JP5424844B2 - インサート位置調整機構を内蔵した金型 - Google Patents

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本発明はモールド成形金型において、金属等の異種部品(以下インサートと称する)を樹脂で鋳込んで一体成形する場合のインサート成形金型に関するもので、特に対象となるインサートの装填位置及び姿勢を可変できる金型構造に関する。
従来のインサート成形順序としては次のとおりである。
最初に型開きを行った後、予め所定の位置に手動あるいは自動によりインサートを装填する。
その後、型締めを行った金型内に溶融樹脂を注入し、冷却固化させた後、可動側の型を開き、金型内部に構成されるエジェクタピンを射出成形装置に内蔵された排出ユニットにより前進させ、インサートを内包した樹脂成形品本体を突出し、自重落下または取出し装置にて排出している。
この成形方法の場合、一般的に装填するインサートの形状に対し、金型でインサートの突出部を保持し、金型の樹脂注入部内に位置決めされたインサートの周囲に樹脂を充填するため、成形する金型はインサート毎に専用となる。
すなわち、図2にみられるように、インサート9a、9bの姿勢が異なるインサート成型品13a、13bのように、仕様が異なるインサート成型品を製造する場合等、樹脂部形状が同一であっても、インサートの種類や位置、姿勢が異なる仕様が複数ある場合、金型のインサート保持部の形状が変更しなければならないことから、同一の金型を使用することができず、それぞれの装填位置や姿勢に合せて専用金型を製作し、対応することとなる。
そのため機種変更毎に重量物である金型本体を射出成形機から取外し、新たに使用する別機種の金型を取り付けるなど、さらに多大の作業時間、作業負担を要していた。
一方、下記特許文献1には、成型品の回転中心にインサートを埋め込む際、インサートを外偏心リングと内偏心リングにより位置合わせを行うことが記載されているが、インサートの中心位置を偏心リングにより微調整するにとどまり、インサートの装填位置や姿勢の変更にまで対応し得るものではない。
また、下記特許文献2には、インサート保持治具により金型に対するインサートの位置を調整することが記載されているが、インサート保持治具は、ロボットハンドと同様の複雑な駆動機構を必要とし、しかも、金型と分離して配置されていることから高精度の位置決め制御を行わざるを得ず、成型に時間を要し、大量生産には不向きである。
特開平5−69453号公報 特開平2006−123450号公報
そこで、本発明は、金型内部に、インサート位置調整機構を内蔵させ、専用金型の設計や、金型変更等を行うことなく、種々のインサートや姿勢変更に、簡単な段取りで変更できるようにすることを目的としている。
上記の課題を解決するため、本発明のインサート成形金型においては、次のような技術
的手段を講じた。
すなわち、
(1)インサートを樹脂に鋳込んで一体成形を行うインサート成型金型であって、前記インサートを保持するインサート保持部を具備するとともにインサート保持部の金型における樹脂成型部に対する前後位置、上下位置及び旋回角度位置を、任意に設定できるインサート位置調整機構を金型内部に内蔵した。
(2)前記インサート位置調整機構が、前記インサート保持部を具備するインサート旋回ホルダ、前記インサート旋回ホルダの旋回角度を調整する旋回角度調整用アクチュエータ、前記インサート旋回ホルダの前後位置を調整する前後位置調整用アクチュエータ、及び前記インサート旋回ホルダの上下位置を調整する上下位置調整用アクチュエータよりなるものとした。
(3)前記インサート旋回ホルダが前記旋回角度調整用アクチュエータの本体に取り付けられ、ギア機構を介し、該旋回角度調整用アクチュエータのプッシュロッドにより旋回角度が調整されるようにした。
(4)前記旋回角度調整用アクチュエータの本体は、前後スライドベースに垂直に設けられた上下スライドベースガイドにより上下動可能に連結されており、該上下スライドベースガイドの前後位置が前記前後位置調整用アクチュエータにより調整され、かつ、該上下スライドベースの上下位置が前記前後スライドベースを貫通する上下位置調整用アクチュエータのプッシュロッドにより調整されるようにした。
本発明によれば、金型に内蔵されたインサート調整機構により、インサート装填位置、姿勢を任意に変更できることにより、金型本体を射出成形機から取外すことなく数種類の機種に対応することができ、その段取り作業時間の短縮が図れる。
さらには専用金型として機種毎に製作する必要がなく、金型製作費用、金型変更に伴う作業負担を著しく低減することが可能となる。
