JP5423033B2 - 車輪用軸受装置の製造方法 - Google Patents
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Description
このような構造の車輪用軸受装置においては、例えば、特許文献1に開示されている。
これにおいては、フランジ付き軸部材(ハブホイール)が円筒管を母材として冷間鍛造により整形されると共に、この冷間鍛造した母材の一方の軸端部の円周方向複数箇所が径方向外向きに切り起こされることにより、複数のフランジ部(切り起こし片)が形成される。さらに、母材の一方の軸端部には、複数のフランジ部の間に軸方向に沿った形状で残存する複数の舌片よりなる嵌合軸部(車輪が嵌込まれて位置決めされる)が設けられる。
これによって、車輪用軸受装置(主にフランジ付き軸部材)の重量軽減を図ることが可能となる。
しかしながら、前記従来の車輪用軸受装置においては、冷間鍛造により鍛造品を製作した後、鍛造品の一方の軸端部に切り起こし片よりなる複数のフランジ部を形成しなければならず、製造コストが高くなる。
特に、フランジにボルト孔を形成した後、フランジ部のボルト孔の一側開口縁回りのボルト座面をコイニング加工によって平坦面に仕上げ加工することによって、フランジ部のボルト座面を旋削加工する必要がなくなる。
さらに、フランジ部のボルト座面をコイニング加工によって平坦面に仕上げ加工することによって、旋削加工する場合と比べ、フランジ部の強度を良好に高めることができる。
また、上記構成によれば、冷間鍛造の側方押出加工によって複数のフランジ部を放射状に形成する際、フランジ部の一側面に厚肉部を形成することによって、フランジ部の強度をより一層良好に高めることができる。
また、冷間鍛造の側方押出加工においては、ファイバーフローに沿う材料流動性によって、フランジ部に、厚肉部側へ向かうそりが発生することがある。
このようにフランジ部に、厚肉部側へ向かうそりが発生が発生した場合、フランジ部のボルト孔の一側開口縁回りのボルト座面をコイニング加工する際、前記したフランジ部のそりをコイニング加工によって矯正することができる。
フランジ部のボルト孔の一側開口縁回りのボルト座面をコイニング加工によって仕上げ加工すると共に、ボルト孔の一側開口縁に面取り部を形成することを特徴とする。
図1に示すように、車輪用軸受装置としての車輪用ハブユニットは、フランジ付き軸部材(ハブホイール)1と、転がり軸受としての複列のアンギュラ玉軸受41とを一体状に有してユニット化されている。
フランジ付き軸部材1は、外周面に転がり軸受としての複列のアンギュラ玉軸受41が組み付けられる軸部10と、この軸部10の一端側に形成されかつ軸部10よりも大径で車輪(図示しない)の中心孔が嵌込まれる嵌合軸部30と、軸部10と嵌合軸部30との間に位置するフランジ基部20aと、このフランジ基部20aの外周面に外径方向へ放射状に延出されかつ車輪を締め付けるハブボルト27が圧入によって配置されるボルト孔24が先端寄り部分に貫設された複数のフランジ部21とを一体に有する。
また、嵌合軸部30には、フランジ部21側にブレーキロータ用嵌合部31が形成され、先端側にブレーキロータ用嵌合部31よりも若干小径の車輪用嵌合部32が形成されている。
また、この実施例1においては、フランジ付き軸部材1の軸部10は、フランジ部21側が大径で先端側が小径に形成された段軸状に形成され、軸部10の大径部11の外周面に一方の軌道面43が形成されている。
また、軸部10の小径部12の外周面には内輪体42が嵌め込まれ、この内輪体42の外周面に他方の軌道面44が形成されている。
さらに、軸部10の先端部には、小径部12と同径の端軸部15が延出されている。この端軸部15の端面中心部には軸端凹部16が形成され、端軸部15の先端部が径方向外方へかしめられてかしめ部17が形成されることによって小径部12の外周面に内輪体42が固定される。
さらに、厚肉部23はフランジ部21の根元部(基部)側から同フランジ部21のボルト孔24側に向かって漸次減少する傾斜状に形成されている。この厚肉部23の傾斜面23aの傾斜角度(フランジ付き軸部材1の回転中心軸線Sと直交する円環状平坦面23cに対する角度)θ1は、冷間鍛造時の材料流れや成形後の脱型を考慮すると、「20°≦θ1≦45°」の関係に設定されることが望ましい。
また、図3に示すように、各フランジ部21の先端面は、嵌合軸部30のブレーキロータ用嵌合部31の直径寸法の約半分の半径をもつ円弧面21aに形成されている。すなわち、嵌合軸部30のブレーキロータ用嵌合部31の直径寸法をφPとし、フランジ部21の先端の円弧面21aの半径寸法をrQとしたときに、φP/2≒rQとなるように形成されている。
