JP2010188835A - 車輪用軸受装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車輪用軸受装置を構成するフランジ付き軸部材1は、ボンデライト処理及びボンデリューベ処理が施された軸状素材60の冷間鍛造により製造されると共に、冷間鍛造の鍛造型装置によって嵌合軸部30の中心部端面に鍛造凹部を形成しながら軸部10と嵌合軸部30との間の外周面に、側方押出加工によってフランジ部21を形成する工程を備える。
【選択図】図4
Description
このような構造の車輪用軸受装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
その構成は、フランジ付き軸部材(ハブホイール)が円筒管を母材として冷間鍛造により整形されると共に、この冷間鍛造した母材の一方の軸端部の円周方向複数箇所が径方向外向きに切り起こされることにより、複数のフランジ部(切り起こし片)が形成される。さらに、母材の一方の軸端部には、複数のフランジ部の間に軸方向に沿った形状で残存する複数の舌片よりなる嵌合軸部(車輪が嵌め込まれて位置決めされる)が設けられる。
そして、内輪側の軌道面を提供するため、軌道輪に必要な表面硬さ及び表面の滑らかさを出すため、旋削が必要な部分を旋削加工後、高周波焼き入れを施し、研磨工程を経て、フランジ付き軸部材が形成される。これによって、車輪用軸受装置(主にフランジ付き軸部材)の重量軽減を図ることが可能となる。
しかし、冷間鍛造後に軌道面やシール摺動面の旋削加工及び研磨加工が必要であり、冷間鍛造後の加工にコストがかかるという課題がある。
前記フランジ付き軸部材は、ボンデライト処理及びボンデリューベ処理が施された軸状素材の冷間鍛造により製造されると共に、
冷間鍛造の鍛造型装置によって前記嵌合軸部の中心部端面に鍛造凹部を形成しながら前記軸部と前記嵌合軸部との間の外周面に、側方押出加工によって前記フランジ部を形成する工程を備えることを特徴とする。
そして、フランジ付き軸部材は、ボンデライト処理及びボンデリューベ処理が施された軸状素材の冷間鍛造により製造されるので、型の潤滑が良いため型寿命が延び、成型後の離型性も良い。そして、鍛造時に素材が加熱されることがないので、加工精度が良く、シール摺動部の旋削加工を省略することができる。また、ボンデリューベ処理で形成された皮膜の潤滑機能により冷間鍛造でフランジ付き軸部材の表面が滑らに表面摩擦係数低く仕上がるので、シール摺動部の研磨加工を省略することができる。
よって、本発明によれば、重量軽減を図ると共に、製造コストを低減することができる車輪用軸受装置の製造方法を提供することができる。
よって、本発明によれば、重量軽減を図ると共に、製造コストを低減することができる車輪用軸受装置の製造方法を提供することができる。
図1に示すように、車輪用軸受装置としての車輪用ハブユニットは、フランジ付き軸部材(ハブホイール)1と、転がり軸受としての複列のアンギュラ玉軸受41とを一体状に有してユニット化されている。
フランジ付き軸部材1は、外周面に転がり軸受としての複列のアンギュラ玉軸受41が組み付けられる軸部10と、この軸部10の一端側に形成されかつ軸部10よりも大径で車輪(図示しない)の中心孔が嵌め込まれる嵌合軸部30と、軸部10と嵌合軸部30との間に位置するフランジ基部20aと、このフランジ基部20aの外周面に外径方向へ放射状に延出されかつ車輪を締め付けるハブボルト27が圧入によって配置されるボルト孔24が先端寄り部分に貫設された複数のフランジ部21とを一体に有する。
また、嵌合軸部30には、フランジ部21側にブレーキロータ用嵌合部31が形成され、先端側にブレーキロータ用嵌合部31よりも若干小径の車輪用嵌合部32が形成されている。
また、この実施例1においては、フランジ付き軸部材1の軸部10は、フランジ部21側が大径で先端側が小径に形成された段軸状に形成され、軸部10の大径部11の外周面に一方の軌道面43が形成されている。
また、軸部10の小径部12の外周面には内輪体42が嵌め込まれ、この内輪体42の外周面に他方の軌道面44が形成されている。
さらに、軸部10の先端部には、小径部12と同径の端軸部15が延出されている。この端軸部15の端面中心部には軸端凹部16が形成され、端軸部15の先端部が径方向外方へかしめられてかしめ部17が形成されることによって小径部12の外周面に内輪体42が固定される。
さらに、厚肉部23はフランジ部21の根元部(基部)側から同フランジ部21のボルト孔24側に向かって漸次減少する傾斜状に形成されている。この厚肉部23の傾斜面23aの傾斜角度(フランジ付き軸部材1の回転中心軸Sと直交する円環状平坦面23cに対する角度)θ1は冷間鍛造時の材料流れや成形後の脱型を考慮すると、20°≦θ1≦45°の関係に設定されることが望ましい。
