JP5424910B2 - 加飾部品の製造方法、部品の加飾方法 - Google Patents

加飾部品の製造方法、部品の加飾方法 Download PDF

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Description

本発明は、ワークの表面上に、着色層を塗工する加飾部品の製造方法、部品の加飾方法に関するものである。
自動車の内装部品などでは、デザイン性や品質を高めるために樹脂成形体(ワーク)の表面に装飾を加えるようにした加飾部品(例えば、コンソールボックス、インストルメントパネル、アームレストなど)が多く実用化されている。このような加飾部品に装飾を加える加飾方法としては、水圧転写が一般的に用いられている(例えば特許文献1参照)。水圧転写とは、水面上に特殊フィルムを浮かべ、そのフィルムに印刷された所定の絵柄(木目模様や幾何学模様などの絵柄)を水圧によって樹脂成形体の表面に転写する技術である。この技術によれば、三次元曲面への印刷を行うことができる。
ところが、水圧転写を行う場合、樹脂成形体への絵柄の転写時に、絵柄が伸びたり歪んだりすることが多い。この結果、絵柄を正確に付加することができず、絵柄のバラツキが生じてしまうため、製品の歩留まりが悪化して製造コストが嵩んでしまう。従って、水圧転写とは異なる手法で樹脂成形体の表面上に絵柄を付加して装飾する新たな技術の開発が望まれている。
そこで、樹脂成形体の表面上に設定された被加飾領域に複数の着色層を塗工して形成した後、レーザー照射によって着色層を選択的に除去して異なる色の着色層を露出させることにより、絵柄を形成して装飾を加える技術が考えられている。このようにすると、水圧転写の際に生じていた絵柄の伸びや歪みを防止することができ、かつ、複雑な絵柄を正確に描画することができると考えられる。
特開昭54−33115号公報
しかしながら、複数の着色層を形成する上記の手法では、着色層の形成に多種の塗料やインクを用いる必要がある。その結果、加飾部品の製造コストが嵩んだり、加飾部品の製造効率が低下したりするという問題がある。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造コストを抑えつつ、加飾部品の製造効率を向上させることができる加飾部品の製造方法を提供することにある。また、別の目的は、製造コストを抑えつつ、部品の製造効率を向上させることができる部品の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ワークの表面上に設定された被加飾領域に着色層を塗工して形成する塗工工程と、前記塗工工程後に前記着色層を保護するクリアコート層を形成するクリアコート層形成工程とを経て、加飾部品を製造する方法であって、前記クリアコート層の厚さは、前記着色層の厚さよりも大きくなるように設定され、前記クリアコート層形成工程後に、レーザー照射を行って前記着色層を加工せずに前記クリアコート層のみを選択的に加工することにより、複数のレーザー被加工部を形成するレーザー照射工程を行うことを特徴とする加飾部品の製造方法をその要旨とする。
請求項1に記載の発明によれば、レーザー照射工程においてクリアコート層に複数のレーザー被加工部を形成することにより、クリアコート層を介して着色層を視認したときに、レーザー被加工部が存在する部分と存在しない部分とで着色層の見え方が異なるようになる。従って、塗工工程において着色層を1層のみ形成した場合であっても、着色層が場所によって異なって見える視覚的効果を期待することができる。ゆえに、多種の塗料やインクを用いなくても、意匠的な付加価値を与えることができるため、加飾部品の製造コストを抑えることができる。また、塗工工程において着色層を複数層形成しなくても済むため、加飾部品の製造効率が向上する。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記被加飾領域は、前記レーザー照射が行われる複数のレーザー照射領域からなり、前記レーザー照射工程では、前記複数のレーザー照射領域の中から選択された特定のレーザー照射領域と、前記特定のレーザー照射領域とは別のレーザー照射領域とで異なる形状のレーザー被加工部を形成することにより、前記クリアコート層を介して視認可能な前記着色層の明暗及び色調の少なくとも一方を、前記特定のレーザー照射領域と前記別のレーザー照射領域とで異ならせることをその要旨とする。
