JP5418804B2 - ウレタンエラストマー充填材 - Google Patents

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Description

本発明は、土木や建築等の構造物の止水材、特にコンクリートの構造物の止水材として有用なウレタンエラストマー充填材に関する。
従来、土木や建築における構造物においては、構造物の漏水対策や振動等により生じた隙間の補修を目的として構造物の隙間に止水材を充填する方法が採用されている。
このような方法に用いる止水材として、例えば、特開2007−197534号公報(特許文献1)には、発泡ウレタン系の止水材が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載のような発泡ウレタン系の止水材は、柔軟性に欠けるために地震等の振動により亀裂が入り易く、その亀裂が漏水の原因となるという問題があった。また、このような方法に用いる止水材としてはコーキングガンを用いて注入する形式の止水材が一般的に用いられており、例えば、特開2005−350893号公報(特許文献2)には、変性シリコーン、変性ウレタン、シリコーン、ウレタン、アクリル等を材料とする止水材が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載のような従来の止水材は、常温(例えば15〜30℃)での粘度が高く、またポットライフが短く増粘し易いために、長時間をかけて注入作業を行うことができないという問題や、浸透に時間を要する微細な隙間に止水材を注入することが困難であるといった問題があった。さらに、このような止水材をコンクリートの構造物に用いる場合には、コンクリートに対する耐性という観点から耐アルカリ性を有することが要求されるが、上記特許文献1〜2に記載のような従来の止水材は耐アルカリ性の観点からも必ずしも十分なものではなかった。
特開2007−197534号公報 特開2005−350893号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、優れた耐衝撃性及び耐アルカリ性を有する充填材成形体を形成することが可能であり、しかもポットライフが十分に長く、常温(例えば15〜30℃)における粘度が十分に低いために、長時間の注入作業が可能であり且つ微細な隙間に注入することが可能なウレタンエラストマー充填材を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のポリオールを含有し且つ特定量の芳香族炭化水素系可塑剤を含有するウレタンエラストマー充填材によれば、優れた耐衝撃性及び耐アルカリ性を有する充填材成形体を形成することが可能であり、しかもポットライフが十分に長く、常温(例えば15〜30℃)における粘度が十分に低いために、長時間の注入作業が可能であり且つ微細な隙間に注入することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のウレタンエラストマー充填材は、有機ポリイソシアネート(A)と、平均官能基数が2〜4であり且つ数平均分子量が1000以下であるポリエーテルポリオール(b1)を主成分とするポリオール(B)と、芳香族炭化水素(c1)を主成分とする芳香族炭化水素系可塑剤(C)とを含有しており、前記芳香族炭化水素系可塑剤(C)の含有量が有機ポリイソシアネート(A)100質量部に対して10〜100質量部の範囲内にあり、前記ポリオール(B)が、ヒマシ油系ポリオールを含有するものであり、前記ポリオール(B)における前記ポリエーテルポリオール(b1)の含有量が前記ポリオール(B)の全質量に対して70質量%以上であることを特徴とするものである。
さらに、本発明のウレタンエラストマー充填材は、トンネルの地山内面に形成された一次覆工コンクリート層、前記一次覆工コンクリート層の内面側に形成された二次覆工コンクリート層、並びに前記一次覆工コンクリート層と前記二次覆工コンクリート層との間に形成された防水シート層及び覆工止水材層を備えるトンネル防水構造を形成するための充填材として、特に好適に使用することができる。
本発明によれば、優れた耐衝撃性及び耐アルカリ性を有する充填材成形体を形成することが可能であり、しかもポットライフが十分に長く、常温(例えば15〜30℃)における粘度が十分に低いために、長時間の注入作業が可能であり且つ微細な隙間に注入することが可能なウレタンエラストマー充填材を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明のウレタンエラストマー充填材は、有機ポリイソシアネート(A)と、平均官能基数が2〜4であり且つ数平均分子量が1000以下であるポリエーテルポリオール(b1)を主成分とするポリオール(B)と、芳香族炭化水素(c1)を主成分とする芳香族炭化水素系可塑剤(C)とを含有しており、前記芳香族炭化水素系可塑剤(C)の含有量が有機ポリイソシアネート(A)100質量部に対して10〜100質量部の範囲内にあるものである。
