以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
図1および図2は、本発明の実施形態に係るドアロック装置10A,10Bを示す。これらドアロック装置10A,10Bは、車両の開閉可能なドアに装着され、車体に配設したストライカ1を着脱可能に係止するものである。そして、本実施形態のドアロック装置10A,10Bは、車内のインナーロックノブ(図示せず)を解錠操作してもドアのロック状態を解除不可能とするスーパーロック機構と、ロック状態で車内のインナーハンドル(図示せず)を開放操作することによりドアを開放可能とするオーバーライド機構とを搭載したものである。
また、図1のドアロック装置10Aは、第1のロックノブシャフト55Aおよび第1のインナーレバー78Aを配設することにより、ロック状態でインナーハンドルを2回開放操作することによりドアを開放可能とする2モーションリリース設定としたものである。図2のドアロック装置10Bは、第2のロックノブシャフト55Bおよび第2のインナーレバー78Bを配設することにより、ロック状態でインナーハンドルを1回開放操作することによりドアを開放可能とする1モーションリリース設定としたものである。
具体的には、これらのドアロック装置10A,10Bは、ケーシング11に、ストライカ1を係止するラッチ機構と、このラッチ機構によるストライカ1の係止を維持および解除するためのロック機構とが配設されている。このロック機構は、インナーハンドルの操作によりラッチ機構によるストライカ1の係止を解除可能なロック状態またはアンロック状態、インナーハンドルを操作してもラッチ機構によるストライカ1の係止を解除不可能なスーパーロック状態に切り換える。なお、アンロック状態とロック状態は、アンロック状態が車外のアウターハンドル(図示せず)の操作によりストライカ1の係止を解除可能である一方、ロック状態がアウターハンドルの操作ではストライカ1の係止を解除不可能である点で相違する。
ケーシング11は、ロック機構を構成する各部品を配設するメインケース12と、ラッチ機構を構成する各部品を配設するサブケース19とを備えている。これらメインケース12とサブケース19とは、平面視L字形状をなすように一体的に組み付けられる。
メインケース12は、図中右側部にサブケース配設部13を設けた平面視L字形状のものである。このメインケース12には、略中央にロックプレート35を回動可能に配設する軸部を備えたロックプレート配設部14が設けられている。また、メインケース12の左側下部には、ロータ47、第1のロックノブシャフト55Aまたは第2のロックノブシャフト55B、および、ノブレバー68を回動可能に配設する軸部を備えたノブレバー配設部15が設けられている。さらに、このノブレバー配設部15の上部には、カム部材配設部16が設けられるとともに、その左側部にモータ配設部17が設けられている。そして、メインケース12の右側下部には、インナーレバー78A,78Bを回動可能に配設する軸部を備えたインナーレバー配設部18が設けられている。
サブケース19は、メインケース12のサブケース配設部13に配設されるものである。このサブケース19、図3(A),(B)に示すように、ストライカ1を挿通する挿通溝(図示せず)を備えるとともに、ラッチ機構を構成するフォーク22およびクロー25を加締めにより回動可能に装着するための取付穴部(図示せず)が設けられている。また、サブケース19には、クロー25の操作受部27を挿通してメインケース12内に突出させる挿通穴20が設けられている。さらに、挿通溝との対応位置には、サブケース配設部13に向けて窪む挿通凹部21が設けられている。
サブケース19に組み付けるラッチ機構は、ストライカ1を係止し、その係止状態を解除するための操作受部27を有するものである。本実施形態のラッチ機構は、ストライカ1を係脱可能に係止するフォーク22と、フォーク22に係合してフォーク22がストライカ1を保持した状態を維持するクロー25とを備えている。
フォーク22は、ストライカ1を挿通する係止溝23を備えた略U字形状のもので、サブケース19に回動可能に軸着され、スプリング(図示せず)により図3(A)に示す開放位置に付勢されている。このフォーク22には、係止溝23の開放端にクロー25が係止する係止部24が設けられている。
クロー25は、一端にフォーク22の係止部24を係止する係止受部26を備えた棒状のもので、フォーク22と同様にサブケース19に回動可能に軸着され、スプリング(図示せず)により図示の状態である係止位置に付勢されている。このクロー25には、サブケース19の挿通穴20を貫通してメインケース12内に位置される操作受部27が設けられている。この操作受部27は、係止受部26に対して反対側に突出するように設けられている。