請求項2に記載の発明によれば、レーザー照射工程において特定のレーザー照射領域と別のレーザー照射領域とで異なる形状のレーザー被加工部を形成することにより、クリアコート層を介して着色層を視認したときに、レーザー照射領域の種類に応じて着色層の見え方が異なるようになる。従って、着色層が場所によって異なって見える視覚的効果をよりいっそう期待することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記レーザー照射工程では、前記特定のレーザー照射領域における前記レーザー被加工部の密度と、前記別のレーザー照射領域における前記レーザー被加工部の密度とを、互いに異なる密度にすることにより、前記着色層の明暗及び色調の少なくとも一方を、前記特定のレーザー照射領域と前記別のレーザー照射領域とで異ならせることをその要旨とする。
請求項3に記載の発明によれば、特定のレーザー照射領域におけるレーザー被加工部の密度と、別のレーザー照射領域におけるレーザー被加工部の密度とを、互いに異なる密度にしている。この場合、レーザー被加工部の密度を高くすれば着色層が暗い色調となる一方、レーザー被加工部の密度を低くすれば着色層が明るい色調となるため、着色層の明暗及び色調を高精度に変化させやすくなる。
請求項4に記載の発明は、請求項2において、前記レーザー照射工程では、前記特定のレーザー照射領域における前記レーザー照射時の出力と、前記別のレーザー照射領域における前記レーザー照射時の出力とを、互いに異なる出力にすることにより、前記着色層の明暗及び色調の少なくとも一方を、前記特定のレーザー照射領域と前記別のレーザー照射領域とで異ならせることをその要旨とする。
請求項4に記載の発明によれば、特定のレーザー照射領域におけるレーザー照射時の出力と、別のレーザー照射領域におけるレーザー照射時の出力とを、互いに異なる出力にすることにより、特定のレーザー照射領域におけるレーザー被加工部の深さと、別のレーザー照射領域におけるレーザー被加工部の深さとが、互いに異なる深さとなる。この場合、レーザー照射工程において、特定のレーザー照射領域におけるレーザー被加工部の密度と、別のレーザー照射領域におけるレーザー被加工部の密度とを、互いに異なる密度にしなくても、レーザー照射領域ごとに異なる形状のレーザー被加工部を形成できるため、着色層の明暗及び色調を容易に変化させることができる。
請求項5に記載の発明は、ワークの表面上に設定された被加飾領域に着色層を塗工して形成する塗工工程と、前記塗工工程後に前記着色層を保護するクリアコート層を形成するクリアコート層形成工程とを経て製造された部品を加飾する方法であって、前記クリアコート層の厚さは、前記着色層の厚さよりも大きくなるように設定され、前記クリアコート層形成工程後に、レーザー照射を行って前記着色層を加工せずに前記クリアコート層のみを選択的に加工することにより、複数のレーザー被加工部を形成するレーザー照射工程を行うことを特徴とする部品の加飾方法をその要旨とする。
請求項5に記載の発明によれば、レーザー照射工程においてクリアコート層に複数のレーザー被加工部を形成することにより、クリアコート層を介して着色層を視認したときに、レーザー被加工部が存在する部分と存在しない部分とで着色層の見え方が異なるようになる。従って、塗工工程において着色層を1層のみ形成した場合であっても、着色層が場所によって異なって見える視覚的効果を期待することができる。ゆえに、多種の塗料やインクを用いなくても、意匠的な付加価値を与えることができるため、部品の製造コストを抑えることができる。また、塗工工程において着色層を複数層形成しなくても済むため、部品の製造効率が向上する。
以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によると、製造コストを抑えつつ、加飾部品の製造効率を向上させることができる。
