体の落下が発生する可能性がある。一方、上記上限値以上では微粒子の表面積が小さく、十分な帯電を得ることが出来ず、均一性が十分ではない。
なお、本発明の粉体塗料には上記配合物のほかにも、本発明の目的を損なわない範囲内で酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等の着色顔料、レベリング剤、硬化促進剤等を配合してもよい。
本発明の粉体塗料は、例えば、所定の原材料組成としたものを分散混合する方法、あるいは、このようにして得られた原材料混合物をさらに溶融混練して粉砕する方法、などにより得ることができる。
所定の原材料組成としたものを分散混合する方法は、具体的には、所定の組成比で原材料成分を配合し、これをヘンシェルミキサー等の分散混合装置によって十分に均一混合するものである。
また、原材料混合物を溶融混練して粉砕する方法は、具体的には、上記の方法で得られた原材料混合物を、エクストルーダー、ロールなどの溶融混練装置により溶融混合し、これを、粉砕装置を用いて適当な粒度に粉砕した後、分級するものである。
無機微粒子を添加する方法としては、粉砕時に微粉末を添加しながら混合する粉砕混合やヘンシェルミキサーなどによる乾式混合がある。
以下、本発明を実施例、比較例を用いて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、表1に記載されている原材料の配合量は「重量部」を示す。
<実施例1〜3>
原材料成分を表1で示す配合比でヘンシェルミキサーにより20分間混合して、原材料混合物を調製した。これを、エクストルーダーを用いて混練後、粉砕装置にて粉砕して得た平均粒子径50〜70μmの粉体塗料を得た。無機微粒子はヘンシェルミキサーを使って混合を行った。
<比較例1〜4>
原材料成分を表1で示す配合比で、実施例と同様の手法で粉体塗料を得た。
実施例及び比較例の粉体塗料について、その配合を表1に示す。
Figure 0005434715
使用原材料
(1)エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製・エピコート1055、エポキシ当量850)
(2)硬化剤:
3,3'-4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
(3)硬化促進剤:2−フェニルイミダゾール
(4)無機充填材:炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製・タンカルN−35、平均粒径22μm)
(5)無機微粒子:
(5-1)ポリシロキサン処理酸化亜鉛微粒子 平均一次粒子径30nm
(5-2)未処理酸化亜鉛微粒子 平均一次粒子径30nm
(5-3)ラウリン酸処理酸化亜鉛微粒子 平均一次粒子径30nm
(5-4)ポリシロキサン処理処理シリカ微粒子 平均一次粒子径30nm
粉体特性評価
(試験方法)
1.塗装条件:電装モーター(長65mm、直径60mm、スロット深さ15mm)にコロナ帯電式静電流動浸漬塗装機により60秒間塗装した。
2.硬化条件:300kHzの高周波により60秒で230℃まで加熱した。
3.流れ性:0.5gの粉体塗料を10mmφの金型に入れ成形後150℃の乾燥機中で30分間加熱、加熱前後の錠剤径の変化から次式により算出した。
流れ率(%)=加熱後の錠剤径/10×100
4.ゲル化時間:200℃、0.1g、針法で評価を行った。
5.電荷量:ファラデーケージを使用して電荷量を測定した。
6.膜厚差:塗装後のモーターを切断し、凸部である端面と凹部であるスロット間の膜厚を測定し、膜厚差から評価した。
7.付着粉落下:モーターに付着した粉体が大きく脱落していないか目視確認した。
8.塗膜外観:塗装後の試料の塗膜表面を観察し、塗膜表面の平滑性に優れているものを◎、平滑性はそれほど優れていないが問題ないレベルのものを○、細かな凹凸が見られるものを△で表記した。
実施例1〜3は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材を必須成分とし、無機微粒子がポリシロキサン処理酸化亜鉛微粒子である。本無機微粒子の使用により、粉体塗料の含水量が減少し、膜厚均一性と付着量の向上が確認され、付着粉体の落下も見られず、十分な塗装外観を有していた。
特に、実施例1については、無機微粒子の配合量が最適であったので、特性バランスに最も優れたものとなった。
一方、比較例1は未処理の酸化亜鉛微粒子を使用したため、耐湿性に劣り、均一性が十分でなく、付着粉の落下が生じた。比較例2はラウリン酸処理した酸化亜鉛微粒子を使用したが、付着粉の落下が生じた。比較例3はポリシロキサン処理シリカ微粒子を使用したが、スロット間(凹部)への入り込みに劣り、膜厚が不均一な塗膜となった。また、無機微粒子を添加しなかった比較例4は端面(凸部)への付着量が多く、一方スロット間(凹部)は少なく、不均一な塗膜が形成された。
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料は凸部への付着量が少なく、凹部への入り込みに優れ、硬化物が均一な膜厚を有する電気電子部品を提供するものである。

Claims (3)

  1. コロナ帯電方式の塗装機用のエポキシ樹脂粉体塗料であって、
    前記エポキシ樹脂粉体塗料がエポキシ樹脂(A)、無機充填材(B)、硬化剤(C)及びポリシロキサン処理酸化亜鉛微粒子(D)を必須成分としてなり、
    前記ポリシロキサン処理酸化亜鉛微粒子(D)の含有量が前記エポキシ樹脂粉体塗料全体に対して0.01〜2.0重量%であり、
    前記ポリシロキサン処理酸化亜鉛微粒子(D)の平均一次粒子径が1〜100nmであることを特徴とするコロナ帯電方式の塗装機用のエポキシ樹脂粉体塗料
  2. 請求項1記載のエポキシ樹脂粉体塗料で塗装された物品。
  3. 電子電気部品である請求項記載の物品
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