本発明は、シリンダヘッドに設けられるバルブのリフト量を可変する可変動弁装置とこれを備えたエンジン装置および輸送機器に関する。
一般に、エンジンの燃費、出力または排ガス濃度などが良好なバルブリフト量は、エンジンの回転数に応じて変わる。そこで、エンジンの回転数に応じてバルブリフト量を可変する可変動弁装置(VVA:Variable Valve Actuation)が従来から開発されている。
特許文献1に記載の技術
特許文献1に記載の可変動弁装置は、カム軸と、高速用カムと、低速用カムと、ローラと、ロッカアームと、ロッカシャフトと、油圧ピストンとを備えている。高速用カムおよび低速用カムはカム軸に設けられている。ローラは、その軸心回りに回転可能、かつ、低速用カムおよび高速用カムのいずれかと接触する位置に移動可能にロッカアームに保持されている。ロッカアームは、ロッカシャフト軸回りに揺動可能に設けられて、バルブを開閉する。油圧ピストンは、シリンダヘッドに内蔵され、ローラを低速位置と高速位置との間で移動させる。
このような構成の可変動弁装置では、油圧ピストンによってローラを移動させることで、ローラが接触するカムを、低速用カムおよび高速用カムとの間で切り替える。ローラは低速用カムまたは高速用カムの各カムプロフィールに応じて押し下げられる。これに応じて、ロッカアームの揺動量とともにバルブのリフト量が切り替わる。ここで、油圧ピストンはシリンダヘッドに内蔵されているので、可変動弁装置の小型化を図ることができる。
特開2002−213218号公報
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置では、上述のように油圧ピストンはシリンダヘッドに内蔵されているので、油圧ピストンを駆動する油圧通路の少なくとも一部は、シリンダヘッド自体に形成されている。しかしながら、油圧ピストンを内蔵しない、換言すれば、バルブのリフト量を可変しない動弁装置を搭載するシリンダヘッド(以下、単に「動弁装置用のシリンダヘッド」という)は油圧ピストンを内蔵可能な部位や油圧通路を有していない。よって、動弁装置用のシリンダヘッドをそのまま流用して可変動弁装置を搭載できない。
また、シリンダヘッドに油圧ピストンを内蔵するとともにシリンダヘッドに油圧通路を形成するために、シリンダヘッドに設けられる吸気ポートや水ジャケット等の配置を変更したり、シリンダヘッドの形状を変更する場合がある。このような場合、可変動弁装置を搭載するシリンダヘッドは、動弁装置用のシリンダヘッドと根本的な形状や構造が異なる。よって、シリンダヘッドの汎用性を高めることができないという不都合がある。
また、多気筒のエンジン装置の場合、油圧ピストンはカム軸方向に複数並べて配置される。これに対応して、シリンダヘッドにカム軸と平行に長穴を形成し、これに作動油を通じることで、効率よく各油圧ピストンに作動油を供給することが可能となる。しかし、長穴の形成は比較的困難な加工であり、製造コストを上げてしまう。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、バルブのリフト量を可変するための特別な構成を備えていないシリンダヘッドに搭載することができる可変動弁装置とこれを備えたエンジン装置および輸送機器を提供することを目的とする。
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、シリンダヘッドに設けられるバルブのリフト量を可変する可変動弁装置であって、形状の異なる複数のカムを回転させるカム軸と、油圧で作動し、バルブに作用するカムを切り替える切替部と、シリンダヘッドとは別体に設けられ、前記切替部を保持するとともに、この切替部に作動油を供給する保持部と、前記切替部に供給される作動油の圧力を調整する油圧調整部と、前記切替部と前記油圧調整部との間にわたって、シリンダヘッドの外部に形成されている油圧通路と、カムと接触して揺動する複数の揺動部材と、を備え、前記保持部は、さらに、前記カム軸を回転可能に支持し、かつ、揺動部材を揺動可能に支持し、前記油圧調整部はヘッドカバーまたは前記保持部に支持されており、前記油圧通路はシリンダヘッドの上方に配置されている可変動弁装置である。
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、保持部はシリンダヘッドと別体であり、油圧通路はシリンダヘッドの外部に形成されているので、シリンダヘッドは、バルブのリフト量を可変するための油路などの特別な構成を備えることを要しない。すなわち、本発明の可変動弁装置によれば、バルブのリフト量を可変しない動弁装置に適合するシリンダヘッドに搭載することができるので、シリンダヘッドの汎用性を高めることができる。その結果、シリンダヘッドの製造コストを抑制することができる。
また、保持部はカム軸の軸受けを兼ねているので、可変動弁装置の部品点数を削減することができる。
油圧通路のみならず、油圧調整部自体もシリンダヘッドと別体に設けることができる。
可変動弁装置の省スペース化を図ることができる。
ここで、バルブは吸気バルブおよび排気バルブを含む概念であるが、切替部は吸気バルブに作用するカムを切り替えるものでもよいし、排気バルブに作用するカムを切り替えるものでもよい。吸気バルブ用の切替部、および、排気バルブ用の切替部の少なくともいずれかを備えている場合は全て、「切替部」を備えていることとなり、本発明の対象である。
また、本発明において、前記保持部は、シリンダヘッドに着脱可能であることが好ましい(請求項2)。保持部をシリンダヘッドに取り付けることで、好適に保持部を配備することができる。
また、本発明において、前記切替部は、前記保持部に内蔵される油圧シリンダと、前記油圧シリンダに設けられ、前記油圧シリンダの油圧に応じて往復移動する油圧ピストンを備えることが好ましい(請求項3)。
また、本発明において、前記保持部の内部には、前記油圧シリンダと連通する作動油路が形成されており、前記油圧通路は、前記作動油路を含んで構成されることが好ましい(請求項4)。
また、本発明において、前記保持部は、前記カム軸を回転可能に支持する軸受け面を有し、前記作動油路は、この軸受け面から作動油を導入して前記切替部に供給する第1油圧通路であり、前記カム軸の内部には、前記第1油圧通路に作動油を供給する第2油圧通路が形成されており、前記油圧通路は、前記第1油圧通路および前記第2油圧通路を含んで構成されることが好ましい(請求項5)。保持部はカム軸の軸受けを兼ね、カム軸の内部に第2油圧通路を形成することにより、可変動弁装置の部品点数を削減することができる。また、カム軸の内部を第2油圧通路とすることにより、可変動弁装置の省スペース化を図ることができる。
また、本発明において、前記カム軸の内部には、前記軸受け面に潤滑油を供給する第1潤滑油通路が形成されていることが好ましい(請求項6)。カム軸の内部に第1潤滑油通路を形成することで、部品点数を削減できるとともに、可変動弁装置の設置スペースをさらに低減することができる。
また、本発明において、前記第1油圧通路および第1潤滑油通路はそれぞれ、断面半円形の内部配管によって形成されていることが好ましい(請求項7)。
また、本発明において、前記保持部に接続される、シリンダヘッドとは別体の油圧配管を備え、前記作動油路は、前記油圧配管によって導入された作動油を前記切替部に供給する第3油圧通路であり、前記油圧通路は、前記第3油圧通路および前記油圧配管を含んで構成されることが好ましい(請求項8)。保持部と油圧配管の接続は簡易な構成で実現でき、作動油のリークも避けることができる。また、保持部やカム軸の構造を簡素化することができる。
また、本発明において、前記保持部はさらに、前記揺動部材に対して潤滑油を噴射する噴射口を有することが好ましい(請求項9)。揺動部材の焼き付きを好適に防止することができる。
また、請求項10に記載の発明は、前記可変動弁装置によって開閉されるバルブを有するシリンダヘッドと、前記シリンダヘッドの外部に設けられ、前記油圧調整部の一次側に作動油を供給する外部配管と、を備えているエンジン装置である。