本実施形態の自動車用加飾部品を示す斜視図。 図1のA−A線断面図。 表面加飾システムを示す概略構成図。 レーザー照射領域を示す平面図。 他の実施形態における自動車用加飾部品を示す断面図。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1,図2に示されるように、自動車用加飾部品1は、立体形状の樹脂成形体2(ワーク)を備えている。本実施形態の自動車用加飾部品1は、自動車のドアに設けられたアームレストの上面を覆う装飾パネルである。また、樹脂成形体2は、凸状湾曲面であるワーク表面3aと、ワーク表面3aの反対側に位置する凹状湾曲面であるワーク裏面3bとを有している。さらに、樹脂成形体2には、パワーウィンドウスイッチ(図示略)を取り付けるためのスイッチ取付孔6と、ドアロックスイッチ(図示略)を取り付けるためのスイッチ取付孔7とが設けられている。これらスイッチ取付孔6,7は、ワーク表面3a及びワーク裏面3bを貫通している。
そして、樹脂成形体2においてスイッチ取付孔6,7を除く表面(ワーク表面3a)上には被加飾領域4が設定され、被加飾領域4には着色層10が形成されている。なお、本実施形態の着色層10はうす茶色の層である。また、被加飾領域4は、後述するレーザー照射が行われる複数のレーザー照射領域5(図4参照)からなっている。
また図2に示されるように、樹脂成形体2のワーク表面3aの最上層には、着色層10を保護するためのクリアコート層17が形成されている。クリアコート層17の厚さは、着色層10の厚さよりも大きくなるように設定されている。本実施形態では、着色層10の厚さが10μm以上100μm以下に設定され、クリアコート層17の厚さが20μm以上120μm以下に設定されている。そして、着色層10を除去せずにクリアコート層17を選択的に除去して複数の凹部15a,15b(レーザー被加工部)を形成することにより、木目模様の基絵柄を模した絵柄16が形成される。
次に、自動車用加飾部品1を製造するための表面加飾システム20について説明する。
図3に示されるように、表面加飾システム20は、塗装装置21、レーザー照射装置22及びワーク変位ロボット23を備えている。塗装装置21は、ロボットアーム26と、ロボットアーム26の先端に装着される塗装機27とを備え、ロボットアーム26を駆動することにより、塗装機27から噴霧される塗料Pの吹付方向や吹付位置を変更するようになっている。また、塗装装置21は、図示しないカートリッジ交換装置を備え、塗装機27に装着する塗料カートリッジ28を着色層10及びクリアコート層17に対応して交換可能に構成されている。そして、塗装装置21は、塗料カートリッジ28を交換しながら塗料Pを噴霧することにより、樹脂成形体2のワーク表面3aに着色層10及びクリアコート層17を塗装する。
また、レーザー照射装置22は、レーザーLを発生させるレーザー発生部31と、レーザーLを偏向させるレーザー偏向部32と、レーザー発生部31及びレーザー偏向部32を制御するレーザー制御部33とを備えている。レーザー偏向部32は、レンズ35と反射ミラー36とを複合させてなる光学系であり、これらレンズ35及び反射ミラー36の位置を変更することにより、レーザーLの照射位置や焦点位置を調整するようになっている。レーザー制御部33は、レーザーLの照射時間変調、照射強度変調、照射面積変調などの制御を行う。
図3に示されるように、ワーク変位ロボット23は、ロボットアーム29と、ロボットアーム29の先端に設けられたワーク支持部30とを備えている。ワーク支持部30は、ワーク表面3aに着色層10及びクリアコート層17が塗装された樹脂成形体2を支持するようになっている。そして、ワーク変位ロボット23は、ロボットアーム29を駆動して樹脂成形体2の位置及び角度を変更することにより、樹脂成形体2のワーク表面3aに対するレーザーLの照射位置や照射角度を変更するようになっている。
次に、表面加飾システム20の電気的構成について説明する。