このラッチ機構は、ドアを閉じることによりフォーク22の係止溝23内にストライカ1が進入されると、ドアの閉じ力によるストライカ1の押圧で図中反時計回りに回動する。そして、図3(B)に示すように、フォーク22の係止部24がクロー25の係止受部26に係止することにより、フォーク22によるストライカ1の係止状態を維持する。この状態で、クロー25の操作受部27が上向きに操作されると、クロー25が時計回りに回動され、係止受部26とフォーク22の係止部24との係止が解除される。その結果、フォーク22がスプリングの付勢力で図3(A)に示す開放位置に回動し、ストライカ1の係止を解除する。また、操作受部27の上向きの操作が解除されると、クロー25がスプリングの付勢力によって係止位置に復帰する。
メインケース12に組み付けるロック機構は、図1および図2に示すように、クロー25を係止解除方向に作動(操作)させるためのリンク28と、リンク28によるクロー25の作動を可能または不可能とするためのロックプレート35とを備えている。そして、ロックプレート35を介してリンク28をロック位置またはアンロック位置に移動させるロック操作系として、ロータ47が配設されている。また、ロータ47を介してロックプレート35を操作するインナーロック操作系として、第1のロックノブシャフト55Aまたは第2のロックノブシャフト55Bと、ノブレバー68とが配設されている。さらに、ロータ47を介してロックプレート35を操作する電動ロック操作系として、カム部材71と駆動モータ76とが配設されている。さらにまた、リンク28を介してラッチ機構を開放作動させるインナーハンドル操作系として、第1のインナーレバー78Aまたは第2のインナーレバー78Bが配設されている。そして、アウターハンドル操作系として、図示しないアウターレバーが配設されている。なお、車両の運転席のドアに配設されるドアロック装置10A,10Bには、アウターロック操作系として、図示しないキーレバーがロックプレート35と一体的に回動するように配設される。
リンク28は、図4に示すように、インナーレバー78A,78Bまたはアウターレバーの作動力を受けて上方向に移動されることにより、クロー25の操作受部27に当接してクロー25を回転させ、フォーク22の係止を解除するためのものである。このリンク28は、図1および図2に示すように、上端がロックプレート35に連結されるとともに下端がアウターレバーに連結される。そして、ロックプレート35の回動により、クロー25の操作受部27と係合不可能なロック位置と、係合可能なアンロック位置との間を移動(揺動)される。具体的には、リンク28は、下端にインナーレバー78A,78Bの回転を受ける受動部29が設けられている。この受動部29には連結孔30が設けられ、この連結孔30にアウターレバーが連結されることにより、アウターレバーの回転も受動可能に構成されている。この受動部29の上部には、クロー25の操作受部27に当接する操作部31が設けられている。また、この操作部31の横には、略J字形状に延びるようにロックプレート連結部32が連設されている。このロックプレート連結部32には、ロック状態でインナーレバー78A,78Bまたはアウターレバーの作動力を受けて上向きにスライド移動する際に、ロックプレート35に対して相対的に移動できるようにスライド溝33が設けられている。なお、アウターレバーは、メインケース12を内外に貫通するように配設され、その内部に貫通された端部にリンク連結部34が設けられている。また、メインケース12から外部に突出する部分には、ドアの車外側に設けたアウターハンドルが接続されている。
ロックプレート35は、リンク付勢スプリング42を介してリンク28を係着して、リンク28をロック位置およびアンロック位置に移動させるもので、その移動状態が図示しないアクションスプリングによって位置決め保持される。このロックプレート35は、図5に示すように、メインケース12のロックプレート配設部14に回動可能に装着される軸着部36を備え、この軸着部36を頂部とした略扇形状に形成されている。このロックプレート35には、リンク28を配設する右側に、ロック回転方向である左側に向けて突出する規制部37が設けられている。この規制部37は、ロックプレート35との間に所定幅の挿通部38が形成されるように構成され、この挿通部38にリンク付勢スプリング42のアーム部44が移動可能に挿通される。また、規制部37は、リンク付勢スプリング42をアンロック位置の側の初期付勢位置に規制するストッパ部39を備えている。さらに、ロックプレート35には、軸着部36の横にリンク付勢スプリング42の他端を係止するスプリング係止部40が突設されている。さらにまた、ロックプレート35には、規制部37と逆側であるロータ47を配設する側に、略U字形状をなすロータ係着部41が設けられている。
