JP5429585B2 - ガラス母材の製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ガラス微粒子堆積体を加熱して透明ガラス化するガラス母材の製造方法に関する。
OVD法、VAD法、MMD法(多バーナー多層付け法)等によって得られたガラス微粒子堆積体(多孔質ガラス母材)を加熱して透明ガラス化するためのガラス母材の製造方法及び製造装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に記載のガラス母材の製造方法は、SiClやGeCl4等のガラス原料ガスを火炎加水分解させてガラス微粒子を発生させ、これをガラスロッドに堆積させてガラス微粒子堆積体である多孔質ガラス母材を製造し、その後、多孔質ガラス母材を焼結して透明ガラス化するものである。
図7に示すように、特許文献1に記載のガラス母材の製造装置100は、炉心管101を有している。そして、ガラスロッド102にガラス微粒子を堆積させたガラス微粒子堆積体106が炉心管101の上部から内部に挿入されて、ガラスロッド102が上方で支持されガラス微粒子堆積体106が軸線を中心として吊り下げられる。
炉心管101の下端部にはガス導入管103が設けられており、熱処理に用いられる塩素ガス、ヘリウムガス等が炉心管101内部に供給される。炉心管101の上端部には、ガス排気管104が設けられており、炉心管101内部の排気を行う。また、炉心管101の外側にはヒータ105が設けられており、炉心管101内部に吊り下げられたガラス微粒子堆積体106を加熱して透明ガラス化する。なお、炉心管101の外側は炉体107で覆われて保護されており、炉体107には、炉心管101の加熱状態を監視できる監視窓108と、炉心管周辺温度を測定する放射温度計109が設けられている。
特開2006−151715号公報
前述したようなガラス微粒子堆積体を加熱する加熱炉では、石英製あるいは高純度カーボン製の炉心管を有する加熱炉を用いることが一般的である。この炉心管は、製造技術の進展に伴ってガラス微粒子堆積体が大型化しているため、炉心管の内径は280mmを超える傾向にある。
このような加熱炉では、ガラス微粒子堆積体の脱水処理や、屈折率調整物質の添加のために、塩素系、フッ素系のような腐食性ガスを使用する場合が多い。また、ガラス母材への金属不純物の混入を防ぐためには、支持棒として石英製のもの(ガラスロッド)が用いられる。
しかしながら、石英製の支持棒は、過度の温度差が生じると熱衝撃によって破損するおそれがある。例えば、炉心管径が280mmを超える場合には、炉心管内を加熱するヒータからの輻射熱が炉心管内の上方へ逃げやすく炉心管内の上方に位置する支持棒の部位が加熱されやすくなる。一方、炉心管から外部に露出している支持棒の部位では、空冷により冷却されて温度が低くなっている。このため、炉心管の内外の部分の温度差が大きくなって支持棒における熱衝撃が生じやすくなっており、熱衝撃によって支持棒が破損すると、ガラス微粒子堆積体が落下して炉心管が破損してしまう。その場合、炉心管の交換や、設備の長期停止が必要となり、製造コストが嵩み、製造性に悪影響を及ぼしてしまう。
そこで、本発明の目的は、ガラス微粒子堆積体を加熱する加熱炉において、支持棒が熱衝撃によって破損することを防止することができるガラス母材の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明に係るガラス母材の製造方法は、石英ガラスで形成された支持棒に接続されたガラス微粒子堆積体を280mmより太い内径の炉心管内で加熱して透明ガラス化するガラス母材の製造方法であって、前記支持棒の長手方向における100mmの間隔の任意の2点における最大温度差を、300℃以下にすることを特徴とする。
また、本発明に係るガラス母材の製造方法において、前記炉心管の上端近傍に位置する前記支持棒の部位を保温もしくは加熱することで、前記最大温度差を300℃以下にすることが好ましい。
本発明によれば、支持棒の長手方向における100mmの間隔の任意の2点における最大温度差を300℃以下にするため、支持棒の長手方向の温度勾配を緩やかに抑えることができ、熱衝撃による支持棒の破損を防止して、ガラス微粒子堆積体の落下による不都合を防止することができる。
以下、本発明に係るガラス母材の製造方法及び製造装置の実施形態の例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本実施形態のガラス母材の製造方法を実施可能なガラス母材の製造装置を示す概略構成図である。
本実施形態のガラス母材の製造方法及び製造装置において加熱されるガラス微粒子堆積体(多孔質ガラス母材)は、SiClやGeCl等のガラス原料ガスを火炎加水分解させて、SiOやGeOのガラス微粒子を生成し、これを出発ガラスロッド等に堆積させて形成したものである。