図3に示されるように、表面加飾システム20は、システム全体を統括的に制御する制御装置24を備えている。制御装置24は、CPU40、メモリ41及び入出力ポート42等からなる周知のコンピュータにより構成されている。CPU40は、塗装装置21、レーザー照射装置22及びワーク変位ロボット23に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。
また、CPU40は、絵柄16の色分解処理を行う機能を有している。詳述すると、CPU40は、色分解処理において木目模様の基絵柄を複数種類の色に分解することにより、複数の単色基絵柄データを生成するようになっている。そして、CPU40は、生成した各単色基絵柄データをメモリ41に記憶するようになっている。なお本実施形態では、木目模様の基絵柄がこげ茶色、茶色、うす茶色の3色に分解され、各色の単色基絵柄データがメモリ41にあらかじめ記憶されている。また、メモリ41には、塗装装置21の塗装条件(塗装時間、塗料Pの噴霧量、着色層10及びクリアコート層17の厚さなど)を示すデータや、レーザー照射装置22のレーザー照射条件(レーザーLの照射時間、レーザーLの照射強度、レーザーLのスポット径など)を示すデータがあらかじめ記憶されている。
次に、自動車用加飾部品1の製造方法を説明する。
まず、樹脂材料(例えばABS樹脂)を用いて所定の立体形状に成形した樹脂成形体2を準備する。なお、樹脂成形体2は、作業者によって固定テーブル51(図3参照)にセットされる。
次に、塗工工程を行い、樹脂成形体2の被加飾領域4に着色層10を塗工して形成する。具体的に言うと、CPU40は、メモリ41に記憶されているうす茶色の単色基絵柄データを読み出し、読み出した単色基絵柄データに基づいて駆動信号を生成し、生成した駆動信号を塗装装置21に出力する。塗装装置21は、CPU40から出力された駆動信号に基づいて、塗装機27による着色層10の塗装を開始させる。具体的に言うと、樹脂成形体2のワーク表面3a上に、塗装機27を用いて塗料Pを塗装することでうす茶色の着色層10を積層形成する。なお、着色層10は、略均一の厚さに設定された模様のないベタパターンの層(ベタ層)であり、位置合わせをすることなく積層形成される。
塗工工程後、クリアコート層形成工程を行い、樹脂成形体2のワーク表面3aに対して着色層10を保護するクリアコート層17を形成する。ここでは、塗装機27から噴霧する塗料Pをうす茶色の塗料から透明なクリア塗料に変更して、樹脂成形体2のワーク表面3aにクリア塗料を塗装することにより、クリアコート層17が形成される。
続く画像データ作成工程において、作業者は、従来周知の画像作成ソフトを用いて、絵柄16を示す画像データを作成する。なお、画像データは、特定の描画領域と、特定の描画領域とは別の描画領域とを含む複数の描画領域からなっている。また、各描画領域には、複数の描画ドット(レーザー照射部)が散点的(本実施形態では格子状)に形成されている。
続く画像データ変換工程において、CPU40は、作成した画像データをCADデータに変換する。続くレーザー照射データ変換工程において、CPU40は、CADデータに変換された画像データを、レーザー照射を行うためのレーザー照射データに変換する。次に、データ記憶工程において、CPU40は、変換したレーザー照射データをメモリ41に記憶する。さらに、パラメータ設定工程において、CPU40は、レーザー照射に用いられるレーザー照射パラメータ(レーザーLの照射位置、焦点位置、照射角度、照射面積、照射時間、照射強度など)を設定する。
その後、レーザー照射工程を行い、CPU40は、メモリ41に記憶されているレーザー照射データに基づいてレーザー照射を行うことにより、樹脂成形体2の被加飾領域4に絵柄16を形成する。具体的に言うと、CPU40は、メモリ41に記憶されているレーザー照射データを読み出し、読み出したレーザー照射データに基づいて駆動信号を生成し、生成した駆動信号をレーザー照射装置22に出力する。レーザー照射装置22は、CPU40から出力された駆動信号に基づいて、樹脂成形体2のワーク表面3aに形成されたクリアコート層17にレーザーLを照射する(図3参照)。