また、図3に示すように、各フランジ部21の先端面は、嵌合軸部30のブレーキローター用嵌合部31(図1参照)の直径寸法の約半分の半径をもつ円弧面21aに形成されている。すなわち、ブレーキローター用嵌合部31の直径寸法をφPとし、フランジ部21の先端の円弧面21aの半径寸法をrQとしたときに、φP/2≒rQとなるように形成されている。
また、図2に示すように、フランジ部21の根元部近傍の一側に厚肉部23を形成することによって、フランジ部21の根元部近傍の強度を良好に高めることができ、耐久性に優れる。
図4に示すように、構造用炭素鋼(例えば、S45C、S50C、S55C等の炭素量0.5%前後の炭素鋼が望ましい)の丸棒材を所要長さに切断して軸状素材60を形成する。
次に、軸状素材60を、例えば800℃前後に加熱した後、冷却し焼鈍する。
次に、成型後の離型性を良くするために、軸状素材60にボンデライト処理を行い、軸状素材60の表面にリン酸塩被膜を形成する。
次に、鍛造工程時の型の潤滑を良するために、ボンデリューベ処理を行い、軸状素材60に二硫化モリブデンを塗布して乾燥させる。
ここで、軸状素材60は冷間鍛造前にボンデライト処理及びボンデリューベ処理がなされているので、鍛造工程時の型の潤滑が良く、型寿命を延ばすことができ、成形後の離型性も良い。また、一次成形では軸状素材60を加熱することなく成形するので、一次成形品61には表面にボンデライト処理及びボンデリュート処理により形成された皮膜が温存される。
ここで、一次成形品61には表面にボンデライト処理及びボンデリューベ処理により形成された皮膜が温存されているので、二次成形においても、鍛造工程時の型の潤滑が良く、型寿命を延ばすことができ、成形後の離型性も良い。
このフランジ成形部78は、第1、第2の両成形型71、72にそれぞれ形成された成型溝部76、77によって構成されている。
すなわち、第1、第2の両成形型71、72の成型溝部76、77の上下両壁面の案内面80、81の対向間隔がフランジ部21の板厚寸法と同等の大きさに設定され、両側壁面の案内面(図示しない)の対向間隔がフランジ部21の幅寸法と同等の大きさに設定されている。そして、フランジ成形部78の横断面形状は、フランジ部21の横断面形状と同じ形状に形成されている。
また、厚肉部成形用溝部82底面の傾斜面82aの傾斜角度θ2は、フランジ部21の肉厚部23の傾斜面23aの傾斜角度θ1と同じ、すなわち「20°≦θ2≦45°」の関係に設定される。
また、図6及び図7に示すように、成型溝部76、77によって構成されるフランジ成形部78の径方向の長さ寸法は、フランジ部21の先端の円弧面21aが当たらない長さ寸法をもって設定されている。
ここで、フランジ部21の外径をφA、フランジ部21の根元のフランジ基部20aの外径をφB、フランジ部21の周方向の幅をC、フランジ部21の数をNとし、フランジ部21及びフランジ基部20aの軸方向から見た面積(フランジ投影部の面積)をSf、フランジ部21の外径円の面積をSaとすると、
Sf=N×C×(1/2)×(φA−φB)+(φB/2)×(φB/2)×π
Sa=(φA/2)×(φA/2)×π
と表すことができ、実施例1では、二次成形品62のSf/Saが0.53〜0.56の範囲とされている。
このSf/Saが大きいほど、フランジ投影部の比率が大きくなるため鋼材の流動面積が大きくなり、押出加工による鋼材の流動性が良くなるため成形性が向上する。一方、Sf/Saが大きいほど、第1成形型71と第2成形型72が接触面積が小さくなり狭い面積で型圧を支えることが必要となるため型に対する負荷が増大する。
また、Sf/Saが小さいほど、フランジ投影部の割合が大小さくなるため鋼材の流動面積が狭くなり、押出加工による鋼材の流動性が悪くなるため成形性が低下する。一方、Sf/Saが小さいほど、第1成形型71と第2成形型72の接触面積が大きくなるため広い面積で型圧を支えればよいので型に対する負荷が減少する。
なお、Sf/Saが異なる構成について試験した結果、Sf/Saが0.6より大きい場合は、金型の接触面積が狭く、狭い面積で型圧を支えることが必要となり型が割れやすくなることがわかった。また、Sf/Saが0.5より小さい場合は、鋼材の流動面積が狭くなり鋼材の流動性が悪くなるためフランジ部の成形性が悪くなり、フランジ部が予定した形状に成形されにくくなることがわかった。よって、Sf/Saは0.5以上かつ0.6以下のとすることが好ましい。
