JP5421803B2 - リチウムイオン二次電池電解液用添加材 - Google Patents

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本発明は、非水電解液、特にリチウムイオン二次電池電解液の改質剤として用いられる含フッ素ホウ酸エステルを含む非水電解液に関する。
非水電解液二次電池、特にリチウムイオン二次電池はノートブック型パーソナルコンピューター、携帯電話などの民生用機器の蓄電池として汎用されている。
これらのリチウム系の電池ではその高い作動電圧のために、基本的には水溶液は使用できず、電気化学的に安定な電位範囲(電位窓)が広い非水溶媒が使用されている。
しかし、リチウム二次電池に用いられる非水溶媒、例えば、エチレンカーボネートやジメチルカーボネートは揮発性、引火性を有しており、これまでにも製造時の不具合等で使用中に電極が短絡し、電解液へ引火することによって、電池が燃えるという事故が発生している。
一方で、近年、リチウムイオン二次電池は電気自動車やハイブリッド自動車の電源、太陽光発電、水力発電などの蓄電用として注目されており、これらの性能を満足させるためには、更なる大型化、高容量化が求められている(例えば非特許文献1参照)。
しかし、電池が大型化するにつれて、更なる安全性を求めて引火の恐れがない非水電解液が望まれており、難燃性もしくは自己消火性を有する非水電解液を用いる技術が注目されている(非特許文献2)。
このような非水電解液の難燃化の方法として、樹脂材料の難燃剤として知られるリン酸エステルの添加が検討されている(例えば特許文献1、2参照)。
しかし、非水電解液を電気自動車などに使用するためには安全性だけでなく、高い電池性能が要求されるが、これらのリン酸エステルを含む非水電解液は、電池の充放電効率、エネルギー密度、さらには電池寿命等の電池性能の点で必ずしも満足できるものではなかった。
一方、ホウ素系の化合物は一般的にルイス酸性が高く、非水系二次電池の電解液に添加した場合、イオン伝導度やイオン溶解性を向上することが知られている。
例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランもしくはホウ酸トリス(2H−ヘキサフルオロイソプロピル)を少量添加することでリチウム二次電池の大電流充放電特性を改善する方法が提案されている(例えば特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。
これら特許文献3〜5の実施例ではホウ酸トリス(2H−ヘキサフルオロイソプロピル)(HFPB)に関しては、最大12wt%添加した例が示されている。
さらにこの様なホウ素化合物は、イオン半径の小さなLi塩(例えば、LiFやLiCl、CFCOOLiなど)の解離性を向上し、非水系電解質二次電池で充放電が可能になることなども報告されている(例えば特許文献6、特許文献7、特許文献8および非特許文献3参照)。
特開平8−22839号公報 特開平11−260401号公報 特開2008−198499号公報 特開2008−198542号公報 特開2009−43597号公報 米国特許第6022643号明細書 米国特許第6352798号明細書 特表2008−543002号公報
富士経済,2008 電池関連市場実態調査 上巻 2008年 株式会社エヌティーエス、電子とイオンの機能化学シリーズvol.3、次世代型リチウム二次電池 Jounal of the Electrochemical Society, 151(9), A1429, 2004年
ここまで示したように、公知の難燃剤により、非水電解液の難燃性を向上するためには充放電特性やリサイクル特性といった電池性能を犠牲にしなければならなかった。
また、一方で、電池性能を向上するホウ素系化合物が難燃性を発現することについての報告例は知られておらず、その添加量についても難燃性を発現するような添加量ではなかった。
このように電池の安全性と性能の向上は相反するものであり、それぞれに必要な材料を選定する必要があった。
しかし、電池の大型化が進むにつれて、安全性と大電流充放電特性などの電池性能に対する要求は益々高くなっており、これらの性能を両立する材料が求められていた。
本発明者らは、電池性能の向上について鋭意検討してきた結果、大電流での充放電特性を向上することが出来るフッ素系ホウ酸エステルをある一定量用いることで、電解液の難燃性、自己消火性を発現することを見出し、本発明を完成させるに至った。
従来からフッ素系ホウ酸エステルは少量添加することで充放電特性及び充放電容量が向上し、大量に添加すると充放電特性及び充放電容量が悪化することが知られている。しかしながら、本発明者らは一定の範囲の添加であれば、若干充放電特性及び充放電容量を犠牲にするが、電解液の難燃性、自己消火性を発現することを見出した。
すなわち、本発明は非水電解液、特にリチウムイオン二次電池の電解液において、難燃性と電池性能の向上を両立した含フッ素ホウ酸エステルを含む非水電解液を提供することにある。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において、リチウムイオン二次電池電解液用添加材は、ホウ酸トリス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)を自己消火性を高めるために非水電解液に対して15容積%から50容積%の範囲内で含む。
このような含フッ素ホウ酸エステルは例えば、Journal of the Chemical Society, 2895−2897頁,(1985年)に記載の、三塩化ホウ素から合成する方法やJournal of the Electrochemical Society, 145巻(8号),2813−2818頁 (1998年)記載のボラン・ジメチルスルフィド錯体から合成する方法が知られている。
次に本発明の含フッ素ホウ酸エステルを含有する非水系電解液について説明する。
非水電解液として通常用いられる有機溶媒として代表的なものは、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート等の環状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、プロピオラクトン等の環状エステル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の鎖状カーボネート、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジオキソラン又はその誘導体等の単独又はそれら2種以上の混合物等を挙げることができる。