なお、レーザー照射装置22のレーザー制御部33は、レーザー発生部31からレーザーLを照射させ、基絵柄のパターンに応じてレーザー偏向部32を制御する。この制御により、レーザーLの照射位置や焦点位置を変更してクリアコート層17を昇華または脆化させることで、着色層10を除去せずに、絵柄16のパターンに応じたクリアコート層17のみを選択的にかつ異なる深さで除去する。具体的に言うと、基絵柄の木目パターンにおいて最も暗い部分に対応する箇所では、クリアコート層17を剥離することによって凹部15aを複数形成する。木目パターンにおいてうす暗い部分に対応する箇所では、クリアコート層17を剥離することにより、凹部15aよりも深さが浅い凹部15bを複数形成する。さらに、木目パターンにおいて最も明るい部分に対応する箇所では、クリアコート層17をそのまま残すようにする。これら凹部15a,15bによって、被加飾領域4に木目模様の絵柄16が描かれる。なお、凹部15a,15bの深さは、クリアコート層17の厚さよりも小さいため、凹部15a,15bが着色層10に達することはない。そして、複数の凹部15a,15bによって、木目模様において木の導管を示す部分が構成される。
またレーザー照射工程において、CPU40は、メモリ41に記憶されているレーザー照射データに基づいて、レーザー照射を複数のレーザー照射領域5(図4参照)について行う。具体的に言うと、CPU40は、メモリ41に記憶されているレーザー照射データを読み出し、読み出したレーザー照射データに基づいて駆動信号を生成し、生成した駆動信号をワーク変位ロボット23に出力する。ワーク変位ロボット23は、CPU40から出力された駆動信号に基づき、ロボットアーム29を駆動してワーク支持部30に支持されたワーク(樹脂成形体2)の位置及び角度を変更することにより、樹脂成形体2の被加飾領域4に対するレーザーLの照射位置や照射角度を変更する。
詳述すると、ワーク変位ロボット23は、まず樹脂成形体2の位置及び角度を変更することにより、レーザーLの照射位置及び照射角度を、各レーザー照射領域5の中から選択された特定のレーザー照射領域5a(図4参照)に合わせるようにする。次に、レーザー照射装置22は、レーザー照射領域5aに形成されたクリアコート層17にレーザーLを照射することにより、画像データの特定の描画領域に基づいてレーザー照射領域5aにドット状の凹部15aを複数形成する。
レーザー照射領域5aに対する凹部15aの形成が終了すると、ワーク変位ロボット23は、樹脂成形体2の位置及び角度を変更することにより、レーザーLの照射位置及び照射角度を、レーザー照射領域5aとは別のレーザー照射領域5b(図4参照)に合わせるようにする。次に、レーザー照射装置22は、レーザー照射領域5bに形成されたクリアコート層17にレーザーLを照射することにより、画像データの別の描画領域に基づいてレーザー照射領域5bにドット状の凹部15bを複数形成する。
なお、本実施形態のレーザー照射工程では、特定のレーザー照射領域5aと別のレーザー照射領域5bとで異なる形状の凹部15a,15bを形成する。具体的に言うと、特定のレーザー照射領域5aにおけるレーザー照射時の出力と、別のレーザー照射領域5bにおけるレーザー照射時の出力とを、互いに異なる出力にすることにより、異なる形状の凹部15a,15bを形成する。本実施形態では、別のレーザー照射領域5bに凹部15bを形成する場合に、レーザー照射領域5bにおけるレーザー照射時の出力を、特定のレーザー照射領域5aにおけるレーザー照射時の出力よりも低く設定することにより、凹部15bの深さを凹部15aの深さよりも浅くする。その結果、クリアコート層17を介して視認可能な着色層10の明暗及び色調が、特定のレーザー照射領域5aと別のレーザー照射領域5bとで異なるようになる。本実施形態では、レーザー照射領域5bにおいてクリアコート層17を介して視認される着色層10が茶色となり、レーザー照射領域5aにおいてクリアコート層17を介して視認される着色層10がこげ茶色となる。また、レーザー照射領域5bにおいてクリアコート層17を介して視認される着色層10の濃度が、レーザー照射領域5aにおいてクリアコート層17を介して視認される着色層10の濃度よりも薄くなり、絵柄16となる。