図4に示すように、構造用炭素鋼(例えば、S45C、S50C、S55C等の炭素量0.5%前後の炭素鋼が望ましい)の丸棒材を所要長さに切断して軸状素材60を形成する。
次ぎに、軸状素材60を、例えば800℃前後に加熱した後、冷却し焼鈍する。
その後、冷間鍛造の前方押出加工の鍛造型装置(図示しない)を用いて軸状素材60を前方押出加工し、これによって、軸部(大径部11、小径部12及び端軸部(この状態では軸端凹部16が形成されていない)15を含む)10と、中間軸部(フランジ基部20aと嵌合軸部30の一部を形成する)20と、嵌合軸部(この状態では鍛造凹部33やブレーキロータ用嵌合部31が形成されていない)30を形成し、冷間鍛造の前方押出加工による一次成形品61を製作する。
このフランジ成形部78は、第1、第2の両成形型71、72にそれぞれ形成された成型溝部76、77によって構成されている。
すなわち、第1、第2の両成形型71、72の成型溝部76、77の上下両壁面の案内面80、81の対向間隔がフランジ部21の板厚寸法と同等の大きさに設定され、両側壁面の案内面(図示しない)の対向間隔がフランジ部21の幅寸法と同等の大きさに設定されている。そして、フランジ成形部78の横断面形状は、フランジ部21の横断面形状と同じ形状に形成されている。
一方、この実施例1において、フランジ部21の根元部近傍の厚肉部23側を形成する第1成形型71の成型溝部76の案内面80は、逃がし部がない型構造に形成されている。
また、厚肉部成形用溝部82底面の傾斜面82aの傾斜角度θ2は、フランジ部21の厚肉部23の傾斜面23aの傾斜角度θ1と同じ、すなわち、「20°≦θ2≦45°」の関係に設定される。
また、成型溝部76、77によって構成されるフランジ成形部78の径方向の長さ寸法は、フランジ部21の先端の円弧面21aが当たらない長さ寸法をもって設定されている(図6及び図7参照)。
その後、図6と図7に示すように、パンチ73を一次成形品61の嵌合軸部30の中心部端面に向けて下降し、パンチ73の先端部74によって嵌合軸部30の中心部端面に鍛造凹部33を形成しながら一次成形品61の軸部10と嵌合軸部30との間に位置する中間軸部20の外周面を、第1、第2の両成形型71、72に形成されたキャビティ75のフランジ成形部78に側方押出することによって複数のフランジ部21を形成すると共に、フランジ部21の根元部近傍の一側に厚肉部23を形成し、これによって側方押出加工による二次成形品62を製作する。なお、中間軸部20は冷間鍛造の変形によってフランジ基部20a及び嵌合軸部30の一部をなす。
また、図2に示すように、フランジ部21にボルト孔24の両端開口部に形成される第1、第2の両面取り部25、26において、フランジ部21の厚肉部23側に位置する第1面取り部25の深さ寸法をT1とし、反対側の第2面取り部26の深さ寸法をT2としたときに、「T1<T2」の関係となるように設定されることが望ましい。
すなわち、フランジ部21のボルト孔24に、ハブボルト27のセレーション軸部(軸部29の根元部に形成される)29aを圧入した後の状態において、面取り部の深さ寸法が大きい側にフランジ部21が微量ではあるがそり変形する特性をもつ。
このため、仮に、側方押出加工によってフランジ部21の厚肉部23側へ向かって「そり」が発生したとしも、フランジ部21のボルト孔24にハブボルト27が圧入されることで、前記したフランジ部21の厚肉部23側への「そり」が軽減される。
コイニング加工による表面硬さはHRC25以上、表面粗さがRa6.3以下に仕上げられることが望ましい。
また、ボルト座面21cを含むフランジ部21の一側面の先端からフランジ部21の厚肉部23の傾斜面23aの境界R面23b又は、境界R面23b及び傾斜面23aにわたる範囲(図2のコイニング加工範囲W)にわたってコイニング加工によって表面仕上げすることが望ましい。
そして、軸部10の小径部12の外周面に内輪体42が嵌め込まれた後、端軸部15の先端部が径方向外方へかしめられてかしめ部17が形成されることによって小径部12の外周面に内輪体42が固定される。
また、フランジ付き軸部材1の軸部10の外周面にアンギュラ玉軸受41が組み付けられる前、又は後において、フランジ部21のボルト孔24の第1面取り部25側からハブボルト27の軸部29が挿入され、軸部29のセレーション軸部29aがボルト孔24に圧入されることによってフランジ部21にハブボルト27が固定される。