従来のインサート成形金型の構成図 インサート成形部品の説明図 従来のインサート成形工程の説明図 本発明におけるインサート成形金型の構成図 本発明におけるインサート成形金型の位置段取り動作の説明図 本発明におけるインサート成形金型キャビティ部品の段取り部の説明図 本発明における位置調整構造を説明する正面図 本発明における位置調整構造を説明する平面図 本発明における位置調整構造を説明する右側面図 本発明における位置調整構造を説明する鳥瞰図
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1に、本発明の基本構成である従来のインサート成形金型の構成を示す。
金型本体固定側の構成部品として、射出成形装置の固定側に連結される固定側取付板1に金型を位置決めする部品であるロケートリング12が取付けられており、固定側型板2を介し、射出成形装置の射出ノズルから射出された溶融樹脂を金型内の固定側成形部7まで導く部品であるスプルブシュ11を備えている。
一方、金型本体可動側の構成部品としては、射出成形装置の可動側に連結される可動側取付板6及びエジェクタプレート4、5及び可動側型板3より構成される。
なお、可動側型板3には、可動側成形部8が取付けられ、製品を突出するエジェクタピン10が設けられている。
金型内の固定側成形部7及び可動側型板3により、樹脂成型部が構成され、対象製品13は、図2に示されるように、インサート9aにモールド樹脂を一体成形したものである。
製造工程としては、図3に示されるように、型開きを行ったスペースより金型可動側成形部7に予めインサート9を装填し、型締めと同時に位置決めを行った後、溶融樹脂により形状を成形し、冷却固化した製品の取出しを行い完成となるものである。
図4に本発明におけるインサート成形金型の構成及び動作の説明図を示す。
本発明のインサート成形金型においては、前述した従来の金型基本構成に、インサート旋回ホルダ18、旋回保持フレーム14、上下位置調整用アクチュエータ15及び前後位置調整用アクチュエータ17、旋回角度調整用アクチュエータ16、固定側成形部品A、B(19a、19b)及び可動側成形部品A、B(20a、20b)により構成されるインサート位置調整機構(図5、図6参照)が追加される。
図6〜図10に示されるように、インサート旋回ホルダ18は、一端側にインサート9が収容され、これを保持する筒状部を有し、他端側に、旋回角度調整用アクチュエータ16のプッシュロッド先端に設けられたギアと噛み合うギアを有し、旋回角度調整用アクチュエータ16の上面に固着された2つの旋回保持ホルダ18(図9、10参照)により、ギアの中心軸両端が回転自在に支持されており、旋回角度調整用アクチュエータ16のプッシュロッドが上昇すると図中下向きに回転し、下降すると図中上向きに回転し、その旋回角度が調整されるようになっている。
図9に示されるように、旋回角度調整用アクチュエータ16の本体には、上下スライドベース23が取り付けられており、この上下スライドベース23は、前後スライドベース21に垂直に設けられた上下スライドベースガイド24により、上下スライド可能に連結されている。
一方、前後スライドベース21は、インサート成形金型の基台に設けられた前後スライドベースガイド22により、前後方向(図9では紙面に垂直方向)にスライド可能に連結されており、この前後スライドベース21の下面に上下位置調整用アクチュエータ15が取り付けられている。そして、上下位置調整用アクチュエータ15のプッシュロッドは前後スライドベース21に設けた開口を貫通し、その上端が旋回角度調整用アクチュエータ16の本体下面に連結されている。
また、図7〜図9に示されるように、前後スライドベース21は、前後位置調整用アクチュエータ17のプッシュロッドに連結され、前後スライドベースガイド22により、インサート旋回ホルダ18の成型部に対する前後位置(図7、8では左右位置)が調整されるようになっている。
インサート9を装填する場合は、図6に示されるように、旋回角度調整用アクチュエータ16のプッシュロッドを下降させ、インサート旋回ホルダ18aを装填位置に移動させる。
そして、インサート9の変更あるいはインサート9の傾斜角等を変更する場合は、図示しない制御装置を使用して、インサート旋回ホルダ18の成型部に対する前後位置を前後位置調整用アクチュエータ17により、そして、上下位置を上下位置調整用アクチュエータ15により調整するとともに、旋回角度調整用アクチュエータ16により旋回角度を調整することにより、成型部に対するインサート位置を、金型に内蔵されたインサート位置調整機構により、簡単に行うことができる。
なお、旋回角度調整用アクチュエータ16、前後位置調整用アクチュエータ17及び前後位置調整用アクチュエータ15は、工場内に供給される圧力空気により駆動される空気圧アクチュエータが好ましく、内部のピストンの両側に、図4に示されるようなジョイント及び前述の制御装置により開閉制御される電磁弁等を介して、高圧空気あるいは大気圧を切り換えて導入することにより、ピストンに連結されたプッシュロッドを駆動し、その先端位置を調整できるようにしている。
