後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
紫外線光源と、赤外線光源と、前記紫外線光源から放射された紫外線をそれぞれ伝搬する複数の第1の光ファイバを密に束ねた第1の光ファイババンドルと、前記赤外線光源から放射された赤外線を伝搬する第2の光ファイバと、前記第1の光ファイババンドルを構成する前記複数の第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとを束ねた束の先端部を含み、前記複数の第1の光ファイバにより伝搬された紫外線と、前記第2の光ファイバにより伝搬された赤外線とを照射する照射ヘッドとを備えることを特徴とする光照射装置が明らかとなる。
このような光照射装置によれば、紫外線の照射範囲に赤外線を照射することが容易になる。
前記束の先端部端面において、前記第2の光ファイバは中央付近に配置されていることが望ましい。これにより、紫外線の照射範囲の中心付近に赤外線を照射することができる。
前記第2の光ファイバの開口数が、前記複数の第1の光ファイバの開口数よりも大きいことが望ましい。これにより、紫外線と赤外線の両方が照射される範囲を広げることができる。なお、第2の光ファイバのコアの屈折率に対するクラッドの屈折率の比を、その周りに位置する第1の光ファイバのコアの屈折率に対するクラッドの屈折率の比よりも低くすることによって、第2の光ファイバのそれぞれの開口数は、その周りに位置する第1の光ファイバの開口数よりも大きくなる。
前記第2の光ファイバの前記赤外線光源とは反対側の端面に、またはその端面の先に、レンズが設けられていることが望ましい。これにより、紫外線と赤外線の両方が照射される範囲を広げることができる。
前記照射ヘッドは、前記束の先端部の先に設けたインテグレータ光学系をさらに含み、前記複数の第1の光ファイバにより伝搬された紫外線と前記第2の光ファイバにより伝搬された赤外線とが前記インテグレータ光学系に入射され、前記インテグレータ光学系を通った紫外線と赤外線が前記照射ヘッドから照射されることが望ましい。これにより、均一に紫外線及び赤外線が照射される。
前記インテグレータ光学系は、前記束の先端部に一体的に形成されたロッドレンズであることが望ましい。これにより、光の損失が少ない状態で、紫外線及び赤外線を照射できる。
前記インテグレータ光学系は、前記束の先端部が一部挿入されている中空管であって、内壁面が反射面になっている中空管であることが望ましい。これにより、均一に紫外線及び赤外線が照射される。
前記赤外線光源が複数存在し、複数の前記赤外線光源のそれぞれから放射された赤外線をそれぞれ伝搬する複数の前記第2の光ファイバが存在し、これらの複数の前記第2の光ファイバを束ねて第2の光ファイババンドルとし、前記照射ヘッドは、前記第1の光ファイババンドルを構成する前記複数の第1の光ファイバと、前記第2の光ファイババンドルを構成する複数の前記第2の光ファイバとを束ねた束の先端部を含むことが望ましい。これにより、赤外線光源から放射された赤外線を複数の第2の光ファイバに伝搬させることができる。
前記束の先端部端面において、第2の光ファイバ同士は互いに離れて配置されていることが望ましい。これにより、赤外線の照射範囲を効率よく増やすことが可能である。また、この場合、前記第2の光ファイバの開口数は、前記複数の第1の光ファイバの開口数よりも大きいことが望ましい。これにより、照射ヘッドと被照射物との距離が短くても、隙間無く赤外線を照射しやすくなる。
前記紫外線光源は、発光ダイオードで構成され、前記赤外線光源は、レーザダイオードで構成されることが望ましい。これにより、十分な出力の赤外線を照射することができる。
===概要===
図1Aは、比較例の説明図である。この例では、紫外線用照射ヘッドと赤外線用照射ヘッドが別々に用意されている。図中左側の紫外線用照射ヘッドは、紫外線伝搬用光ファイバを束ねた束を含み、紫外線伝搬用光ファイバにより伝搬された紫外線を照射する。図中右側の赤外線用照射ヘッドは、赤外線伝搬用光ファイバを束ねた束を含み、赤外線伝搬用光ファイバにより伝搬された赤外線を照射する。つまり、この例では、別々の照射ヘッドから紫外線と赤外線をそれぞれ照射するので、紫外線の照射範囲と赤外線の照射範囲がずれ易い。従って、紫外線の照射範囲と赤外線の照射範囲を合わせることが困難である。特に、目に見えない光である紫外線と赤外線を用いているため、これらの光の照射範囲を合わせる作業は困難となる。また、一方の照射ヘッドを移動させたとき、紫外線の照射範囲と赤外線の照射範囲を合わせるには、他方の照射ヘッドを別途移動させる必要がある。
図1Bは、本発明を適用した一実施形態を説明する図である。この実施形態では、照射ヘッドは、紫外線伝搬用光ファイババンドルを構成する複数の紫外線伝搬用光ファイバと赤外線伝搬用光ファイバとを束ねた束を含み、複数の紫外線伝搬用光ファイバにより伝搬された紫外線と赤外線光ファイバにより伝搬された赤外線とを照射する。これにより、複数の紫外線伝搬用光ファイバが紫外線を照射する照射範囲と、赤外線伝搬用光ファイバが赤外線を照射する照射範囲がずれなくて済むのである。
なお、紫外線伝搬用光ファイバは、紫外線光源から放射された紫外線を伝搬する光ファイバである。紫外線伝搬用光ファイバとして、例えば、紫外線の伝搬に適した光ファイバである紫外線専用光ファイバが用いられても良い。紫外線専用光ファイバが用いられた場合、紫外線の波長域での損失特性は良いが、赤外線の波長域での損失特性は良くない。
赤外線伝搬用光ファイバは、赤外線光源から放射された赤外線を伝搬する光ファイバである。赤外線伝搬用光ファイバとして、例えば、赤外線の伝搬に適した光ファイバである赤外線専用光ファイバが用いられても良い。赤外線専用光ファイバが用いられた場合、赤外線の波長域での損失特性は良いが、紫外線の波長域での損失特性は良くない。
===第1実施形態===
<全体構成>
図2は、光照射装置の外観図である。図3は、光照射装置の基本構成の説明図である。
光照射装置1は、照射ヘッド31から紫外線及び赤外線を照射する光ファイババンドル型光照射装置である。光照射装置1は、複数の紫外線LED11と、1個の赤外線LD12と、複数本の紫外線伝搬用光ファイババンドル23と、1本の赤外線伝搬用光ファイバ22と、照射ヘッド31とを備える。
