以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の便宜上、図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
以下、回路基板1を備えた携帯電話機(電子機器)100の概略を説明する。
なお、本実施形態では、回路基板1を備える電子機器は、携帯電話機100であるものとして説明している。しかしながら、回路基板1を備える電子機器は、携帯電話機100に限られず、異なる周波数で動作する無線通信用の複数のアンテナを備えた電子機器、あるいは、複数の周波数帯で動作する無線通信用のアンテナを備えた電子機器であれば種類を問わない。その一例としては、パーソナルコンピュータ(PC)、モバイルインターネットデバイス(MID)、オーディオプレイヤー、電子書籍リーダー、デジタルカメラといった用途を挙げることができる。
〔携帯電話機100の概略構成〕
図1は、回路基板1を備えた携帯電話機100の内部構成を示す図である。
図1に示すとおり、無線通信機として使用される携帯電話機100は、その内部に、少なくとも、回路基板1と、接地導体2と、アンテナ3a・3bとを備える。
回路基板1は、その表面に、図示しないグランドパターンが形成されると共に、少なくとも、切り欠き部10と、電流制御部12と、給電部15a・15bとを備える。
回路基板1は、多層基板(多層プリント基板)もしくは単層基板(単層プリント基板)をなし、この回路基板1の表面には図示しない高周波回路、制御回路等を含む無線通信機の種々の回路が形成されている。なお、回路基板1は、本発明に係る特徴部分を除いて公知の回路基板を用いてよいため、ここでの詳細説明は省略する。また、回路基板1の形状は、図1に示す略正方形に限らず種々の形状で実現することができる。
切り欠き部10は、グランドパターンの一部が切除されて形成されたものである。なお、切り欠き部10は、図示するように、グランドパターンに加え、回路基板1に連通して形成されてもよい。
ここで、切り欠き部10の役割を説明すると以下のとおりである。すなわち、従来の無線通信装置では、本来のアンテナ以外に、筐体や内蔵基板の接地パターンにもアンテナの給電点から高周波電流が流れ、これらが別の擬似的なアンテナとして作用するという現象が発生していた。そして、筐体や内蔵基板の接地パターンの広い範囲に高周波電流が流れることにより、等価的にアンテナ形状が変化して放射効率の低下を招く問題があった。そのような問題への対処として、筐体や基板の一部に切り欠きを設けて高周波電流の広がりを抑え、放射効率の低下を防ぐために切り欠きを設ける方法が知られており、回路基板1が有する切り欠き部10も、そのような役割を有する。
その切り欠き部10は、回路基板1のどの位置に設けられてもよく、そのサイズも適宜決めてよい。ただし、切り欠き部10は、後述の給電部15a・15bから、アンテナ3a・3bの動作周波数帯の4分の1波長(以下、波長を「λ」と称する場合もある。)以内の距離に設けられていることが好ましい。なぜならば、切り欠き部10付近に流れる電流が給電部15a・15b付近に流れる電流と逆位相になり、切り欠きによる効果が低下してしまうためである。
電流制御部12は、切り欠き部10の対向する2つの側面11a・11bの間を接続する格好で、切り欠き部10に設けられている。その電流制御部12は、周波数選択特性を有する素子であって、アンテナ3a・3bの動作する周波数帯にしたがって、回路基板1における電流の経路を制御するものである。例えば、周波数選択特性を有する電流制御部12を切り欠き部10に設けることにより、回路基板1上を流れるアンテナ3aの動作周波数帯の電流は切り欠き部10の周りを迂回した経路を流れ、その他の周波数帯の電流は切り欠き部10を跨ぐように電流制御部12を流れる。このように、周波数選択特性を有する電流制御部12が切り欠き部10に装荷されることにより、アンテナ3a・3bの動作周波数帯のそれぞれについて、回路基板1における電流の経路が制御される。
給電部15a・15bは、アンテナ3a・3bに給電するためのものであり、公知の給電部の構成を備えるものでよい。
ここで、給電部15a・15bは、アンテナ3a・3bの動作周波数帯の大小にかかわらず、回路基板1上の任意の位置に取り付けることができる。ただし、上述したように、給電部15a・15bは、切り欠き部10から、アンテナ3a・3bの動作周波数帯の4分の1波長以下の距離を隔てて設けられることが好ましい。
次に、携帯電話機100に含まれる他の構成である接地導体2について説明する。
一般的に、接地とは、機器の筐体・電線路の中性点・電子機器の基準電位配線などを電気伝導体で基準電位点に接続すること、またその基準電位点そのものを指す。本来は基準として大地を使用するため、この名称となっているものの、基準として大地を使わない場合にも拡張して使用されている。そこで、本実施の形態においても、拡張された広い意味での「接地」の役割を果たすものとして接地導体2が用いてられる。なお、携帯電話機100では、接地導体2は、回路基板1の近傍に、回路基板1と平行に配設されている。
アンテナ3a・3bは、異なる周波数で動作する無線通信用のアンテナである。アンテナ3a・3bは、回路基板1の給電部15a・15bにそれぞれ接続され、給電部15a・15bから給電される。携帯電話機100におけるアンテナ3a・3bの使用例としては、例えば、アンテナ3aはセルラー通信の第一周波数帯用に、アンテナ3bはセルラー通信の第二周波数帯用に供される、といった例が挙げられる。若しくは、アンテナ3aはセルラー通信用に、アンテナ3bはGPS用に供される、といった例が挙げられる。