[作用・効果]請求項10に記載の発明によれば、外部配管をシリンダヘッドの外部に備えているので、シリンダヘッドは、油圧調整部の一次側に作動油を供給するための特別な油路などの構成を備えることを要しない。すなわち、本願発明のシリンダヘッドは、バルブのリフト量を可変しない動弁装置を搭載可能なシリンダヘッドであればよい。このように、本発明に係るエンジン装置は、汎用性のあるシリンダヘッドを採用することができるので、製造コストを抑制することができる。
また、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載のエンジン装置を備えている輸送機器である。
[作用・効果]請求項11に記載の発明によれば、汎用性のあるシリンダヘッドに可変動弁装置を搭載して構成することが可能なエンジン装置を備えているので、輸送機器の製造コストを抑制することができる。
なお、ここでいう「輸送機器」とは、自動車、自動二輪車、水上バイク、スノーモービル、ボートなど、エンジン装置を搭載して人や荷物などを運搬可能なものをいう。
なお、本明細書は、次のような可変動弁装置に係る発明も開示している。
(1)上述の可変動弁装置において、前記油圧調整部はヘッドカバーの外面または内面に取り付けられている可変動弁装置。
前記(1)に記載の発明によれば、油圧調整部の一次側に作動油を供給する部材を、シリンダヘッドの外部に好適に配備することができる。
(2)上述の可変動弁装置において、前記切替部は、吸気バルブ用と排気バルブ用との二種類であり、前記第1油圧通路および前記第2油圧通路は、前記切替部の種類ごとに別個に形成されている可変動弁装置。
(3)上述の可変動弁装置において、前記切替部は、吸気バルブ用と排気バルブ用との二種類であり、前記第3油圧通路は、前記切替部の種類ごとに別個に形成され、前記油圧配管は、前記切替部の種類ごとに別個に設けられている可変動弁装置。
前記(2)または前記(3)に記載の各発明によれば、吸気バルブと排気バルブの双方のバルブリフト量を互いに独立して可変することができる。
(4)上述の可変動弁装置において、前記保持部は、一気筒の吸気バルブおよび排気バルブに対応する切替部ごとに別個に設けられている可変動弁装置。
前記(4)に記載の発明によれば、種々の気筒数に応じて可変動弁装置が備える切替部の個数が変わる場合であっても、保持部の個数を増減させることで対応でき、保持部の形状を変更する必要がない。よって、各保持部のサイズは比較的小さいままでよく、保持部の取り付け、取り外しを容易に行うことができる。
(5)上述の可変動弁装置において、前記カム軸は吸気バルブ用と排気バルブ用の2本であり、前記保持部は、吸気バルブ用のカム軸を支持する軸受け面と、排気バルブ用のカム軸を支持する軸受け面とを有している可変動弁装置。
前記(5)に記載の発明によれば、カム軸が2本の場合であっても、双方のカム軸を保持部が支持するので、可変動弁装置の設置スペースをさらに小容量化することができる。
(6)上述の可変動弁装置において、前記軸受け面は複数であり、前記第1潤滑油通路は、複数の前記軸受け面に潤滑油を供給する可変動弁装置。
前記(6)に記載の発明によれば、複数の軸受け面に効率良く潤滑油を供給することができる。
(7)上述の可変動弁装置において、前記保持部に接続される、シリンダヘッドとは別体の潤滑油用配管を備え、前記第2潤滑油通路は、前記潤滑油用配管によって導入された潤滑油を前記軸受け面に供給する可変動弁装置。
(8)上述の可変動弁装置において、前記軸受け面は複数であり、前記第2潤滑油通路は前記軸受け面ごとに別個に形成され、前記潤滑油用配管は、複数の前記第2潤滑油通路に連通接続している可変動弁装置。
(9)上述の可変動弁装置において、前記保持部は前記軸受け面を複数有し、前記第2潤滑油通路は、複数の前記軸受け面に並列的に連通している可変動弁装置。
前記(7)から前記(9)に記載の各発明によれば、複数の軸受け面に潤滑油を好適に供給することができる。
(10)上述の可変動弁装置において、前記切替部は、同じバルブに対応する複数の前記揺動部材同士を係合させた係合状態と、この係合を離脱させて同じバルブに対応する複数の前記揺動部材が互いに独立して揺動可能な離脱状態との間で切り替える可変動弁装置。
前記(10)に記載の発明によれば、切替部は好適にバルブに作用するカムを切り替えることができる。
(11)上述の可変動弁装置において、前記保持部は、カムと接触して揺動するとともに前記切替部を保持する揺動部材である可変動弁装置。
前記(11)に記載の発明によれば、揺動部材が切替部を保持するので、可変動弁装置のコンパクト化を図ることができる。
(12)上述の可変動弁装置において、シリンダヘッドから供給された潤滑油を通じる潤滑油通路と、シリンダヘッドの外部に形成され、前記潤滑油通路から分岐して前記油圧調整部の一次側に潤滑油を供給する一次側油通路と、を備えている可変動弁装置。
前記(12)に記載の発明によれば、一次側油通路を備えているので、油圧調整部の一次側に作動油を供給する部材を別途に設けることを要しない。
この発明に係る可変動弁装置によれば、保持部はシリンダヘッドと別体であり、油圧通路はシリンダヘッドの外部に形成されているので、シリンダヘッドは、バルブのリフト量を可変するための油路などの特別な構成を備えることを要しない。すなわち、本発明の可変動弁装置によれば、バルブのリフト量を可変しない動弁装置に適合するシリンダヘッドに搭載することができるので、シリンダヘッドの汎用性を高めることができる。その結果、シリンダヘッドの製造コストを抑制することができる。
また、この発明に係るエンジン装置によれば、外部配管をシリンダヘッドの外部に備えているので、シリンダヘッドは、油圧調整部の一次側に作動油を供給するための特別な油路などの構成を備えることを要しない。すなわち、本願発明のシリンダヘッドは、バルブのリフト量を可変しない動弁装置を搭載可能なシリンダヘッドであればよい。このように、本発明に係るエンジン装置は、汎用性のあるシリンダヘッドを採用することができるので、製造コストを抑制することができる。
さらに、この発明に係る輸送機器によれば、汎用性のあるシリンダヘッドに可変動弁装置を搭載して構成することが可能なエンジン装置を備えているので、輸送機器の製造コストを抑制することができる。
以下、図面を参照して、本発明の可変動弁装置とこれを備えたエンジン装置および輸送機器について説明する。輸送機器は、一例として自動二輪車両である。まず輸送機器を説明し、その後にエンジン装置と可変動弁装置を説明する。
1.輸送機器の構成
図1は、本実施例に係る自動二輪車両の概略構成を示す模式図である。自動二輪車両1はメインフレーム11を備えている。メインフレーム11の前端上部にはヘッドパイプ12が設けられている。ヘッドパイプ12にはフロントフォーク13が左右方向に揺動可能に支持されている。フロントフォーク13の上端部にはハンドル14が連結されており、ハンドル14の操作によってフロントフォーク13が揺動する。フロントフォーク13の下端部には前輪15が回転可能に取り付けられている。
メインフレーム11の上部には、燃料タンク16とシート17とが前後に並んで保持されている。燃料タンク16の下方にあたる位置には、エンジン装置20と変速機21とがメインフレーム11に保持されている。変速機21は、エンジン装置20で発生した動力を出力するドライブ軸21aを備えている。ドライブ軸21aにはドライブスプロケット23が連結されている。
メインフレーム11の下部後側にはスイングアーム24が揺動可能に支持されている。スイングアーム24の後端部には、ドリブンスプロケット25および後輪26が回転可能に支持されている。ドライブスプロケット23とドリブンスプロケット25との間には、チェーン27が懸架されている。エンジン装置20で発生した動力は、変速機21(ドライブ軸21a)、ドライブスプロケット23、チェーン27およびドリブンスプロケット25を介して後輪26に伝達される。
2.エンジン装置20の概略構成
図2を参照して、エンジン装置20の概略を説明する。図2はエンジン装置20における潤滑油および作動油の概略系統図である。エンジン装置20は、DOHC(Double Overhead Cam Shaft)エンジンを例示する。
