JP5422370B2 - 経口用液体組成物 - Google Patents
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Description
グルクロノラクトンを経口用液体組成物に配合した場合、経時的にえぐ味が増すなど、味が悪くなる問題がある。このような問題に対し、例えば特許文献1では、リン酸や塩酸を配合する方法が開示されている。また特許文献2では、甘味生薬を配合する方法が開示されている。
チアミン類など、ビタミンB群の化合物を経口用液体組成物に配合した場合、苦味があることが知られている。このような問題に対し、例えば特許文献3では、ビタミンB1類の不快風味を改善するために糖アルコールおよびスレオニンを配合する方法が開示されている。また特許文献4では、ビタミンB群の苦味のマスキングのために転化型液糖を配合する方法が開示されている。
しかし本発明者らの検討によれば、これら2成分を液体組成物中に同時に配合すると、経時的に無色透明から褐色透明に変化するなど、外観(色)の経時的安定性に問題がある。このような外観の変化は、各成分のいずれか一方を単独で配合した場合には見られない問題である。また、該液体組成物は、それら2成分に由来する独特の香味(グルクロノラクトンの酸味と、チアミン類の硫黄系の独特の味とが合わさった香味)があるが、経時的にえぐ味や苦味が出てくるなど、該香味の経時的安定性にも問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、グルクロノラクトンとチアミン類との配合による外観および香味の変化が抑制された経口用液体組成物を提供することを目的とする。
本発明の経口用液体組成物は、(A)グルクロノラクトンと、(B)チアミン、チアミン誘導体およびそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(C)ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖およびラフィノースからなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴ糖と、を含有することを特徴とする。
(A)成分はグルクロノラクトンである。グルクロノラクトンは、グルクロン酸の構造から、さらに分子内でカルボキシル基と3位のヒドロキシル基とが脱水縮合してエステルとなった構造をもつ、代表的なラクトンの一種である。グルクロノラクトンを水溶液とするとグルクロン酸との平衡状態へ達することが知られている。
(A)成分は、肝臓の血流を良くして働きを高める作用を有する肝機能改善薬であり、本発明の経口用液体組成物の有効成分として配合される。
(A)成分は、適宜合成したものであってもよいし、市販品(例えば、中外製薬(株)製など)であってもよい。グルクロノラクトンを合成する方法は、特に制限はなく、公知の合成方法のなかから適宜選択することができる。
本発明の経口用液体組成物中、(A)成分の配合量は、特に制限はなく、所望の効果等、目的に応じて適宜選択することができる。通常、0.01〜10質量/容量%(以下、W/V%と記載)が好ましく、0.1〜5W/V%がより好ましい。該範囲の下限値以上であると、グルクロノラクトンによる効果が充分に得られる。上限値以下であると、製剤化しやすい。
(B)成分は、チアミン、チアミン誘導体およびそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
(B)成分は、強度の労作や、消耗性疾患の罹患の改善を有し、本発明の経口用液体組成物の有効成分として配合される。
チアミンは、ビタミンB1(vitamin B1)とも呼ばれ、ビタミンの中で水溶性ビタミンに分類される生理活性物質であり、サイアミン、アノイリンとも呼ばれる。チアミンは、糖質および分岐脂肪酸の代謝に用いられ、不足すると脚気や神経炎などの症状を生じる。卵、乳、豆類に多く含有される。
チアミン誘導体としては、公知のものが利用でき、例えばビスチアミン、ジセチアミン、チアミンジスルフィド、フルスルチアミン、ビスベンチアミン、ビスイブチアミン、ベンフォチアミン等が挙げられる。
チアミンおよびチアミン誘導体の塩としては、薬学的に許容可能な塩であればよく、例えば硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等が挙げられる。