なお、アンテナの本数は、用途に応じて3本以上存在してもよい。また、アンテナ3a・3bは例えばモノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、ヘリカルアンテナ、逆Fアンテナ又は誘電体アンテナ等を用いることができる。
さらに、図1は、回路基板1が、異なる周波数で動作する複数のアンテナとしてアンテナ3a・3bを備える構成例を示している。しかしながら、回路基板1は、複数の周波数帯で動作する1本のアンテナのみを備える構成で実現されてもよい。
〔電流制御部12の概略構成〕
次に、周波数選択特性を有する電流制御部12の種々の実施例を図2〜図7により説明する。
図2及び図3は、周波数選択特性を有する電流制御部12の一実施例として、インダクタ(電流制御部)20およびコンデンサ(電流制御部)22が使用される例を示し、図2は、インダクタ20およびコンデンサ22が並列接続された帯域阻止フィルタが使用される場合を、図3は、インダクタ20およびコンデンサ22が直列接続された帯域通過フィルタが使用される場合を示す図である。
図2、及び図3で示される電流制御部12では、インダクタ20およびコンデンサ22が使用されている。これは、コンデンサは周波数が高い交流電流ほど通しやすく、インダクタは周波数が高い交流電流ほど通しにくいという正反対の性質を利用することによる。つまり、インダクタ20およびコンデンサ22を組み合わせることで、各々の周波数特性の曲線が交わる周波数において共振(共鳴)が発生し、インピーダンスに急激な変化が生じる。そして、この急激な変化は、直列接続ではインピーダンスが下がり、並列接続ではインピーダンスが上がるというものである。この性質を利用したものが、図2、及び図23に示される、ある特定の周波数(共振周波数)を選択する同調回路である。
このように、インダクタ20およびコンデンサ22からなる周波数選択特性を有する電流制御部12を切り欠き部10に設けることにより、例えば、回路基板1上を流れるアンテナ3aの動作周波数の電流は切り欠き部10の周りを迂回した経路を流れ、その他の周波数帯の電流は切り欠き部10を跨ぐように電流制御部12を流れる、といった周波数選択的な電流制御が可能となる。
次に、図4は、電流制御部12の一実施例として、ダイオード(電流制御部)24と、そのダイオード24を動作周波数に応じて制御するための制御回路26が回路基板1のグラインドパターンに形成された構成を示す図である。ダイオード24は、動作周波数に応じてON/OFFを切り替えるスイッチとして機能するものであり、例えば、3aのアンテナが動作する場合はダイオードをONにし、3bのアンテナが動作する場合にはダイオードをOFFにするという動作をする。ダイオードは公知のダイオードであってよく、この場合にも電流制御部12は動作周波数に応じて回路基板1上の電流の経路を制御することができる。
次に、図5は、電流制御部12の一実施例として、直列接続された複数の共振回路(電流制御部)28・29が使用される例を示す。このとき、図示するように、携帯電話機100は、異なる周波数で動作する無線通信用の3つのアンテナ3a・3b・3cを有する。なお、アンテナ3cには、回路基板1に設けられた給電部15cから給電される。また、ここでいう、共振回路とは、コイル(L)とコンデンサ(C)とからなる帯域阻止フィルタや帯域通過フィルタのことをいう。
図5に示す例では、携帯電話機100は、異なる周波数帯で動作する無線通信用の3つのアンテナ3a・3b・3cを有する。また、切り欠き部10には、共振回路28・29が直列接続されており、共振回路28は、ある周波数帯に対して周波数選択性を有し、共振回路29は、他の周波数帯に対して周波数選択性を有するように設計されている。上記構成とすることにより、アンテナ3a・3b・3cの動作する周波数にしたがって、回路基板1における電流の経路が周波数選択的に制御される。
同図に示す構成は、複数の帯域阻止フィルタが直列に接続された構成、複数の帯域通過フィルタが直列に接続された構成、あるいは、帯域阻止フィルタ及び帯域通過フィルタが組み合されてなる構成など種々の態様で実現することができる。
図6は、電流制御部の一実施例として、分布定数形のフィルタ(電流制御部)27が使用される例を示す図である。この場合においても、帯域外減衰量が大きくかつ帯域内偏差が少ないローパスフィルタを構成する分布定数形のフィルタ27を使用することにより、回路基板1における電流の経路を周波数選択的に制御することができる。
図7は、電流制御部12として、図2から図4、図6により説明した各種の電流制御部、あるいは、図5により説明した共振回路28が使用される他の実施例を示す。
このとき、図示するように、携帯電話機100は、異なる周波数帯で動作する3つのアンテナ3a・3b・3cを有する。このとき、回路基板1は、2つの切り欠き部10a・10bを備え、切り欠き部10a・10bの両方に電流制御部12が装荷されている。図12を参照して後ほど説明するが、この場合にも、アンテナ3a・3b・3cの動作する周波数帯にしたがって、回路基板1における電流の経路が周波数選択的に制御される。つまり、異なる周波数帯で動作するアンテナの本数に係らず、回路基板1は、切り欠き部10に電流制御部12を設けることにより、自基板上の電流経路を周波数選択的に制御することができる。
〔結合量調節部の概略構成〕
次に、回路基板1上のグランドパターンと接地導体2との電気的な結合量を結合量調節部が最適化する構成について、図8〜図10を用いて説明する。
上述したように、回路基板1は、切り欠き部10を有することにより、高周波電流の広がりを抑え、アンテナの放射効率の低下を防止している。しかしながら、たとえ回路基板1上のグランドパターンに切り欠き部10を設けたとしても、その直下に接地導体2が配設されることにより、当該グランドパターンと接地導体2とが電気的に結合し、切り欠き部10によるアンテナの放射特性の改善効果が低下するという問題がある。