図1に示すように、本実施形態のガラス母材の製造装置10は、被加熱体であるガラス微粒子堆積体17の脱水及び焼結に用いられる炉心管11を有する加熱炉である。炉心管11は耐熱性、耐食性に優れたカーボンまたは石英で形成され、本体部12及び上蓋13の二つの部分からなり、これらが接合されている。本実施形態では、大型のガラス微粒子堆積体17を加熱することを考慮して、炉心管11の内径を280mmを超えるものとしている。なお、炉心管11の内径が280mm以下であっても構わないが、その場合は支持棒における熱衝撃が生じにくい。本発明においては、炉心管11の内径を280mm以上であっても熱衝撃による支持棒の破損を防止することができる。
上蓋13の上端には、ガラス微粒子堆積体17の端部から延びている支持棒であるガラスロッド18を回転可能に貫通する孔を有し、ガラスロッド18の上端を吊り下げ支持装置(図示省略)に連結させている。ガラスロッド18は、ガラス微粒子を堆積させてガラス微粒子堆積体17を形成するダミーロッド18aと、連結部18bを介してダミーロッド18aを支持する支持ロッド18cを有している。なお、連結部18bも石英ガラスで形成されており、両側からダミーロッド18a及び支持ロッド18cが嵌合して接続している。上蓋13の前記孔の付近には、吸引装置(図示省略)を配置し、孔から漏れるガスは、この吸引装置で吸引排除する。炉心管11の本体部12の周囲には複数段のヒータ14が設けられており、炉心管11内に収納されたガラス微粒子堆積体17を加熱する。なお、ヒータ14には、抵抗発熱型のヒータや誘導発熱型のヒータがある。
ヒータ14の外側には断熱材(図示省略)が設けられており、加熱部全体を炉体19で覆って保護している。炉心管11の下部にはガス導入部15が設けられるとともに上部にはガス排気部16が設けられており、熱処理に用いられる塩素ガス、ヘリウムガス等が導入、排出される。また、炉体19には炉心管11の加熱状態を監視するための監視窓20、炉心管周辺温度を測定する放射温度計21を設けることができる。
放射温度計21によって測定された炉心管周辺温度が所定の値となるようにヒータ14に通電する電流または電圧を調整し、炉心管周辺温度を所定の値とする。
前述したような、ガラスロッド18が上蓋13を貫通して炉心管11の外部に露出する構造では、通常、ガラスロッド18の長手方向の温度勾配は、上蓋13を挟む炉心管11内部及び炉心管11外部の2点において最も急峻になると考えられる。あるいは、上蓋13の構造によっては、上蓋13内で最も急峻となる場合もある。この急峻な温度勾配によって熱衝撃が発生し、ガラスロッド18を破損しないように、ガラスロッド18の長手方向の温度勾配を調整する。
ガラスロッド18の温度勾配の調整方法としては、ガラスロッド18が急冷される箇所を加熱ガスで加熱したり、ヒータを用いて積極的に加熱する方法がある。例えば、図1に示すように、上蓋13から炉外に出たガラスロッド18の部位を加熱する加熱手段30を設けると良い。加熱手段30は、例えばヒータ31と送風手段32とを有しており、送風手段32によって送られる空気をヒータ31で加熱し、ガラスロッド18に吹き付けて加熱することができる。あるいは、上蓋13の上方近傍にヒータ31のみを設け、ヒータ31でガラスロッド18を加熱するようにすることもできる。
他のガラスロッド18の温度勾配の調整方法としては、ガラスロッド18が急冷される箇所を加熱ガスで保温するようにしても良い。例えば、図2に示すように、上蓋13aに、ガス供給部16aまたはガス排出部16bを有する複数段の空間を設け、ガス供給部16aから供給する不活性ガスを加熱する加熱手段30aを設けても良い。ガス供給部16aから不活性ガスを供給することにより、上蓋13aとガラスロッド18のクリアランス部の隙間をシールすることができるとともに、加熱手段30aにより例えば不活性ガスを50度以上に加熱した状態とすることで、上蓋13a内に位置するガラスロッド18を保温することができる。加熱手段30aによる不活性ガスの加熱方法としては、ガス供給部16aの配管をテープヒータ31aにより加熱(保温)することを例示できる。
また、図1に示した加熱手段30と、図2に示した加熱手段30aは、どちらか一方を単独で設置しても良いし、両方設置しても良い。
また、他のガラスロッド18の温度勾配の調整方法としては、図2に示した上蓋13aの構成を用いて、炉心管11の本体部12からの輻射熱により、上蓋13a内に供給した不活性ガスを加熱して、上蓋13a内のガラスロッド18を保温することもできる。特に、図3に示すように、上蓋13a内に仕切られた複数段の空間内に、それぞれ周方向のフィン16cを設けておくことで、上蓋13a内に供給した不活性ガスを一時的に滞留させて下方からの輻射熱により加熱することができる。
次に、ガラス母材の製造装置10を使用して、ガラスロッド18の温度勾配に関する検討結果を示す。
外径がφ250〜300mmで、外径が均一な部分の長さが800〜1200mmのガラス微粒子堆積体を製造し、このガラス微粒子堆積体を炉心管内径がφ350mmの加熱炉で焼結により透明ガラス化して、外径がφ110〜130mm、外径が均一な部分の長さが700〜1000mmのガラス母材を製造する。この透明ガラス化の際に、支持棒の長手方向における温度勾配をヒータやクーラを用いて種々に設定し、長手方向100mm間隔で温度測定して、温度差が最も大きい箇所を最大温度差とする。それぞれの条件について100本のガラスロッドを用いて測定し、ガラスロッドの割れる確率を算出する。