リンク付勢スプリング42は、リンク28をロックプレート35に対してアンロック位置に向けて付勢する付勢部材である。このリンク付勢スプリング42は、軸着部36を外嵌する内径で、環状をなすように巻回した巻回部43を備えている。この巻回部43の一端は、ロックプレート35の挿通部38にかけて延びるアーム部44とされている。このアーム部44の先端は、略U字形状をなすように屈曲され、ロックプレート35の規制部37を迂回してリンク28のスライド溝33に挿通係止される連結部45とされている。このように構成したアーム部44は、挿通部38内、即ち、規制部37の下部において、アンロック位置およびロック位置にかけた方向に移動可能である。また、リンク付勢スプリング42には、巻回部43から突出する他端が、ロックプレート35のスプリング係止部40に係止される係止端部46とされている。
ロータ47は、インナーロックノブまたはカム部材71の動作を受け、第1移動位置に移動されることによりロックプレート35を介してリンク28をロック位置に移動させたロック状態とするとともに、第2移動位置に移動されることによりロックプレート35を介してリンク28をアンロック位置に移動させたアンロック状態とするものである。具体的には、図6に示すように、ロータ47は略扇形状をなし、その軸芯に位置するようにメインケース12のノブレバー配設部15に回転可能に軸着される軸着部48を備えている。このロータ47の一側には、ロックプレート35のロータ係着部41に向けて略L字形状に延びる連結アーム部49が突設され、この連結アーム部49の先端にロータ係着部41の溝内に挿入係止される係止突部50が設けられている。また、ロータ47には、背部に位置するカム部材71のカム溝73に係合するカム受部51が突設されている。さらに、ロータ47には、カム受部51の横に位置するように、円形状の孔と、該孔の対向位置に設けた切欠部とからなるスライダ装着部52が設けられている。このスライダ装着部52とカム受部51との間には、スライダ装着部52を中心として円弧状に延びるガイド溝53が設けられている。このガイド溝53は、軸着部48を中心として略径方向に延びるように設けられ、その径方向外側に位置する端部が連結位置を構成し、径方向内側に位置する端部が非連結位置を構成する。そして、ガイド溝53の一方の縁には、スライダ63を連結位置または非連結位置に保持するための弾性係止片54が設けられている。
ロックノブシャフト55A,55Bは、車内で施錠および解錠するためのインナーロックノブにノブレバー68を介して連結されるものである。図7(A),(B)に示すように、ロックノブシャフト55A,55Bは略扇形状をなし、ロータ47上に位置するように、メインケース12のノブレバー配設部15に回転可能に軸着される軸着部56を備えている。この軸着部56には、略矩形状をなすように突出するノブレバー連結部57が設けられている。また、ロックノブシャフト55A,55Bには、スライダ63を介してロータ47と一体的に回転可能な連結状態、および、ロータ47と分離した非連結状態とするための係合溝58が設けられている。この係合溝58は、軸着部56に対して略径方向に延びる連結用溝部59と、軸着部56を中心として略周方向に延びる非連結用溝部60とを有する略L字形状をなす。そのうち、連結用溝部59は、ロータ47との連結状態でガイド溝53と上下に略一致する。なお、非連結用溝部60は、軸着部56に対して径方向外側に位置する縁を、連結用溝部59へ誘導するガイド面となるように、その形状が設定されている。そして、ロックノブシャフト55A,55Bには、係合溝58の連結用溝部59の横に位置するようにスプリング取付部61が設けられている。また、ロックノブシャフト55A,55Bには、リンク28がロック位置(ロック状態またはスーパーロック状態)に移動している状態でのみ、インナーレバー78A,78Bの係合部87A,87Bが係合して回転を受ける係合受部62A,62Bが設けられている。なお、図7(A)に示す第1のロックノブシャフト55Aと図7(B)に示す第2のロックノブシャフト55Bは、係合受部62A,62Bの構成が異なる点でのみ相違する。これら係合受部62A,62Bの違いについては、後で詳細に説明する。
スライダ63は、カム部材71の回転により動作され、ロータ47とロックノブシャフト55A,55Bとを連結する連結位置と、これらの連結を解除する非連結位置の間を移動されるものである。そして、連結位置では、インナーロックノブの操作によりロックノブシャフト55A,55Bを介してロータ47を第1移動位置および第2移動位置間にかけて移動可能とする。また、非連結位置では、インナーロックノブが操作されても、ロックノブシャフト55A,55Bの動力をロータ47に伝達しないことにより、ロータ47を移動不可能とする。即ち、ロータ47とロックノブシャフト55A,55Bとを非連結状態とすることにより、インナーロックノブが操作されてもロック状態を解除不可能なスーパーロック状態とするものである。