本発明にかかる有機ポリイソシアネート(A)は特に限定されず、公知の有機ポリイソシアネートを用いることができる。このような有機ポリイソシアネート(A)としては、例えば、芳香族系、脂環族系、脂肪族系のポリイソシアネート、及びそれらのウレタン変性体、アロファネート変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体等の変性ポリイソシアネートが挙げられる。
前記芳香族系ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(以下、場合により「TDI」と略称する。)、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、場合により「MDI」と略称する。)、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(以下、場合により「XDI」と略称する。)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(以下、場合により「TMXDI」と略称する。)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(以下、場合により「P−MDI」と略称する。)等が挙げられる。なお、これらの芳香族系ポリイソシアネートは、それぞれ各種異性体の単品及び混合物を含むものである。また、前記脂環族系ポリイソシアネートとしては、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添TDI、水添XDI、水添TMXDI等が挙げられる。さらに、このような脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。これらの有機ポリイソシアネート(A)の中でも、粘性の低さ及び環境への影響の観点から、芳香族系ポリイソシアネートが好ましく、MDIがより好ましい。また、これらの有機ポリイソシアネート(A)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明にかかるポリオール(B)は、以下説明するポリエーテルポリオール(b1)を主成分とするものである。
本発明にかかるポリエーテルポリオール(b1)は、平均官能基数が2〜4であり且つ数平均分子量が1000以下のものである。このようなポリエーテルポリオール(b1)においては、平均官能基数が2〜4であることが必要である。平均官能基数が2未満では、得られる充填材を用いて形成される充填材成形体の機械的強度(引張強度、伸び等)が不十分となり、他方、平均官能基数が4を超えると、得られる充填材の粘度が高くなり過ぎると共に、得られる充填材を用いて形成される充填材成形体の柔軟性が不十分となる。
また、このようなポリエーテルポリオール(b1)においては、数平均分子量が1000以下であることが必要であり、200〜1000の範囲であることがより好ましい。数平均分子量が1000を超えると、得られる充填材の粘度が高くなり過ぎると共に、得られる充填材を用いて形成される充填材成形体の機械的強度(引張強度、伸び等)が不十分となる。一方、数平均分子量が200未満では、反応性が高くなり過ぎるために、得られる充填材のポットライフが短くなる傾向にある。
前記ポリエーテルポリオール(b1)としては、1分子中にヒドロキシル基を1〜4個有するヒドロキシル基含有化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるものが挙げられる。このようなヒドロキシル基含有化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;トリレンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、アンモニア、アニリン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等のポリアミン類等のアミン系化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールが挙げられる。これらのヒドロキシル基含有化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらのポリエーテルポリオール(b1)の中でも、低粘度で疎水成分が多く、水の影響を受け難いという観点から、プロピレングリコールを開始剤とするプロピレンオキサイド付加物が好ましい。