図8は、回路基板1上のグランドパターンと接地導体2とが電気的に結合し、切り欠き部10によるアンテナの放射効率が劣化することを説明するための図である。
同図では、グランドパターンと接地導体2とが短絡素子16a・16bにより接続されている。同図では、短絡素子16aは、切り欠き部10により形成された突堤部に設けられた図示しないグランドパターンと接地導体2とを接続している。また、短絡素子16bは、切り欠き部10を挟んで上記突堤部と対向する側の、回路基板1に設けられたグランドパターンと接地導体2とを接続している。
このとき、接地導体2とグランドパターンとが電気的に一体化して見えることがある。同図では、そのことが、電気の流れを示す矢印の太さによって視覚的に表現されている。この場合は、特に、接地導体2に大きな高周波電流が流れ、切り欠き部10だけでは放射効率の劣化を十分に防ぐことができないという問題が起こる。
そこで、この問題への対処として、図9、図10に示す構成が用いられる。図9は、回路基板1上のグランドパターンと接地導体2とが帯域阻止フィルタ(結合量調節部)17a・17bによって接続された構成を示す図である。図10は、回路基板1上のグランドパターンと接地導体2とが容量性素子(結合量調節部)18a・18bによって接続された構成を示す図である。
ここで、容量性素子とは、マイクロ波回路、ミリ波回路等の高周波回路を伝搬する高周波信号に対して容量性(キャパシタンス)の性質を示す素子である。代表的な容量性素子としては、薄膜で形成された容量性素子(薄膜容量)、チップタイプの容量性素子(チップ形容量)、インタディジタル形の容量性素子(インタディジタル形容量)等を挙げることができる。
図9に示すように、帯域阻止フィルタ17aが、切り欠き部10により形成された突堤部に設けられた図示しないグランドパターンと接地導体2とを接続している。また、帯域阻止フィルタ17bが、切り欠き部10を挟んで上記突堤部と対向する側の、回路基板1に設けられたグランドパターンと接地導体2とを接続する。そして、このように回路基板1上のグランドパターンと接地導体2とを帯域阻止フィルタ17a・17bを介して接続することにより、グランドパターンと接地導体2の電気的な結合量を調整でき、切り欠きの効果を得やすくなる。なお、帯域阻止フィルタ17a・17bではなく、抵抗素子を用いても同様の効果を得ることができる。
次に、図10について説明する。同図に示すように、容量性素子18aが、切り欠き部10により形成された突堤部に設けられた図示しないグランドパターンと接地導体2とを接続している。また、容量性素子18bが、切り欠き部10を挟んで上記突堤部と対向する側の、回路基板1に設けられたグランドパターンと接地導体2とを接続する。そして、このように回路基板1上のグランドパターンと接地導体2とを容量性素子18a・18bを介して接続することにより、接地導体2に流れる高周波電流の位相を制御することができ、アンテナ3a・3bの放射効率を改善させやすくする。なお、容量性素子18a・18bではなく、誘導性素子を用いても同様の効果を得ることができる。
さらに、図示はしていないが、帯域阻止フィルタ17a・17bまたは抵抗素子と、容量性素子18a・18bまたは誘導性素子とを組み合わせることもでき、それにより、より自由度の高い設計が可能となる。そして、そのように組み合わせることにより、各アンテナ3a・3bの動作周波数帯それぞれについて、回路基板1上のグランドパターンと接地導体2との電気的結合量、および接地導体2に流れる高周波電流の位相を制御することができる。そして、複数の動作周波数帯において、アンテナ3a・3bの放射効率が改善される。
〔電流制御部12を介した回路基板1上の電流の流れ〕
次に、電流制御部12を介した回路基板1上の電流の流れについて、図11、図12を用いて説明する。
図11は、アンテナが2本、切り欠き部が1つの場合における、電流制御部12を介した回路基板1上の電流の流れについて説明するための図である。なお、図中の参照番号13は、図9、及び図10を参照して説明した帯域阻止フィルタ17a・17b、抵抗素子、容量性素子18a・18b、あるいは誘導性素子などの結合調節部を表す。
まず、説明の便宜のため、アンテナ3aは2GHz帯アンテナであり、アンテナ3bは800MHz帯アンテナであって、電流制御部12は、2GHz帯の電流の通過を阻止する帯域阻止フィルタであるものとする。
図示するように、電流制御部12は、切り欠き部10の対向する2つの側面11a・11bの間を接続する格好で、切り欠き部10に設けられている。その電流制御部12は、2GHz帯の電流の通過を阻止する帯域阻止フィルタである。
従って、2GHz帯の電流は、切り欠き部10の周りを迂回した経路を流れ、800MHz帯の電流は、切り欠き部10を跨ぐように電流制御部12を流れる。つまり、回路基板1では、電流制御部12が切り欠き部10に装荷されることにより、アンテナ3a・3bの動作周波数帯のそれぞれについて、回路基板1における電流の経路が制御される。
図12は、アンテナ3a・3b・3cが3本、切り欠き部が2つの場合における、電流制御部12a・12bを介した回路基板1上の電流の流れについて説明するための図である。このうち、図12(a)は800MHz帯の高周波電流の流れを、図12(b)は1.5GHz帯の高周波電流の流れ、図12(c)は2GHz帯の高周波電流の流れを、それぞれ説明するための図である。