紫外線LED11は、紫外線を放射する紫外線光源である。図3では、紫外線LED11を示す矩形ブロックに、「UV」と記載している。ここでは、4個の紫外線LED11が設けられている。各紫外線LED11は実装基板60上に実装されている。この実装基板60は、ヒートシンク51に接するように配置されている。これにより、発光時の紫外線LEDから発生する熱を、実装基板60を介してヒートシンク51に吸収・拡散させることができる。紫外線LED11は、基板60上の1カ所にではなく、複数カ所に分散配置されている。このため、紫外線LEDから発生する熱が1カ所に集中するのを防ぐことができる。
赤外線LD12(LD:レーザダイオード)は、赤外線を放射する赤外線光源である。図3では、赤外線LD12を示す矩形ブロックに、「IR」と記載している。レーザダイオードは発光ダイオードと比べて高出力である。このため、本実施形態では、紫外線光源としての紫外線LEDを複数設けているのに対し、赤外線光源としての赤外線LDが1個だけ設けられている。この赤外線LD12も実装基板60上に実装されており、ヒートシンク51に熱的に接合されている。
紫外線伝搬用光ファイババンドル23は、例えば、数百といった多数の紫外線伝搬用光ファイバ21を密に束ねたものである。この紫外線伝搬用光ファイババンドル23は、紫外線LED11と同じ数だけ設けられている。つまり、本実施形態では、紫外線伝搬用光ファイババンドル23は、4本設けられている。なお、紫外線伝搬用光ファイババンドル23は第1の光ファイババンドルに相当し、紫外線伝搬用光ファイバ21は第1の光ファイバに相当する。
紫外線伝搬用光ファイババンドル23の紫外線LED11側の端面は、それぞれ、紫外線LED11と対向して配置されている。これにより、紫外線LED11から放射された紫外線は、紫外線伝搬用光ファイババンドル23の端面から入射されて、複数の紫外線伝搬用光ファイバ21により伝搬される。紫外線伝搬用光ファイババンドル23は、その紫外線LED11側の端面を介して紫外線LED11と光結合している。
赤外線伝搬用光ファイバ22の赤外線LD12側の端面は、赤外線LD12と対向して配置されている。これにより、赤外線LD12から放射された赤外線は、赤外線伝搬用光ファイバ22の端面から入射されて赤外線伝搬用光ファイバ22により伝搬される。赤外線伝搬用光ファイバ22は、その赤外線LD12側の端面(入射端面)を介して赤外線LD12と光結合している。この赤外線伝搬用光ファイバ22は、第2の光ファイバに相当する。
なお、本実施形態では、紫外線伝搬用光ファイバ21には赤外線は入射されず、赤外線伝搬用光ファイバ22には紫外線は入射されない構成となっている。このため、紫外線伝搬用光ファイバ21に紫外線専用光ファイバを用い、赤外線伝搬用光ファイバ22に赤外線専用光ファイバを用いた場合、これらの光ファイバが、それぞれの特性にあった光を伝搬することができる。
4本の紫外線伝搬用光ファイババンドル23を構成する紫外線伝搬用光ファイバ21と、赤外線伝搬用光ファイバ22とが、照射ヘッド31側で密に束ねられて1つの束とされている。なお、この照射ヘッド側の束を、以下、「照射側光ファイババンドル」と呼ぶ。
各紫外線伝搬用光ファイババンドル23を構成する数百本の光ファイバは、それぞれ、照射側光ファイババンドル24の先端部端面(出射端面)において分散して配置されている。これにより、複数の紫外線LED11の光出力にばらつきがあったり、紫外線LED11と紫外線光ファイババンドル23の入射端との間の光結合効率にばらつきがあったり、個々の紫外線伝搬用光ファイバ21(紫外線伝搬用光ファイバ1本1本それぞれ)の光出力にばらつきがあったりしても、紫外線の照射範囲の照度(W/cm2)の分布の均一化を図ることができる。
本実施形態では、複数の紫外線LED11から放射された紫外線は、複数の紫外線伝搬用光ファイババンドル23で伝搬されるため、それらを束ねた照射側光ファイババンドル24で伝搬されることになる。つまり、複数の紫外線LED11から放射された紫外線は、照射側光ファイババンドル24で合波されることになる。これにより、紫外線LEDが一つのダイレクト型光照射装置と比較すると、本実施形態では光出力(W)を高めることができる。但し、紫外線LED11が一つでも出力が十分なのであれば、紫外線LED11は複数ある必要はなく、紫外線伝搬用光ファイババンドルも複数ある必要はない。
照射側光ファイババンドル24は、例えば、金属製のフレキシブル管25(図2参照)によって保護されている。このフレキシブル管25によって、光照射装置の筐体3と照射ヘッド31が連結されている。
照射ヘッド31は、紫外線伝搬用光ファイババンドル23を構成する複数の紫外線伝搬用光ファイバ21と赤外線伝搬用光ファイバ22とを束ねた照射側光ファイババンドル24の先端部を含んでいる。具体的には、照射ヘッド31には、照射側光ファイババンドル24の先端部が挿入されている。そして、照射ヘッド31は、複数の紫外線伝搬用光ファイバ21により伝搬された紫外線と、赤外線伝搬用光ファイバ22により伝搬された赤外線とを照射する。
また、光照射装置1は、コントローラ41と操作パネル41Aを備えている。操作パネル41Aは、図2に示すように、表示部と各種のボタンとを有している。これらのコントローラ41と操作パネル41Aは互いに接続されている。コントローラ41は、光照射装置1の全体の制御を司る制御部である。すなわち、例えば、コントローラ41は、操作パネル41Aの操作に基づいて、紫外線及び赤外線の照射条件(例えば、照射時間、照射強度など)を設定する。また、コントローラ41は、操作パネル41Aの操作に基づいて、紫外線及び赤外線の照射をオン・オフする。コントローラ41は、照射がオンされると、設定された照射条件に従って、紫外線LED11や赤外線LD12の発光を制御する。
光照射装置1には、冷却ファン52が設けられている。冷却ファン52は、ヒートシンク51の放熱板に向かって送風し、ヒートシンク51の冷却効果を高めている。但し、冷却ファン52を設けずに、ヒートシンク51からの放熱だけで光源の冷却を行っても良い。
<入射側について>
