以下、本発明に係る動力伝達装置の実施形態を、図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
本発明に係る動力伝達装置の第1実施形態を、図1乃至図13を参照して説明する。
(動力伝達装置の構成)
先ず、本実施形態に係る動力伝達装置の構成を、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る動力伝達装置の構成を説明する骨子図である。尚、動力伝達装置は、その軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。
図1において、動力伝達装置1は、該動力伝達装置1が搭載されるハイブリッド車両の車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース14(以降、適宜“ケース14”と称する)内において共通の軸心上に配設され、主動力源であるエンジン(ENG)10に直接的に、或いは図示しない脈動吸収ダンパ(即ち、振動減衰装置)等を介して間接的に、連結された入力回転部材としての入力軸101と、該入力軸101に連結された無段変速部21と、該無段変速部21及び駆動輪(図示せず)間の動力伝達経路において、無段変速部21に伝達部材(即ち、伝動軸)102を介して直列に連結されている有段変速部22と、該有段変速部22の出力を後段へ伝達する出力回転部材としての出力軸103とを備えて構成されている。即ち、動力伝達装置1は、直列に設けられた無段変速部21及び有段変速部22を備えて構成されている。
動力伝達装置1は、その軸方向寸法が比較的大きいため、例えば車両長手方向に縦置きされるFR(Front−engine Rear−drive)型車両に好適に用いられる。動力伝達装置1は、エンジン10から一対の駆動輪に至る動力伝達経路に設けられ、エンジン10から出力された動力を、該動力伝達経路の一部を構成する差動歯車装置(即ち、終減速機)(図示せず)及び一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪へ伝達する。
エンジン10は、車両の走行用の主動力源であり、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関によって構成される。図1に示すように、動力伝達装置1において、エンジン10は、無段変速部21と直結されている。ここで、「直結」とは、トルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されていることを意味し、例えば、上述した脈動吸収ダンパ等を介する連結は「直結」に含まれる。
無段変速部21は、遊星歯車機構24、第1電動機M1及び第2電動機M2を備えて構成されている。遊星歯車機構24は、サンギヤS0と、ピニオンギヤと、該ピニオンギヤを自転及び公転可能に支持するキャリアCA0と、リングギヤR0とを備えて構成されている。
第1電動機M1は、その回転子が遊星歯車機構24のサンギヤS0と一体的に回転するように設けられている。第2電動機M2は、その回転子が遊星歯車機構24のリングギヤR0と一体的に回転するように設けられている。第1電動機M1及び第2電動機M2各々の固定子は、ケース14に夫々接続されている。尚、第2電動機M2は、伝達部材102から駆動輪までの間の動力伝達経路を構成する何れの部分に設けられてもよい。
第1電動機M1は、反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも有する電動機であり、第2電動機M2は、走行用の駆動力源として駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも有する電動機である。第1電動機M1及び第2電動機M2は、発電機能をも有する、所謂モータ・ジェネレータであることが望ましい。
無段変速部21において、キャリアCA0は入力軸101、即ちエンジン10に連結され、サンギヤS0は第1電動機M1に連結され、リングギヤR0は伝達部材102に連結されている。無段変速部21では、サンギヤS0、キャリアCA0及びリングギヤR0各々が相互に相対回転可能である。このため、エンジン10の回転数にかかわらず、伝達部材102の回転数が連続的に変化する、即ち、無段変速状態となる。
尚、第1電動機M1及び第2電動機M2は、インバータ11を介して、蓄電装置12に電気的に接続されている。蓄電装置12は、第1電動機M1及び第2電動機M2に対し電力を供給可能、且つ第1電動機M1及び第2電動機M2の回生電力により充電可能である。
尚、本実施形態に係る「エンジン10」、「無段変速部21」、「サンギヤS0」、「キャリアCA0」及び「リングギヤR0」は、夫々、本発明に係る「内燃機関」、「電動式差動部」、「第1回転要素」、「第2回転要素」及び「第3回転要素」の一例である。