まず、説明の便宜のため、アンテナ3aは2GHz帯アンテナであり、アンテナ3bは800MHz帯アンテナであり、アンテナ3cは1.5GHz帯アンテナであるとする。また、電流制御部12aは、800MHzの電流を通過させる800MHz帯の帯域通過フィルタであり、電流制御部12bは、1.5GHzの電流は通過させない1.5GHz帯の帯域阻止フィルタであるものとする。
図示するように、電流制御部12aは、切り欠き部10aの対向する2つの側面間を接続する格好で、切り欠き部10aに設けられている。その電流制御部12aは、800MHz帯の電流のみを通過させる帯域通過フィルタである。また、電流制御部12bは、切り欠き部10bの対向する2つの側面間を接続する格好で、切り欠き部10bに設けられている。その電流制御部12bは、1.5GHzの電流は通過させない帯域阻止フィルタである。
従って、800MHz帯のアンテナ3bが動作すると、800MHz帯の電流は電流制御部12a・12bの両方を通過できるため、図12(a)の矢印に示される経路で電流が流れる。
一方、1.5GHz帯のアンテナ3cが動作すると、1.5GHz帯の電流は電流制御部12a・12bともに通過できないため、図12(b)の矢印に示される経路で電流が流れる。
さらに、2GHz帯のアンテナ3aが動作すると、2GHz帯の電流は、電流制御部12aは通過できず、電流制御部12bは通過できるため、図12(c)の矢印に示される経路で電流が流れる。
このように、回路基板1では、電流制御部12aが切り欠き部10aに、電流制御部12bが切り欠き部10bに装荷されていることにより、アンテナ3a・3b・3cの動作周波数帯のそれぞれについて、回路基板1における電流の経路が制御される。
〔アンテナ特性の変動について〕
次に、アンテナ特性の変動について図13〜図16を用いて説明する。
図13は、結合量調節部13を介して回路基板1と接続する接地導体2aの近傍に、接地導体2aと平行に配設された他の接地導体2bがさらに設けられた構成を示す図である。なお、図14〜図16はそれぞれ、図13に示す構成を備えた携帯電話機100を例示するものであって、図14は、接地導体2bを含む筐体100bが、回路基板1等を備えた筐体100aに対して両筐体の長手方向に移動する横スライド式携帯電話を示す図である。図15は、接地導体2bを含む筐体100bが、回路基板1等を備えた筐体100aに対して両筐体の長手方向とは垂直な方向に移動する縦スライド式携帯電話を示す図である。そして、図16は、接地導体2bを含む筐体100bが、回路基板1等を備えた筐体100aに対して、筐体100aの端部を軸に回動可動に回転する折り畳み式携帯電話を示す図である。ここで、横スライド式、縦スライド式、及び折り畳み式携帯電話は、公知の携帯電話機と同様と考えてよいため、詳細説明は省略する。また、図示していないものの、携帯電話機100は、筐体100bが、筐体100aに対して、筐体100aまたは筐体100bに設けられた、互いの当接面に垂直な回転軸を中心に回転する構成、あるいは筐体100aまたは筐体100bが互いに分離可能に設けられた構成で実現されてもよいことを付言しておく。
次に、図13を参照して、アンテナ特性の変動について説明する。
一般的に、アンテナ3a・3bの給電部15a・15bが配置されているグランドパターンの辺の長さが、アンテナ3a・3bの動作周波数帯の4分の1波長程度である場合、この辺上に共振モードの電流が流れる。このとき、接地導体2aとは異なる接地導体2bを搭載した他の筐体が存在する場合(図14〜図16の筐体100bに相当)、当該他の筐体のグランドにも高周波電流が励起される。その結果、当該他の筐体が稼動するたびにアンテナ3a・3bの特性が大きく変動してしまい、アンテナの動作が不安定になる。また、別筐体のグランドに励起される高周波電流の分布によっては、不要な放射が増大し、アンテナ3a・3bの放射効率が劣化する場合もある。
そこで、図13に示すように、グランドパターンに切り欠き部10を設け、その切り欠き部10に電流制御部12を装荷することでグランドパターンの辺の長さを変化させる。つまり、その切り欠き部10に電流制御部12を装荷することにより、グランドパターンの辺の長さがアンテナ3a・3bの動作周波数帯の4分の1波長程度とならないようにする。これにより、上記他の筐体のグランドに励起される高周波電流の分布を調整することができ、かつ、上記他の筐体が移動することによるアンテナ3a・3bのアンテナ特性の変動を抑制することができる。
〔切り欠き部10にカメラレンズ30を配設した構成について〕
次に、切り欠き部10にカメラレンズ30を配設した構成について図17を用いて説明する。
上述したように、グランドパターンに切り欠きを設けることにより、アンテナの放射効率を改善することができる。
しかしながら、回路基板1を備えた電子機器の設計において、回路基板1の近傍には多数の回路部品が密集して実装され、また、回路基板1の内層にはパターン配線が形成される。従って、回路基板1の全層に亘って切り欠きを形成するスペースを確保することは困難なことが多い。
一方、カメラ機能を備えた携帯電話機では、携帯電話機を保持する時にカメラレンズに手が被らないよう、カメラレンズを携帯電話機の上側へ、すなわち、アンテナの近傍にカメラレンズを配置することが多い。そのため、カメラレンズを装着するための開口を回路基板に形成することが多い。
その一方で、カメラ等に係る高負荷アプリケーション部品がアンテナ周辺に実装された場合、ノイズによる無線受信感度の劣化という問題が生じる。そのため、カメラに起因するノイズに対する耐性を向上させるためには、カメラレンズ周りのグランドを強化する必要がある。なお、上記ノイズは、800MHz帯などの比較的低域側の周波数帯において顕著に認められる。