図2に示すように、エンジン装置20は、クランクケース31と、シリンダブロック33と、シリンダヘッド35と、可変動弁装置37と、ヘッドカバー39とを備えている。クランクケース31は図示省略のクランクシャフトのほか、オイルポンプ41と、オイルクリーナ43と、メインギャラリ45とを備えている。オイルポンプ41は潤滑油を圧送し、オイルクリーナ43は潤滑油を濾過する。クランクケース31の上面にはシリンダブロック33が連結され、シリンダブロック33の上面にはシリンダヘッド35が連結されている。シリンダヘッド35はバルブ(後述)を備えているほか、潤滑油を可変動弁装置37に供給する内部通路67を有している。
可変動弁装置37は、シリンダヘッド35の上方に設けられている。可変動弁装置37は、2本のカム軸51を備えている。各カム軸51はそれぞれ、形状の異なるカムを回転させる(詳細は後述する)。ヘッドカバー39は、カム軸51を覆うように、シリンダヘッド35の上部に着脱自在に取り付けられる。
可変動弁装置37は、さらに、切替部53とオイルコントロールバルブ(Oil Control Valve)57と油圧通路59と潤滑油通路60とを備える。以下では、オイルコントロールバルブ57を「OCV57」と記載する。切替部53は、油圧で作動し、シリンダヘッド35に設けられるバルブ(後述)に作用するカムを切り替える。これにより、バルブのリフト量を可変することができる。
保持部55は、シリンダヘッド35と別体に設けられ、切替部53を保持する。保持部55はさらに、カム軸51を回転可能に支持する軸受け面55aを有し、カム軸51の軸受けを兼ねている。
OCV57は、ヘッドカバー39に支持され、切替部53に供給する作動油の油圧を調整する。油圧通路59は、OCV57と切替部53とにわたって形成されており、切替部53に作動油を供給する。この油圧通路59はシリンダヘッド35の外部に形成されている。OCV57は、この発明における油圧調整部に相当する。
エンジン装置20はさらに、OCV57の一次側に連通接続する外部配管65を備えている。外部配管65はシリンダヘッド35の外部に設けられ、その他端側はクランクケース31(メインギャラリ45)に連通している。よって、OCV57に供給されるのは潤滑油であるが、本明細書ではOCV57の二次側は一律に「作動油」と呼ぶ。
潤滑油通路60は、潤滑油を軸受け面55aに供給し、軸受け面55aとカム軸51との摺動部を潤滑する。潤滑油通路60の一次側は、内部通路67と連通している。内部通路67は、シリンダヘッド35の内部に形成されている。この内部通路67の一次側は、メインギャラリ45に連通している。
このように、本実施例1の可変動弁装置37では、保持部55はシリンダヘッド35と別体であり、油圧通路59はシリンダヘッド35の外部に形成されているので、シリンダヘッド35は、バルブのリフト量を可変するための油路などの特別な構成を備えていない。たとえば、バルブのリフト量を可変しない動弁装置の場合、上述した可変動弁装置37のうち、切替部53及び油圧通路59のほかOCV57や外部配管65等が省略された構成となる。このような構成の動弁装置に対応するシリンダヘッドは、内部通路67を備えていれば足りるので、上述のシリンダヘッド35と同じでよい。このため、本実施例1の可変動弁装置37によれば、シリンダヘッド35の共通化を図ることができ、汎用性を高めることができる。
また、本実施例1のエンジン装置20によれば、外部配管65をシリンダヘッド35の外部に備えているので、シリンダヘッド35においては、OCV57の一次側に作動油(潤滑油)を供給するための特別な油路などの構成を備えることを要しない。したがって、シリンダヘッド35は、バルブのリフト量を可変しない動弁装置を搭載可能なシリンダヘッドで足りる。このように、本実施例1のエンジン装置20は、汎用性のあるシリンダヘッド35を採用できるので、製造コストを抑制することができる。
また、本実施例1の自動二輪車両1によれば、汎用性のあるシリンダヘッド35に可変動弁装置37を搭載して構成することが可能なエンジン装置20を備えているので、自動二輪車両1の製造コストを抑制することができる。
3. 可変動弁装置37とシリンダヘッド35の構成
以下では、実施例1の可変動弁装置37およびシリンダヘッド35を中心に、さらに詳しく説明する。
3.1. シリンダヘッド35の概略構成と可変動弁装置37の全体構成
図3は、可変動弁装置37およびシリンダヘッド35の外観斜視図であり、図4は可変動弁装置37およびシリンダヘッド35の分解斜視図である。図3、図4では、エンジン装置20が直列四気筒で、1気筒あたり4バルブの場合における可変動弁装置37およびシリンダヘッド35を示している。
シリンダヘッド35の長手側の一側部には、4個の吸気ポート101の開口が形成されている。シリンダヘッド35の長手側の他側部には、図示省略の排気ポートの開口が形成されている。シリンダヘッド35は、吸気バルブおよび排気バルブを収容しており、図4では、これら吸気バルブおよび排気バルブのバルブステムの上端に設けられているパッド83が図示されている。
図3を参照する。2本のカム軸51はそれぞれ、シリンダヘッド35の長手方向と平行に設けられている。各カム軸51は、それぞれ吸気バルブ用と排気バルブ用である。吸気バルブ用のカム軸51には、1個の吸気バルブに対応して、低速用カム71と高速用カム73とがそれぞれ1個ずつ設けられている。排気バルブ用のカム軸51も、同様に各排気バルブに対応して低速カム71および高速カム81が設けられている。
保持部55は、カム軸51の軸心方向に1列に並べて配置されて、それぞれカム軸51を支持している。各保持部55は、カム軸を挟んで結合する上保持部61および下保持部63で構成されている。
可変動弁装置37は、カム軸51を回転可能に支持する軸受部75を備えている。なお、軸受部75は切替部53を保持していない点で保持部55と異なる。軸受部75は、カム軸を挟んで結合する上軸受部77および下軸受部79で構成されている。
図4を参照する。上保持部61と下保持部63は互いに分離可能である。また、下保持部63はシリンダヘッド35とも分離可能であり、シリンダヘッド35の上面に直接、取り付けられる。同様に、上軸受部77と下軸受部79も互いに分離可能である。また、下軸受部79は、シリンダヘッド35とも分離可能であり、シリンダヘッド35の上面に直接、取り付けられる。
4個の下保持部63は互いに分割されている。各下保持部63はそれぞれシリンダヘッド35の上面に直接、取り付けられる。各下保持部63の上面には2個の半円形の軸受け面63aが形成されている。下保持部63の軸受け面63aには双方のカム軸51が載せられる。下保持部63の2個の軸受け面63aの間には、点火プラグ(図示省略)を挿入するための貫通孔63bが形成されている。このように、下保持部63は1気筒ごとに別個に設けられている。
上保持部61はカム軸51ごとに別個に設けられている。また、カム軸51の軸心方向に並ぶ2個の上保持部61同士は連結されて一体に構成されている。各上保持部61の下面には、1個の半円形の軸受け面61aが形成されている。各上保持部61は、カム軸51を挟んで対応する下保持部63の上面に結合される。上述した保持部55の軸受け面55aは、軸受け面61aおよび軸受け面63aによって構成される。
下軸受部79の上面には2個の半円形の軸受け面79aが形成されている。下軸受部79の軸受け面79aには双方のカム軸51が載せられる。上軸受部77は、カム軸51ごとに別個に設けられている。各上軸受部77の下面には半円形の軸受け面77aが形成されている。各上軸受部77は、カム軸51を挟んで対応する下軸受部79の上面に結合される。軸受け面77aと軸受け面79aとは、軸受部75の軸受け面75aを構成する。
上述した各軸受け面55aにはカム軸51のジャーナル部51aが接触し、軸受け面75aにはカム軸51のジャーナル部51bが接触する。低速用カム71と高速用カム73は、ジャーナル部51aの両側にそれぞれ1個ずつ配置されている。
可変動弁装置37はさらに、低速カム71または高速カム73の動きを、パッド83を介してバルブステムの上端であるステムエンドに伝えて、吸気バルブ/排気バルブを開閉するロッカアーム機構81を備えている。以下では、吸気バルブと排気バルブを特に区別しない場合は、単に「バルブ」と記載する。
3.2. ロッカアーム機構81