有段変速部22は、遊星歯車機構25、26及び27を備えて構成されている。遊星歯車機構25は、サンギヤS1と、ピニオンギヤと、該ピニオンギヤを自転及び公転可能に支持するキャリアCA1と、リングギヤR1とを備えて構成されている。遊星歯車機構26は、サンギヤS2と、ピニオンギヤと、該ピニオンギヤを自転及び公転可能に支持するキャリアCA2と、リングギヤR2とを備えて構成されている。遊星歯車機構27は、サンギヤS3と、ピニオンギヤと、該ピニオンギヤを自転及び公転可能に支持するキャリアCA3と、リングギヤR3とを備えて構成されている。
有段変速部22において、相互に一体的に連結されているサンギヤS1及びS2は、第1クラッチC1を介して伝達部材102に選択的に連結されると共に、第1ブレーキB1を介してケース14に選択的に連結される。キャリアCA1は、第2ブレーキB2を介してケース14に選択的に連結される。相互に一体的に連結されているリングギヤR1並びにキャリアCA2及びCA3は、出力軸103に連結されている。相互に一体的に連結されているリングギヤR2及びサンギヤS3は、第2クラッチC2を介して伝達部材102に選択的に連結される。リングギヤR3は、第3ブレーキB3を介してケース14に選択的に連結される。
第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3は、公知の車両用変速機においてよく用いられる係合要素である油圧式摩擦係合装置であって、第1ブレーキB1を除いて、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型係合装置であるが、第1ブレーキB1は回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本又は2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキにより構成され、それらが介挿されている両側の部材を選択的に連結するものである。
以上のように構成された有段変速部22では、例えば、図2の係合作動表に示されるように、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3が選択的に係合作動されることにより、第1速ギヤ比(即ち、第1変速段)乃至第4変速ギヤ比(即ち、第4変速段)のいずれか、後進ギヤ段(即ち、後進変速段)、或いはニュートラルが選択的に成立され、所定の変速比(即ち、入力軸回転速度/出力軸回転速度)がギヤ段毎に得られるようになっている。
図2に示すように、第1クラッチC1及び第3ブレーキB3の係合により、変速比が、例えば「3.357」である第1変速ギヤ段が成立される。第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により、変速比が、例えば「2.180」である第2変速ギヤ段が成立される。第1クラッチC1及び第1ブレーキB1の係合により、変速比が、例えば「1.424」である第3変速ギヤ段が成立される。第1クラッチC1及び第2クラッチC2の係合により、変速比が、例えば「1.000」である第4変速ギヤ段が成立される。第1クラッチC1及び第3ブレーキB3の係合により、変速比が、例えば「3.209」であるモータ走行用後進ギヤ段が成立される。第2クラッチC2及び第3ブレーキB3の係合により、変速比が、例えば「3.209」であるエンジン走行用後進ギヤ段が成立される。尚、ニュートラル(N)状態とする場合には、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3のいずれも係合されない。
図2において、互いに隣接する各変速段の変速比は、有段変速に理想的とされている等比的に変化させられており、各ギヤ段の変速間の変化割合(即ち、変速比ステップ)がほぼ一定とされている。即ち、第1変速ギヤ段と第2変速ギヤ段との間の変速比ステップは1.54であり、第2変速ギヤ段と第3変速ギヤ段との間の変速比ステップは1.53であり、第3変速ギヤ段と第4変速ギヤ段との間の変速比ステップは1.42である。そして、全体のギヤ幅(即ち、第1変速ギヤ段と第4変速ギヤ段との間の変速比ステップ)は、3.36と比較的大きな値に設定されている。
図3は、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表わすことができる共線図を示している。図3の共線図は、横軸方向において各遊星歯車機構24、25、26及び27のギヤ比の相対関係を示し、縦軸方向において相対的回転速度を示している。
図3において、2本の横線X1及びX2のうち、横線X1が回転速度ゼロを示し、横線X2が回転速度「1.0」即ち、伝達部材102の回転速度を示している。他方、8本の縦線は、左側から順に、サンギヤS0、キャリアCA0、リングギヤR0、互いに連結されたサンギヤS1及びS2、キャリアCA1、リングギヤR3、互いに連結されたリングギヤR1、キャリアCA2及びCA3、並びに、互いに連結されたサンギヤS3及びリングギヤR2各々の相対回転速度比を示すものである。