そこで、本実施形態では、図17に示すように、回路基板1に形成するカメラ用の開口と切り欠き部10とを共有化し、省スペース化を図るという工夫を加えている。
具体的に説明すると、切り欠き部10が、グランドパターンおよび回路基板1に連通して形成されている。その切り欠き部10には、カメラレンズ30が配設されている。また、切り欠き部10は、カメラレンズ30の外形より僅かに大きい形状で形成されている。このように回路基板1に形成するカメラ用の開口と切り欠き部10とを共有化することにより、携帯電話機100の小型化を図っている。
なお、カメラレンズ30周りのグランドパターンを切り欠くことにより、カメラレンズ30に起因するノイズに対する耐性が劣化してしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、切り欠き部10に帯域阻止フィルタなどの電流制御部12を装荷している。これにより、所望の周波数帯の電流のみ切り欠き部10を迂回させ、他の周波数帯の電流は電流制御部12を通過するよう電流の経路を制御し、ノイズが発生する周波数帯では切り欠き部10を見えなくしている。このようにしてカメラレンズ30周りのグランドを強化して、カメラレンズ30に起因するノイズに対する耐性向上を図っている。
上記では、切り欠き部10にカメラレンズ30を配設した携帯電話機100を一例に説明した。しかしながら、上記構成は、電子機器を携帯電話機100とする場合のみに限定されるものではない。回路基板1を搭載する電子機器であって、自機器に搭載される部品を切り欠き部10に配設することが可能であれば、あらゆる電子機器に対して上記構成を適用することができる。
〔上記すべてを組み合わせた構成〕
以上、携帯電話機100が備える種々の構成を説明した。ここで、図18は、図1から図17により説明した各構成を1つの電子機器に組み込んだときの様子を示す図である。図18についての詳細説明は、すでに各部について説明しているため省略する。しかしながら、同図に示すように、上記各構成すべてを1つの電子機器に組み込むことは当然に可能であり、その場合、後述する効果を同時に実現することができる。
〔切り欠き部10に容量性(誘導性)素子を装荷した場合の放射効率の改善〕
次に、切り欠き部10に容量性素子または誘導性素子を装荷した場合に、アンテナの放射効率が改善される例を図19、図20により説明する。
図19は、異なる周波数帯で動作する2つのアンテナの放射効率が改善される様子を示すグラフであり、図19(a)はアンテナAの放射効率を、図19(b)はアンテナBの放射効率を、それぞれ説明するためのグラフである。
なお、各図では、横軸はアンテナの動作する周波数を、縦軸はアンテナの放射効率を示す。また、アンテナAが動作する周波数帯を動作周波数帯Aと、アンテナBが動作する周波数帯を動作周波数帯Bとする。さらに、破線は、回路基板1に切り欠き部10が存在しない場合を、点線は、回路基板1に切り欠き部10を設けた場合を、実線は、切り欠き部10に容量性素子が装荷された場合をそれぞれ示す。これらは、後述する図20についても同様である。
以下、図19について説明する。
図19(a)に示すように、回路基板1に切り欠き部10が存在しない場合(点線)、アンテナAの動作周波数帯Aの放射効率が劣化している。つまり、動作周波数帯Aにおいて、アンテナAの放射効率は顕著に低下している。そこで、回路基板1に切り欠き部10を設け(破線)、アンテナAの動作周波数帯Aにおける放射効率を改善している。
その一方で、図19(b)に示すように、回路基板1に切り欠き部10が存在しない場合(点線)、アンテナBの動作周波数帯Bの放射効率は低くなかったにも係らず、回路基板1に切り欠き部10を設けることにより(破線)、アンテナBの動作周波数帯Bの近傍における放射効率が劣化する場合がある。
そこで、図19(a)・(b)に示すように、切り欠き部10に容量性素子を装荷することにより(実線)、アンテナAの動作周波数帯A、及びアンテナBの動作周波数帯Bともにアンテナの放射効率を改善することができる。
続いて、図20について説明する。図20は、複数の周波数帯で動作するアンテナの放射効率が改善される様子を示すグラフである。
同図に示すように、回路基板1に切り欠き部10が存在しない場合(点線)、アンテナAの動作周波数帯Aでは放射効率は劣化していないものの、アンテナBの動作周波数帯Bでは放射効率の劣化が認められる。そこで、回路基板1に切り欠き部10を設けると(破線)、アンテナBの動作周波数帯Bの放射効率は改善されるが、その一方で、アンテナAの動作周波数帯Aにおいて放射効率の劣化が認められる。
そこで、同図に示すように、切り欠き部10に容量性素子を装荷することにより(実線)、アンテナAの動作周波数帯A、及びアンテナBの動作周波数帯Bともに、アンテナの放射効率を改善することができる。特に、動作周波数帯Aと動作周波数帯Bとが近接する周波数帯域である場合には、動作周波数帯Aの電流のみを通過させ、動作周波数帯Bの電流を通過させないような帯域阻止フィルタを設計することは困難であり、また、仮に帯域阻止フィルタを用いた場合には、構成部品のばらつきによるアンテナ放射効率の変化が大きくなってしまうという問題が起こりうる。
そこで、切り欠き部10に容量性素子を装荷することにより、放射効率の劣化が顕著な周波数帯(NULL点)をずらして、所望の周波数帯(図19、図20では動作周波数帯A、動作周波数帯B)におけるアンテナの放射効率の劣化を避けることができる。なお、上記では、切り欠き部10に装荷する電流制御部12は、容量性素子であるものとして説明した。しかしながら、切り欠き部10に装荷する電流制御部12は誘導性素子であってもよい、
ここで、切り欠き部10に容量性素子または誘導性素子を装荷することにより、アンテナの放射効率が改善する理由として、以下の理由が挙げられる。