このようなポリオール(B)においては、前記ポリエーテルポリオール(b1)の含有量が、ポリオール(B)の全質量に対して70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。前記ポリオール(B)中におけるポリエーテルポリオール(b1)の含有量が前記下限未満では、反応性が遅くなりすぎ、また、得られる充填材を用いて形成される充填材成形体の機械的強度が不十分となる傾向にある。
また、本発明のウレタンエラストマー充填材中における前記ポリオール(B)の含有量は、活性水素基に対するイソシアネート基の当量比が後述する範囲内となるような量とすることが好ましい。
さらに、本発明にかかるポリオール(B)は、前記ポリエーテルポリオール(b1)の他にヒマシ油系ポリオールを含有するものであることが好ましい。このようにヒマシ油系ポリオールを含有することにより、得られる充填材を用いて形成される充填材成形体のJIS−A硬度が高くなる傾向にある。このようなヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油及び変性ヒマシ油(トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオールで変性されたヒマシ油等)が挙げられる。また、このようなヒマシ油系ポリオールを用いる場合、ヒマシ油系ポリオールの含有量は、ポリオール(B)の全質量に対して5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。
また、本発明にかかるポリオール(B)に用いることができる前記ポリエーテルポリオール(b1)及びヒマシ油系ポリオール以外のポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオールが挙げられる。
本発明にかかる芳香族炭化水素系可塑剤(C)は、芳香族炭化水素(c1)を主成分とするものである。また、本発明にかかる芳香族炭化水素(c1)とは、芳香族性を示す単環或いは複数の環から構成される炭化水素化合物のことをいう。そして、このような芳香族炭化水素(c1)は特に限定されないが、沸点が150℃以上のものであることが好ましい。このような芳香族炭化水素(c1)としては、例えば、新日本石油社製のSAS−296、出光興産社製のイプゾール150、Rutgers Kureha Solvents GmbH社製のルタゾルブDI、丸善石油化学社製のスワゾール1800が挙げられる。
本発明においては、このように可塑剤成分として芳香族炭化水素系可塑剤(C)を用いているため、得られる充填材を用いて形成される充填材成形体の耐アルカリ性に悪影響を及ぼすことなく、充填材の粘度や充填材成形体の機械的強度を調整することが可能となる。
このような芳香族炭化水素系可塑剤(C)としては、芳香族炭化水素(c1)に加えて脂肪族炭化水素を含有するものを用いることができるが、このような芳香族炭化水素系可塑剤(C)においては、前記芳香族炭化水素(c1)の含有量が、芳香族炭化水素系可塑剤(C)の全質量に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。前記芳香族炭化水素系可塑剤(C)中における芳香族炭化水素(c1)の含有量が前記下限未満では、得られる充填材においてブリードが生じ易くなる傾向にある。
また、このような芳香族炭化水素系可塑剤(C)としては、市販されているものを用いることができ、例えば、新日本石油社製のSAS−296、ミネラルスピリットA等;エクソン化学社製のソルベッソ100等;丸善石油化学社製のスワゾール1800等;出光興産社製のイプゾール150等;Rutgers Kureha Solvents GmbH社製のルタゾルブDI等が挙げられる。
さらに、本発明においては、このような芳香族炭化水素系可塑剤(C)の含有量が有機ポリイソシアネート(A)100質量部に対して10〜100質量部の範囲内にあることが必要であり、10〜50質量部の範囲内にあることがより好ましい。芳香族炭化水素系可塑剤(C)の含有量が10質量部未満では、得られる充填材の粘度が高くなり過ぎると共に、得られる充填材を用いて形成される充填材成形体の柔軟性や伸びが不十分となる。他方、芳香族炭化水素系可塑剤(C)の含有量が100質量部を超えると、得られる充填材を用いて形成される充填材成形体の引張強度が不十分となる。