具体的には、スライダ63は、ロータ47の下側に配設され、カム部材71の作動部74,75で作動されることにより、ガイド溝53および係合溝58を貫通する連結ピン66によってロータ47とロックノブシャフト55A,55Bとを連結状態および非連結状態に切り換えるものである。このスライダ63は、図8に示すように、ロータ47のスライダ装着部52に回転可能に取り付けられる装着部64を備えている。この装着部64は、取付軸の端部に径方向外向きに突出する一対の突片を設けたものである。また、スライダ63には、装着部64の逆側下部に位置するように当接片65が突設されている。この当接片65は、カム部材71のスーパーロック作動部74の作動を受けることにより、装着部64を中心としてスライダ63を連結位置から非連結位置に回動させる。また、スーパーロック解除作動部75の作動を受けることにより、スライダ63を非連結位置から連結位置に回動させる。そして、スライダ63には、当接片65の上部に位置するように、ロータ47のガイド溝53およびロックノブシャフト55A,55Bの係合溝58を貫通するように組み付けられる連結ピン66が突設されている。この連結ピン66は、スライダ63が連結位置に回動した状態では、ガイド溝53の上部、かつ、係合溝58の連結用溝部59内に位置する。これにより、ロックノブシャフト55A,55Bが軸着部56を中心として施錠および解錠方向に回動された場合、連結用溝部59の縁が連結ピン66に当接することにより、ロータ47を一緒に回動させる。一方、連結ピン66は、スライダ63が非連結位置に回動した状態では、ガイド溝53の下部、かつ、係合溝58の非連結用溝部60内に位置する。これにより、ロックノブシャフト55A,55Bが軸着部56を中心として解錠方向に回動された場合、非連結用溝部60が連結ピン66に当接しないため、ロータ47を回動させることなくロックノブシャフト55A,55Bだけが回動する。なお、スライダ63は、スーパーロック状態でロックノブシャフト55A,55Bが解錠操作された際に、付勢部材であるスライダ付勢スプリング67によって連結位置に向けて付勢される。このスライダ付勢スプリング67は、ロックノブシャフト55A,55Bのスプリング取付部61に取り付けられ、連結ピン66が付勢される。
図9に示すように、ノブレバー68は棒状をなし、その一端にロックノブシャフト55A,55Bのノブレバー連結部57を相対的に移動不可能に連結する略矩形状の孔を有する非連結部69が設けられている。また、このノブレバー68の他端には、インナーロックノブが接続されるインナーロックノブ接続部70が設けられている。
カム部材71は、駆動モータ76により作動され、ロータ47を第1移動位置および第2移動位置間にかけて移動させるとともに、スライダ63を連結位置および非連結位置にかけて移動させるものである。このカム部材71は略円筒状をなし、スライダ63の下部に位置するように、メインケース12のカム部材配設部16に回動可能に配設されている。図10(A),(B)に示すように、カム部材71の上側外周部には、ウォーム77に噛み合うギア部72が径方向外向きに突出するように設けられている。カム部材71の上面には、ロータ47を移動させるカム溝73が凹設されている。このカム部材71は、駆動モータ76の正転駆動によりロック作動方向(時計回り)に回転されると、曲率が大きいカム溝73の第1壁部73aにより、ロータ47のカム受部51が中心側に移動するように回転されることにより、ロータ47を第1移動位置に移動させ、リンク28をロック位置に移動させる。また、駆動モータ76の逆転駆動によりアンロック作動方向(反時計回り)に回動されると、曲率が小さいカム溝73の第2壁部73bにより、ロータ47のカム受部51が外周側に移動するように回転されることにより、ロータ47を第2移動位置に移動させ、リンク28をアンロック位置に移動させる。
また、カム部材71は、内部にリターンスプリング(図示せず)が配設され、このリターンスプリングにより回転前の中立位置に保持されている。ここで、スーパーロック設定位置は、ロック作動方向の回転により、中立位置からロック設定位置を経て更に先方に位置する。即ち、このカム部材71は、ロック作動方向へ回転されることにより、中立位置からロック設定位置を経てスーパーロック設定位置へ回動可能である。そして、そのスーパーロック設定位置には、カム溝73の第1壁部73aの外周部に位置するように、スライダ63を連結位置(スーパーロック解除位置)から非連結位置(スーパーロック位置)に作動させるスーパーロック作動部74が上向きに突出するように設けられている。一方、スーパーロック解除位置は、アンロック作動方向の回転により、中立位置とロック解除位置との間に位置する。即ち、カム部材71は、アンロック作動方向へ回転されることにより、中立位置からスーパーロック解除位置を経てロック解除位置へ回動可能である。そして、そのスーパーロック解除位置には、カム部材71の外周部に位置するように、スライダ63を非連結位置から連結位置に作動させるスーパーロック解除作動部75が上向きに突出するように設けられている。