図5を参照してロッカアーム機構81の詳細を説明する。図5は、ロッカアーム機構81の分解斜視図である。なお、図5では、説明の便宜上、下保持部63の一部のみを図示している。
ロッカアーム機構81はバルブごとに別個に設けられている。1気筒のバルブに対応する複数(4個)のロッカアーム機構81が、各下保持部63に支持されている。ロッカアーム機構81は、ロッカシャフト84と低速用ロッカアーム85と高速用ロッカアーム87を備えている。
ロッカシャフト84は、下保持部63の軸受け面63aより下方の位置から両側方にカム軸51の軸心と略平行に突出するように設けられている。図5では、便宜上、下保持部63の一側方に突出するロッカシャフト84のみを図示している。
ロッカシャフト84には、低速用ロッカアーム85と高速用ロッカアーム87とが揺動可能に設けられている。低速用ロッカアーム85は高速用ロッカアーム87より下保持部63に近い方に配置されている。
低速用ロッカアーム85の先端上面85aは低速用カム71と接触し、高速用ロッカアーム87の先端上面87aは高速用カム73と接触する。低速用ロッカアーム85の先端下面85bはパッド83と接触する。低速用ロッカアーム85と高速用ロッカアーム87とはそれぞれ、この発明における揺動部材に相当する。
ロッカアーム機構81はさらに、ロストモーションスプリング89(図8、図9参照)を備えている。ロストモーションスプリング89は、高速用ロッカアーム87の先端を上方(高速用カム73側)に付勢している。
3.3. 切替部53
図5乃至図7を参照する。図6は、作動油と潤滑油の経路を模式的に示した可変動弁装置37とシリンダヘッド35の断面図である。図7は、係合状態における可変動弁装置37とシリンダヘッド35の断面図である。
切替部53は油圧アクチュエータである。具体的には、切替部53は、油圧シリンダ91と油圧ピストン93と連結ピン95と圧縮コイルバネ97(図6、図7参照)とを備えている。油圧シリンダ91は、下保持部63に内蔵されている。油圧ピストン93は、油圧シリンダ91の両側に一つずつ設けられており、それぞれ下保持部63の両側に位置する低速用ロッカアーム85に向かって往復移動する。
連結ピン95は、低速用ロッカアーム85の内部に形成された貫通孔85cに摺動可能に挿入されている。連結ピン95の下保持部63側の一端は貫通孔85の外側に常に突出しており、その端部には鍔部99が設けられている。鍔部99は油圧ピストン93と当接している。連結ピン95の他端は、低速用ロッカアーム85から高速用ロッカアーム87側に突出する突出位置と(図6に示す連結ピン95の位置)、低速用ロッカアーム85の内部に収まる退避退避位置(図7に示す連結ピン95の位置)との間で、移動可能である。
図5に示すように、高速用ロッカアーム87には連結ピン95と係合可能な係合部87bを有する。係合部87bは、突出位置にある連結ピン95と係合し、退避位置にある連結ピン95と離脱する。係合部87bは略半円形状を呈し、連結ピン95の周面の上側部分と片当たりすることによって係合する。なお、係合部87bと連結ピン95の係合はこの態様に限らず、凹凸結合などに適宜に選択される。
図6、図7に示すように、圧縮コイルバネ97は、連結ピン95を退避する方向に付勢する。圧縮コイルバネ97は、鍔部99と低速用ロッカアーム85との間に取り付けられている。
そして、油圧ピストン93が前進すると連結ピン95は突出位置に移動し、係合部87bと係合する。図7は、係合した状態を示している。また、油圧ピストン93が後退すると、圧縮コイルバネ97付勢により連結ピン95は待避位置に移動し、連結ピン95と係合部87bとの係合が離脱する。図6は、連結ピン95と係合部87bとの係合していない状態、すなわち、離脱した状態を示している。
連結ピン95が係合部87bと離脱した状態では、低速用ロッカアーム85と高速用ロッカアーム87は互いに独立して揺動する。すなわち、低速用ロッカアーム85は低速用カム71のカムプロフィールに応じて揺動し、高速用ロッカアーム87は高速用カム73のカムプロフィールに応じて揺動する。この状態は、この発明における離脱状態に相当する。
連結ピン95が係合部87bと係合した状態では、低速用ロッカアーム85と高速用ロッカアーム87とは高速用カム73のカムプロフィールに応じて揺動する。この状態は、この発明における係合状態に相当する。
3.4. シリンダヘッド35
図6、図7を参照する。ここで、吸気バルブの構成と排気バルブの構成と同じであるので、吸気バルブを例にとって説明する。各吸気ポート101はシリンダヘッド35の内部で2つの吸気ポート102、103に分岐され、それぞれ別個の吸気バルブ104を介して同一の燃焼室Cに通じている。
吸気バルブ104には、それぞれバルブステム105が連結されている。バルブステム105は、筒形状を呈するバルブガイド106に摺動可能に挿通されている。バルブステム105には、吸気バルブ104を閉じ方向(上方向)に付勢するバルブスプリング107が設けられている。バルブステム105の上端には上述したパッド83が設けられている。パッド83には、上述したように低速用ロッカアーム85のみが当接する。
よって、離脱状態の場合、低速用カム71のカムプロフィールに応じたバルブリフト量で吸気バルブ104が開閉する(図6参照)。係合状態の場合、高速用カム73のカムプロフィールに応じたバルブリフト量で吸気バルブ104が開閉する(図7参照)。吸気バルブ104は、この発明におけるバルブに相当する。排気バルブも、この発明におけるバルブに相当する。
3.5. 作動油の油路と潤滑油の油路
以下の説明において、作動油を通じる油路を「作動油路」と記載し、潤滑油を通じる油路を「潤滑油路」という。
図5を参照する。下保持部63の内部には、油圧シリンダ91に連通するとともに、その軸受け面63aに開口する作動油路111が形成されている。作動油路111は、この発明における第1油圧通路に相当する。
下保持部63はさらに、低速用ロッカアーム85および高速用ロッカアーム87に向けて潤滑油を噴射する噴射口113を有している。噴射口113は、低速用ロッカアーム85と対向する保持部55の両側面に形成されている。また、下保持部63の内部には、各噴射口113に連通するとともに、軸受け面63aに開口している潤滑油路115が形成されている。
図6、図7を参照する。カム軸51は、その内部に作動油路121と、潤滑油路131とを有している。作動油路121および潤滑油路131はそれぞれカム軸51の軸心方向に全てのジャーナル部51a、51bを含む範囲にわたって形成されている。本実施例では、カム軸51の中空部に設けられた断面半円形の2本の内部配管122、132によって、作動油路121と潤滑油路131を形成している。作動油路121は、この発明における第2油圧通路に相当する。潤滑油路131は、この発明における第1潤滑油通路に相当する。
図8を参照する。図8は、カム軸51と保持部55と軸受部75の要部の分解斜視図である。カム軸51の各ジャーナル部51aには、環状溝123と環状溝133が、それぞれ全周にわたって形成されている。環状溝123は作動油路111と対向可能な位置に配置され、環状溝133は潤滑油路115と対向可能な位置に配置されている。各環状溝123はそれぞれ、供給孔124によって作動油路121と連通されている。同様に、各環状溝133はそれぞれ、供給孔134によって潤滑油路131と連通している。
カム軸51のジャーナル部51bには、カム軸51の軸心方向に対する位置をずらして2本の環状溝126、136を形成されている。環状溝126と作動油路121とは、導入孔127によって連通されている。また、環状溝136と潤滑油路131とは導入孔137によって連通されている。
上軸受部77の内部には作動油路141が形成されている。作動油路141の一端側は、軸受け面77aであって、環状溝126に対向する位置に開口している。作動油路141の他端側は、上軸受部77の上面に開口しており、図示省略の作動油路によってOCV57(図2参照)の二次側と連通している。この作動油路は、別途に設けられる配管によって形成されてもよいし、ヘッドカバー39の内部に形成されていてもよい。
また、下軸受部79には潤滑油路143が形成されている。潤滑油路143の一端側は、軸受け面79aであって、環状溝136に対向する位置に開口している。潤滑油路143の他端側は、下軸受部79の下面に開口しており、シリンダヘッド35の内部通路67と連通している(図7、図8参照)。