本発明のウレタンエラストマー充填材は、前記有機ポリイソシアネート(A)、前記ポリオール(B)及び前記芳香族炭化水素系可塑剤(C)を含有するものである。このようなウレタンエラストマー充填材は、例えば、前記有機ポリイソシアネート(A)と、前記ポリオール(B)及び前記芳香族炭化水素系可塑剤(C)を含有するポリオールプレミックスとを混合することにより得ることができる。このように前記有機ポリイソシアネート(A)と前記ポリオールプレミックスとを混合する方法としては特に限定されないが、例えば、攪拌機を用いて15〜30℃の温度にて0.5〜5分間混合する方法を採用することができる。また、このようなウレタンエラストマー充填材は、必要に応じて他の添加成分、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱性向上剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤、無機及び有機充填材、滑剤、帯電防止剤、補強材を更に含有していてもよい。
また、本発明のウレタンエラストマー充填材における活性水素基(ポリオールの活性水素基の総量)に対するイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、0.50/1.00〜2.00/1.00の範囲であることが好ましく、0.80/1.00〜1.50/1.00の範囲であることがより好ましい。活性水素基に対するイソシアネート基の当量比が上記下限未満では、得られる充填材が未硬化となりやすく、また得られる充填材を用いて形成される充填材成形体の機械的強度(引張強度)が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる充填材を用いて形成される充填材成形体の柔軟性が不十分となる傾向にある。
本発明のウレタンエラストマー充填材においては、雰囲気温度20℃で使用した場合における混合粘度が1000mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることがより好ましい。粘度が前記上限を超えると、得られる充填材を微細な隙間に注入し難くなる傾向にある。また、本発明においては、前記有機ポリイソシアネート(A)と前記ポリオールプレミックスとを混合した後に温度20℃の雰囲気下に1時間放置した場合においても、雰囲気温度20℃で使用した場合における混合粘度が1000mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることがより好ましい。このように、本発明においては、前記有機ポリイソシアネート(A)と前記ポリオールプレミックスとを混合した後に温度20℃の雰囲気下に放置した場合においてウレタンエラストマー充填材を使用することが可能な時間、すなわちポットライフを1時間以上とすることが可能であり、2時間以上とすることも可能である。このように本発明のウレタンエラストマー充填材は、ポットライフが十分に長く、混合粘度が十分に低いため、長時間の注入作業が可能であり、また充填材を微細な隙間に注入することも可能である。
さらに、本発明のウレタンエラストマー充填材を、温度0〜40℃において24〜168時間硬化せしめることにより充填材成形体を得ることができる。このような充填材成形体のJIS−A硬度は、柔軟性及び耐衝撃性の観点から、30〜90の範囲であることが好ましく、40〜70の範囲であることがより好ましい。このようなJIS−A硬度は、JIS K6253に記載の方法に準拠した方法でタイプAデュロメータ(JIS−A硬度計)を用いて測定することができる。
以上説明した本発明のウレタンエラストマー充填材は、優れた耐衝撃性及び耐アルカリ性を有する充填材成形体を形成することが可能であり、しかもポットライフが十分に長く、常温(例えば15〜30℃)における粘度が十分に低いために、長時間の注入作業が可能であり且つ微細な隙間に注入することが可能なものである。そのため、本発明のウレタンエラストマー充填材は、土木や建築等の構造物の止水材として好適に使用することができるが、山岳トンネル等の水密型シート防水工(ウォータータイト型シート防水工)を適用したトンネル防水構造を形成するための止水材として特に好適に使用することができる。