駆動モータ76は、カム部材71を正転および逆転させるもので、図1および図2に示すように、メインケース12のモータ配設部17に配設されている。この駆動モータ76の出力軸は、カム部材71に対して接線方向に延びるように配設され、その出力軸にカム部材71を回転させるためのウォーム77が取り付けられている。
インナーレバー78A,78Bは、ドアの車内側に設けたインナーハンドル(図示せず)に連結されるとともに、リンク28の受動部29に係合(当接)可能とされ、リンク28をクロー25の操作受部27の側に向けて作動(スライド)させるものである。このインナーレバー78A,78Bは、リンク28とロックノブシャフト55A,55Bとの間に位置するとともに、リンク28およびロックノブシャフト55A,55Bと略同一平面上に配設されている。
具体的には、これらインナーレバー78A,78Bは、インナーハンドルに連結した連結部材79を連結する連結レバー80と、リンク28およびロックノブシャフト55A,55Bを作動させるための作動レバー83A,83Bとからなる。そして、第1のインナーレバー78Aと第2のインナーレバー78Bとは、連結レバー80が共通部品であり、作動レバー83A,83Bのみが相違する。また、第1の作動レバー83Aと第2の作動レバー83Bとは、リンク28およびロックノブシャフト55A,55Bを作動させる点で共通し、その作動タイミングが異なるようにした点でのみ相違する。
連結レバー80は棒状をなし、図11に示すように、一端に連結部材79を回動可能に連結するためのインナーハンドル連結部81を備えている。また、この連結レバー80の他端には、作動レバー83A,83Bを相対的に移動不可能に連結する略矩形状の孔を有する非連結部82が設けられている。
作動レバー83A,83Bは、図12(A),(B)に示すように、メインケース12のインナーレバー配設部18に回動可能に装着するための軸着部84を備えている。この軸着部84には、略矩形状をなすように突出する連結レバー連結部85が突設されている。また、作動レバー83A,83Bには、組付状態で軸着部84を中心とした回転軌跡上にリンク28の受動部29が位置するようにリンク作動部86A,86Bが設けられている。これにより、リンク28がアンロック位置である場合には、リンク28を介してラッチ機構によるストライカ1の係止を解除させる構成としている。さらに、インナーレバー78A,78Bには、ロックノブシャフト55A,55Bがロック状態またはスーパーロック状態である場合、即ち、リンク28がロック位置に位置している場合に、ロックノブシャフト55A,55Bの係合受部62A,62Bに係合するように係合部87A,87Bが設けられている。なお、これら係合部87A,87Bは、リンク28がアンロック位置に位置している状態では、ロックノブシャフト55A,55Bの係合受部62A,62Bに係合しない。これにより、ロック状態では、インナーレバー78A,78Bの操作により係合部87A,87Bがロックノブシャフト55A,55Bの係合受部62A,62Bに係合して、スライダ63を介して連結されたロックノブシャフト55A,55Bとロータ47、および、ロックプレート35を介してリンク28をアンロック位置に移動させる。一方、スーパーロック状態では、インナーレバー78A,78Bの操作により係合部87A,87Bがロックノブシャフト55A,55Bの係合受部62A,62Bに係合しても、スライダ63を介して非連結とされているロックノブシャフト55A,55Bとロータ47により、リンク28をアンロック位置に移動不可能に構成している。
次に、ロックノブシャフト55A,55Bの係合受部62A,62Bと、インナーレバー78A,78Bのリンク作動部86A,86Bおよび係合部87A,87Bの相違点について説明する。ロックノブシャフト55Aの係合受部62A、および、インナーレバー78Aの係合部87Aは、回転方向の板幅が狭い突片状に形成されている。一方、ロックノブシャフト55Bの係合受部62B、および、インナーレバー78Bの係合部87Bは、回転方向の板幅が広い扇形状に形成されている。これらは、互いの対向縁の一部が係合するものであり、係合によりロックノブシャフト55A,55Bを介してロータ47を第1移動位置から第2移動位置に回動させると、互いに干渉しない。また、板幅の相違は、異なるロックノブシャフト55A,55Bおよびインナーレバー78A,78Bであることを容易に認識できるようにするためのものである。そして、これらの特徴の大きな相違点は、以下の構成にある。