縦線間の間隔は遊星歯車機構24、25、26及び27のギヤ比に応じて夫々定められている。即ち、図3に示すように、遊星歯車機構24、25、26及び27毎に、そのサンギヤとキャリアとの間が1.000とされると、キャリアとリングギヤとの間がρに対応するものとなる。
図3において、遊星歯車機構24のキャリアCA0が入力軸101に連結され、サンギヤS0が第1電動機M1に連結され、リングギヤR0が第2電動機M2に連結されると共に伝達部材102に連結される。相互に一体的に連結されている遊星歯車機構25のサンギヤS1及び遊星歯車機構26のサンギヤS2は、第2クラッチC2を介して伝達部材102に選択的に連結されると共に、第1ブレーキB1を介してケース14に選択的に連結される。遊星歯車機構25のキャリアCA1は、第2ブレーキB2を介してケース14に選択的に連結される。遊星歯車機構27のリングギヤR3は、第3ブレーキB3を介してケース14に選択的に連結される。相互に一体的に連結されている遊星歯車機構25のリングギヤR1、遊星歯車機構26のキャリアCA2及び遊星歯車機構27のキャリアCA3は、出力軸103に連結される。相互に一体的に連結されている遊星歯車機構26のリングギヤR2及び遊星歯車機構27のサンギヤS3は、第1クラッチC1を介して伝達部材102に選択的に連結される。
図4は、本実施形態に係る動力伝達装置1を制御するための制御装置である電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)30に入力される信号及びその電子制御装置30から出力される信号を例示している。電子制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び入出力インターフェース等からなる所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン10、第1電動機M1及び第2電動機M2に関するハイブリッド駆動制御、有段変速部22の変速制御等の駆動制御を実行するものである。
電子制御装置30には、図4に示す各センサやスイッチから、エンジン水温を示す信号、Pb1油圧を示す信号、Pb2油圧を示す信号、Pc2油圧を示す信号、第1電動機M1の回転数を示す信号、第2電動機M2の回転数を示す信号、エンジン回転数を示す信号、トーイングスイッチの状態を示す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコンの作動を示す信号、出力軸103の回転速度に対応する車速信号、有段変速部22の作動油温を示す信号、ECT(Electoronic Controlled Transmission)を指令する信号、サイドブレーキ操作を示す信号、フットブレーキ操作を示す信号、触媒温度を示す信号、アクセルペダルの操作量を示すアクセル開度信号、EV(Electric Vehicle)スイッチの状態を示す信号、スノーモード設定を示す信号、車両の前後加速度を示す加速度信号、オートクルーズ走行を示す信号、パワーモードスイッチの状態を示す信号、シフトポジションを示す信号、等が夫々供給される。
他方、電子制御装置30からは、スロットル弁の開度を操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号、過給圧を調整するための信号、電動エアコンを作動させるための信号、エンジン10の点火時期を指令する点火信号、第1電動機M1の作動を指令する信号、第2電動機M2の作動を指令する信号、第1蓄電装置を制御する信号、第2蓄電装置を制御する信号、ギヤ比インジケータを作動させるための信号、スノーモードであることを表示させるための信号、有段変速部22の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路に含まれる電磁弁を作動させる指令信号、制動時の車輪のスリップを防止するABS(Antilock Brake System)アクチュエータを作動させるための信号、Mモードが選択されていることを表示させる信号、油圧制御回路の油圧源である電動油圧ポンプを作動させる信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号、等が夫々出力される。
電子制御装置30は、無段変速部21及び有段変速部22の自動変速制御を実行する。ここで、有段変速部22の自動変速制御は、例えば電子制御装置30に予め記憶された、図5に示すような、変速線図から車速及び要求出力トルクで示される車両状態に基づいて実行される。この際、電子制御装置30は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように、変速に関与する係合装置等を係合及び/又は解放させる指令を出力する。
図5は、車速と出力トルクとをパラメータとする二次元座標に構成された、有段変速部の変速状態の切換判定に用いられる予め記憶された切換線図の一例と、エンジン走行とモータ走行との切換判定に用いられる境界線を有する予め記憶された駆動力源切換線図とを例示する図である。図5において、実線はアップシフト線を示しており、破線はダウンシフト線を示している。