上述した油圧通路59は、これら作動油路111、作動油路121、環状溝123、供給孔124、環状溝126、導入孔127および作動油路141を含んで構成される。また、潤滑油通路60は、潤滑油路131、環状溝133、供給孔134、環状溝136、導入孔137および潤滑油路143を含んで構成される。
4. 動作
次に、実施例1に係る可変動弁装置37およびこれを備えたエンジン装置20の動作について説明する。
オイルポンプ41は、潤滑油を吸い上げてオイルクリーナ43に圧送する。オイルクリーナ43は潤滑油を濾過してメインギャラリ45に送る。メインギャラリ45に供給された潤滑油の一部は、外部配管65を通じてOCV57に送られる。また、メインギャラリ45に供給された潤滑油の一部は、シリンダヘッド35の内部通路67を通じて軸受部75に供給される。
OCV57は作動油の圧力を調整し、OCV57の二次側から軸受部75に作動油を供給する。軸受部75に供給された作動油は、作動油路141を通じて、ジャーナル部51bに供給される。ジャーナル部51bに供給された作動油は、環状溝126、導入孔127を通じてカム軸51内の作動油路121に導入される。作動油路121に導入された作動油は、供給孔124、環状溝123を通じて各保持部55の軸受け面55aに供給される。軸受け面55aに供給された作動油は、作動油路111に流入し、油圧シリンダ91に供給される。これにより、油圧シリンダ91にはOCV57によって調整された油圧が与えられる。油圧ピストン93は、油圧シリンダ91に与えられた油圧に応じて往復移動する。
油圧ピストン93が前進移動すると、連結ピン95は係合位置に移動して、高速用ロッカアーム87の係合部87bと係合する。すなわち、係合状態となり、低速用ロッカアーム85と高速用ロッカアーム87とは高速用カム73のカムプロフィールに応じて揺動し、低速用ロッカアーム85が吸気バルブ104を押し下げる。これにより、吸気バルブ104は、高速用カム73のカムプロフィールに応じたリフト量で開閉する。
油圧ピストン93が後退移動すると、連結ピン95は退避位置に移動して、高速用ロッカアーム87の係合部87bから離脱する。すなわち、離脱状態となり、低速用ロッカアーム85と高速用ロッカアーム87は互いに独立して揺動し、低速用ロッカアーム85が吸気バルブ104を押し下げる。これにより、吸気バルブ104は、低速用カム71のカムプロフィールに応じたリフト量で開閉する。
他方、軸受部75に供給された潤滑油は、潤滑油路143を通じて、カム軸51のジャーナル部51bに供給される。ジャーナル部51bに供給された潤滑油は、環状溝136、導入孔137を通じてカム軸51内の潤滑油路131に導入される。潤滑油路131に導入された潤滑油は、供給孔134、環状溝133を通じて各保持部55の軸受け面55aに供給される。軸受け面55aに供給された潤滑油は、軸受け面55aとカム軸51のジャーナル部51aとの摺動部を潤滑する。
また、軸受け面55aに供給された潤滑油の一部は、潤滑油路115へ流入して、噴射口113から低速用ロッカアーム85および高速用ロッカアーム87に向けて噴射される。噴射された潤滑油は、低速用ロッカアーム85および高速用ロッカアーム87がそれぞれ低速用カム71および高速用カム73と接触する部分を潤滑する。
このように、本実施例1に係る可変動弁装置37によれば、「2.エンジン装置20の概略構成」で説明したように、保持部55はシリンダヘッド35と別体であり、油圧通路59は、シリンダヘッド35の外部に形成されている。したがって、シリンダヘッド35は、バルブ104のリフト量を可変するための油路などの特別な構成を備えることを要しない。よって、シリンダヘッド35の汎用性を高めることができる。
また、保持部55はカム軸51の軸受けを兼ねているので、可変動弁装置37の部品点数を削減することができる。また、保持部55は、低速用ロッカアーム85および高速用ロッカアーム87に対して潤滑油を噴射する噴射口113を有しているので、低速用ロッカアーム85と低速カム71、および、高速用ロッカアーム87と高速カム73の焼き付きを好適に防止できる。
また、カム軸51の内部は作動油路121および潤滑油路131として活用しているので、可変動弁装置37の部品点数を削減することができるとともに、可変動弁装置37をコンパクト化できる。さらに、作動油路121および潤滑油路131をそれぞれカム軸51の軸心方向に延在形成しているので、複数の切替部53に好適に作動油を供給することができ、複数の軸受け面61a、63aに好適に潤滑油を供給することができる。
以下、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。なお、実施例2の自動二輪車両1の構成は実施例1と同様であるので説明を省略し、実施例2の可変動弁装置37を中心に説明する(実施例3から実施例6についても同様である)。また、実施例1と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
図9は、可変動弁装置37の要部平面図である。図9では、上保持部61と上軸受部77の図示を省略している。図10は保持部55の断面図であり、図11は軸受部75の断面図である。なお、図10、図11は、説明の便宜上、油圧シリンダ91およびロッカシャフト84等の主要な構成が現れる切断面の断面図である。
図9に示すように、実施例2では、複数の吸気バルブ用の切替部53と、複数の排気バルブ用の切替部53とを保持する下保持部151を備えている。下保持部151は、平面視で2本のカム軸51の間に配置され、カム軸51の軸心方向と平行に長尺な中央縦部材151aと、平面視で各カム軸51の外側に配置され、中央縦部材151aと平行に対向配置された二つの側方縦部材151bと、中央縦部材151aから左右の側方縦部材151bに掛け渡された複数(5個)の横部材151cとが一体に連結された形状を呈している。
各横部材151cの上面には、2本のカム軸51を支持する二つの半円形の軸受け面151dが形成されている。図9において、最上段の横部材151c以外の横部材151cの上面には、カム軸51を挟んで、実施例1で説明した上保持部61がそれぞれ結合し、各結合面には、実施例1で説明した軸受け面55aが構成される。図10は上保持部61が下保持部151と結合している様子を示している。また、これら最上段の横部材151c以外の横部材151cはそれぞれ、切替部53と、ロッカアーム機構81とを保持している。
最上段の横部材151cの上面には、カム軸51を挟んで、実施例1で説明した上軸受部77が結合し、この結合面には、実施例1で説明した軸受け面75aが構成される。図11は上軸受部77が下保持部151と結合している様子を示している。
このように、実施例2の下保持部151は、実施例1で説明した下保持部63及び下軸受部79を連結して一体に構成したものに相当する。
図9乃至図11に示すように、各側方縦部材151bの内部にはそれぞれ、潤滑油路153が形成されている。各潤滑油路153は、カム軸51の軸心方向に全ての横部材151c(軸受け面151d)を含む範囲にわたって形成されている。各横部材151cの内部には、潤滑油路153と連通するとともに、軸受け面151dに開口する供給孔155が軸受け面151dごとに形成されている。下保持部151はさらに、潤滑油路153と連通するとともに、下保持部151の下面に開口して、シリンダヘッド35の内部通路67(図2)と連通可能な導入孔157を有している。潤滑油路153は、この発明における第2潤滑油通路に相当する。
このような潤滑油路の構成に対応して、実施例1で説明した潤滑油路に関する構成すなわち、カム軸51が有する潤滑油路131、内部配管132、環状溝133、供給孔134、環状溝136および導入孔137と、軸受部75が有する潤滑油路143は省略される。以上より、実施例2における潤滑油通路60は、潤滑油路153、供給孔155および導入孔157を含んで構成される。なお、油圧通路59の構成は実施例1と同様である。