まず、第1のロックノブシャフト55Aと第1のインナーレバー78Aとは、インナーレバー78Aの係合部87Aが、ロックノブシャフト55Aの係合受部62Aに係合する係合作動距離S1(図14参照)を、インナーレバー78Aの操作によりリンク28を介してクロー25の操作受部27を操作する操作作動距離S2より長くしている。即ち、係合部87Aが係合受部62Aに係合する係合作動距離S1が、リンク作動部86Aがリンク28を介して操作受部27を操作する操作作動距離S2より長くなるように、非操作状態において、ロック状態での係合受部62Aと係合部87Aの距離S2−1と、アンロック状態でのリンク作動部86Aと受動部29の距離および操作部31と操作受部27の距離S2−2の加算距離(図13参照)とを、形状(角度)の調整により設定している。これにより、リンク28がロック状態である場合には、インナーハンドルの1回目の操作により、リンク28をアンロック状態とし、インナーハンドルの2回目の操作により、ラッチ機構によるストライカ1の係止を解除可能(2モーションリリース設定)としている。
また、第2のロックノブシャフト55Bと第2のインナーレバー78Bとは、インナーレバー78Bの係合部87Bが、ロックノブシャフト55Bの係合受部62Bに係合する係合作動距離s1(図18A参照)を、インナーレバー78Bの操作によりリンク28を介してクロー25の操作受部27を操作する操作作動距離s2より短くしている。即ち、係合部87Bが係合受部62Bに係合する係合作動距離s1が、リンク作動部86Bがリンク28を介して操作受部27を操作する操作作動距離s2より短くなるように、非操作において、ロック状態での係合受部62Bと係合部87Bの距離s2−1と、アンロック状態でのリンク作動部86Bと受動部29の距離および操作部31と操作受部27の距離s2−2の加算距離(図17参照)とを、形状の調整により設定している。これにより、リンク28がロック状態である場合には、インナーハンドルの1回の操作により、リンク28をアンロック状態とするとともに、ラッチ機構によるストライカ1の係止を解除可能(1モーションリリース設定)としている。
次に、ドアロック装置10A,10Bの動作について説明する。
図13は、第1のロックノブシャフト55Aおよび第1のインナーレバー78Aを用いたドアロック装置10Aを、インナーロックノブまたはリモコン等によって、スライダ63によってロックノブシャフト55Aを連結したロータ47を第2移動位置に移動させ、リンク28をアンロック位置に移動させたアンロック状態を示す。この状態では、インナーハンドルまたはアウターハンドルを開放操作し、インナーレバー78Aを反時計回りに回動させることにより、リンク28を介してクロー25の操作受部27を上向きに移動させることにより、フォーク22によるストライカ1の係止を解除できる。
このアンロック状態で、インナーロックノブをロック操作すると、図14に示すように、ノブレバー68が反時計回りに回動されることにより、スライダ63によって連結されたロックノブシャフト55Aを介してロータ47が第1移動位置に移動する。これにより、ロータ47を介してロックプレート35が時計回りに回動し、リンク28が反時計回りに回動してロック状態とされる。なお、リモコン等によってロック操作した場合には、カム部材71がロータ47を反時計回りに回動させる点でのみ相違する。
このロック状態では、アウターハンドルを開放操作してリンク28を上向きに移動させても、リンク28が斜め上方に移動するため、クロー25の操作受部27を上向きに移動させることはできない。よって、フォーク22によるストライカ1の係止は解除できない。但し、インナーハンドルを開放操作した場合には、クロー25の操作受部27を操作可能である。この動作については、後で詳細に説明する。
また、ロック状態でインナーロックノブをアンロック操作すると、ノブレバー68が時計回りに回動されることにより、ロックノブシャフト55Aを介してロータ47が第2移動位置に移動する。これにより、ロータ47を介してロックプレート35が反時計回りに回動し、リンク28が時計回りに回動して図13に示すアンロック状態とされる。なお、リモコン等によってアンロック操作した場合には、カム部材71がロータ47を時計回りに回動させる点でのみ相違する。
図13に示すアンロック状態または図14に示すロック状態で、リモコン等によってスーパーロック操作した場合には、カム部材71が図14に示すロック位置を越えて回動されることにより、図15Aに示すスーパーロック状態とされる。具体的には、駆動モータ76によりカム部材71が中立位置から時計回りに回動される。そして、ロック設定位置を越えてスーパーロック設定位置に至ると、スーパーロック作動部74がスライダ63の当接片65に当接して、スライダ63を時計回りに回動させる。これにより、スライダ63の連結ピン66が非連結位置に移動して、ロータ47とロックノブシャフト55Aの連結が解除される。その後、カム部材71は、駆動モータ76が停止されることにより中立位置に復帰する。