一般的に、切り欠き部10は、電流制御部12が装荷されていないときには誘導性に見える。そして、切り欠き部10の切り欠きを浅くすることにより誘導性を小さくすることができ、また深くすることにより誘導性を大きくすることができる。この点、電流制御部12として容量性素子または誘導性素子を装荷することにより、切り欠き部10は、切り欠き部10が存在する場合および存在しない場合の何れとも異なる中間的な容量性または誘導性に見えるようにすることができる。そして、アンテナの動作周波数帯によっては、中間的な容量性または誘導性に見えるほうが、アンテナの放射効率が良くなる場合がある。図19、図20は、切り欠き部10に容量性素子または誘導性素子を装荷することによりアンテナの放射効率が改善する例であり、その背景には上記の理由が挙げられる。
〔接地導体に接続するアンテナを有する電子機器について〕
次に、接地導体2に接続するアンテナ3aを有する携帯電話機110について、図21を用いて説明する。図21は、接地導体2に接続するアンテナ3aを有する携帯電話機110を説明するための図であり、図21(a)は上面図を、図21(b)は正面図を示す。
各図に示すように、携帯電話機110の接地導体2は、接地点40を有する。また、アンテナ3aは、アンテナ先端部を補助板金42を使って延長し、その補助板金42は接地点40に接地されている。そして、切り欠き部10は、給電部15aと接地点40との間に位置している。
なお、同図では、接地点40に接地されているアンテナは1本で記載されている。しかしながら、アンテナが3本以上存在するときは、そのうち少なくとも1本のアンテナが接地導体2に接地されていればよい。また、同図では、アンテナ3aは、補助板金42と接続している。しかしながら、アンテナ3aと補助板金42を組み合わせてなる構成が、補助板金42を用いることなく単一の金属で形成されていてもよいし、3以上の複数の金属で形成されてもよい。さらに、同図では、接地点Bは接地導体2に設けられている。しかしながら、接地点Bは、回路基板1のグランドパターンに設けられてもよい。
上記構成とすることにより、携帯電話機110は次のような効果を奏する。つまり、切り欠き部10が給電部15aと接地点40との間に位置することにより、切り欠き部10にはより大きな高周波電流が流れることになる。従って、本発明の効果、すなわち、切り欠き部10に電流制御部12を装荷することにより高周波電流の経路を制御してアンテナの放射効率を改善する、という効果はさらに大きくなる。
〔本発明に係る回路基板、電子機器の効果〕
以下、回路基板1、及び回路基板1を備えた電子機器によって得られる効果を説明する。
回路基板1は、無線通信用の複数のアンテナ3a・3bに対して給電可能な、表面にグランドパターンが形成された回路基板1であって、複数のアンテナ3a・3bはそれぞれ、異なる周波数帯で動作し、かつ、各アンテナの給電位置が他のアンテナの給電位置と互いに独立して決められるものであり、グランドパターンに、複数のアンテナ3a・3bの放射効率を改善するための切り欠き部10と、切り欠き部10に、複数のアンテナ3a・3bの異なる周波数帯にしたがって、自基板に流れる電流の経路を制御する電流制御部12と、を備える。
また、回路基板1は、無線通信用のアンテナに対して給電可能な、表面にグランドパターンが形成された回路基板1であって、アンテナは、複数の周波数帯で動作するものであり、グランドパターンに、アンテナの放射効率を改善するための切り欠き部10と、切り欠き部10に、アンテナの複数の周波数帯にしたがって、自基板に流れる電流の経路を制御する電流制御部12と、を備える。
従来の無線通信機に搭載される回路基板は、本来のアンテナ以外に、筐体や内蔵基板の接地パターンの広い範囲に高周波電流が流れ、等価的にアンテナ形状が変化して放射効率の低下を招くという問題があった。そのため、筐体や回路基板1の一部に切り欠きを設けて高周波電流の広がりを抑え、放射効率の低下を防いでいた。
しかしながら、従来の無線通信機は、異なる周波数帯で動作する複数のアンテナ3a・3bが搭載された場合、あるいは、複数の周波数帯で動作するアンテナが搭載された場合に、最適な切り欠きの形状が動作周波数帯ごとに異なるため、1つのアンテナの放射効率が改善されたとしても、すべてのアンテナの放射効率を改善できなかった。
この点、回路基板1では、自基板の表面に形成されたグランドパターンに、複数のアンテナ3a・3bの放射効率を改善するための切り欠き部10を設け、その切り欠き部10には、複数のアンテナ3a・3bの異なる周波数帯にしたがって、自基板に流れる電流の経路を制御する電流制御部12を備えている。
また、回路基板1では、自基板の表面に形成されたグランドパターンに、アンテナの放射効率を改善するための切り欠き部10を設け、その切り欠き部10には、アンテナが動作する複数の周波数帯にしたがって、自基板に流れる電流の経路を制御する電流制御部12を備えている。
従って、電流制御部12は、ある周波数帯の電流については、自身を通過させることなく切り欠き部10の周りを迂回させ、他の周波数帯の電流については、自身を通過させることにより切り欠き部10を跨ぐように電流経路を制御することができる。
それゆえ、回路基板1では、電流制御部12が自基板に流れる電流の経路を制御することにより、切り欠き部10の形状(言い換えると、見え方)をアンテナの動作周波数帯ごとに変化させることができる。つまり、回路基板1では、複数アンテナごとに切り欠き部10の見え方を最適化することができるため、複数の周波数帯で動作する無線通信用のアンテナ、及び異なる周波数で動作する無線通信用の複数のアンテナの放射効率を改善することができる。