なお、割れる確率(%)は、(割れた本数/100)×100で算出する。算出結果を次の表1に示す。また、これをグラフ化したものを図4に示す。
Figure 0005429585
表1及び図4に示すように、最大温度差が10〜300℃の場合、支持棒が割れる確率は低く300℃で2%であるが、300℃を超えると320℃で18%に急増する。このことから、支持棒の長手方向100mm間隔の任意の2点における温度差を300℃以下とすることで、支持棒の割れを効果的に防止することができることがわかる。
次いで、炉心管内径に関する検討結果を示す。
外径がφ210mm、外径が均一な部分の長さが800〜1200mmのガラス微粒子堆積体を製造する。このガラス微粒子堆積体を、加熱炉の炉心管内径を変えて透明ガラス化し、外径がφ90〜95mm、外径が均一な部分の長さが700〜1000mmのガラス母材を製造する。この透明ガラス化の際に、支持棒を長手方向100mm間隔で温度測定し、温度差が最も大きい箇所を表2の最大温度差とする。それぞれの条件において、上記同様に(割れた本数/100)×100で支持棒の割れる確率を算出する。算出結果を次の表2に示す。また、これをグラフ化したものを図5に示す。
Figure 0005429585
表2及び図5に示すように、炉心管内径が280mmを超えると、炉心管を加熱するヒータからの輻射熱が大きくなる為、支持棒における最大温度差も大きくなり、支持棒が割れる確率は急増する。このことから、特に炉心管内径が280mmを超える場合において、支持棒の長手方向100mm間隔の任意の2点における温度差を300℃以下とすることにより、支持棒の割れをより効果的に防止することができることがわかる。
以上説明したガラス母材の製造方法及び製造装置10によれば、ガラスロッド18の長手方向における100mmの間隔の任意の2点において温度差が300℃以下となるようにしたため、ガラスロッド18の長手方向の温度勾配を比較的緩やかに抑えることができ、熱衝撃によるガラスロッド18の破損を防止することができる。したがって、内径が280mmを超える炉心管11を使用し、炉心管11内を加熱するヒータ14からの輻射熱により炉心管11内の上方に位置するガラスロッドの部位が加熱されやすくなる場合においても、ガラスロッド18の熱衝撃を防いでガラス微粒子堆積体17の落下を防止することができ、炉心管11の交換作業や、製造装置10の長期停止に迫られることを未然に防止することができ、製造コストの低減及び製造性の改善を図ることができる。
また、加熱手段30により炉心管11の外側にあるガラスロッド18の部位を加熱するため、効率良くガラスロッド18の温度勾配を小さくすることができる。
なお、図6に示すように、図1に示した製造装置10の構成に加えて、ガラスロッド18において間隔Lが100mm離れた2点の温度を測定する温度計22a,22bを設け、この温度計22a,22bからの測定信号に基づいて、2点の温度差が300℃以下となるように加熱手段30であるヒータ31や送風手段32を制御する制御部40を設けても良い。
図6に示す構成により、2点の温度差を常に300℃以下に抑えることができる。なお、温度計22a,22bによって温度測定を行う2点の間隔を100mmに保持した状態で、2点の位置を移動させて温度測定を行い、温度差が最も大きい位置を探すようにすることもできる。
本発明のガラス母材の製造方法を実施可能なガラス母材の製造装置を示す概略構成図である。 本発明のガラス母材の製造方法を実施可能なガラス母材の製造装置の別の実施形態例を示す断面図である。 図2に示した上蓋の拡大図である。 ガラスロッドの温度勾配に関する検討結果を示すグラフである。 炉心管内径に関する検討結果を示すグラフである。 本発明のガラス母材の製造方法を実施可能なガラス母材の製造装置の別の実施形態例を示す断面図である。 従来のガラス母材の製造装置の例を示す断面図である。
符号の説明
10 ガラス母材の製造装置
11 炉心管
17 ガラス微粒子堆積体
18 ガラスロッド(支持棒)
30,30a 加熱手段

Claims (2)

  1. 石英ガラスで形成された支持棒に接続されたガラス微粒子堆積体を280mmより太い内径の炉心管内で加熱して透明ガラス化するガラス母材の製造方法であって、
    前記支持棒の長手方向における100mmの間隔の任意の2点における最大温度差を、300℃以下にすることを特徴とするガラス母材の製造方法。
  2. 請求項1に記載のガラス母材の製造方法であって、
    前記炉心管の上端近傍に位置する前記支持棒の部位を保温もしくは加熱することで、前記最大温度差を300℃以下にすることを特徴とするガラス母材の製造方法。
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