なお、別のレーザー照射領域5bに対するレーザー照射時におけるレーザーLのパルス幅を、特定のレーザー照射領域5aに対するレーザー照射時におけるレーザーLのパルス幅よりも長く設定することにより、凹部15bの深さを凹部15aの深さよりも浅くしてもよい。即ち、レーザーLのパルス幅が短くなるほど、レーザーLのエネルギーが高密度のエネルギーとなるため、凹部の深さが深くなる。また、レーザーLの照射間隔を一定にした状態で、レーザー照射装置22の移動速度を速くすること(例えば、レーザー偏向部32によるレンズ35及び反射ミラー36の位置を変更する速度を速くすること)により、凹部15bの深さを凹部15aの深さよりも浅くしてもよい。以上の工程を経て自動車用加飾部品1が製造される。
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の自動車用加飾部品1の製造方法では、レーザー照射工程においてクリアコート層17に複数の凹部15a,15bを形成することにより、凹部15a,15bを通過する光の向きが変化するため、クリアコート層17を介して視認される着色層10の明暗及び色調が変化する。即ち、クリアコート層17は、光を屈折、回折、干渉させる分光器としての機能を有するようになる。従って、塗工工程において着色層10を1層のみ形成した本実施形態の場合であっても、着色層10の明暗及び色調が変化して見える視覚的効果を期待することができる。ゆえに、多種の塗料やインクを用いなくても、意匠的な付加価値を与えることができるため、自動車用加飾部品1の製造コストを抑えることができる。また、塗工工程において着色層10を複数層形成しなくても済むため、自動車用加飾部品1の製造効率が向上する。
なお、従来の水圧転写では、基絵柄の形成をグラビア印刷で行うため、基絵柄の変更時に製版の設計変更等が必要となり手間がかかる。これに対して、本実施形態において基絵柄を変更する場合、メモリ41に記憶されている画像データや、レーザー照射パラメータを変更するだけでよいため、従来の水圧転写の場合と比較して、作業者の負担を低減することができる。
(2)本実施形態の場合、塗工工程にて形成される着色層10は模様のないベタ層であるので、位置合わせをする必要がなく着色層10を容易に形成することができる。また、レーザー照射工程において、レーザー照射を行ってクリアコート層17を選択的に剥離することにより、深さが異なる凹部15a,15bが形成される。その結果、クリアコート層17を介して凹部15a,15bの形成領域を視認した際に、その形成領域が濃い色に見えるようになる。即ち、絵柄16における木目に対応した凹凸が形成されるため、実物の天然木と同様の立体的な絵柄16を描画することができる。しかも、絵柄16を、従来存在しなかった独特の風合いとすることができる。また、レーザー照射は、細かいエリアを正確に加工することができるため、解像度の高い鮮明な絵柄16を描くことができる。さらに、色分解処理を行って生成した単色基絵柄データに基づいて、塗装装置21及びレーザー照射装置22が制御されているので、複数の自動車用加飾部品1に対して均一な品質の絵柄16を正確に描くことができる。
(3)本実施形態の自動車用加飾部品1では、着色層10がクリアコート層17によって完全に保護され、しかも、クリアコート層17に凹部15a,15bを形成したとしても、着色層10が露出することはないため、自動車用加飾部品1の外観品質を長期間にわたって保つことができる。
なお、本実施形態を以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、レーザー照射領域5bに形成される凹部15bの深さを、特定のレーザー照射領域5aに形成される凹部15aの深さよりも浅くすることにより、レーザー照射領域5bにおいてクリアコート層17を介して視認される着色層10の濃度を、レーザー照射領域5aにおいてクリアコート層17を介して視認される着色層10の濃度よりも薄くしていた。