図4Aは、赤外線LD12と赤外線伝搬用光ファイバ22の入射側の端面(以下、入射端面)との光結合についての説明図である。赤外線LD12と赤外線伝搬用光ファイバ22の入射端面との間に集束レンズが設けられている。赤外線LD12から放射された光は、集束レンズによって狭い領域に絞られて、赤外線伝搬用光ファイバ22の入射端面から入射する。なお、レーザダイオード(LD)から放射される光は、発光ダイオード(LED)と比べて、集束レンズで狭い領域に絞ることが可能である。
図4Bは、紫外線LED11と紫外線伝搬用光ファイババンドル23の入射端面26Aとの光結合についての説明図である。
既に説明したように、紫外線伝搬用光ファイババンドル23は、数百といった多数の紫外線伝搬用光ファイバ21を密に束ねた束で構成されている。そして、紫外線伝搬用光ファイババンドル23の入射側の端部には、束ねられた光ファイバの先端部を溶融一体化して形成した一体化部26がある。一体化部26は、先端側(光源側)に進むにつれて外形が小さくなるような部分円錐形状を有しており、その先端には平面に研磨された入射端面26Aがある。入射端面26Aは、紫外線伝搬用光ファイババンドル23の紫外線光源側に設けた端面となる。
紫外線伝搬用光ファイババンドル23を構成する紫外線伝搬用光ファイバ21は、入射する光を伝送するコアと、コアの周囲を覆うように設けられたクラッドと、クラッドの周囲を覆うように設けられた樹脂製の被覆部から構成されている。一体化部26を形成するときには、端部の被覆部を除去して口出しした紫外線伝搬用光ファイバ21を多数用意する。次に、口出しした複数の紫外線伝搬用光ファイバ21を束ねてガラスパイプ内に充填する。次に、紫外線伝搬用光ファイバ21が充填されたガラスパイプをバーナーで加熱し、紫外線伝搬用光ファイバ21とガラスパイプとを溶融一体化する。そして、溶融一体化された部分を切断し、切断部の先端を研磨する。これにより、図に示すような形状の一体化部26や入射端面26Aが形成される。
紫外線LED11から放射された紫外線は、紫外線伝搬用光ファイババンドル23の紫外線光源側に設けた入射端面26Aから入射される。入射端面26Aに入射された紫外線は、スネルの法則により伝搬方向が曲げられた後、一体化部26のテーパ面26Bで反射して、紫外線伝搬用光ファイバ21に入射する。これにより、紫外線伝搬用光ファイバ21への入射角を、入射端面26Aへの入射角よりも小さくすることができる。ここでは、テーパ面26Bでの反射によって、紫外線伝搬用光ファイバ21への入射角がほぼ0度になっている。つまり、実質的に紫外線LED11からの光の放射角を小さくさせて、紫外線伝搬用光ファイバ21に光を入射させている。この結果、紫外線LED11から放射された光に対する紫外線伝搬用光ファイバ21を伝搬する光の割合が高くなる(光結合効率が高くなる)。そして、紫外線LED11から放射された紫外線は、紫外線伝搬用光ファイババンドル23の紫外線光源側に設けた入射端面26Aから入射されて複数の紫外線伝搬用光ファイバ21により伝搬される。
上記の説明では、紫外線伝搬用光ファイババンドル23の入射端面26Aが平面であるが、所望の光学的な効果が得られるように入射端面を曲面にしても良い。また、図中の一体化部26のテーパ面26Bの縦断面が直線になっているが、縦断面が曲線になるようにテーパ面を形成しても良い。
また、上記の説明では、紫外線伝搬用光ファイババンドル23の入射端側を溶融一体化することによって光結合効率を高めているが、光結合効率が低くても構わないのであれば、入射端側を溶融一体化せずに、複数の光ファイバを単に束ねただけにしても良い。
<出射側について>
図5Aは、照射ヘッド31の外観図である。図5Bは、照射ヘッド31内の照射側光ファイババンドル24の先端部の説明図である。図5Bでは、赤外線伝搬用光ファイバ22を黒丸で示し、紫外線伝搬用光ファイバ21を白丸で示している。これにより、赤外線伝搬用光ファイバ22と紫外線伝搬用光ファイバ21とを区別している。また、紫外線伝搬用光ファイバ21の数を実際よりも少なくし、図を簡略化している。
図に示すように、照射ヘッド31側では、複数の紫外線伝搬用光ファイバ21と赤外線伝搬用光ファイバ22とが円柱状に束ねられている。そして、照射側光ファイババンドル24の先端部端面において、赤外線伝搬用光ファイバ22が照射側光ファイババンドル24の中心に配置されている。言い換えると、照射側光ファイババンドル24の先端部端面において、円柱状に束ねられた複数の紫外線伝搬用光ファイバ21の束と赤外線伝搬用光ファイバ22とが同軸に配置されている。なお、赤外線伝搬用光ファイバ22の配置は、中心位置から多少ずれていてもよい。つまり、赤外線伝搬用光ファイバ22は、照射側光ファイババンドル24の中心付近に配置されていればよい。
本実施形態では、照射ヘッド31において複数の紫外線伝搬用光ファイバ21とともに赤外線伝搬用光ファイバ22が束ねられている。これにより、紫外線と赤外線が一緒に照射ヘッド31から照射される。このため、照射ヘッド31を動かしても紫外線の照射範囲に対する赤外線の照射範囲はズレないで済む。
図6Aは、赤外線伝搬用光ファイバ22の開口数が紫外線伝搬用光ファイバ21の開口数と同じ場合の照射範囲の説明図である。両光ファイバの開口数が同じであっても、照射側光ファイババンドル24の中心に赤外線伝搬用光ファイバ22が配置されていれば、紫外線の照射範囲の中心に赤外線を照射することが可能である。つまり、光照射装置1の照射範囲の中心では、紫外線を照射しつつ、赤外線も照射することができる。但し、赤外線伝搬用光ファイバ22の開口数が紫外線伝搬用光ファイバ21の開口数と同じ場合、赤外線の照射範囲は、紫外線の照射範囲よりも狭い範囲になってしまう。
そこで、本実施形態では、赤外線伝搬用光ファイバ22の開口数が、紫外線伝搬用光ファイバ21の開口数よりも大きくなるようにしている。つまり、赤外線伝搬用光ファイバ22の開口数が、その周りに位置する紫外線伝搬用光ファイバ21の開口数よりも大きくなるようにしている。
図6Bは、赤外線伝搬用光ファイバ22の開口数が紫外線伝搬用光ファイバ21の開口数よりも大きい場合の照射範囲の説明図である。赤外線伝搬用光ファイバ22を大きい開口数(高NA)にすることによって、図6Aと比べて、紫外線と赤外線の両方が照射される範囲を広げることができる。また、照射ヘッド31と被照射物を所定距離よりも離せば、紫外線の照射される全ての範囲に赤外線を照射することが可能になる。