次に、実施例2の動作について説明する。ここで、作動油の流れは実施例1と同様であるので、潤滑油の流れを中心に説明する。内部通路67から保持部151に供給された潤滑油は、導入孔157を通じて、潤滑油路153に流入する。潤滑油路153に流入した潤滑油は、供給孔155を通じて軸受け面151dに供給される。軸受け面151dに供給された潤滑油は、軸受け面151dとカム軸51のジャーナル部51a、51bとの摺動部を潤滑する。
このように、本実施例2に係る可変動弁装置37によれば、実施例1と同様に、切替部53と油圧通路59はいずれもシリンダヘッド35の外部に設けているので、シリンダヘッド35の汎用性を高めることができる。
また、潤滑油路153を下保持部151に形成することで、カム軸51の内部には作動油路121のみとなり、作動油路121および潤滑油路153をそれぞれ広くとることができる。これにより、作動油不足による切替部53の動作不良、または、潤滑油不足による焼き付きを防止できる。
以下、図面を参照してこの発明の実施例3を説明する。なお、実施例1と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。図12は、可変動弁装置37の外観斜視図であり、図13は保持部55の断面図であり、図14はカム軸51の要部断面図であり、図15は軸受部75の断面図である。
図12に図示するように、各保持部55および軸受部75の上部には、潤滑油用配管161がカム軸51の軸心方向と略平行に設けられている。潤滑油用配管161は上保持部61および上軸受部77の上面に締結されるユニオンボルト163によって支持されている。
図13乃至図15に示すように、潤滑油用配管161のユニオンボルト163に支持される部位には、環状の継ぎ手部材165が設けられている。継ぎ手部材165は、ユニオンボルト163の軸部163bに挿入され、ユニオンボルト163の頭部163aと上保持部61または上軸受部77の上面との間に挟み込まれて固定される。ユニオンボルト163の軸部163bの内部には、貫通孔167が形成されている。貫通孔167は、継ぎ手部材165と対向する軸部163bの周面に開口している。これにより、潤滑油用配管161は、継ぎ手部材165を介して貫通孔167と連通している。また、貫通孔167は、軸部163bの先端に開口している。
図13、図14に示すように、保持部55の内部には、貫通孔167と連通するとともに、軸受け面55aに開口する潤滑油路169が形成されている。
図15に示すように、軸受部75の内部には、潤滑油路171、173が形成されている。潤滑油路171は、上軸受部77および下軸受部79にわたって形成されている。潤滑油路171の一端側は貫通孔167と連通しており、他端側は軸受部75の底面に開口して、シリンダヘッド35の内部通路67(図2)と連通可能である。
潤滑油路173は、下軸受部79に形成されている。潤滑油路173の一端側は軸受け面75aに開口するとともに、他端側は潤滑油路171に合流してシリンダヘッド35の内部通路67(図2)と連通可能である。
このような潤滑油路の構成に対応して、実施例1で説明した潤滑油路に関する構成は省略される。以上より、実施例3における潤滑油通路60は、軸受部75の潤滑油路171および潤滑油路173、ユニオンボルト163(貫通孔167)、継ぎ手部材165、潤滑油用配管161、および、保持部55の潤滑油路169によって構成される。なお、油圧通路59の構成は実施例1と同様である。
次に、実施例3の動作について、潤滑油の流れを中心に説明する。内部通路67から軸受部75に供給された潤滑油は、潤滑油路171に導入される。潤滑油路171に導入された潤滑油の一部は、潤滑油路173を通じて軸受け面75aに供給される。軸受け面75aに供給された潤滑油は、軸受け面75aとジャーナル部51bとの摺動部を潤滑する。
また、潤滑油路171に導入された潤滑油の一部は、上軸受部77に締結されるユニオンボルト163の貫通孔167を通じて、潤滑油用配管161に流入する。潤滑油用配管161に流入された潤滑油は、複数の継ぎ手部材165を経由して潤滑油用配管161の全体に通じる。また、潤滑油は、各継ぎ手部材165から各上保持部61に締結されるユニオンボルト163の貫通孔167を通じて潤滑油路169に流入する。潤滑油路169に流入した潤滑油は、軸受け面55aに供給される。軸受け面55aに供給された潤滑油は、軸受け面55aとジャーナル部51aとの摺動部を潤滑する。
このように、本実施例3に係る可変動弁装置37によれば、実施例1と同様に、切替部53と油圧通路59はいずれもシリンダヘッド35の外部に設けているので、シリンダヘッド35の汎用性を高めることができる。
また、潤滑油用配管161を別途に備えることで、保持部55と潤滑油用配管161の接続を簡易な構造とし、軸受け面55aに対する潤滑油の供給を好適に行うことができる。
以下、図面を参照してこの発明の実施例4を説明する。なお、実施例1、実施例2と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。図16は、可変動弁装置37の要部平面図である。図16では、上保持部61と上軸受部77の図示を省略している。図17は、保持部55の断面図である。なお、図17は、説明の便宜上、油圧シリンダ91およびロッカシャフト84等の主要な構成が現れる切断面の断面図である。
図16に示すように、実施例4は、実施例2で説明した下保持部151を備えている。実施例4の下保持部151の内部に形成される作動油路および潤滑油路が実施例2の下保持部151と異なるので、この点を中心に説明する。
図16および図17に示すように、各側方縦部材151bの内部にはそれぞれ、作動油路191が形成されている。各作動油路191は、カム軸51の軸心方向に沿って、図16において最上段の横部材151c以外の4つの横部材151cを含む範囲にわたっている。下保持部151は、作動油路191と油圧シリンダ91とを連通する供給孔193を有している。供給孔193は、図17に示すように、下保持部151の下面に形成された溝で構成されている。この場合、溝を閉塞するシリンダヘッド35の接合面は供給孔193の側壁として機能する。しかしながら、供給孔193がシリンダヘッド35の外部であることには変わりがない。なお、供給孔193によってシリンダヘッド193の上面に特別な形状や構成を備えさせるものではない。
また、下保持部151は、作動油路191と連通するとともに、下保持部151の側面に開口する導入孔195を有している。導入孔195には、作動油用配管197が連通接続されている。作動油用配管197はOCV57の二次側に連通している。作動油路191は、この発明における第3油圧通路に相当する。作動油用配管197は、この発明における油圧配管に相当する。
このような作動油路の構成に対応して、実施例1で説明した作動油路に関する構成、すなわち、保持部55の作動油路111、カム軸51の作動油路121、内部配管122、環状溝123、供給孔124、環状溝126および導入孔127、軸受部75の作動油路141を省略したものとなる。以上より、実施例4における油圧通路59は、作動油路191、供給孔193、導入孔195および作動油用配管197によって構成される。
次に、実施例4の動作について、作動油の流れを中心に説明する。OCV57の二次側から作動油用配管197に作動油が供給される。作動油用配管197に供給された作動油は、導入孔195を通じて作動油路191に流入する。作動油路191に流入した作動油は、供給孔193を通じて油圧シリンダ91に供給される。これにより、油圧シリンダ91にはOCV57によって調整された油圧が与えられる。この油圧に応じて、切替部53は吸気バルブ104に作用するカムを低速カム71と高速カム73とで切り替え、吸気バルブ104のリフト量を切り替える。
このように、本実施例4に係る可変動弁装置37によれば、実施例1と同様に、切替部53と油圧通路59はいずれもシリンダヘッド35の外部に設けているので、シリンダヘッド35の汎用性を高めることができる。
また、カム軸51のジャーナル部51aとその軸受け面151dとを介して作動油を通じることがないので、作動油のリークを避けることができる。また、これにより、保持部55の軸受け面55aやカム軸51の内部の構造を簡素化することができる。