このスーパーロック状態でインナーロックノブがアンロック操作された場合、図15Bに示すように、ノブレバー68およびロックノブシャフト55Aが時計回りに回動される。しかし、ロータ47は、スライダ63の回動によりロックノブシャフト55Aとの連結が解除されているため、このロックノブシャフト55Aと一体的には回動せず、第1移動位置に移動した状態を維持する。その結果、ロックプレート35を介してリンク28はロック状態を維持する。
また、スーパーロック状態でインナーハンドルが開放操作された場合、図15Cに示すように、インナーレバー78Aが反時計回りに回動されることにより、係合部87Aがロックノブシャフト55Aの係合受部62Aに当接する。通常の開放操作では、この状態からインナーレバー78Aが更に回動されるため、図15Dに示すように、ロックノブシャフト55Aは、インナーレバー78Aの回動を受けて時計回りに回動する。しかし、ロータ47は、スライダ63の回動によりロックノブシャフト55Aとの連結が解除されているため、第1移動位置に移動した状態を維持する。勿論、アウターハンドルが開放操作された場合には、リンク28が斜め上方に移動されるため、クロー25の操作受部27を開放操作できない。
図15Aに示すスーパーロック状態で、リモコン等によってスーパーロック解除操作した場合には、カム部材71が中立位置から反時計回りに回動される。そして、スーパーロック解除位置に至ると、スーパーロック解除作動部75がスライダ63の当接片65に当接して、スライダ63を反時計回りに回動させる。これにより、スライダ63の連結ピン66が連結位置に移動して、ロータ47とロックノブシャフト55Aが連結される。その後、カム部材71は、駆動モータ76が停止されることにより中立位置に復帰し、図14に示すロック状態となる。なお、スーパーロック状態でリモコン等によってアンロック操作された場合には、以上のスーパーロック解除動作に引き続いてカム部材71が更に反時計回りに回動されることにより、ロック状態からアンロック状態に動作させる場合と同様に、動作する。
以上のアンロック状態でのインナーハンドルおよびアウターハンドルの開放操作による動作、インナーロックノブおよびリモコン等のロック操作による動作は、第2のロックノブシャフト55Bおよび第2のインナーレバー78Bを用いた第2のドアロック装置10Bでも同様である。また、第2のドアロック装置10Bは、ロック状態でのアウターハンドルの開放操作による動作、インナーロックノブおよびリモコン等のアンロック操作による動作も、第1のドアロック装置10Aと同様である。さらに、第2のドアロック装置10Bは、リモコン等のスーパーロック操作による動作も、第1のドアロック装置10Aと同様である。そして、スーパーロック状態でのインナーハンドルおよびアウターハンドルの開放操作による動作、リモコン等のスーパーロック解除操作による動作も、第1のドアロック装置10Aと同様である。
そして、第1のドアロック装置10Aと第2のドアロック装置10Bとは、ロック状態でのインナーハンドルの操作による動作のみ、以下のように相違する。
第1のドアロック装置10Aは、図16Aに示すロック状態で、インナーハンドルが開放操作されると、インナーレバー78Aが反時計回りに回動されることにより、図16Bに示すように、係合部87Aがロックノブシャフト55Aの係合受部62Aに当接する。そして、インナーハンドルを介してインナーレバー78Aが更に回動されることにより、図16Cに示すように、ロックノブシャフト55Aが時計回りに回動される。そうすると、スライダ63を介して連結されたロータ47が一体的に時計回りに回動することにより、ロータ47が第1移動位置から第2移動位置に移動する。
その結果、ロックプレート35が反時計回りに回動されることにより、リンク28がアンロック位置へ移動される。但し、この第1のドアロック装置10Aは、係合部87Aが係合受部62Aに係合する係合作動距離S1を、インナーレバー78Aがリンク28を介して操作受部27を操作する操作作動距離S2より長くしている。これにより、リンク28は、操作部31が操作受部27を越えて上方に位置しているため、操作部31が操作受部27を上向きに操作することはできない。また、この状態では、図示のように、リンク28の側面が操作受部27に当接した状態をなす。その結果、リンク28の上端は、リンク付勢スプリング42の付勢力に抗して僅かにロック位置の側へ移動した状態をなす。
その後、インナーハンドルの操作が解除されると、図16Dに示すように、インナーレバー78Aが操作前の初期位置に戻る。これにより、リンク28も下向きに移動し、操作部31が操作受部27を越えて下側に位置することにより、リンク付勢スプリング42の付勢力によって正規のアンロック位置に移動される。この状態で、再びインナーハンドルを開放操作することにより、図16Eに示すように、インナーレバー78Aを回動させ、リンク28を介してクロー25の操作受部27を上向きに動作させることにより、フォーク22によるストライカ1の係止を解除できる。