例えば、図6A及び図6Bにおいて、照射側光ファイババンドル24の直径Dが4mm、照射ヘッドと被照射物との距離Lが27mmであるとする。この場合、図6Aのように赤外線伝搬用光ファイバ22の開口数NAIRが紫外線伝搬用光ファイバ21の開口数NAUVと同じ0.15であれば、赤外線の照射範囲の直径AIRは8mmになり、紫外線の照射範囲の直径AUVは12mmになり、赤外線の照射範囲は、紫外線の照射範囲よりも狭い範囲になってしまう。これに対し、図6Bのように赤外線伝搬用光ファイバ22の開口数NAIRが0.22であれば、赤外線の照射範囲の直径AIRは12mmになり、紫外線と赤外線の両方が照射される範囲を広くすることができる。
赤外線伝搬用光ファイバ22を高NA化させるには、種々の方法がある。
第1の方法として、クラッドの屈折率が低い光ファイバを赤外線伝搬用光ファイバ22として用いる方法がある。
図7は、屈折率nと光ファイバの開口数NAとの関係の説明図である。図中では、コアの屈折率をn1とし、クラッドの屈折率をn2とし、臨界角をφcとしている。光ファイバ内では臨界角φcよりも大きい入射角φiの光だけが伝搬しているため、光ファイバから出射する光のうちの最大角度θmax(=NA)の光は、図中の点線で示す光になる。つまり、臨界角φcが小さいほど、光ファイバの開口数NAは大きくなる。臨界角φc(=sin−1(n2/n1))は、コアの屈折率n1に対するクラッドの屈折率n2が低いほどが小さくなる。つまり、クラッドの屈折率n2が低い光ファイバほど高NAの光ファイバとなるのである。
本実施形態では、赤外線伝搬用光ファイバ22のコアの屈折率に対するクラッドの屈折率の比(n2/n1)が、紫外線伝搬用光ファイバ21のコアの屈折率に対するクラッドの屈折率の比よりも低くなるように、赤外線伝搬用光ファイバ22及び紫外線伝搬用光ファイバ21を選択している。
なお、クラッドの材質を変更するだけでは、高NA化に限界がある。そこで、赤外線伝搬用光ファイバ22としてホーリーファイバ(若しくはクリスタルファイバ)を採用しても良い。ホーリーファイバは、コアの周囲のクラッドに空孔が設けられた光ファイバである。空孔内の空気の屈折率(約1)が低いため、コアの屈折率に対するクラッドの屈折率の比が実質的に低くなり、ホーリーファイバの開口数NAは、通常の光ファイバと比べると大きくなる。
赤外線伝搬用光ファイバ22を高NA化させる第2の方法として、光ファイバの出射端面を曲面に研磨して、光ファイバの端面に光学レンズを形成する方法がある。これにより、赤外線伝搬用光ファイバ22の出射端面(光源とは反対側の端面)にレンズを設けることができる。この方法の場合、赤外線伝搬用光ファイバ22の出射端面をレンズ加工する必要があるが、光ファイバの開口数NAの設計の自由度が向上する。
なお、赤外線伝搬用光ファイバ22を高NA化させて照射範囲を広げると、その赤外線伝搬用光ファイバ22の照射範囲における照射強度が低下する。但し、赤外線の光源であるレーザダイオード(LD)は発光ダイオード(LED)と比べて高出力な光源である。このため、赤外線伝搬用光ファイバ22を高NA化させて赤外線の照射範囲を広げても、赤外線の必要な照射強度が保たれている。
<変形例>
上記の説明では、高NAの赤外線伝搬用光ファイバ22を用いることによって、赤外線の照射範囲を広げていた(図6B参照)。但し、赤外線伝搬用光ファイバ22自身の開口数が大きくなくても、赤外線の照射範囲を広げることは可能である。
図8A及び図8Bは、第1実施形態の変形例の説明図である。図8Aは、照射ヘッド31内の照射側光ファイババンドル24の先端部の説明図である。図8Bは、照射ヘッド31の断面の概略図である。図8Bでは、赤外線伝搬用光ファイバ22を黒色で示している。これにより、赤外線伝搬用光ファイバ22と紫外線伝搬用光ファイバ21とを区別している。また、紫外線伝搬用光ファイバ21の数を実際よりも少なくして、図を簡略化している。
この変形例では、赤外線伝搬用光ファイバ22の出射側(光源とは反対側)の端面の先に、レンズ71が設けられている。赤外線伝搬用光ファイバ22から出射した赤外線は、このレンズ71によって照射ヘッド31から広角で照射される。これにより、前述の図6Bと同様に、赤外線の照射範囲を広げることができる。
なお、この変形例では、レンズ71を保持する鏡筒72が設けられている。赤外線伝搬用光ファイバ22の先端は鏡筒72の端部に挿入されており、赤外線伝搬用光ファイバ22と鏡筒72との間が接着剤で固定されている。これにより、赤外線伝搬用光ファイバ22の出射端とレンズ71との位置関係が固定されている。
また、鏡筒72の外周は、赤外線伝搬用光ファイバ22と隣接する数本の紫外線伝搬用光ファイバ21によって固定されている。これにより、照射側光ファイババンドル24における赤外線の出射位置が固定されている。
ところで、図8Bに示すように、この変形例では、紫外線伝搬用光ファイバ21の出射端よりも鏡筒72が突出しないようにしている。これは、もし仮に鏡筒72が突出していると、隣接する紫外線伝搬用光ファイバ21から出射した紫外線が鏡筒72に当たってしまい、紫外線の照射範囲に鏡筒72の影ができてしまうからである。
なお、光ファイバの出射端の前にレンズ71を設けて照射範囲を広げると、その照射範囲における照射強度が低下する。但し、赤外線の光源であるレーザダイオード(LD)は発光ダイオード(LED)と比べて高出力な光源である。このため、赤外線伝搬用光ファイバ22を高NA化させて赤外線の照射範囲を広げても、赤外線の必要な照射強度は保たれている。
===第2実施形態===
上記の第1実施形態では、赤外線伝搬用光ファイバ22が1本だけであり、この赤外線伝搬用光ファイバ22が照射側光ファイババンドル24の中心付近に位置していた。但し、この第2実施形態に示すように、赤外線伝搬用光ファイバ22は複数であっても良く、赤外線伝搬用光ファイバ22の位置は照射側光ファイババンドル24の中心付近でなくても良い。