そして、本発明のウレタンエラストマー充填材は、トンネルの地山内面に形成された一次覆工コンクリート層、前記一次覆工コンクリート層の内面側に形成された二次覆工コンクリート層、並びに前記一次覆工コンクリート層と前記二次覆工コンクリート層との間に形成された防水シート層及び覆工止水材層を備えるトンネル防水構造を形成するための充填材として、特に好適に使用することができ、例えば、前記一次覆工コンクリート層、前記防水シート層及び前記二次覆工コンクリート層を形成する工程(第1の工程)と、前記防水シート層と前記二次覆工コンクリート層との間及び/又は前記防水シート層と前記一次覆工コンクリート層との間に本発明のウレタンエラストマー充填材を注入して前記覆工止水材層を形成する工程(第2の工程)とを含む方法により、長期間にわたりトンネルの漏水をより確実に抑制することが可能なトンネル防水構造を施工することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明のウレタンエラストマー充填材を用いてトンネル防水構造の施工する方法について説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明のウレタンエラストマー充填材を用いてトンネル防水構造を形成したトンネル(上側の一部)の一例を示す概略側断面図である。図1に示すトンネルは、トンネルの地山1の内面に形成された一次覆工コンクリート層2と、一次覆工コンクリート層2の内面に形成された防水シート層3と、防水シート層3の内面に形成された覆工止水材層4と、覆工止水材層4の内面に形成された二次覆工コンクリート層5とを備えている。
トンネル防水構造を施工する方法における前記第1の工程においては、一次覆工コンクリート層2、防水シート層3及び二次覆工コンクリート層5を形成する。一次覆工コンクリート層2、防水シート層3及び二次覆工コンクリート層5を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、特開2000−337096号公報に記載の方法を採用することができる。
すなわち、先ず、トンネルの地山1の内面に一次覆工コンクリート層2を形成する。その方法としては、特に制限されないが、例えば、トンネルの地山1の内面側に成形用型枠を設け、成形用型枠にコンクリートを打設する方法を採用することができる。
次に、一次覆工コンクリート層2の内面側に防水シート層3を形成する。その方法としては、特に制限されないが、例えば、公知の防水シートを一次覆工コンクリート層2の内面に敷設する方法を採用することができる。また、このような防水シートの大きさや厚みは特に限定されない。さらに、このような防水シートの材質は、防水性を有し且つ溶着等で接合することが可能で材料であればよく、特に限定されない。また、一次覆工コンクリート層2と防水シート層3との間には、必要に応じて、緩衝材として不織布等を設けてもよい。
次に、防水シート層3の内面側に二次覆工コンクリート層5を形成する。その方法としては、特に制限されないが、例えば、防水シート層3の内面側に成形用型枠を設け、成形用型枠にコンクリートを打設する方法を採用することができる。また、その際に、特開2000−337096号公報に記載の方法においては、防水シート層3と二次覆工コンクリート層5との間に前記本発明のウレタンエラストマー充填材を注入するための止水材注入孔6を形成する。その方法も、特に限定されないが、例えば、管内に棒状の心材を挿入した状態で、その管と心材とを二次覆工コンクリート内に埋設した後に心材のみを引き抜く方法を採用することができる。
トンネル防水構造を施工する方法における前記第2の工程においては、防水シート層3と二次覆工コンクリート層5との間に前記本発明のウレタンエラストマー充填材を注入して覆工止水材層4を形成する。このように覆工止水材層4を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、二次覆工コンクリート層5に形成された前記止水材注入孔6から前記本発明のウレタンエラストマー充填材を注入する方法を採用することができる。なお、本発明のウレタンエラストマー充填材は、前述したようにポットライフが十分に長く、常温(例えば15〜30℃)における粘度が十分に低いため、長時間の注入作業が可能であり、またポンプ等により充填材を容易に注入することができる。
なお、以上説明したトンネル防水構造を施工する方法においては、防水シート層3と二次覆工コンクリート層5との間にのみ覆工止水材層4を形成したが、防水シート層3と一次覆工コンクリート層2にとの間に覆工止水材層4を形成してもよく、防水シート層3と二次覆工コンクリート層5との間並びに防水シート層3と一次覆工コンクリート層2との間の双方に覆工止水材層4を形成してもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、文中の「部」、「%」は質量基準であるものとする。また、実施例及び比較例において用いた原料は以下のとおりである。