その後、図6と図7に示すように、パンチ73を一次成形品61の嵌合軸部30の中心部端面に向けて下降し、パンチ73の先端部74によって嵌合軸部30の中心部端面に鍛造凹部33を形成しながら一次成形品61の軸部10と嵌合軸部30との間に位置する中間軸部20の外周面を、第1、第2の両成形型71、72に形成されたキャビティ75のフランジ成形部78に側方押出することによって複数のフランジ部21を形成すると共に、フランジ部21の根元部近傍の一側に厚肉部23を形成し、これによって側方押出加工による二次成形品62を製作する。
その後、二次成形品62を焼き入れした後、軸部10の大径部11の軌道面43やフランジ部21のローター支持面22等を旋削加工、または、研磨加工することで完成品となるフランジ付き軸部材1を製作する。
そして、軸部10の小径部12の外周面に内輪体42が嵌め込まれた後、端軸部15の先端部が径方向外方へかしめられてかしめ部17が形成されることによって小径部12の外周面に内輪体42が固定される。
また、図2に示すように、フランジ付き軸部材1の軸部10の外周面にアンギュラ玉軸受41が組み付けられる前、又は後において、フランジ部21のボルト孔24の第1面取り部25側からハブボルト27の軸部29が挿入され、軸部29のセレーション軸部29aがボルト孔24に圧入されることによってフランジ部21にハブボルト27が固定される。
これをもって車輪用軸受装置が製造される。
よって、本発明によれば、重量軽減を図ると共に、製造コストを低減することができる車輪用軸受装置の製造方法を提供することができる。
すなわち、冷間鍛造においては、ファイバーフローに沿う材料流動性によってフランジ部21に、厚肉部23側へ向かうそりが発生しやすくなる特性がある。このフランジ部21の厚肉部23側へ向かうそりによって、例えば、フランジ部21のローター支持面22の全面を平坦面に仕上げ加工することが困難となる恐れがある。フランジ部21のローター支持面22の全面が平坦面に仕上げ加工されていない場合、例えば、ブレーキロータ55の取り付けが不安定となることが想定される。しかしながら、前述したようにフランジ部21の厚肉部23側へ向かう「そり」の発生を抑制することで、フランジ部21のローター支持面22の全面を平坦面に仕上げ加工すること容易となり、ブレーキロータ55を安定よく取り付けることが可能となる。
次に、変形例1に係る車輪用軸受装置について説明する。変形例1では、図9に示すとおり、フランジ付き軸部材1Aのフランジ部21Aの形状が実施例1と異なっている。変形例1では、図10に示すとおり、フランジ部21Aは周方向の断面が凸型形状とされ、ハブボルト27の座面の幅の範囲が肉厚部63とされ、周方向の両端は肉薄部64とされている。これにより、ハブボルト27の必要嵌合長さを確保し、かつ、車輪外側のブレーキロータのバックアップとして必要な当たり面の面積を確保して、フランジ部21Aの体積の削減を図っている。また、図10に示すとおり、フランジ部21Aの周方向断面に現れる角部は全てR2以上の鋳造Rとし、金型の寿命向上を図っている。
なお、フランジ部21A以外の形状は実施例1と共通であり、フランジ付き軸部材1Aの製造方法は冷間鍛造の前にボンデライト処理及びボンデリューベ処理を行うことを含めて実施例1のフランジ付き軸部材1と共通であるため、詳細な説明は省略する。
この変形例1によれば、フランジ部の強度を損なわずに、さらに軽量化が可能である。
10 軸部
11 大径部
12 小径部
20 中間軸部
20a フランジ基部
21、21A フランジ部
22 ローター支持面
23 厚肉部
24 ボルト孔
27 ハブボルト
30 嵌合軸部
33 鍛造凹部
41 アンギュラ玉軸受(転がり軸受)
45 外輪部材
56 シール
57 シール摺動部
60 軸状素材
61 一次成形品
62 二次成形品
70 鍛造型装置
71 第1成形型
72 第2成形型
73 パンチ
75 キャビティ
78 フランジ成形部
80、81 案内面
84 逃がし部
φA フランジ部の外径
φB フランジ基部の外径
C フランジ部の周方向の幅
Claims (1)
- 転がり軸受が組み付けられる軸部と、この軸部の一端側に形成されかつ車輪の中心孔が嵌め込まれる嵌合軸部と、前記軸部と前記嵌合軸部との間に位置して外径方向に放射状に延出されかつ前記車輪を締め付けるハブボルトが配置されるボルト孔が貫設された複数のフランジ部とを有するフランジ付き軸部材を備えた車輪用軸受装置を製造する方法であって、
前記フランジ付き軸部材は、ボンデライト処理及びボンデリューベ処理が施された軸状素材の冷間鍛造により製造されると共に、
冷間鍛造の鍛造型装置によって前記嵌合軸部の中心部端面に鍛造凹部を形成しながら前記軸部と前記嵌合軸部との間の外周面に、側方押出加工によって前記フランジ部を形成する工程を備えることを特徴とする車輪用軸受装置の製造方法。
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