図9Aは、第2実施形態の構成の説明図である。第2実施形態の光照射装置1は、複数の紫外線LED11と、1個の赤外線LD12と、複数本の紫外線伝搬用光ファイババンドル23と、1本の赤外線伝搬用光ファイババンドル22Bと、照射ヘッド31とを備える。第1実施形態では、1本の赤外線伝搬用光ファイバ22が設けられていたが、本実施形態では、複数の赤外線伝搬用光ファイバ22を密に束ねた赤外線伝搬用光ファイババンドル22Bが設けられている。この赤外線伝搬用光ファイババンドル22Bは、第2の光ファイババンドルに相当する。なお、本実施形態の紫外線LED11、赤外線LD12及び紫外線伝搬用光ファイババンドル23の構成は、上記の第1実施形態と同様なので、説明を省略する。
第2実施形態の光照射装置1には赤外線伝搬用光ファイバ22が複数存在し、これらの複数の赤外線伝搬用光ファイバ22を密に束ねて赤外線伝搬用光ファイババンドル22Bが構成されている。
赤外線伝搬用光ファイババンドル22Bの赤外線LD12側の端面は、赤外線LD12と対向して配置されている。これにより、赤外線LD12から放射された赤外線は、赤外線伝搬用光ファイババンドル22Bの赤外線LD12側に設けた端面から入射されて複数の赤外線伝搬用光ファイバ22により伝搬される。赤外線伝搬用光ファイババンドル22Bは、その赤外線LD12側の端面を介して赤外線LD12と光結合している。
4本の紫外線伝搬用光ファイババンドル23を構成する複数の紫外線伝搬用光ファイバ21と、1本の赤外線伝搬用光ファイババンドル22Bを構成する複数の赤外線伝搬用光ファイバ22とが、照射ヘッド31側で密に束ねられて1つの束とされている。つまり、第2実施形態の照射側光ファイババンドル24は、4本の紫外線伝搬用光ファイババンドル23を構成する複数の紫外線伝搬用光ファイバ21と、1本の赤外線伝搬用光ファイババンドル22Bを構成する複数の赤外線伝搬用光ファイバ22とを密に束ねた束になっている。
図9Bは、第2実施形態の照射ヘッド31内の照射側光ファイババンドル24の先端部の説明図である。図中では、赤外線伝搬用光ファイバ22を黒丸で示し、紫外線伝搬用光ファイバ21を白丸で示している。これにより、赤外線伝搬用光ファイバ22と紫外線伝搬用光ファイバ21とを区別している。また、紫外線伝搬用光ファイバ21の数を実際よりも少なくして、図を簡略化している。
第2実施形態では、赤外線伝搬用光ファイババンドル22Bを構成する複数の赤外線伝搬用光ファイバ22は、照射側光ファイババンドル24の先端部端面において、分散して配置される。つまり、照射側光ファイババンドル24の先端部端面において、赤外線伝搬用光ファイバ22同士は互いに離れて配置されている。
照射ヘッド31は、紫外線伝搬用光ファイババンドル23を構成する複数の紫外線伝搬用光ファイバ21と赤外線伝搬用光ファイババンドル22Bを構成する複数の赤外線伝搬用光ファイバ22とを束ねた照射側光ファイババンドル24の先端部を含んでいる。具体的には、照射ヘッド31には、照射側光ファイババンドル24の先端部が挿入されている。そして、照射ヘッド31は、複数の紫外線伝搬用光ファイバ21により伝搬された紫外線と、複数の赤外線伝搬用光ファイバ22により伝搬された赤外線とを照射する。
第2実施形態においても、照射ヘッド31において複数の紫外線伝搬用光ファイバ21とともに赤外線伝搬用光ファイバ22が束ねられている。これにより、照射ヘッド31から紫外線と赤外線が一緒に照射される。このため、照射ヘッド31を動かしても紫外線の照射範囲に対する赤外線の照射範囲はズレないで済む。
また、第2実施形態では、第1実施形態と比べて、赤外線伝搬用光ファイバ22の数が増えている。これにより、赤外線伝搬用光ファイバが1本の場合と比べて赤外線の照射範囲を広げることができ、紫外線と赤外線の両方が照射される範囲を広げることができる。また、第2実施形態では、赤外線伝搬用光ファイバ22同士が互いに離れて配置されている。これにより、赤外線の照射範囲を広げることができる。
第2実施形態において、照射側光ファイババンドル24内において赤外線伝搬用光ファイバ22が紫外線伝搬用光ファイバ22によって囲まれている。これにより、赤外線伝搬用光ファイバ22を囲んでいる紫外線伝搬用光ファイバ22の紫外線の照射範囲の内側に、赤外線を照射することが可能である。但し、赤外線伝搬用光ファイバ22の開口数が紫外線伝搬用光ファイバ21の開口数と同じ場合、赤外線の照射範囲は、紫外線の照射範囲よりも狭い範囲になってしまう。そこで、第2実施形態においても、第1実施形態で説明したように、赤外線伝搬用光ファイバ22の開口数が、紫外線伝搬用光ファイバ21の開口数よりも大きいことが望ましい。
図10A及び図10Bは、第2実施形態の構成における赤外線伝搬用光ファイバ22の開口数の影響の説明図である。図10Aは、赤外線伝搬用光ファイバ22の開口数が比較的低い場合の説明図であり、図10Bは、図10Aよりも赤外線伝搬用光ファイバ22の開口数が大きい場合の説明図である。ここでは、説明の簡略化のため、赤外線伝搬用光ファイバ22の数を2本にしている。
図10Aに示すように、照射ヘッドと被照射物との距離をL1よりも離したときに、離れて配置された2本の赤外線伝搬用光ファイバ22の照射範囲が重複するようになる。言い換えると、図10Aでは、照射ヘッドと被照射物との距離がL1よりも近いと、赤外線の2つの照射範囲の間に隙間が生じてしまう。これに対し、図10Bに示すように赤外線伝搬用光ファイバ22の開口数が大きければ、照射ヘッドと被照射物との距離がL1よりも短い距離L2であっても(L2<L1)、離れて配置された2本の赤外線伝搬用光ファイバ22の照射範囲が重複するようになる。このように、第2実施形態において、互いに離れて配置された複数の赤外線伝搬用光ファイバ22のそれぞれの開口数を比較的大きくすると、照射ヘッドと被照射物との距離が短くても、隙間無く赤外線を照射しやすくなる。
また、照射ヘッドと被照射物が十分に離れた距離Lの場合について図10Aと図10Bとを比較すると、赤外線伝搬用光ファイバ22の開口数が大きければ、2本の赤外線伝搬用光ファイバ22の照射範囲の重複領域が広い。このように、第2実施形態において、互いに離れて配置された複数の赤外線伝搬用光ファイバ22のそれぞれの開口数を比較的大きくすると、複数の赤外線伝搬用光ファイバ22の照射範囲同士の重複領域を広くすることができる。