非水系電解液を構成する電解質塩としては、非水系二次電池に使用される広電位領域において安定であるリチウム塩が使用できる。このような電解質塩として、例えば、LiBF、LiPF、LiClO、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。なお、電池の高率充放電特性を良好なものとするため、非水系電解液における電解質塩の濃度は1〜2.5 mol/Lの範囲とすることが望ましい。
本発明において、非水電解液二次電池の難燃性、電池性能を良好なものとするため、非水系電解液における含フッ素ホウ酸エステルであるホウ酸トリス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)の濃度は10容積%以上、50容積%以下とするさらには15容積%以上、30容積%以下であることが好ましい。
先に述べたように、フッ素原子を含有するホウ酸エステルであるホウ酸トリス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)はルイス酸性が高く、電池に少量添加することで電池性能を向上することが知られており、添加量が10容積%未満の場合でも、イオンの解離性促進や電極と界面の抵抗成分の制御などに効果を発揮すると考えられる。
しかし、本発明において、電池の安全性および高性能化を両立するために、15容積%以下では電解液の難燃化効果が充分でないことがある。
一方で、50容積%を超える量のホウ酸トリス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)を混合した場合、難燃化効果は充分であるが、電解質の溶解度が低下し、最適な電池性能を発揮できないことがある。
本発明の非水系二次電池は、上記組成の電解液を使用するものであり、少なくとも正極、負極、セパレータから成る電池である。
本発明の方法によれば、非水電解液二次電池、特にリチウムイオン二次電池の電解液において、難燃性と電池性能の向上を両立した含フッ素ホウ酸エステルを含む非水系電解液を提供することが出来る。
コイン型リチウムイオン二次電池の構造を示す図である。
以下、本発明を実施例にて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.電解液の調製
電解液溶媒としてエチレンカーボネート(以下ECと略す)、ジメチルカーボネート(以下DMCと略す)を体積比1:1の割合で混合した溶媒を用い、これにホウ酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(以下TFEBと略す)を所定量混合したものに、電解質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/L溶解させた。また、比較例として、ECおよびDMCの混合溶媒のみ、さらにフッ素を含有しないホウ酸トリス(トリメチル)を所定の割合で混合した混合溶媒に電解質としてLiPFを同量用いた電解液を用意した。
2.難燃性(自己消火性)試験
0.25gのグラスウールに電解液0.5gを約2cmの円状に滴下した。この電解液を浸漬したグラスウールを炎にさらして引火させ、引火の有無、さらに引火した場合は消火するまでの時間を測定した。この試験を5回測定し、5回のうち上下2点を除いた、3点の平均値を1g当りの消火時間(SET、sec/g)として比較した。
なお、ホウ酸トリス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(TFPB)、ホウ酸トリス(2H−ヘキサフルオロイソプロピル)(HFPB)を用いて同様の難燃化(自己消化性)試験を行った結果を表−1に示す。
3.電池の充放電効率およびサイクル特性
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)を用い、これに導電助剤としてカーボンブラック、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)をLiCoO:カーボンブラック:PVDF=85:7:8となるように配合し、1−メチル−2−ピロリドンを用いてスラリー化したものをアルミニウム集電体上に一定の膜圧で塗布し、乾燥させて正極を得た。
負極活物質としてはリチウム金属箔を用い、銅集電体に圧着して負極を得た。
セパレータとしてはグラスフィルターを用いた。
EC:DMCを体積比で1:1に混合しこれにTFEBを所定量添加した。この混合溶媒にLiPFを1.0モル/Lになるように溶解したものを電解液として使用した。
以上の構成要素を用いて、図1に示した構造のコイン型リチウムイオン二次電池を作成した。尚、電池としてはコイン型に限らず円筒型など任意である。
動作原理は、集電体2,4間に直流電圧を印加して充電を行うと、正極3のLiCoOの層間に存在するLiイオンが電解液を通り、負極1に堆積し、放電時にはエネルギー的に安定な化学ポテンシャルが低い状態である正極3のLiCoOの層間にLiイオンが戻る。このエネルギー差によって電圧が発生する。
この様に作成した電池を25℃の恒温条件下、1.0mAの電流で上限電圧を4.2Vとして充電し、続いて1.0mAの電流で3.0Vとなるまで放電した際の充放電効率を測定した。このような充放電サイクルを200回繰返し、初回の放電容量に対する200回目の放電容量比をサイクル維持率として算出した。
また、同様に作成した電池を25℃の恒温条件下、10mAの電流で上限電圧を4.2Vとして定電流・定電圧充電した後、30mAの電流で3.0Vとなるまで放電した際の充放電効率を測定した。この試験を200回繰返し、初回の充放電効率に対する200回目の放電容量を高率充放電維持率として算出した。結果を表1に示す。
なお、ホウ酸トリス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(TFPB)、ホウ酸トリス(2H−ヘキサフルオロイソプロピル)(HFPB)を用いて同様のサイクル維持率、および高率充放電維持率の測定を行った結果を併せて表1に示す。
















4.LiPF溶解性試験
EC:DMCを体積比で1:1に混合しこれにTFEBを10容積%から50容積%まで添加し、この混合溶媒にLiPFを加熱溶解させ、冷却により結晶析出した上澄みの飽和溶解度を19F−NMRにより測定した。その結果を表2に示す。

1 負極(リチウム箔)
2 集電体(Cu)
3 正極(LiCoO
4 集電体(Al)
5 セパレータ(グラスフィルター)

Claims (1)

  1. ホウ酸トリス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)を自己消火性を高めるために非水電解液に対して15容積%から50容積%の範囲内で含むリチウムイオン二次電池電解液用添加材。
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