また、作動油路191が複数の油圧シリンダ91に対して作動油を供給するので、切替部53の個数に比べて、作動油路191に作動油を導入する導入孔195を少なくすることができる。これにより、部品点数を削減することができる。
以下、図面を参照してこの発明の実施例5を説明する。なお、実施例1または実施例3と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。図18は、可変動弁装置37の外観斜視図であり、図19は保持部55の断面図である。図18に図示するように、各保持部55の側部には、作動油用配管201がカム軸51の軸心方向と略平行に設けられている。作動油用配管201は各下保持部63の側面に締結されるユニオンボルト163によって支持されている。各ユニオンボルト163は継ぎ手部材165を固定しており、この継ぎ手部材165に作動油用配管201が連通接続されている。
図19に示すように、ユニオンボルト163の軸部163bの内部には、作動油用配管201と連通する貫通孔167が形成されている。各下保持部63の内部には、貫通孔167と連通するとともに、油圧シリンダ91と連通する作動油路203が形成されている。各作動油路203は油圧シリンダ91ごとに別個に形成されている。作動油路203は、この発明における第3油圧通路に相当する。
この作動油用配管201は、OCV57(図2参照)の二次側に連通している。作動油用配管201とOCV57との間の作動油路は、別途に設けられる配管によって形成されてもよいし、ヘッドカバー39の内部に形成されていてもよい。作動油用配管201は、この発明における油圧配管に相当する。
これに対応してカム軸51は、実施例1で説明した構成のうち、作動油路に関する構成を省略したものとなる。したがって、実施例5では、油圧通路59は、貫通孔167および作動油路203を含むとともに、作動油用配管201、ユニオンボルト163および継ぎ手部材165によって構成される。
次に、実施例5の動作について、作動油の流れを中心に説明する。OCV57の二次側から作動油用配管201に作動油が供給される。作動油用配管201に供給された作動油は、継ぎ手部材165、貫通孔167を通じて作動油路203に流入する。作動油路203に流入した作動油は油圧シリンダ91に供給される。これにより、油圧シリンダ91にはOCV57によって調整された油圧が与えられる。この油圧に応じて、切替部53は吸気バルブ104に作用するカムを低速カム71と高速カム73とで切り替え、吸気バルブ104のリフト量を切り替える。
このように、本実施例5に係る可変動弁装置37によれば、実施例1と同様に、切替部53と油圧通路59はいずれもシリンダヘッド35の外部に設けているので、シリンダヘッド35の汎用性を高めることができる。
また、保持部55と作動油用配管201の接続は簡易な構成で実現でき、ジャーナル部51aおよび軸受け面55aを通じて作動油を通じる場合に比べて、作動油のリークも避けることができる。また、保持部55やカム軸51の構造を簡素化することができる。
また、作動油用配管201が複数の作動油路203に対して作動油を供給するので、切替部53が複数の場合であっても保持部55の構造が複雑化することを避けることができる。
以下、図面を参照してこの発明の実施例6を説明する。なお、実施例1、実施例3または実施例5と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。図20は、可変動弁装置37の外観斜視図であり、図21は保持部55の断面図である。なお、図21は、説明の便宜上、油圧シリンダ91およびロッカシャフト84等の主要な構成が現れる切断面の断面図である。
図20に図示するように、各保持部55の上部には、作動油用配管211がカム軸51の軸心方向と略平行に設けられている。作動油用配管211は各上保持部61の上面に締結されるユニオンボルト163によって支持されている。
図21に示すように、ユニオンボルト163は継ぎ手部材165を上保持部61の上面で固定するとともに、上保持部61と下保持部63とを連結している。作動油用配管211は、この継ぎ手部材165に連通接続されている。ユニオンボルト163の軸部163bの内部には、作動油用配管211と連通する貫通孔167が形成されている。保持部55の内部には、貫通孔167と連通するとともに、油圧シリンダ91と連通する作動油路213が形成されている。図18に示すように、作動油路213は油圧シリンダ91ごとに別個に形成されている。作動油路213は、この発明における第3油圧通路に相当する。
作動油用配管211は、OCV57(図2参照)の二次側に連通している。作動油用配管211とOCV57との間の作動油路は、別途に設けられる配管によって形成されてもよいし、ヘッドカバー39の内部に形成されていてもよい。作動油用配管211は、この発明における油圧配管に相当する。
これに対応してカム軸51は、実施例1で説明した構成のうち、作動油路に関する構成を省略したものとなる。したがって、実施例6では、油圧通路59は、貫通孔167および作動油路213を含むとともに、作動油用配管211、ユニオンボルト163および継ぎ手部材165によって構成される。
次に、実施例6の動作について、作動油の流れを中心に説明する。OCV57の二次側から作動油用配管211に作動油が供給される。作動油用配管211に供給された作動油は、継ぎ手部材165、貫通孔167を通じて作動油路213に流入する。作動油路213に流入した作動油は油圧シリンダ91に供給される。これにより、油圧シリンダ91にはOCV57によって調整された油圧が与えられる。この油圧に応じて、切替部53は吸気バルブ104に作用するカムを低速カム71と高速カム73とで切り替え、吸気バルブ104のリフト量を切り替える。
このように、本実施例6に係る可変動弁装置37によれば、実施例1と同様に、切替部53と油圧通路59はいずれもシリンダヘッド35の外部に設けているので、シリンダヘッド35の汎用性を高めることができる。
また、保持部55と作動油用配管211の接続は簡易な構成で実現でき、作動油のリークも避けることができる。また、保持部55やカム軸51の構造を簡素化することができる。さらに、切替部53が複数の場合であっても保持部55の構造が複雑化することを避けることができる。
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上述した各実施例では、保持部55はカム軸51の軸受け面55aを有する構成であったが、軸受け面55aを有しないように、換言すれば、カム軸51の軸受けとしての機能を兼ねないように変更してもよい。たとえば、低速用ロッカアーム85または高速用ロッカアーム87に、切替部53を保持させるように変更してもよい。この場合には、切替部53を保持する低速用ロッカアーム85または高速用ロッカアーム87が、この発明における保持部に相当する。低速用ロッカアーム85および高速用ロッカアーム87は、実施例1で詳細に説明したように、シリンダヘッド35と別体である。また、この変形例における油圧通路は、たとえば、ロッカシャフト84の内部、および、切替部53を保持するロッカアームの内部に形成することで、シリンダヘッド35の外部とすることができる。
(2)上述した各実施例では、切替部53は低速用ロッカアーム85および高速用ロッカアーム87を係合状態と離脱状態とで切り替えるものを例示したが、これに限られない。たとえば、ロッカアームをカム軸51の軸心方向に移動可能に構成し、切替部53はロッカアームを移動させてバルブに作用するカムを切り替えるように変更してもよい。あるいは、カム軸51に対して低速カムを固定し、高速用カムを遊転時自在に設け、低速カムおよび高速カムを係合状態と離脱状態とで切り替えるように変更してもよい。
(3)上述した各実施例では、可変動弁装置37は切替部53として吸気バルブ用と排気バルブ用の二種類を備えていたが、いずれか一種類の切替部53を備えるように変更してもよい。また、上述した各実施例では、切替部53は吸気バルブ用および排気バルブ用のいずれも複数であったが、単数としてもよい。