(使用原料)
<有機ポリイソシアネート>
MR−200:ポリメリックMDI、日本ポリウレタン工業社製、商品名「MR−200」。
<ポリオール>
PP−400:ポリエーテルポリオール、水酸基価280mgKOH/g、平均官能基数2、数平均分子量400、三洋化成工業社製、商品名「PP−400」。
H−24:ヒマシ油系ポリオール、水酸基価160mgKOH/g、数平均分子量932、伊藤製油社製、商品名「URIC H−24」。
GP−1000:ヒマシ油系ポリオール、水酸基価160mgKOH/g、数平均分子量1000、三洋化成工業社製、商品名「サンニックスGP−1000」。
<可塑剤>
SAS−296:芳香族炭化水素系可塑剤、芳香族分100%、新日本石油社製、商品名「SAS−296」。
ソルベッソ100:芳香族炭化水素系可塑剤、芳香族分99%、エクソン化学社製、商品名「ソルベッソ100」。
ミネラルスピリットA:芳香族炭化水素系可塑剤、芳香族分約20%、新日本石油社製、商品名「ミネラルスピリットA」。
スワゾール1800:芳香族炭化水素系可塑剤、芳香族分99%、丸善石油化学社製、商品名「スワゾール1800」。
非炭化水素系可塑剤1:エステル系可塑剤、旭化成社製、商品名「エリーズM9020」。
非炭化水素系可塑剤2:カーボネート系可塑剤、旭硝子社製、商品名「アサヒネート」。
非炭化水素系可塑剤3:エーテル系可塑剤、三洋化成工業社製、商品名「SK−500」。
流動パラフィン:脂肪族炭化水素系可塑剤、キシダ化学社製。
(実施例1〜8及び比較例1〜7)
<ウレタンエラストマー充填材及び充填材成形体の作製>
実施例1においては、以下のようにしてウレタンエラストマー充填材及び充填材シート状成形体を得た。すなわち、攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、PP−400を800部、H−24を50部及びSAS−296を150部仕込み、温度20℃において1時間混合してポリオールプレミックスを得た。その後、得られたポリオールプレミックスを温度20℃となるように温度調整した。
次に、得られたポリオールプレミックス300部と有機ポリイソシアネート(MR−200)150部とを容器に仕込み、温度20℃において1分間混合した後に、30分間の減圧脱泡処理を施してウレタンエラストマー充填材(ポリウレタン樹脂組成物:PU−1)を得た。そして、得られた充填材をシート成形用の金型(厚み:2mm)に投入し、温度45℃にて1日硬化せしめた後に脱型して充填材シート状成形体を得た。
また、実施例2〜8においては、ポリオールプレミックスの組成をそれぞれ表1に記載の通り変更した以外は実施例1と同様にして、ウレタンエラストマー充填材(PU−2)〜(PU−8)及び充填材シート状成形体を得た。さらに、比較例1〜6においては、ポリオールプレミックスの組成をそれぞれ表2に記載の通り変更した以外は実施例1と同様にして、ウレタンエラストマー充填材(PU−9)〜(PU−14)及び充填材シート状成形体を得た。また、比較例7においては、ポリオールプレミックスの組成を表2に記載の通り変更した以外は実施例1と同様にして、ウレタンエラストマー充填材(PU−15)を作製し、充填材シート状成形体の作製を試みたが、シート表面に可塑剤がブリードしてしまい充填材シート状成形体を作製することができなかった。
Figure 0005418804
Figure 0005418804
<ウレタンエラストマー充填材及び充填材成形体の評価>
実施例1〜8及び比較例1〜6で得られたウレタンエラストマー充填材及び充填材成形体について、以下の方法により、ウレタンエラストマー充填材の粘度、並びに充填材成形体のJIS−A硬度、耐アルカリ性、引張強度(TB)及び伸び(EB)を評価又は測定した。得られた結果を表3に示す。
(i)ウレタンエラストマー充填材の粘度の測定
実施例及び比較例で得られたウレタンエラストマー充填材について、B型回転粘度計を用いて、20℃における粘度を測定した。なお、粘度については、混合直後の粘度及び混合後20℃の雰囲気下にて1時間放置後の粘度をそれぞれ測定した。
(ii)充填材成形体のJIS−A硬度の測定及び評価
実施例及び比較例で得られたウレタンエラストマー充填材100gを成形用のカップに投入し、温度45℃にて1日硬化せしめた後に脱型して充填材成形体を得た。そして、得られた充填材成形体のJIS−A硬度をJIS K6253に記載の方法に準拠した方法でタイプAデュロメータ(JIS−A硬度計)を用いて測定した。なお、充填材成形体のJIS−A硬度の評価については、JIS−A硬度(単位:Hs)が30〜90の範囲である場合を「○」と判定し、それ以外の場合を「×」と判定した。