(B)成分は、適宜合成したものであってもよいし、市販品であってもよい。(B)成分を合成する方法は、特に制限はなく、公知の合成方法のなかから適宜選択することができる。市販品としては、例えば、日本薬局方チアミン塩化物塩酸塩、日本薬局方チアミン硝化物(DSM Nutritional Products社製、アルプス薬品工業(株)製、渡辺ケミカル(株)製等)、チアミン硝酸塩(和光純薬工業(株)製)等が挙げられる。
本発明の経口用液体組成物中、(B)成分の配合量は、0.001〜1W/V%が好ましく、0.001〜0.2W/V%がより好ましい。該範囲の下限値以上であると、(B)成分による効果が充分に得られる。上限値以下であると、(B)成分による不快な味がなく、香味が良好である。
また、本発明の経口用液体組成物中、(A)成分および(B)成分の配合量の比率(質量比)は、(A)成分:(B)成分=2000:1〜1:1が好ましく、1000:1〜10:1がより好ましい。
(C)成分は、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖およびラフィノースからなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴ糖である。
「オリゴ糖」は、単糖類同士がグリコシド結合によって結合した化合物の中で、多糖類というほどは分子量が大きくないものを指す。
(C)成分を配合することで、(A)成分および(B)成分を同時配合した場合に生じる液体組成物の外観(色調)の経時変化、香味の経時変化を抑制できる。
上記のうち、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖は、通常、2糖〜10糖程度の混合物である。
(C)成分としては、上記の中でも、外観(色調)および香味の経時変化の抑制効果に加えて、殺菌加熱時の安定性が高い、低pH条件下での経時的安定性が高いなどの製剤化の観点から、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、ラフィノースが好ましい。
ガラクトオリゴ糖:ヤクルト薬品工業(株)製(オリゴメイト55N、オリゴメイト55NP)など。
フラクトオリゴ糖:(株)明治フードマテリアル製(メイオリゴGY、メイオリゴG、メイオリゴP)など。
イソマルトオリゴ糖:昭和産業(株)製(イソマルト500、イソマルト900、イソマルト900P)など。
キシロオリゴ糖:サントリーウェルネス(株)製(キシロオリゴ70、キシロオリゴ95P、キシロオリゴ35P)など。
ニゲロオリゴ糖:日本食品化工(株)製(テイストオリゴ)など。
ラフィノース:日本甜菜製糖(株)製(ニッテンラフィノース)など。
本発明の経口用液体組成物中、(C)成分の配合量は、0.1〜20W/V%が好ましく、0.5〜10W/V%がより好ましい。該範囲の下限値以上であると、本発明の効果が充分に得られる。上限値以下であると、(C)成分が充分に溶解し、製剤上の問題がなく、液体組成物の安定性も良好である。
また、(C)成分の配合量は、(A)成分および(B)成分の合計量に対し、0.1〜2000質量%が好ましく、1〜1000質量%がより好ましい。
本発明の経口用液体組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、前記(A)〜(C)成分以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分としては、例えばビタミン類、生薬、生理活性成分、甘味剤、保存剤(防腐剤)、安定化剤、pH調整剤、可溶化剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁剤、酸化防止剤、着香剤・香料、清涼化剤、着色剤、緩衝剤、水等が挙げられる。これらの成分は1種単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これらの成分は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量配合することができる。
本発明の経口用液体組成物における甘味剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.0001〜20W/V%程度である。