<第1変形例>
前述の図9A及び図9Bに示す実施形態では、赤外線を放射する赤外線光源が1個であり、1個の赤外線光源から放射された赤外線が赤外線伝搬用光ファイババンドル22Bの赤外線光源側に設けた端面からに入射されることによって、複数の赤外線伝搬用光ファイバ22に赤外線を伝搬させていた。但し、以下に説明するように、赤外線を放射する赤外線光源は、複数であっても良い。また、赤外線伝搬用光ファイババンドル22Bを用いずに、複数の赤外線伝搬用光ファイバ22に赤外線を伝搬させても良い。
図11A及び図11Bは、第2実施形態の第1変形例の説明図である。第1変形例の光照射装置1は、複数の紫外線LED11と、複数の赤外線LD12と、複数本の紫外線伝搬用光ファイババンドル23と、複数の赤外線伝搬用光ファイバ22と、照射ヘッド31とを備える。
第1変形例では、赤外線を放射する赤外線LD12が複数存在し、赤外線を伝搬する赤外線伝搬用光ファイバ22も複数存在する。そして、それぞれの赤外線伝搬用光ファイバ22の赤外線LD12側の端面は、それぞれの赤外線LD12と対向して配置されている。これにより、複数の赤外線LD12のそれぞれから放射された赤外線は、それぞれの赤外線伝搬用光ファイバ22の端面から入射されて、それぞれの赤外線伝搬用光ファイバ22により伝搬される。赤外線伝搬用光ファイバ22は、その赤外線LD12側の端面を介して赤外線LD12と光結合している。
図11Bに示すように、4本の紫外線伝搬用光ファイババンドル23を構成する複数の紫外線伝搬用光ファイバ21と、複数の赤外線伝搬用光ファイバ22とが、照射ヘッド31側で密に束ねられて1つの束とされている。つまり、第1変形例の照射側光ファイババンドル24も、4本の紫外線伝搬用光ファイババンドル23を構成する複数の紫外線伝搬用光ファイバ21と、複数の赤外線伝搬用光ファイバ22とを密に束ねた束になっている。
照射ヘッド31には、照射側光ファイババンドル24の先端部が挿入されている。そして、照射ヘッド31は、複数の紫外線伝搬用光ファイバ21により伝搬された紫外線と、赤外線伝搬用光ファイバ22により伝搬された赤外線とを照射する。
この第1変形例においても、前述の図9Bと同様な照射側光ファイババンドル24を構成することが可能であり、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、この第1変形例においても、前述の第1実施形態及び第2実施形態と同様に、赤外線伝搬用光ファイバ22の開口数が、紫外線伝搬用光ファイバ21の開口数よりも大きいことが望ましい。これにより、紫外線と赤外線の両方が照射される範囲を広げることができる。また、互いに離れて配置された複数の赤外線伝搬用光ファイバ22のそれぞれの開口数が大きければ、前述の第2実施形態と同様に、隙間無く赤外線を照射しやすくなる。
<第2変形例>
前述の第2実施形態では、照射側光ファイババンドル24において、複数の赤外線伝搬用光ファイバ22が分散配置されており、各赤外線伝搬用光ファイバ22の周りにそれぞれ複数の紫外線伝搬用光ファイバ21が囲むように配置されていた(図9B、図11B参照)。このため、各赤外線伝搬用光ファイバ22の外周に隣接する全ての光ファイバが、紫外線伝搬用光ファイバ21であった。但し、照射側光ファイババンドル24における光ファイバの配置は、これに限られるものではない。
図12A及び図12Bは、第2実施形態の第2変形例の説明図である。第2変形例の光照射装置は、複数の紫外線LED11と、複数の赤外線LD12と、複数本の紫外線伝搬用光ファイババンドル23と、複数の赤外線伝搬用光ファイバ22と、照射ヘッド31とを備える。第2変形例においても、第1変形例と同様に、赤外線を放射する赤外線LD12が複数設けられ、赤外線を伝搬する赤外線伝搬用光ファイバ22も複数設けられている。そして、それぞれの赤外線伝搬用光ファイバの赤外線LD12側の端面は、それぞれの赤外線LD12と対向して配置されている。これにより、それぞれの赤外線LD12から放射された赤外線は、それぞれの赤外線伝搬用光ファイバ22の端面から入射されて、それぞれの赤外線伝搬用光ファイバ22により伝搬される。赤外線伝搬用光ファイバ22は、その赤外線LD12側の端面を介して赤外線LD12と光結合している。
更に、第2変形例では、複数の赤外線伝搬用光ファイバ22が束ねられ、束ねられた複数の赤外線伝搬用光ファイバ22によって赤外線伝搬用光ファイババンドル22Bが構成されている(図12A参照)。また、前述の図9Bや図11Bでは、照射側光ファイババンドル24において赤外線伝搬用光ファイバ22が分散配置されているが、この第2変形例では、照射側光ファイババンドル24において複数の赤外線伝搬用光ファイバ22が密集している(図12B参照)。
つまり、この第2変形例では、赤外線伝搬用光ファイババンドル22Bとして束ねられたままの複数の赤外線伝搬用光ファイバ22と、紫外線伝搬用光ファイババンドル23を構成する数百本の紫外線伝搬用光ファイバ21とが、照射ヘッド31側で密に束ねられて1つの束とされている。つまり、第2変形例の照射側光ファイババンドル24は、4本の紫外線伝搬用光ファイババンドル23を構成する複数の紫外線伝搬用光ファイバ21と、複数の赤外線伝搬用光ファイバ22を束ねた赤外線伝搬用光ファイババンドル22Bとを密に束ねた束になっている。
照射ヘッド31には、照射側光ファイババンドル24の先端部が挿入されている。そして、照射ヘッド31は、複数の紫外線伝搬用光ファイバ21により伝搬された紫外線と、複数の赤外線伝搬用光ファイバ22により伝搬された赤外線とを照射する。
この第2変形例においても、照射ヘッド31において複数の紫外線伝搬用光ファイバ21とともに赤外線伝搬用光ファイバ22が束ねられている。これにより、照射ヘッド31から紫外線と赤外線が一緒に照射される。このため、照射ヘッド31を動かしても紫外線の照射範囲に対する赤外線の照射範囲はズレないで済む。
また、この第2変形例においても、前述の実施形態と同様に、赤外線伝搬用光ファイバ22の開口数が、紫外線伝搬用光ファイバ21の開口数よりも大きいことが望ましい。これにより、紫外線と赤外線の両方が照射される範囲を広げることができる。