一方、第2のドアロック装置10Bは、図17に示すアンロック状態で、インナーロックノブまたはリモコン等でロック操作されると、図18Aに示すロック状態となる。このロック状態でインナーハンドルが開放操作されると、インナーレバー78Bが反時計回りに回動されることにより、図18Bに示すように、係合部87Bがロックノブシャフト55Bの係合受部62Bに当接する。そして、インナーハンドルを介してインナーレバー78Bが更に回動されることにより、図18Cに示すように、ロックノブシャフト55Bが時計回りに回動される。そうすると、スライダ63を介して連結されたロータ47が一体的に時計回りに回動することにより、ロータ47が第1移動位置から第2移動位置に移動する。
その結果、ロックプレート35が反時計回りに回動されることにより、リンク28がアンロック位置へ移動される。但し、この第2のドアロック装置10Bは、係合部87Bが係合受部62Bに係合する係合作動距離s1を、インナーレバー78Bがリンク28を介して操作受部27を操作する操作作動距離s2より短くしている。これにより、リンク28は、操作部31が操作受部27の下方に位置するため、図示のように、リンク28が正規のアンロック位置に移動される。よって、引き続きインナーハンドルが操作されることにより、図18Dに示すように、リンク28を介してクロー25の操作受部27を上向きに動作させ、フォーク22によるストライカ1の係止を解除できる。
このように、本発明のドアロック装置10A,10Bは、カム部材71の作動によりスライダ63を非連結位置に移動させ、ロータ47とロックノブシャフト55A,55Bの連結を解除することにより、インナーロックノブを操作しても、ロックノブシャフト55A,55Bを介してロータ47を第1移動位置から第2移動位置へ移動させることはできない。そのため、簡単な構成でスーパーロック機構を実現できる。
また、本発明のドアロック装置10A,10Bは、スライダ63によってロータ47とロックノブシャフト55A,55Bが連結しているロック状態では、インナーレバー78A,78Bが開放操作されると、係合部87A,87Bがロックノブシャフト55A,55Bの係合受部62A,62Bに係合することにより、ロータ47およびロックプレート35を介してリンク28をアンロック位置に移動させることができる。そのため、簡単な構成で、オーバーライド機構を実現できる。
しかも、係合部87A,87Bが係合受部62A,62Bに係合する係合作動距離S1,s1と、インナーレバー78A,78Bがリンク28を介して操作受部27を操作する操作作動距離S2,s2とを、所定の大小関係に調整することにより、オーバーライド機構を簡単に2モーションリリース設定と1モーションリリース設定に変更できる。言い換えれば、ロックノブシャフト55A,55Bの係合受部62A,62Bおよび/またはインナーレバー78A,78Bの係合部87A,87Bの形状や、インナーレバー78A,78Bのリンク作動部86A,86Bの形状を調整するだけで変更できる。そして、その他の部品は全て共通化できるため、コストダウンを図ることができる。
さらに、本実施形態では、リンク28、ロックノブシャフト55A,55Bおよびインナーレバー78A,78Bを略同一平面上に配設し、インナーレバー78A,78Bをリンク28とロックノブシャフト55A,55Bとの間に配設しているため、係合受部62A,62Bと係合部87A,87Bが係合する設定、および、インナーレバー78A,78Bとリンク28が係合する形状を比較的容易に設定することできる。また、クロー25に操作受部27を設けているため、クロー25をリンク28によって直接操作できるため、更に部品点数を削減でき、製造コストを低減できる。
なお、本発明のドアロック装置10A,10Bは、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、2モーションリリース設定と1モーションリリース設定のオーバーライド機構を構成するために、ロックノブシャフト55A,55Bの係合受部62A,62B、インナーレバー78A,78Bの係合部87A,87B、および、インナーレバー78A,78Bのリンク作動部86A,86Bの形状を調整(変更)したが、いずれか1つを調整する構成としてもよい。
また、前記実施形態では、インナーレバー78A,78Bを別体からなる連結レバー80と作動レバー83A,83Bとで構成したが、これらを一体的に形成した構成としてもよい。勿論、ロックノブシャフト55A,55Bとノブレバー68も別体からなる構成としたが、一体的に形成した構成としてもよい。