なお、回路基板1では、複数のアンテナ3a・3bはそれぞれ、異なる周波数帯で動作し、かつ、取付位置が互いに独立して決められるものである。それゆえ、アンテナの取付位置が互いに依存し合い、回路基板1を設計する際に設計の自由度が奪われるという従来技術が抱えていた課題も併せて解決することができる。
さらに、回路基板1では、切り欠き部10は、複数のアンテナ3a・3bへ給電する給電部それぞれから、その給電部が給電するアンテナの動作する周波数帯の4分の1波長以内の距離に設けられる構成である。
さらに、回路基板1では、
切り欠き部10は、アンテナに給電する給電部から、複数の周波数帯それぞれの4分の1波長以内の距離に設けられる構成である。
切り欠き部10が、給電部15a・15bから、アンテナの動作周波数の4分の1波長程度の距離を隔てて設けられている場合、切り欠き部10付近に流れる電流が給電部15a・15b付近に流れる電流と逆位相になるため、アンテナの放射効率を改善するための切り欠きの効果が低下してしまう。
そこで、上記各構成とすることにより、切り欠き部10付近に流れる電流が給電部部15a・15b付近に流れる電流と逆位相になることを防止することができるため、アンテナの放射効率を改善するための切り欠きの効果を維持することができる。
さらに、回路基板1では、電流制御部12は、インダクタ20およびコンデンサ22が並列接続されてなる帯域阻止フィルタからなる構成である。
さらに、回路基板1では、電流制御部12は、インダクタ20およびコンデンサ22が直列接続されてなる帯域通過フィルタからなる構成である。
(☆請求項7)
さらに、回路基板1では、電流制御部12は、動作周波数に応じて制御可能なダイオード24からなる構成である。
さらに、回路基板1では、電流制御部12は、直列接続された複数の共振回路からなる構成である。
さらに、回路基板1では、電流制御部12は、周波数選択性を有する分布定数形のフィルタ27からなる構成である。
上述したように、回路基板1では、電流制御部12は、種々の種類を選択することが可能である。
従って、回路基板1の用途、具体的な設計内容に従って、好適な種類の電流制御部12を選択することができる。また、電流制御部12は、何れの種類が選択されても、自基板に流れる電流の経路を制御することができ、本発明の目的を達成することができる。
さらに、回路基板1では、自基板と、自基板の近傍に配設される接地導体2との間に接続される、グランドパターンと接地導体2との間の電気的な結合量を調節するための結合量調節部を備える構成である。
上述したように、回路基板1は、切り欠き部10を有することにより、高周波電流の広がりを抑え、アンテナの放射効率の低下を防止している。しかしながら、たとえ回路基板1上のグランドパターンに切り欠き部10を設けたとしても、その直下に接地導体2が配設されることにより、当該グランドパターンと接地導体2とが電気的に結合し、切り欠き部10によるアンテナの放射特性の改善効果が低下するという問題がある。また、接地導体2はグランドパターンと電気的に一体のものとして見えるように接続される場合が多いため、この場合は、接地導体2に大きな高周波電流が流れ、切り欠き部10だけでは放射効率の劣化を防止することができなくなるという問題がある。
この点、回路基板1は、上記構成とすることにより、たとえ切り欠き部10の直下に接地導体2が配置される場合であっても、グランドパターンと接地導体2とを結合量調節部13を介して接続しているため、グランドパターンと接地導体2との間の電気的な結合量を調整することができ、アンテナの放射特性を改善するという切り欠き部10による効果を維持することができる。
さらに、回路基板1では、結合量調節部13は、帯域阻止フィルタまたは抵抗素子からなる構成である。
上記構成とすることにより、たとえ切り欠き部10の直下に接地導体2が配置される場合であっても、グランドパターンと接地導体2とを帯域阻止フィルタまたは抵抗素子を介して接続しているため、グランドパターンと接地導体2との間の電気的な結合量を調整することができ、アンテナの放射特性を改善するという切り欠き部10による効果を維持することができる。
さらに、回路基板1では、結合量調節部13は、容量性素子または誘導性素子からなる構成である。
上記構成とすることにより、たとえ切り欠き部10の直下に接地導体2が配置される場合であっても、グランドパターンと接地導体2とを容量性素子または誘導性素子を介して接続しているため、接地導体2に流れる高周波電流の位相を制御することができ、アンテナの放射効率を改善させやすくすることができる。
さらに、携帯電話機100では、何れかの回路基板1を備える構成である。
回路基板1は、異なる周波数帯で動作する複数のアンテナ3a・3bを搭載した電子機器、あるいは、複数の周波数帯で動作するアンテナを搭載した電子機器に好適に適用することができる。その一例として、携帯電話、パソコン、モバイルインターネットデバイス(MID)、オーディオプレイヤー、電子書籍リーダー、デジタルカメラといった電子機器を挙げることができる。
さらに、携帯電話機100では、回路基板1を備える筐体100aと、導体2bを備える筐体100bとを有し、筐体100bは、筐体100aに対して、摺動可能、開閉可能、回転可能、もしくは分離可能であることが好ましい。
給電部が配置されているグランドパターンの辺上に共振モードの電流が流れ、回路基板が搭載された第1筐体とは別の第2筐体が近傍に存在する場合には、当該第2筐体の導体にも高周波電流が励起され、当該第2筐体が動作するたびにアンテナの特性が大きく変動するという問題が生じる。さらに、上記第2筐体の導体に励起される高周波電流の分布によっては、不要な放射が増大し、アンテナの放射効率が劣化するという問題も起こる。