しかし、上記実施形態とは異なる方法を用いて、レーザー照射領域5bにおいてクリアコート層17を介して視認される着色層10の濃度を、レーザー照射領域5aにおいてクリアコート層17を介して視認される着色層10の濃度よりも薄くしてもよい。例えば、レーザー照射領域5bにおける凹部15bの密度をレーザー照射領域5aにおける凹部15aの密度よりも低くすることにより、レーザー照射領域5bにおいてクリアコート層17を介して視認される着色層10の濃度を、レーザー照射領域5aにおいてクリアコート層17を介して視認される着色層10の濃度よりも薄くしてもよい。なお、レーザー照射領域5bにおける凹部15bの密度をレーザー照射領域5aにおける凹部15aの密度よりも低くする方法としては、レーザー偏向部32によるレンズ35及び反射ミラー36の位置を変更する速度を一定にした状態で、レーザーLの照射間隔(レーザーLのパルス周期)を長くすることや、レーザーLの照射間隔を一定にした状態で、レーザー照射装置22の移動速度を速くすることなどが挙げられる。この場合、レーザー照射領域5bに形成される凹部15bの数が、レーザー照射領域5aに形成される凹部15aの数よりも少なくなる。
・上記実施形態では、凹部15a,15bの深さのみを調節することにより、クリアコート層17を介して視認される着色層10の明暗及び色調を異ならせていた。しかし、図5に示されるように、凹部15a,15bの深さだけでなく、凹部15a,15bの底面15cに対する内壁面15dの角度を調節することによっても、クリアコート層17を介して視認される着色層10の明暗及び色調を異ならせてもよい。即ち、内壁面15dは傾斜面であってもよい。なお、内壁面15dの角度を調節する方法としては、レーザー偏向部32によるレンズ35及び反射ミラー36の位置を変更する速度を一定にした状態で、レーザーLの出力を徐々に低くすることや、レーザーLの照射角度を変更することなどが挙げられる。
・上記実施形態のレーザー照射工程では、レーザー照射装置22が、特定のレーザー照射領域5a、別のレーザー照射領域5bの順番でレーザー照射を行っていたが、レーザー照射の順番を変更してもよい。また、レーザー照射工程では、レーザー照射装置22がレーザー照射を1箇所ずつ行っていたが、例えばレーザー偏向部32を複数設けることにより、レーザー照射を複数箇所で同時に行うようにしてもよい。このようにすれば、レーザー照射を迅速に行うことができ、自動車用加飾部品1を短時間で製造することができる。
・上記実施形態の自動車用加飾部品1は、うす茶色の着色層10と深さが異なる2種類の凹部15a,15bとで絵柄16を表現するものであったが、着色層10の色や凹部15a,15bの種類は、基絵柄に応じて適宜変更することができる。なお、着色層10としては、ソリッド塗料を塗工して形成されたものや、メタリック調の光沢を有する顔料(メタリック顔料やパール顔料など)を含ませた塗料を塗工して形成されたものなどを挙げることができる。また、基絵柄としては、木目模様の絵柄以外に、炭素繊維織物を示す模様の絵柄や、ヘアライン加工が施されたアルミパネルを示す模様の絵柄などを挙げることができる。
・上記実施形態のレーザー被加工部はドット状の凹部15a,15bであったが、木目模様において木の導管を示す溝部をレーザー被加工部として用いてもよい。なお、レーザー被加工部は凹部に限られる訳ではなく、レーザー照射を行った結果、クリアコート層17において状態が変化した部分(例えば、焦げて変色した部分や、表面粗さが異なる部分など)をレーザー被加工部としてもよい。
・上記実施形態では、被加飾領域4を構成する複数のレーザー照射領域5が、平面視正方形状をなし、互いに同じ面積を有していた。しかし、レーザー照射領域5の形状及び面積を適宜変更してもよい。また、被加飾領域4の全面をレーザー照射領域5にするのではなく、被加飾領域4の一部を意図的にレーザー非照射領域として残しておいてもよい。