さらに、肉体疲労時の栄養補給や滋養強壮を目的としたドリンク剤には一般的に、味の調整を目的として、比較的多量(20〜60w/v%程度)の砂糖が配合されているが、近年、カロリー低減のため低糖化が求められる傾向がある。本発明の経口用液体組成物は、(C)成分を配合することで香味の経時変化が抑制されているため、味の調整のために砂糖を配合する場合でも、(C)成分を含まない場合に比べて少ない配合量で所望の効果が得られる。
本実施例で用いた原料は以下のとおりである。
グルクロノラクトン:中外製薬(株)製「グロンサン原末」。
チアミン硝化物:和光純薬工業(株)製「チアミン硝酸塩」。
ガラクトオリゴ糖:ヤクルト薬品工業(株)製「オリゴメイト55N」(主に2〜6糖)。
フラクトオリゴ糖:(株)明治フードマテリアル製「メイオリゴP」(主に2〜5糖)。
イソマルトオリゴ糖:昭和産業(株)製「イソマルト900」(主に2〜4糖)。
キシロオリゴ糖:サントリーウェルネス(株)製「キシロオリゴ70」(主に2〜12糖)。
ニゲロオリゴ糖:日本食品化工(株)製「テイストオリゴ」(主に2〜4糖)。
ラフィノース:日本甜菜製糖(株)製「ニッテンラフィノース」(3糖)。
乳果オリゴ糖:塩水港精糖(株)製「L−55L」(主に2〜3糖)。
表1〜3に示す組成の経口用液体組成物を調製した。表中、各成分の配合量の単位はg/100mLであり、精製水の「残部」は経口用液体組成物の全量が100mLとなる量である。表中、pHは、25℃におけるpHであり、pH計(HM−30R:東亜ディーケーケー(株)製)を用いて測定した。
得られた経口用液体組成物を容量50mL充填用ガラス瓶に50mL充填し、スクリュー栓をした後、70℃の恒温槽中に2日間保存した。この経口用液体組成物(70℃2日間保存品)について、以下の評価を行った。結果を表1〜3に示す。
・外観(色)の評価:
保存後室温まで放冷した後、色差計(Spectro Color Meter:日本電色工業(株)製)を用いて、5℃2日間保存品を対照として色差(ΔE*ab値)を測定した。
健康な成人10名を選び、70℃2日間保存品の香味を5℃2日間保存品と比較して以下の基準で評価し、10名の平均値を算出した。
[香味の評価基準]
0点:5℃2日間保存品に比べて、変化していない。
1点:5℃2日間保存品に比べて、極わずかに変化している。
2点:5℃2日間保存品に比べて、少し変化している。
3点:5℃2日間保存品に比べて、明らかに変化している。
4点:5℃2日間保存品に比べて、かなり変化している。
5点:5℃2日間保存品に比べて、非常に変化している。
一方、(A)成分および(B)成分のみを含有する比較例1、(C)成分の代わりに乳果オリゴ糖または白糖を配合した比較例2、3は、いずれも、ΔE*ab値が5.50を超えており、香味評価の平均値も4.0点を超えており、外観、香味ともに経時安定性が悪かった。
なお、グルクロノラクトンの3W/V%水溶液、チアミン硝化物の0.03W/V%水溶液についてそれぞれ上記と同様の評価を行ったところ、グルクロノラクトンの3W/V%水溶液のΔE*ab値は0.50、香味評価の平均値は0.1であり、チアミン硝化物の0.03W/V%水溶液ΔE*ab値は0.10、香味評価の平均値は0.2であり、外観および香味の変化はほとんど生じていなかった。
内服液剤の処方例として、表4〜6に示す組成の経口用液体組成物を常法により調製した。表中、各成分の配合量の単位はg/100mLであり、精製水の「残部」は経口用液体組成物の全量が100mLとなる量である。また、希塩酸、水酸化ナトリウムの「適量」は、所定のpHに調節するために用いた量である。pHは、前記と同様、25℃におけるpHである。
得られた経口用液体組成物について、香味の評価を前記と同様にして行った。結果を表4〜6に示す。
該結果に示すとおり、実施例19〜43の経口用液体組成物はいずれも香味評価の平均値が2.0点以下であり、経時安定性が良好であった。また、70℃2日間保存品を目視にて観察し、5℃2日間保存品と比較したところ、外観(色)の変化は認められなかった。
Claims (1)
- (A)グルクロノラクトンと、(B)チアミン、チアミン誘導体およびそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(C)ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖およびラフィノースからなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴ糖と、を含有することを特徴とする経口用液体組成物。
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