もちろん、空気圧アクチュエータに限られることなく、油圧アクチュエータ、電動モータ、ソレノイド等適宜のアクチュエータを使用してもよい。
また、例えば、インサート9の傾斜角度のみが異なる複数種の成型品を製造する場合は、各アクチュエータによるプッシュロッドのストロークを変更すればよいが、その際、例えば、図10にみられるように、前後ストロークを調整する前後位置調整用ストッパ25や上下ストロークを調整する上下位置調整用26を抜き差し可能に設け、インサートの傾斜角度の変更に際し、ストローク調整量の異なるストッパ23、25を適宜選択し、これを抜き差しすることにより、各位置の停止位置を調整するようにすれば、簡単な段取りでしかも確実に位置調整を行うことができる。
また、インサートの形状や傾斜角度が大きく異なり、樹脂成型部自体の形状を変更しなければならないときは、固定側及び可動側の成形部の一部を最小限の分割形状19a、19b、20a、20b(図5、図6参照)とし、これをインサートの形状や傾斜角度に合わせて選択及び交換できるようにすれば、金型全体を交換することなく、部分段取りを行うことで対応することが可能となる。
本発明によれば金型内部にインサートの位置姿勢を変換することができる構造とすることにより、専用金型を製作する必要がなくなるため、機種変更による金型本体の着脱する必要が無くなり、一部キャビティの交換により対応できるため、段取り替えが容易になる。さらには専用金型として機種毎に製作することがなくなるため、金型製作費用を抑えることが可能となる。また、専用金型とならないため、費用面の問題が解消されることにより、機種別に対応する製品設計の自由度が広がり、最適構造化への検討が可能となる。
1・・・固定側取付板、2・・・固定側型板、3・・・可動側型板、4・・・エジェクタプレートA、5・・・エジェクタプレートB、6・・・可動側取付板、7・・・固定側成形部、8・・・可動側成形部、9・・・インサート、9a・・・姿勢が違うインサートA、9b・・・姿勢が違うインサートB、10・・・エジェクタピン、11・・・スプルブシュ、12・・・ロケートリング、13・・・インサート成形品、13a・・・姿勢が違うインサート成形品、13b・・・姿勢の違うインサート成形品、14・・・旋回保持フレーム、15・・・上下位置調整用アクチュエータ、16・・・旋回角度調整用アクチュエータ、17・・・前後位置調整用アクチュエータ、18・・・インサート旋回ホルダ、18a・・・起立したインサート旋回部品、19・・・固定側成形部品、19a・・・固定側成形部品A、19b・・・固定側成形部品B、20・・・可動側成形部品、20a・・・可動側成形部品A、20b・・・可動側成形部品B、21・・・前後スライドベース、22・・・前後スライドベースガイド、23・・・上下スライドベース、24・・・上下スライドベースガイド、25・・・前後位置調整用ストッパ、26・・・上下位置調整用ストッパ

Claims (4)

  1. インサートを樹脂に鋳込んで一体成形を行うインサート成型金型であって、
    前記インサートを保持するインサート保持部を具備するとともにインサート保持部の金型における樹脂成型部に対する前後位置、上下位置及び旋回角度位置を、任意に設定できるインサート位置調整機構を金型内部に内蔵したインサート成形金型。
  2. 前記インサート位置調整機構が、前記インサート保持部を具備するインサート旋回ホルダ、前記インサート旋回ホルダの旋回角度を調整する旋回角度調整用アクチュエータ、前記インサート旋回ホルダの前後位置を調整する前後位置調整用アクチュエータ、及び前記インサート旋回ホルダの上下位置を調整する上下位置調整用アクチュエータよりなる請求項1に記載のインサート成形金型。
  3. 前記インサート旋回ホルダが前記旋回角度調整用アクチュエータの本体に取り付けられ、ギア機構を介し、該旋回角度調整用アクチュエータのプッシュロッドにより旋回角度が調整されるようになっている請求項2記載のインサート成形金型。
  4. 前記旋回角度調整用アクチュエータの本体は、前後スライドベースに垂直に設けられた上下スライドベースガイドにより上下動可能に連結されており、該上下スライドベースガイドの前後位置が前記前後位置調整用アクチュエータにより調整され、かつ、該上下スライドベースの上下位置が前記前後スライドベースを貫通する上下位置調整用アクチュエータのプッシュロッドにより調整されるようになっている請求項3記載のインサート成形金型。
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