図5における実線Eは、ハイブリッド車両の発進・走行用(以下、適宜“走行用”と称する)の駆動力源をエンジン10と、電動機(例えば、第2電動機M2)とで切り換えるための、言い換えれば、エンジン10を走行用の駆動力源としてハイブリッド車両を発進・走行(以下、適宜“走行”と称する)させる所謂エンジン走行と、第2電動機M2を走行用の駆動力源としてハイブリッド車両を走行させる所謂モータ走行とを切り換えるための、エンジン走行領域とモータ走行領域(図5における斜線部分)との境界線である。
電子制御装置30は、例えば図5に示すような、駆動力源切換線図から、車速と要求出力トルクとで示される車両状態に基づいてモータ走行領域とエンジン走行領域との何れであるかを判定してモータ走行又はエンジン走行を実行する。モータ走行は、図5から明らかなように、一般的にエンジン効率が高トルク域に比して低いとされる比較的低出力トルク域、即ち、低エンジントルク域、或いは、車速の比較的低車速域、即ち、低負荷域で実行される。従って、通常は、モータ発進がエンジン発進に優先して実行されるが、例えば車両発進時に、図5におけるモータ走行領域を超える要求出力トルク、即ち要求エンジントルクとされる程大きくアクセルペダルが踏み込まれるような車両状態では、エンジン発進も通常実行されるものである。
ところで、図5に示すような変速線図は、例えば無段変速部21の所定の要素における回転速度を考慮して、より具体的には所定の要素に関する回転速度が高回転とならないように、即ち、無段変速部21を構成する回転要素が許容回転速度を超えないように設定されている。
例えば、第1電動機M1の耐久性を考慮して、第1電動機M1の回転速度の高回転が生じないように有段変速部22の各変速ギヤ段(即ち、変速比)を形成するための各アップシフト線(図5の実線)及びダウンシフト線(図5の破線)が設定されている。つまり、出力軸103の回転速度と有段変速部22の変速比とから一意的に決定される伝達部材102の回転速度、エンジン10の回転速度、及び第1電動機M1の回転速度の無段変速部21における相互の相対回転速度の関係に基づいて決定される第1電動機M1の回転速度が高回転とならないように各アップシフト線及び各ダウンシフト線が設定されている。
或いは、例えば、第2電動機M2の耐久性を考慮して、伝達部材102の回転速度と同じ回転速度である第2電動機M2の回転速度の高回転(即ち、過回転状態)が生じないように各アップシフト線及び各ダウンシフト線が設定されている。
或いは、例えば遊星歯車機構24のピニオンギヤの耐久性(例えば、ピニオンシャフトが挿し通されるように設けられたニードルベアリングの耐久性)を考慮して、ピニオンギヤの自転速度の高回転(即ち、過回転状態)が生じないように各アップシフト線及び各ダウンシフト線が設定されている。つまり、ピニオンギヤの自転速度を定める基となる伝達部材102の回転速度(即ち、リングギヤR0の回転速度)とエンジン10の回転速度(即ち、キャリアCA0の回転速度)との回転速度差が許容回転速度差を超えないように各アップシフト線及び各ダウンシフト線が設定されている。
しかしながら、上述した変速線図から判定される有段変速部22の変速ギヤ段では、例えば第1電動機M1及び/又は第2電動機M2が必ずしも効率の良い動作点で作動させられているわけではないので、或いは、有段変速部22が必ずしもパワー伝達効率の良い変速段が形成されているわけではないので、第1電動機M1及び/又は第2電動機M2が高負荷となったり有段変速部22が高負荷となったりする。
すると、例えば、第1電動機M1及び/又は第2電動機M2の温度上昇(例えばコイルやロータ部の温度上昇)、或いは第1電動機M1や第2電動機M2や自動変速部20内の各部の潤滑および冷却に用いられる作動油の温度上昇を引き起こし、第1電動機M1や第2電動機M2を含む無段変速部21の耐久性が低下する可能性がある。或いは、例えば第1電動機M1及び/又は第2電動機M2の消費電力量が増加し、電力効率が低下する可能性がある。
そのため、有段変速部22に対する変速判定として、上述した変速線図から判定される変速判定の他に、上述したような温度上昇や消費電力の増加等の原因となる第1電動機M1及び/又は第2電動機M2の高負荷や有段変速部22の高負荷等の無段変速部21の作動状態が高負荷であるときに無段変速部21の負荷を抑制する為の変速判定が必要となる場合がある。つまり、上述したような温度上昇や消費電力の増加を抑制する為に、有段変速部22の変速を実行することにより、第1電動機M1及び/又は第2電動機M2の作動状態を効率の良い動作点に変更して第1電動機M1及び/又は第2電動機M2の負荷を抑制したり、有段変速部22の発熱の厳しい状態から有段変速部22のパワー伝達効率の良い状態に変更して有段変速部22の負荷を抑制したりすることが必要となる場合がある。
このような場合の有段変速部22の変速判定は、変速線図から判定される変速判定とは異なり、無段変速部21を構成する回転要素における回転速度が考慮されているわけではないので、これらの変速判定に従って実行された有段変速部22の変速の際に等パワー変速が実行されると、有段変速部22の変速段によっては第1電動機M1が高回転となったり、第2電動機M2(或いは伝達部材102、有段変速部22の入力系の回転部材)が高回転となったり、遊星歯車機構24のピニオンギヤが高回転となる可能性がある。