なお、第1変形例と第2変形例とを比較すると、第1変形例では赤外線の照射強度が均一に分布しやすいのに対し、第2変形例では、照射範囲の中央部において赤外線の照射強度が強くなる。
<第3変形例>
前述の説明では、赤外線伝搬用光ファイバ22の数が紫外線伝搬用光ファイバ21の数よりも少なかった。
但し、照射する赤外線のエネルギーを高める必要がある場合、あるいは赤外線と紫外線の照射範囲の重なりを正確にする必要がある場合には、図13に示すように、赤外線伝搬用光ファイバ22と紫外線伝搬用光ファイバ21をほぼ同数にしても良い。図に示した変形例であっても、照射側光ファイババンドル24において紫外線伝搬用光ファイバ21と赤外線伝搬用光ファイバ22が束ねられており、照射ヘッド31から紫外線と赤外線が一緒に照射される。このため、照射ヘッド31を動かしても紫外線の照射範囲に対する赤外線の照射範囲はズレないで済む。
===第3実施形態===
第3実施形態では、照射ヘッド31は、照射側光ファイババンドル24の先端部の先に設けたインテグレータ光学系をさらに含んでいる。そして、複数の紫外線伝搬用光ファイバ21により伝搬された紫外線と赤外線伝搬用光ファイバ22により伝搬された赤外線とがインテグレータ光学系に入射され、インテグレータ光学系を通った紫外線と赤外線が照射ヘッド31から照射される。これにより、第3実施形態の光照射装置は、紫外線及び赤外線を均一に照射している。以下に説明する実施形態では、インテグレータ光学系は、照射側光ファイババンドル24の先端部に一体的に形成されたロッドレンズである。
図14Aは、第3実施形態の照射側光ファイババンドル24の先端部付近の構成の説明図である。なお、図中の光ファイバの数は実際よりも少なく描かれている。
まず説明の簡略化のため、紫外線伝搬用光ファイバ21と赤外線伝搬用光ファイバ22を区別せず、複数の光ファイバから構成された照射側光ファイババンドル24の先端部に一体的にロッドレンズを形成する方法やロッドレンズの機能について説明する。
照射側光ファイババンドル24は、複数の光ファイバを束ねて構成されている。そして、照射側光ファイババンドル24の先端部の先には、束ねられた光ファイバの先端部を溶融一体化して形成したロッドレンズ27がある。ロッドレンズ27の端部には、平面に研磨された出射端面がある。
照射側光ファイババンドル24を構成する各光ファイバは、入射する光を伝送するコアと、コアの周囲を覆うように設けられたクラッドと、クラッドの周囲を覆うように設けられた樹脂製の被覆部から構成されている。ロッドレンズ27を形成するときには、光ファイバの端部の被覆部を除去して口出し、口出しした多数の光ファイバを束ねてガラスパイプ内に充填する。次に、多数の光ファイバが充填されたガラスパイプをバーナーで加熱し、光ファイバとガラスパイプとを溶融一体化させ、断面積が一定の所定長さのロッドレンズ27を形成する。そして、ロッドレンズ27の先端を研磨して、図に示すような形状のロッドレンズ27や出射端面が形成される。このようにして、照射側光ファイババンドル24を構成する光ファイバの束の先端部に、ロッドレンズ27が一体的に形成される。
図14Bは、或る光ファイバを伝搬した光のロッドレンズ27内の伝搬経路の説明図である。
或る光ファイバ(図中の中央の光ファイバ)を伝搬した光の一部(前述の入射角φi(図7参照)が比較的大きい光)は、ロッドレンズ27に入射し、ロッドレンズ27の側面には当たらずに、出射端面から直接出射している。但し、それ以外の光は、ロッドレンズ27に入射した後、ロッドレンズ27の側面で反射してから、出射端面に到達する。
ここで、例えば図中に×印で示した点に到達する光に着目すると、図中に点線で示すように、光ファイバから直接到達した光だけでなく、ロッドレンズ27の側面で反射した光も到達する。このように、出射端面の各点において、ロッドレンズ27内で異なる経路を経た光が重ね合わされる。
さらに、或る1つの光ファイバだけに着目して説明していたが、実際には、照射側光ファイババンドル24を構成する各光ファイバからの光が、出射端面の各点において重ね合わされることになる。この結果、ロッドレンズ27の出射端面では、実際の光ファイバの数よりも多い数の光ファイバによって光が重ね合わされたときのように、光が均一になる(光の強度が均一に分布する)。つまり、照射側光ファイババンドル24の先端部にロッドレンズ27を形成することによって、ロッドレンズ27の出射端面から均一な光が出射する。
ロッドレンズ27を長くすれば、ロッドレンズ27の側面に複数回反射された光も出射端面に到達するようになり、ロッドレンズ27の出射端面から出射される光がより均一化される。ロッドレンズ27の側面では光が全反射しており、鏡面での光の反射と比べて損失が少ない。このため、ロッドレンズ27を長くしてロッドレンズ27内での光の最大反射回数を多くしても、光の損失は少ない。
また、照射側光ファイババンドル24を構成する光ファイバの先端部を溶融することによって、照射側光ファイババンドル24の先端部にロッドレンズ27が一体的に形成されている。これにより、単に照射側光ファイババンドル24の先端部の先に別部材のロッドレンズを取り付けた場合と比べて、照射側光ファイババンドル24とロッドレンズとの境界での光の損失が少なくなる。
上記の説明では、説明の簡略化のため、紫外線伝搬用光ファイバ21と赤外線伝搬用光ファイバ22を区別せず、照射側光ファイババンドルにロッドレンズ27を形成する場合について説明した。そして、上記の説明のように、複数の光ファイバの先端部を溶融一体化してロッドレンズ27を形成すれば、光の損失が少ないという効果を得ることができる。
更に、本実施形態の照射側光ファイババンドル24は、第1実施形態や第2実施形態で説明したように紫外線伝搬用光ファイバ21だけでなく赤外線伝搬用光ファイバ22も含まれており、紫外線伝搬用光ファイバ21及び赤外線伝搬用光ファイバ22の先端部を溶融一体化してロッドレンズ27が形成される。この構成によれば、紫外線伝搬用光ファイバ21を伝搬した紫外線と赤外線伝搬用光ファイバ22を伝搬した赤外線とがロッドレンズ27に入射され、紫外線及び赤外線がロッドレンズ27を通って照射ヘッド31から照射される。この結果、ロッドレンズ27の出射端面では、均一な紫外線が出射されるとともに、均一な赤外線が出射される。つまり、本実施形態の照射ヘッド31は、紫外線と赤外線を合波した均一な光を照射できる。