これをもって車輪用軸受装置が製造される。
特に、冷間鍛造の側方押出加工によってフランジ部21を形成し、このフランジ部21にボルト孔24を形成した後、フランジ部21のボルト孔24の一側開口縁回りのボルト座面21cをコイニング加工によって平坦面に仕上げ加工することによって、フランジ部21のボルト座面21cを旋削加工する必要がなくなる。
さらに、フランジ部21のボルト座面21cをコイニング加工によって平坦面に仕上げ加工することによって、旋削加工する場合と比べ、フランジ部21の強度を良好に高めることができる。
また、冷間鍛造の側方押出加工においては、ファイバーフローに沿う材料流動性によって、厚肉部23側へ向かうそりがフランジ部21に発生することがある。
仮に、厚肉部23側へ向かうそりがフランジ部21に発生が発生した場合、その後、フランジ部21のボルト孔24のボルト座面21cをコイニング加工する際、前記したフランジ部21のそりをコイニング加工によって矯正することができる。
すなわち、フランジ部21の厚肉部23側へ向かうそりによって、例えば、フランジ部21のローター支持面22の全面を平坦面に仕上げ加工することが困難となる恐れがある。フランジ部21のローター支持面22の全面が平坦面に仕上げ加工されていない場合、例えば、ブレーキロータ55の取り付けが不安定となることが想定される。しかしながら、前述したようにフランジ部21の厚肉部23側へ向かう「そり」をコイニング加工によって矯正することで、フランジ部21のローター支持面22の全面を平坦面に仕上げ加工することが容易となり、ブレーキロータ55を安定よく取り付けることが可能となる。
また、この実施例1において、第1成形型71は、その成型溝部76に逃がし部がない型構造とすることによって、冷間鍛造のファイバーフローに沿う材料流動性によるフランジ部21の厚肉部23側へ向かう「そり」の発生を良好に抑制することができる。
例えば、前記実施例1においては、鍛造型装置70の第2成形型72の成型溝部77と、フランジ部21の根元部近傍の厚肉部23側と反対側部分との間に隙間S2を保持する逃がし部84が形成される場合を例示したが、逃がし部84がない型構造としてもこの発明を実施可能である。
10 軸部
20 中間軸部
20a フランジ基部
21 フランジ部
21c ボルト座面
22 ローター支持面
23 厚肉部
24 ボルト孔
25 第1面取り部
26 第2面取り部
27 ハブボルト
30 嵌合軸部
33 鍛造凹部
41 アンギュラ玉軸受(転がり軸受)
45 外輪部材
70 鍛造型装置
71 第1成形型
72 第2成形型
73 パンチ
75 キャビティ
78 フランジ成形部
Claims (3)
- 転がり軸受が組み付けられる軸部と、この軸部の一端側に形成されかつ車輪の中心孔が嵌込まれる嵌合軸部と、前記軸部と前記嵌合軸部との間に位置する外周面に外径方向へ放射状に延出されて形成されると共に根元部近傍の一側面に厚肉部が形成されかつ前記車輪を締め付けるハブボルトが配置されるボルト孔が貫設された複数のフランジ部とを有するフランジ付き軸部材を備えた車輪用軸受装置の製造方法であって、
冷間鍛造の側方押出加工によって前記嵌合軸部の中心部端面に鍛造凹部を形成しながら前記軸部と前記嵌合軸部との間の外周面に前記フランジ部を形成すると共に、該フランジ部の根元部近傍の前記ハブボルトの座面側となる一側面に厚肉部を突出して形成する工程と、
前記フランジ部にボルト孔を形成する工程と、
前記フランジ部のボルト孔の一側開口縁回りのボルト座面をコイニング加工によって平坦面に仕上げ加工する工程と、を有し、
前記冷間鍛造の側方押出加工により発生するフランジ部のそりをコイニング加工により矯正することを特徴とする車輪用軸受装置の製造方法。 - 請求項1に記載の車輪用軸受装置の製造方法であって、
前記フランジ部のボルト孔の一側開口縁回りのボルト座面をコイニング加工する際、ボルト座面を含む前記フランジ部の一側面の先端から前記厚肉部の境界R面にわたってコイニング加工によって仕上げ加工することを特徴とする車輪用軸受装置の製造方法。 - 請求項1又は2に記載の車輪用軸受装置の製造方法であって、
フランジ部のボルト孔の一側開口縁回りのボルト座面をコイニング加工によって仕上げ加工すると共に、ボルト孔の一側開口縁に面取り部を形成することを特徴とする車輪用軸受装置の製造方法。
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