例えば、判定された有段変速部22の変速の際に等パワー変速を実行すると第1電動機M1が正側の高回転となるときとは、出力軸103の回転速度に対してエンジン10の回転速度が比較的高く、第1電動機M1の回転速度を引き上げるようなアップシフトが判定されたとき等が想定される。
また、例えば、判定された有段変速部22の変速の際に等パワー変速を実行すると第1電動機M1が負側の高回転となるときとは、出力軸103の回転速度に対してエンジン10の回転速度が比較的低く、第1電動機M1の回転速度を引き下げるようなダウンシフトが判定されたとき等が想定される。
また、例えば、判定された有段変速部22の変速の際に等パワー変速を実行すると第2電動機M2が高回転となるときとは、出力軸103の回転速度が高く、第2電動機M2の回転速度2が所定値以上となっている状態で、更に第2電動機M2の回転速度を引き上げるようなダウンシフトが判定されたとき等が想定される。
また、例えば、判定された有段変速部22の変速の際に等パワー変速を実行すると遊星歯車機構24のピニオンギヤが高回転となるときとは、出力軸103の回転速度に対してエンジン10の回転速度が比較的高く、更に該ピニオンギヤの自転速度を引き上げるような(或いは回転速度差を広げるような)アップシフトが要求されたとき、或いはまた、出力軸103の回転速度に対してエンジン10の回転速度が比較的低く、更に該ピニオンギヤの自転速度を引き上げるようなダウンシフトが要求されたとき等が想定される。
このとき、無段変速部21を構成する回転要素が許容回転速度を超えるために、上述したような温度上昇や消費電力の増加を抑制する為の有段変速部22の変速が制限(禁止)されると、第1電動機M1の温度や第2電動機M2の温度や作動油温度を下げることができず、結局、無段変速部21の耐久性が低下してしまう可能性がある、或いは、第1電動機M1及び/又は第2電動機M2の負荷を下げることができず、結局、電力効率が低下してしまう可能性がある。
そこで、本実施形態では、電子制御装置30により、無段変速部21の負荷を抑制する為に必要とされる有段変速部22の変速に伴って実行される等パワー変速に際して、無段変速部21を構成する回転要素が許容回転速度を超える場合には、無段変速部21の各部の過回転を避けた変速とし且つ第1電動機M1或いは第2電動機M2の効率の良い運転点を得るために非等パワー変速が実行されると共に、有段変速部22の変速に替えて無段変速部21の負荷を抑制する為に駆動力源出力が抑制される。
つまり、燃費や動力性能を考えれば、無段変速部21の負荷を抑制する為に必要とされる有段変速部22の変速の際には、等パワー変速が実行されることが好ましいが、例えば第1電動機M1及び/又は第2電動機M2の温度上昇や消費電力の増加を抑制する為に必要とされる有段変速部22の変速の際には、或いはまた作動油の温度上昇を抑制する為に必要とされる有段変速部22の変速の際には、有段変速部22の変速に伴う等パワー変速を実行することによって無段変速部21を構成する回転要素が許容回転速度を超えてしまう場合には、燃費や動力性能よりも無段変速部21の耐久性を向上すること、や電力効率の低下を抑制することを優先するという観点から、有段変速部22の変速を制限(禁止)し、その有段変速部22の変速に替えて駆動力源の出力を抑制することで無段変速部21の負荷を抑制するのである。
図6は、シフトレバーを備えた複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフト操作装置の一例を示す図である。シフト切換装置は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフトレバー48を備えている。該シフトレバー48は、第1クラッチC1及び第2クラッチC2の何れの係合装置も係合されないような動力伝達装置1(有段変速部22)内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態、即ち中立状態とし、且つ有段変速部22の出力軸103をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、動力伝達装置1内の動力伝達経路が遮断された中立状態とする中立ポジション「N(ニュートラル)」、前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、又は前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように構成されている。
(変速制御)
次に、以上のように構成された動力伝達装置1が搭載されるハイブリッド車両の、主に走行中に、電子制御装置30が実行する変速制御動作について、図7のフローチャートを参照して説明する。