<変形例>
上記の説明では、インテグレータ光学系としてロッドレンズ27が用いられていた。但し、インテグレータ光学系は、ロッドレンズ以外の光学系であっても良い。また、照射側光ファイババンドル24の先端部にインテグレータ光学系を一体的に形成するのではなく、単に照射側光ファイババンドル24の出射端側にインテグレータ光学系を取り付けただけでも良い。以下に説明する変形例では、インテグレータ光学系は、照射側光ファイババンドル24の先端部が一部挿入されている中空管であって、内壁面が反射面になっている中空管である。
図15A及び図15Bは、第3実施形態の変形例の説明図である。図15Aは、照射側光ファイババンドル24の先端部付近の構成の説明図である。図15Bは、或る光ファイバを伝搬した光の中空管28内の伝搬経路の説明図である。なお、図中の光ファイバの数は実際よりも少なく描かれている。
この変形例では、照射側光ファイババンドル24の先端部(光源側とは反対側の端)の一部が中空管28に挿入されることによって、照射側光ファイババンドル24の先端部の先に中空管28が取り付けられている。この中空管28の内壁面は、光を反射する反射面になっている。前述のロッドレンズ27と同様に、例えば図中に×印で示した点に到達する光に着目すると、図中に点線で示すように、この点には、光ファイバから直接到達した光だけでなく、中空管28の内壁面で反射した光も到達する。このように、中空管28の出射口の各点において、中空管28内で異なる経路を経た光が重ね合わされる。さらに、或る1つの光ファイバだけに着目して説明していたが、実際には、照射側光ファイババンドル24を構成する各光ファイバからの光が、中空管28の出射口の各点において重ね合わされることになる。この結果、中空管28の出射口では、実際の光ファイバの数よりも多い数の光ファイバによって光が重ね合わされたときのように、光が均一になる(光の強度が均一に分布する)。つまり、この変形例のように、照射側光ファイババンドル24の端部に中空管28を取り付けることによって、中空管28から均一な光が出射する。
なお、上記の説明では、説明の簡略化のため、紫外線伝搬用光ファイバ21と赤外線伝搬用光ファイバ22を区別せず、複数の光ファイバから構成された光ファイババンドルの先端部の先に中空管28を取り付ける場合について説明したが、本実施形態の照射側光ファイババンドル24では、第1実施形態や第2実施形態で説明したように紫外線伝搬用光ファイバ21だけでなく赤外線伝搬用光ファイバ22も含まれており、このような照射側光ファイババンドル24の先端部の先に中空管28を取り付けることになる。この構成によれば、紫外線伝搬用光ファイバ21を伝搬した紫外線と赤外線伝搬用光ファイバ22を伝搬した赤外線とが中空管28に入射され、紫外線及び赤外線が中空管28を通って照射ヘッド31から照射される。この結果、中空管28から均一な紫外線が出射されるとともに、均一な赤外線が出射される。つまり、本実施形態の照射ヘッド31は、紫外線と赤外線を合波した均一な光を照射できる。
但し、中空管28の内壁面での光の反射率は100%ではなく、一部の光が吸収されてしまう。このため、この変形例では、中空管28を長くして最大反射回数を多くすると、光の損失が大きい。
===光照射装置の使用例===
上記の第1〜3実施形態の光照射装置は、紫外線硬化材料に紫外線を照射して硬化させるのに利用される。
紫外線硬化材料は、紫外線を照射すると硬化する性質があり、この性質を利用して接着剤としても利用されている。紫外線硬化材料を接着剤として用いた場合、即乾性・透明性に優れ、乾燥後の体積変化が少ないなどの利点がある。このため、光学部品の接着の際に、光照射装置を用いることが考えられる。具体的には、CDプレイヤーやDVDプレイヤーのピックアップレンズの接着の際に、前述の光照射装置を用いることができる。
また、印刷用インクや塗料に紫外線硬化材料を用い、紫外線を照射して乾燥させるときにも、前述の光照射装置を用いることができる。
なお、エポキシを主成分とするカチオン重合型の紫外線硬化樹脂は、紫外線を照射したときの硬化速度が温度に依存している。このように、硬化速度が温度に依存している紫外線硬化材料に対して紫外線を照射するときに前述の光照射装置を用いれば、赤外線によって加熱しながら紫外線を照射することができるので、特に有効である。
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる形態であっても、本発明に含まれる。
<光照射装置について>
前述の実施形態では、光照射装置が紫外線と赤外線の両方を照射していたが、これに限られるものではない。前述の構成の光照射装置が、赤外線LDをオフにして紫外線のみを照射するように用いられても良いし、紫外線LEDをオフにして赤外線のみを照射するように用いられても良い。
<光源について>
前述の実施形態では、紫外線LED11の数が4個であり、赤外線LD12の数が1個であった。但し、光源の数は、これに限られるものではない。
<照射ヘッドについて>
前述の照射側光ファイババンドルでは複数の光ファイバが円柱状に束ねられており、照射ヘッドの照射範囲が円状になっていた。但し、光ファイバの束の形状や、照射範囲の形状は、これに限られるものではない。
図16Aは、別の照射ヘッド31の外観図である。図16Bは、図16Aの照射ヘッド31に用いられる照射側光ファイババンドル24の説明図である。図16Cは、更に別の照射側光ファイババンドル24の説明図である。
図に示すように、複数の紫外線伝搬用光ファイバ21を四角柱状に束ね、その中に赤外線伝搬用光ファイバ22を配置しても良い。また、紫外線の照射範囲は、矩形状であっても良い。また、図に示すように、赤外線伝搬用光ファイバ22は、1本であっても良いし、複数本であっても良い。また、この場合においても、赤外線伝搬用光ファイバ22の開口数NAが、紫外線伝搬用光ファイバ21の開口数よりも大きいことが望ましい。これにより、紫外線と赤外線の両方が照射される範囲を広げることができる。
なお、照射ヘッド31の照射範囲の形状は、円形や矩形状に限られるものではなく、例えばスリット状であっても良い。