・上記実施形態は、自動車用加飾部品1をドアのアームレストに具体化するものであったが、これ以外に、コンソールボックス、インストルメントパネルなどの部品に具体化してもよい。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)請求項2において、前記レーザー被加工部は凹部であり、前記レーザー照射工程では、前記凹部の深さ、及び、前記凹部の底面に対する内壁面の角度を、前記特定のレーザー照射領域と前記別のレーザー照射領域とで異ならせることにより、前記着色層の明暗及び色調の少なくとも一方を、前記特定のレーザー照射領域と前記別のレーザー照射領域とで異ならせることを特徴とする加飾部品の製造方法。
(2)自動車用部品素材の表面上に設定された被加飾領域に着色層を塗工して形成する塗工工程と、前記塗工工程後に前記着色層を保護するクリアコート層を形成するクリアコート層形成工程とを経て、自動車用加飾部品を製造する方法であって、前記クリアコート層の厚さは、前記着色層の厚さよりも大きくなるように設定され、前記クリアコート層形成工程後に、レーザー照射を行って前記着色層を加工せずに前記クリアコート層のみを選択的に除去することにより、複数のレーザー被加工部を形成するレーザー照射工程を行うことを特徴とする自動車用加飾部品の製造方法。
1…加飾部品及び部品としての自動車用加飾部品
2…ワークとしての樹脂成形体
3…ワークの表面としてのワーク表面
4…被加飾領域
5…レーザー照射領域
5a…特定のレーザー照射領域
5b…別のレーザー照射領域
10…着色層
15a,15b…レーザー被加工部としての凹部
17…クリアコート層

Claims (5)

  1. ワークの表面上に設定された被加飾領域に着色層を塗工して形成する塗工工程と、前記塗工工程後に前記着色層を保護するクリアコート層を形成するクリアコート層形成工程とを経て、加飾部品を製造する方法であって、
    前記クリアコート層の厚さは、前記着色層の厚さよりも大きくなるように設定され、
    前記クリアコート層形成工程後に、レーザー照射を行って前記着色層を加工せずに前記クリアコート層のみを選択的に加工することにより、複数のレーザー被加工部を形成するレーザー照射工程を行う
    ことを特徴とする加飾部品の製造方法。
  2. 前記被加飾領域は、前記レーザー照射が行われる複数のレーザー照射領域からなり、
    前記レーザー照射工程では、前記複数のレーザー照射領域の中から選択された特定のレーザー照射領域と、前記特定のレーザー照射領域とは別のレーザー照射領域とで異なる形状のレーザー被加工部を形成することにより、前記クリアコート層を介して視認可能な前記着色層の明暗及び色調の少なくとも一方を、前記特定のレーザー照射領域と前記別のレーザー照射領域とで異ならせる
    ことを特徴とする請求項1に記載の加飾部品の製造方法。
  3. 前記レーザー照射工程では、前記特定のレーザー照射領域における前記レーザー被加工部の密度と、前記別のレーザー照射領域における前記レーザー被加工部の密度とを、互いに異なる密度にすることにより、前記着色層の明暗及び色調の少なくとも一方を、前記特定のレーザー照射領域と前記別のレーザー照射領域とで異ならせることを特徴とする請求項2に記載の加飾部品の製造方法。
  4. 前記レーザー照射工程では、前記特定のレーザー照射領域における前記レーザー照射時の出力と、前記別のレーザー照射領域における前記レーザー照射時の出力とを、互いに異なる出力にすることにより、前記着色層の明暗及び色調の少なくとも一方を、前記特定のレーザー照射領域と前記別のレーザー照射領域とで異ならせることを特徴とする請求項2に記載の加飾部品の製造方法。
  5. ワークの表面上に設定された被加飾領域に着色層を塗工して形成する塗工工程と、前記塗工工程後に前記着色層を保護するクリアコート層を形成するクリアコート層形成工程とを経て製造された部品を加飾する方法であって、
    前記クリアコート層の厚さは、前記着色層の厚さよりも大きくなるように設定され、
    前記クリアコート層形成工程後に、レーザー照射を行って前記着色層を加工せずに前記クリアコート層のみを選択的に加工することにより、複数のレーザー被加工部を形成するレーザー照射工程を行う
    ことを特徴とする部品の加飾方法。
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