図7において、先ず、電子制御装置30は、有段変速部22の非等パワー変速の実行が終了したか否かを判定する(ステップS101)。非等パワー変速の実行が終了していないと判定された場合(例えば、非等パワー変速の実行中であると判定された場合、又は等パワー変速の実行が終了したと判定された場合等)(ステップS101:No)、電子制御装置30は、燃費や動力性能を考慮した通常の運転点を使用する(ステップS103)。
他方、非等パワー変速の実行が終了したと判定された場合(ステップS101:Yes)、電子制御装置30は、回転機(ここでは、第1電動機M1)が出力制限状態であるか否か(即ち、第1電動機M1の回転速度が許容回転速度に達しているか否か)を判定する(ステップS102)。
回転機が出力制限状態であると判定された場合(ステップS102:Yes)、電子制御装置30は、後述する差動部変速比制御aパターン(図8参照)を選択し、該選択された差動部変速比制御aパターンに従って無段変速部21を制御する(ステップS104)。他方、回転機が出力制限状態でないと判定された場合(ステップS102:No)、電子制御装置30は、後述する差動部変速比制御bパターン(図9参照)を選択し、該選択された差動部変速比制御bパターンに従って無段変速部21を制御する(ステップS105)。
尚、本実施形態に係る「電子制御装置30」は、本発明に係る「変更手段」の一例である。本実施形態では、各種電子制御用の電子制御装置30の一部を動力伝達装置1の一部として用いている。
本実施形態に係る差動部変速比制御aパターン及びbパターンについて、図8及び図9を参照して夫々説明する。図8は、本実施形態に係る差動部変速比制御aパターンを説明する共線図であり、図9は、本実施形態に係る差動部変速比制御bパターンを説明する共線図である。
図8及び図9の共線図では、横軸方向において遊星歯車機構24のギヤ比の相対関係を示し、縦軸方向において相対的回転速度を示している。図8及び図9において、3本の縦線は、左側から順に、第1電動機M1、エンジン10及び第2電動機M2各々の相対回転速度比を示すものである。
図8及び図9において、実線Aは、有段変速部22の変速前の相対回転速度比の一例であり、二点鎖線Bは、等パワー変速後の相対回転速度比の一例であり、点線Cは、非等パワー変速後の相対回転速度比の一例であり、破線Dは、非等パワー変速後に第1電動機M1の回転数が増加された場合の相対回転速度比の一例であり、一点鎖線Eは、非等パワー変速後所定時間経過後の相対回転速度比の一例である。
差動部変速比制御aパターンとは、以下の制御処理を意味する。即ち、無段変速部21における第1電動機M1、エンジン10及び第2電動機M2各々の相対回転速度比が、図8における実線A、点線C、一点鎖線Eの順に変化するように、第1電動機M1、エンジン10及び第2電動機M2が夫々制御される制御処理を意味する。
つまり、図8において実線Aで示される状態で、等パワー変速を実行すると二点鎖線Bで示されるように第1電動機M1の回転速度が該第1電動機M1の許容回転速度(ここでは、P0)を超えてしまう場合、点線Cで示される状態になるようにエンジン10の相対回転速度がP11からP12に変更する非等パワー変速が実行される。この際、点線Cで示される状態では、第1電動機M1の回転速度は、許容回転速度(P0)であるので(即ち、第1電動機M1が出力制限状態であるので)、第1電動機M1の回転速度が出力制限範囲の最大値(P0)に維持されつつ、エンジン10の相対回転速度がP12からP13に変更される(一点鎖線E参照)。
他方、差動部変速比制御bパターンとは、以下の制御処理を意味する。即ち、無段変速部21における第1電動機M1、エンジン10及び第2電動機M2各々の相対回転速度比が、図9における実線A、点線C、破線Dの順に変化するように、第1電動機M1、エンジン10及び第2電動機M2が夫々制御される制御処理を意味する。
つまり、非等パワー変速が実行された際、点線Cで示される状態では、第1電動機M1の回転速度は、許容回転速度(P0)よりも低いP1であるので(即ち、第1電動機M1が出力制限状態ではないので)、第1電動機M1の回転速度が出力制限範囲の最大値(P0)に変更されつつ、エンジン10の相対回転数がP12からP14に変更される(破線D参照)。
差動部変速比制御aパターンとbパターンとを比較すると、エンジン10の相対回転速度P13(図8参照)と相対回転速度P14(図9参照)とでは、相対回転速度P14のほうが、有段変速部22の変速前のエンジン10の相対回転速度P11との差が少ないことがわかる。即ち、第1電動機M1の回転速度が出力制限範囲内であれば、第1電動機M1の回転速度を出力制限範囲内で可能な限り増加させることで、非等パワー変速後のエンジン10の加速性能の低下を抑制することができる。
ここで、差動部変速比制御aパターン及びbパターン各々が実行された際のエンジン10の回転数等の時間変化を、図10のタイムチャートを参照して説明する。ここでは特に、図10における「エンジンパワー」と「MG1(即ち、第1電動機M1)回転数」との時間変化について説明する。