そこで、筐体100aは、回路基板1を備えることにより、筐体100aに流れる高周波電流の広がりを抑えることができ、筐体100bの導体2bに励起される高周波電流を抑制し、アンテナ3a・3bの放射効率の改善と、筐体100bの動作によるアンテナ特性の変化を軽減することができるという効果を奏する。
なお、筐体100bは、筐体100aに対して、摺動可能、開閉可能、回転可能、もしくは分離可能である。従って、筐体100aおよび筐体100bを備えた携帯電話100は、筐体100aおよび筐体100bの上記の動作によって種々の形態をとることができ、しかも、携帯電話100では、上記効果を併せて奏することができる。
さらに、携帯電話機100では、切り欠き部10が、グランドパターンおよび回路基板1に連通して形成されており、自機器に搭載される部品が、切り欠き部10に配設される構成である。
通常、電子機器の設計において、当該電子機器に使用される多数の部品類が回路基板1の近傍に実装される。
そこで、上記構成とすることにより、つまり、部品類(カメラレンズ30)を切り欠き部10に配設することにより、省スペース化を実現し、電子機器の小型化を図ることができる。
例えば、電子機器が、カメラ機能を備えた携帯電話である場合には、当該携帯電話はカメラレンズを実装する。そこで、そのカメラレンズを切り欠き部10に配設することにより、その分だけ携帯電話機100の筐体内部の省スペース化、携帯電話の小型化を実現することができる。
またカメラの代わりにプロジェクター、脈拍センサー、バーコードリーダー、プラズマクラスターイオン発生ユニット、マイク、スピーカ、イヤーレシーバ、キーボタン、ポインティングデバイス、フレキシブル基板といったデバイスも実装可能である。
〔従来技術との構成および効果上の差異〕
以下、従来技術に係る回路基板200(図22)と本発明に係る回路基板1との構成および効果上の差異を繰り返し述べておく。
図22に示すように、従来の回路基板200において、第2アンテナ205は、第1アンテナ203の高周波電流制御素子としての役割を担うものであるため、アンテナとしての機能はあくまで付加的なものである。しかも、第2アンテナ205は、その素子長さが第1アンテナ203の特性を考慮して決定されるため、素子の長さに自由度がない。つまり、回路基板200では、第2アンテナ205の周波数を自由に選択することができず、アンテナとしての機能を十分に期待できない。
加えて、第2アンテナ205には第1アンテナ203の高周波電流制御素子としての役割が要求されるため、その取付位置は、第1アンテナ203の取付位置に依存し、独立して任意の位置に決めることはできない。さらに、回路基板200では、切り欠き部202は突堤部201を形成するために設けられたものであるため、切り欠き部202の位置も自由に決めることはできない。つまり、回路基板200では、第2アンテナ205の取付位置、第2アンテナ205への給電位置、切り欠き部202の位置等が制限を受け、回路基板の設計自由度が大きく損なわれる。そして、回路基板200では、切り欠き部202は、突堤部201を形成するために設けられたものであって、第2アンテナ205に対して放射効率の低下を防ぐ目的で設けられたものではないため、第2アンテナ205の放射効率を改善するという効果は期待できない。
このように、回路基板200では、第2アンテナ205はアンテナとしての機能を十分に発揮することができず、しかも、第1アンテナ203および第2アンテナ205の放射効率が同時に改善されることはない。
これに対して、本発明に係る回路基板1では、携帯電話機100に搭載されるアンテナ3a・3bは、本来のアンテナとして十分な機能を発揮するものである。つまり、アンテナ3a・3bは、互いに独立して存在するものであって、一方が他方に対して付加動作周波数帯を自由に選択することができ、アンテナとしての機能を十分に期待できる。
なお、回路基板1では、切り欠き部10は、複数のアンテナ3a・3bへ給電する給電部それぞれから、その給電部が給電するアンテナの動作する周波数帯の4分の1波長以内の距離に設けられることが好ましい。とは言え、回路基板1では、アンテナ3a・3bはそれぞれ、回路基板1の任意の位置から給電され得るものであって、一方のアンテナが他方のアンテナの取付位置に依存することはなく、その位置は任意に決めることが可能である。
さらに、回路基板1では、アンテナ3a・3bの取付位置、アンテナ3a・3bへの給電位置、切り欠き部10等の位置は自由に決めることができるため、回路基板1の設計自由度が損なわれることはない。
また、回路基板1では、電流制御部12は、ある周波数帯の電流については、自身を通過させることなく切り欠き部10の周りを迂回させ、他の周波数帯の電流については、自身を通過させることにより切り欠き部10を跨ぐように電流経路を制御することができる。
それゆえ、回路基板1では、電流制御部12が自基板に流れる電流の経路を制御することにより、切り欠き部10の形状(言い換えると、見え方)をアンテナの動作周波数帯ごとに変化させることができる。つまり、回路基板1では、複数アンテナごとに切り欠き部10の見え方を最適化することができるため、各アンテナの放射効率を改善することができる。
これにより、回路基板1は、複数の周波数帯で動作する無線通信用のアンテナ、及び異なる周波数で動作する無線通信用の複数のアンテナ3a・3bの放射効率を改善することができる。
このように、従来技術に係る回路基板200と本発明に係る回路基板1との間には、構成上および効果上の明確な差異が認められる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。