(iii)充填材成形体の耐アルカリ性の評価
実施例及び比較例で得られた充填材シート状成形体の耐アルカリ性をJIS K7312に記載の方法に準拠した方法で評価した。すなわち、充填材シート状成形体を試料(大きさ:100mm×25mm×2mm)とし、試料を温度70℃、PH13の飽和水酸化カルシウム水溶液に28日間浸漬した。そして、浸漬前の試料の質量(m)及び浸漬後の試料の質量(m)から飽和水酸化カルシウム水溶液への抽出物の質量比率〔△E={(m−m)/m}×100〕を算出し、抽出物の質量比率(△E)が3%未満の場合を「○」と判定し、それ以外の場合を「×」と判定した。
(iv)充填材成形体の引張強度及び伸びの測定及び評価
実施例及び比較例で得られた充填材シート状成形体の引張強度及び伸びをJIS K7312に記載の方法に準拠した方法で測定した。なお、充填材シート状成形体の引張強度の評価については、引張強度が2MPa以上である場合を「○」と判定し、それ以外の場合を「×」と判定した。また、シート状成形体の伸びの評価については、伸びが120%以上である場合を「○」と判定し、それ以外の場合を「×」と判定した。
Figure 0005418804
表3に示した結果から明らかなように、本発明のウレタンエラストマー充填材(実施例1〜8)は、20℃における粘度が十分に低く、またポットライフが十分に長いことが確認された。また、本発明のウレタンエラストマー充填材(実施例1〜8)を用いて得られる充填材成形体は、優れた耐アルカリ性を有することが確認された。さらに、このような充填材成形体は、適度なJIS−A硬度を有しており柔軟性に富むことから、優れた耐衝撃性を有することが確認された。また、このような充填材成形体は、優れた機械的強度(引張強度及び伸び)を有することも確認された。
以上説明したように、本発明によれば、優れた耐衝撃性及び耐アルカリ性を有する充填材成形体を形成することが可能であり、しかもポットライフが十分に長く、常温(例えば15〜30℃)における粘度が十分に低いために、長時間の注入作業が可能であり且つ微細な隙間に注入することが可能なウレタンエラストマー充填材を提供することが可能となる。
したがって、本発明のウレタンエラストマー充填材は、優れた耐衝撃性及び耐アルカリ性を有するために、土木や建築等の構造物の止水材、特にコンクリートの構造物の止水材として有用である。
本発明のウレタンエラストマー充填材を用いてトンネル防水構造を形成したトンネル(上側の一部)の一例を示す概略側断面図である。
符号の説明
1…地山、2…一次覆工コンクリート層、3…防水シート層、4…覆工止水材層、5…二次覆工コンクリート層、6…止水材注入孔。

Claims (2)

  1. 有機ポリイソシアネート(A)と、平均官能基数が2〜4であり且つ数平均分子量が1000以下であるポリエーテルポリオール(b1)を主成分とするポリオール(B)と、芳香族炭化水素(c1)を主成分とする芳香族炭化水素系可塑剤(C)とを含有しており、前記芳香族炭化水素系可塑剤(C)の含有量が有機ポリイソシアネート(A)100質量部に対して10〜100質量部の範囲内にあり、前記ポリオール(B)が、ヒマシ油系ポリオールを含有するものであり、前記ポリオール(B)における前記ポリエーテルポリオール(b1)の含有量が前記ポリオール(B)の全質量に対して70質量%以上であることを特徴とするウレタンエラストマー充填材。
  2. トンネルの地山内面に形成された一次覆工コンクリート層、前記一次覆工コンクリート層の内面側に形成された二次覆工コンクリート層、並びに前記一次覆工コンクリート層と前記二次覆工コンクリート層との間に形成された防水シート層及び覆工止水材層を備えるトンネル防水構造を形成するための充填材であって、
    有機ポリイソシアネート(A)と、平均官能基数が2〜4であり且つ数平均分子量が1000以下であるポリエーテルポリオール(b1)を主成分とするポリオール(B)と、芳香族炭化水素(c1)を主成分とする芳香族炭化水素系可塑剤(C)とを含有しており、前記芳香族炭化水素系可塑剤(C)の含有量が有機ポリイソシアネート(A)100質量部に対して10〜100質量部の範囲内にあり、前記ポリオール(B)が、ヒマシ油系ポリオールを含有するものであり、前記ポリオール(B)における前記ポリエーテルポリオール(b1)の含有量が前記ポリオール(B)の全質量に対して70質量%以上であることを特徴とするウレタンエラストマー充填材。
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