図10は、図7のフローチャートに示す変速制御動作を説明するタイムチャートであって、アップシフト時にエンジン回転数を低下させた非等パワー変速が実行された場合の一例である。図10において、実線は、差動部変速比制御bパターンが実行された場合のタイムチャートであり、一点鎖線は、差動部変速比制御aパターン及が実行された場合のタイムチャートである。
図10における、時刻t0に電子制御装置30により変速判定がなされ、時刻t1乃至t2の期間に非等パワー変速が実行される。尚、第1電動機M1、エンジン10及び第2電動機M2各々の相対回転速度比は、時刻t1では図8及び図9各々における実線Aの状態であり、時刻t2では図8及び図9各々における点線Cの状態である。
差動部速度比制御bパターンでは、図10における時刻t2乃至t3の期間に第1電動機M1の回転数が出力制限範囲内で増加される。他方、差動部変速比制御aパターンでは、第1電動機M1が出力制限状態であるので、図10における時刻t2後第1電動機M1の回転数は変更されない。この結果、差動部速度比制御bパターンでは、図10における時刻t4にエンジン10の出力(エンジンパワー)が非等パワー変速実行前と同程度まで復帰する。他方、第1電動機M1が出力制限状態である差動部変速比制御aパターンでは、図10における時刻t5にエンジン10の出力が非等パワー変速実行前と同程度まで復帰する。
尚、第1電動機M1、エンジン10及び第2電動機M2各々の相対回転速度比は、時刻t4では、図8における一点鎖線Eの状態(aパターン)又は図9における破線Dの状態(bパターン)である。
ところで、有段変速部22の非等パワー変速が実行される際に、エンジン10の動作状態によっては、エンジン10のトルクが下がる場合(図11における“イ”参照)と、エンジン10のトルクが上がる場合(図11における“ロ”参照)がある。図11は、有段変速部の非等パワー変速時におけるエンジンの動作点の変化の一例を示す図である。
有段変速部22の非等パワー変速に伴いエンジン10のトルクが下がる場合及び上がる場合における、差動部変速比制御に伴う第1電動機M1の運転点の変化について、図12及び図13を参照して説明する。
図12は、有段変速部の非等パワー変速に伴いエンジンのトルクが下がる場合における、差動部変速比制御に伴う第1電動機の運転点の変化の一例を示す図であり、図13は、有段変速部の非等パワー変速に伴いエンジンのトルクが上がる場合における、差動部変速比制御に伴う第1電動機の運転点の変化の一例を示す図である。
図12及び図13において、図中の点A、点B、点C、点D及び点Eは、夫々、図8及び図9における実線A、二点鎖線B、点線C、破線D及び一点鎖線Eに対応している。また、図12及び図13において、破線及び一点鎖線は等パワー線を示している。
図12において、有段変速部22の非等パワー変速に伴いエンジン10のトルクが下がる場合、第1電動機M1の運転点は、非等パワー変速に起因して点Aから点Cへ移行する。その後、第1電動機M1が出力制限状態でない場合は、差動部変速比制御bパターン起因して点Cから点Dへ移行する。他方、第1電動機M1が出力制限状態である場合は、差動部変速比制御aパターン起因して点Cから点Eへ移行する。
図13において、有段変速部22の非等パワー変速に伴いエンジン10のトルクが上がる場合、第1電動機M1の運転点は、非等パワー変速に起因して点Aから点Cへ移行する。その後、第1電動機M1が出力制限状態でない場合は、差動部変速比制御bパターン起因して点Cから点Dへ移行する。他方、第1電動機M1が出力制限状態である場合は、差動部変速比制御aパターン起因して点Cから点Eへ移行する。
<第2実施形態>
本発明の動力伝達装置に係る第2実施形態を、図14乃至図17を参照して説明する。第2実施形態では、電子制御装置30が実行する差動部変速比制御が異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図14乃至図17を参照して説明する。
(変速制御)
本実施形態に係る差動部変速比制御aパターン及びbパターンについて、図14及び図15を参照して夫々説明する。図14は、図8と同趣旨の、本実施形態に係る差動部変速比制御aパターンを説明する共線図であり、図15は、図9と同趣旨の、本実施形態に係る差動部変速比制御bパターンを説明する共線図である。
差動部変速比制御aパターンとは、以下の制御処理を意味する。即ち、無段変速部21における第1電動機M1、エンジン10及び第2電動機M2各々の相対回転速度比が、図14における実線A、点線C、一点鎖線Eの順に変化するように、第1電動機M1、エンジン10及び第2電動機M2が夫々制御される制御処理を意味する。
つまり、図14において実線Aで示される状態で、等パワー変速を実行すると二点鎖線Bで示されるように第1電動機M1の回転速度が該第1電動機M1の許容回転速度(ここでは、P0)を超えてしまう場合、点線Cで示される状態になるようにエンジン10の相対回転速度がP21からP22に変更する非等パワー変速が実行される。この際、点線Cで示される状態では、第1電動機M1の回転速度は、許容回転速度(P0)であるので(即ち、第1電動機M1が出力制限状態であるので)、第1電動機M1の回転速度が出力制限範囲の最大値(P0)に維持されつつ、エンジン10の相対回転速度がP22からP23に変更される(一点鎖線E参照)。