(4)上述した実施例1では、作動油路111は下保持部63の内部に形成されて、軸受け面63aに開口するものであったが、これに限られない。たとえば、上保持部61の内部、または、下保持部63と上保持部61の双方の内部に作動油路111を形成するように変更してもよい。また、上保持部61の軸受け面61aに開口するように作動油路111を変更してもよい。このような変形例に係る作動油路であっても、軸受け面61aを通じて、カム軸51の作動油路121から作動油を好適に導入することができる。
(5)上述した実施例1では、噴射口113は下保持部63に形成されていたが、これに限られない。たとえば、上保持部61の側面、または、下保持部63と上保持部61の双方の側面に噴射口113を形成するように変更してもよい。また、上述した実施例1では、潤滑油路115は下保持部63の軸受け面63aに開口するものであったが、これに限られない。たとえば、上保持部61の軸受け面61aに開口するように潤滑油路115を変更してもよい。このような変形例によっても、低速ロッカアーム85および高速ロッカアーム87に潤滑油を好適に噴射させることができる。
(6)上述した実施例1では、作動油路141は上軸受部77に形成されていたが、これに限られない。たとえば、下軸受部79の内部、または、下軸受部79と上軸受部77の双方に形成するように変更してもよい。また、上述した実施例1では、作動油路141は上軸受部77の軸受け面77aに開口するものであったが、これに限られない。たとえば、下軸受部79の軸受け面79aに開口するように作動油路141を変更してもよい。このような変形例に係る作動油路であっても、軸受け面79aを通じて、カム軸51の作動油路121に好適に作動油を供給することができる。
(7)上述した実施例1では、潤滑油路143は下軸受部79に形成されていたが、これに限られない。たとえば、下軸受部79と上軸受部77の双方に形成するように変更してもよい。また、上述した実施例1では、潤滑油路143は下軸受部79の軸受け面79aに開口するものであったが、これに限られない。たとえば、上軸受部77の軸受け面77aに開口するように潤滑油路143を変更してもよい。このような変形例に係る潤滑油路であっても、軸受け面77aを通じて、カム軸51の潤滑油路131に好適に潤滑油を供給することができる。
(8)上述した実施例2から実施例6では、噴射口113について説明を省略したが、各実施例において噴射口113を適宜に備えるように構成することは適宜に選択される事項である。実施例2においては、噴射口113に連通する潤滑油路115の他端側は、軸受け面63aに開口するものであってもよいし、潤滑油路153に連通するように変更してもよい。
(9)上述した実施例4では、下保持部151は、複数の切替部53(油圧シリンダ91)に作動油を供給する作動油路191を有していたが、これに限られない。たとえば、各切替部53(油圧シリンダ91)ごとに別個の作動油路(たとえば、実施例5で説明した作動油路203や実施例6で説明した作動油路213)を備えるように変更してもよい。
(10)上述した実施例4では、下保持部151に形成される作動油路191は、作動油用配管197から作動油を導入し、油圧シリンダ91に供給するものであったが、これに限られない。たとえば、作動油路191を、カム軸51の内部に形成される作動油路から導入して油圧シリンダ91に供給するように変更してもよい。ここで、カム軸51内の作動油路と下保持部151の作動油路191とを連通させる構成は、実施例1で例示した構成を採用することができる。具体的には、図16における最上段の横部材151cが上軸受部77と結合することによって形成される軸受け面75aと、カム軸51のジャーナル部51bを通じて作動油路191に作動油を導く。このような変形例によれば、作動油のリーク量を抑制することができ、各切替部53に効率よく作動油を供給することができる。このような変形例における作動油路191は、この発明における第1油圧通路に相当する。また、変形例におけるカム軸51内の作動油路は、この発明における第2油圧通路に相当する。
(11)上述した実施例2では、下保持部151は複数の軸受け面55aに潤滑油を供給する潤滑油路153を有していたが、これに限られない。たとえば、軸受け面55aごとに別個の潤滑油路(たとえば、実施例3で説明した潤滑油路169が例示される)を備えるように変更してもよい。
(12)上述した各実施例では、OCV57をヘッドカバー39の外面に支持する構成であったが、これに限られない。油圧通路59がシリンダヘッド35の外部に形成される限り、OCV57を任意の位置に設けることができる。たとえば、ヘッドカバー39の内面に支持するように変更してもよい。また、保持部55などの可変動弁装置37の部材に支持するように変更してもよい。あるいは、シリンダヘッド35の上方のみならず、シリンダヘッド35の側方や下方に配置してもよい。
(13)上述した各実施例では、OCV57は油圧を調整すると説明した。ここで、調整については、作動油の油圧を2段階で変更するものでもよいし、作動油の油圧を3段階以上、あるいは、連続的に可変するものでもよい。また、2段階で油圧を変更する場合では、開放および閉止をするOCV57を採用してもよい。
(14)上述した各実施例では、外部配管65はメインギャラリ45に連通接続していたが、これに限られない。シリンダヘッド35に特別な構成を備えることを要しなければ、適宜に変更することができる。たとえば、オイルクリーナ43に連通接続させてもよい。また、可変動弁装置37における潤滑油通路60から分岐して、潤滑油の一部をOCV57の一次側に送る一次側油通路を備えるように構成してもよい。このような構成によれば、外部配管65を省略することができる。
(15)上述した各実施例では、エンジン装置20として、DOHCエンジンを例示したがこれに限られない。たとえば、SOHC(シングルオーバーヘッドカムシャフト)構造でもよい。また、気筒の数や1気筒当たりのバルブ数も適宜に変更することができる。
(16)上述した各実施例では、輸送機器として自動二輪車輌1を例示したが、これに限られない。たとえば、自動車、水上バイク、スノーモービル、ボートなどでもよい。
(17)上述した各実施例および上記(1)から(16)で説明した各変形実施例については、さらに各構成を他の変形実施例の構成に置換または組み合わせるなどして適宜に変更してもよい。
実施例1に係る自動二輪車両の概略構成を示す模式図である。
実施例1に係るエンジン装置における潤滑油および作動油の概略系統図である。
実施例1に係る可変動弁装置およびシリンダヘッドの外観斜視図である。
実施例1に係る可変動弁装置およびシリンダヘッドの分解斜視図である。
実施例1に係るロッカアーム機構の分解斜視図である。
実施例1に係る作動油と潤滑油の経路を模式的に示した可変動弁装置とシリンダブロックの断面図である。
実施例1に係る係合状態における可変動弁装置とシリンダブロックの断面図である。
実施例1に係るカム軸と保持部と軸受部の要部の分解斜視図である。
実施例2に係る可変動弁装置37の要部平面図である。
実施例2に係る保持部の断面図である。
実施例2に係る軸受部の断面図である。
実施例3に係る可変動弁装置の外観斜視図である。
実施例3に係る保持部の断面図である。
実施例3に係るカム軸の要部断面図である。
実施例3に係る軸受部の断面図である。
実施例4に係る可変動弁装置の要部平面図である。
実施例4に係る保持部の断面図である。
実施例5に係る可変動弁装置の外観斜視図である。
実施例5に係る保持部の断面図である。
実施例6に係る可変動弁装置の外観斜視図である。
実施例6に係る保持部の断面図である。
1 … 自動二輪車両
20 … エンジン装置
35 … シリンダブロック
37 … 可変動弁装置
39 … ヘッドカバー
51 … カム軸
53 … 切替部
55 … 保持部
55a … 軸受け面
57 … オイルコントロールバルブ(OCV)
59 … 油圧通路
60 … 潤滑油通路
65 … 外部配管
67 … 内部通路
71 … 低速用カム
73 … 高速用カム
81 … ロッカアーム機構
85 … 低速用ロッカアーム
87 … 高速用ロッカアーム
91 … 油圧シリンダ
104 … 吸気バルブ(バルブ)
111 … 作動油路
113 … 噴射口
121 … 作動油路
131 … 潤滑油路
153 … 潤滑油路
191 … 作動油路
201 … 作動油用配管
203 … 作動油路
211 … 作動油用配管
213 … 作動油路