他方、差動部変速比制御bパターンとは、以下の制御処理を意味する。即ち、無段変速部21における第1電動機M1、エンジン10及び第2電動機M2各々の相対回転速度比が、図15における実線A、点線C、破線Dの順に変化するように、第1電動機M1、エンジン10及び第2電動機M2が夫々制御される制御処理を意味する。
つまり、非等パワー変速が実行された際、点線Cで示される状態では、第1電動機M1の回転速度は、許容回転速度(P0)よりも低いP1であるので(即ち、第1電動機M1が出力制限状態ではないので)、第1電動機M1の回転速度が出力制限範囲の最大値(P0)に変更されつつ、エンジン10の相対回転数がP22からP24に変更される(破線D参照)。
差動部変速比制御aパターンとbパターンとを比較すると、エンジン10の相対回転速度P23(図14参照)と相対回転速度P24(図15参照)とでは、相対回転速度P24のほうが、有段変速部22の変速前のエンジン10の相対回転速度P21との差が少ないことがわかる。即ち、第1電動機M1の回転速度が出力制限範囲内であれば、第1電動機M1の回転速度を出力制限範囲内で可能な限り増加させることで、非等パワー変速後のエンジン10の加速性能の低下を抑制することができる。
ここで、差動部変速比制御aパターン及びbパターン各々が実行された際のエンジン10の回転数等の時間変化を、図16のタイムチャートを参照して説明する。ここでは特に、図16における「エンジンパワー」と「MG1(即ち、第1電動機M1)回転数」との時間変化について説明する。
図16は、図10と同趣旨の、図7のフローチャートに示す変速制御動作を説明するタイムチャートであって、アップシフト時にエンジン回転数を低下させた非等パワー変速が実行された場合の他の例である。
図16における、時刻t0に電子制御装置30により変速判定がなされ、時刻t1乃至t2の期間に非等パワー変速が実行される。尚、第1電動機M1、エンジン10及び第2電動機M2各々の相対回転速度比は、時刻t1では図14及び図15各々における実線Aの状態であり、時刻t2では図14及び図15各々における点線Cの状態である。
差動部速度比制御bパターンでは、図16における時刻t2乃至t3の期間に第1電動機M1の回転数が出力制限範囲内で増加される。他方、差動部変速比制御aパターンでは、第1電動機M1が出力制限状態であるので、図16における時刻t2後第1電動機M1の回転数は変更されない。この結果、差動部速度比制御bパターンでは、図16における時刻t4にエンジン10の出力(エンジンパワー)が非等パワー変速実行前と同程度まで復帰する。他方、第1電動機M1が出力制限状態である差動部変速比制御aパターンでは、図16における時刻t5にエンジン10の出力が非等パワー変速実行前と同程度まで復帰する。
尚、第1電動機M1、エンジン10及び第2電動機M2各々の相対回転速度比は、時刻t4では、図14における一点鎖線Eの状態(aパターン)又は図15における破線Dの状態(bパターン)である。
本実施形態では特に、電子制御装置30は、有段変速部22の非等パワー変速中は、例えば第1電動機M1の回転速度の高回転化を抑制するため、専ら肩特性域を避けて(即ち、棚特性域で)第1電動機M1の運転点変更を実行し、非等パワー変速後は、肩特性域も含んで(即ち、肩特性域及び棚特性域で)第1電動機M1の運転点変更を実行する。
尚、「棚特性域」とは、第1電動機M1の回転数が変化しても該第1電動機M1のトルクが一定の領域を意味する。他方、「肩特性域」とは、第1電動機M1の回転数に応じて該第1電動機M1のトルクが変化する領域を意味する。
このため、本実施形態に係る差動部変速比制御に伴う第1電動機M1の運転点変化は、図17のようになる。図17は、図12と同趣旨の、有段変速部の非等パワー変速に伴いエンジンのトルクが下がる場合における、差動部変速比制御に伴う第1電動機の運転点の変化の他の例を示す図である。
図17において、有段変速部22の非等パワー変速に伴いエンジン10のトルクが下がる場合、第1電動機M1の運転点は、非等パワー変速に起因して点Aから点Cへ移行する。その後、第1電動機M1が出力制限状態でない場合は、差動部変速比制御bパターン起因して点Cから点Dへ移行する。他方、第1電動機M1が出力制限状態である場合は、差動部変速比制御aパターン起因して点Cから点Eへ移行する。
第1電動機M1が出力制限状態でない場合は、図17に示すように、肩特性域も含んで第1電動機M1の運転点を変更することができるので(点D参照)、専ら棚特性域で第1電動機M1の運転点を変更する場合(点E参照)に比べて、エンジン10の出力を早期に復帰することができる(図16参照)。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う動力伝達装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。